説明

三次元構造材の製造方法

【課題】ブロックの二次元切断をもって、三次元構造材を形成する方法を提供する。
【解決手段】通電状態のニクロム線(40)を二次元方向へ移動させることによってポリウレタンホームのブロック(70)を所定の断面形状を有する少なくとも長手方向軸にフレキシブルな長尺材(2)を切断し、この長尺材を長手方向軸に対し三次元方向に屈曲または湾曲させて保形し、表面に所定の厚みを有する樹脂層(3)を形成して三次元構造材を製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元加工材を用いて、三次元構造材を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、三次元構造材を製造するにあたっては、量産品の場合は、一定の金型に造形材を注入して成形するが(特許文献1)、天井照明枠や各種コーナ材、建築材のような、一品製造の場合はブロック材を丸彫り(三次元加工)して製造するか、三次元加工の部分材を組み合わせで構成する必要がある。例えば、シルバー社会を迎え、家具および調度品の角部および隅部には追突時のけがを避ける意味でクッション材を貼り付ける必要があるが、収まりのよいものは一品製作とならざるを得ない。
【0003】
【特許文献1】特開2002−369986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一品製作の場合は制作費が高価である。そのため、安価なものは量産規格品を使用せざるを得ないが、他の備品との一体感に欠ける問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者は鋭意研究の結果、発泡スチロールの切断にあたっては、発泡スチロールのブロックを目的のカット品に応じた寸法に前もって切断するNCニクロムカッターを使用しているが、かかるカッターを利用してウレタンホームを所定の等断面の長尺材に切り出すと、長尺材は長手方向軸に対してフレキシブルで、これを屈曲または湾曲させることにより三次元に変化させることができ、この表面にウレタン樹脂をもって表皮を形成して保形しておくと、一品製作の三次元構造材が容易に製造できることに着目してなされたもので、
軟質発泡材ブロックを通電状態の熱線を二次元方向へ移動させることによって所定の断面形状を有する長手方向軸にフレキシブルな長尺材を形成する工程と、上記所定の断面形状を有する長尺物を長手方向軸に沿って屈曲または湾曲させて三次元変形体を形成し、保形する工程と、屈曲又は湾曲状態に保持された発泡材からなる三次元変形体の表面に樹 脂層を形成する工程からなることを特徴とする三次元構造材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、簡単な二次元加工により形成したフレキシブルな等断面形状を有するウレタンホーム長尺材は三次元変形可能であるので、所定の形状を保形する保形材の上に1側面を貼着して一体化されて三次元変形体となり、該三次元変形体の保形材への取り付け面を除き、全面又は部分的に、所定の膜厚の表皮樹脂層を形成することにより複雑な三次元構造材を丸彫りすることなく、容易に安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明の工程は、図2に示すように、(1)軟質発泡材としてウレタンホームからなるブロック材70を用意し、図1のNCニクロムカッター装置のニクロムカッター40を用いてブロック材70から三次元変形可能な長尺材2を切断する。
【0008】
(2)該長尺材2は図3−1のように、その長手方向軸に沿って湾曲させて三次元変形体2Aを形成する。
【0009】
(3)予め、設計された三次元構造材を考慮して発泡スチロールのブロック材から上記図1に示すカッター装置を用いて湾曲した保形材1Aを切断して用意して置き、上記三次元変形体2Aの一側面と保形材1Aとを接着剤を介して貼着し、一体化して固定する(図3−1参照)。
【0010】
(4)ついで、上記工程で一体化された三次元変形体2Aの表面にウレタン樹脂塗料を噴霧又は刷毛塗りで塗装し、(5)これを乾燥して仕上げると、図3−2に示す断面を有し、保形材1Aと三次元変形体2Aと表皮樹脂層3とからなる湾曲した三次元構造材が形成される。上記塗装に先立ち、表面に適宜プリコート層を形成してもよい。また、表面樹脂組成を適宜調整し、また、表面樹脂層の膜厚を調整することにより三次元構造材に柔軟性から剛性まで種々の特性を持たせることができるように調整することができる。
【0011】
第2の実施形態は次の通りである。
(1)長尺材2は図2に示すものを使用する。
(2)図2に示す長尺材2は図4−1のように、その長手方向軸に沿って屈曲させて三次元変形体2Bを形成すると、屈曲材が製造できる。
【0012】
(3)そこで、予め、設計された三次元構造体を考慮して発泡スチロールのブロック材から上記図1に示すカッター装置を用いて屈曲した保形材1Bを切断して用意して置き、上記三次元変形体2Aの一側面と保形材1とを接着剤を介して貼着し、一体化して固定する(図4−2参照)。
【0013】
(4)ついで、上記工程で一体化された三次元変形体2Bの表面にウレタン樹脂塗料を噴霧又は刷毛塗りで塗装し、(5)これを乾燥して仕上げると、図4−2に示す断面を有し、保形材1Bと三次元変形体2Bと表皮樹脂層3とからなる湾曲した三次元構造材が形成される。
