説明

ワイヤレスセンサチップを用いる計測システム

【課題】遺伝子やタンパク質など生体物質の検査を安価、簡便に行う小型、高感度、低コストの検査装置においてワイヤレスセンサチップ出力の安定性・再現性を向上する手段を提供する。
【解決手段】ワイヤレスセンサチップ上に電源電圧監視部170を設け、これによって電源によって生成された電源電圧を監視し、その監視結果をセンサチップの制御論理部130に入力し、そこで監視して得た電源電圧データを送信すると、そのデータを元に補正用データを補正して共振回路制御部160に送る。共振回路制御部はインピーダンス制御部150に制御信号を送ってインピーダンスを調整し、これによって共振点を調整してリーダ・ライタ301から送られる電力を制御して電源電圧の値を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸、タンパク質、抗原、抗体などの生体物質の検出や温度、圧力、光、イオン濃度などの物理、化学量を計測するシステムに関し、特にワイヤレスセンサチップを用いる計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲノムシーケンスの解明や遺伝子解析技術の進展により、疾病や薬剤感受性と遺伝子とを関連づける情報は近年急速に蓄積が進んでいる。こうした情報を利用した予防や治療に貢献するため、遺伝子の簡便な検査手段の開発が不可欠である。種々条件における遺伝子発現や、種々の個体の遺伝子変異を検査することで遺伝子の機能や遺伝子と病気あるいは医薬品感受性との関連が調べられ、これらの情報が医療や健康管理に利用されることが期待される。遺伝子検査に使用できるシステムとしては、Invader assay (Science 260, 778 (1993)), Taqman assay(J.Clin.Microbiol.34, 2933(1996)),DNAマイクロアレイ(Nature Gent. 18, 91(1998)),pyrosequencing(Science281, 363 (1998))などが報告されている。中でも、多くの部位を検査できるDNAマイクロアレイは、将来の遺伝子解析方法として注目されている。
【0003】
マイクロアレイでは、多種のオリゴDNAあるいはcDNAをスライドグラス上にスポッティングする。スポッティングは100-500μmの間隔で数十μmから200μmの径を有するスポットを形成できるスポッターによって行なう。スポッティングを終えたら後処理をし、室温乾燥して保管する。ターゲット試料については試料細胞からRNAを抽出し、Cyanine3,Cyanine5等の蛍光色素で標識したcDNAを調製する。ターゲット試料溶液を上記マイクロアレイに滴下して、モイスチャーチャンバーを使って65℃で約10時間インキュベートする。ハイブリダイゼーションが終了したら室温で乾燥させる。マイクロアレイの評価にはスキャナが用いられる。励起光源には例えばアルゴンイオンレーザー、発光の検出器には例えば光電子増倍管が利用される。さらに、共焦点光学系により合焦位置以外からの背景光の影響を排除し、S/N比を向上する。加えて多数のスポットの蛍光評価をするために、読取り光学系に対してマイクロアレイを高精度で位置決めすることが必要になる。そこでスキャナには数十μm以下の誤差で移動が可能な移動ステージが組み込まれている。
【0004】
診療、健康管理、食品検査あるいは環境検査等のように遺伝子やタンパク質の情報を簡便・迅速に入手する必要がある場面では、計測システムが小型かつ低コストであることが必要である。遺伝子の検査技術として知られるDNAマイクロアレイは、既知のプローブDNAを微小なスポットとしてスライドガラス上に固定し、選択的に結合した試料中のDNAを蛍光によって識別する。ここでは微細スポットを高精度で形成するためのスポッター、及び信号検出のための蛍光色素励起用レーザと共焦点光学系を備えたスキャナなどの装置のコストが高くなることが避けられなかった。
【0005】
そこで特開2004-0101253号公報のような、半導体チップ上にDNAなどの生体物質、イオン、物理量などを計測するセンサと、センシングデータをワイヤレスでチップ外部に送信するパッシブ型の通信機構を集積したワイヤレスバイオ計測チップが考案された。本チップはチップごとに計測するDNAプローブ、物理・化学量を計測するセンサを具備し、複数のチップからセンシングデータをワイヤレスでチップ外部のリーダ・ライタに送信する。チップ上にはセンサの他、センシングデータの処理やワイヤレス通信をするための通信制御・認証番号の格納と照合・電源の発生と制御の各機能を有する回路ブロックが集積されている。ワイヤレスセンサチップは試料溶液が入った反応槽に投入され、ワイヤレスセンサチップに固定されたプローブに捕捉されたターゲットの有無あるいは量を検出し、検出信号をディジタル電気信号に変換する。一方、外部のリーダ・ライタからは複数のワイヤレスセンサチップの中から特定のワイヤレスセンサチップを特定するための認識番号を電磁波、交流磁場あるいは交流電場のいずれかを伝達手段として送信する。
