説明

ワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスが、並列配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具を備える場合、電線保護具の撓みによって複数の電線が積み重なる状態となり、電線束全体の放熱性が低下するという問題を解決すること。
【解決手段】ワイヤハーネス1は、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置に貫通孔15が形成された扁平な筒状のコルゲートチューブ10と、留め具30が設けられた支持具20とを備える。支持具20は、コルゲートチューブ10の両側から組み合わされることにより、コルゲートチューブ10に対してその外周面に沿う環状で取り付けられる2つの要素部材21,22からなる。支持具20における2つの要素部材21,22の一方又は両方には、コルゲートチューブ10の貫通孔15に通されてコルゲートチューブ10の中で複数のフラットケーブル9を個別に仕切る棒状突起部214,224が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線とそれら電線の周囲を覆う電線保護具とを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の電線の周囲を覆うコルゲートチューブなどの筒状の電線保護具を備えることが多い。電線は、電線保護具で覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
また、特許文献1には、並列に配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状のコルゲートチューブが示されている。特許文献1に示されるような扁平な筒状の電線保護具は、複数の電線を並列に配置された状態で保持するため、自動車の車体の床下のスペースなどのように、高さの制限が特に厳しい配線スペースへのワイヤハーネスの配線に好適である。
【0004】
また、ワイヤハーネスにおいて、複数の電線が並列に配置された状態で保持された場合、複数の電線が縦方向及び横方向に積み重なる状態で保持される場合に比べ、電線束全体における輪郭を形成する部分の表面積が大きくなり、電線束全体の放熱性が高まる。
【0005】
特に、電線がフラットケーブルである場合、複数のフラットケーブルが、各フラットケーブルの扁平面に沿う方向に並列に配置された状態で保持された場合、複数のフラットケーブルが積み重なる状態で保持される場合に比べ、表面積の増大によって放熱性が向上する効果がより顕著となる。即ち、扁平な筒状の電線保護具が採用され、複数の電線が並列に配置された状態で保持された場合、円筒状の電線保護具が採用される場合に比べ、電線束全体の放熱性が高まる。
【0006】
ハイブリッド自動車及び電気自動車のような電動車両においては、ワイヤハーネスは、高出力のモータに対して大きな電力を供給する目的で使用される場合がある。この場合、電線の発熱量が大きい。従って、電動車両のワイヤハーネスにおいては、電線束全体の放熱性が高いことが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−47033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、コルゲートチューブなどの電線保護具は、一般に、樹脂成形の部材から構成される。樹脂製の電線保護具は、扁平な筒状に形成された場合、扁平面を形成する部分が幅方向において撓みやすい。特に、扁平な筒状の電線保護具が、複数のフラットケーブルを並列に配置された状態で保持する場合、扁平面を形成する部分は、幅がより広くなってより撓みやすくなる。
【0009】
そして、扁平な筒状の電線保護具において、扁平面を形成する部分が幅方向において外側に膨らむように撓むと、撓みによって形成された隙間へ電線が移動し、複数の電線が積み重なる状態となってしまう。特に、フラットケーブルは、狭い隙間へも移動可能であるため、重なる状態となりやすい。複数の電線が積み重なると、電線束全体の放熱性が低下する。
【0010】
以上に示したように、従来の扁平な筒状の電線保護具は、幅方向における撓みによって複数の電線が積み重なる状態となり、電線束全体の放熱性が低下するという問題点を有している。特に、電線がフラットケーブルである場合、積み重なることによる放熱性の低下の問題がより顕著となる。
【0011】
本発明は、ワイヤハーネスが、並列配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具を備える場合、電線保護具の撓みによって複数の電線が積み重なる状態となり、電線束全体の放熱性が低下するという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るワイヤハーネスは、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、複数の電線である。