【0014】
なお、図1はNCニクロムカッター装置の外観斜視図で、本発明の製造方法で使用されるので、以下に詳細に説明する。カッター装置のフレームは上板10と下板12とを備えており、この上板10の一部はテーブル10aとなっているとともに下板12の一部はワーク設置台12aとなっている。このテーブル10aはウレタンホームから製作しようとする発泡スチロールから製作しようとするカット品に対応する図面や型板(図示外)をセットするためのスペースであり、前記ワーク設置台12aは図1で示すように切断しようとする発泡スチロール又はウレタンホームのブロック70をセットするためのスペースである。
【0015】
前記上板10の上面には、前記テーブル10a寄りの位置において読み取り機構14が設けられている。この読み取り機構14は、相互の一端部が回動可能に連結された第一アーム16及び第二アーム22を備えている。この第一アーム16の他端部には前記テーブル10aの上面側へ突出した倣いピン18が固定されており、前記第二アーム22の他端部は前記上板10に対して回動可能に支持されている。そこでこの読み取り機構14の詳細な構成をつぎに説明する。
【0016】
図面からも明らかなように前記第一アーム16と第二アーム22との連結部については、第一アーム16の端部に上向きに固定されている軸20に対して第二アーム22の端部がベアリング30によって回動可能に結合された構造になっている。一方、前記上板10に対する第二アーム22の支持部は、上板10の上面に固定された軸受け部材24に軸26が一体的に結合され、この軸26に第二アーム22の端部がベアリング28によって回動可能に支持された構造となっている。
【0017】
前記第一アーム16に固定されている軸20の上端部にはチェーンスプロケット21がこの軸20と共に回転するように取り付けられており、かつ前記軸受け部材24に結合された軸26の上端部にはチェーンスプロケット27がこの軸26に対して回転自在に支持されている。そしてこれらの両チェーンスプロケット21,27の間にはチェーン32が掛けられている。なお前記チェーンスプロケット27には、その上面側に第一駆動プーリー34が一体に形成された二段構造となっている。また前記第二アーム22の上面には、前記軸26と同軸線上において第二駆動プーリー36が固定されている。
【0018】
図1で示すように前記下板12におけるワーク設置台12aの上方位置には左右一対の作動アーム38が支持機構44によって支持されている。この支持機構44は前記上板10に固定された支持ブラケット45に対して回動可能に支持された左右一対の支持アーム49,50を備え、これらの両支持アーム49,50の下端部に前記作動アーム38の基端部がそれぞれ回動自在に支持されている。なお両作動アーム38の先端部には、前記発泡スチロールのブロック70を切断するためのニクロム線40が張られている。このニクロム線40は図示外の電源から配線を通じて通電されるようになっている。
【0019】
前記支持機構44の詳細な構成を説明すると、まず前記支持ブラケット45の上面には中空軸46が一対の軸受け48によって回動自在に支持されている。この中空軸46の内部には支持軸52が相対的に回転できるように挿入されており、この支持軸52の両端部は前記中空軸46の外にそれぞれ突出している。これらの両突出部に対して前記支持アーム49,50の上端部がそれぞれベアリング54によって回動自在に支持されているとともに、両支持アーム49,50と前記中空軸46の端部とは一体的に結合されている。つまり両支持アーム49,50と中空軸46とは前記支持軸52に対して相対的に回転できるようになっている。
【0020】
前記の両支持アーム49,50の下端部には、前記の両作動アーム38の基端部に固定された軸42がベアリング56によってそれぞれ回動自在に支持されている。また図面の左側に位置する支持アーム49には、前記中空軸46及び支持軸52と同軸線上において第一従動プーリー51が固定されている。しかもこの支持アーム49の側に突出している前記支持軸52の端部には第二従動プーリー58が固定されている。そして前記読み取り機構14の第一駆動プーリー34及び第二駆動プーリー36と、前記第一従動プーリー51及び第二従動プーリー58との個々の間には、図1から明らかなように駆動ワイヤー66,68がそれぞれ掛けられている。
【0021】
前記支持軸52の両端部には駆動側のチェーンスプロケット60がそれぞれ固定されている。一方、前記の両作動アーム38に固定されている個々の軸42には従動側のチェーンスプロケット62がそれぞれ固定されている。そして駆動側の両チェーンスプロケット60と従動側の両チェーンスプロケット62との間にはチェーン64がそれぞれ掛けられている。
【0022】
つづいて切断の操作について説明する。まずこの装置における前記テーブル10aの上に、製作しようとするカット品の図面や型板(図示外)をセットするとともに、同じくカット品の形状に対応した寸法に前もって切断された発泡スチロールのブロック70を図1で示すように前記ワーク設置台12aの上にセットする。そして前記読み取り機構14の第一アーム16を手動操作することにより、前記倣いピン18をテーブル10a上の図面などに倣って図1,2の矢印X1,Y1で示す二次元方向へ移動させる。
【0023】