【0006】
前述の様にワイヤレスセンサチップ上の回路すなわち制御論理部やセンサアナログ部あるいはセンサ等の電力はリーダ・ライタからの電磁波、交流磁場あるいは交流電場によって供給される。そのため、リーダ・ライタコイル近傍における電磁波、交流磁場あるいは交流電場のばらつきは、ワイヤレスセンサチップ上で生成される電源の値に影響を与える。RFIDタグは上記の方式、例えば交流磁場によってリーダ・ライタから電力を供給されている。ここでRFIDタグ周囲の磁場強度が必要以上に強くなるとチップの温度上昇や絶縁破壊等がおこり、チップの信頼性を損なうことになる。そこで、こうした問題の解決にあたり、特開平5-128319号公報、特開平10-14598号公報、特開2001-160122号公報、特開2001-357369号公報、特開2001-64402号公報、特開2002-64403号公報、特開2003-67693号公報に示されたように、タグチップ上の共振回路を構成するデバイスのパラメータを変化させて、共振点をずらしてタグチップの電流を調整する方法が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開2004-101253号公報
【特許文献2】特開平5-128319号公報
【特許文献3】特開平10-14598号公報
【特許文献4】特開2001-160122号公報
【特許文献5】特開2001-357369号公報
【特許文献6】特開2001-64402号公報
【特許文献7】特開2002-64403号公報
【特許文献8】特開2003-67693号公報
【非特許文献1】Science 260, 778(1993)
【非特許文献2】J.Clin.Microbiol.34, 2933(1996)
【非特許文献3】Nature Gent. 18, 91(1998)
【非特許文献4】Science 281, 363(1998)
【非特許文献5】RFID HANDBOOK, Finkenzeller, Wiley 68(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ワイヤレスセンサチップによる計測を実施する場合、反応槽への試薬の注入あるいは溶液の攪拌によってリーダ・ライタコイルに対するワイヤレスセンサチップの位置が変動すると、アナログ出力が影響を受ける。やはりここでもRFIDで実施した様な電源電圧を一定にするような手段が必要となる。ただし、ワイヤレスセンサチップはRFIDの様に論理信号を扱うチップとは基本的に異なり、アナログ値であるセンサ信号を扱う。アナログ信号の場合、電源電圧の影響が直接に出力に反映されるため、上記のRFIDタグ向けの電源電圧安定化の方式を採用することはできない。ワイヤレスセンサチップの場合はアナログ信号を安定にする様な高精度の電圧制御手段を用いる必要がある。
【0009】
本発明は、このような要請に応えることのできる計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による計測システムは、センサとセンサ出力を処理するセンサアナログ回路を具備し、センサ出力を外部のリーダ・ライタに送信する機能を有するワイヤレスセンサチップ上に電源監視部及び共振回路制御部を設け、電源電圧のモニタリング結果に基づいて、チップコイルを含む共振回路の制御を行う。これによりワイヤレスセンサチップ上の電源電圧が安定化され、安定したセンサ出力を得ることができる。センサとしては、たとえば光センサ、イオンセンサ、温度センサ等を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、遺伝子などの生体物質や化学物質、温度、圧力、pHなどの物理化学量の計測を目的とし、センサと信号処理回路そしてパッシブ型の通信機能を備えた計測システムにおいて、通信媒体となる電磁場の強度変動に対して安定した計測結果が得られる検査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図2に、ワイヤレスセンサチップを使用して溶液中でバイオ計測をする場合のシステムの一例を示す。ワイヤレスセンサチップでは、リーダ・ライタで生成された例えば交流磁場によって信号及び電力が供給される。
【0013】
