説明

一官能性、二官能性、および多官能性ホスフィン化フェノール、その誘導体、ならびにその調製方法

【課題】硬化耐燃性樹脂の調製に有用な新規なホスフィン化化合物を提供する。
【解決手段】一官能性、二官能性、および多官能性フェノールの新規なホスフィン化化合物、その誘導体、ならびにその調製方法。新規なホスフィン化化合物の例を下記に示す。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一官能性、二官能性、および多官能性フェノールの新規なホスフィン化化合物(phosphinated compounds)(または一官能性、二官能性、および多官能性ホスフィン化フェノール)、ならびにそのエポキシ樹脂、ベンゾキサジン、およびシアネート誘導体、ならびにその調製方法に関する。該ホスフィン化化合物をさらに用いて、硬化耐燃性樹脂を調製することができる。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は、優れた電気特性、寸法安定性、高温耐性、耐溶剤性、低費用、および高接着性の利点を有し、またプリント回路基板および集積回路パッケージ材料として有用である。しかしながら、一般的なプラスチック材料と同様、結合した炭素、水素、および酸素原子から形成されたエポキシ樹脂は易燃性であり、かつ危険である。したがって、世界の様々な地域で、電子材料および情報材料の使用の厳しい耐燃性基準が設定されている。
【0003】
エポキシ樹脂を難燃性にするための一般的な従来技術手法は、エポキシ樹脂への臭素原子の導入によるものである。臭素含有エポキシ樹脂は、耐燃特性に優れているため、耐燃特性を要する電子材料において広く用いられている。しかしながら、臭素含有エポキシ樹脂の燃焼プロセスにおいては、臭化水素、テトラブロモジベンゾ-p-ダイオキシン、およびテトラブロモジベンゾフランなどの腐食性かつ毒性の物質が放出される。
【0004】
ハロゲン含有化合物に加えて、有機リン化合物も高い難燃性を有する。燃焼中に、ホスフィン化耐燃剤は、炭化水素の水素が空気中の酸素と反応して水を形成するプロセスを介して、ポリマー材料の脱水を促進する。結果として、周囲温度は燃焼温度よりも低くなり、それによって、耐燃効果を達成する。一方、高温で加熱した場合、ホスフィン化耐燃剤は、リン酸を遊離しながら分解し、これによりポリマーの炭酸化を促進し、かくして、コークスの不燃層を形成する。さらに、リン酸は高温でさらに脱水、エステル化されて、ポリリン酸を形成し、コンビュレント(comburent)の表面を覆い、かくして、酸素ガスがポリマーの未燃焼の内部側に進入するのを防止し、揮発性のクラッキング生成物の放出を阻害することにより、保護効果を発揮する。
【0005】
リンを導入するために2つの方法が用いられている:一方はホスフィン化エポキシ樹脂を直接合成することであり、他方はホスフィン化硬化剤とエポキシ樹脂とを均一に混合することである。本発明は、耐燃効果を達成するために、エポキシ樹脂と混合して、エポキシ樹脂を硬化させるためのホスフィン化硬化剤を提供する。
【0006】
ホスフィン化誘導体のうち、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド(DOPO)は、ベンゾキノン[非特許文献1]、オキシラン[非特許文献2]、マレイン酸[非特許文献3]、ビスマレイミド[非特許文献4]、ジアミノベンゾフェノン[非特許文献5-6]、およびテレフタルジカルボキサルデヒド[非特許文献7]などの電子欠損化合物との求核付加に供されるため、それは特に注目されている。
【0007】
2001年に、Wangらは、DOPOが、DOPOの活性水素の付加を介して二官能性または多官能性エポキシ樹脂のエポキシ基と直接反応して、高いガラス転移温度(Tg)、高い熱分解温度および高い弾力性を有し、環境に優しい半硬化耐燃性エポキシ樹脂を形成することができると提唱した。2005年には、Linらが、高いガラス転移温度を有する耐燃性エポキシ樹脂が得られる、三官能性硬化剤(ドポトリオール[非特許文献8]およびドポ-ta[非特許文献9])の合成方法および用途を開示した。しかしながら、ドポトリオール、すなわち、ロゾール酸の合成のための原料は費用が高く、したがって、該方法は工業用途においては非経済的である。その後、2008年に、Linらは、ずっと安価な、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン(DHBP)およびDOPOを用いて、フェノール/アニリンと反応させ、ホスフィン化耐燃性ドポトリオールおよびドポジオールアミンを合成することに成功した[非特許文献10]。硬化エポキシ樹脂は、優れたガラス転移温度、熱安定性、寸法安定性および耐燃性を有する。しかしながら、ドポトリオールおよびドポジオールアミンの溶解度は低い。
【0008】
ノボラック樹脂は、工業用途で用いられた初めての合成樹脂であった[非特許文献11]。ノボラック樹脂は、原料が容易に入手可能であり、その吸水率が低く、その加工性に優れ、硬化樹脂の性能が多くの実用的要求を満足するため、成型プラスチック、絶縁材、塗料、および木材接着に広く用いられている。近年、安全基準がますます厳しくなっていることにより、特に、空港、鉄道駅、学校、病院、および他の公共建築物などの施設ならびに航空機内部での用途において、好ましい難燃特性、非毒性特性、低発煙特性を有するノボラック樹脂への関心が高まっている。
