下流uPAR相互作用を阻害するウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)とそのレセプター(uPAR)との複合体に結合するリガンド:診断または治療における同定および使用
二元uPA−uPAR複合体、uPa−uPARを含む三元複合体、およびuPARとuPA以外の他のタンパク質(例えば、インテグリン)との複合体に特異的な抗体または他のリガンドは、uPAおよびuPARがその複合型が相互作用するさらなる分子と相互作用することを阻害する。そのような抗体または他のリガンドは、診断方法および治療方法、特に、癌に対する診断方法および治療方法に使用される。本発明者らは、uPA−uPAR複合体に結合し、かつその下流標的(例えば、インテグリン)との相互作用を阻害するモノクローナル抗体(mAbs)のセットを生成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(発明の分野)
生化学、免疫学および医学の分野にある本発明は、(a)二元uPA−uPAR複合体、(b)uPA−uPARを含む三元複合体および(c)uPARとuPA以外のタンパク質(例えば、インテグリン)の複合体に特異的な抗体(「Abs」)または他のリガンドに関する。これらのAbsまたは非Absリガンドは、uPAとuPARが上記複合体と相互作用するさらなる分子と相互作用することを阻害する。そのようなAbsまたは非Absリガンドは、診断方法および治療方法、特に、癌に対する診断方法および治療方法に使用される。
【背景技術】
【0002】
(背景技術の説明)
インビトロおよびインビボでの研究に由来する証拠の重要な主部は、ウロキナーセプラスミノーゲン活性化因子(uPA)系が転移プロセスの中心であることを確立し、それを癌の薬物開発の有力な標的にしている(非特許文献1)。uPAに加えて、その細胞表面レセプター(uPAR)は、癌の治療剤および診断剤の設計および開発に適切な標的である(非特許文献2)。なぜなら、
(a)uPARは、転移腫瘍細胞および血管形成内皮細胞(「ECs」)で選択的に発現されるが、他の細胞では発現されない;
(b)uPARは、現在強力な薬物を開発する努力の目的である転移に必要な数種の細胞外経路および細胞内経路における重要な関係物である;そして
(c)uPA経路に沿って数種の異なる点で干渉することが可能である
からである。したがって、uPAおよびuPARは、多くの異なる型の腫瘍/癌に対して有用な診断薬および治療薬の開発に有力な標的である。
【0003】
(uPA/uPAR系および癌)
転移および新脈管形成は、腫瘍細胞およびECsの浸潤性プロセスおよび遊走性プロセスと特徴付ける多くの共通の機能的特徴を共有する。これらの特徴としては、(1)プロテアーゼおよびインテグリン発現のアップレギュレーション、(2)細胞−細胞および細胞−マトトックス接触の減少、(3)成長因子および分化因子に対する応答性の増加、ならびに(4)細胞外マトリックス(ECM)および基底膜(BasM)の再構築が挙げられる。これらのすべてが腫瘍増殖に寄与する。
【0004】
uPA「系」(これは、セリンプロテアーゼuPAを含む)、そのレセプターuPAR、およびその特異的セルピンインヒビターであるプラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1型(PAI−1)は、多くのこれらの活性において中心的役割を果たす。この系の活性は、
(1)カスケードを惹起しプラスミノーゲンの活性化を生じ、数種のプロメタロプロテアーゼ(proMMPs)を活性化すること
(2)潜在性成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子−2(FGF−2)、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)およびトランスホーミング増殖因子−β(TGFβ))を放出しプロセシングすること
(3)(a)ECMの成分(例えば、ビトロネクチン(Vn)およびフィブロネクチン(Fn)との相互作用)
(b)数種のインテグリン(α5β1およびαvβ3が挙げられる)との直接的相互作用、ならびに
(c)細胞運動を促進するためにBasMおよびECMを再構築すること
に関与する。さらに、uPA系はまた、新脈管形成において役割を果たし得る局在化フィブリンの代謝回転を惹起し得る。
【0005】
uPAおよびuPARの発現は、多くの腫瘍型(グリア芽腫、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肝細胞癌および腎細胞癌が挙げられる)において示されてきた(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。uPAおよびuPARの発現は、典型的に、より侵攻型の疾患で大きい。腫瘍細胞では、この発現は、多くの場合、腫瘍の浸潤性の前面で最も高い。(非特許文献6;非特許文献7)。乳癌、結腸癌および腎細胞癌の浸潤性前面に関連する血管中のuPARに対する強力な免疫組織化学的染色が報告されている(非特許文献8;非特許文献9)。結腸癌研究において、uPARはVEGFとともに局在する。uPAおよびuPARの発現はまた、数種の腫瘍型における腫瘍関連マクロファージで観察されている(非特許文献10;非特許文献11)。uPAは、単球に対して化学走性であり、これらの細胞の接着および移動の両方を媒介する。接着および移動は、uPARの占有のみを必要とするが、uPA触媒活性は必要としない。したがって、uPA系は、複数の腫瘍に関連する細胞型に作用することによって腫瘍増殖に寄与すると考えられる。
【0006】
数件の最近の研究は、同系の系においてuPARに対するuPAの結合を阻害することの治療的潜在性を評価している。アデノウイルスをコードするuPAのマウスアミノ末端フラグメント(「ATF」と短縮される――これは、uPA結合領域を含むuPAのドメインである)の腫瘍への直接送達は、(a)新生血管形成の抑制および(b)腫瘍増殖の停止を生じる(非特許文献12)。種「特異性」に起因して、マウスATFは、マウス宿主ECsおよび白血球にのみ結合し、ヒト腫瘍細胞には結合しないと期待される。これは、腫瘍阻害が宿主の血管形成応答の抑制を通して媒介されたことを示す。最後に、本発明者の数人とS.RabbaniおよびJ.Gladuとの間の共同研究は、最近、ラットuPARの100残基フラグメントに対して生じたポリクローナルAbがMat BIII細胞株の細胞から増殖したラットの乳房の腫瘍に選択的に局在することを示した(非特許文献13)。このポリクローナル抗体は、腫瘍増殖を完全に阻害し、腫瘍退縮をもたらした。
【0007】
不運にも、治療目的および診断目的のためにuPA系を標的にすることの有望さにもかかわらず、研究努力は、臨床に適した薬剤の開発を生じていない。低分子アプローチは、(1)タンパク質−タンパク質相互作用(例えば、uPA−uPARまたはuPAR−インテグリン)を強力に阻害することの困難さ、および(2)医薬品化学の努力に従う適切な手掛かりまたは構造的情報の欠如によって阻まれた。数種のuPA−uPAR相互作用の強力なペプチドインヒビターが同定されているが、これらは、ペプチドの典型的な薬理学特性の乏しさに苦しみ、そして細胞ベースのアッセイでさえ活性についての必要なレベルが示されていない(非特許文献14)。
【非特許文献1】Mazar,Apら,Angioganesis,1999年,3,p.15−32
【非特許文献2】Mazar,AP,Anti−Cancer Drugs,2001年,12,p.397−400
【非特許文献3】Mizukami IFら,Clin Immunol and Immunopathol,1994年,71,p.96−104
【非特許文献4】Hsu DWら,Am J Pathol,1995年,147,p.114−23
【非特許文献5】de Witte JHら,Br J Cancer,1999年,79,p.1190−8
【非特許文献6】Buo,Lら,Human Pathol,1995年,26,p.1133−1138
【非特許文献7】Yamamoto Mら,Cancer Res,1994年,4,p.5016−5020
【非特許文献8】Bastholm Lら、Appl Immunohistochem Mol Morphol,7,p.39−47
【非特許文献9】Nakata Sら,Int.J.Cancer,1998年,79,p.179−186
【非特許文献10】Ohtani Hら,Int J Cancer,1995年,62,p.691−6
【非特許文献11】Xu Yら,Hum Pathol,1997年,28,p.206−13
【非特許文献12】Li Hら,Gene Ther,1998年,5,p.1105−1113
【非特許文献13】Rabbani SAら,Cnacer Res,2002年,62,p.2390−97
【非特許文献14】Ploug Mら,Biochemistry,2001年,40,p.12157−68
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明者らは、uPA−uPAR複合体に結合し、かつその下流標的(例えば、インテグリン)との相互作用を阻害するモノクローナル抗体(mAbs)のセットを生成した。そのような阻害は、腫瘍増殖および腫瘍転移を阻害すると期待される。これらのmAbsは、「裸の」抗体としての有用性、ならびに腫瘍に対する治療剤および造影剤を標的することについての有用性を有し得る。uPARを標的する数種の抗体は、癌増殖の動物モデル(A2780卵巣癌モデルおよびA549肺癌モデル)において有効である。これらのmAbsによって認識されるエピトープは、uPAR内のペプチド領域である。それゆえ、これらの領域に対応するかまたはこれらの領域に由来するuPARペプチドは、uPARと下流タンパク質との相互作用のアンタゴニストとして有用である。
【0009】
腫瘍細胞および血管形成ECsについて、細胞移動および浸潤性のプロセスにおいて選択的利点を得ることは一般的である。この利点は、少なくとも部分的に、細胞のその細胞表面上でのuPAR分子の発現から生じ、これらのuPAR分子は内因的に生成されたリガンドであるuPAに結合することによって飽和される。
【0010】
したがって、uPA−uPARを標的し、好ましくはuPA−uPARと下流標的との相互作用を阻害するmAbs、ペプチドまたは他の化学物質は、癌の処置および/または診断に有用である。uPA−uPAR、またはuPAR単独の好ましい下流リガンドとしては、インテグリン、低密度リポタンパクレセプター関連タンパク質(LPR)ならびに他の結合パートナーが挙げられる。これらの下流リガンドのいくつかは、細胞シグナル伝達、移動および/または浸潤を媒介し得る。
【0011】
本発明者らは、リガンドで占有されたuPARに特異的に結合し、したがってリガンドの存在にかかわらずuPARに結合し得る例示的分子としての役割を果たす2つのmAbs(ATN−615およびATN−658)を生成し、研究した。mAbsは、腫瘍または病理においてuPA系が役割を果たす他の疾患組織において占有されたuPARおよび占有されていないuPARの両方を検出し得る。好ましいAbsまたは他の非Abリガンドは、uPARのuPA結合部位に結合しないものである。
【0012】
本発明者らは、これらのAbsが結合するエピトープを同定した。そのようなペプチド、あるいはこれらのエピトープの三次元構造を保持する天然ペプチドもしくは合成ペプチドまたはペプチド誘導体は、治療剤および/または診断剤として有用である。これらのエピトープに基づいて同定される数種のペプチド配列が本明細書に開示される。
【0013】
さらに、本発明者らは、ATN−615およびATN−658の特徴を模倣するAbsを同定する方法を開発した。この方法は、ATN−615およびATN−658によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合を認識し結合するヒト化抗体または完全ヒト抗体を開発するために使用され得る。そのようなATN−615およびATN−658の模倣物(ATN−658の模倣物は特に強力な抗腫瘍活性を有する)が、治療剤および/または診断剤として本明細書に含まれる。
【0014】
本発明はさらに、uPAの結合を阻害することなくuPARに結合する特性を有する高分子(Abs、抗原結合フラグメント(例えば、単鎖Abs=(scFv))、非Abポリペプチドおよびペプチド、アプタマーなどを含む)ならびに有機低分子に関する。これらの分子のいくつかは、uPA−uPARまたはuPAR単独のいずれか下流相互作用を干渉する。
【0015】
uPA−uPAR相互作用を標的する特定の組成物に加えて、本発明はまた、uPA−uPARに排他的に結合するかまたはuPARの下流相互作用を阻害するAbsを検出するための方法に関する。したがって、本発明は、これらのuPA−uPAR複合体に結合する分子を同定する方法を包含する。この方法は、uPA/uPAR系の他の成分または複合体に結合する分子を検出するために変更され得る。例えば、その天然のインヒビターPAI−1に結合されるuPAはuPARにも結合し、uPA:PAI−1/uPAR三元複合体を形成する。本発明の1つの方法は、この複合体とのみ相互作用するが二元uPA:PAIまたはuPA−uPAR複合体とは相互作用しないリガンドをスクリーニングするためにそのような三元複合体を使用することを包含する。別の方法は、三元複合体と下流標的(例えば、LPR)との相互作用を干渉するインヒビターに関する。
【0016】
そのようなアプローチは、複合体を結合したときに内在的になるリガンド分子を同定するのに適している。
【0017】
さらに、本発明は、uPA−uPAR複合体に結合する(しかし非複合体化uPAにもuPARにも結合しない)分子、またはuPA−uPARもしくはuPARと下流標的ならびに結合リガンドそれ自体との結合を干渉するインヒビターを検出する方法を包含する。そのような結合剤は、Abs、他のタンパク質、ペプチド、アプタマー、低分子などであり得る。この型の特定の実施形態は、FnのuPAR媒介性集合を干渉されるかまたはインテグリンα5β1に対するFnもしくはFnフラグメントの結合を混乱されるuPA−uPARまたはuPARリガンドである。他のマトリックス成分(例えば、ビトロネクチン)の集合の変化もまた、本発明によって包含される。
【0018】
本発明はまた、uPA触媒活性を阻害しないプラスミノーゲン活性化のインヒビターおよびこの活性を有する新規組成物を同定するための方法に関する。
【0019】
より具体的には、本発明は、二元uPA−uPAR複合体に結合するリガンドに関し、このリガンドは、(a)遊離のuPAまたは(b)uPAを認識し結合するuPARの領域に実質的に結合せず、その結果、uPA−uPAR結合を阻害しない。
【0020】
別の実施形態は、uPA−uPARとさらなる分子(X)(例えば、PAI−1)との三元複合体に結合するリガンドを含み、このリガンドは、
(a)uPA−uPAR−X複合体に結合し、
(b)以下:(i)uPA−uPAR複合体にも、(ii)uPA−X複合体にも、(iii)uPARまたはXのuPA認識領域およびuPA結合領域にも、(iv)遊離のuPAにも(v)遊離のXにも実質的に結合せず;そして
(c)uPA−uPAR結合もuPA−X結合も実質的に阻害しない。好ましくは、上記リガンドは、遊離のuPARに実質的に結合しない。
【0021】
上記リガンドは、ポリペプチド、好ましくはAb(例えば、mAb)、またはその抗原結合フラグメントであり得る。好ましいAbsは、ヒト化キメラmAbsまたはヒトmAbsである。
【0022】
一実施形態において、好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む。
より好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、上記のように、
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む。
【0023】
別の好ましい実施形態において、mAbまたは抗原結合フラグメントは、
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む。
より好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、上記のように、
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む。
【0024】
本発明の好ましいAbは、(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb;(b)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb;(c)ATn−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb;およびATn−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAbから選択される。
【0025】
一実施形態において、上記リガンドは、uPA−uPAR複合体とこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドとの結合を阻害するリガンドである。「他の生物学的リガンド」の例としては、インテグリン、好ましくは、α5β1、αvβ3、αvβ5、α3β1、α6β1またはα4β1が挙げられる。
【0026】
上記リガンドは、(a)FnのuPAR媒介性集合、(b)インテグリンα5β1に対するFnもしくはそのフラグメントの結合、または(c)Vn成分の集合を干渉し阻害するリガンドであり得る。
【0027】
好ましい実施形態において、上記リガンドは、(a)(検出可能な標識で)診断的に標識されるか;あるいは(b)治療的に活性な部分で標識されるか、治療的に活性な部分と結合されるか、または治療的に活性な部分と融合され(ポリペプチドの場合)、そのリガンドを治療的に活性にする。
【0028】
本明細書で提供されるのは、(a)上記のように診断的に標識されたリガンド;および(b)診断的に受容可能なキャリア、を含む組成物である。
【0029】
診断用組成物において、リガンドは、好ましくは、放射性核種、PET造影剤、MRI造影剤、蛍光剤、蛍光原(fluorogen)、発色団、クロモゲン、リン光剤(phosphorescer)、化学発光剤(chemiluminescer)または生物発光剤(bioluminescer)で標識される。好ましい放射性核種は、3H、14C、35S、67Ga、68Ga、72As、89Zr、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Ybおよび201Tlからなる群より選択される。好ましい蛍光剤または蛍光原は、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド(phthaldehyde)、フルオレサミン、フルオレセイン誘導体、Oregon Green、Rhodamine Green、Rhodol GreenおよびTexas Redである。
【0030】
本発明は、望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移を阻害する治療用抗血管形成薬学的組成物または抗腫瘍薬学的組成物を提供し、この組成物は、(a)上記治療的に活性なリガンドの有効量、および(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む。この組成物は、好ましくは、注入に適切な形態である。治療的に活性な部分は、リガンドに直接結合されても、リガンドに間接的に結合されてもよい。好ましい治療的部分は、化学療法剤、毒素または治療的放射性核種(好ましくは、47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbまたは217Bi)である。
【0031】
上記治療用組成物において、治療的に活性な部分は、リガンドに融合されるペプチドまたはポリペプチド(例えば、毒素)であり得る。
【0032】
本発明は、細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成を阻害するためか、あるいはアポトーシスを誘導するための方法に関し、この方法は、望ましくない細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成に関連する細胞を上記治療的に活性なリガンドと接触させる工程を包含する。
【0033】
また、望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移によって特徴付けられる疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法が包含され、この方法は、上記治療用薬学的組成物の有効量をその被験体に投与する工程を包含する。
【0034】
また、サンプルにおいて上記リガンドの結合特性を有する物質と考えられる物質を検出するためのアッセイ方法が提供され、この方法は、
(a)そのサンプルをuPA−uPAR複合体と接触させ、サンプルの成分と複合体との結合を決定する工程;
(b)そのサンプルを遊離のuPARと接触させ、サンプルの成分とuPARとの結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、ここで、(a)において結合が存在し、(b)において実質的に結合が存在しないかまたは結合が有意に低いことは、そのサンプル中に上記物質が存在することの指標である。
【0035】
上記アッセイは、uPA−uPAR複合体に結合する標識結合パートナーを用いる競合結合アッセイであり得、ここで、サンプル中の物質は、その結合パートナーと結合を競合する。
【0036】
一実施形態は、サンプルにおいて上記リガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するための方法であり、この方法は、
(a)そのサンプルをuPA−uPAR−X複合体(Xは上記のように定義される)と接触させ、サンプルの成分と複合体との結合を決定する工程;
(b)そのサンプルを、(i)uPA:X複合体;(ii)uPA−uPAR複合体;または(iii)非結合体化Xのうちの1つ以上と接触させ、サンプルの成分とuPA−X、uPA−uPARまたはXとの結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、ここで、(a)において結合が存在し、(b)において実質的に結合が存在しないかまたは結合が有意に低いことは、そのサンプル中に上記物質が存在することの指標である。
【0037】
上記の方法において、複合体は、細胞表面に存在し得る。
【0038】
本発明は、少なくとも3つのアミン酸を含む単離されたペプチドを包含し、このペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部である場合、(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。好ましい上記のような単離されたペプチドは、(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および(b)配列番号2の配列を有するVH鎖を含むmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。
【0039】
別の実施形態において、単離されたペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸およびペプチドを含み、より長いアミノ酸配列の一部である場合、それは(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。好ましい上記のような単離されたペプチドは、(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および(b)配列番号10の配列を有するVH鎖を含むmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。
【0040】
本発明はまた、少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドまたはその置換改変体に関し、このペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部である場合、ATN−615と称されるmAbまたはATN−658と称されるmAbによって認識される直鎖状エピトープに存在する。
【0041】
本発明は、mAb ATN−615またはmAb ATN−658が結合するエピトープと同じエピトープに結合するAbまたは他のリガンドを同定するためのアッセイ方法を包含し、この方法は、そのAbまたは他のリガンドを含むと考えられるサンプルが、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、その同じエピトープに対する抗体結合またはリガンド結合を示す。
【0042】
一実施形態は、(a)ATN−615、(b)ATN−658、あるいは(c)ATN−615もしくはATN−658と同じ結合特異性を有するAbまたは他のリガンドによって認識されるペプチドを同定するための方法であり、この方法は、そのペプチドを含むと考えられるサンプルまたは候補ペプチドが、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658あるいは同じ結合特異性を有するAbまたは他のリガンドの結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、そのペプチドがその結合特異性を有することを示す。
【0043】
化合物をスクリーニングするためか、または候補化合物がuPAR構造体に対してATN−615もしくはATN−658と本質的に同じ結合特性を有するかどうかを決定するためのアッセイが、本発明に包含され、このアッセイは、スクリーニングされるサンプルまたは候補化合物が、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、そのペプチドがその結合特性を有することを示す。
【0044】
上記アッセイの一実施形態において、スクリーニングされる化合物または候補化合物は、約50Daと約2500Daとの間の分子量を有する有機低分子である。別の実施形態において、スクリーニングされる化合物または候補化合物は、核酸分子、好ましくは、オリゴヌクレオチド(例えば、RNAi分子またはアプタマー)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(好ましい実施形態の説明)
本発明者らは、uPA/uPAR複合体またはuPAR−インテグリン複合体を標的にするmAb、ペプチドまたは他の化学物質が、癌の処置および/または診断において有用であることを発見した。本発明者らは、(a)uPARまたはuPA別個でも(b)uPAの存在下でのuPAR(すなわち、リガンドに占有されたuPAR)でもなく、uPA/uPAR複合体を認識する抗体は、これまで記載されていないと考えている。
【0046】
さらに、このuPA−uPAR複合体またはuPAR単独は、インテグリン、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(LPvP)および他の結合パートナーのような、他の「下流の」リガンドを有する。これらの下流の相互作用は、細胞の遊走、浸潤および増殖のプロセスに重要であると考えられる。それゆえ、これらのプロセスを治療的に標的にするか、またはそのプロセスまたはその相互作用成分を診断的に検出することが、望ましいプロセスである。
【0047】
以下により詳細に説明されるように、これらの相互作用を標的にする特異的抗体に加えて、本発明はまた、uPA−uPAR複合体に排他的に結合するかまたはuPARの下流の相互作用を阻害する抗体を検出するための方法に関する。
【0048】
(抗体アプローチ)
本発明者らは、uPARを標的にするmAbのパネルを生成した。uPARは、抗体のための理想的な標的である。なぜなら、uPARは、細胞表面上で発現されるからである。(浸潤腫瘍細胞、血管形成内皮細胞または腫瘍関連マクロファージにおける)腫瘍血管系インターフェースにおけるuPARの発現は、このタンパク質を標的にする抗体が、他のmAbが腫瘍に侵入し、診断剤として機能するかまたは治療的効果を発揮することができないように導く、拡散のための同じ障壁に苦しむことはないことを示唆する。重要なのは、uPARが静止組織では通常発現されないということであり、このことは、治療的Abを使用する場合には毒性に対する可能性を最小化し、そして診断的Abを使用する場合には非特異的シグナル(または疑陽性)を最小化するはずである。
【0049】
本発明者らは、Drosophila S2細胞において発現される可溶性形態のuPAR(「suPAR」として公知)のフラグメントに対して、mAbを惹起した。そのような細胞において、最小限にグリコシル化されたアイソタイプのsuPARが発現される。免疫原としてのこのsuPARの使用は、これまでに試験された他の全てのmAbで観察されたuPARへの異種結合を克服することが予想される。Leukocyte Antigen Workshopの一貫として実施された研究は、1995〜1996年において利用可能であった抗uPAR抗体を比較し、その全てが炭水化物(タンパク質ではない)エピトープに対して特異的であることを見出した(Manupello,Jら(1996)Tiss Antigens 48 368)。実際に、腫瘍において発現するuPARは、高度かつ不均一にグリコシル化されており、異なるアイソフォームのグリコシル化パターンおよび提示は、種々のシグナルに応答して変化する(Stoppelli MPら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci USA 82 4939−4943)。従って、炭水化物に対して惹起された抗uPAR抗体は、uPARの全てのアイソフォームを認識しそうにはなく、uPARにおいて存在するグリコシル化構造と類似のグリコシル化構造を発現する他のタンパク質と、望ましくない交差反応をする可能性がある。S2の使用により、suPARにおけるタンパク質エピトープを認識するmAbの同定が導かれた(図2)。
【0050】
本発明者らは、多量のsuPARおよびsuPARのドメインフラグメントを発現する安定なクローンを産生した。これらの発現系を使用する代表的な収率は、精製後(95%を超える純度)で、25〜50mg/Lのオーダーである。従って、本発明者らは、本発明の抗体の生成のために必要とされる全ての成分を発現すること、およびそれらを評価および特徴付けするためのアッセイを設計することが可能であることを示した。
【0051】
suPARの変異体形態が、全てのグリコシル化部位が変異して発現された。存在するマウスmAbは、ヒト化されてもよいし、霊長類化(primatize)されてもよい。
【0052】
本発明者らはsuPARの立体構造的にインタクトなドメインフラグメントを生成することができることにより、(suPARの)単離D1および単離D2D3に対するmAbを産生することが可能になった。uPAR D2D3フラグメントにおいて曝露されるエピトープはまた、uPAの結合後にのみ、全長のインタクトなuPARにおいて曝露される。このエピトープは、uPAのプロ遊走性(pro−migratory)活性に重要であることが実証されている(Andolfo Aら(2002)Thromb Haemost 88:298−306)。従って、このエピトープが既に曝露されている場合にD2D3フラグメントに対して生成された抗体は、抗遊走性活性を有することが予測される。このことは、mAb ATN−658について実証されている。
【0053】
従って、本発明は、二成分uPA−uPAR複合体に結合し、そして(a)遊離uPAにも、(b)uPAを認識し、結合するuPARの領域にも実質的に結合しないmAbに部分的に関する。その結果、このmAbは、uPA−uPAR結合を阻害しない。このmAbは、哺乳動物(好ましくは、マウス)を、
(a)Drosophila細胞において発現したsuPARの最小限にグリコシル化されたアイソタイプ、または
(b)4または5箇所のグリコシル化部位が変異しているsuPARの脱グリコシル化変異体、
で免疫化する第一段階を包含するプロセスによって産生される。標準的なプロトコルを使用する次の免疫化では、慣習的な技術が、免疫化動物からハイブリドーマ細胞株を生成し、そして所望の特性を有するmAbを生成するために使用される。本明細書中に記載されるような、さらなる特性または何らかの異なる活性を有するuPA−uPAR複合体に特異的なmAbは、同じ新規suPAR抗原を使用して同じ方法で作製される。このプロセスによって作製されるmAbは、溶液中の遊離uPARに結合してもよいし、結合しなくてもよい。
【0054】