図2(a)はワイヤレスセンサチップの模式図、図2(b)は反応槽周辺の構成を示す模式図、図2(c)は計測システムの全体構成を示す図である。ワイヤレスセンサチップ100は、シリコン基板102上に形成されたチップコイル101とセンサ110を有する。111,112はチップコイル端子である。図2(b)に示すように、センサチップ100は反応槽241に投入されて、溶液242のバイオ計測を実行する。反応槽241の下面近くには制御用PC302の制御下にあるリーダ・ライタ301のリーダ・ライタコイル251が配置され、リーダ・ライタ301とワイヤレスセンサチップ100は電磁場252を介して、電力及びデータの受け渡しを行う。図2(c)に示すように、プレート240には複数の反応槽241が設けられており、リーダ・ライタ側のコイル251を1つの反応槽の下に位置づけることにより、リーダ・ライタ301と一つの反応槽241内のワイヤレスセンサチップ100との通信が行われる。
【0014】
ワイヤレスセンサチップ100に搭載されたセンサアナログ回路を安定して動作させるには、磁場強度が一定である必要がある。このとき、反応溶液242の攪拌や反応槽241の振動によりセンサチップ100とリーダ・ライタ301側のコイル251の位置関係に応じてセンサチップ周囲の磁場強度が変動し、ワイヤレスセンサチップ100内の電源電圧がシフトし、結果としてセンサ出力値が真値からずれる。
【0015】
図3は、リーダ・ライタコイル近傍における磁場強度分布を示す図である。図3(a)はリーダ・ライタコイル251とセンサチップ100の位置関係を示す図、図3(b)はリーダ・ライタコイル251が形成するz方向磁場の強度分布をy軸に沿って示したものである。横軸は、リーダ・ライタコイル251の中心を原点にとっている。リーダ・ライタコイル251の外側では、磁場強度のz方向成分が急激に減少することがわかる。実際の計測システムにおいては、コイル外側の領域は急激な磁場変化のため、ワイヤレスセンサチップ100の安定動作が困難な領域である。基本的にワイヤレスセンサチップ100はリーダ・ライタコイル251の周辺より内側に位置するようにして利用されるが、リーダ・ライタコイル251の内側においても磁場強度のz方向成分は均一でないことがわかる。
【0016】
図4に、ワイヤレスセンサチップに搭載された整流・レギュレータ回路による交流磁場と生成された電源電圧の関係を示す。図4(a)の整流・レギュレータ部で生成される電源電圧Vccは共振部のコイル101を貫通する磁束Φに依存する。図4(b)に示す様に磁場強度Hが小さい(Φが小さい)場合はファラデーの法則V=L(dΦ/dt)に従って変化する。Hが増加(Φが増加)して、レギュレータ入力が所定電圧以上になるとレギュレータ105がオンになる。
【0017】
図5は、リーダ・ライタコイルとワイヤレスセンサチップ間の距離とワイヤレスセンサチップ上で生成される電流の関係を示す図である。ワイヤレスセンサチップ上の回路で必要とされる電流値を超える分はレギュレータによりシャントされる。比較的磁場強度が大きい領域では、レギュレータが動作してシャント電流が増大し、レギュレータ回路に付随する直列抵抗成分によって電源電圧が上昇する。理想的なレギュレータであればレギュレータがオンになる範囲において電源電圧Vccは一定値となる。レギュレータ特性は入力電圧に対して変動幅を少なくする様に設計するが、一般には一定の出力変動が生ずることは避けられない。
【0018】
図6は、リーダ・ライタコイル上の位置を変えてワイヤレスセンサチップのセンサ出力を計測した結果を示す図である。ここで、センサチップに搭載されたセンサはフォトダイオードであり、フォトダイオードの位置が変化しても常に一定の参照光が照射されるようにした。図6(a)(b)(c)の横軸は、ワイヤレスセンサチップ100が置かれたリーダ・ライタコイル251上の位置を示す。図3(a)に示す様にリーダ・ライタコイルの中心をx軸の原点としている。センサチップを、原点に対して正負の方向に1mmずつ移動させてセンサ出力を読み取った。±3mmの範囲でセンサチップからの応答を得た。測定では参照光をオン、オフさせ、オン状態とオフ状態のADC(アナログ・ディジタル変換器)差分出力を求めこれをセンサ出力とした。図6(a)はセンサチップの位置に対し、ADC差分出力と磁界強度をプロットしたものである。図6(b)はセンサチップの位置に対し、ADC差分出力とセンサチップ上の共振部における誘起電圧をプロットしている。|x|>2mmではADC差分出力が増大する方向で変動するがこれは磁界強度の減少にともなう誘起電圧の減少によるものである。リーダ・ライタコイルの内側(|x|<2mm)では外側に比べて比較的安定したセンサ出力が得られるが、やはりADC差分出力が増大する方向で変動する。これは共振部の誘起電圧変動をレギュレータによって安定化しきれなかった電源電圧Vcc変動の影響である。