(2)第2の構成要素は、並列に配置された複数の電線の周囲を覆い、複数の電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成された扁平な筒状の電線保護具である。
(3)第3の構成要素は、電線保護具の両側から組み合わされることにより、電線保護具に対してその外周面に沿う環状で取り付けられる2つの要素部材からなる支持具である。
(4)第4の構成要素は、支持具における2つの要素部材の一方に設けられ、支持体の取付孔に挿入されることによってその取付孔の縁部に固定される留め具である。
(5)第5の構成要素は、支持具における2つの要素部材の一方又は両方に突出して形成され、電線保護具の貫通孔に通されて電線保護具の中で複数の電線を個別に仕切る棒状突起部である。
【0013】
また、本発明に係るワイヤハーネスが、電線保護具と電線との間において複数の電線を一括して覆う編組線をさらに備えることが考えられる。この場合、棒状突起部は、電線保護具の貫通孔及び編組線の編み目の隙間に通されて、複数の電線を個別に仕切る。
【0014】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、複数の電線各々はフラットケーブルであることが考えられる。
【0015】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、棒状突起部は、次の(6)又は(7)のいずれかに示される構成を有することが考えられる。
(6)棒状突起部は、支持具における2つの要素部材の両方に突出して形成され、電線保護具内で相互に重なる状態で複数の電線を個別に仕切る。
(7)棒状突起部は、支持具における2つの要素部材の一方に突出して形成され、電線保護具における相対する位置に形成された一対の貫通孔の両方に通された状態で複数の電線を個別に仕切る。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線保護具に取り付けられる支持具に形成された棒状突起部が、電線保護具の貫通孔に通されて電線保護具の中で複数の電線を個別に仕切る。そのため、扁平な筒状の電線保護具において、扁平面を形成する部分が撓んだ場合に、棒状突起部が、その撓みによって形成された隙間への電線の移動を阻止する。
【0017】
従って、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線保護具の撓みによって複数の電線が積み重なる状態となって電線束全体の放熱性が低下する、という問題が生じない。また、ワイヤハーネスの電線は、通常、支持体の取付孔に固定される留め具が設けられた支持具を介して支持体に保持される。本発明においては、ワイヤハーネスにおいて通常必要とされる支持具が、その一部に棒状突起部が形成されることにより、電線保護具内で複数の電線を個別に仕切る役割を兼ねる。その結果、複数の電線を個別に仕切る部材をワイヤハーネスに組み付けるための追加的な手間は要しない。
【0018】
また、ワイヤハーネスが、電線保護具と電線との間において複数の電線を一括して覆う編組線を備える場合、電線と編組線との間の摩擦抵抗が小さいため、電線は、編組線内で横滑りしやすい。従って、本発明に係るワイヤハーネスは、複数の電線を一括して覆う編組線が存在する場合に、電線が移動することを防止する効果がより顕著となる。さらに、棒状突起部が編組線の編み目の隙間に通されることにより、電線保護具内での編組線の位置ずれが防止される。
【0019】
また、前述したように、電線がフラットケーブルである場合、積み重なることによる放熱性の低下の問題がより顕著となる。そのため、本発明は、並列に保持された複数のフラットケーブルを備えるワイヤハーネスに適用されれば、より効果的である。
【0020】
ところで、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、棒状突起部は、電線から受ける圧力によって大きく撓むと、複数の電線を個別に仕切る機能を果たさない。そこで、電線保護部の両側から電線保護具内へ挿入された2つの棒状突起部が、相互に重なる状態で複数の電線を個別に仕切ることが考えられる。これにより、電線から受ける圧力が2つの棒状突起部に分散し、棒状突起部の撓みが軽減される。
【0021】
また、棒状突起部が、電線保護具における相対する位置に形成された一対の貫通孔の両方に通された状態で複数の電線を個別に仕切ることも考えられる。これにより、棒状突起部は、電線から受ける横方向の圧力に対し、電線保護具における根元側の貫通孔の部分及び先端側の貫通孔の部分の両側で支えられ、撓みが軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1の主要部の分解斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の主要部の分解横断面図である。