野生型uPARにおいて、5箇所のN結合グリコシル化部位:Asn52(D1中)、Asn162およびAsn172(D2中)ならびにAsn200およびAsn233(D3中)、が存在する。D2およびD3における後ろ4つの部位は、好ましくは、Glnに変異され、本発明のmAbを惹起するための好ましい脱グリコシル化suPAR免疫原を生成する。
【0055】
uPARがuPAによって占有されているか否かに関わらず、細胞表面上のuPARを認識する抗D2D3 mAbもまた、生成されている。腫瘍上の高割合のuPARは実際にuPAに結合されるので、この特異性の抗体は、治療的部分および診断的部分のための薬剤を標的するのに有用である。さらに癌患者において、腫瘍が、これらの同じ腫瘍によって発現されるプロテアーゼによって切断され、その腫瘍に依然として結合する残余D2D3フラグメントを残すuPARを発現することが、頻繁に観察されている(Sier CFら、Thromb Haemost.2004;91:403−11)。従って、これらの腫瘍の功を奏する標的化には、抗D2D3抗体が必要とされる。これらの抗体はまた、インビボ画像化用途のためにも有用である。
【0056】
抗D2D3抗体(および本発明の他の抗体)は、好ましくは異種腫瘍モデルにおいて試験される。モデルの2つの好ましい例は、A2780モデルおよびA549モデルである(以下でより詳細に説明される)。
【0057】
(2つの好ましいmAbの可変(V)領域アミノ酸配列)
(ATN−658:可変領域配列)
mAb ATN−658の軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)のコンセンサスアミノ酸配列(一文字コード)が、以下に示される。cDNAは、ATN−658を発現するハイブリドーマから抽出された総RNAから調製され、可変領域が、標準的技術を使用してクローニングされ、増幅され、そして配列決定された。各可変領域に対する相補性決定領域(CDR)が強調されている(イタリック、ボールド、下線)。
ATN−658 VLコンセンサスタンパク質(配列番号1)
【0058】
【化1】
ATN−658 VHコンセンサスタンパク質(配列番号2)
【0059】
【化2】
【0060】
【表1】
(mAb ATN−615:可変領域配列)
mAb ATN−615の軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)のコンセンサスアミノ酸配列(一文字コード)が、以下に示される。cDNAは、ATN−615を発現するハイブリドーマから抽出された総RNAから調製され、可変領域が、標準的技術を使用してクローニングされ、増幅され、そして配列決定された。各可変領域に対する相補性決定領域(CDR)が強調されている(イタリック、ボールド、下線)。
ATN−615 VLコンセンサスタンパク質(配列番号9)
【0061】
【化3】
ATN−615 VHコンセンサスタンパク質(配列番号10)
【0062】
【化4】
【0063】
【表2】
本発明に従うと、AbまたはmAbは、それが類似の特異性プロファイル(例えば、ランクオーダー比較により)を示し、そして参照Abの関連する抗原(例えば、uPA−uPAR複合体)に対して1.5オーダーの倍率、より好ましくは1オーダーの倍率内にある親和性を有する場合、参照mAbと「実質的に同じ抗原結合特性」を有する。
【0064】
上記抗体は、インビボMatrigelプラグモデルにおいて直接的抗血管形成活性について評価される。放射性ヨウ化抗体が、レセプターおよびリガンドの両方を発現するMDA MB231細胞を使用して、Ab内在化を試験するのに使用される。抗体内在化はまた、PAI−1:uPA複合体の存在下で測定される。
【0065】
(uPA、uPARならびにそれらの二成分複合体および三成分複合体に特異的な抗体)
以下の説明において、免疫学、細胞生物学および分子生物学の分野の当業者に公知の種々の方法論への参照がなされる。参照がなされるそのような公知の方法論を説明している刊行物および他の資料は、全体が説明されたかのように、その全体が参考として本明細書中に援用される。免疫学の一般的原理を説明している標準的な参照著作物としては、Abbas,AKら、Cellular and Molecular Immunology(第4版),W.B.Saunders Co.,Philadelphia,2000;Janeway,CAら、Immunobiology.The Immune System in Health and Disease,第4版、Garland Publishing Co.,New York,1999;Roitt,Iら、Immunology,(最新版)C.V.Mosby Co.,St.Louis,MO(1999);Klein,J,Immunology,Blackwell Scientific Publications,Inc.,Cambridge,MA,(1990)が挙げられる。
【0066】
モノクローナル抗体(mAb)およびその産生のための方法および使用は、KohlerおよびMilstem,Nature 256:495−497(1975);米国特許第4,376,110号;Hartlow,E.ら、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988);Monoclonal Antibodies and Hybndomas;A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,NY(1980);H.Zolaら、Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,CRC Press,1982))に記載されている。
【0067】
イムノアッセイ法もまた、Coligan,JEら編、Current Protocols in Immunology,Wiley−Interscience,New York 1991(または最新版);Butt,WR(編)Practical Immunoassay:The State of the Art,Dekker,New York,1984;Bizollon,CA編、Monoclonal Antibodies and New Trends in Immunoassays,Elsevier,New York,1984;Butler,JE,ELISA(第29章),In:van Oss,CJら(編),IMMUNOCHEMISTRY,Marcel Dekker,Inc.,New York,1994,pp.759−803;Butler,JE(編),Immunochemistry of Solid−Phase Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,1991;Weintraub,B,Principles of Radioimmunoassays,The Endocrine Society,1986年3月;Work,TSら、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company,NY,1978;Dabbs,DJ,Diagnostic Immunohistochemistry,Churchill Livingstone,2001に記載されている。
【0068】
抗イディオタイプ抗体は、例えば、Idiotypy in Biology and Medicine,Academic Press,New York,1984;Immunological Reviews Vol.79,1984およびVol.90,1986;Curr.Top Microbiol,Immunol.Vol.119,1985;Bona,C.ら、CRC Crit.Rev.Immunol,pp.33−81(1981);Jerne,NK,Ann.Immunol.125C:373−389(1974);Urbam,Jら、Ann.Immunol.133D;179−(1982);Rajewsky,K.ら、Ann.Rev.Immunol.7:569−607(1983)に記載されている。
【0069】
本発明は、uPARとインテグリンまたは他の下流標的との相互作用を阻害する、ポリクローナルおよびモノクローナル両方の、uPA/uPAR複合体と反応性の抗体を提供する。この抗体は、ヒト化抗体またはキメラ抗体のような、それらの異種形態、同種形態、合成形態または改変形態であり得る。例えば、抗uPA/uPAR Abのイディオタイプに特異的な抗イディオタイプ抗体もまた、包含される。用語「抗体」はまた、インタクトな分子、ならびに抗原結合部位を含み、例えばuPA/uPAR複合体またはuPAR−インテグリン複合体の標的エピトープに結合することができるフラグメントを含むことが意味される。これらとしては、インタクトなAbのFcフラグメントを欠き、血液循環からより迅速に消え、そしてインタクトなAbよりも非特異的組織結合を有さない、FabおよびF(ab’)2が挙げられる(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。Fvフラグメントもまた含まれる(Hochman,J.ら(1973)Biochemistry 12:1130−1135;Sharon,J.ら(1976)Biochemistry 15:1591−1594))。これらの種々のフラグメントは、プロテアーゼ切断または化学的切断のような慣習的な技術を使用して産生される(例えば、Rousseauxら、Meth.Enzymol,121:663−69(1986)を参照のこと)。
【0070】
ポリクローナル抗体は、ウサギ、ヤギ、げっ歯類などの免疫化動物由来の血清として得られ、そして、さらなる処理なしで直接使用されてもよいし、慣習的な濃縮または精製法(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィー)に供されてもよい(Zolaら、上述、を参照のこと)。
【0071】
本発明の抗体の生成のための免疫原は、uPAR、suPAR、uPA/uPAR複合体もしくはuPAR−インテグリン複合体/またはそれらのエピトープ保持フラグメントもしくは誘導体を含み得る。有用な免疫原は、当該分野で公知の種々の方法(例えば、従来の組み換え法を使用するクローニング遺伝子の発現、例えば高レベルのuPAまたはuPARなどを発現している起源の細胞集団からの単離)において産生される。より短いフラグメントの場合には、それらは、化学的に合成され得る。好ましい免疫原は、suPARのD2D3フラグメントである。
【0072】
上記mAbは、KohlerおよびMilstein(Nature,256:495−97(1975))、およびその改変(上述の参考文献を参照のこと)に紹介されている手順のような、慣習的なハイブリドーマ技術を使用して産生され得る。動物(好ましくは、マウス)は、上述のような免疫原での免疫化によって刺激され、その刺激された動物における所望のAb応答を誘発する。
【0073】
刺激された動物のリンパ節、脾臓または末梢血由来のBリンパ球が、一般的にはポリエチレングリコール(PEG)のような融合促進因子の存在下で、ミエローマ細胞と融合される。任意の多数のマウスミエローマ細胞株が、そのような使用のために利用可能である:
P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−k0Ag8.653、Sp2/0−Ag14、またはHL1−653ミエローマ株(ATCC,Rockville,MDから入手可能)。その後の工程は、選択培地における成長を含み、その結果、非融合親ミエローマ細胞およびドナーリンパ球細胞は最終的に死に、ハイブリドーマ細胞のみが生き残る。これらはクローニングされ、増殖して、その上清が、例えばイムノアッセイ技術により所望の特異性のAbの存在についてスクリーニングされる。陽性のクローンは、例えば限界希釈によってサブクローニングされ、そしてそのmAbが単離される。
【0074】
これらの方法に従って産生されるハイブリドーマは、当該分野で公知の技術を使用して、インビトロまたはインビボで増殖され得る(一般的には、Finkら、Prog.Clin.Pathol.,9:121−33(1984)を参照のこと)。一般的に、個々の細胞株は、培養中で増殖され、そして高濃度の単一mAbを含む培地が、デカンテーション、濾過または遠心分離によって収集され得る。
【0075】
(mAbの産生)
本発明に従うmAbの産生のための好ましいアプローチは、以下の通りである。D2D3は、キモトリプシン消化および精製を使用してsuPARから調製される(Shliom,O.ら(2000)J.Biol.Chem 275.24304−12)。次いで、D2D3を、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミンのような任意のキャリアタンパク質に結合体化する。免疫化は、代表的には、完全フロイントアジュバントにおいて実行され、続いて不完全フロイントアジュバントにおいて定期的にブーストされる。動物はまた、定期的に採血され、suPARがマイクロプレートウェルの表面に固定されたELISAを使用して、血清の力価が測定される。
【0076】
ペプチドが使用される場合は、ペプチドは、好ましくはキャリアタンパク質(例えば、KLH)に結合体化され、完全フロイントアジュバント(例えば、50μgの結合体)においてBALB/cマウスに腹腔内(i.p.)で注射し、続いて2週間間隔で不完全フロイントアジュバントにおいて同用量をさらに2回注射する。1ヶ月後、最終の注射がi.p.で(例えば、0.5ml PBS中50μg)与えられ、好ましくは、アジュバントなしで静脈内(i.v.)でも(例えば、0.2ml中50μg)与えられる。
【0077】
脾臓細胞をその最終注射から3日後に収集し、標準的な技術を使用してP3X63AF8/653または他のミエローマ細胞と融合される。
【0078】
(抗体のスクリーニングまたは特徴付けのための試験細胞)
プラスチック上に固定された純粋なsuPARが、初期スクリーニングのために好ましい。uPARを過剰発現する細胞(例えば、HeLa株)もまた、抗suPAR mAbの細胞結合を実証するのに使用され得る。uPARを過剰発現する多くの腫瘍細胞株が周知かつ公に入手可能であり;これらがスクリーニングのために使用され得る。細胞は、一般的に、96ウェルマイクロプレートにプレーティングされる。この細胞は、例えばメタノール/アセトン(50/50)で固定され得、結合が免疫蛍光染色によって検出され得る。あるいは、このmAbは、放射能標識され得、放射能の測定によって結合が検出され得る。
【0079】
一実施形態において、ハイブリドーマ上清(例えば、50μl)が、約1.5時間37℃で固定された293細胞を含むウェルに加えられる。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBS/0.05% Tween−20)において2回洗浄し、Rhodamme Red結合体化ヤギ抗マウスIgGを、1.5時間370℃で、適切な希釈度(例えば、1:100)で加える(例えば、30μl/ウェル)。洗浄緩衝液における洗浄後、細胞を、免疫蛍光の存在について試験する;本明細書中で記載される実施形態においては、蛍光顕微鏡が使用される。
【0080】
この実施形態において、免疫蛍光は、ハイブリドーマ上清がuPA/uPAR複合体に特異的なAbを含有するか否かを決定するための基礎である(しかし、免疫組織化学もまた使用され得る)。上清が陽性の染色を示す場合、そのハイブリドーマクローンが選択され、増量され、そしてELISAによって上清が複合体への反応性について試験される。
【0081】
好ましいELISAにおいて、上記ペプチドは、キャリアタンパク質としてのオボアルブミン(OVA)に結合され、そのペプチド/OVA結合体が96ウェルEIAプレートのウェル上にコーティングされる。このプレートは、例えば、50μlのコーティング緩衝液(0.2M Na2CO3/NaHCO3,pH9.6)中の2μg/mlの結合体を受容する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、4℃で一晩、適切なブロッキング緩衝液(例えば、1%BSAを含有するPBS)で(200μl/ウェル)ブロックする。ハイブリドーマ上清(例えば、50μl)を、室温において1.5時間ウェルに加える。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBS/0.05% Tween−20)において2回洗浄し、酵素結合二次Ab(例えば、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG)を、適切な希釈度(例えば、1:2000)で加える(50μl/ウェル)。プレートを、室温で1.5時間インキュベートする。洗浄緩衝液において4回洗浄した後、その酵素に対する適切な色素性産生基質(例えば、この実施形態では、CP−ニトロフェニルリン酸(Kirkegaard and Perry Co.,Gaithersburg,MDから入手可能))が約30分間加えられ、有色の産物に対して適切な波長(ここでは、405nm)において吸光度が測定される。エピトープ保持ペプチドと強く反応する(例えば、A405が、ネガティブコントロールが<0.02のときに>1.0)ハイブリドーマ上清は、再びクローニングされ(好ましくは、2回)、そしてそのmAb反応性が、上述のようなELISAによって再度確認される。
【0082】
用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン(Ig)分子ならびにそのフラグメントおよび誘導体の両方を含むことを意味する。このフラグメントおよび誘導体は、Ig分子のタンパク質分解性切断によって産生されるか、または遺伝的もしくは化学的に操作される。フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvが挙げられ、これら各々が抗原に結合することができる。これらのフラグメントは、インタクトAbのFcフラグメントを欠き、治療的に使用される場合は、血液循環からより迅速に消え、そしてインタクトの抗体よりも非特異的な組織結合を起こさないというさらなる利点を有する。Igのパパイン処理によりFabフラグメントが産生され;ペプシン処理によりF(ab’)2フラグメントが産生される。これらのフラグメントはまた、当該分野で周知の方法を使用して、遺伝的操作またはタンパク質操作によっても産生され得る。Fabフラグメントは、一緒に共有結合したIg重鎖(H)およびIg軽鎖(L)の免疫学的に活性な部分を含むIg分子の一部から構成される多量体タンパク質であり、抗原と特異的に結合することができる。Fabフラグメントは、代表的に、当該分野で周知の方法を使用する、実質的にインタクトなIg分子のパパインでのタンパク質分解性消化によって調製される。しかしながら、Fabフラグメントはまた、当該分野で周知の方法を使用して、IgのH鎖およびIgのL鎖の所望される部分を適した宿主細胞中で発現することによっても、調製され得る。F(ab’)2フラグメントは、2つのH鎖および2つのL鎖のフラグメントを含む四量体である。上記Fvフラグメントは、一緒に共有結合したIgのH鎖可変(V)領域(VH)およびIgのL鎖V領域(VL)の免疫学的に活性の部分からなる多量体タンパク質であり、抗原に特異的に結合することができる。Fvフラグメントは、代表的に、当該分野で周知な方法を使用して、IgのVH領域およびVL領域の所望される部分を適した宿主細胞中で発現することによって調製される。
【0083】
単鎖の抗原結合部分または単鎖Ab(「scFv」とも呼ばれる)は、VL配列のC末端をVH配列のN末端に結合するペプチドによってIgのVHアミノ酸配列に係留されたIgのVLアミノ酸配列から構成されるポリペプチドである。
【0084】
好ましい実施形態において、上記Abは、ATN−615またはATN−658と命名されたmAbであり、これらは両方ともIgG1抗体である。
【0085】
別の好ましい実施形態において、このAbは、ATN−615またはATN−658によって認識されるエピトープを認識するキメラAbである。
【0086】
(キメラ抗体)
本発明のキメラ抗体は、個々のキメラH Ig鎖およびL Ig鎖を含む。このキメラH鎖は、例えばuPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的な非ヒトAb(ATN−615またはATN−658)のH鎖に由来する抗原結合領域を含み、これはヒトCH領域の少なくとも一部に連結される。キメラL鎖は、標的抗原に特異的な非ヒトAb(例えば、ハイブリドーマATN−615またはATN−658)のL鎖由来の抗原結合領域を含み、これは、ヒトCL領域の少なくとも一部に連結される。本明細書中で使用される場合、用語「抗原結合領域」とは、抗原と相互作用し、Abにその抗原に対する特異性および親和性を与えるアミノ酸残基を含有するAb分子の一部をいう。このAb領域は、抗原結合(または、「定常」)残基の正確な立体配置を維持するのに必要な、「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、一価、二価または多価Igを包含する。一価キメラ抗体は、ジスルフィド結合を通してキメラL鎖に連結したキメラH鎖によって形成されるHL二量体である。二価キメラAbは、少なくとも1つのジスルフィド架橋を通して連結した2つのHL二量体によって形成される、四量体H2L2である。多価キメラAbもまた、(例えば、IgM H鎖由来の、μ鎖と称される)凝集するCH領域を使用することによって、産生され得る。
【0088】
本発明はまた、マウスmAbまたはキメラAbの「誘導体」を提供し、この用語は、Igフラグメントに機能的に類似する分子種を得るために切断または改変された遺伝子によってコードされるタンパク質を包含する。この改変としては、植物または細菌の毒素のような細胞毒性タンパク質をコードする遺伝子配列の付加が挙げられるが、これに限定されない。このフラグメントおよび誘導体は、本発明の任意の宿主から産生され得る。
【0089】
同一のV領域結合特異性または異なるV領域結合特異性のキメラH鎖およびL鎖を有する抗体、フラグメントまたは誘導体は、例えば、Searsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:353−357(1975)によって教示されるように、個々のポリペプチド鎖の適切な結合によって調製され得る。このアプローチでは、キメラH鎖(またはその誘導体)を発現する宿主は、キメラL鎖(またはその誘導体)を発現する宿主から別個に培養され、そしてこのIg鎖は別々に回収され、次いで結合される。あるいは、この宿主は共培養され得、その培地内でその鎖は自発的に結合させられ得、次いで会合したIg、フラグメントまたは誘導体が回収され得る。
【0090】
本発明のキメラAb(または、ヒトmAb)の抗原結合領域は、好ましくは、例えばuPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的な非ヒトAbから誘導される。そのような非ヒトAbをコードするDNAのための好ましい供給源としては、Abを産生する細胞株(好ましくは、ハイブリドーマ)が挙げられる。好ましいハイブリドーマは、上に記載されるように産生され、そのV領域が上に示した配列を有する、ATN−615ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 )およびATN−658(ATCC受託番号 )である。
【0091】
従って、好ましいキメラAb(または、ヒトAb)は、配列番号1のVL配列および配列番号2のVH配列を有し、これらは、mAb ATN−658のコンセンサス配列である。CDR領域内にはないこれらのV領域の残基は、好ましくは保存的置換として、V領域が同じ抗原特異性および実質的に同じ抗原結合親和性または結合力を有する(好ましくは、VL配列が配列番号1であり、VH配列が配列番号2であるAbの少なくとも20%)Abを生じる限り、異なることがある。このキメラ(またはヒト)Abにおいて、VL鎖の3つのCDR領域は、配列番号3、配列番号4および配列番号5であり、VH鎖の3つのCDR領域は、配列番号6、配列番号7および配列番号8であることが好ましい。
【0092】
別の好ましいキメラAb(または、ヒトAb)は、配列番号9のVL配列および配列番号10のVH配列を有し、これらは、mAb ATN−615のコンセンサス配列である。CDR領域内にはないこれらのV領域の残基は、好ましくは保存的置換として、V領域が同じ抗原特異性および実質的に同じ抗原結合親和性または結合力を有する(好ましくは、VL配列が配列番号9であり、VH配列が配列番号10であるAbの少なくとも20%)Abを生じる限り、異なることがある。このキメラ(またはヒト)Abにおいて、VL鎖の3つのCDR領域は、配列番号11、配列番号12および配列番号13であり、VH鎖の3つのCDR領域は、配列番号14、配列番号15および配列番号16であることが好ましい。
【0093】
本発明のキメラAb(または、ヒトAb)を構築するのに使用するための好ましい核酸分子は、(a)配列番号1の配列を有するVL領域をコードするコード配列を有する核酸分子、および(b)配列番号2の配列を有するVH領域をコードするコード配列を有する核酸分子、である。3つのCDR(配列番号3、配列番号4および配列番号5)を含むVL領域をコードする核酸分子、ならびに3つのCDR(配列番号6、配列番号7および配列番号8)を含むVH領域をコードする核酸分子もまた、好ましい。
【0094】
本発明のキメラAb(または、ヒトAb)を構築するのに使用するための好ましい核酸分子の別のセットは、(a)配列番号9の配列を有するVL領域をコードするコード配列を有する核酸分子、および(b)配列番号10の配列を有するVH領域をコードするコード配列を有する核酸分子、である。3つのCDR(配列番号11、配列番号12および配列番号13)を含むVL領域をコードする核酸分子、ならびに3つのCDR(配列番号14、配列番号15および配列番号16)を含むVH領域をコードする核酸分子もまた、好ましい。
【0095】
あるいは、本発明のAbのV領域が由来する非ヒトAb産生細胞は、suPARのD2D3で免疫化された動物の血液、脾臓、リンパ節または他の組織から得られたBリンパ球であり得る。本発明のキメラAbの抗原結合領域をコードするヌクレオチド配列を与えるAb産生細胞は、非ヒト(例えば、霊長類)細胞またはヒト細胞の形質転換によって作製され得る。例えば、uPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的なAbを産生するBリンパ球は、ウイルス(例えば、エプスタイン・バー・ウイルス)で感染および形質転換され得、不死Ab産生細胞を得ることができる(Kozborら、Immunol.Today 4:72−79(1983))。あるいは、Bリンパ球は、当該分野で周知なように、形質転換遺伝子または形質転換遺伝子産物を提供することによって、形質転換され得る。好ましくは、抗原結合領域は、マウス起源のものである。他の実施形態において、この抗原結合領域は、他の動物種(特に、ラットまたはハムスターのようなげっ歯類)に由来し得る。
【0096】
本発明のマウスmAbまたはキメラmAbは、このAbを分泌するハイブリドーマまたはトランスフェクトーマ(transfectoma)を、マウスの腹腔内に注入し、適切な時間経過後に高力価のmAbを含む腹水を収集し、そしてそこからmAbを単離することによって、大量に産生され得る。そのような、非マウス(例えば、ラットまたはヒト)ハイブリドーマを用いたmAbのインビボ産生のためには、ハイブリドーマは、好ましくは、放射線照射されたかまたは胸腺欠損のヌードマウスにおいて増殖される。
【0097】
あるいは、上記抗体は、インビトロでハイブリドーマ(または、トランスフェクトーマ)細胞を培養し、分泌されたmAbをその細胞培地から単離することによって産生され得る。
【0098】
本発明のキメラ抗体の定常C領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎児肝ライブラリーまたはヒトIgを発現および産生する細胞を含む任意のヒト細胞に由来し得る。ヒトCH領域は、ヒトH鎖の公知のクラスまたはアイソタイプ(γ、μ、α、δまたはεを含む)ならびにそのサブタイプ(例えば、G1、G2、G3およびG4)のいずれかに由来し得る。H鎖アイソタイプはAbの種々のエフェクター機能を担っているので、CH領域の選択は、所望されるエフェクター機能(例えば、補体結合)またはAb依存性細胞傷害性(ADCC)によって導かれる。好ましくは、このCH領域は、γ1(IgG1)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、またはμ(IgM)に由来する。
【0099】
ヒトCL領域は、ヒトL鎖アイソタイプであるκまたはλのいずれかに由来し得る。
【0100】
ヒトIgのC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技術によってヒト細胞から得られる(Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989))。ヒトC領域の遺伝子は、L鎖の2つのクラス、H鎖の5つのクラス、およびそれらのサブクラスを代表する遺伝子を含む公知のクローンから容易に入手可能である。キメラAbフラグメント(例えば、F(ab’)2およびFab)は、適切に切断されたキメラH鎖遺伝子を設計することによって調製され得る。例えば、F(ab’)2フラグメントのH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列と、その後に切断型分子を得るための翻訳停止コドンとを含む。
【0101】
一般的に、本発明のキメラ抗体は、本発明の特異的Ab(好ましくは、非ヒト)のH鎖およびL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらのDNAセグメントをそれぞれヒトCH領域およびCL領域をコードするDNAセグメントに連結し、キメラIgコード遺伝子を作製することによって産生される。
【0102】
従って、好ましい実施形態において、ヒトC領域の少なくとも一部をコードする第二のDNAセグメントに連結された、非ヒト起源の少なくとも抗原結合領域をコードする第一のDNAセグメント(例えば、接合(J)セグメントで機能的に再配列されたV領域)を含む融合遺伝子が作製される。
【0103】
Ab結合領域をコードするDNAは、ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。マウスV領域抗原結合セグメントをコードするDNAの供給源として染色体遺伝子セグメントの使用に対する慣習的な代替物は、Liuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439(1987);J.Immuno.139:3521(1987)(これらは、本明細書中に参考として援用される)において報告されているように、キメラIg遺伝子の構築のためのcDNAの使用である。cDNAの使用は、所望されるタンパク質の合成を達成するために、遺伝子と組み合わされる宿主細胞に適切な遺伝子発現エレメントを必要とする。cDNA配列は適切なRNAスプライシング系を欠く細菌または他の宿主において発現され得るという点で、cDNA配列の使用はゲノム配列(イントロンを含む)よりも有利である。
【0104】
従って、上記AbのV領域をコードするcDNAを利用する実施形態において、キメラAbを産生する方法は、以下に概説される数個の工程を包含する:
1.そのmAbを産生する細胞株からのメッセンジャーRNA(mRNA)の単離、クローニングおよびそれからのcDNAの産生;
2.精製されたmRNAからの全長cDNAライブラリーの調製(これから、L鎖およびH鎖遺伝子の適切なV領域遺伝子セグメントが、(i)適切なプローブを用いて同定され、(ii)配列決定され、(iii)C遺伝子セグメントと適合させられる);
3.cDNA調製物からのC領域遺伝子セグメントの調製およびクローニング;
4.上述のように、クローニングされたV領域遺伝子セグメントをクローニングされたヒトC領域へ連結することによる、完全なH鎖またはL鎖コード配列の構築;
5.選択された宿主(原核生物細胞および真核生物細胞を含む)におけるキメラL鎖およびH鎖の発現および産生。
【0105】
全てのIgH鎖およびL鎖遺伝子およびそれらにコードされるmRNAの1つの共通の特徴は、J領域である。H鎖およびL鎖のJ領域は、異なる配列を有するが、各群の間で高度の配列相同性(80%を超える)が、特にC領域付近に存在する。この相同性が上記方法において利用され、H鎖およびL鎖のJ領域のコンセンサス配列が、その後のV領域セグメントのヒトC領域セグメントへの連結のために、J領域内へ有用な制限酵素部位を導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するのに使用され得る。
【0106】