前記倣いピン18の矢印X1方向への動きは、前記第一アーム16に固定された軸20を前記チェーンスプロケット21と共にその軸線回りに回転させることとなる。このチェーンスプロケット21の回転は、前記チェーン32を通じて前記軸受け部材24に結合されている軸26のチェーンスプロケット27に伝達され、このチェーンスプロケット27及びそれと一体の前記第一駆動プーリー34を回転させる。さらにこの第一駆動プーリー34の回転は、前記駆動ワイヤー66を通じて前記支持機構44の支持アーム49に固定されている第一従動プーリー51に伝達される。この結果、前記中空軸46によって互いに結合されている両支持アーム49,50がこの中空軸46の軸心回りに回動し、それによって前記の両作動アーム38が共に同期して図1の矢印X2で示す方向へ往復動作することとなる。
【0024】
これに対して前記倣いピン18の矢印Y1方向への動きは、前記読み取り機構14の第二アーム22を前記軸受け部材24に結合されている軸26の軸線回りに回動させることとなり、結果的に前記第二駆動プーリー36が軸26の軸心回りに回動操作される。この第二駆動プーリー36の回転は、前記駆動ワイヤー68を通じて前記支持軸52の一端部に固定されている第二従動プーリー58に伝達される。したがってこの支持軸52がその両端部に固定されている前記の両チェーンスプロケット60と共に回転し、この回転が個々のチェーン64を通じて前記の両作動アーム38の軸42に固定されているチェーンスプロケット62にそれぞれ伝達される。これにより両作動アーム38が共に同期してそれぞれの軸42を回動支点とする図1の矢印Y2の方向へ往復作動する。
【0025】
このように前記読み取り機構14の倣いピン18を前記テーブル10a上の水平面内で二次元方向へ操作することにより、前記の両作動アーム38に張られているニクロム線40を前記ワーク設置台12aの上面と直角な垂直面内において二次元方向へ作動させることができる。つまり前記倣いピン18を前記テーブル10aの上面にセットされた図面や型板に倣って操作するだけで、その操作通りに前記ニクロム線40を移動させることができ、通電により加熱状態にあるニクロム線40によって前記発泡スチロールのブロック70を所定の形状に切断することができる。したがって作業者は前記読み取り機構14の操作だけに専念すればよく、文字やマークなどの複雑な形状のカット品でも短時間で、かつ容易に製作することができる。
【0026】
なお、三次元構造材は上記実施例に限らず、保形材1と三次元変形体2を組み合わせて種々の構造が形成できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明方法で使用するNCニクロムカッターの概略斜視図、
【図2】本発明方法の切断工程を示す概要斜視図、
【図3】本発明方法の湾曲工程を示す概要斜視図(3−1)および本発明方法で製造された第1実施例の断面図(3−2)、
【図4】本発明方法の屈曲工程を示す概要斜視図(4−1)および本発明方法で製造された第2実施例の断面図(4−2)、
【符号の説明】
【0028】
1A 保形材 2 長尺材
2A 三次元変形体 2B 三次元変形体
3 表皮樹脂層 40 ニクロムカッター
70 ブロック材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質発泡材ブロックを通電状態の熱線を二次元方向へ移動させることによって所定の断面形状を有する長手方向軸にフレキシブルな長尺材を形成する工程と、
上記所定の断面形状を有する長尺物を長手方向軸に沿って三次元に屈曲または湾曲させて三次元変形体を形成し、保形する工程と、
屈曲又は湾曲状態に保持された発泡材からなる三次元変形体の表面に樹脂層を形成する工程からなることを特徴とする三次元構造材の製造方法。
【請求項2】
軟質発泡材がウレタンホームからなる請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
表面樹脂層がウレタン樹脂からなり、表面樹脂層の膜厚により三次元構造材の柔軟性または剛性を調整する請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
予め成形した保形材にフレキシブルな長尺材を貼り付けて屈曲または湾曲と同時に保形することを特徴とする請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
所定の形状を保形する保形材1と、該保形材の上に1側面を貼着して一体化されたフレキシブルな等断面形状を有するウレタンホーム長尺材からなり、所定の三次元方向に変形させた三次元変形体2と、該三次元変形体の保形材への取り付け面を除き、その全面又は部分的に形成され、所定の膜厚を有する表皮樹脂層3とからなる三次元構造材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−22009(P2007−22009A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210791(P2005−210791)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000250731)龍野コルク工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】