【図3】ワイヤハーネス1の主要部の横断面図である。
【図4】ワイヤハーネス1の主要部の縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2の分解横断面図である。
【図6】ワイヤハーネス2の主要部の横断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス3の主要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0024】
<第1実施形態>
まず、図1から図4を参照しつつ、本発明の第1実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。ワイヤハーネス1は、例えば、電動車両のバッテリ又はインバータ回路などの電力供給源とモータなどの電装機器との間を接続する。図1から図4に示されるように、ワイヤハーネス1は、複数のフラットケーブル9と、編組線8と、コルゲートチューブ10と、それぞれ留め具30が設けられた複数の支持具20とを備える。
【0025】
<フラットケーブル>
フラットケーブル9は、並列に配置された複数の導線91が絶縁被覆によって覆われた扁平な形状の電線である。フラットケーブル9は、導線91の総断面積が同等の丸ケーブルと比較して、表面積が大きく放熱性に優れている。また、フラットケーブル9は、丸ケーブルと比較して、高さの制限が厳しい配線スペースへの敷設に適している。
【0026】
複数のフラットケーブル9は、各フラットケーブル9の扁平面に沿う方向において並列に配置された状態で、その周囲がコルゲートチューブ10により覆われている。
【0027】
<編組線>
編組線8は、並列に配置された複数のフラットケーブル9を一括して覆う管状のシールド部材である。編組線8は、銅線などの金属細線が寄り合わされた撚り線が編まれた構造を有する導体であり、その編み構造により伸縮性を有している。
【0028】
複数のフラットケーブル9は、その周囲を覆う編組線8の外側から、コルゲートチューブ10によって覆われる。即ち、編組線8は、コルゲートチューブ10とフラットケーブル9との間において複数のフラットケーブル9を一括して覆う。
【0029】
<コルゲートチューブ>
コルゲートチューブ10は、並列に配置されて編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9の一部の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具である。コルゲートチューブ10は、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、コルゲートチューブ10は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0030】
ワイヤハーネス1の組み立て工程において、フラットケーブル9を編組線8とともに筒状のコルゲートチューブ10内に通すことは難しい。そこで、コルゲートチューブ10は、編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9の両側から組み合わされる2つのカバー部材11,12からなる。2つのカバー部材11,12は、それぞれ編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9が嵌め入れられる溝が形成されている。そして、2つのカバー部材11,12は、それらの溝の部分に、編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9が嵌り込む状態で組み合わされることによって扁平な筒状となり、複数のフラットケーブル9を並列に配置された状態で覆いつつ保持する。
【0031】
コルゲートチューブ10を構成する2つのカバー部材11,12各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの非導電性の樹脂からなる一体成形部材である。
【0032】
2つのカバー部材11,12は、例えば、不図示の粘着テープが巻き付けられることによって扁平な筒状に保持される。2つのカバー部材11,12は、それら各々の縁部が溶着などによって接着されることにより、扁平な筒状に保持されることも考えられる。或いは、2つのカバー部材11,12各々の縁部に、それらを筒状に保持するロック機構が設けられることも考えられる。また、後述する支持具20が、組み合わされた2つのカバー部材11,12を扁平な筒状に保持する機構を兼ねることも考えられる。
【0033】
なお、本実施形態において、各図に示されるコルゲートチューブ10内に配置されるフラットケーブル9は3本であるが、フラットケーブル9の数が2本又は4本以上である場合も考えられる。