ヒト細胞から調製されるC領域のcDNAベクターは、部位特異的変異誘発によって改変され得、制限酵素部位をヒト配列における類似の位置に配置し得る。例えば、完全κ鎖C(Cκ)領域および完全ヒトγ−1C領域(Cγ−1)をクローニングし得る。この場合は、C領域ベクターの供給源としてゲノムC領域クローンに基づいた代替的な方法では、介在配列を除去するのに必要とされる酵素が存在しない細菌系においてこれらの遺伝子を発現させることはできない。クローニングされたV領域セグメントは、切り出され、L鎖またはH鎖C領域ベクターにライゲーションされる。あるいは、ヒトCγ−1領域は、停止コドンを導入し、それによってFab分子のH鎖部分をコードする遺伝子配列を生成することによって、改変され得る。連結されたV領域およびC領域を有するコード配列は、次いで、適切な宿主(原核生物または真核生物)における発現のための適した発現ビヒクル内に移される。
【0107】
2つのコードDNA配列は、連結がトリプレットのリーディングフレームを変更または遮断なしで連続的に翻訳可能な配列をもたらす場合、「作動可能に連結された」といわれる。DNAコード配列は、連結が適切な機能をもたらす(遺伝子発現エレメントがコード配列の発現をもたらす)場合、遺伝子発現エレメントに操作可能に連結されている。
【0108】
発現ビヒクルとしては、プラスミドまたは他のベクターが挙げられる。これらの中で好ましいのは、適切な付着端を有する任意のVH鎖またはVL鎖配列が容易に挿入され得るように適切な制限酵素部位を有する、機能的に完全なヒトCH鎖またはCL鎖配列を保持するビヒクルである。従って、ビヒクルを含有するヒトCH鎖またはCL鎖配列は、任意の適切な宿主における任意の望ましい完全なH鎖またはL鎖の発現のための中間体として機能する。
【0109】
キメラマウス−ヒトAbは、代表的に、その構築物において使用されるマウスH鎖およびL鎖のV領域に対して天然の染色体遺伝子プロモーターによって駆動される遺伝子から合成される。通常スプライシングは、マウスJ領域におけるスプライシングドナー部位とヒトC領域の前にあるスプライシングアクセプター部位との間で起こり、またヒトCH領域内で生じるスプライシング部位においても起こる;ポリアデニル化および転写終結は、ヒトコード領域の下流のネイティブな染色体部位において起こる。
【0110】
cDNA遺伝子の発現に有用な遺伝子発現エレメントとしては:(a)ウイルス転写プロモーターおよびそのエンハンサーエレメント(例えば、SV40早期プロモーター(Okayama,H.ら、Mol.Cell.Biol.3:280(1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman,C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci,USA 79:6111(1982))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl,Rら、Cell 47:885(1985));(b)スプライシング部位およびポリアデニル化部位(例えば、SV40後期領域に由来するようなもの()Okayamaら、上述);および(c)SV40のようなポリアデニル化部位(Okayamaら、上述)、が挙げられる。
【0111】
IgのcDNA遺伝子は、上述のLiuら、およびWeidle,UHら、Gene 57:21−29(1987)に記載されるように、発現エレメントとして、SV40早期プロモーターおよびそのエンハンサー、マウスIgH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギβグロブリン介在配列、Igおよびウサギβグロブリンポリアデニル化部位、およびSV40ポリアデニル化エレメントを使用して、発現され得る。一部がcDNA、一部がゲノムDNAから構成されるIg遺伝子(Whittle,Nら、Protein Eng.7:499−505(1987))については、転写プロモーターはヒトサイトメガロウイルスであり、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルスおよびマウス/ヒトIgであり、そしてmRNAスプライシングおよびポリアデニル化領域は、天然の染色体Ig配列由来である。一実施形態において、げっ歯類細胞におけるcDNA遺伝子の発現のためには、転写プロモーターはウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーは、マウスIgのH鎖エンハンサーもしくはウイルスLTRエンハンサーのいずれか、またはその両方であり、スプライシング領域は31bpより大きいイントロンを含み、そしてポリアデニル化および転写終結領域は、合成されるIg鎖に対応する天然の染色体配列に由来する。他の実施形態において、他のタンパク質をコードするcDNA配列は、上述の発現エレメントと組み合わされ、哺乳動物細胞におけるそのタンパク質の発現を達成する。
【0112】
各融合遺伝子は、発現ベクターにおいてアセンブルされるか、または発現ベクター内に挿入される。キメラIg鎖遺伝子産物を発現し得るレシピエント細胞が、次いで、キメラH鎖またはキメラL鎖コード遺伝子で個々にトランスフェクションされるか、あるいはキメラH鎖およびキメラL鎖遺伝子で共トランスフェクションされる。このトランスフェクションされたレシピエント細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を可能にする条件下で培養され、その発現されたIg鎖またはインタクトの抗体もしくはフラグメントが、その培養物から回収される。一実施形態において、キメラH鎖およびL鎖またはそれらの一部をコードする融合遺伝子は、別個の発現ベクターにおいてアセンブルされ、それが次いで、レシピエント細胞を共トランスフェクションするのに使用される。
【0113】
各ベクターは、2つの選択可能な遺伝子を含有し得、第一の選択可能な遺伝子は、細菌系における選択用に設計されており、第二の選択可能な遺伝子は、真核生物系における選択用に設計されている(ここで、各ベクターは、異なる対の遺伝子を有する)。このストラテジーにより、細菌系における融合遺伝子の産生を最初に導き、そして増幅を可能にするベクターをもたらす。この遺伝子は、細菌宿主においてそのように産生および増幅され、その後真核生物細胞を同時トランスフェクションするのに使用され、そして望ましいトランスフェクション遺伝子を有する同時トランスフェクション細胞の選択を可能にする。細菌系において使用するための選択可能な遺伝子の例は、アンピシリンへの耐性を与える遺伝子、およびクロラムフェニコールへの耐性を与える遺伝子である。真核生物のトランスフェクションにおける使用のための好ましい選択可能な遺伝子としては、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gptと称される)およびTn5由来のホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと称される)が挙げられる。
【0114】
gptを発現する細胞の選択は、この遺伝子によってコードされる酵素が、プリンヌクレオチド合成のための基質としてキサンチンを用いるのに対して、類似の内在性酵素は用いることができないという事実に基づく。(1)イノシン一リン酸のキサンチン一リン酸(XMP)への変換をブロックするミコフェノール酸(XMP)、および(2)キサンチンを含む培地においては、gptを発現している細胞のみが生存し得る。neo遺伝子の産物は、抗生物質G418およびネオマイシンクラスの他の抗生物質によるタンパク質合成の阻害をブロックする。
【0115】
上記2つの選択手順は、2つの異なるDNAベクター上で真核生物細胞内に導入されたIg鎖遺伝子の発現について選択するために、同時または連続的に使用され得る。真核生物細胞に対して異なる選択可能なマーカーを含めることは必須ではなく;各々同一のベクターを含むH鎖およびL鎖ベクターが、同時トランスフェクションされ得る。適切に耐性な細胞の選択後は、大多数のクローンが、導入されたH鎖およびL鎖ベクターのコピーを含有する。
【0116】
あるいは、キメラH鎖およびL鎖をコードする融合遺伝子が、同一の発現ベクター上で構築され得る。
【0117】
発現ベクターのトランスフェクションおよびキメラAbの産生について、好ましいレシピエント細胞株は、骨髄腫細胞である。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされたIg遺伝子によってコードされるIgを合成、構築、分泌し得、Igのグリコシル化についての機構を保有し得る。特に好ましいレシピエント細胞は、Ig非産生骨髄腫細胞SP2/0(ATCC#CRL 8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクトされた遺伝子によってコードされるIgのみを産生する。骨髄腫細胞は、培地中またはマウスの腹腔中で増殖し得、分泌されたIgは、腹水から得られ得る。他の適切なレシピエント細胞としては、リンパ系細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト起源のBリンパ球)、ヒトまたは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、あるいは種間のヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0118】
本発明のキメラAb構築物を保有する発現ベクターは、任意の種々の適切な手段(形質転換、トランスフェクション、結合、原形質体融合、リン酸カルシウム沈殿、およびポリカチオン(例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン)の適用のような生物学的手段、ならびにエレクトロポレーション、直接ミクロ注入、および微粒子銃のような機械的手段が挙げられる)によって適切な宿主細胞中に組み込まれ得る。
【0119】
本発明の配列または遺伝子をコードするキメラIgはまた、非リンパ系哺乳動物細胞または他の真核細胞(例えば、酵母)または原核細胞、特定の細菌において発現され得る。酵母は、Ig H鎖およびL鎖の産生について細菌よりも十分な利点を提供する。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後のペプチド改変を行う。多くの組み換えDNAストラテジーが、現在、存在し、それらは、酵母において所望のタンパク質の産生のために使用され得る強力なプロモーター配列および高コピー数のプラスミドを利用する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を保有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。酵母遺伝子発現系は、キメラH鎖およびL鎖タンパク質ならびに構築されたキメラAbの産生、分泌および安定性のレベルについて慣習的に評価され得る。酵母がグルコース中のリッチな培地において増殖する場合、大量に産生される糖分解酵素をコードする活発に発現される遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントを組み込む任意の一連の酵母遺伝子発現系が、利用され得る。公知の糖分解遺伝子はまた、非常に効果的な転写制御シグナルを提供し得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルが、利用され得る。多くのアプローチが、酵母においてクローニングされたIg cDNAの発現のための最適な発現プラスミドを評価するために行われ得る(Glover,D.M.編、DNA Cloning,IRL Press,1985を参照のこと)。
【0120】
細菌株はまた、本発明に記載されるAb分子またはAbフラグメントの産生のための宿主(E.coli K12株(例えば、E.coli W3110(ATCC#27325)))として利用され得、そして他の腸内細菌(例えば、Salmonella typhimuriumまたはSerratia marcescens、および種々のPseudomonas種)が、使用され得る。
【0121】
宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの細菌宿主とともに使用される。ベクターは、レプリコン部位、および形質転換された細胞において表現型の選択を提供し得る特定の遺伝子を保有する。多くのアプローチが、細菌においてクローニングされたIg cDNAによってコードされるキメラAbまたはAb鎖の産生について発現プラスミドを評価するために行われ得る(Glover、前出を参照のこと)。
【0122】
好ましい宿主は、哺乳動物細胞であり、インビトロまたはインビボにおいて増殖する。哺乳動物細胞は、リーダーペプチド除去、フォールディングならびにH鎖およびL鎖の構築、Ab分子のグリコシル化、ならびに機能的Abタンパク質の分泌を含むIgタンパク質分子に対する翻訳後の修飾を提供する。上記のリンパ系起源の細胞に加えて、Abタンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳動物細胞としては、フィブロブラスト起源の細胞(例えば、Vero(ATCC CRL81)またはCHO−K1(ATCC CRL61))が挙げられる。多くのベクター系は、哺乳動物細胞においてクローニングされたH鎖遺伝子およびL鎖遺伝子の発現のために利用可能である(Glover、前出を参照のこと)。続いて、異なるアプローチが、完全なH2L2Abを得るため行われ得る。
【0123】
インビボでの使用、特にヒトへの注入について、上記のマウス−ヒト(または齧歯類−ヒト)キメラAbを作製することによって、または当該分野において公知の方法を用いてAbをヒト化することによって、mAbの免疫原性を減少させることが所望される。ヒト化Abは、トランスジェニックヒトIg定常領域遺伝子を有する動物の産生物であり得る(例えば、WO90/10077およびWO90/04036を参照のこと)。あるいは、目的のAbは、遺伝子的に操作されて、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/または対応するヒト配列を有するフレームワークドメインを置換し得る(WO92/02190を参照のこと)。
【0124】
(単鎖抗体)
本発明のAbは、通常の多量体構造の代わりに単鎖AbまたはscFVとして産生され得る。単鎖Abは、目的のIg由来の超可変領域を含み、インタクトなIgのサイズの画分である間、ネイティブなIgの抗原結合部位を再生する(Skerra,Aら(1988)Science,240:1038−1041;Pluckthun,Aら(1989)Methods Enzymol.178:497−515;Winter,G.ら(1991)Nature,349:293−299);Birdら(1998)Science 242:423;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879;Jost CRら、J Biol Chem.1994 269:26267−26273;米国特許第4,704,692号、同第4,853,871号、同第4,94,6778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号)。H鎖およびL鎖のV領域をコードするDNA配列は、少なくとも約4個のアミノ酸(代表的に小さな中性のアミノ酸)をコードするリンカーにライゲーションされる。この融合によってコードされるタンパク質は、もとのAbの特異性および親和性を保持する機能的可変領域の構築を可能にする。
【0125】
本発明のAbを生成する1つの方法は、タンパク質化学技術によって2個以上のペプチドまたはポリペプチドを一緒に結合することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学的性質またはtBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学的性質のいずれかを用いる現在利用可能な実験装置を用いて化学的に合成され得る(Applied Biosystem,Inc.,Foster City,CA)。当業者は、Ab鎖またはその抗原結合フラグメントに対応するペプチドまたはポリペプチドが、標準的な化学反応によって合成され得ることを容易に理解する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは合成され得るが、その合成樹脂から切断されないのに対して、Abのもう1つのフラグメントは、合成されてその樹脂から実質的に切断され得、それによって、もう1つのフラグメント上に機能的にブロックされる末端基を曝露する。ペプチド縮合反応によって、これら2つのフラグメントは、それぞれ、それらのC末端およびN末端でペプチド結合を介して共有結合されて、Abまたはそのフラグメントを形成し得る(Grunt,GA,Synthetic Peptides:A User Guide,W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992);Bodansky,Mら、編、Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag Inc.,N.Y.(1993))。
【0126】
抗体は、特定の所望の特性について選択され得る。インビボで使用されるAbの場合において、Abスクリーニング手順は、例えば、uPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体、関連するポリペプチドエピトープまたはペプチドエピトープを発現する細胞に対する結合を測定する任意のインビトロまたはインビボでのバイオアッセイを包含し得る。さらに、Abは、種々の腫瘍モデル(例えば、異種のマウスモデル(この異種のマウスモデルにおいて抗原を発現するヒト腫瘍細胞株は、免疫無防備状態において増殖する)(例えば、ヌードマウス))においてスクリーニングされ得る。
【0127】
(診断的に標識された抗体)
用語「診断的に標識された」とは、本発明のAbが、診断的に検出可能な標識に付着されていることを意味する。以下に記載するように、当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法が存在する。本発明において使用され得る標識の一般的な分類は、放射性同位体、常磁性同位体、および陽子射出断層撮影法(PET)によって画像化され得る化合物、蛍光または着色化合物などを含む。適切な検出可能な標識は、放射活性標識、蛍光標識、蛍光発生標識、色素形成標識、または他の化学的標識を含む。γカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーによって簡単に検出される有用な放射標識(放射性核種)としては、3H、125I、131I、35Sおよび14Cが挙げられる。131Iはまた、有用な治療的同位体である(以下を参照のこと)。
【0128】
本明細書中に援用される多くの米国特許は、有用なキレート剤の詳細を含む、高分子に対する錯化金属についての方法および組成物を開示している。この金属は、好ましくは、放射性核種を含む、検出可能な金属原子であり、タンパク質および他の分子と結合される。これらの文献としては、米国特許第5,627,286号;同第5,618,513号;同第5,567,408号;同第5,443,816号;および同第5,561,220号が挙げられる。
【0129】
一般的な蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アリフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレサミンが挙げられる。フルオロフォア(例えば、ダンシル基)は、蛍光に対する特定の波長の光によって励起されなければならない。例えば、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemical、第6版、Molecular Probes,Eugene,OR.,1996を参照のこと。フルオロセイン、フルオロセイン誘導体およびフルオロセイン様分子(例えば、Oregon GreenTMおよびその誘導体、Rhodamine GreenTMおよびRhodol GreenTM)は、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステルまたはジクロロトリアジニル反応基を用いてアミン基に結合される。同様に、フルオロフォアもまた、マレイミド、ヨードアセトアミド、およびアジリジン反応基を用いてチオールに結合され得る。基本的には、窒素上に置換基を有するRhodamine GreenTM誘導体である長波長ローダミンは、公知の最も光安定性の蛍光標識試薬の1つである。これらのスペクトルは、多くの生物学的適用のためのフルオロセインに対して重要な利点である、4と10との間のpHの変化によって影響されない。この群としては、テトラメチルローダミン、X−ローダミンおよびTexas RedTM誘導体が挙げられる。本発明に従うペプチドを誘導するための他の好ましいフルオロフォアは、紫外線によって励起されるものがある。例としては、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(その塩化ダンシルは、メンバーである)、ピレン、ピリジルオキサゾール誘導体が挙げられる。標識として含まれるものはまた、最近、記載されている2つの関連する無機材料:例えば、硫酸カドミウムを含む半導体ナノ結晶(Bruchez,Mら、Science 281:2013−2016(1998))、および量子ドット(例えば、亜鉛−硫酸−キャップ化Cdセレニド(Chan,WCら、Science 281:2016−2018(1998)))である。
【0130】
さらに別のアプローチにおいて、Abのアミノ基は、蛍光生成物(例えば、フルオレサミン、ジアルデヒド(例えば、o−フタルジアルデヒド)、ナフタレン−2,3−ジカルボキシレートおよびアントラセン−2,3−ジカルボキシド)を生じる試薬と反応される。7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)誘導体塩化物およびフッ化物の両方は、アミンを改変して蛍光性生物を得るために有用である。
【0131】
本発明のAbはまた、蛍光放射金属(例えば、152EU、またはランタニド系列の他のもの)を用いて検出するために標識され得る。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA、以下の実施例Xを参照のこと)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を用いてペプチドに結合され得る。例えば、DTPAは、本発明のNH2含有ペプチドを容易に改変し得る無水物として利用可能である。
【0132】
インビボでの診断または治療のために、放射性核種は、キレート剤(例えば、DTPAおよびDOTA)を用いて直接的または間接的のいずれかでAbに結合され得る。このような放射性核種の例は、99Tc、123I、125I、131I、111In、97Ru、67Cu、67Ga、68Ga、72As、89Zr、90Yおよび201Tlである。一般に、診断的使用において検出感度を必要とされる標識されたAbの量は、考慮すべき事柄(例えば、年齢、状態、性別、および患者の疾患の程度、禁忌、もしあれば他の変化するもの)に依存して変化し、個々の医師または診断者によって調節される。投薬量は、0.0001mg/kg〜100mg/kgである。
【0133】
Abはまた、リン光化合物または化学発光化合物に結合することによって検出可能に作製され得る。次いで、化学発光標識ペプチドの存在は、化学反応の間に生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物は、ペプチドを標識するために使用され得る。生物発光は、触媒作用タンパク質が、効果的に化学発光反応を増加させる生物学的系において見出される化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識する目的のために重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0134】
さらに別の局面において、比色分析検出が、高吸光率を有する発色団を有するか、または生じる色素産生化合物に基づいて使用される。
【0135】
標識されたペプチドのインサイチュでの検出は、被験体由来の組織試料を取り除き、標識を検出するための適切な条件下で顕微鏡でそれを調べることによって達成され得る。当業者は、任意の広範な種々の組織学的方法(例えば、染色手順)が、このようなインサイチュでの検出を達成するために改変され得ることを容易に理解する。
【0136】
診断に用いるインビボでの放射性画像化のために、利用可能な検出機器の型は、放射性核種を選択する際の重要な要因である。選択される放射性核種は、特定の機器によって検出可能である崩壊の型を有さなければならない。一般に、可視化診断画像化のための任意の従来の方法は、本発明に従って利用され得る。インビボでの診断のための放射性核種を選択する際の別の要因は、標識が、標的組織による最大取り込みの時間においてまだ検出可能であるように半減期が十分に長いが、しかし宿主の有害な照射が最小であるように短いことである。1つの好ましい実施形態において、インビボでの画像化のために使用される放射性核種は、微粒子を放射するが、しかし、140〜200keVの範囲において大量の光子を産生し、これは、従来のγカメラによって容易に検出され得る。
【0137】
インビボでの画像化は、他の方法によって観測され得ない潜在性転移を検出するために使用され得る。画像化は、例えば、腫瘍を非侵入性にするために使用され得た。
【0138】
(免疫アッセイによってuPA複合体またはuPAR複合体を検出するための抗体の使用)
本発明の抗体は、組織試料または体液(血清または結晶)において上記のエピトープを含む分子を検出するために免疫アッセイにおいて有用である。このようなAbは、抗原またはそのエピトープ保有フラグメンを検出する。従って、腫瘍環境におけるタンパク質分解は、フラグメントまたは組織の遊離を生じる。
【0139】
当該分野において公知の任意の従来の免疫アッセイが、この目的のために使用され得るが、酵素免疫法(例えば、ELISA)が好ましい。免疫アッセイ法はまた、上記に引用した参考文献に記載される。
【0140】
競合的免疫アッセイは、代表的に、それらの結合特異性、親和性、能力などにおいてmAbを模倣し得る複合体のためのリガンドである試験試料中の分子を検出するために使用される。1つの実施形態の競合的結合アッセイにおいて、複合体に結合したAbの量は、(標識された抗Igを用いて直接的または間接的に)測定される。試験試料の存在下における競合(すなわち、複合体へのAbのより少ない結合)は、試料の1つ以上の化合物が、複合体に結合しているという証拠である。試験されるほとんどの化合物が、適度の親和性(約1〜10μM)で結合することが予想される。
【0141】
別の実施形態において、固体支持体(例えば、マイクロプレート)は、目的のmAbでコーティングされる。試験試料は添加されて、例えば、約30分間インキュベートされて、Abに対する関連分子の結合を可能にする。このプレートは洗浄されて、検出可能に標識された形態(例えば、ビオチン化された)の複合体は、競合リガンドとして添加され、Abに対する結合のための試験試料との競合を可能にする。試験試料についての「ポジティブな」結果は、固相に結合した標識された複合体のより少ない結合として表される。複合体溶液および試料溶液が同時に添加されないこのアプローチは、複合体に直接的に結合する試験試料の効果を混同することを避ける。なぜなら、任意の試験試料の存在は、固定化されたmAbによって最初に捕捉されなければならないからである。好ましくは、結合を確実にすることは特異的であり、一連の希釈が希釈曲線を得るために行われる。このことは、例えば、半分の試料で50%未満の結合/シグナル比が存在するか否かを示す。このような希釈効果の非存在下において、複数の結合の存在が、アッセイに含まれると結論され得る。結果は、mAb結合部位において分子結合が、同様の親和性を有する場合、より厳密である。
【0142】
(免疫組織化学アッセイ)
組織における抗原を検出するための1つの好ましいアッセイは、当該分野が十分に満たす任意の従来のアッセイ法を用いる、免疫組織化学によるものである。好ましいアッセイは、以下の実施例に記載されるものである。そのような方法の詳細については、例えば、Dabbs,DJ,Diagnostic Immunohistochemistry,Churchill Livingstone,2001(その全体は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0143】
(非組織学的免疫アッセイ)
好ましい免疫アッセイは、固体支持体に固定された抗原またはAbを使用する、酵素免疫測定法(EIA)(例えば、ELISA)である。本発明の組成物および方法について、固体支持体は、好ましくは、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、ポリアクリルアミド、二フッ化ポリビニリデン、天然セルロース、改変セルロース、ニトロセルロール、アガロースおよび磁性ビーズのうちのいずれか1つである。好ましい実施形態において、ポリスチレンまたは他のプラスチックマルチウェルプレートの表面は、固体支持体として役立つ。別の実施形態において、Abまたは抗原に対する固体支持体は、底部に加えられるか、またはマルチウェルプレートの壁にゆるく置かれる。マルチウェルプレートは、ウェルの底にニトロセルロースまたは同様の膜物質を含み、それを介して液体は、圧力下で移動され得るか、あるいは減圧がまた使用され得る。
【0144】
代表的、および好ましい免疫アッセイとしては、固体支持体に固定化されたAbが最初に、2成分の固定化されたAb−抗原複合体の形成によって試料由来の抗原を結合または「抽出」するために試験される試料と接触される「フォワード(forward)」アッセイが挙げられる。適切なインキュベーションの後、固体支持体は洗浄されて、未結合の抗原(あれば)を含む、流体試料の残渣が除去され、次いで、未知量の標識されたAb(「レポーター分子」として機能する)を含む溶液と接触される。第2のインキュベーション後、標識されていないAbを介して固定化された抗原との複合体に対するAbの標識を可能にし、固体支持体は、2回洗浄されて、未反応の標識されたAbが取り除かれ、固定化された標識が測定される。この型のフォワードサンドイッチ(forward sandwich)アッセイは、抗原が存在するか、あるいは固定化された標識Abと抗原の既知の量を含む標準的な試料が使用される場合の固定化された量とを比較することによって定量的にされ得るか否かを決定するための簡単な「あり/なし」アッセイであり得る。
【0145】
いわゆる「同時」および「リバース」サンドイッチアッセイもまた、使用され得る。同時アッセイは、固定化されたAbとして単一のインキュベーション工程に関与し、標識Abは、試料に同時に添加される。適切なインキュベーション後、固体支持体は、洗浄されて、試料および複合体化されていない標識Abの残渣を取り除かれる。次いで、固体支持体に関連する標識Abの存在または量は、上記の従来の「フォワード」サンドイッチアッセイのように決定される。
【0146】
「リバース」アッセイにおいて、標識Abの溶液は、適切なインキュベーションの期間の後にサンプルに添加され、続いて、固定化された未標識Abが添加される。第2のインキュベーションの後、固相物質が従来の様式で洗浄されて、試料および未反応の標識Abの残渣が取り除かれる。次いで、固体支持体に関連する固定化されたAbの決定が、「同時」および「フォワードアッセイ」のように決定される。
【0147】
(全細胞上のuPARに対する抗体結合についてのアッセイ)
uPAR標的Abおよび/またはその結合体は、uPARに対する結合について、好ましくは、競合リガンド結合アッセイにおいてuPARに対する[125I]DFP−uPAの結合の阻害を測定することによって、または[125I]でAbを直接的に標識することによって、容易に試験される。このアッセイは、uPARを発現する全細胞(例えば、A2780またはHeLaのような細胞株)を使用し得る。好ましいアッセイは、以下のように実施される。細胞(約5×104/ウェル)を、24ウェルプレート中の培地(例えば、Earle’塩/10%FBS+抗生物質を含むMEM)にプレートして、次いで、細胞が70%コンフルエンスに達成するまで湿った5%CO2雰囲気でインキュベートした。触媒不活性高分子量uPA(DFP−uPA)を、約250,000cpm/μgの比活性に対してIodo−gen(登録商標)(Pierce)を用いて放射性ヨウ素で標識した。次いで、細胞含有プレートを氷上で冷却して、細胞を冷PBS/0.05%Tween−80で2回(各々5分)洗浄した。試験Absおよび/またはその結合体を、冷PBS/0.1%BSA/0.01%Tween−80中で連続希釈し、[125I]DFP−uPAの添加の10分前に最終容積0.3mLにして各ウェルに添加する。次いで、各ウェルに0.2nMの最終濃度で9500cpmの[125I]DFP−uPAを与える。次いで、プレートを4℃で2時間インキュベートし、その時間の後、細胞を冷PBS/0.05%Tween−80で3回(各々5分)洗浄する。NaOH(1N)を、0.5mL中の各ウェルに添加して細胞を溶解し、そしてプレートを室温で5分間または顕微鏡検査によって決定した場合、各ウェル中の全ての細胞が溶解するまでインキュベートする。次いで、各ウェルの内容物を吸引して、γカウンターを用いて各ウェル中の全カウントを決定する。各化合物を三連で試験し、結果を、[125I]DFP−uPA単独を含むウェル中で測定した全放射活性(最大(100%)結合を示すために得る)の割合として表す。