【0009】
ビスフェノールAは、酸により触媒されて、フェノールおよび不安定な4-イソプロペニルフェノールに分解されることが文献で指摘されている。本発明においては、DOPOとビスフェノールAとを、酸触媒の存在下で反応させて、DOPOを新しく形成された4-イソプロペニルフェノールに結合させ、一官能性フェノール化合物を合成する。次に、DOPOと、三官能性フェノールである1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンとを、酸触媒の存在下で反応させて、二官能性フェノール化合物を形成する。加えて、本発明では、DOPOと、多官能性ビスフェノールAノボラック樹脂(BPAノボラック)とを酸触媒の存在下で反応させて、ホスフィン化多官能性ビスフェノールAノボラック樹脂を合成する。本発明では、ホスフィン化フェノールは、さらに反応に供されて、エポキシ樹脂、ベンゾキサジンおよびシアネート誘導体を形成する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Wang, C.S. and Lin, C.H. Polymer 1999; 40; 747
【非特許文献2】Lin, C.H. and Wang, C.S. Polymer., 2001, 42, 1869
【非特許文献3】Wang, C.S.; Lin, C.H. and Wu, C.Y. J. Appl. Polym. Sci. 2000, 78, 228
【非特許文献4】Lin, C.H. and Wang, C.S. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2000, 38, 2260
【非特許文献5】Liu, Y.L. and Tsai, S.H. Polymer 2002; 43; 5757
【非特許文献6】Wu, C.S.; Liu, Y.L. and Chiu, Y.S. Polymer 2002; 43; 1773
【非特許文献7】Liu, Y.L.; Wang, C.S.; Hsu, K.Y. and Chang, T.C. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2002, 40, 2329
【非特許文献8】Lin, C.H.; Cai, S.X. and Lin, C.H. J. Polym. Sci. Polym. Chem. 2005, 43, 5971
【非特許文献9】Cai, S.X. and Lin, C.H. J. Polym. Sci. Polym. Chem. 2005, 43, 2862
【非特許文献10】Lin, C.H.; Lin, T.L.; Chang S.L.; Dai, S.H. A.; Cheng, R.J.; Hwang, K.U.; Tu, A.P.; Su, W.C. J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem. 2008, 46, 7898
【非特許文献11】Andrew J.C. and Julia L.L. J. Org. Chem. 1997, 62, 1058
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、一官能性、二官能性、および多官能性フェノールの新規ホスフィン化化合物、ならびに、そのエポキシ樹脂、ベンゾキサジンおよびシアネート誘導体の調製方法を対象とする。該ホスフィン化化合物をさらに用いて、硬化耐燃性樹脂を調製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】化合物Aの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】化合物Eの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】化合物P-BNP-2aの31P NMR反応追跡スペクトルを示す図である。図中、時間はそれぞれ、(a)5分、(b)10分、(c)15分、(d)20分、および(e)25分である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書および特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、本文が明確に別途指示しない限り、複数形を含むものとする。本明細書に提供される任意かつ全ての例、または例を示す用語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより良く明示することを意図するものであり、別途特許請求されない限り、本発明の範囲に対して制限を課すものではない。本明細書中の言語は、本発明の実施にとって必須の任意の特許請求されていない要素を指示するものと解釈されるべきではない。
【0014】
[一官能性および二官能性フェノールならびにノボラック樹脂の新規ホスフィン化化合物]
本発明は、以下の化学式:
【化1】