【0034】
また、コルゲートチューブ10の扁平面における、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置には、その外側から内側へ貫通する貫通孔15が形成されている。従って、貫通孔15は、コルゲートチューブ10の長手方向における予め定められた位置ごとに、フラットケーブル9の数に対して1つ少ない数だけ、コルゲートチューブ10の幅方向、即ち、フラットケーブル9の配列方向において並んで形成されている。フラットケーブル9の数が3本である場合、コルゲートチューブ10におけるその長手方向の予め定められた位置ごとに、2つの貫通孔15が、コルゲートチューブ10の幅方向において並んで形成されている。
【0035】
また、本実施形態においては、貫通孔15は、2つのカバー部材11,12各々における相対する位置に形成されている。即ち、カバー部材11の貫通孔15及びカバー部材12の貫通孔15は、コルゲートチューブ10の扁平面に直交する方向から見て同じ位置に形成されている。また、本実施形態においては、貫通孔15は、コルゲートチューブ10におけるへこみ部14に形成されている。
【0036】
<留め具>
留め具30は、後述する支持具20を構成する第一要素部材21及び第二要素部材22のうちの一方である第一要素部材21に設けられ、所定の支持体の取付孔に挿入されることによってその取付孔の縁部に固定される用具である。支持体は、例えば、自動車のボディ又はインストルメントパネル内のリンホースなどである。留め具30は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0037】
留め具30は、例えば、第一要素部材21と一体に成形された部材である。また、留め具30が、第一要素部材21に対して取り外し可能に装着される部材であることも考えられる。
【0038】
留め具30は、支持具20の第一要素部材21に固定されたフランジ部32と、支持体の取付孔に挿入される挿入部31とを有している。挿入部31は、フランジ部32における第一要素部材21に対して固定される面の反対側の面に突出して形成されている。フランジ部32は、支持体の取付孔を塞ぐように、取付孔の面積よりも大きな面積で形成されている。例えば、フランジ部32は、長孔であるの取付孔とほぼ相似な形状で取付孔よりも一回り大きな面を有する皿状に形成されている。
【0039】
また、留め具30は、フランジ部32と取付孔に挿入される挿入部31とにより取付孔の縁部(支持体)を把持する。挿入部31は、フランジ部32の一方の面に立設された柱部311と、その柱部311の両側に張り出して設けられた2つの張出部312とを備える。2つの張出部312は、可撓性を有し、柱部311の両側に張り出した幅が、取付孔の幅よりも大きな幅で形成されている。
【0040】
挿入部31が支持体の取付孔に挿入される際に、2つの張出部312は、取付孔の縁部(支持体7)に接して押圧され、柱部311の両側に張り出す幅が、取付孔の幅まで収縮する。挿入部31が取付孔の内側へさらに押し込められると、2つの張出部312の形状は、取付孔の縁部の裏側において、取付孔の幅よりも大きな幅になるまで復帰する。その結果、2つの張出部312各々の外側に形成された爪部313が、取付孔の縁部の裏側に引っ掛かり、爪部313とフランジ部32とが、支持体の取付孔の縁部を表裏両側から挟み込む。その結果、留め具30は支持体に固定される。
【0041】
<支持具>
支持具20は、コルゲートチューブ10に対して取り付けられる用具である。支持具20は、コルゲートチューブ10の両側から組み合わされることにより、コルゲートチューブ10に対してその外周面に沿う扁平な環状で取り付けられる第一要素部材21及び第二要素部材22から構成されている。
【0042】
支持具20を構成する2つの要素部材21,22各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの非導電性の樹脂からなる一体成形部材である。なお、支持具20は、非導電性の部材ではないことも考えられる。例えば、支持具20が、導電性の部材の表面に絶縁被覆が施された部材であることなども考えられる。
【0043】
また、第一要素部材21は、コルゲートチューブ10の外周面に沿う第一基部211と、その第一基部211の両端各々に位置する2つの第一連結部212と、第一基部211から突出する第一棒状突起部214とが形成されている。また、第一連結部212には、貫通孔である連結孔213が形成されている。
【0044】
同様に、第二要素部材22は、コルゲートチューブ10の外周面に沿う第二基部221と、その第二基部221の両端各々に位置する2つの第二連結部222と、第二基部221から突出する第二棒状突起部224とが形成されている。また、第二連結部222には、突出した連結ピン223が形成されている。
【0045】