【0148】
uPARに対する[125I]DFP−uPAの結合阻害は通常、用量に関連し、その結果、曲線の線形部の範囲に含まれると予想される50%結合阻害(IC50値)を生じるのに必要な試験化合物の濃度を、容易に決定する。一般に、Absおよび/またはその結合体は、約10−5M未満のIC50値を有する。好ましくは、Absおよび/またはその結合体は、約10−6M未満、より好ましくは約10−7M未満のIC50値を有する。
【0149】
(抗uPAR抗体または他のリガンドの生物学的活性のアッセイ)
当業者は、本明細書中に記載するような、本発明のAbsまたは他のuPAR結合リガンドあるいはその結合体の活性を測定するための有用なインビトロアッセイおよびインビボアッセイが、例示であり、包括的でも限定するものでもないことが意図されることを理解する。
【0150】
(EC移動についてのアッセイ)
EC移動研究について、トランスウェルを、1つのトランスウェルにつき200μLのコラーゲン溶液を添加することによってI型コラーゲン(50μg/mL)でコーティングし、次いで37℃で一晩インキュベートする。このトランスウェルを、24ウェルプレート中に集めて、化学誘引物質(例えば図2)を、全容積0.8mLの培地中の底部のチャンバに添加する。トリプシンを用いて単層培養物から分離されたEC(例えば、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC))を、無血清培地で約106細胞/mLの最終濃度に希釈し、この細胞懸濁液の0.2mLを各トランスウェルの上部のチャンバに添加する。試験されるべきインヒビターは、上部および底部のチャンバの両方に添加され得、移動を37℃で湿った雰囲気下で5時間進行させる。このトランスウェルを、DiffQuik(登録商標)を用いて染色したプレートから取り除く。移動しなかった細胞を、消毒綿で剥離することによって上部のチャンバから除去し、膜を分離し、スライドガラス上に載せ、高倍率視野(400倍)でカウントして移動した細胞の数を決定する。
【0151】
(抗侵入活性の生物学的アッセイ)
Matrigel(登録商標)侵入アッセイシステムとして公知のアッセイにおけるECまたは腫瘍細胞(例えば、PC−3ヒト前立腺癌細胞)のような細胞の再構成基底膜(Matrigel(登録商標))を介して進入する能力は、周知である(Kleinmanら、Biochemistry 1986,25:312−318;Parishら、1992,Int.J.Cancer 52:378−383)。Matrigel(登録商標)は、IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、パールカン(perlecan)(bGFGに結合して局在化する))、ビトロネクチン(vitronectin)ならびにトランスホーミング成長因子−β(TGFB)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)およびプラスミノーゲン活性化因子インヒビターI型(PAI−I)として公知のセルピンを含む再構成底膜である(Chambersら、Canc.Res.1995,55:1578−1585)。細胞外レセプターまたは酵素を標的とするABおよび/またはその結合体あるいは他のリガンドについてのこのタイプのアッセイにおいて得られる結果は、インビボでのこれらのAbおよび/またはその結合体の効果の予測であることが、当該分野において容認されている(Rabbaniら、Int.Cancer 1995,63:840−845)。
【0152】
このようなアッセイは、トランスウェル組織培養挿入物を使用する。侵入性細胞を、Matrigel(登録商標)およびポリカーボネート膜の上面を介して横切る細胞と定義し、膜の底部に付着する。ポリカーボネート膜(8.0μmの孔サイズ)を含むトランスウェル(例えば、Costarから提供される)を、約75μg/mLの最終濃度(例えば、1つの挿入物につき60μLの希釈されたmatrigel(登録商標))に滅菌PBS中で希釈されているMatrigel(登録商標)(例えば、Collaborative Researchから提供される)でコーティングして、24ウェルプレートのウェル中に置く。膜を生物学的安全キャビネット中で一晩乾燥し、次いで、100μLの培地(例えば、DMEM)を添加することによって元に戻し、振盪テーブル上で1時間抗生物質を補足する。DMEMを吸引によって各々の挿入物から取り除き、0.8mLの完全なDMEM(+/10%FBSおよび抗生物質)を、それがトランスウェルの外側(「より低いチャンバ」)を囲むように、24ウェルプレートの各ウェルに添加する。抗生物質(100μL)を含むDMEM、ヒトGlu−プラスミノーゲン(5μg/mL)および試験される任意のインヒビターを、トランスウェルの内側の上面(より上のチャンバ)に添加する。試験される細胞を、トリプシン処理し、DMEM+抗生物質中で再懸濁し、約8×105細胞/mLの最終濃度でトランスウェルの上面のチャンバに添加する。上面チャンバの最終容積は、200μLに調整する。次いで、合わせたプレートを、湿った5%CO2雰囲気下で72時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を固定して、DiffQuik(登録商標)を用いて染色(Giemsa染色)し、次いで、上面のチャンバを、消毒綿を用いて剥離してMatrigel(登録商標)および膜を介して侵入しなかったあらゆる細胞を取り除く。膜を、X−acto(登録商標)ブレードを用いてトランスウェルから分離し、Permount(登録商標)およびカバースリップを用いてスライドガラス上に載せ、次いで、高倍率(約400倍)を用いて顕微鏡下でカウントする。5〜10の数えた領域からの侵入性細胞の平均数を計算し、インヒビター濃度の関数としてプロットする。
【0153】
(血管形成活性の管形成アッセイ)
調製または商業的に得られ得るEC(例えば、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞(HMVEC))を、フィブリノーゲン(1:1(v/v)の比でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に5mg/mL)を含む2×105細胞/mLの濃度で混合する。トロンビンを添加(5ユニット/mLの最終濃度)し、混合物をすぐに24−ウェルプレートにトランスフェクトする(各ウェルにつき0.5mL)。フィブリンゲルを形成させて、次いでVEGFおよびbFGFを、試験化合物とともに各ウェルに(各々5ng/mLの最終濃度で)添加する。細胞を、4日間5%CO2中で37℃にてインキュベートし、その時点で各ウェルの細胞をカウントし、丸い、分枝を有さない細長い、1つの分枝を有する細長い、2つ以上の分枝を有する細長い細胞のいずれかとして分類する。結果は、化合物の各濃度について5つの異なるウェルの平均として表す。一般的に、血管新生阻害因子の存在下において、細胞は、円形を維持するか、または、未分化管腔を形成した(例えば、0から1つの枝)。このアッセイは、当業界において、in vivo における血管新生(または抗−血管新生)の予測的な有効性として認識される(Min et al.,Cancer Res. 1996,56 : 2428−2433)。
【0154】
もう一方のアッセイにおいて、Matrigel(登録商標)上でECを培養する場合、EC管腔形成が観察される(SchnaperHWら、J.Cell.Physiol.1995,165:107−118)。104EC細胞/ウェルをMatrigel(登録商標)コーティング化24ウェルプレート上に移動し、48時間後に管腔形成を定量化する。それらをECとして同時に、または、その後の様々な時点において加えることによりインヒビターを試験する。また、管腔形成は、(a)血管新生成長因子(例えば、bFGFもしくはVEGF)(b)分化刺激剤(例えば、PMA)、または(c)これらの組み合わせ、を加えることにより刺激することができる。
【0155】
理論に束縛されることは望まないが、このアッセイは、ECに基底膜の特定の型、すなわち、遊走および分化しているECが最初の遭遇として予期され得るマトリックスの層に提示することにより、血管新生のモデルになる。結合した成長因子に加えて、Matrigel(登録商標)中(およびインサイチュにおける基底膜中)で見出されるマトリックス成分、またはそのタンパク質分解性生産物もまたEC管腔形成のための刺激因子であり得、このことは、このモデルを前述したフィブリンゲル血管新生モデルに対して相補的なモデルにする(Blood,CHら、Biochim.Biophys.Acta 1990,1032:89−118;Odedra,Rら.,Pharmac.Ther.1991,49:111−124)。
【0156】
(細胞増殖の阻害のためのアッセイ)
ECの増殖を阻害するための、本発明のAbおよび/または結合体の能力は、96ウェルフォーマット中で決定できる。プレートのウェルをコーティングするために、I型コラーゲン(ゼラチン)を使用する(室温で30分間、0.1mLウェル当たりPBS中に0.1〜1mg/mL)。そのプレートを洗浄後(PBSを用いて3回)、ウェル当たり3〜6×103細胞をプレートし、そして、上皮細胞成長培地(EGM;Clonetics)または0.1〜2%FBSを含むM199培地中で4時間付着させる(37℃/5%CO2)。その培地およびいかなる非接着細胞も4時間後に除去し、そしてbFGF(1〜10ng/mL)またはVEGF(1〜10ng/mL)を含む新鮮な培地を各ウェルに加える。試験する抗体および/または結合体を最後に加え、そして、そのプレートを24〜48時間インキュベートさせる(37℃/5%CO2)。色素生産性化合物MTS(Promega)を各ウェルに加え、そして、1〜4時間インキュベートさせる。各ウェルで発達する色は、直接、細胞数に比例し、それによって、カウントしている細胞の代わりとして役立つ。490nmでの吸光度を、細胞数、すなわちコントロールウェルと試験Abおよび/または結合体を含むこれらとの間の増殖における違いを決定するために使用する。
【0157】
同様のアッセイ系を、培養した付着性腫瘍細胞で行うことができる。しかしながら、コラーゲンは、このフォオーマット中で取り除くことができない。腫瘍細胞(例えば、3〜10×103/ウェル)をプレート、そして、一晩付着させる。次いで、無血清培地をウェルに加え、そして、その細胞を24時間同調させる。次いで、増殖を刺激するために10%FBSを含む培地を各ウェルに加える。試験される抗体および/または結合体は、いくつかのウェルに含まれる。24時間後、MTSをそのプレートに加え、そして、そのアッセイを発色させ、そして、上述のように判断する。
【0158】
(増殖毒性のアッセイ)
Abおよび/またはその結合体の抗増殖性物質および細胞毒性効果を、腫瘍細胞、EC、線維芽細胞およびマクロファージを含む、種々の細胞型について決定し得る。これは、治療部分(例えば、放射線治療)または毒素に結合されているAbを試験する場合、特に有用である。例えば、131Iでヨウ素化されたBolton−Hunter試薬を含む本発明のAbの1つの結合体は、uPARを発現する細胞の増殖を(ほとんどアポトーシスを誘発することによって)阻害すると予想される。抗増殖性物質効果は、腫瘍細胞および刺激された内皮細胞に対すると予想されるが、いくつかの状況下において、内皮細胞も正常なヒト真皮線維芽細胞も必要とされない。正常な細胞において観測される任意の抗増殖性物質または細胞毒性効果は、結合体の非特異的毒性を示し得る。
【0159】
代表的なアッセイは、96ウェルプレートにおいて1つのウェルにつき5〜10,000個の細胞の密度でプレーティングした細胞に関する。試験される化合物は、結合アッセイにおいて測定される10倍のIC50の濃度(これは、結合体に依存して変化する)で添加され、30分間細胞とともにインキュベートされる。細胞を培地とともに3回洗浄し、次いで、[3H]チミジン(1μCi/mL)を含む新鮮な培地を細胞に添加し、それらを24時間および48時間、5%CO2下で37℃にてインキュベートさせる。細胞を、1M NaOHを用いて種々の時点で溶解し、β−カウンターを用いて1ウェルあたりカウントする。増殖は、全細胞数を測定するためにMTS試薬またはCyQuant(登録商標)を用いて測定された非放射活性である。細胞毒性アッセイ(細胞溶解を測定すること)について、Promega96−ウェルプレート細胞毒性キットを使用する。抗増殖活性の証拠が存在する場合、アポトーシスの誘発が、TumorTACS(Genzyme)を用いて測定され得る。
【0160】
(カスパーゼ−3活性)
ECのアポトーシスを促進するAbおよび/または結合体の能力は、カスパーゼ−3の活性化を測定することにより、決定され得る。I型コラーゲン(ゼラチン)は、P100プレートをコーティングするために使用し、そして、10%FBCを含むEGM中で5×105ECを播種する。24時間後(5%CO2中37℃にて)、2%FBS、10ng/mlのbFGFおよび所望する試験化合物を含むEGMで、その培地を置き換える。6時間後、細胞を回収し、1%Triton−100界面活性剤中で細胞溶解液を調製し、そして、EnzChek(登録商標)カスパーゼ−3Assay Kit #1(Molecular Probes)を使用して、製造業者の指示に従いアッセイする。
【0161】
(角膜血管新生モデル)
使用されるプロトコルは、本質的に、Volpert,OVら、J.Clin.Invest.1996,98:71−679により記載されたものと同じものである。つまり、雌性Fischerラット(120〜140グラム)を麻酔し、そしてHydron(登録商標)、bFGF(150nM)、および試験されるAbおよび/またはその結合体から成るペレット(5μl)を、縁から1.0〜1.5mmの角膜中に小さく切開した部分に移植する。新血管新生を、移植後5日目および7日目にアッセイする。7日目に、動物を麻酔し、そして、血管を染色するために色素、例えば、コロイド性炭素で注射する。次いで、動物を安楽死させ、角膜をホルマリンで固定し、そして、角膜を平板化し、そして、新血管新生の程度を評価するために撮影する。新血管は、全血管範囲もしくは長さを画像化することにより、または単に血管をカウントすることにより定量化され得る。
【0162】
(ニワトリ絨毛尿膜(CAM)の血管新生アッセイ)
このアッセイは、本質的に、Nguyenら、Microvascular Res.1994,47:31〜40に記載されるように行う。血管新生因子(bFGF)または腫瘍細胞プラス試験化合物(ここでは抗−uPAR Abまたは結合体)のいずれかを含むメッシュを、8日齢のニワトリ胚のCAM上に置き、そして、その試料の移植後、3〜9日間、CAMを観察する。血管新生は、見える血管を含むメッシュ中の平方の百分率を測定することにより定量化する。
【0163】
(Matrigel(登録商標)プラグアッセイ)
このアッセイは、本質的に、Passaniti,Aら、1992,Lab Invest.67:519−528に記載されるように行う。氷冷Matrigel(登録商標)(例えば、500μL)(Collaborative Biomedical Products,Inc.,Bedford,MA)を、ヘパリン(例えば、50μg/ml)、FGF−2(例えば、400ng/ml)および試験される化合物と混ぜる。いくつかのアッセイにおいて、bFGFを血管新生刺激として腫瘍細胞と置換し得る。Matrigel(登録商標)混合物は、4〜8週齢の胸腺欠損ヌードマウスの腹腔正中付近に、好ましくは、マウス当たり3回、皮下的(s.c)に注射する。注射したMatrigel(登録商標)は明白な固形ゲルを形成する。注射部位は、各動物に、ポジティブコントロールプラグ(例えば、FGF2+ヘパリン)、ネガティブコントロールプラグ(例えば、バッファー+ヘパリン)および、血管新生における効果のために試験される化合物を含むプラグ(FGF−2+ヘパリン+化合物)を与えるように選択する。全ての処置群は、好ましくは、三連で行う。注射から約7日後、または、血管新生の観察に最適であり得る時に、動物を頚椎脱臼により屠殺する。そのマウスの皮膚を、腹腔正中にそって剥離し、そして、Matrigel(登録商標)プラグを回収し、そして、高解像度において、直ちに走査する。次いで、プラグを水中に分散し、そして、37℃で一晩インキュベートする。ヘモグロビン(Hb)レベルを、Drabkin’s溶液(例えば、Sigmaから得られる)を使用して、製造業者の指示に従い決定する。プラグ中のHbの量は、試料中の血液量を反映するので、血管新生の間接的な尺度となる。
【0164】
さらに、またはあるいは、屠殺する前に、フルオロフォアと結合する高分子量デキストランを含む0.1mlのバッファー(好ましくはPBS)を、動物に注射してもよい。分散したプラグ中の蛍光定量的に決定される蛍光量もまた、プラグ中の血管新生の尺度として役立つ。mAb抗−CD31(CD31は「血小板−内皮細胞吸着分子」、「PECAM」である)での染色はまた、プラグ中の新血管新生および微小血管密度を確認するために使用され得る。
【0165】
(腫瘍細胞を用いてMatrigel(登録商標)プラグアッセイを使用するインビボにおける血管新生阻害および抗腫瘍効果の評価)
このアッセイにおいて、腫瘍細胞、例えば、1〜5×106細胞の3LL Lewis肺癌腫、または、ラット前立腺細胞株のMatLyLuをMatrigel(登録商標)と混合し、次いで、上記のプロトコルに従い、マウスの横腹に注射する。およそ5〜7日後、プラグ中で、腫瘍細胞の集団および強力な血管新生応答を観察することができる。実際の腫瘍環境における化合物の抗腫瘍および抗血管新生作用はプラグ中において含まれることにより評価することができる。次いで、腫瘍重量、Hbレベルまたは(屠殺前に注射したデキストラン−フルオロフォア結合体の)蛍光レベルを測定する。Hbまたは蛍光を測定するために、最初に、組織ホモジナイザーで、プラグを均一化する。
【0166】
(皮下腫瘍増殖の異種移植モデル)
(ヒト卵巣癌)
A2780ヒト卵巣癌株を、未処置の患者由来の腫瘍組織から構築した。A2780細胞を、2mMのグルタミン、0.01mg/mLのウシインスリン、および10%のFMSを補足したRPMI 1640培地中の単層として維持する(Hamilton,TCら、Sem.Oncol.1984;11:285−293;Behrens,BCら、Cancer Res.1987;47:414−418)。200万個のA2780を、ヌードBalb/c雌性マウスの右側においてインキュベートする。A2780腫瘍を、処置を行う前に50〜200mm3の範囲にする。IgG制御Abおよび抗D2D3 uPAR mAbを、1週間に2回(月曜日および金曜日)、10mg/kgにて腹腔内経路によって投与する。シスプラチン処置群を1000mm3にし;動物に1週間に1度、6mg/kgを与えた。腫瘍体積を1週間に2回測定した。屠殺時に、血漿を得、各動物から腫瘍を切除する。腫瘍の半分を、生化学的評価のために簡単に凍らせ、残りを、組織学的評価のために亜鉛固定液に入れる。
【0167】
(ヒト肺癌)
A549、ヒト肺癌(ATCCカタログ番号CCL−185)株を、58齢のCaucasian雌由来の肺癌組織の移植片培養によって構築した(Giard,DJら、J.Natl.Cancer Inst.51:1417−23(1973))。A549細胞を、2mMのL−グルタミン、0.15%のNaHCO3、および10%のFBSを補足したHam’s F12K培地中に維持する。
【0168】
約106個のA549癌細胞を、C.B−17/Sys(scid/scid)重症複合型免疫不全(SCID)雌性マウスの右側にインキュベートする。好ましくは、処置は、腫瘍インキュベーションの後の日に開始される。IgG制御Ab(およびPBS制御)および抗−D2D3 uPAR mAb ATN−658を、月曜日と金曜日の1週間に2回、腹腔内に10mg/kg投与する。最初に、腫瘍体積を1週間に1回測定する。任意の処置群の体積が、300mm3を超えた場合、測定を1週間に2回得る。
【0169】
屠殺時に、血漿を得、各動物から腫瘍を切除する。腫瘍の半分を生化学的評価のために簡単に凍らせ、残りを組織学的評価のために亜鉛固定液に入れる。
【0170】
(転移の異種移植モデル)
Abおよび/または結合体は、Crowleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993,90 5021〜5025のモデルのような実験的な転移モデルを使用して、後期転移の阻害について試験された。後期転移は、腫瘍細胞が接着して血管外遊出し、局所的に侵襲し、播種し、増殖し、そして新脈管形成を誘導する工程を包含する。レポーター遺伝子、好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、しかし代替的として酵素クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子をコードする遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子をコードする遺伝子、またはLacZをコードする遺伝子をトランスフェクトしたヒト前立腺癌細胞(PC−3)は、ヌードマウスに接種される。このアプローチは、これらのマーカーのいずれかの利用(GFPの蛍光検出、または種々の酵素の組織化学的比色分析)を可能にし、これらの細胞の運命を追跡する。細胞は好ましくは静脈注射されて、約14日後に特に肺において転移が確認されるが、領域リンパ節、大腿骨および脳においても確認される。このことは、ヒト前立腺癌における天然で発生する転移の臓器向性を模倣している。例えば、GFP−発現PC−3細胞(マウスあたり106細胞)がヌードマウス(nu/nu)の尾部静脈中に静脈注射される。動物は、試験化合物で処置される。腹腔内に(IP)1日4回(q.d.)投与される、1日あたり動物あたり100μgの試験化合物により処置される。単独の転移細胞または病巣は、蛍光顕微鏡または光学顕微鏡の組織化学によって、あるいは検出可能な標識の組織的かつ定量的な比色分析アッセイを積み重ねること(grinding)によって可視化されそして定量され得る。
【0171】
(薬学的組成物および治療組成物、ならびにそれらの投与)
本発明の薬学的組成物において使用され得る化合物、およびそれら化合物の薬学的に受容可能な塩は、上記のような全てのポリペプチド分子、好ましくは抗体を含む。塩基性基を含む本発明の化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩は、当該分野で公知の方法によって、強力なまたは中程度に強力な、無毒性の有機酸または無機酸と適合する場合に形成される。本発明に包含される酸付加塩の例示は、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および硝酸塩である。
【0172】
酸性基を含む本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩基付加塩は、有機塩基または無機塩基から公知の方法によって調製され、そしてこのような塩としては、例えば、無毒性のアルカリ金属塩基およびアルカリ土類塩基(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよび水酸化アンモニウム)が挙げられ;そして無毒性の有機塩基(例えば、トリメチルアミン、ブチルアミン、ピペラジンおよびトリ(ヒドロキシメチル)メチルアミン)が挙げられる。
【0173】
上記に定めたように、本発明の化合物はEC増殖、運動性または侵襲性および新脈管形成を阻害する能力を有し、これらの能力は癌、特に転移性癌の処置において活用される。本発明の組成物は、それ自体で活性であり得るか、またはインビボで活性形態へと変換される「プロドラッグ」として作用し得る。
【0174】
(治療的に標識された組成物)
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるmAbは、「治療的に結合体化される」かまたは「治療的に標識され」(これらの用語は相互に交換されることが意図される)、そしてその化合物が進行して(home)結合する部位(例えば、腫瘍の転移部位、または感染/炎症の病巣、再狭窄または線維症)へと治療剤を送達するために使用される。用語「治療的に結合体化される」は、改変されたmAbが、腫瘍の侵襲、新脈管形成、炎症または他の病理の根底の原因または「要素」のいずれかに向けられる別の治療剤と結合体化されることを意味する。治療標識されたポリペプチドは、適切な治療「標識」を有し、これはまた本明細書中で「治療部分」と称される。治療部分は原子、分子、化合物または任意の化学成分がペプチドに付加されて、標的の疾患または状態を処置するのに活性にさせ、その主要な1つは所望されない新脈管形成と関連する。この治療部分は、直接的または間接的にmAbに結合され得る。治療的に標識されたmAbは、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む薬学的組成物として投与され、そして好ましくはこれは注射に適した形態である。
【0175】
有用な治療的放射性同位体の例としては、以下が挙げられる:47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbおよび217Bi。これらの原子は、ペプチドと直接的に結合体化され得るか、キレートの一部として間接的に結合体化され得るか、またはヨウ素の場合にはヨウ素化Bolton−Hunter基の一部として間接的に結合体化され得る。この放射性ヨウ素は、この基がペプチド化合物に結合される前または後のいずれかに導入され得る。
【0176】
放射性核種結合体の好ましい用量は、標的部位に送達される特異的放射活性の関数であり、これは腫瘍型、腫瘍の位置および血管新生、ペプチドキャリアの動力学および体内分布、その核種による放射性排出物のエネルギー、などにより変動する。放射線療法の当業者は、過度の実験なく所望の治療利益を達成する特定の核種の用量と組み合わせたペプチドの用量を容易に調節し得る。
【0177】
本明細書に包含される別の治療アプローチとしては、ボロン中性子捕獲治療法の使用であり、ここでボロン化ペプチドは所望の標的部位(例えば、腫瘍、最も好ましくは、頭蓋内腫瘍)に送達される(Barth,RF,Cancer Invest.74.534〜550(1996);Mishima,Y(編),Cancer Neutron Capture Therapy,New York:Plenum Publishing Corp.,1996;Soloway,AHら(編),J.Neuro−Oncol.33:1〜188(1997))。安定な同位体10Bは、低エネルギー(0.025ev未満)の熱中性子を照射され、得られた核捕獲物はα−粒子および7Li核を生じ、これらは線形な高いエネルギー転移およびを有し、そしてそれぞれ約9μmおよび約5μmの路長を有する。この方法は腫瘍における10Bの蓄積に基づき、血液、上皮細胞および正常組織(例えば、脳)においてはより低いレベルである。このような送達は、上皮増殖因子を使用して達成されている(Yang.Wら,Cancer Res 57:4333−4339(1997))。
【0178】
本発明の方法に従ってmAbに結合され得る他の治療剤は、薬物、プロドラッグ、プロドラッグを活性化させるための酵素、因子を感光性するための酵素、核酸治療剤、アンチセンスベクター、ウイルスベクター、レクチンおよび他の毒素である。
【0179】
レクチンは、炭化水素に結合する、一般に植物に由来するタ質ンパクである。他の活性の中でも、いくつかのレクチンは毒性である。既知の大部分の細胞毒性物質のうちのいくつかは、細菌起源および植物起源のタンパク質毒素である(Frankel,AEら、Ann Rev Med37:125−142 (1986))。これらの分子は細胞表面に結合し、細胞のタンパク質合成を阻害する。最も一般的に使用される植物毒素はリシンおよびアブリンである;最も一般的に使用される細菌毒素は、ジフテリア毒素およびPseudomonas細胞外毒素Aである。リシンおよびアブリンの場合、これらの結合機能および毒性機能は、2つの別個のタンパク質サブユニットであるA鎖およびB鎖に含まれる。このリシンB鎖は、細胞表面の炭水化物に結合し、A鎖の細胞内への取り込みを促進する。一旦細胞内に入ると、このリシンA鎖は、真核細胞のリボソーム60Sサブユニットを不活性化することによってタンパク質合成を阻害する(Endo,Y.ら、J.Biol.Chem.262:5908〜5912(1987))。単鎖のリボソーム阻害性タンパク質である他の植物由来の毒素としては、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コムギ胚タンパク質、ゲロニン、ジアンチン(dianthin)、モモカリン(momorcharin)、トリコサンチンなどが挙げられる(Strip,F.ら,FEBS Lett.795:1〜8(1986))。ジフテリア毒素およびPseudomonas細胞外毒素Aはまた、単鎖タンパク質であり、これらの結合機能および毒性機能は、同じタンパク質の別個のドメインに存在する。Pseudomonas細胞外毒素Aは、ジフテリア毒素と同じ触媒活性を有する。リシンは、Abのような分子を標的化して毒性効果の部位特異的な送達を可能にするために、その毒性のα−鎖に結合することによって治療的に使用されている。細菌毒素はまた、抗腫瘍結合体として使用されている。本明細書中で意図されるように、毒性ペプチド鎖およびまたは毒性ドメインは、本発明の化合物と結合体化され、そして部位特異的様式でその毒性活性が所望される標的部位(例えば、転移性の病巣)へと送達される。トキシンとタンパク質(例えば、Ab)または他のリガンドとの結合体は、当該分野で公知である(Olsnes,Sら,Immunol Today 70:291〜295(1989);Vitetta,ESら, Ann.Rev Immunol 3:197〜212(1985))。
【0180】
DNA合成、RNA合成およびタンパク合成が挙げられる、重要な細胞内プロセスを阻害する細胞傷害性薬物は、Abと結合体化され、続いてインビボ治療に使用された。このような薬物(ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、およびミトマイシンCが挙げられるがこれらに限定されない)はまた、本発明の化合物と結合され、この形態で治療に使用した。
【0181】
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な塩は、通常の投薬形態(例えば、カプセル、浸透性ウェハ、錠剤または注射可能調製物)に組み込まれ得る。固体または液体の薬学的に受容可能なキャリアが使用され得る。
【0182】
固体キャリアとしては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、テラコッタ、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。液体キャリアとしては、シロップ、落花生油、オリーブ油、生理食塩水、水、ブドウ糖、グリセロールなどが挙げられる。同様に、キャリアまたは希釈剤としては、任意の徐放性材料(例えば、モノステアリン酸グリセリン、またはジステアリン酸グリセリン)を、単独でかまたはワックスと共に含み得る。液体キャリアが使用される場合、その調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョン、軟ゼラチンカプセル、滅菌の注射可能な液体(例えば、溶液)(例えば、アンプル)、または水性もしくは非水性の液体懸濁物の形態であり得る。このような薬学的組成物の要約は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton Pennsylvania(Gennaro 第18版 1990)に見出され得る。
【0183】