【0019】
図6(c)は、図6(b)を磁場強度とセンサADC出力の関係にプロットし直したものである。ここで(A)の領域は、過剰な電流が発生している領域である(|x|<2mm)。この領域ではワイヤレスセンサチップ100のチップコイル101とリーダ・ライタコイル251の誘導結合の係数を調整することによって電源電圧を一定にすることが可能である。(B)の領域は、磁場の急激の減少に伴って電源電圧低下とADC出力変動が起こっている領域であり、電源電圧を一定に保つことはできない。本発明は、(A)の領域で電源電圧を一定に保つ手段を提供することを目的としている。
【0020】
図1は、本発明によるワイヤレスセンサチップ100の構成例を示す図である。リーダ・ライタ301から電磁場が送られると、ワイヤレスセンサチップ100上のRF部140において送信された電磁場をキャリアとした制御信号を復調回路141で復調する。クロック生成回路143からのクロック信号及び電源生成回路144からの電源電圧も、前記電磁場から生成される。復調された信号は制御論理部130において復号化され、ワイヤレスセンサチップ100上の各機能ブロックを制御する。センサ110で取得した信号はセンサアナログ部120のアンプ121で増幅され、ADC122で2値化された後に制御論理部130で符号化され、RF部140の変調回路142で変調された後、チップコイル101からリーダ・ライタ301に向けて送信される。
【0021】
ここでは図1に示す様に、電源電圧監視部170によって電源104によって生成された電源電圧を監視し、その監視結果をセンサチップの制御論理部130に入力し、そこで監視して得た電源電圧データを制御論理部130に送信すると、制御論理部130は、そのデータを元に補正用データを生成して共振回路制御部160に送る。これにより共振回路制御部160はインピーダンス制御部150に制御信号を送ってインピーダンスを調整し、チップコイル101を含む共振回路の共振点を調整してリーダ・ライタ301から送られる電力を制御して電源生成回路144によって生成される電源電圧の値を一定に保つ。これにより一定のセンサ信号に対して、センサアナログ部120の信号が一定に保たれる様になり、反応槽内をワイヤレスセンサチップ100が移動することに伴う信号の変動を抑制することが可能になる。
【0022】
他の実施例として、ワイヤレスセンサチップ100上の電源電圧に関する情報を得たPC302は、ワイヤレスセンサチップ100の電源電圧監視部170で計測した電源電圧を所定の範囲内に収めるために必要な共振周波数の変化量を与える信号をセンサチップに送信し、その信号を受けたワイヤレスセンサチップ100が共振回路制御部160によってインピーダンス制御部150のインピーダンスを調整するようにしてもよい。この場合の動作としては、次のようになる。ワイヤレスセンサチップ100は、電源電圧監視部による電源電圧計測結果をリーダ・ライタ301に送信する。リーダ・ライタを制御するPC302は、メモリに格納している電源電圧調整用データを参照してワイヤレスセンサチップ100の電源電圧監視部170で計測した電源電圧を所定の範囲内に収めるために必要な共振周波数の変化量を与える信号をリーダ・ライタを介してワイヤレスセンサチップに送信し、その信号を受信したワイヤレスセンサチップ100は、受信した信号を共振回路制御部160から発生させ、インピーダンス制御部150のインピーダンスを調整することになる。
【0023】
図7は、本発明を適用した場合の磁場強度とADC出力の関係を示す図であり、図6に対応する図である。本発明によると、誘導結合の係数を調整することにより、図7(b)に示す様にリーダ・ライタコイルが発生する磁場を一定にすることができる。これにより図7(c)のように、(A)領域におけるADC出力を一定にすることが可能となる。
【0024】
図8は、リーダ・ライタコイル251とワイヤレスセンサチップ100のチップコイル101の誘導結合部を等価回路で示した図である。ワイヤレスセンサチップ100上で生成される電源はu2で表すことができ、誘導結合を構成するR1,L1,C1,R2,L2,C2を調整することにより、図8中の式(RFID HANDBOOK, Finkenzeller, Wiley 68(1999))に従ってu2を調整することが出来る。
【0025】