第一基部211及び第二基部221は、それぞれコルゲートチューブ10が嵌め入れられる窪みが形成された浅いU字状の部分である。そして、第一要素部材21及び第二要素部材22は、それらの第一基部211及び第二基部221の窪みの部分にコルゲートチューブ10が嵌り込む状態で組み合わされることにより、コルゲートチューブ10に対してその外周面に沿う扁平な環状となる。
【0046】
第一連結部212及び第二連結部222は、コルゲートチューブ10の両側から組み合わされた第一要素部材21及び第二要素部材22を、組み合わされた状態で保持する部分である。
【0047】
図2及び図3は、ワイヤハーネス1における、支持具20の棒状突起部214,224が形成された部分での横断面を示す図であり、図2は、支持具20における第一要素部材21及び第二要素部材22が組み合わされる前の分解横断面図である。また、図4は、ワイヤハーネス1における、支持具20の棒状突起部214,224が形成された部分での縦断面を示す図である。
【0048】
図2及び図3に示されるように、支持具20を構成する第一要素部材21及び第二要素部材22が、コルゲートチューブ10を挟み込む状態で組み合わされることにより、第二連結部222の連結ピン223は、第一連結部212の連結孔213に挿入される。そして、連結孔213に挿入された連結ピン223の先端部は、溶融加工により、連結孔213の径よりも幅の広い抜け止め部223Aに加工される。例えば、連結ピン223の先端部は、加熱及び冷却されることにより、溶融して連結孔213の径よりも幅の広い抜け止め部223Aに変形して固まる。その結果、第一要素部材21及び第二要素部材22は、組み合わされた状態で保持される。
【0049】
また、第一要素部材21に形成された第一棒状突起部214及び第二要素部材22に形成された第二棒状突起部224は、コルゲートチューブ10の中で、複数の前記電線を個別に仕切る部分である。図2、図3及び図4に示されるように、第一要素部材21及び第二要素部材22がコルゲートチューブ10の両側から組み合わされることにより、第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224は、コルゲートチューブ10の貫通孔15に通され、かつ、編組線8の編み目の隙間に通され、コルゲートチューブ10内の複数のフラットケーブル9各々の間において、相互の先端部が当接する。これにより、第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224は、複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。
【0050】
また、図4に示されるように、第一要素部材21における第一棒状突起部214の根元部分には、コルゲートチューブ10の一方のカバー部材11のへこみ部14に嵌り込む第一土台部215が形成されている。同様に、第二要素部22における第二棒状突起部224の根元部分にも、コルゲートチューブ10の他方のカバー部材12のへこみ部14に嵌り込む第二土台部225が形成されている。
【0051】
支持具20の土台部215,225がコルゲートチューブ10のへこみ部14に嵌り込むことにより、支持具20が、コルゲートチューブ10に取り付けられた位置からずれることが防止される。また、土台部215,225が存在することにより、細い棒状突起部214,224は、比較的短く形成され、フラットケーブル9から受ける横方向の圧力に対する強度が高まる。
【0052】
<効果>
ワイヤハーネス1は、編組線8を備えるため、フラットケーブル9と編組線8との間の摩擦抵抗が小さく、フラットケーブル9は、編組線8内で横滑りしやすい。そのため、扁平な筒状のコルゲートチューブ10において、扁平面を形成する部分が幅方向において外側へ膨らむように撓んだ場合に、フラットケーブル9が、コルゲートチューブ10の撓みによって形成された隙間へ移動しやすい。
【0053】
しかしながら、ワイヤハーネス1においては、コルゲートチューブ10に取り付けられる支持具20に形成された棒状突起部214,224が、コルゲートチューブ10の貫通孔15に通されてコルゲートチューブ10の中で複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。そのため、棒状突起部214,224が、コルゲートチューブ10の撓みによって形成された隙間へのフラットケーブル9の移動を阻止する。
【0054】
従って、ワイヤハーネス1においては、コルゲートチューブ10の撓みによって複数のフラットケーブル9が積み重なり、フラットケーブル9の束全体の放熱性が低下するという問題の発生は回避される。さらに、棒状突起部214,224が編組線8の編み目の隙間に通されることにより、コルゲートチューブ10内での編組線8の位置ずれが防止される。
【0055】