薬学的調製物は、薬学科学の通常の技術に従って作製され、錠剤形態に必要とされる場合、混合、顆粒化および圧縮の工程のような工程を包含し、また経口投与、非経口投与、局所投与、経皮投与、膣内投与、陰茎内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、頭蓋内投与、眼内投与、耳内投与、および直腸投与のための所望の産物を得るため、適切なように、成分を混合、充填、および溶解する工程を包含する。薬学的組成物はまた、少量の無毒性の助剤物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)を含み得る。
【0184】
本発明は、多くの動物の属および種のいずれの診断または処置にも使用され得、そしてヒト医薬または獣医薬の実施において等しく利用可能である。従って、本薬学的組成物を使用して、トリおよびより好ましくは哺乳動物、ならびにヒトが挙げられる、家畜動物および商業動物を処置し得る。
【0185】
用語「全身投与」とは、被験体の循環系中への化合物の導入を生じる様式、またはそれ以外に生体全体への拡散を可能にする様式(例えば、静脈内(i.v.)注射または静脈内注入)での、本明細書中に記載されるペプチドのような組成物または因子の投与を称する。「局所的(regional)」投与は、特異的かつ幾分より限定された解剖学上の空間内(例えば、腹腔内、包膜内、硬膜下)または特異的な器官に対する投与をいう。例としては、膣内、陰茎内、鼻腔内、気管支内(または肺点滴注入)、頭蓋内、耳内、または眼内が挙げられる。用語「局所(local)投与」とは、限定された(または境界のある)解剖学上の空間(例えば、腫瘍塊内への腫瘍内注射、皮下(s.c.)注射、筋肉内(i.m.)注射)をいう。当業者は、局所(local)投与または投与(regional)投与は、しばしば、循環系内への組成物の侵入を生じる。すなわち、皮下または筋肉内はまた、全身のための経路である。注射可能または注入可能な調製物は、溶液または懸濁物として、注射または注入前に液体中での溶液または懸濁物に適切な固体形態、あるいはエマルジョンとしてのいずれかの従来の形態で調製され得る。好ましい投与経路は、全身性(例えば、静脈内)であるが、薬学的組成物は、局所的または経皮(例えば、軟膏、クリームまたはゲル);経口;直腸(例えば、坐薬として)で投与され得る。
【0186】
局所(topical)投与のため、化合物は局所適用されるビヒクル中に、例えば、塗剤または軟膏として、局所的(topically)または経皮的に投与され得る。活性成分のためのキャリアは、噴霧可能形態または非噴霧可能形態のいずれかであり得る。非噴霧可能形態は、局所(topical)適用に固有のキャリアを含み、そして好ましくは水の動粘度より大きい動粘度を有する、半固体形態または固体形態であり得る。適切な処方物としては、溶液、懸濁物、エマルジョン、クリーム、軟膏、粉末、リニメント剤、塗剤などが挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合、これらは、滅菌され得るか、または助剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または浸透圧などに影響するための塩)と混合され得る。非噴霧可能な局所調製物のための好ましいビヒクルとしては、軟膏の基剤(例えば、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000);HEBクリームのような慣習的なクリーム;ゲル;ならびにワセリンなど)が挙げられる。
【0187】
また、化合物が、好ましくは固体または液体の不活性なキャリア材料と組み合わせて、圧搾(squeeze)ボトルに包装されるか、または加圧された揮発性の、通常は気体の推進剤と混合された、噴霧可能なエアロゾル調製物は、局所(topic)の投与および肺点滴注入に適切である。このエアロゾル調製物は、本発明の化合物に加えて、溶媒、緩衝剤、界面活性剤、香料、および/または酸化防止剤を含み得る。
【0188】
このましい局所(topical)適用のため、特にヒトのため、影響を受ける領域(例えば、皮膚表面、粘膜性の膜、目など)に対する有効量の化合物の投与が好ましい。この量は一般的に、処置される領域、症状の重篤度、および使用される局所用ビヒクルの性質に依存して、投与あたり約0.001mg〜約1gの範囲である。
【0189】
本発明のポリペプチド組成物のための他の薬学的に受容可能なキャリアは、リポソームであり、これは活性なタンパク質が、脂質層に接した水性中心層からなる小体中に分散されるかまたは種々に存在して含まれる、薬学的組成物である。活性ポリペプチドは、好ましくは、内部または外部の水性層または脂質層に存在するか、あるいは任意の事象の際、リポソーム性懸濁物として一般に公知の非均一系中に存在する。疎水層、すなわち脂質層は、一般に、リン脂質(例えば、レクチンおよびスフィンゴミエリン)、ステロイド(例えば、コレステロール)、イオン性を増減させる界面活性物質(例えば、ジセチルホスフェート、ステアリルアミンまたはホスファチジン酸)、および/または疎水性性質の他の材料を含むが、これらに限らない。当業者は、本リポソーム性処方物の他の適切な実施形態を理解する。
【0190】
腫瘍または癌を処置するための治療組成物は、ペプチドに加え、1つ以上のさらなる抗腫瘍剤、例えば、細胞分裂インヒビター(例えば、ビンブラスチン);アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド);葉酸インヒビター(例えば、メトトレキセート、ピリトレキシム(piritrexim)またはトリメトレキサート);抗代謝物(例えば、5−フルオロウラシルおよびシステインアラビノシド);間入性(intercalating)抗生物質(例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン);酵素または酵素インヒビター(例えば、アスパラギナーゼ、エトポシドのようなトポイソメラーゼインヒビター);または生物学的応答変更因子(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン)を含み得る。実際に、本明細書中に開示されるペプチドと組み合わせて任意の公知の抗癌剤を含む組成物は、本発明の範囲内である。薬学的組成物はまた、標的とする患者が危険性を有するさらなる症状を処置するための1つ以上の他の医薬、例えば、抗感染剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤および抗球菌(coccidial)剤が挙げられる)を含み得る。
【0191】
投与される治療投薬量は、当業者によって知られるかまたは容易に確認可能であるような、治療上有効な量である。この用量はまた、レシピエントの年齢、健康および体重に依存し得、現在の処置の種類、存在する場合、処置の頻度に依存し得、そして所望される作用の性質(例えば、抗炎症作用または抗細菌作用)に依存し得る。
【0192】
(治療方法)
本発明の方法は、上皮細胞の増殖および遊走を阻害することによって、被験体における腫瘍の増殖および侵襲を阻害するため、または腫瘍により誘導される新脈管形成を抑制するために使用され得る。腫瘍の増殖もしくは侵襲または新脈管形成を阻害することによって、これらの方法は、腫瘍転移の阻害を生じる。脊椎動物被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトは、腫瘍の増殖、侵襲または新脈管形成を阻害するのに有効な量の化合物を投与される。化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、好ましくは、上記のような薬学的に受容可能な組成物の形態で投与される。
【0193】
タンパク質(Abを含む)、ペプチド、ペプチド多量体などの用量としては、好ましくは、有効量のペプチドを含む薬学的投薬量が挙げられる。投薬量単位形態は、単位用量として哺乳動物被験体に適する物理的に別個の単位を称する。各々の単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、必要とされる薬学的キャリアと共に含む。本発明の投薬量単位形態についての詳述は、以下によって示されるかまたは以下に直接的に依存する:(a)活性物質の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および(b)個々の被験体の処置または感受性に対してこのような活性化合物を合成することについての、当該分野における固有の制限事項。
【0194】
有効量によって、疾患の任意の関連パラメータの測定可能な低減を生じ、そして原発性腫瘍もしくは転移性腫瘍の増殖、炎症反応性の許容される任意の指数、または疾患を有さない間隔もしくは生存の測定可能な長期化を含み得る、インビボでの安定状態の濃度を達成するのに有効な量を意味する。例えば、患者の20%において腫瘍を低減することは、効力があるとみなされる(Frei HI,E.,The Cancer Journal 3:127〜136(1997))。しかし、この量の効果は、本発明に従って効果的である用量のための最小限の要件であるとはみなされない。
【0195】
1実施形態において、有効用量は、好ましくは、本明細書中に記載されるインビボアッセイにおいて50%有効用量(ED50)の化合物よりも10倍高く、より好ましくは100倍高い。
【0196】
投与されるべき活性化合物量は、選択される正確なペプチドまたは誘導体、疾患または状態、投与経路、レシピエントの健康および体重、他の現在の処置の存在、存在する場合には処置の頻度、所望される効果の性質、例えば、腫瘍転移の阻害、ならびに熟練した実施者の判断に依存する。
【0197】
腫瘍を有する被験体、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトを処置するための好ましい用量は、体重1kgあたりの活性ポリペプチドベースの化合物の約100mgまでの量である。ペプチドまたはペプチド模倣物の代表的な単回の投薬量は、体重1kgあたり約1ng〜約100mgの間である。局所適用のため、化合物の約0.01%〜20%の濃度範囲(体重あたり)、好ましくは1%〜5%の濃度範囲の投薬量が提案される。約0.1mg〜約7mgの範囲の1日の総投薬量は、静脈内投与に好ましい。しかしながら、前述の範囲は示唆的である。なぜなら、個々の処置レジメンにおけるこの数の変動性は大きく、そしてこれらの好ましい値から考慮可能な可動域が期待されるからである。
【0198】
インビトロでの上皮細胞の増殖または遊走を阻害するためのペプチドの有効量または有効用量は、細胞あたり約1pg〜約5ngの範囲である。有効用量および最適用量は、インビトロで本明細書中に記載される方法を使用して決定され得る。
【0199】
本発明の化合物は、腫瘍細胞または上皮細胞の増殖、遊走、侵襲に対する阻害効果、もしくは新脈管形成に対する阻害効果、腫瘍転移に対する阻害効果、または炎症反応に対する阻害効果を生じることとして、特徴付けられる。これらの化合物は、腫瘍を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗腫瘍効果を生じるのに特に有用であり、ここで新脈管形成の阻害は、腫瘍のサイズもしくは増殖速度の低減、または腫瘍の破壊を生じる。好ましくは、被験体はヒトである。
【0200】
上記の方法が有効である疾患または状態のより長い例としては、固形腫瘍、白血病またはリンパ腫の主要な増殖;腫瘍の侵襲、転移または腫瘍転移物の増殖;良性の過形成;アテローム性動脈硬化;心筋の新脈管形成;バルーン後の血管形成術の動脈再狭窄;動脈外傷後の新規内膜(neointima)形成;動脈移植物の再狭窄;冠状動静脈副枝の形成;深部静脈血栓症;虚血性四肢の新脈管形成;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;血管新生緑内障;糖尿病性網膜症および他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性新生血管形成;黄斑変性;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性状態と関連した線維症、外傷性脊髄損傷(虚血性、瘢痕性または線維性が挙げられる);肺線維症、化学療法誘導性線維症;瘢痕および線維症を伴う損傷の治癒;消化性潰瘍;骨折;または病原性細胞侵襲もしくは新脈管形成と関連した脈管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害。
【0201】
上記方法によって処置されるべき好ましい疾患または状態は、腫瘍増殖、侵襲または転移である。これには、脳腫瘍が挙げられる。このような脳損傷の例は、神経膠星状細胞腫、未分化神経膠星状細胞腫、グリア芽細胞腫、グリア芽細胞腫多型、極細胞(pilocytic)神経膠星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫、上衣下巨細胞神経膠星状細胞腫、線維性神経膠星状細胞腫、大円形細胞性星状細胞腫、原形質性星状細胞腫、希突起神経膠腫、退形成型乏突起膠腫、脳室上衣細胞腫、未分化脳室上衣細胞腫、粘液乳頭型脳室上衣腫、上衣下腫、混合性稀神経膠星状細胞腫(mixed oligoastrocytoma)および悪性稀神経膠星状細胞腫である。
【0202】
また、本方法を使用して、子宮内膜症のような子宮疾患、および増殖性糖尿病性網膜症、新脈管性加齢関連黄斑変性、早熟の網膜症、鎌状赤血球網膜症または網膜血管閉塞と関連するかまたはそれらの原因である病原性の眼性新生血管形成を処置する。
【0203】
新脈管形成インヒビターは、炎症性新脈管形成および外傷性脊髄損傷後のグリオーシスを予防し、これによって神経接合性の再構築を促進するのに役割を果たし得る(Wamil,AWら、Proc.Nat’l.Acad.Sci USA 95:13188〜13193(1998))。従って、本発明の組成物は、外傷性脊髄損傷後の可能な限り速やか、そしてその後7日〜約2週間投与され、神経接合性の再構築を立体的に妨げる新脈管形成およびグリオーシスを阻害する。この処置は、脊髄損傷部位にける損傷領域を低減し、そして神経機能の再生を促進し、これによって麻痺を防止する。本発明の化合物は、また、ウォーラー変性から軸索を保護すること、アミノ酪酸媒介性分極(外傷を受けたニューロンに生じる)を反転すること、および培養中の分離された中枢神経系の細胞および組織の神経接合性の回復を向上させることが期待される。
【0204】
(一般的な組換えDNAモデル)
分子生物学の一般的方法は、当該分野において詳細に記載されている(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(またはその以降の版)、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989;Ausubel,Fら、Current Protocols in Molecular Biology,第2巻,Wiley−Interscience,New York,(現在の版);Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);Glover,DM編、DNA Cloning:A Practical Approach,第1巻および第2巻,IRL Press,1985;Alberts B.ら、Molecular Biology of the Cell,第4版(またはそれ以降の版),Garland Publishing,Inc.,New York,NY(2002);Watson,JDら、Recombinant DNA,第2版(またはそれ以降の版),WH Freeman & Co.;第2版(1993);ならびにOld,RWら、Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Engineering,第5版(またはそれ以降の版),Univ.of Calif.Press,Berkeley(1994)。
【0205】
他に示されない限り、特定の核酸配列は、その保存置換改変体(例えば、縮退コドンの置換体)および相補配列を包含することを意図される。用語「核酸」は、「ポリヌクレオチド」と同義語であり、そして遺伝子、DNA分子、mRNA分子、ならびにそれらの任意のフラグメント(例えば、オリゴヌクレオチド)そしてさらにその等価物(いかに十分に説明される)を含むことを意図される。核酸のサイズは、キロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかとして述べられる。これらは、アガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)から、使用者によって決定される核酸配列から、または公開されている核酸配列からの見積もりである。タンパク質サイズは、PAGEから、配列決定から、そのコード核酸配列に基づく予想アミノ酸配列から、または公開されたアミノ酸配列から、見積もられる。
【0206】
特に、本発明のポリペプチドまたはその活性改変体に対応するアミノ酸配列をコードするDNA分子は、本明細書中に開示されるタンパク質配列から導かれるプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,202号を参照のこと)によって、合成され得る。次いで、これらのcDNA配列は、真核細胞発現ベクターまたは原核細胞発現ベクター中に組込まれ得、そして得られたベクターを使用して、適切な宿主細胞(例えば、COS細胞またはCHO細胞)による、その融合ペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体の合成を指揮し得る。
【0207】
用語「核酸」は本明細書中で使用される場合、そのようなフラグメントまたは等価物を含むことを意図される。
【0208】
本ポリペプチドを発現するためトランスフォームまたはトランスフェクトされる原核細胞または真核細胞の宿主細胞は、本発明の範囲内である。例えば、ポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵母細胞(CHO)またはヒト細胞)(これらはトランスフェクトされた細胞のヒトの治療への使用に好ましい)において発現され得る。他の適切な宿主は、当業者に公知である。真核細胞における発現は、組換えペプチドの部分的もしくは完全なグリコシレーション、および/または適切な分子内鎖ジスルフィド結合または分子間鎖ジスルフィド結合の形成を導く。酵母S.cerevisiaeにおける発現用ベクターの例としては、pYepSecl(Baldariら、1987,EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjanら、1982 Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら、1987,Gene 54:113−123)、およびpYES2 Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)が挙げられる。培養した昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら、1983,MoI.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら、(1989)Virology 170:31−39)が挙げられる。一般的に、COS細胞(Gluzman 1981 Cell 23:175−182)が、哺乳動物細胞における一過性の増幅/発現のためのpCDM8(Aruffoら、前出)のようなベクターと組み合わせて使用され、一方、CHO(dhfrネガティブCHO)細胞は、安定した増幅/発現のためのpMT2PC(Kaufmanら、1987,EMBOJ.6:187−195)のようなベクターと組み合わせて使用される。NS0ミエローマ細胞株(グルタミン合成酵素発現系)は、Celltech Ltdより使用可能である。
【0209】
所望のコード配列およびコントロール配列を含む適切なベクターの構築は、当該分野で周知の標準的なライゲーション技術および制限技術を使用する。単離されたプラスミド、DNA配列または合成オリゴヌクレオチドは、所望の形態に切断され、加工(talor)され、そして再ライゲーションされる。ベクターを形成するDNA配列は、多くの供給源より利用可能である。骨格ベクターおよびコントロール系は、一般的に、構築において大部分の配列について使用される、利用可能な「宿主」ベクターに見られる。関係するコード配列のため、最初の構築物は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー由来の適切な配列を回復するものであり得、通常はそのようなものである。しかし、一旦配列が開示されると、個々のヌクレオチド誘導体から開始する遺伝子配列全体をインビトロで合成することが可能である。500bp〜1000bpの範囲の長さの遺伝子に関する遺伝子配列全体は、個々の重複する相補的オリゴヌクレオチドを合成し、そしてデオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下でDNAポリメラーゼを使用して非重複部分の1本鎖を埋めることによって調製され得る。このアプローチは、公知配列のいくつかの遺伝子の構築において首尾よく使用されている。例えば、Edge,Nature 1981,292:756;Nambairら,Science 1984,223:1299;およびJay,J.Biol.Chem.1984,259:6311を参照のこと。合成オリゴヌクレオチドは、上記の参考文献、またはBeaucageら,Tetrahedron Lett.1981,22:1859;およびMatteucciら,J.Am.Chem Soc.1981,103:3185により記載される方法によって調製され得る。
【0210】
所望のベクターの成分は、標準的な制限手順およびライゲーション手順を使用して切り出しおよびライゲーションされ得る。部位特異的DNA切断は、適切な制限酵素を用いて、当該分野で一般的に理解されている条件およびこれら市販の制限酵素の製造業者により特定されるその条件の詳細の下で処理することによって実施される。例えば、New England Biolabsの製品カタログを参照のこと。所望の場合、切断フラグメントのサイズ分離は、標準的なポリアクリルアミドゲル電気泳動手順またはアガロースゲル電気泳動手順によって実施され得る(例えば、Meth Enzymol.(1980)65:499−560)。
【0211】
コード配列に突然変異を導入して変異体を生成するため(これらが組み換え産生されるべき場合)、多くの方法が使用され得る。これらの突然変異としては、単純な欠失または挿入、バーのクラスターの系統的な欠失、挿入または置換、あるいは単塩基置換が挙げられる。部位特異的突然変異誘発によるDNA配列の改変は周知の技術であり、そのためのプロトコルおよび試薬は市販されている(Zollerら,Nucleic Acids Res.1982,10:6487−6500;Adelmanら,DNA 1983,2:183−193)。単離されたDNAは、制限方法によって分析され、そして/またはジデオキシヌクレオチド方法によって配列決定される(Sanger,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1977,74:5463;Messingら,Nucleic Acids Res.1981,9:3091またはMaxamら,Meth.Enzymol.、前出)。
【0212】
ベクターDNAは、リン酸カルシウム共沈殿物もしくは塩化カルシウム共沈殿物、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションのような慣用的な手順を介して哺乳動物細胞中に導入され得る。宿主細胞を形質転換するのに適切な方法は、Sambrookら、前出または他の標準的なテキストにおいて見出され得る。融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性の切断部位は、レポーター群と標的タンパク質との連結において導入されて、その融合タンパク質の精製に続く、レポーター群からのその標的タンパク質の分離を可能にする。このような切断配列および認識配列のためのタンパク質分解酵素としては、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。
【0213】
ここで、本発明を一般に記載したが、類似物は以下の実施例の参照を介してより容易に理解される。これら実施例は、例示のための提供であって、特記しない限り、本発明の限定ではないことを意図される。
【実施例】
【0214】
(実施例I)
(材料および方法)
(タンパク質発現細胞株)
Drosophila発現系(DESTM;Invitrogen,Inc.)は、Drosophila melanogaster由来のSchneider 2(S2)細胞株および異種タンパク質の発現のためのプラスミドベクターを利用する。S2細胞における発現のためのこれらプラスミドベクターは、非常に用途が広く、メタロチオネイン(MT)プロモーターにより駆動されるタンパク質の誘導発現を可能にする。類似にプラスミドはまた、タンパク質が細胞から周囲の倍地中に分泌され、タンパク質精製を大いに単純化することを可能にする。複数コピーのベクターは、S2細胞のゲノムDNA中に安定に導入されて、タンパク質発現レベルを増加し得る。S2細胞において発現されたタンパク質は、最小限にグリコシル化され、このことはuPARのタンパク質成分に対するAbの生成に重要である。精製後の代表的なタンパク質収量は、約95%の純度で25mg/L〜50mg/Lである(図1)。以下のタンパク質を発現する細胞株を作製した:suPAR、Dl、D2D3、scuPA、ATF1−143、ATFl−135、Kringle47−143およびKringle47−135。さらに、N−連結グリコシル化部位が破壊されたsuPARについてのクローンを作製した。
【0215】
(試薬)
Amersham CorpからNa125Iとして125Iを購入した(1μgのヨウ素あたり480−630MBq[13−17mCi])。
【0216】
(腫瘍細胞株)
以下の腫瘍細胞株を使用した:A549、HeLa、およびA2780。A2780ヒト卵巣癌株を、未処置の患者由来の腫瘍組織から確立した。A2780細胞を、2mM グルタミン、0.01mg/mL ウシインスリンおよび10% FBS(前出)補充したRPMI1640培地中で単層として維持した。A549(上記した、ヒト肺癌、ATCCカタログ番号CCL−185)を、2mM L−グルタミン、0.15% NaHCO3および10% FBSを補充したHam’s F12K培地中で維持した。
【0217】
A2780細胞(2×l06)を、雌性のBalb/c マウスの右横腹に接種した。処置開始前に、腫瘍を50〜200mm3の範囲に段階付けた。IgGコントロールAbおよび抗D2D3 uPAR mAbを、月曜日と金曜日の週2回、10mg/kgにて腹腔内投与した。シスプラチン処置群は、1000mm3まで段階付けた;動物に6mg/kgを週1回投与した。
【0218】
A549癌細胞(106)を雌性C.B−17/Sys(scid/scid)マウスの右横腹に接種した(scid:重篤な併発性の免疫不全)。腫瘍接種後に処置を開始した。IgGコントロールAb(およびPBSコントロール)および抗D2D3 uPAR mAb ATN−658を、月曜日と金曜日の週2回、10mg/kgにて腹腔内投与した。初期に腫瘍体積を週に1回測定した。いずれかの処置群においてその体積が300mm3を超える場合に、測定を週2回行った。
【0219】
屠殺の時、各動物から血漿を得、そして腫瘍を切除した。腫瘍の半分を生化学的アッセイのために瞬間凍結し、その残りを組織化学的評価のために亜鉛固定液に入れた。
【0220】
(実施例II)
(抗D2D3mAb)
KLHと結合体化した組み換えsuPARのD2D3ドメインを用いたBalb/cマウスの免疫は、強力な免疫応答を生じた。続く融合タンパク質実験は、組み換えタンパク質を使用してウエスタンブロッティングおよびELISAアッセイによって測定した場合、uPARのD2D3ドメインとの特異的な交差反応性を有する親クローンを生じた。これらの親クローンを限界希釈に供して、D2D3特異的なmAbのパネルを得た。これらAbのうちの4つの特性を表3に要約する。アイソタイプ決定により、同定された全てのクローンをIgG1,κと同定した。uPARに対する特異性を、ウエスタンブロッティングによって確認した。Abの親和性を直接的な結合アッセイを使用して決定した。クローンの大部分は、1mM〜5nMの親和性を有した。
【0221】
【表3】
これらの抗体のうちの2つのATN−615およびATN−658を使用したウエスタンブロット実験の結果を図3に示す。両方のmAbはsuPARを特異的に認識し、そして特にuPARのD2D3ドメインを認識した。
【0222】
抗D2D3抗体の機能活性を、移動度アッセイにおいて試験した。以前の実験は、uPAR発現CHO細胞が、改変したBoydenチャンバーアッセイにおいてuPAの方へと遊走すること(図4)およびこの遊走がuPAのGFDに依存すること(示さず)を実証した。図4に示されるように、細胞の遊走は、D2D3に特異的なmAbおよびuPARに対するウサギポリクローナルAbにより阻害される。興味深いことに、細胞遊走はまた、抗α5インテグリンAbにより阻害されるが、抗α6インテグリンAbによっては阻害されない。これらを併せると、これらのデータはインテグリンα5β1およびuPARがuPA誘発性遊走に重要であることを示す。
【0223】
診断画像法または治療剤の標的化のために種々の抗D2D3 Abの利用は、それらが細胞表面上のuPARに高親和性で結合する能力に依存する。図5に示されるように、ヨウ素化Ab ATN−658は、約1.5nMのKDでHeLa細胞に結合する。これは、直接的結合実験において決定したこのAbについてのKDと一貫しており(表3)、このことは結合が標識化プロセスによって影響を受けないことを示す。
【0224】
uPAは、腫瘍細胞または上皮細胞の表面上のuPARレセプターにインビボで結合され得る。従って、uPAの存在下でuPARに結合するAbは、これによって、診断剤および治療剤としてさらなる機能を有する。mAb ATN−658は、scuPAがHeLa細胞表面上のuPARに結合することを阻害しせず(図6)、そしてscuPAの存在下でHeLa細胞に結合し得る。従って、ATN−658は細胞表面上の占有されたレセプターおよび非占有のレセプターの両方を標的化し得る。
【0225】
ATN−658およびATN−615の3つのCDRを含むVL定常鎖およびVH定常鎖のアミノ酸配列は、標準的な方法により決定され、そして上記されており、従ってここでは繰り返さないが、これらは本例示的開示に包含されるようにみなされるべきである。
【0226】
(実施例III)
(uPAのuPARに対する結合)
uPAのuPARに対する結合を、125I標識化uPAおよびHeLa細胞を使用して測定した。HeLa細胞は大量のuPARを発現するが、uPAは発現しない。簡潔に述べると、100μgのscuPAを、Iodo−GenTMヨウ素化試薬(Pierce Biotechnology Inc)を使用して、100μCiの[125I]NaIにより標識した。サイズ排除カラムを使用して取り込まれなかった標識化NaIを標識化タンパク質から除去し、そして標識化タンパク質を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むTris緩衝化生理食塩水中に溶出した。HeLa細胞を、0.1% BSAを含むPBS中に希釈した漸増濃度の[125I]−scuPAと共に2時間4℃でインキュベートした。細胞をPBS/0.1% BSAを用いて徹底的に洗浄し、細胞の単層を1M NaOHにより溶解し、そして結合した総数を測定した。細胞を、大過剰の未標識scuPAの存在下で[125I]−scuPAと共にインキュベートすることによって、特異的な結合を決定した。また、uPAおよびuPARの両方を発現するMDA−MB231細胞との結合を実施した。scuPAの結合を決定するため、最初にMDA−MB231細胞の表面より内在性uPAを、0.1Mグリシン/100mM NaClを含む緩衝液(pH3)を用いて4℃で5分間洗浄することによって除去した。また、このプロトコルを使用して、[125I]−ATFのHeLa細胞への結合を測定した。Abが[125I]−scuPAまたは[125I]−ATFのいずれかがHeLa細胞に結合することを阻害する能力を、[125I]標識化タンパク質の添加前に、漸増量の未標識Abと共に細胞を4℃で15分間インキュベートすることによって決定した。
【0227】
(実施例IV)
(細胞遊走の阻害)