【0015】
(式中、
Y1〜Y4は各々独立に、H、C1〜C6アルキルまたはフェニル、好ましくは、メチルであり、
R0およびR4は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、
nは1〜10の整数である)
により表される構造を有するホスフィン化フェノール化合物を開示する。
【0016】
式(I)の化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHである場合、式(I)の化合物の構造式は、化合物Aの一官能性ホスフィン化フェノールであってよい。
【0017】
【化2】

【0018】
式(II)の化合物のY1〜Y4がCH3であり、R1およびR2がHであり、中央のベンゼン環上の置換基がメタ位の関係にある場合、式(II)の化合物の構造式は、化合物Bの一官能性ホスフィン化フェノールであってよい。
【0019】
【化3】

【0020】
式(II)の化合物のY1〜Y4がCH3であり、R1およびR2がCH3であり、中央のベンゼン環上の置換基がパラ位の関係にある場合、式(II)の化合物の構造式は、化合物Cの一官能性ホスフィン化フェノールであってよい。
【0021】
【化4】

【0022】
式(III)の化合物のY1〜Y3がCH3である場合、式(III)の化合物の構造式は、化合物Dの二官能性ホスフィン化フェノールであってよい。
【0023】
【化5】

【0024】
式(IV)の化合物のY1がCH3であり、R1〜R4がHである場合、式(IV)の化合物の構造式は、化合物Eの二官能性ホスフィン化フェノール(既知の化合物である)であってよい。
【0025】
【化6】

【0026】
式(V)の化合物のR0がHである場合、式(V)の化合物の構造式は、式P-BPNのホスフィン化ノボラック樹脂であってよい。
【0027】
【化7】

【0028】
P-BPNの分子量がより大きい場合、対応する硬化生成物のガラス転移温度がより高いことを、本発明の実施態様から知ることができる。
【0029】
[一官能性および二官能性フェノールならびにノボラック樹脂の新規ホスフィン化化合物の調製方法]
本発明は、酸触媒の存在下で、以下の式:
【0030】
【化8】

【0031】
のDOPO化合物を、以下の式:
【0032】
【化9】

【0033】
(式中、Y1〜Y4は各々独立に、H、C1〜C6アルキルまたはフェニル、好ましくは、メチルであり、R0〜R6は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、mは1〜10の整数である)
のフェノール化合物からなる群から選択される化合物と反応させることを含む、一官能性、二官能性、または多官能性ホスフィン化フェノールを調製するための方法を提供する。
【0034】
本発明による方法においては、酸触媒を、酢酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、メタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、オルトアニリン酸、3-ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)、フッ化水素(HF)、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、硝酸(HNO3)、およびリン酸(H3PO4)からなる群から選択することができる。
【0035】
本発明による方法において、酸触媒の量は、フェノール化合物の量の0.1質量%〜10質量%、好ましくは、1質量%〜5質量%の範囲にある。
【0036】
本発明による方法において、反応時間は、6〜24時間、好ましくは、12〜20時間である。
【0037】
本発明による方法において、反応温度は、60℃〜150℃の範囲にある。
【0038】
本発明による方法においては、反応を、溶媒の存在下または非存在下で行うことができる。反応を溶媒の存在下で行う場合、該溶媒を、エトキシエタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOW PM)、ジオキサン、またはその組合せから選択することができる。
【0039】
本発明による方法においては、フェノール化合物が、Y1およびY2がCH3であり、R1〜R4がHである式(I)-aの化合物である場合、化学反応式は以下の通りであってよく、得られる生成物は化合物Aの一官能性ホスフィン化フェノールである。
【0040】
【化10】

【0041】
本発明による方法において、フェノール化合物が、Y1〜Y4がCH3であり、R1〜R4がHであり、中央のベンゼン環上の置換基がメタ位の関係にある式(II)-aの化合物である場合、化学反応式は以下の通りであってよく、得られる生成物は化合物Bの一官能性ホスフィン化フェノールである。
【0042】
【化11】

【0043】
本発明による方法において、フェノール化合物が、Y1〜Y4がCH3であり、R1〜R4がCH3であり、中央のベンゼン環上の置換基がパラ位の関係にある式(II)-aの化合物である場合、化学反応式は以下の通りであってよく、得られる生成物は化合物Cの一官能性ホスフィン化フェノールCである。
【0044】
【化12】

【0045】
本発明による方法において、フェノール化合物が、Y1〜Y3がCH3である式(III)-aの化合物である場合、化学反応式は以下の通りであってよく、得られる生成物は化合物Dの二官能性ホスフィン化フェノールである。
【0046】
【化13】

【0047】
本発明による方法において、フェノール化合物が、Y1がCH3であり、R1〜R6がHである式(IV)-aの化合物である場合、化学反応式は以下の通りであってよく、得られる生成物は化合物Eの二官能性ホスフィン化フェノールである。
【0048】
【化14】