図9は、本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図である。本実施例は、電源電圧の基準値からのシフト量に基づいて共振回路を制御するための補正データの格納部133を、ワイヤレスバイオセンサチップに搭載したものである。チップ上で生成される電源電圧とチップ近傍の磁場強度の間には、前述のように一定の関係がある。この関係によって電源電圧を一定に維持するための補正データの格納部133を不揮発性の書換可能型メモリで構成することにより、チップ毎に特有の補正データを格納することができ、チップ内でADC出力が一定になるように誘導結合係数を調整することが可能になる。これによりユーザはチップから読み出したデータを補正することなく利用することができる。不揮発性の書換可能型メモリとしては、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)を用いることができる。
【0026】
図10は、本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図である。本実施例では、電源電圧監視部170が直接、共振回路制御部160に接続されている。この場合、電源電圧を基準値に制御するための制御信号の生成回路は、ワイヤレスセンサチップ100上に形成された回路として共振回路制御部160内に組み込む。本実施例は、デバイス特性のチップ間ばらつきが小さい場合に適用することができ、補正データの書込みがないので製造コストが低減できる。
【0027】
図11は、本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図である。本実施例では、電源電圧監視部170の出力が制御論理部130に入力され、リーダ・ライタ301を経てPC302に送られ、このデータをもとにPC302側においてADC出力を補正する。この場合、ワイヤレスセンサチップ100上の電源とセンサのADC出力の関係を補正するデータを予めPC302に格納しておき、ワイヤレスセンサチップ100の電源生成回路144で生成された電源電圧に応じて、ワイヤレスセンサチップ100から送信されてきたセンサのADC出力を補正することによって、正確なセンサのADC出力を得る事ができる。
【0028】
他の実施例として、ワイヤレスセンサチップ100上の電源電圧に関する情報を得たPC302は、ワイヤレスセンサチップ100上の電源電圧が所定の範囲内に収まるようにリーダ・ライタ301の送信出力を変化させるように制御してもよい。この場合、ワイヤレスセンサチップ100は、電源電圧監視部170によって検出した電源生成回路144の電圧計測結果をリーダ・ライタ301に送信する。リーダ・ライタを制御するPC302は、PC内のメモリに格納している電源電圧調整用データを参照して、ワイヤレスセンサチップ100の電源電圧監視部170で計測した電源電圧が所定の範囲内に収まるようにリーダ・ライタ301の送信出力を変化させる。リーダ・ライタ301の送信出力は、リーダ・ライタの送受信部が有する共振回路のインピーダンスを調整することによって実現することができる。
【0029】
本発明の他の実施例を図12により説明する。本実施例では、センサ出力を2値化するためのADCを電源電圧監視部として利用する。前述の実施例で説明した例では、ワイヤレスセンサチップの電源は専用の電源監視部170で監視していたが、本実施例では、センサ出力を2値化するためのADC122の入力を切替スイッチ123,124によってつなぎ替えることによって電源生成回路144によって生成された電源電圧を読み取る。これにより、別に電源監視部を構成する回路をチップ上に形成する必要が無くなり、チップサイズを縮小することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明によるワイヤレスセンサチップの構成例を示す図。
【図2】本発明におけるワイヤレスセンサチップを用いたワイヤレスセンシングシステムの利用形態の一例を示す図。
【図3】リーダ・ライタコイル近傍における磁場強度分布を示す図。
【図4】ワイヤレスセンサチップにおける整流・レギュレータ部の構成例を示す図。
【図5】ワイヤレスセンサチップとリーダ・ライタコイルの距離と、チップ上で生成される電流の関係を示す図。
【図6】磁場強度とADC出力の関係を示す図。
【図7】本発明を適用した場合の磁場強度とADC出力の関係を示す図。
【図8】リーダ・ライタ及びワイヤレスバイオセンサチップの誘導結合部を構成する回路要素を示す図。
【図9】本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図。
【図10】本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図。
【図11】本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図。