uPAまたはuPARに特異的なAbによる細胞遊走の阻害を、以前に記載されたように改変したBoydenチャンバーアッセイ(Taruiら、(2003)J.Biol.Chem,278 29863−29872)を使用して試験した。簡潔に述べると、Boydenチャンバフィルタの下側を、下側チャンバに添加した500nM uPAおよび無血清遊走緩衝液(10mM Hepesおよび0.5% ウシ血清アルブミンを含むダルベッコ改変イーグル培地)によってコーティングした。uPAR発現CHO細胞を無血清遊走緩衝液に再懸濁し(8×105細胞/ml)、そして100μlを上側チャンバに添加した。抗uPA Abまたは抗uPAR Abが細胞遊走を阻害する能力を試験するため、細胞を上側チャンバに添加する前に、10μg/ml Abと共に15分間予めインキュベートした。次いで、これらの細胞を5% CO2中で37°Cで20時間インキュベートした。細胞が下側チャンバに遊走することを、0.5% クリスタルバイオレットを用いた染色および光学顕微鏡によって検出した。
【0228】
(実施例V)
(ビオチン化ATN−658を使用した、ATN−658と同じエピトープを認識する抗体についてのアッセイ)
抗D2D3 Ab、ATN−658をEZ−linkTM スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce Biotechnology Inc)を使用して、製造業者の指示に従ってビオチン化した。代表的に、20倍モル濃度過剰のビオチン標識化試薬を使用して、ATN−658を標識し、そして取り込まれなかったビオチンをサイズ除去カラムを使用して標識化Abから除去した。標識化AbがuPARに対する親和性を保持していることを確認するため、ビオチン−ATN658をscuPARへの結合についてELISAアッセイにおいて試験した。結合したビオチン−ATN−658をHRP結合体化したストレプトアビジンを使用して検出した。ビオチン標識化は、ATN−658のsuPARに対する親和性を低減しなかった(図9)。ATN−658と同じエピトープを認識するAbを同定するため、競合アッセイを確立した。簡潔に述べると、96ウェルのEIA/RIAタンパク質高結合プレートを、ウェルあたり100ngのsuPARにより一晩4℃でコーティングした。1%カゼインとの非特異的結合によりブロッキングした後、プレートをPBSを用いて洗浄し、試験されるべき抗体を、0.2nM ビオチン−ATN−658を含むPBS/0.1%カゼイン中に希釈し、適切なウェルに添加した。プレートをさらに室温で1時間インキュベートし、PBS/0.05% Tween−20を用いて徹底的に洗浄し、そして結合したビオチン−ATN−658をHRP結合体化ストレプトアビジンおよび適切な基質を使用して決定した(図10A/10B)。
【0229】
(実施例VI)
(インビボにおけるmAbの活性)
2つのモデル:A549非小細胞ヒト肺癌モデルおよびA2780卵巣癌モデルにおいて、実施例Iに記載したプロトコルを使用して、インビボにおける腫瘍増殖を阻害する能力について抗体を試験した。腫瘍接種後の日に、処置を開始した。IgGコントロールAb(およびPBSコントロール)および抗D2D3 UPAR mAb ATN−658を腹腔内経路で10mg/kgにて月曜日と金曜日の週2回投与した。
【0230】
ATN−658は、これらのモデルの両方において増殖を有意に阻害した(図7および図8)
上に記載した全ての参考文献は、具体的に援用されるにせよ、そうでないにせよ、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0231】
ここで本明細書を完全に記載したが、類似物が、等価なパラメータ、濃度および条件の広い範囲の内で、本発明の精神および範囲から逸脱することなくかつ過度な実験なしに実施され得ることが当業者に理解される。
【0232】
上記に開示されるアミノ酸配列と本明細書に添付されるかまたは後日提出される電子上または紙面上の配列リストにおけるアミノ酸配列との間に何らかの差異がある場合、上記の配列が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】S2細胞において発現されるATFおよびsuPARフラグメントのSDS−PAGE分析。AFT(aa1〜143)およびsuPAR(aa1〜279)を、Drosophila Schneider S2細胞においてクローニングし、発現させた。細胞を、7日間、銅(0.5nM)を用いて組み換えタンパク質を発現させるために誘導した。細胞上清を収集し、遠心分離および濾過によって清澄化した。プロテアーゼインヒビターの添加後、タンパク質を、DEAE−セファロース(pH7.5)(ATF)またはSP−セファロース(pH8.8)(suPAR)のいずれかにおいて、イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。ATFおよびsuPARを、RP−HPLCを使用してさらに精製した。精製された組み換えsuPARを、キモトリプシンで切断し、可溶性ドメイン2/ドメイン3(D2D3)フラグメントを生成した。免疫化の前に、D2D3タンパク質を、キャリアタンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合体化した。
【図2】ATN−658は、suPARの非グリコシル化変異体に結合し、このことは、ATN−658が、他のほとんどの抗uPAR mAbのように、ペプチド(炭水化物ではない)エピトープに向けられることを示す。
【図3】2つの抗D2D3 mAb(ATN−615およびATN−658)を用いたウエスタンブロットである。組み換えタンパク質をSDS−PAGEによって分離させ、PVDFメンブレンにトランスファーした。メンブレンを、精製された抗体(5μg/ml)で探索した。ATN−615およびATN−658は、suPARおよびD2D3を特異的に認識する。
【図4】抗D2D3抗体は、uPA誘導性遊走を阻害する。uPA(500nM)に対するuPAR発現CHO細胞の遊走を、改変Boydenチャンバーアッセイを使用して決定した。抗インテグリンα5、抗uPARおよび抗D2D3抗体は遊走を阻害し、このことは、インテグリンα5β1およびuPARが、uPA誘導性遊走のために重要であることを示唆する。
【図5】125I標識したATN−658は、高親和性でHeLa細胞に結合する。24ウェルプレートにおけるHeLa細胞のコンフルエントな単層を、室温にて1時間、増加する濃度の[125I]−ATN−658と一緒にインキュベートした。細胞を、PBS/Tween20で大規模に洗浄し、結合物質を1MのNaOHで可溶化した。非特異的な結合を、非標識Abの100倍過剰量の存在下で決定した。
【図6】図6は、mAb ATN−658が、uPAのHeLa細胞への結合とは競合しないことを示す。ATN−658のHeLa細胞への結合は、125I−scuPAの結合を阻害しなかった。HeLa細胞を、5nMの125I−scuPAと一緒に、300nMの非標識scuPAまたは300nMのATN−658のいずれかの存在下または非存在下でインキュベートした。uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR mAbであるATN−617は、scuPA結合と競合することが示されている。
【図7】図7は、ATN−658が、シスプラチンと同程度の効率で、A2780卵巣癌モデルにおいて腫瘍成長を阻害することを示す。A2780細胞は、uPARのみを発現し、uPAは発現しない。
【図8】図8は、ATN−658が、106腫瘍細胞が接種されたA549肺癌(非小細胞)モデルにおける腫瘍成長を阻害する。A549細胞は、uPAおよびuPARの両方を発現する。
【図9】図9は、ビオチン化ATN−658がsuPARに飽和性で結合することを示す。
【図10A】図10Aは、suPAR上の同じエピトープを認識するmAbを同定するための、ビオチン標識されたATN−658を使用する競合アッセイの結果を示す。ATN−616およびATN−617は、uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR抗体である。ATN−616は、リガンドに占有されたuPARに特異的に結合する。
【図10B】図10Bは、suPAR上の同じエピトープを認識するmAbを同定するための、ビオチン標識されたATN−658を使用する競合アッセイの結果を示す。ATN−616およびATN−617は、uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR抗体である。ATN−616は、リガンドに占有されたuPARに特異的に結合する。
【0234】
(配列表)
【0235】
【表4−1】
【0236】
【表4−2】
【0237】
【表4−3】
【0238】
【表4−4】
【0239】
【表4−5】
【技術分野】
【0001】
(背景)
(発明の分野)
生化学、免疫学および医学の分野にある本発明は、(a)二元uPA−uPAR複合体、(b)uPA−uPARを含む三元複合体および(c)uPARとuPA以外のタンパク質(例えば、インテグリン)の複合体に特異的な抗体(「Abs」)または他のリガンドに関する。これらのAbsまたは非Absリガンドは、uPAとuPARが上記複合体と相互作用するさらなる分子と相互作用することを阻害する。そのようなAbsまたは非Absリガンドは、診断方法および治療方法、特に、癌に対する診断方法および治療方法に使用される。
【背景技術】
【0002】
(背景技術の説明)
インビトロおよびインビボでの研究に由来する証拠の重要な主部は、ウロキナーセプラスミノーゲン活性化因子(uPA)系が転移プロセスの中心であることを確立し、それを癌の薬物開発の有力な標的にしている(非特許文献1)。uPAに加えて、その細胞表面レセプター(uPAR)は、癌の治療剤および診断剤の設計および開発に適切な標的である(非特許文献2)。なぜなら、
(a)uPARは、転移腫瘍細胞および血管形成内皮細胞(「ECs」)で選択的に発現されるが、他の細胞では発現されない;
(b)uPARは、現在強力な薬物を開発する努力の目的である転移に必要な数種の細胞外経路および細胞内経路における重要な関係物である;そして
(c)uPA経路に沿って数種の異なる点で干渉することが可能である
からである。したがって、uPAおよびuPARは、多くの異なる型の腫瘍/癌に対して有用な診断薬および治療薬の開発に有力な標的である。
【0003】
(uPA/uPAR系および癌)
転移および新脈管形成は、腫瘍細胞およびECsの浸潤性プロセスおよび遊走性プロセスと特徴付ける多くの共通の機能的特徴を共有する。これらの特徴としては、(1)プロテアーゼおよびインテグリン発現のアップレギュレーション、(2)細胞−細胞および細胞−マトトックス接触の減少、(3)成長因子および分化因子に対する応答性の増加、ならびに(4)細胞外マトリックス(ECM)および基底膜(BasM)の再構築が挙げられる。これらのすべてが腫瘍増殖に寄与する。
【0004】
uPA「系」(これは、セリンプロテアーゼuPAを含む)、そのレセプターuPAR、およびその特異的セルピンインヒビターであるプラスミノーゲン活性化因子インヒビター−1型(PAI−1)は、多くのこれらの活性において中心的役割を果たす。この系の活性は、
(1)カスケードを惹起しプラスミノーゲンの活性化を生じ、数種のプロメタロプロテアーゼ(proMMPs)を活性化すること
(2)潜在性成長因子(例えば、線維芽細胞成長因子−2(FGF−2)、血管内皮成長因子(VEGF)、肝細胞成長因子(HGF)およびトランスホーミング増殖因子−β(TGFβ))を放出しプロセシングすること
(3)(a)ECMの成分(例えば、ビトロネクチン(Vn)およびフィブロネクチン(Fn)との相互作用)
(b)数種のインテグリン(α5β1およびαvβ3が挙げられる)との直接的相互作用、ならびに
(c)細胞運動を促進するためにBasMおよびECMを再構築すること
に関与する。さらに、uPA系はまた、新脈管形成において役割を果たし得る局在化フィブリンの代謝回転を惹起し得る。
【0005】
uPAおよびuPARの発現は、多くの腫瘍型(グリア芽腫、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肝細胞癌および腎細胞癌が挙げられる)において示されてきた(非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。uPAおよびuPARの発現は、典型的に、より侵攻型の疾患で大きい。腫瘍細胞では、この発現は、多くの場合、腫瘍の浸潤性の前面で最も高い。(非特許文献6;非特許文献7)。乳癌、結腸癌および腎細胞癌の浸潤性前面に関連する血管中のuPARに対する強力な免疫組織化学的染色が報告されている(非特許文献8;非特許文献9)。結腸癌研究において、uPARはVEGFとともに局在する。uPAおよびuPARの発現はまた、数種の腫瘍型における腫瘍関連マクロファージで観察されている(非特許文献10;非特許文献11)。uPAは、単球に対して化学走性であり、これらの細胞の接着および移動の両方を媒介する。接着および移動は、uPARの占有のみを必要とするが、uPA触媒活性は必要としない。したがって、uPA系は、複数の腫瘍に関連する細胞型に作用することによって腫瘍増殖に寄与すると考えられる。
【0006】
数件の最近の研究は、同系の系においてuPARに対するuPAの結合を阻害することの治療的潜在性を評価している。アデノウイルスをコードするuPAのマウスアミノ末端フラグメント(「ATF」と短縮される――これは、uPA結合領域を含むuPAのドメインである)の腫瘍への直接送達は、(a)新生血管形成の抑制および(b)腫瘍増殖の停止を生じる(非特許文献12)。種「特異性」に起因して、マウスATFは、マウス宿主ECsおよび白血球にのみ結合し、ヒト腫瘍細胞には結合しないと期待される。これは、腫瘍阻害が宿主の血管形成応答の抑制を通して媒介されたことを示す。最後に、本発明者の数人とS.RabbaniおよびJ.Gladuとの間の共同研究は、最近、ラットuPARの100残基フラグメントに対して生じたポリクローナルAbがMat BIII細胞株の細胞から増殖したラットの乳房の腫瘍に選択的に局在することを示した(非特許文献13)。このポリクローナル抗体は、腫瘍増殖を完全に阻害し、腫瘍退縮をもたらした。
【0007】
不運にも、治療目的および診断目的のためにuPA系を標的にすることの有望さにもかかわらず、研究努力は、臨床に適した薬剤の開発を生じていない。低分子アプローチは、(1)タンパク質−タンパク質相互作用(例えば、uPA−uPARまたはuPAR−インテグリン)を強力に阻害することの困難さ、および(2)医薬品化学の努力に従う適切な手掛かりまたは構造的情報の欠如によって阻まれた。数種のuPA−uPAR相互作用の強力なペプチドインヒビターが同定されているが、これらは、ペプチドの典型的な薬理学特性の乏しさに苦しみ、そして細胞ベースのアッセイでさえ活性についての必要なレベルが示されていない(非特許文献14)。
【非特許文献1】Mazar,Apら,Angioganesis,1999年,3,p.15−32
【非特許文献2】Mazar,AP,Anti−Cancer Drugs,2001年,12,p.397−400
【非特許文献3】Mizukami IFら,Clin Immunol and Immunopathol,1994年,71,p.96−104
【非特許文献4】Hsu DWら,Am J Pathol,1995年,147,p.114−23
【非特許文献5】de Witte JHら,Br J Cancer,1999年,79,p.1190−8
【非特許文献6】Buo,Lら,Human Pathol,1995年,26,p.1133−1138
【非特許文献7】Yamamoto Mら,Cancer Res,1994年,4,p.5016−5020
【非特許文献8】Bastholm Lら、Appl Immunohistochem Mol Morphol,7,p.39−47
【非特許文献9】Nakata Sら,Int.J.Cancer,1998年,79,p.179−186
【非特許文献10】Ohtani Hら,Int J Cancer,1995年,62,p.691−6
【非特許文献11】Xu Yら,Hum Pathol,1997年,28,p.206−13
【非特許文献12】Li Hら,Gene Ther,1998年,5,p.1105−1113
【非特許文献13】Rabbani SAら,Cnacer Res,2002年,62,p.2390−97
【非特許文献14】Ploug Mら,Biochemistry,2001年,40,p.12157−68
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明者らは、uPA−uPAR複合体に結合し、かつその下流標的(例えば、インテグリン)との相互作用を阻害するモノクローナル抗体(mAbs)のセットを生成した。そのような阻害は、腫瘍増殖および腫瘍転移を阻害すると期待される。これらのmAbsは、「裸の」抗体としての有用性、ならびに腫瘍に対する治療剤および造影剤を標的することについての有用性を有し得る。uPARを標的する数種の抗体は、癌増殖の動物モデル(A2780卵巣癌モデルおよびA549肺癌モデル)において有効である。これらのmAbsによって認識されるエピトープは、uPAR内のペプチド領域である。それゆえ、これらの領域に対応するかまたはこれらの領域に由来するuPARペプチドは、uPARと下流タンパク質との相互作用のアンタゴニストとして有用である。
【0009】
腫瘍細胞および血管形成ECsについて、細胞移動および浸潤性のプロセスにおいて選択的利点を得ることは一般的である。この利点は、少なくとも部分的に、細胞のその細胞表面上でのuPAR分子の発現から生じ、これらのuPAR分子は内因的に生成されたリガンドであるuPAに結合することによって飽和される。
【0010】
したがって、uPA−uPARを標的し、好ましくはuPA−uPARと下流標的との相互作用を阻害するmAbs、ペプチドまたは他の化学物質は、癌の処置および/または診断に有用である。uPA−uPAR、またはuPAR単独の好ましい下流リガンドとしては、インテグリン、低密度リポタンパクレセプター関連タンパク質(LPR)ならびに他の結合パートナーが挙げられる。これらの下流リガンドのいくつかは、細胞シグナル伝達、移動および/または浸潤を媒介し得る。
【0011】
本発明者らは、リガンドで占有されたuPARに特異的に結合し、したがってリガンドの存在にかかわらずuPARに結合し得る例示的分子としての役割を果たす2つのmAbs(ATN−615およびATN−658)を生成し、研究した。mAbsは、腫瘍または病理においてuPA系が役割を果たす他の疾患組織において占有されたuPARおよび占有されていないuPARの両方を検出し得る。好ましいAbsまたは他の非Abリガンドは、uPARのuPA結合部位に結合しないものである。
【0012】
本発明者らは、これらのAbsが結合するエピトープを同定した。そのようなペプチド、あるいはこれらのエピトープの三次元構造を保持する天然ペプチドもしくは合成ペプチドまたはペプチド誘導体は、治療剤および/または診断剤として有用である。これらのエピトープに基づいて同定される数種のペプチド配列が本明細書に開示される。
【0013】
さらに、本発明者らは、ATN−615およびATN−658の特徴を模倣するAbsを同定する方法を開発した。この方法は、ATN−615およびATN−658によって結合されるエピトープと同じエピトープに結合を認識し結合するヒト化抗体または完全ヒト抗体を開発するために使用され得る。そのようなATN−615およびATN−658の模倣物(ATN−658の模倣物は特に強力な抗腫瘍活性を有する)が、治療剤および/または診断剤として本明細書に含まれる。
【0014】
本発明はさらに、uPAの結合を阻害することなくuPARに結合する特性を有する高分子(Abs、抗原結合フラグメント(例えば、単鎖Abs=(scFv))、非Abポリペプチドおよびペプチド、アプタマーなどを含む)ならびに有機低分子に関する。これらの分子のいくつかは、uPA−uPARまたはuPAR単独のいずれか下流相互作用を干渉する。
【0015】
uPA−uPAR相互作用を標的する特定の組成物に加えて、本発明はまた、uPA−uPARに排他的に結合するかまたはuPARの下流相互作用を阻害するAbsを検出するための方法に関する。したがって、本発明は、これらのuPA−uPAR複合体に結合する分子を同定する方法を包含する。この方法は、uPA/uPAR系の他の成分または複合体に結合する分子を検出するために変更され得る。例えば、その天然のインヒビターPAI−1に結合されるuPAはuPARにも結合し、uPA:PAI−1/uPAR三元複合体を形成する。本発明の1つの方法は、この複合体とのみ相互作用するが二元uPA:PAIまたはuPA−uPAR複合体とは相互作用しないリガンドをスクリーニングするためにそのような三元複合体を使用することを包含する。別の方法は、三元複合体と下流標的(例えば、LPR)との相互作用を干渉するインヒビターに関する。
【0016】
そのようなアプローチは、複合体を結合したときに内在的になるリガンド分子を同定するのに適している。
【0017】
さらに、本発明は、uPA−uPAR複合体に結合する(しかし非複合体化uPAにもuPARにも結合しない)分子、またはuPA−uPARもしくはuPARと下流標的ならびに結合リガンドそれ自体との結合を干渉するインヒビターを検出する方法を包含する。そのような結合剤は、Abs、他のタンパク質、ペプチド、アプタマー、低分子などであり得る。この型の特定の実施形態は、FnのuPAR媒介性集合を干渉されるかまたはインテグリンα5β1に対するFnもしくはFnフラグメントの結合を混乱されるuPA−uPARまたはuPARリガンドである。他のマトリックス成分(例えば、ビトロネクチン)の集合の変化もまた、本発明によって包含される。
【0018】
本発明はまた、uPA触媒活性を阻害しないプラスミノーゲン活性化のインヒビターおよびこの活性を有する新規組成物を同定するための方法に関する。
【0019】
より具体的には、本発明は、二元uPA−uPAR複合体に結合するリガンドに関し、このリガンドは、(a)遊離のuPAまたは(b)uPAを認識し結合するuPARの領域に実質的に結合せず、その結果、uPA−uPAR結合を阻害しない。
【0020】
別の実施形態は、uPA−uPARとさらなる分子(X)(例えば、PAI−1)との三元複合体に結合するリガンドを含み、このリガンドは、
(a)uPA−uPAR−X複合体に結合し、
(b)以下:(i)uPA−uPAR複合体にも、(ii)uPA−X複合体にも、(iii)uPARまたはXのuPA認識領域およびuPA結合領域にも、(iv)遊離のuPAにも(v)遊離のXにも実質的に結合せず;そして
(c)uPA−uPAR結合もuPA−X結合も実質的に阻害しない。好ましくは、上記リガンドは、遊離のuPARに実質的に結合しない。
【0021】
上記リガンドは、ポリペプチド、好ましくはAb(例えば、mAb)、またはその抗原結合フラグメントであり得る。好ましいAbsは、ヒト化キメラmAbsまたはヒトmAbsである。
【0022】
一実施形態において、好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む。
より好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、上記のように、
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む。
【0023】
別の好ましい実施形態において、mAbまたは抗原結合フラグメントは、
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む。
より好ましいmAbまたは抗原結合フラグメントは、上記のように、
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む。
【0024】
本発明の好ましいAbは、(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb;(b)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb;(c)ATn−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb;およびATn−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAbから選択される。
【0025】
一実施形態において、上記リガンドは、uPA−uPAR複合体とこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドとの結合を阻害するリガンドである。「他の生物学的リガンド」の例としては、インテグリン、好ましくは、α5β1、αvβ3、αvβ5、α3β1、α6β1またはα4β1が挙げられる。
【0026】
上記リガンドは、(a)FnのuPAR媒介性集合、(b)インテグリンα5β1に対するFnもしくはそのフラグメントの結合、または(c)Vn成分の集合を干渉し阻害するリガンドであり得る。
【0027】
好ましい実施形態において、上記リガンドは、(a)(検出可能な標識で)診断的に標識されるか;あるいは(b)治療的に活性な部分で標識されるか、治療的に活性な部分と結合されるか、または治療的に活性な部分と融合され(ポリペプチドの場合)、そのリガンドを治療的に活性にする。
【0028】
本明細書で提供されるのは、(a)上記のように診断的に標識されたリガンド;および(b)診断的に受容可能なキャリア、を含む組成物である。
【0029】
診断用組成物において、リガンドは、好ましくは、放射性核種、PET造影剤、MRI造影剤、蛍光剤、蛍光原(fluorogen)、発色団、クロモゲン、リン光剤(phosphorescer)、化学発光剤(chemiluminescer)または生物発光剤(bioluminescer)で標識される。好ましい放射性核種は、3H、14C、35S、67Ga、68Ga、72As、89Zr、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Ybおよび201Tlからなる群より選択される。好ましい蛍光剤または蛍光原は、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド(phthaldehyde)、フルオレサミン、フルオレセイン誘導体、Oregon Green、Rhodamine Green、Rhodol GreenおよびTexas Redである。
【0030】
本発明は、望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移を阻害する治療用抗血管形成薬学的組成物または抗腫瘍薬学的組成物を提供し、この組成物は、(a)上記治療的に活性なリガンドの有効量、および(b)薬学的に受容可能なキャリア、を含む。この組成物は、好ましくは、注入に適切な形態である。治療的に活性な部分は、リガンドに直接結合されても、リガンドに間接的に結合されてもよい。好ましい治療的部分は、化学療法剤、毒素または治療的放射性核種(好ましくは、47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbまたは217Bi)である。
【0031】
上記治療用組成物において、治療的に活性な部分は、リガンドに融合されるペプチドまたはポリペプチド(例えば、毒素)であり得る。
【0032】
本発明は、細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成を阻害するためか、あるいはアポトーシスを誘導するための方法に関し、この方法は、望ましくない細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成に関連する細胞を上記治療的に活性なリガンドと接触させる工程を包含する。
【0033】
また、望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移によって特徴付けられる疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法が包含され、この方法は、上記治療用薬学的組成物の有効量をその被験体に投与する工程を包含する。
【0034】
また、サンプルにおいて上記リガンドの結合特性を有する物質と考えられる物質を検出するためのアッセイ方法が提供され、この方法は、
(a)そのサンプルをuPA−uPAR複合体と接触させ、サンプルの成分と複合体との結合を決定する工程;
(b)そのサンプルを遊離のuPARと接触させ、サンプルの成分とuPARとの結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、ここで、(a)において結合が存在し、(b)において実質的に結合が存在しないかまたは結合が有意に低いことは、そのサンプル中に上記物質が存在することの指標である。
【0035】
上記アッセイは、uPA−uPAR複合体に結合する標識結合パートナーを用いる競合結合アッセイであり得、ここで、サンプル中の物質は、その結合パートナーと結合を競合する。
【0036】
一実施形態は、サンプルにおいて上記リガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するための方法であり、この方法は、
(a)そのサンプルをuPA−uPAR−X複合体(Xは上記のように定義される)と接触させ、サンプルの成分と複合体との結合を決定する工程;
(b)そのサンプルを、(i)uPA:X複合体;(ii)uPA−uPAR複合体;または(iii)非結合体化Xのうちの1つ以上と接触させ、サンプルの成分とuPA−X、uPA−uPARまたはXとの結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、ここで、(a)において結合が存在し、(b)において実質的に結合が存在しないかまたは結合が有意に低いことは、そのサンプル中に上記物質が存在することの指標である。
【0037】
上記の方法において、複合体は、細胞表面に存在し得る。
【0038】
本発明は、少なくとも3つのアミン酸を含む単離されたペプチドを包含し、このペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部である場合、(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。好ましい上記のような単離されたペプチドは、(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および(b)配列番号2の配列を有するVH鎖を含むmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。
【0039】
別の実施形態において、単離されたペプチドは、少なくとも3つのアミノ酸およびペプチドを含み、より長いアミノ酸配列の一部である場合、それは(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。好ましい上記のような単離されたペプチドは、(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および(b)配列番号10の配列を有するVH鎖を含むmAbによって結合される直鎖状エピトープに存在する。
【0040】
本発明はまた、少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドまたはその置換改変体に関し、このペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部である場合、ATN−615と称されるmAbまたはATN−658と称されるmAbによって認識される直鎖状エピトープに存在する。
【0041】
本発明は、mAb ATN−615またはmAb ATN−658が結合するエピトープと同じエピトープに結合するAbまたは他のリガンドを同定するためのアッセイ方法を包含し、この方法は、そのAbまたは他のリガンドを含むと考えられるサンプルが、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、その同じエピトープに対する抗体結合またはリガンド結合を示す。
【0042】
一実施形態は、(a)ATN−615、(b)ATN−658、あるいは(c)ATN−615もしくはATN−658と同じ結合特異性を有するAbまたは他のリガンドによって認識されるペプチドを同定するための方法であり、この方法は、そのペプチドを含むと考えられるサンプルまたは候補ペプチドが、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658あるいは同じ結合特異性を有するAbまたは他のリガンドの結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、そのペプチドがその結合特異性を有することを示す。
【0043】