【0049】
本発明による方法において、フェノール化合物が、R0がHである式(V)-aの化合物である場合、得られる生成物は式P-BPNのホスフィン化ノボラック樹脂である。
【0050】
【化15】

【0051】
さまざまな触媒、触媒量および反応温度の反応環境で、さまざまな分子量を有する式P-BPNの化合物を生成することができることを、本発明の実施態様から知ることができる。触媒の量を4%から2%に減少させた場合、高分子量を有する式P-BPNの化合物が得られ、DOW PMを溶媒として用いる場合、より大きい分子量を有する化合物P-BPNが得られる。
【0052】
本発明の応用例において、エポキシ樹脂の硬化剤として、さまざまな分子量を有する式P-BPNのホスフィン化化合物を用いることができ、その場合には、硬化生成物がUL-94燃焼性試験において耐燃性レベルV-0を満たす。単に、硬化剤として式BPNの無リン化合物を用いる場合、硬化生成物はUL-94燃焼性試験において完全に燃焼する。加えて、式P-BPNの化合物の分子量がより大きい場合、対応する硬化生成物のガラス転移温度はより高くなる。
【0053】
[新規P-BPN誘導体]
本発明はさらに、以下の式:
【0054】
【化16】

【0055】
(式中、R0はH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、RはC1〜C12アルキル、フェニル、プロペニル、N≡C-C6H4-およびHC≡C-O-C6H4-からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)
の構造を有するP-BPN誘導体を開示する。
【0056】
式P-BPN-EPの化合物のR0がHである場合、式P-BPN-EPの化合物の構造式は、式P-BPN-EP-1の化合物であってよい。
【0057】
【化17】

【0058】
式P-BPN-BZの化合物のRがCH3である場合、式P-BPN-BZの化合物の構造式は、式P-BPN-BZ-1の化合物であってよい。
【0059】
【化18】

【0060】
式P-BPN-OCNの化合物のR0がHである場合、式P-BPN-OCNの化合物の構造式は、式P-BPN-OCN-1の化合物であってよい。
【0061】
【化19】

【0062】
[新規P-BPN誘導体の調製方法]
本発明は、エポキシ樹脂誘導体(P-BPN-EP)、ベンゾキサジン誘導体(P-BPN-BZ)、またはシアネート誘導体(P-BPN-OCN)であってよい、新規P-BPN誘導体の調製方法を提供し、その化学反応は以下に示する通りである:
【0063】
【化20】

【0064】
(式中、R0はH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、RはC1〜C12アルキル、フェニル、プロペニル、N≡C-C6H4-およびHC≡C-O-C6H4-からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)。
【0065】
本発明による方法において、式P-BPNの化合物のR0がHである場合、得られる生成物はそれぞれ、式P-BPN-EP-1のエポキシ樹脂誘導体、式P-BPN-BZ-1のベンゾキサジン誘導体、または式P-BPN-OCN-1のシアネート誘導体であってよい。
【0066】
【化21】

【0067】
【化22】

【0068】
[新規硬化剤を含有するエポキシ樹脂]
本発明はさらに、一官能性、二官能性、多官能性フェノール、ノボラック樹脂のホスフィン化化合物、および式P-BPNの誘導体から選択される1つの化合物である硬化剤を含有するエポキシ樹脂を提供する。
【実施例】
【0069】
以下の実施態様を用いて、本発明をさらに例示するが、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の精神を逸脱することなく当業者によって達成される任意の改変および変更が、本発明の範囲内にある。
【0070】
(実施例1):化合物Aの合成
【0071】
【化23】

【0072】
一官能性ホスフィン化フェノール(化合物A)を、酸触媒の存在下でのビスフェノールA(BPA)と過剰のDOPO(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン10-オキシド)との反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、22.83g(0.1モル)のBPA、および63.85g(0.3モル)のDOPO、0.92 g(BPAの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加し、反応温度を140℃に上昇させた。反応系の温度を140℃に維持した。反応の12時間後、沈降が完了するまで撹拌しながらエタノールを滴下添加した。混合物を吸引濾過し、沈殿物を濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、110℃で乾燥させたところ、化合物Aが得られた。収率は75%であった。化合物Aの分子式はC21H19O3Pであり、高分解能質量分析計により分子量は350.3522であると特性評価された。元素分析の結果は、C:71.65%、およびH:5.65%であった。化合物Aの1H NMRスペクトルを、図1に示す。
【0073】
(実施例2):化合物Bの合成
【0074】
【化24】