【図12】本発明によるワイヤレスセンサチップの他の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0031】
100:ワイヤレスセンサチップ、101:チップコイル、102:シリコン基板、103:共振容量、104:整流ブリッジ、105:レギュレータ、106:平滑容量、110:センサ、111:チップコイル端子、112:チップコイル端子、120:センサアナログ部、121:アンプ、122:ADC、123:切替スイッチ、124:切替スイッチ、130:制御論理部、131:センサインタフェース(IF)、132:コントローラ、133:制御データの格納部、140:RF部、141:復調回路、142:変調回路、143:クロック生成回路、144:電源生成回路、150:インピーダンス制御部、160:共振回路制御部、170:電源電圧監視部、241:反応槽、242:反応溶液、251:リーダ・ライタコイル、252:電磁場、301:リーダ・ライタ、302:制御用PC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサチップとリーダ・ライタとを有する計測システムであって、
前記リーダ・ライタは、前記センサチップに対し電力及び制御信号を伝達するための交流電磁場を発生しかつ前記センサチップからのセンサ出力データを受信する第1の送受信部を有し、
前記センサチップは、センサと、前記センサの検出信号を増幅及び2値化する回路と、インピーダンス制御部を有する共振回路を備えていて前記電力を受信しかつ前記センサの検出結果を前記リーダ・ライタに送信する第2の送受信部と、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを制御して前記共振回路の共振周波数を変える共振回路制御部と、前記第2の送受信部で生成された電源電圧を監視する電源監視部と、前記電源監視部の出力に基づいて前記共振回路制御部に制御情報を送る制御論理部とを有し、前記制御論理部は、前記電源電圧が所定の範囲に収まるように前記共振回路制御部によって前記インピーダンス制御部のインピーダンスを調整することを特徴とする計測システム。
【請求項2】
センサチップとリーダ・ライタとを有する計測システムであって、
前記リーダ・ライタは、前記センサチップに対し電力及び制御信号を伝達するための交流電磁場を発生しかつ前記センサチップからのセンサ出力データを受信する第1の送受信部を有し、
前記センサチップは、センサと、前記センサの検出信号を処理する回路と、インピーダンス制御部を有する共振回路を備えていて前記電力を受信しかつ前記センサの検出結果を前記リーダ・ライタに送信する第2の送受信部と、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを制御して前記共振回路の共振周波数を変える共振回路制御部と、前記第2の送受信部で生成された電源電圧を監視する電源電圧監視部と、前記電源電圧監視部の出力に基づいて前記共振回路制御部に制御情報を送る制御論理部とを有し、前記制御論理部は、前記電源電圧が所定の範囲に収まるように前記共振回路制御部によって前記インピーダンス制御部のインピーダンスを調整することを特徴とする計測システム。
【請求項3】
センサチップとリーダ・ライタとを有する計測システムであって、
前記リーダ・ライタは前記センサチップに対し電力及び制御信号を伝達するための交流電磁場を放射しかつ前記センサチップからのセンサ出力データを受信する第1の送受信部を有し、
前記センサチップは、センサと、前記センサの検出信号を増幅及び2値化する回路と、インピーダンス制御部を有する共振回路を備えていて前記電力を受信しかつ前記センサの検出結果を前記リーダ・ライタに送信する第2の送受信部と、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを制御して前記共振回路の共振周波数を変える共振回路制御部と、前記第2の送受信部で生成された電源電圧を監視する電源電圧監視部と、前記電源電圧監視部の出力に基づいて前記共振回路制御部に制御情報を送る制御論理部と、電源電圧調整用データを格納した制御データ格納部とを有し、
前記制御論理部は、前記制御データ格納部に格納された電源電圧調整用データを参照して前記電源電圧監視部で計測した電源電圧を所定の範囲内に収めるのに必要な前記共振回路の共振周波数の変化量を与える信号を前記共振回路制御部から発生させ、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを調整することを特徴とする計測システム。
【請求項4】