化合物をスクリーニングするためか、または候補化合物がuPAR構造体に対してATN−615もしくはATN−658と本質的に同じ結合特性を有するかどうかを決定するためのアッセイが、本発明に包含され、このアッセイは、スクリーニングされるサンプルまたは候補化合物が、(i)固定されたsuPAR、(ii)固定されたsuPAR D2D3または(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメントに対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、ここで、少なくとも約20%、好ましくは50%、より好ましくは70%そして最も好ましくは90%の競合阻害は、そのペプチドがその結合特性を有することを示す。
【0044】
上記アッセイの一実施形態において、スクリーニングされる化合物または候補化合物は、約50Daと約2500Daとの間の分子量を有する有機低分子である。別の実施形態において、スクリーニングされる化合物または候補化合物は、核酸分子、好ましくは、オリゴヌクレオチド(例えば、RNAi分子またはアプタマー)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
(好ましい実施形態の説明)
本発明者らは、uPA/uPAR複合体またはuPAR−インテグリン複合体を標的にするmAb、ペプチドまたは他の化学物質が、癌の処置および/または診断において有用であることを発見した。本発明者らは、(a)uPARまたはuPA別個でも(b)uPAの存在下でのuPAR(すなわち、リガンドに占有されたuPAR)でもなく、uPA/uPAR複合体を認識する抗体は、これまで記載されていないと考えている。
【0046】
さらに、このuPA−uPAR複合体またはuPAR単独は、インテグリン、低密度リポタンパク質レセプター関連タンパク質(LPvP)および他の結合パートナーのような、他の「下流の」リガンドを有する。これらの下流の相互作用は、細胞の遊走、浸潤および増殖のプロセスに重要であると考えられる。それゆえ、これらのプロセスを治療的に標的にするか、またはそのプロセスまたはその相互作用成分を診断的に検出することが、望ましいプロセスである。
【0047】
以下により詳細に説明されるように、これらの相互作用を標的にする特異的抗体に加えて、本発明はまた、uPA−uPAR複合体に排他的に結合するかまたはuPARの下流の相互作用を阻害する抗体を検出するための方法に関する。
【0048】
(抗体アプローチ)
本発明者らは、uPARを標的にするmAbのパネルを生成した。uPARは、抗体のための理想的な標的である。なぜなら、uPARは、細胞表面上で発現されるからである。(浸潤腫瘍細胞、血管形成内皮細胞または腫瘍関連マクロファージにおける)腫瘍血管系インターフェースにおけるuPARの発現は、このタンパク質を標的にする抗体が、他のmAbが腫瘍に侵入し、診断剤として機能するかまたは治療的効果を発揮することができないように導く、拡散のための同じ障壁に苦しむことはないことを示唆する。重要なのは、uPARが静止組織では通常発現されないということであり、このことは、治療的Abを使用する場合には毒性に対する可能性を最小化し、そして診断的Abを使用する場合には非特異的シグナル(または疑陽性)を最小化するはずである。
【0049】
本発明者らは、Drosophila S2細胞において発現される可溶性形態のuPAR(「suPAR」として公知)のフラグメントに対して、mAbを惹起した。そのような細胞において、最小限にグリコシル化されたアイソタイプのsuPARが発現される。免疫原としてのこのsuPARの使用は、これまでに試験された他の全てのmAbで観察されたuPARへの異種結合を克服することが予想される。Leukocyte Antigen Workshopの一貫として実施された研究は、1995〜1996年において利用可能であった抗uPAR抗体を比較し、その全てが炭水化物(タンパク質ではない)エピトープに対して特異的であることを見出した(Manupello,Jら(1996)Tiss Antigens 48 368)。実際に、腫瘍において発現するuPARは、高度かつ不均一にグリコシル化されており、異なるアイソフォームのグリコシル化パターンおよび提示は、種々のシグナルに応答して変化する(Stoppelli MPら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci USA 82 4939−4943)。従って、炭水化物に対して惹起された抗uPAR抗体は、uPARの全てのアイソフォームを認識しそうにはなく、uPARにおいて存在するグリコシル化構造と類似のグリコシル化構造を発現する他のタンパク質と、望ましくない交差反応をする可能性がある。S2の使用により、suPARにおけるタンパク質エピトープを認識するmAbの同定が導かれた(図2)。
【0050】
本発明者らは、多量のsuPARおよびsuPARのドメインフラグメントを発現する安定なクローンを産生した。これらの発現系を使用する代表的な収率は、精製後(95%を超える純度)で、25〜50mg/Lのオーダーである。従って、本発明者らは、本発明の抗体の生成のために必要とされる全ての成分を発現すること、およびそれらを評価および特徴付けするためのアッセイを設計することが可能であることを示した。
【0051】
suPARの変異体形態が、全てのグリコシル化部位が変異して発現された。存在するマウスmAbは、ヒト化されてもよいし、霊長類化(primatize)されてもよい。
【0052】
本発明者らはsuPARの立体構造的にインタクトなドメインフラグメントを生成することができることにより、(suPARの)単離D1および単離D2D3に対するmAbを産生することが可能になった。uPAR D2D3フラグメントにおいて曝露されるエピトープはまた、uPAの結合後にのみ、全長のインタクトなuPARにおいて曝露される。このエピトープは、uPAのプロ遊走性(pro−migratory)活性に重要であることが実証されている(Andolfo Aら(2002)Thromb Haemost 88:298−306)。従って、このエピトープが既に曝露されている場合にD2D3フラグメントに対して生成された抗体は、抗遊走性活性を有することが予測される。このことは、mAb ATN−658について実証されている。
【0053】
従って、本発明は、二成分uPA−uPAR複合体に結合し、そして(a)遊離uPAにも、(b)uPAを認識し、結合するuPARの領域にも実質的に結合しないmAbに部分的に関する。その結果、このmAbは、uPA−uPAR結合を阻害しない。このmAbは、哺乳動物(好ましくは、マウス)を、
(a)Drosophila細胞において発現したsuPARの最小限にグリコシル化されたアイソタイプ、または
(b)4または5箇所のグリコシル化部位が変異しているsuPARの脱グリコシル化変異体、
で免疫化する第一段階を包含するプロセスによって産生される。標準的なプロトコルを使用する次の免疫化では、慣習的な技術が、免疫化動物からハイブリドーマ細胞株を生成し、そして所望の特性を有するmAbを生成するために使用される。本明細書中に記載されるような、さらなる特性または何らかの異なる活性を有するuPA−uPAR複合体に特異的なmAbは、同じ新規suPAR抗原を使用して同じ方法で作製される。このプロセスによって作製されるmAbは、溶液中の遊離uPARに結合してもよいし、結合しなくてもよい。
【0054】
野生型uPARにおいて、5箇所のN結合グリコシル化部位:Asn52(D1中)、Asn162およびAsn172(D2中)ならびにAsn200およびAsn233(D3中)、が存在する。D2およびD3における後ろ4つの部位は、好ましくは、Glnに変異され、本発明のmAbを惹起するための好ましい脱グリコシル化suPAR免疫原を生成する。
【0055】
uPARがuPAによって占有されているか否かに関わらず、細胞表面上のuPARを認識する抗D2D3 mAbもまた、生成されている。腫瘍上の高割合のuPARは実際にuPAに結合されるので、この特異性の抗体は、治療的部分および診断的部分のための薬剤を標的するのに有用である。さらに癌患者において、腫瘍が、これらの同じ腫瘍によって発現されるプロテアーゼによって切断され、その腫瘍に依然として結合する残余D2D3フラグメントを残すuPARを発現することが、頻繁に観察されている(Sier CFら、Thromb Haemost.2004;91:403−11)。従って、これらの腫瘍の功を奏する標的化には、抗D2D3抗体が必要とされる。これらの抗体はまた、インビボ画像化用途のためにも有用である。
【0056】
抗D2D3抗体(および本発明の他の抗体)は、好ましくは異種腫瘍モデルにおいて試験される。モデルの2つの好ましい例は、A2780モデルおよびA549モデルである(以下でより詳細に説明される)。
【0057】
(2つの好ましいmAbの可変(V)領域アミノ酸配列)
(ATN−658:可変領域配列)
mAb ATN−658の軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)のコンセンサスアミノ酸配列(一文字コード)が、以下に示される。cDNAは、ATN−658を発現するハイブリドーマから抽出された総RNAから調製され、可変領域が、標準的技術を使用してクローニングされ、増幅され、そして配列決定された。各可変領域に対する相補性決定領域(CDR)が強調されている(イタリック、ボールド、下線)。
ATN−658 VLコンセンサスタンパク質(配列番号1)
【0058】
【化1】
ATN−658 VHコンセンサスタンパク質(配列番号2)
【0059】
【化2】
【0060】
【表1】
(mAb ATN−615:可変領域配列)
mAb ATN−615の軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)のコンセンサスアミノ酸配列(一文字コード)が、以下に示される。cDNAは、ATN−615を発現するハイブリドーマから抽出された総RNAから調製され、可変領域が、標準的技術を使用してクローニングされ、増幅され、そして配列決定された。各可変領域に対する相補性決定領域(CDR)が強調されている(イタリック、ボールド、下線)。
ATN−615 VLコンセンサスタンパク質(配列番号9)
【0061】
【化3】
ATN−615 VHコンセンサスタンパク質(配列番号10)
【0062】
【化4】
【0063】
【表2】
本発明に従うと、AbまたはmAbは、それが類似の特異性プロファイル(例えば、ランクオーダー比較により)を示し、そして参照Abの関連する抗原(例えば、uPA−uPAR複合体)に対して1.5オーダーの倍率、より好ましくは1オーダーの倍率内にある親和性を有する場合、参照mAbと「実質的に同じ抗原結合特性」を有する。
【0064】
上記抗体は、インビボMatrigelプラグモデルにおいて直接的抗血管形成活性について評価される。放射性ヨウ化抗体が、レセプターおよびリガンドの両方を発現するMDA MB231細胞を使用して、Ab内在化を試験するのに使用される。抗体内在化はまた、PAI−1:uPA複合体の存在下で測定される。
【0065】
(uPA、uPARならびにそれらの二成分複合体および三成分複合体に特異的な抗体)
以下の説明において、免疫学、細胞生物学および分子生物学の分野の当業者に公知の種々の方法論への参照がなされる。参照がなされるそのような公知の方法論を説明している刊行物および他の資料は、全体が説明されたかのように、その全体が参考として本明細書中に援用される。免疫学の一般的原理を説明している標準的な参照著作物としては、Abbas,AKら、Cellular and Molecular Immunology(第4版),W.B.Saunders Co.,Philadelphia,2000;Janeway,CAら、Immunobiology.The Immune System in Health and Disease,第4版、Garland Publishing Co.,New York,1999;Roitt,Iら、Immunology,(最新版)C.V.Mosby Co.,St.Louis,MO(1999);Klein,J,Immunology,Blackwell Scientific Publications,Inc.,Cambridge,MA,(1990)が挙げられる。
【0066】
モノクローナル抗体(mAb)およびその産生のための方法および使用は、KohlerおよびMilstem,Nature 256:495−497(1975);米国特許第4,376,110号;Hartlow,E.ら、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988);Monoclonal Antibodies and Hybndomas;A New Dimension in Biological Analyses,Plenum Press,New York,NY(1980);H.Zolaら、Monoclonal Hybridoma Antibodies:Techniques and Applications,CRC Press,1982))に記載されている。
【0067】
イムノアッセイ法もまた、Coligan,JEら編、Current Protocols in Immunology,Wiley−Interscience,New York 1991(または最新版);Butt,WR(編)Practical Immunoassay:The State of the Art,Dekker,New York,1984;Bizollon,CA編、Monoclonal Antibodies and New Trends in Immunoassays,Elsevier,New York,1984;Butler,JE,ELISA(第29章),In:van Oss,CJら(編),IMMUNOCHEMISTRY,Marcel Dekker,Inc.,New York,1994,pp.759−803;Butler,JE(編),Immunochemistry of Solid−Phase Immunoassay,CRC Press,Boca Raton,1991;Weintraub,B,Principles of Radioimmunoassays,The Endocrine Society,1986年3月;Work,TSら、Laboratory Techniques and Biochemistry in Molecular Biology,North Holland Publishing Company,NY,1978;Dabbs,DJ,Diagnostic Immunohistochemistry,Churchill Livingstone,2001に記載されている。
【0068】
抗イディオタイプ抗体は、例えば、Idiotypy in Biology and Medicine,Academic Press,New York,1984;Immunological Reviews Vol.79,1984およびVol.90,1986;Curr.Top Microbiol,Immunol.Vol.119,1985;Bona,C.ら、CRC Crit.Rev.Immunol,pp.33−81(1981);Jerne,NK,Ann.Immunol.125C:373−389(1974);Urbam,Jら、Ann.Immunol.133D;179−(1982);Rajewsky,K.ら、Ann.Rev.Immunol.7:569−607(1983)に記載されている。
【0069】
本発明は、uPARとインテグリンまたは他の下流標的との相互作用を阻害する、ポリクローナルおよびモノクローナル両方の、uPA/uPAR複合体と反応性の抗体を提供する。この抗体は、ヒト化抗体またはキメラ抗体のような、それらの異種形態、同種形態、合成形態または改変形態であり得る。例えば、抗uPA/uPAR Abのイディオタイプに特異的な抗イディオタイプ抗体もまた、包含される。用語「抗体」はまた、インタクトな分子、ならびに抗原結合部位を含み、例えばuPA/uPAR複合体またはuPAR−インテグリン複合体の標的エピトープに結合することができるフラグメントを含むことが意味される。これらとしては、インタクトなAbのFcフラグメントを欠き、血液循環からより迅速に消え、そしてインタクトなAbよりも非特異的組織結合を有さない、FabおよびF(ab’)2が挙げられる(Wahlら、J.Nucl.Med.24:316−325(1983))。Fvフラグメントもまた含まれる(Hochman,J.ら(1973)Biochemistry 12:1130−1135;Sharon,J.ら(1976)Biochemistry 15:1591−1594))。これらの種々のフラグメントは、プロテアーゼ切断または化学的切断のような慣習的な技術を使用して産生される(例えば、Rousseauxら、Meth.Enzymol,121:663−69(1986)を参照のこと)。
【0070】
ポリクローナル抗体は、ウサギ、ヤギ、げっ歯類などの免疫化動物由来の血清として得られ、そして、さらなる処理なしで直接使用されてもよいし、慣習的な濃縮または精製法(例えば、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィーおよびアフィニティークロマトグラフィー)に供されてもよい(Zolaら、上述、を参照のこと)。
【0071】
本発明の抗体の生成のための免疫原は、uPAR、suPAR、uPA/uPAR複合体もしくはuPAR−インテグリン複合体/またはそれらのエピトープ保持フラグメントもしくは誘導体を含み得る。有用な免疫原は、当該分野で公知の種々の方法(例えば、従来の組み換え法を使用するクローニング遺伝子の発現、例えば高レベルのuPAまたはuPARなどを発現している起源の細胞集団からの単離)において産生される。より短いフラグメントの場合には、それらは、化学的に合成され得る。好ましい免疫原は、suPARのD2D3フラグメントである。
【0072】
上記mAbは、KohlerおよびMilstein(Nature,256:495−97(1975))、およびその改変(上述の参考文献を参照のこと)に紹介されている手順のような、慣習的なハイブリドーマ技術を使用して産生され得る。動物(好ましくは、マウス)は、上述のような免疫原での免疫化によって刺激され、その刺激された動物における所望のAb応答を誘発する。
【0073】
刺激された動物のリンパ節、脾臓または末梢血由来のBリンパ球が、一般的にはポリエチレングリコール(PEG)のような融合促進因子の存在下で、ミエローマ細胞と融合される。任意の多数のマウスミエローマ細胞株が、そのような使用のために利用可能である:
P3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−k0Ag8.653、Sp2/0−Ag14、またはHL1−653ミエローマ株(ATCC,Rockville,MDから入手可能)。その後の工程は、選択培地における成長を含み、その結果、非融合親ミエローマ細胞およびドナーリンパ球細胞は最終的に死に、ハイブリドーマ細胞のみが生き残る。これらはクローニングされ、増殖して、その上清が、例えばイムノアッセイ技術により所望の特異性のAbの存在についてスクリーニングされる。陽性のクローンは、例えば限界希釈によってサブクローニングされ、そしてそのmAbが単離される。
【0074】
これらの方法に従って産生されるハイブリドーマは、当該分野で公知の技術を使用して、インビトロまたはインビボで増殖され得る(一般的には、Finkら、Prog.Clin.Pathol.,9:121−33(1984)を参照のこと)。一般的に、個々の細胞株は、培養中で増殖され、そして高濃度の単一mAbを含む培地が、デカンテーション、濾過または遠心分離によって収集され得る。
【0075】
(mAbの産生)
本発明に従うmAbの産生のための好ましいアプローチは、以下の通りである。D2D3は、キモトリプシン消化および精製を使用してsuPARから調製される(Shliom,O.ら(2000)J.Biol.Chem 275.24304−12)。次いで、D2D3を、アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)またはオボアルブミンのような任意のキャリアタンパク質に結合体化する。免疫化は、代表的には、完全フロイントアジュバントにおいて実行され、続いて不完全フロイントアジュバントにおいて定期的にブーストされる。動物はまた、定期的に採血され、suPARがマイクロプレートウェルの表面に固定されたELISAを使用して、血清の力価が測定される。
【0076】
ペプチドが使用される場合は、ペプチドは、好ましくはキャリアタンパク質(例えば、KLH)に結合体化され、完全フロイントアジュバント(例えば、50μgの結合体)においてBALB/cマウスに腹腔内(i.p.)で注射し、続いて2週間間隔で不完全フロイントアジュバントにおいて同用量をさらに2回注射する。1ヶ月後、最終の注射がi.p.で(例えば、0.5ml PBS中50μg)与えられ、好ましくは、アジュバントなしで静脈内(i.v.)でも(例えば、0.2ml中50μg)与えられる。
【0077】
脾臓細胞をその最終注射から3日後に収集し、標準的な技術を使用してP3X63AF8/653または他のミエローマ細胞と融合される。
【0078】
(抗体のスクリーニングまたは特徴付けのための試験細胞)
プラスチック上に固定された純粋なsuPARが、初期スクリーニングのために好ましい。uPARを過剰発現する細胞(例えば、HeLa株)もまた、抗suPAR mAbの細胞結合を実証するのに使用され得る。uPARを過剰発現する多くの腫瘍細胞株が周知かつ公に入手可能であり;これらがスクリーニングのために使用され得る。細胞は、一般的に、96ウェルマイクロプレートにプレーティングされる。この細胞は、例えばメタノール/アセトン(50/50)で固定され得、結合が免疫蛍光染色によって検出され得る。あるいは、このmAbは、放射能標識され得、放射能の測定によって結合が検出され得る。
【0079】
一実施形態において、ハイブリドーマ上清(例えば、50μl)が、約1.5時間37℃で固定された293細胞を含むウェルに加えられる。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBS/0.05% Tween−20)において2回洗浄し、Rhodamme Red結合体化ヤギ抗マウスIgGを、1.5時間370℃で、適切な希釈度(例えば、1:100)で加える(例えば、30μl/ウェル)。洗浄緩衝液における洗浄後、細胞を、免疫蛍光の存在について試験する;本明細書中で記載される実施形態においては、蛍光顕微鏡が使用される。
【0080】
この実施形態において、免疫蛍光は、ハイブリドーマ上清がuPA/uPAR複合体に特異的なAbを含有するか否かを決定するための基礎である(しかし、免疫組織化学もまた使用され得る)。上清が陽性の染色を示す場合、そのハイブリドーマクローンが選択され、増量され、そしてELISAによって上清が複合体への反応性について試験される。
【0081】
好ましいELISAにおいて、上記ペプチドは、キャリアタンパク質としてのオボアルブミン(OVA)に結合され、そのペプチド/OVA結合体が96ウェルEIAプレートのウェル上にコーティングされる。このプレートは、例えば、50μlのコーティング緩衝液(0.2M Na2CO3/NaHCO3,pH9.6)中の2μg/mlの結合体を受容する。プレートを4℃で一晩インキュベートし、4℃で一晩、適切なブロッキング緩衝液(例えば、1%BSAを含有するPBS)で(200μl/ウェル)ブロックする。ハイブリドーマ上清(例えば、50μl)を、室温において1.5時間ウェルに加える。プレートを洗浄緩衝液(例えば、PBS/0.05% Tween−20)において2回洗浄し、酵素結合二次Ab(例えば、アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗マウスIgG)を、適切な希釈度(例えば、1:2000)で加える(50μl/ウェル)。プレートを、室温で1.5時間インキュベートする。洗浄緩衝液において4回洗浄した後、その酵素に対する適切な色素性産生基質(例えば、この実施形態では、CP−ニトロフェニルリン酸(Kirkegaard and Perry Co.,Gaithersburg,MDから入手可能))が約30分間加えられ、有色の産物に対して適切な波長(ここでは、405nm)において吸光度が測定される。エピトープ保持ペプチドと強く反応する(例えば、A405が、ネガティブコントロールが<0.02のときに>1.0)ハイブリドーマ上清は、再びクローニングされ(好ましくは、2回)、そしてそのmAb反応性が、上述のようなELISAによって再度確認される。
【0082】
用語「抗体」は、インタクトな免疫グロブリン(Ig)分子ならびにそのフラグメントおよび誘導体の両方を含むことを意味する。このフラグメントおよび誘導体は、Ig分子のタンパク質分解性切断によって産生されるか、または遺伝的もしくは化学的に操作される。フラグメントとしては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2およびFvが挙げられ、これら各々が抗原に結合することができる。これらのフラグメントは、インタクトAbのFcフラグメントを欠き、治療的に使用される場合は、血液循環からより迅速に消え、そしてインタクトの抗体よりも非特異的な組織結合を起こさないというさらなる利点を有する。Igのパパイン処理によりFabフラグメントが産生され;ペプシン処理によりF(ab’)2フラグメントが産生される。これらのフラグメントはまた、当該分野で周知の方法を使用して、遺伝的操作またはタンパク質操作によっても産生され得る。Fabフラグメントは、一緒に共有結合したIg重鎖(H)およびIg軽鎖(L)の免疫学的に活性な部分を含むIg分子の一部から構成される多量体タンパク質であり、抗原と特異的に結合することができる。Fabフラグメントは、代表的に、当該分野で周知の方法を使用する、実質的にインタクトなIg分子のパパインでのタンパク質分解性消化によって調製される。しかしながら、Fabフラグメントはまた、当該分野で周知の方法を使用して、IgのH鎖およびIgのL鎖の所望される部分を適した宿主細胞中で発現することによっても、調製され得る。F(ab’)2フラグメントは、2つのH鎖および2つのL鎖のフラグメントを含む四量体である。上記Fvフラグメントは、一緒に共有結合したIgのH鎖可変(V)領域(VH)およびIgのL鎖V領域(VL)の免疫学的に活性の部分からなる多量体タンパク質であり、抗原に特異的に結合することができる。Fvフラグメントは、代表的に、当該分野で周知な方法を使用して、IgのVH領域およびVL領域の所望される部分を適した宿主細胞中で発現することによって調製される。
【0083】
単鎖の抗原結合部分または単鎖Ab(「scFv」とも呼ばれる)は、VL配列のC末端をVH配列のN末端に結合するペプチドによってIgのVHアミノ酸配列に係留されたIgのVLアミノ酸配列から構成されるポリペプチドである。
【0084】
好ましい実施形態において、上記Abは、ATN−615またはATN−658と命名されたmAbであり、これらは両方ともIgG1抗体である。
【0085】
別の好ましい実施形態において、このAbは、ATN−615またはATN−658によって認識されるエピトープを認識するキメラAbである。
【0086】
(キメラ抗体)
本発明のキメラ抗体は、個々のキメラH Ig鎖およびL Ig鎖を含む。このキメラH鎖は、例えばuPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的な非ヒトAb(ATN−615またはATN−658)のH鎖に由来する抗原結合領域を含み、これはヒトCH領域の少なくとも一部に連結される。キメラL鎖は、標的抗原に特異的な非ヒトAb(例えば、ハイブリドーマATN−615またはATN−658)のL鎖由来の抗原結合領域を含み、これは、ヒトCL領域の少なくとも一部に連結される。本明細書中で使用される場合、用語「抗原結合領域」とは、抗原と相互作用し、Abにその抗原に対する特異性および親和性を与えるアミノ酸残基を含有するAb分子の一部をいう。このAb領域は、抗原結合(または、「定常」)残基の正確な立体配置を維持するのに必要な、「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。
【0087】
本明細書中で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、一価、二価または多価Igを包含する。一価キメラ抗体は、ジスルフィド結合を通してキメラL鎖に連結したキメラH鎖によって形成されるHL二量体である。二価キメラAbは、少なくとも1つのジスルフィド架橋を通して連結した2つのHL二量体によって形成される、四量体H2L2である。多価キメラAbもまた、(例えば、IgM H鎖由来の、μ鎖と称される)凝集するCH領域を使用することによって、産生され得る。
【0088】
本発明はまた、マウスmAbまたはキメラAbの「誘導体」を提供し、この用語は、Igフラグメントに機能的に類似する分子種を得るために切断または改変された遺伝子によってコードされるタンパク質を包含する。この改変としては、植物または細菌の毒素のような細胞毒性タンパク質をコードする遺伝子配列の付加が挙げられるが、これに限定されない。このフラグメントおよび誘導体は、本発明の任意の宿主から産生され得る。
【0089】
同一のV領域結合特異性または異なるV領域結合特異性のキメラH鎖およびL鎖を有する抗体、フラグメントまたは誘導体は、例えば、Searsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:353−357(1975)によって教示されるように、個々のポリペプチド鎖の適切な結合によって調製され得る。このアプローチでは、キメラH鎖(またはその誘導体)を発現する宿主は、キメラL鎖(またはその誘導体)を発現する宿主から別個に培養され、そしてこのIg鎖は別々に回収され、次いで結合される。あるいは、この宿主は共培養され得、その培地内でその鎖は自発的に結合させられ得、次いで会合したIg、フラグメントまたは誘導体が回収され得る。
【0090】
本発明のキメラAb(または、ヒトmAb)の抗原結合領域は、好ましくは、例えばuPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的な非ヒトAbから誘導される。そのような非ヒトAbをコードするDNAのための好ましい供給源としては、Abを産生する細胞株(好ましくは、ハイブリドーマ)が挙げられる。好ましいハイブリドーマは、上に記載されるように産生され、そのV領域が上に示した配列を有する、ATN−615ハイブリドーマ細胞株(ATCC受託番号 )およびATN−658(ATCC受託番号 )である。
【0091】
従って、好ましいキメラAb(または、ヒトAb)は、配列番号1のVL配列および配列番号2のVH配列を有し、これらは、mAb ATN−658のコンセンサス配列である。CDR領域内にはないこれらのV領域の残基は、好ましくは保存的置換として、V領域が同じ抗原特異性および実質的に同じ抗原結合親和性または結合力を有する(好ましくは、VL配列が配列番号1であり、VH配列が配列番号2であるAbの少なくとも20%)Abを生じる限り、異なることがある。このキメラ(またはヒト)Abにおいて、VL鎖の3つのCDR領域は、配列番号3、配列番号4および配列番号5であり、VH鎖の3つのCDR領域は、配列番号6、配列番号7および配列番号8であることが好ましい。
【0092】
別の好ましいキメラAb(または、ヒトAb)は、配列番号9のVL配列および配列番号10のVH配列を有し、これらは、mAb ATN−615のコンセンサス配列である。CDR領域内にはないこれらのV領域の残基は、好ましくは保存的置換として、V領域が同じ抗原特異性および実質的に同じ抗原結合親和性または結合力を有する(好ましくは、VL配列が配列番号9であり、VH配列が配列番号10であるAbの少なくとも20%)Abを生じる限り、異なることがある。このキメラ(またはヒト)Abにおいて、VL鎖の3つのCDR領域は、配列番号11、配列番号12および配列番号13であり、VH鎖の3つのCDR領域は、配列番号14、配列番号15および配列番号16であることが好ましい。
【0093】
本発明のキメラAb(または、ヒトAb)を構築するのに使用するための好ましい核酸分子は、(a)配列番号1の配列を有するVL領域をコードするコード配列を有する核酸分子、および(b)配列番号2の配列を有するVH領域をコードするコード配列を有する核酸分子、である。3つのCDR(配列番号3、配列番号4および配列番号5)を含むVL領域をコードする核酸分子、ならびに3つのCDR(配列番号6、配列番号7および配列番号8)を含むVH領域をコードする核酸分子もまた、好ましい。
【0094】
本発明のキメラAb(または、ヒトAb)を構築するのに使用するための好ましい核酸分子の別のセットは、(a)配列番号9の配列を有するVL領域をコードするコード配列を有する核酸分子、および(b)配列番号10の配列を有するVH領域をコードするコード配列を有する核酸分子、である。3つのCDR(配列番号11、配列番号12および配列番号13)を含むVL領域をコードする核酸分子、ならびに3つのCDR(配列番号14、配列番号15および配列番号16)を含むVH領域をコードする核酸分子もまた、好ましい。