【0075】
一官能性ホスフィン化フェノール(化合物B)を、酸触媒の存在下でのBHPB(1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン)と過剰のDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、34.65g(0.1モル)のBHPB、64.85g(0.3モル)のDOPO、および1.39g(BHPBの4質量%)の硫酸を添加し、反応温度を150℃に上昇させた。反応系の温度を150℃に維持した。18時間後、沈降が完了するまで撹拌しながらエタノールを滴下添加した。混合物を吸引濾過し、沈殿物を濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、110℃で乾燥させたところ、化合物Bが得られた。収率は53%であった。化合物Bの分子式はC30H29O3Pであり、高分解能質量分析計により分子量は468.5211であると特性評価された。元素分析の結果は、C:76.61%、およびH:6.45%であった。
【0076】
(実施例3):化合物Cの合成
【0077】
【化25】

【0078】
一官能性ホスフィン化フェノール(化合物C)を、酸触媒の存在下でのBHDMP(α,α'-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン)と過剰のDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、40.26g(0.1モル)のBHDMP、64.85g(0.3モル)のDOPO、および3.22g(BHDMPの8質量%)のメタンスルホン酸を添加し、反応温度を180℃に上昇させた。反応系の温度を180℃に維持した。20時間後、沈降が完了するまで撹拌しながらエタノールを滴下添加した。混合物を吸引濾過し、沈殿物を濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、110℃で乾燥させたところ、化合物Cが得られた。収率は65%であった。化合物Cの分子式はC32H33O3Pであり、高分解能質量分析計により分子量は496.5823であると特性評価された。元素分析の結果は、C:77.21%、およびH:6.87%であった。
【0079】
(実施例4):化合物Dの合成
【0080】
【化26】

【0081】
二官能性ホスフィン化フェノール(化合物D)を、酸触媒の存在下で(トリスフェノール、PA)モノマーと過剰のDOPOとを反応させることによって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、42.45g(0.1モル)のPA、63.85g(0.3モル)のDOPO、および1.82g(PAの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加し、反応温度を140℃に上昇させた。反応系の温度を140℃に維持した。16時間後、沈降が完了するまで撹拌しながらエタノールを滴下添加した。混合物を吸引濾過し、沈殿物を濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、110℃で乾燥させたところ、化合物Dが得られた。収率は78%であった。化合物Dの分子式はC35H31O4Pであり、高分解能質量分析計により分子量は546.5928であると特性評価された。元素分析の結果は、C:76.77%、およびH:5.88%であった。
【0082】
(実施例5):化合物Eの合成
【0083】
【化27】

【0084】
二官能性ホスフィン化フェノール(化合物E)を、酸触媒の存在下での三官能性フェノールモノマーTHPE(1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン)と過剰のDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、30.64g(0.1モル)のTHPE、63.85g(0.3モル)のDOPO、および1.23g(THPEの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加し、反応温度を130℃に上昇させた。反応系の温度を130℃に維持した。12時間後、沈降が完了するまで撹拌しながらエタノールを滴下添加した。混合物を吸引濾過し、沈殿物を濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、110℃で乾燥させたところ、化合物Eが得られた。収率は58%であった。化合物Eの分子式はC26H21O4Pであり、高分解能質量分析計により分子量は428.4213であると特性評価された。元素分析の結果は、C:72.98%、およびH:5.01%であった。化合物Eの1H NMRスペクトルを図2に示す。
【0085】
(実施例6):化合物P-BPN-2aの合成
2%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-2a)を、酸触媒の存在下でのビスフェノールAノボラック(BPN)とDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、8.102gのDOPOおよび2g(BPNの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を140℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、真空オーブン中、100℃で乾燥させた。
【0086】
図3は、31P NMR反応追跡スペクトルである。5分には、生成物の生成が約43ppmで観察され、未反応のDOPOが16〜23ppmであり、また25分には、DOPOの特徴的なピークが完全に消失し、生成物のピークのみが観察され、すなわち、前記化合物が成功裏かつ完全に合成されていることを、図5から知ることができる。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0087】
【化28】