また、ワイヤハーネス1のフラットケーブル9は、通常、支持体の取付孔に固定される留め具30が設けられた支持具を介して支持体に保持される。ワイヤハーネス1においては、通常必要とされる支持具20が、その一部に棒状突起部214,224が形成されることにより、コルゲートチューブ10内で複数のフラットケーブル9を個別に仕切る役割を兼ねる。そのため、複数のフラットケーブル9を個別に仕切る部材をワイヤハーネス1に組み付けるための追加的な手間は要しない。
【0056】
<第2実施形態>
次に、図5及び図6を参照しつつ、本発明の第2実施形態に係るワイヤハーネス2について説明する。このワイヤハーネス2は、図1から図4に示されたワイヤハーネス1と比較して、複数のフラットケーブル9を個別に仕切る棒状突起部の構造のみが異なる構成を有している。図5及び図6において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス2におけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0057】
ワイヤハーネス2は、ワイヤハーネス1と同様に、扁平な筒状のコルゲートチューブ10と、そのコルゲートチューブ10の両側から組み合わされる第一要素部材21及び第二要素部材22からなる支持具20とを備える。また、コルゲートチューブ10における、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置には、その外側から内側へ貫通する貫通孔15が形成されている。
【0058】
しかしながら、ワイヤハーネス2の支持具20においては、コルゲートチューブ10の外周面に沿う第一基部211から突出する第一棒状突起部214が形成されているが、第二基部221には、第二棒状突起部224は形成されていない。
【0059】
図5及び図6は、ワイヤハーネス2における、支持具20の第一棒状突起部214が形成された部分での横断面を示す図であり、図5は、支持具20における第一要素部材21及び第二要素部材22が組み合わされる前の分解横断面図である。
【0060】
図5及び図6に示されるように、ワイヤハーネス2において、第一棒状突起部214は、コルゲートチューブ10における相対する位置に形成された一対の貫通孔15の両方に通された状態で複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。即ち、ワイヤハーネス2の、第一棒状突起部214は、コルゲートチューブ10を一方の扁平面から他方の扁平面まで貫通する。また、ワイヤハーネス2において、第二要素部材22の第二土台部225には、第一棒状突起部214の先端部分が嵌り込む窪み226が形成されている。
【0061】
ワイヤハーネス2も、ワイヤハーネス1と同様に、第一棒状突起部214が、コルゲートチューブ10の撓みによって形成された隙間へのフラットケーブル9の移動を阻止する。さらに、ワイヤハーネス2において、第一棒状突起部214は、フラットケーブル9から受ける横方向の圧力に対し、コルゲートチューブ10における根元側の及び先端側の両側の貫通孔15の部分で支えられ、撓みが軽減される。
【0062】
<第3実施形態>
次に、図7を参照しつつ、本発明の第3実施形態に係るワイヤハーネス3について説明する。このワイヤハーネス3は、図1から図4に示されたワイヤハーネス1と比較して、複数のフラットケーブル9を個別に仕切る棒状突起部214,224の相対的な位置のみが異なる構成を有している。図7において、図1から図4に示される構成要素と同じ構成要素は、同じ参照符号が付されている。以下、ワイヤハーネス3におけるワイヤハーネス1と異なる点についてのみ説明する。
【0063】
ワイヤハーネス3は、ワイヤハーネス1と同様に、扁平な筒状のコルゲートチューブ10と、そのコルゲートチューブ10の両側から組み合わされる第一要素部材21及び第二要素部材22からなる支持具20とを備える。また、コルゲートチューブ10における、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置には、その外側から内側へ貫通する貫通孔15が形成されている。さらに、第一要素部材21に第一棒状突起部214が形成され、第二要素部材22に第二棒状突起部224が形成されている。
【0064】
図7は、ワイヤハーネス3における、支持具20の棒状突起部214,224が形成された部分での縦断面を示す図である。
【0065】
図7に示されるように、ワイヤハーネス2のコルゲートチューブ10においては、相対する位置に形成された一対の貫通孔15は、コルゲートチューブ10の長手方向、即ち、フラットケーブル9の軸芯の方向において、わずかにずれた位置に形成されている。従って、2つの要素部材21,22の各々に突出して形成された第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224は、一対の貫通孔15の位置に合わせて、フラットケーブル9の軸芯の方向において、わずかにずれた位置に形成されている。
【0066】