前記制御データは、前記センサを駆動するための予め定めた定数であることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項5】
請求項3に記載の計測システムにおいて、前記制御データ格納部はEEPROMあるいはRAMであり、前記電源電圧調整用データは、電源電圧とこれを所定の基準電圧に補正するための信号値のセットであることを特徴とする計測システム。
【請求項6】
センサチップとリーダ・ライタと前記リーダ・ライタを制御するPCとを有する計測システムであって、
前記リーダ・ライタは前記チップに対し電力及び制御信号を伝達するための交流電磁場を放射しかつ前記センサチップからのセンサ出力データを受信する第1の送受信部を有し、
前記センサチップは、センサと、前記センサの検出信号を増幅及び2値化する回路と、インピーダンス制御部を有する共振回路を備えていて前記電力を受信しかつ前記センサの検出結果を前記リーダ・ライタに送信する第2の送受信部と、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを制御して前記共振回路の共振周波数を変える共振回路制御手段と、前記第2の送受信部で生成された電源電圧を監視する電源電圧監視部とを有し、
前記センサチップは、前記電源電圧監視部による電源電圧計測結果を前記第2の送受信部から前記リーダ・ライタに送信し、
前記リーダ・ライタを制御するPCは、記憶している電源電圧調整用データを参照して前記センサチップの電源電圧監視部で計測した電源電圧を所定の範囲内に収めるために必要な共振周波数の変化量を与える信号を前記リーダ・ライタの前記第1の送受信部から前記センサチップに送信し、
前記共振周波数の変化量を与える信号を受信した前記センサチップは、前記信号を前記共振回路制御部から発生させ、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを調整することを特徴とする計測システム。
【請求項7】
センサチップとリーダ・ライタと前記リーダ・ライタを制御するPCとを有する計測システムであって、
前記リーダ・ライタは前記センサチップに対し電力及び制御信号を伝達するための交流電磁場を放射しかつ前記センサチップからのセンサ出力データを受信する第1の送受信部を有し、
前記センサチップは、センサと、前記センサの検出信号を増幅及び2値化する回路と、インピーダンス制御部を有する共振回路を備えていて前記電力を受信しかつ前記センサの検出結果を前記リーダ・ライタに送信する第2の送受信部と、前記インピーダンス制御部のインピーダンスを制御して前記共振回路の共振周波数を変える共振回路制御手段と、前記第2の送受信部で生成された電源電圧を監視する電源電圧監視部とを有し、
前記センサチップは、前記電源電圧監視部による電源電圧計測結果を前記第2の送受信部から前記リーダ・ライタに送信し、
前記リーダ・ライタを制御するPCは、予め記憶している電源電圧調整用データを参照して前記センサチップの前記電源電圧監視部で計測した電源電圧が所定の範囲内に収まるように前記リーダ・ライタの送信出力を変化させることを特徴とする計測システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の計測システムにおいて、前記電源電圧監視部は、前記センサ検出信号を2値化する回路と兼用であることを特徴とする計測システム。
【請求項9】
請求項7に記載の計測システムにおいて、前記リーダ・ライタの送信出力の変化を前記リーダ・ライタの前記第1の送受信部が有する共振回路のインピーダンスを調整することによって実現することを特徴とする計測システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の計測システムにおいて、前記センサは光センサ、イオンセンサ、又は温度センサであることを特徴とする計測システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の計測システムにおいて、試料溶液を収める容器をさらに有し、前記センサチップは前記容器内に設置され、前記センサは前記容器の内部で生じる光を検出する光センサであることを特徴とする計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−141131(P2007−141131A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−336899(P2005−336899)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】