【0088】
(実施例7):化合物P-BPN-3aの合成
3%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-3a)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、13.227gのDOPO、および2g(BPNの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を140℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-3aが得られた。化合物P-BPN-3aのGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0089】
(実施例8):化合物P-BPN-5aの合成
5%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-5a)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、26.765gのDOPO、および2g(BPNの4質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を140℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-5aが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0090】
(実施例9):化合物P-BPN-2bの合成
2%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-2b)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、8.102gのDOPO、および1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を130℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-2bが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0091】
(実施例10):化合物P-BPN-3bの合成
3%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-3b)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、13.227gのDOPO、および1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を130℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-3bが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0092】
(実施例11):化合物P-BPN-5bの合成
5%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-5b)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、26.765gのDOPO、および1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸を添加した。反応系の温度を130℃に維持した。12時間後、粘着性の反応混合物を水性メタノール溶液で洗浄して、残留するトルエンスルホン酸を除去し、吸引濾過し、濾過および分離し、濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-5bが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0093】
(実施例12):化合物P-BPN-2PMの合成
2%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-2PM)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、8.102gのDOPO、1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、反応温度を100℃に上昇させた。12時間後、沈降のために撹拌しながら混合物を水中に滴下添加し、吸引濾過した。濾過ケーキを大量の脱イオン水で洗浄した後、吸引濾過し、濾過および分離した。濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-2PMが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0094】
(実施例13):化合物P-BPN-3PMの合成
3%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-3PM)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、13.227gのDOPO、1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、反応温度を100℃に上昇させた。12時間後、沈降のために撹拌しながら混合物を水中に滴下添加し、吸引濾過した。濾過ケーキを大量の脱イオン水で洗浄した後、吸引濾過し、濾過および分離した。濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-3PMが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0095】
(実施例14):化合物P-BPN-5PMの合成
5%のリン含量を有するホスフィン化ノボラック樹脂(P-BPN-5PM)を、酸触媒の存在下でのBPNとDOPOとの反応によって取得した。その合成工程は以下の通りであった。温度指示装置を備えた0.5Lの三ツ口反応器に、50gのBPN、26.765gのDOPO、1g(BPNの2質量%)のトルエンスルホン酸、および溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを添加し、反応温度を100℃に上昇させた。12時間後、沈降のために撹拌しながら混合物を水中に滴下添加し、吸引濾過した。濾過ケーキを大量の脱イオン水で洗浄した後、吸引濾過し、濾過および分離した。濾過ケーキを真空オーブン中、100℃で乾燥させたところ、化合物P-BPN-5PMが得られた。生成物のGPC分析の結果を、Table 1(表1)に示す。
【0096】
触媒の量を4%から2%に減少させた場合、対応するP-BPN化合物の分子量が有意に増加する、すなわち、触媒量の減少が高分子量の維持にとって有益であることが、実施例6〜14の生成物のGPCの結果により示唆される。溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(DOW PM)を添加し、反応温度を100℃に低下させることにより、ずっと大きい分子量を得ることができる。
【0097】
(実施例15):化合物P-BPN-EP-1の合成
【0098】
【化29】

【0099】
21.4gのP-BPN-5bおよび92.5gのエピクロロヒドリンを1Lの反応器に添加し、撹拌して、通常の雰囲気下で均一に混合された溶液を形成させた。反応温度を、190mmHgの絶対圧力で70℃に上昇させ、14.6gの20%水酸化ナトリウム溶液を4時間かけてバッチ式に反応器に添加した。同時に、共沸蒸留により反応器中の水を除去した。反応が完了した後、減圧下でエピクロロヒドリンと溶媒を完全に蒸留除去した。生成物をメチルエチルケトンおよび脱イオン水で溶解した。樹脂中の塩化ナトリウムを水で洗浄除去し、減圧下で溶媒を完全に蒸留除去したところ、ホスフィン化エポキシ樹脂P-BPN-EP-1が得られた。
【0100】
(実施例16):化合物P-BPN-BZ-1の合成
【0101】
【化30】

【0102】
13.98gのホルムアルデヒドを12mLのジオキサン中に溶解し、溶液Aを作った。2.68gのメチルアミンを3mLのジオキサン中に溶解し、溶液Bを作った。溶液Aを100mLの反応器に入れた後、氷浴中に入れ、窒素ガスを供給した。溶液Bを毎秒1滴の速度で反応器に滴下添加し、温度を10℃以下に制御し、滴下後30分間、反応を継続させた。11.98gのホスフィン化化合物P-BPN-5bを反応器に添加した後、温度を還流温度に上昇させ、反応を10時間継続させた。反応が完了した後、溶媒を減圧濃縮器によりポンプで除去した。生成物をCH2Cl2に溶解し、0.1M水酸化ナトリウムで抽出し、脱イオン水で3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムを補給して水を除去し、濾過し、真空オーブン中で乾燥させたところ、化合物P-BPN-5-BZ-1の固体が得られた。収率は85%である。
【0103】
(実施例17):化合物P-BPN-OCN-1の合成
【0104】
【化31】