そして、ワイヤハーネス2の支持具20においては、2つの要素部材21,22の各々に突出して形成された第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224は、コルゲートチューブ10内で相互に重なる状態で、複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。
【0067】
ワイヤハーネス3も、ワイヤハーネス1と同様に、第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224が、コルゲートチューブ10の撓みによって形成された隙間へのフラットケーブル9の移動を阻止する。さらに、ワイヤハーネス3においては、フラットケーブル9から受ける圧力が第一棒状突起部214及び第二棒状突起部224の各々に分散し、各棒状突起部214,224の撓みが軽減される。
【0068】
<その他>
以上に示されたワイヤハーネス1,2,3は、電線としてフラットケーブル9を備えるが、各ワイヤハーネス1,2,3が、フラットケーブル9の代わりに丸ケーブルを備え、さらに、並列に配置された複数の丸ケーブルを覆って保持する扁平な筒状のコルゲートチューブ10を備えることも考えられる。
【0069】
また、以上に示されたワイヤハーネス1,2,3は、電線保護具としてコルゲートチューブ10を備えるが、各ワイヤハーネス1,2,が備える電線保護具は、表面に出っ張り部13及びへこみ部14が形成されていない扁平な筒状の部材であることも考えられる。
【0070】
また、棒状突起部が形成された支持具20は、複数の電線を一括して覆う編組線8を備えるワイヤハーネスへの適用が好適であるが、編組線8を備えていないワイヤハーネスへ適用されることも考えられる。例えば、以上に示されたワイヤハーネス1,2,3が、編組線8を除く残りの構成要素のみを備えることも考えられる。
【符号の説明】
【0071】
1,2,3 ワイヤハーネス
8 編組線
9 フラットケーブル
10 コルゲートチューブ
11,12 カバー部材
13 出っ張り部
14 へこみ部
15 貫通孔
20 支持具
21 第一要素部材
22 第二要素部材
30 留め具
31 挿入部
32 フランジ部
91 導線
211 第一基部
212 第一連結部
213 連結孔
214 第一棒状突起部
215 第一土台部
221 第二基部
222 第二連結部
223 連結ピン
223A 抜け止め部
224 第二棒状突起部
225 第二土台部
226 窪み
311 柱部
312 張出部
313 爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、
並列に配置された複数の前記電線の周囲を覆い、複数の前記電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成された扁平な筒状の電線保護具と、
前記電線保護具の両側から組み合わされることにより、前記電線保護具に対してその外周面に沿う環状で取り付けられる2つの要素部材からなる支持具と、
前記支持具における前記2つの要素部材の一方に設けられ、支持体の取付孔に挿入されることによって前記取付孔の縁部に固定される留め具と、
前記支持具における前記2つの要素部材の一方又は両方に突出して形成され、前記電線保護具の前記貫通孔に通されて前記電線保護具の中で複数の前記電線を個別に仕切る棒状突起部と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線保護具と前記電線との間において複数の前記電線を一括して覆う編組線をさらに備え、
前記棒状突起部は、前記電線保護具の前記貫通孔及び前記編組線の編み目の隙間に通されて、複数の前記電線を個別に仕切る、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
複数の前記電線各々はフラットケーブルである、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記棒状突起部は、前記支持具における前記2つの要素部材の両方に突出して形成され、前記電線保護具内で相互に重なる状態で複数の前記電線を個別に仕切る、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記棒状突起部は、前記電線保護具における相対する位置に形成された一対の前記貫通孔の両方に通された状態で複数の前記電線を個別に仕切る、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−85439(P2012−85439A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229594(P2010−229594)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】