【0105】
無水アセトン(70g)を1Lの三ツ口反応器に添加した。反応器を-15℃に冷却し、3.102gのBrCNを添加し、撹拌し、同時に、温度を-25℃以下まで低下させた。2.39gのP-BPN-5bと2.62gのEt3Nとを完全に混合し、無水アセトン(100g)中に溶解した後、供給漏斗を介して反応器にゆっくりと滴下添加した。温度を-30℃に維持し、反応を2時間継続させた。反応温度を-30℃に戻した時、反応混合物を脱イオン水中に滴下添加して、臭化アンモニウムを洗浄除去した。濾過した後、得られた沈殿物をCH2Cl2/H2Oで抽出した。有機相を回収し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを除去した後、室温でロータリーエバポレーターによりCH2Cl2を除去したところ、固体のシアネートP-BPN-OCN-1が得られた。
【0106】
[応用例1〜6]
実施例6〜8の3つの硬化剤をエポキシ樹脂のための硬化剤として使用した。用いたエポキシ樹脂はそれぞれ、ビスフェノールAエポキシ樹脂(DGEBA)およびo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(CNE)であった。エポキシ樹脂と硬化剤を、金型内で1:1の当量比で均一に混合し、反応のための硬化促進剤としてイミダゾールを(エポキシ樹脂の量の0.2質量%の量で)添加した。DMAを用いることにより測定されたガラス転移温度およびUL-94試験の結果を、Table 2(表2)にまとめる。全ての硬化生成物が、UL-94燃焼性試験において耐燃性レベルV-0を満たすことを、Table 2(表2)から知ることができる。
【0107】
[応用例7〜12]
実施態様9〜11の3つの硬化剤をエポキシ樹脂のための硬化剤として使用した。用いたエポキシ樹脂はそれぞれ、ビスフェノールAエポキシ樹脂(DGEBA)およびo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(CNE)であった。エポキシ樹脂と硬化剤とを、金型内で1:1の当量比で均一に混合し、反応のための硬化促進剤としてイミダゾールを(エポキシ樹脂に基づいて0.2質量%の量で)添加した。動的機械分析(DMA)を用いることにより測定されたガラス転移温度およびUL-94試験の結果を、Table 2(表2)にまとめる。全ての硬化生成物が、UL-94燃焼性試験において耐燃性レベルV-0を満たすことを、Table 2(表2)から知ることができる。
【0108】
[応用例13〜18]
実施例12〜14の3つの硬化剤をエポキシ樹脂のための硬化剤として使用し、用いたエポキシ樹脂はそれぞれ、ビスフェノールAエポキシ樹脂(DGEBA)およびo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂(CNE)であった。エポキシ樹脂と硬化剤を、金型中で1:1の当量比で均一に混合し、反応のための硬化促進剤としてイミダゾールを(エポキシ樹脂に基づいて0.2質量%の量で)添加した。DMAを用いることにより測定されたガラス転移温度およびUL-94試験の結果を、Table 2(表2)にまとめる。全ての硬化生成物が、UL-94燃焼性試験において耐燃性レベルV-0を満たすことを、Table 2(表2)から知ることができる。
【0109】
P-BPNを耐燃剤として用いる場合、全ての硬化生成物がUL-94燃焼性試験において耐燃性レベルV-0を満たすことを、Table 2(表2)から知ることができる。硬化剤として単に無リン化合物BPNを用いる場合、硬化生成物はUL-94燃焼性試験において完全に燃焼する。加えて、化合物P-BPNの分子量がより大きい場合、対応する硬化生成物のガラス転移温度はより高い。
【0110】
【表1】

【0111】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化1】

(式中、Y1〜Y4は各々独立に、H、C1〜C6アルキルであり、R0〜R4は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、nは1〜10の整数である)
の一官能性、二官能性、または多官能性フェノールのホスフィン化化合物。
【請求項2】
式(I)の化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHである場合、式(I)の化合物の構造式が、化合物Aの一官能性ホスフィン化フェノール:
【化2】

であり、
式(II)の化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHであり、中央のベンゼン環上の置換基がメタ位の関係にある場合、式(II)の化合物の構造式が、化合物Bの一官能性ホスフィン化フェノール:
【化3】

であってよく、
式(II)の化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がCH3であり、中央のベンゼン環上の置換基がパラ位の関係にある場合、式(II)の化合物の構造式が、化合物Cの一官能性ホスフィン化フェノール:
【化4】

であってよく、
式(III)の化合物のY1〜Y3がCH3である場合、式(III)の化合物の構造式が、化合物Dの二官能性ホスフィン化フェノール:
【化5】

であってよく、
式(V)の化合物のR0がHである場合、式(V)の化合物の構造式が、式P-BPN:
【化6】

のホスフィン化ノボラック樹脂であってよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
酸触媒の存在下で、以下の式:
【化7】

を有するDOPO化合物と、以下の式:
【化8】

(式中、Y1〜Y4は各々独立に、HまたはC1〜C6アルキルであり、R0〜R6は各々独立に、H、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、mは1〜10の整数である)
のフェノール化合物からなる群から選択される化合物とを反応させることを含む、一官能性、二官能性、または多官能性ホスフィン化フェノールを調製する方法。
【請求項4】
式(I)-aの化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHである場合、一官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化9】

を有する化合物Aであり、
式(II)-aの化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHであり、中央のベンゼン環上の置換基がメタ位の関係にある場合、一官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化10】

を有する化合物Bであり、
式(II)-aの化合物のY1およびY2がCH3であり、R1およびR2がHであり、中央のベンゼン環上の置換基がパラ位の関係にある場合、一官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化11】

を有する化合物Cであり、
式(III)-aの化合物のY1〜Y3がCH3である場合、二官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化12】

を有する化合物Dであり、
式(IV)-aの化合物のY1がCH3であり、R1〜R6がHである場合、二官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化13】

を有する化合物Eであり、
式(V)-aの化合物のR0がHである場合、多官能性ホスフィン化フェノール生成物が、以下の式:
【化14】

を有する化合物P-BPNである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酸触媒が、酢酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、メタンスルホン酸、フルオロスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、硫酸、オルトアニリン酸、3-ピリジンスルホン酸、スルファニル酸、塩化水素(HCl)、臭化水素(HBr)、ヨウ化水素(HI)、フッ化水素(HF)、トリフルオロ酢酸(CF3COOH)、硝酸(HNO3)、およびリン酸(H3PO4)からなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記酸触媒の量が、フェノール化合物の量の0.1質量%〜10質量%の範囲にある、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
反応温度が60℃〜150℃の範囲にある、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
反応溶媒が、エトキシエタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(DOW PM)、ジオキサン、またはその組合せからなる群から選択される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
以下の式:
【化15】

(式中、R0はH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、RはC1〜C12アルキル、フェニル、プロペニル、N≡C-C6H4-およびHC≡C-O-C6H4-からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)
を有するP-BPN誘導体。
【請求項10】
式P-BPN-EPの化合物のR0がHである場合、式P-BPN-EPの化合物の構造式が、式P-BPN-EP-1の化合物:
【化16】

であり、
式P-BPN-BZの化合物のRがCH3である場合、式P-BPN-BZの化合物の構造式が、式P-BPN-BZ-1の化合物:
【化17】

であり、
式P-BPN-OCNの化合物のR0がHである場合、式P-BPN-OCNの化合物の構造式が、式P-BPN-OCN-1の化合物:
【化18】

である、請求項9に記載のP-BPN誘導体。
【請求項11】
新規P-BPN誘導体が、エポキシ樹脂誘導体(P-BPN-EP)、またはベンゾキサジン誘導体(P-BPN-BZ)、またはシアネート誘導体(P-BPN-OCN)であり、その化学反応が下記:
【化19】

(式中、R0はH、C1〜C6アルキル、C3〜C5シクロアルキル、F、Cl、BrまたはIであり、RはC1〜C12アルキル、フェニル、プロペニル、N≡C-C6H4-およびHC≡C-O-C6H4-からなる群から選択され、nは1〜10の整数である)
に示す通りである、前記誘導体の調製方法。
【請求項12】
P-BPNのR0がHである場合、得られる生成物がそれぞれ、式P-BPN-EP-1のエポキシ樹脂誘導体、式P-BPN-BZ-1のベンゾキサジン誘導体、または式P-BPN-OCN-1のシアネート誘導体:
【化20】

である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1もしくは2に記載の化合物または請求項9もしくは10に記載のP-BPN誘導体である硬化剤を含有するエポキシ樹脂。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−18772(P2013−18772A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−151251(P2012−151251)
【出願日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【出願人】(506187511)國立中興大學 (12)
【Fターム(参考)】