【0095】
あるいは、本発明のAbのV領域が由来する非ヒトAb産生細胞は、suPARのD2D3で免疫化された動物の血液、脾臓、リンパ節または他の組織から得られたBリンパ球であり得る。本発明のキメラAbの抗原結合領域をコードするヌクレオチド配列を与えるAb産生細胞は、非ヒト(例えば、霊長類)細胞またはヒト細胞の形質転換によって作製され得る。例えば、uPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体に特異的なAbを産生するBリンパ球は、ウイルス(例えば、エプスタイン・バー・ウイルス)で感染および形質転換され得、不死Ab産生細胞を得ることができる(Kozborら、Immunol.Today 4:72−79(1983))。あるいは、Bリンパ球は、当該分野で周知なように、形質転換遺伝子または形質転換遺伝子産物を提供することによって、形質転換され得る。好ましくは、抗原結合領域は、マウス起源のものである。他の実施形態において、この抗原結合領域は、他の動物種(特に、ラットまたはハムスターのようなげっ歯類)に由来し得る。
【0096】
本発明のマウスmAbまたはキメラmAbは、このAbを分泌するハイブリドーマまたはトランスフェクトーマ(transfectoma)を、マウスの腹腔内に注入し、適切な時間経過後に高力価のmAbを含む腹水を収集し、そしてそこからmAbを単離することによって、大量に産生され得る。そのような、非マウス(例えば、ラットまたはヒト)ハイブリドーマを用いたmAbのインビボ産生のためには、ハイブリドーマは、好ましくは、放射線照射されたかまたは胸腺欠損のヌードマウスにおいて増殖される。
【0097】
あるいは、上記抗体は、インビトロでハイブリドーマ(または、トランスフェクトーマ)細胞を培養し、分泌されたmAbをその細胞培地から単離することによって産生され得る。
【0098】
本発明のキメラ抗体の定常C領域をコードするヒト遺伝子は、ヒト胎児肝ライブラリーまたはヒトIgを発現および産生する細胞を含む任意のヒト細胞に由来し得る。ヒトCH領域は、ヒトH鎖の公知のクラスまたはアイソタイプ(γ、μ、α、δまたはεを含む)ならびにそのサブタイプ(例えば、G1、G2、G3およびG4)のいずれかに由来し得る。H鎖アイソタイプはAbの種々のエフェクター機能を担っているので、CH領域の選択は、所望されるエフェクター機能(例えば、補体結合)またはAb依存性細胞傷害性(ADCC)によって導かれる。好ましくは、このCH領域は、γ1(IgG1)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、またはμ(IgM)に由来する。
【0099】
ヒトCL領域は、ヒトL鎖アイソタイプであるκまたはλのいずれかに由来し得る。
【0100】
ヒトIgのC領域をコードする遺伝子は、標準的なクローニング技術によってヒト細胞から得られる(Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989))。ヒトC領域の遺伝子は、L鎖の2つのクラス、H鎖の5つのクラス、およびそれらのサブクラスを代表する遺伝子を含む公知のクローンから容易に入手可能である。キメラAbフラグメント(例えば、F(ab’)2およびFab)は、適切に切断されたキメラH鎖遺伝子を設計することによって調製され得る。例えば、F(ab’)2フラグメントのH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列と、その後に切断型分子を得るための翻訳停止コドンとを含む。
【0101】
一般的に、本発明のキメラ抗体は、本発明の特異的Ab(好ましくは、非ヒト)のH鎖およびL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローニングし、これらのDNAセグメントをそれぞれヒトCH領域およびCL領域をコードするDNAセグメントに連結し、キメラIgコード遺伝子を作製することによって産生される。
【0102】
従って、好ましい実施形態において、ヒトC領域の少なくとも一部をコードする第二のDNAセグメントに連結された、非ヒト起源の少なくとも抗原結合領域をコードする第一のDNAセグメント(例えば、接合(J)セグメントで機能的に再配列されたV領域)を含む融合遺伝子が作製される。
【0103】
Ab結合領域をコードするDNAは、ゲノムDNAであってもcDNAであってもよい。マウスV領域抗原結合セグメントをコードするDNAの供給源として染色体遺伝子セグメントの使用に対する慣習的な代替物は、Liuら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439(1987);J.Immuno.139:3521(1987)(これらは、本明細書中に参考として援用される)において報告されているように、キメラIg遺伝子の構築のためのcDNAの使用である。cDNAの使用は、所望されるタンパク質の合成を達成するために、遺伝子と組み合わされる宿主細胞に適切な遺伝子発現エレメントを必要とする。cDNA配列は適切なRNAスプライシング系を欠く細菌または他の宿主において発現され得るという点で、cDNA配列の使用はゲノム配列(イントロンを含む)よりも有利である。
【0104】
従って、上記AbのV領域をコードするcDNAを利用する実施形態において、キメラAbを産生する方法は、以下に概説される数個の工程を包含する:
1.そのmAbを産生する細胞株からのメッセンジャーRNA(mRNA)の単離、クローニングおよびそれからのcDNAの産生;
2.精製されたmRNAからの全長cDNAライブラリーの調製(これから、L鎖およびH鎖遺伝子の適切なV領域遺伝子セグメントが、(i)適切なプローブを用いて同定され、(ii)配列決定され、(iii)C遺伝子セグメントと適合させられる);
3.cDNA調製物からのC領域遺伝子セグメントの調製およびクローニング;
4.上述のように、クローニングされたV領域遺伝子セグメントをクローニングされたヒトC領域へ連結することによる、完全なH鎖またはL鎖コード配列の構築;
5.選択された宿主(原核生物細胞および真核生物細胞を含む)におけるキメラL鎖およびH鎖の発現および産生。
【0105】
全てのIgH鎖およびL鎖遺伝子およびそれらにコードされるmRNAの1つの共通の特徴は、J領域である。H鎖およびL鎖のJ領域は、異なる配列を有するが、各群の間で高度の配列相同性(80%を超える)が、特にC領域付近に存在する。この相同性が上記方法において利用され、H鎖およびL鎖のJ領域のコンセンサス配列が、その後のV領域セグメントのヒトC領域セグメントへの連結のために、J領域内へ有用な制限酵素部位を導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するのに使用され得る。
【0106】
ヒト細胞から調製されるC領域のcDNAベクターは、部位特異的変異誘発によって改変され得、制限酵素部位をヒト配列における類似の位置に配置し得る。例えば、完全κ鎖C(Cκ)領域および完全ヒトγ−1C領域(Cγ−1)をクローニングし得る。この場合は、C領域ベクターの供給源としてゲノムC領域クローンに基づいた代替的な方法では、介在配列を除去するのに必要とされる酵素が存在しない細菌系においてこれらの遺伝子を発現させることはできない。クローニングされたV領域セグメントは、切り出され、L鎖またはH鎖C領域ベクターにライゲーションされる。あるいは、ヒトCγ−1領域は、停止コドンを導入し、それによってFab分子のH鎖部分をコードする遺伝子配列を生成することによって、改変され得る。連結されたV領域およびC領域を有するコード配列は、次いで、適切な宿主(原核生物または真核生物)における発現のための適した発現ビヒクル内に移される。
【0107】
2つのコードDNA配列は、連結がトリプレットのリーディングフレームを変更または遮断なしで連続的に翻訳可能な配列をもたらす場合、「作動可能に連結された」といわれる。DNAコード配列は、連結が適切な機能をもたらす(遺伝子発現エレメントがコード配列の発現をもたらす)場合、遺伝子発現エレメントに操作可能に連結されている。
【0108】
発現ビヒクルとしては、プラスミドまたは他のベクターが挙げられる。これらの中で好ましいのは、適切な付着端を有する任意のVH鎖またはVL鎖配列が容易に挿入され得るように適切な制限酵素部位を有する、機能的に完全なヒトCH鎖またはCL鎖配列を保持するビヒクルである。従って、ビヒクルを含有するヒトCH鎖またはCL鎖配列は、任意の適切な宿主における任意の望ましい完全なH鎖またはL鎖の発現のための中間体として機能する。
【0109】
キメラマウス−ヒトAbは、代表的に、その構築物において使用されるマウスH鎖およびL鎖のV領域に対して天然の染色体遺伝子プロモーターによって駆動される遺伝子から合成される。通常スプライシングは、マウスJ領域におけるスプライシングドナー部位とヒトC領域の前にあるスプライシングアクセプター部位との間で起こり、またヒトCH領域内で生じるスプライシング部位においても起こる;ポリアデニル化および転写終結は、ヒトコード領域の下流のネイティブな染色体部位において起こる。
【0110】
cDNA遺伝子の発現に有用な遺伝子発現エレメントとしては:(a)ウイルス転写プロモーターおよびそのエンハンサーエレメント(例えば、SV40早期プロモーター(Okayama,H.ら、Mol.Cell.Biol.3:280(1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman,C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci,USA 79:6111(1982))、およびモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl,Rら、Cell 47:885(1985));(b)スプライシング部位およびポリアデニル化部位(例えば、SV40後期領域に由来するようなもの()Okayamaら、上述);および(c)SV40のようなポリアデニル化部位(Okayamaら、上述)、が挙げられる。
【0111】
IgのcDNA遺伝子は、上述のLiuら、およびWeidle,UHら、Gene 57:21−29(1987)に記載されるように、発現エレメントとして、SV40早期プロモーターおよびそのエンハンサー、マウスIgH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギβグロブリン介在配列、Igおよびウサギβグロブリンポリアデニル化部位、およびSV40ポリアデニル化エレメントを使用して、発現され得る。一部がcDNA、一部がゲノムDNAから構成されるIg遺伝子(Whittle,Nら、Protein Eng.7:499−505(1987))については、転写プロモーターはヒトサイトメガロウイルスであり、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルスおよびマウス/ヒトIgであり、そしてmRNAスプライシングおよびポリアデニル化領域は、天然の染色体Ig配列由来である。一実施形態において、げっ歯類細胞におけるcDNA遺伝子の発現のためには、転写プロモーターはウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーは、マウスIgのH鎖エンハンサーもしくはウイルスLTRエンハンサーのいずれか、またはその両方であり、スプライシング領域は31bpより大きいイントロンを含み、そしてポリアデニル化および転写終結領域は、合成されるIg鎖に対応する天然の染色体配列に由来する。他の実施形態において、他のタンパク質をコードするcDNA配列は、上述の発現エレメントと組み合わされ、哺乳動物細胞におけるそのタンパク質の発現を達成する。
【0112】
各融合遺伝子は、発現ベクターにおいてアセンブルされるか、または発現ベクター内に挿入される。キメラIg鎖遺伝子産物を発現し得るレシピエント細胞が、次いで、キメラH鎖またはキメラL鎖コード遺伝子で個々にトランスフェクションされるか、あるいはキメラH鎖およびキメラL鎖遺伝子で共トランスフェクションされる。このトランスフェクションされたレシピエント細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を可能にする条件下で培養され、その発現されたIg鎖またはインタクトの抗体もしくはフラグメントが、その培養物から回収される。一実施形態において、キメラH鎖およびL鎖またはそれらの一部をコードする融合遺伝子は、別個の発現ベクターにおいてアセンブルされ、それが次いで、レシピエント細胞を共トランスフェクションするのに使用される。
【0113】
各ベクターは、2つの選択可能な遺伝子を含有し得、第一の選択可能な遺伝子は、細菌系における選択用に設計されており、第二の選択可能な遺伝子は、真核生物系における選択用に設計されている(ここで、各ベクターは、異なる対の遺伝子を有する)。このストラテジーにより、細菌系における融合遺伝子の産生を最初に導き、そして増幅を可能にするベクターをもたらす。この遺伝子は、細菌宿主においてそのように産生および増幅され、その後真核生物細胞を同時トランスフェクションするのに使用され、そして望ましいトランスフェクション遺伝子を有する同時トランスフェクション細胞の選択を可能にする。細菌系において使用するための選択可能な遺伝子の例は、アンピシリンへの耐性を与える遺伝子、およびクロラムフェニコールへの耐性を与える遺伝子である。真核生物のトランスフェクションにおける使用のための好ましい選択可能な遺伝子としては、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gptと称される)およびTn5由来のホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと称される)が挙げられる。
【0114】
gptを発現する細胞の選択は、この遺伝子によってコードされる酵素が、プリンヌクレオチド合成のための基質としてキサンチンを用いるのに対して、類似の内在性酵素は用いることができないという事実に基づく。(1)イノシン一リン酸のキサンチン一リン酸(XMP)への変換をブロックするミコフェノール酸(XMP)、および(2)キサンチンを含む培地においては、gptを発現している細胞のみが生存し得る。neo遺伝子の産物は、抗生物質G418およびネオマイシンクラスの他の抗生物質によるタンパク質合成の阻害をブロックする。
【0115】
上記2つの選択手順は、2つの異なるDNAベクター上で真核生物細胞内に導入されたIg鎖遺伝子の発現について選択するために、同時または連続的に使用され得る。真核生物細胞に対して異なる選択可能なマーカーを含めることは必須ではなく;各々同一のベクターを含むH鎖およびL鎖ベクターが、同時トランスフェクションされ得る。適切に耐性な細胞の選択後は、大多数のクローンが、導入されたH鎖およびL鎖ベクターのコピーを含有する。
【0116】
あるいは、キメラH鎖およびL鎖をコードする融合遺伝子が、同一の発現ベクター上で構築され得る。
【0117】
発現ベクターのトランスフェクションおよびキメラAbの産生について、好ましいレシピエント細胞株は、骨髄腫細胞である。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされたIg遺伝子によってコードされるIgを合成、構築、分泌し得、Igのグリコシル化についての機構を保有し得る。特に好ましいレシピエント細胞は、Ig非産生骨髄腫細胞SP2/0(ATCC#CRL 8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクトされた遺伝子によってコードされるIgのみを産生する。骨髄腫細胞は、培地中またはマウスの腹腔中で増殖し得、分泌されたIgは、腹水から得られ得る。他の適切なレシピエント細胞としては、リンパ系細胞(例えば、ヒトまたは非ヒト起源のBリンパ球)、ヒトまたは非ヒト起源のハイブリドーマ細胞、あるいは種間のヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0118】
本発明のキメラAb構築物を保有する発現ベクターは、任意の種々の適切な手段(形質転換、トランスフェクション、結合、原形質体融合、リン酸カルシウム沈殿、およびポリカチオン(例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストラン)の適用のような生物学的手段、ならびにエレクトロポレーション、直接ミクロ注入、および微粒子銃のような機械的手段が挙げられる)によって適切な宿主細胞中に組み込まれ得る。
【0119】
本発明の配列または遺伝子をコードするキメラIgはまた、非リンパ系哺乳動物細胞または他の真核細胞(例えば、酵母)または原核細胞、特定の細菌において発現され得る。酵母は、Ig H鎖およびL鎖の産生について細菌よりも十分な利点を提供する。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後のペプチド改変を行う。多くの組み換えDNAストラテジーが、現在、存在し、それらは、酵母において所望のタンパク質の産生のために使用され得る強力なプロモーター配列および高コピー数のプラスミドを利用する。酵母は、クローニングされた哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を保有するペプチド(すなわち、プレペプチド)を分泌する。酵母遺伝子発現系は、キメラH鎖およびL鎖タンパク質ならびに構築されたキメラAbの産生、分泌および安定性のレベルについて慣習的に評価され得る。酵母がグルコース中のリッチな培地において増殖する場合、大量に産生される糖分解酵素をコードする活発に発現される遺伝子由来のプロモーターおよび終結エレメントを組み込む任意の一連の酵母遺伝子発現系が、利用され得る。公知の糖分解遺伝子はまた、非常に効果的な転写制御シグナルを提供し得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーターおよびターミネーターシグナルが、利用され得る。多くのアプローチが、酵母においてクローニングされたIg cDNAの発現のための最適な発現プラスミドを評価するために行われ得る(Glover,D.M.編、DNA Cloning,IRL Press,1985を参照のこと)。
【0120】
細菌株はまた、本発明に記載されるAb分子またはAbフラグメントの産生のための宿主(E.coli K12株(例えば、E.coli W3110(ATCC#27325)))として利用され得、そして他の腸内細菌(例えば、Salmonella typhimuriumまたはSerratia marcescens、および種々のPseudomonas種)が、使用され得る。
【0121】
宿主細胞と適合性の種に由来するレプリコンおよび制御配列を含むプラスミドベクターは、これらの細菌宿主とともに使用される。ベクターは、レプリコン部位、および形質転換された細胞において表現型の選択を提供し得る特定の遺伝子を保有する。多くのアプローチが、細菌においてクローニングされたIg cDNAによってコードされるキメラAbまたはAb鎖の産生について発現プラスミドを評価するために行われ得る(Glover、前出を参照のこと)。
【0122】
好ましい宿主は、哺乳動物細胞であり、インビトロまたはインビボにおいて増殖する。哺乳動物細胞は、リーダーペプチド除去、フォールディングならびにH鎖およびL鎖の構築、Ab分子のグリコシル化、ならびに機能的Abタンパク質の分泌を含むIgタンパク質分子に対する翻訳後の修飾を提供する。上記のリンパ系起源の細胞に加えて、Abタンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳動物細胞としては、フィブロブラスト起源の細胞(例えば、Vero(ATCC CRL81)またはCHO−K1(ATCC CRL61))が挙げられる。多くのベクター系は、哺乳動物細胞においてクローニングされたH鎖遺伝子およびL鎖遺伝子の発現のために利用可能である(Glover、前出を参照のこと)。続いて、異なるアプローチが、完全なH2L2Abを得るため行われ得る。
【0123】
インビボでの使用、特にヒトへの注入について、上記のマウス−ヒト(または齧歯類−ヒト)キメラAbを作製することによって、または当該分野において公知の方法を用いてAbをヒト化することによって、mAbの免疫原性を減少させることが所望される。ヒト化Abは、トランスジェニックヒトIg定常領域遺伝子を有する動物の産生物であり得る(例えば、WO90/10077およびWO90/04036を参照のこと)。あるいは、目的のAbは、遺伝子的に操作されて、CH1、CH2、CH3、ヒンジドメイン、および/または対応するヒト配列を有するフレームワークドメインを置換し得る(WO92/02190を参照のこと)。
【0124】
(単鎖抗体)
本発明のAbは、通常の多量体構造の代わりに単鎖AbまたはscFVとして産生され得る。単鎖Abは、目的のIg由来の超可変領域を含み、インタクトなIgのサイズの画分である間、ネイティブなIgの抗原結合部位を再生する(Skerra,Aら(1988)Science,240:1038−1041;Pluckthun,Aら(1989)Methods Enzymol.178:497−515;Winter,G.ら(1991)Nature,349:293−299);Birdら(1998)Science 242:423;Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879;Jost CRら、J Biol Chem.1994 269:26267−26273;米国特許第4,704,692号、同第4,853,871号、同第4,94,6778号、同第5,260,203号、同第5,455,030号)。H鎖およびL鎖のV領域をコードするDNA配列は、少なくとも約4個のアミノ酸(代表的に小さな中性のアミノ酸)をコードするリンカーにライゲーションされる。この融合によってコードされるタンパク質は、もとのAbの特異性および親和性を保持する機能的可変領域の構築を可能にする。
【0125】
本発明のAbを生成する1つの方法は、タンパク質化学技術によって2個以上のペプチドまたはポリペプチドを一緒に結合することである。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは、Fmoc(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)化学的性質またはtBoc(tert−ブチルオキシカルボニル)化学的性質のいずれかを用いる現在利用可能な実験装置を用いて化学的に合成され得る(Applied Biosystem,Inc.,Foster City,CA)。当業者は、Ab鎖またはその抗原結合フラグメントに対応するペプチドまたはポリペプチドが、標準的な化学反応によって合成され得ることを容易に理解する。例えば、ペプチドまたはポリペプチドは合成され得るが、その合成樹脂から切断されないのに対して、Abのもう1つのフラグメントは、合成されてその樹脂から実質的に切断され得、それによって、もう1つのフラグメント上に機能的にブロックされる末端基を曝露する。ペプチド縮合反応によって、これら2つのフラグメントは、それぞれ、それらのC末端およびN末端でペプチド結合を介して共有結合されて、Abまたはそのフラグメントを形成し得る(Grunt,GA,Synthetic Peptides:A User Guide,W.H.Freeman and Co.,N.Y.(1992);Bodansky,Mら、編、Principles of Peptide Synthesis,Springer−Verlag Inc.,N.Y.(1993))。
【0126】
抗体は、特定の所望の特性について選択され得る。インビボで使用されるAbの場合において、Abスクリーニング手順は、例えば、uPA/uPARまたはuPAR−インテグリン複合体、関連するポリペプチドエピトープまたはペプチドエピトープを発現する細胞に対する結合を測定する任意のインビトロまたはインビボでのバイオアッセイを包含し得る。さらに、Abは、種々の腫瘍モデル(例えば、異種のマウスモデル(この異種のマウスモデルにおいて抗原を発現するヒト腫瘍細胞株は、免疫無防備状態において増殖する)(例えば、ヌードマウス))においてスクリーニングされ得る。
【0127】
(診断的に標識された抗体)
用語「診断的に標識された」とは、本発明のAbが、診断的に検出可能な標識に付着されていることを意味する。以下に記載するように、当業者に公知の多くの異なる標識および標識方法が存在する。本発明において使用され得る標識の一般的な分類は、放射性同位体、常磁性同位体、および陽子射出断層撮影法(PET)によって画像化され得る化合物、蛍光または着色化合物などを含む。適切な検出可能な標識は、放射活性標識、蛍光標識、蛍光発生標識、色素形成標識、または他の化学的標識を含む。γカウンター、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーによって簡単に検出される有用な放射標識(放射性核種)としては、3H、125I、131I、35Sおよび14Cが挙げられる。131Iはまた、有用な治療的同位体である(以下を参照のこと)。
【0128】
本明細書中に援用される多くの米国特許は、有用なキレート剤の詳細を含む、高分子に対する錯化金属についての方法および組成物を開示している。この金属は、好ましくは、放射性核種を含む、検出可能な金属原子であり、タンパク質および他の分子と結合される。これらの文献としては、米国特許第5,627,286号;同第5,618,513号;同第5,567,408号;同第5,443,816号;および同第5,561,220号が挙げられる。
【0129】
一般的な蛍光標識としては、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アリフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレサミンが挙げられる。フルオロフォア(例えば、ダンシル基)は、蛍光に対する特定の波長の光によって励起されなければならない。例えば、Haugland,Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemical、第6版、Molecular Probes,Eugene,OR.,1996を参照のこと。フルオロセイン、フルオロセイン誘導体およびフルオロセイン様分子(例えば、Oregon GreenTMおよびその誘導体、Rhodamine GreenTMおよびRhodol GreenTM)は、イソチオシアネート、スクシンイミジルエステルまたはジクロロトリアジニル反応基を用いてアミン基に結合される。同様に、フルオロフォアもまた、マレイミド、ヨードアセトアミド、およびアジリジン反応基を用いてチオールに結合され得る。基本的には、窒素上に置換基を有するRhodamine GreenTM誘導体である長波長ローダミンは、公知の最も光安定性の蛍光標識試薬の1つである。これらのスペクトルは、多くの生物学的適用のためのフルオロセインに対して重要な利点である、4と10との間のpHの変化によって影響されない。この群としては、テトラメチルローダミン、X−ローダミンおよびTexas RedTM誘導体が挙げられる。本発明に従うペプチドを誘導するための他の好ましいフルオロフォアは、紫外線によって励起されるものがある。例としては、カスケードブルー、クマリン誘導体、ナフタレン(その塩化ダンシルは、メンバーである)、ピレン、ピリジルオキサゾール誘導体が挙げられる。標識として含まれるものはまた、最近、記載されている2つの関連する無機材料:例えば、硫酸カドミウムを含む半導体ナノ結晶(Bruchez,Mら、Science 281:2013−2016(1998))、および量子ドット(例えば、亜鉛−硫酸−キャップ化Cdセレニド(Chan,WCら、Science 281:2016−2018(1998)))である。
【0130】
さらに別のアプローチにおいて、Abのアミノ基は、蛍光生成物(例えば、フルオレサミン、ジアルデヒド(例えば、o−フタルジアルデヒド)、ナフタレン−2,3−ジカルボキシレートおよびアントラセン−2,3−ジカルボキシド)を生じる試薬と反応される。7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール(NBD)誘導体塩化物およびフッ化物の両方は、アミンを改変して蛍光性生物を得るために有用である。
【0131】
本発明のAbはまた、蛍光放射金属(例えば、152EU、またはランタニド系列の他のもの)を用いて検出するために標識され得る。これらの金属は、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA、以下の実施例Xを参照のこと)またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)のような金属キレート基を用いてペプチドに結合され得る。例えば、DTPAは、本発明のNH2含有ペプチドを容易に改変し得る無水物として利用可能である。
【0132】
インビボでの診断または治療のために、放射性核種は、キレート剤(例えば、DTPAおよびDOTA)を用いて直接的または間接的のいずれかでAbに結合され得る。このような放射性核種の例は、99Tc、123I、125I、131I、111In、97Ru、67Cu、67Ga、68Ga、72As、89Zr、90Yおよび201Tlである。一般に、診断的使用において検出感度を必要とされる標識されたAbの量は、考慮すべき事柄(例えば、年齢、状態、性別、および患者の疾患の程度、禁忌、もしあれば他の変化するもの)に依存して変化し、個々の医師または診断者によって調節される。投薬量は、0.0001mg/kg〜100mg/kgである。
【0133】
Abはまた、リン光化合物または化学発光化合物に結合することによって検出可能に作製され得る。次いで、化学発光標識ペプチドの存在は、化学反応の間に生じる発光の存在を検出することによって決定される。特に有用な化学発光の例は、ルミノール、イソルミノール、セロマティック(theromatic)アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルである。同様に、生物発光化合物は、ペプチドを標識するために使用され得る。生物発光は、触媒作用タンパク質が、効果的に化学発光反応を増加させる生物学的系において見出される化学発光の型である。生物発光タンパク質の存在は、発光の存在を検出することによって決定される。標識する目的のために重要な生物発光化合物は、ルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンである。
【0134】
さらに別の局面において、比色分析検出が、高吸光率を有する発色団を有するか、または生じる色素産生化合物に基づいて使用される。
【0135】
標識されたペプチドのインサイチュでの検出は、被験体由来の組織試料を取り除き、標識を検出するための適切な条件下で顕微鏡でそれを調べることによって達成され得る。当業者は、任意の広範な種々の組織学的方法(例えば、染色手順)が、このようなインサイチュでの検出を達成するために改変され得ることを容易に理解する。
【0136】
診断に用いるインビボでの放射性画像化のために、利用可能な検出機器の型は、放射性核種を選択する際の重要な要因である。選択される放射性核種は、特定の機器によって検出可能である崩壊の型を有さなければならない。一般に、可視化診断画像化のための任意の従来の方法は、本発明に従って利用され得る。インビボでの診断のための放射性核種を選択する際の別の要因は、標識が、標的組織による最大取り込みの時間においてまだ検出可能であるように半減期が十分に長いが、しかし宿主の有害な照射が最小であるように短いことである。1つの好ましい実施形態において、インビボでの画像化のために使用される放射性核種は、微粒子を放射するが、しかし、140〜200keVの範囲において大量の光子を産生し、これは、従来のγカメラによって容易に検出され得る。
【0137】
インビボでの画像化は、他の方法によって観測され得ない潜在性転移を検出するために使用され得る。画像化は、例えば、腫瘍を非侵入性にするために使用され得た。
【0138】
(免疫アッセイによってuPA複合体またはuPAR複合体を検出するための抗体の使用)
本発明の抗体は、組織試料または体液(血清または結晶)において上記のエピトープを含む分子を検出するために免疫アッセイにおいて有用である。このようなAbは、抗原またはそのエピトープ保有フラグメンを検出する。従って、腫瘍環境におけるタンパク質分解は、フラグメントまたは組織の遊離を生じる。
【0139】
当該分野において公知の任意の従来の免疫アッセイが、この目的のために使用され得るが、酵素免疫法(例えば、ELISA)が好ましい。免疫アッセイ法はまた、上記に引用した参考文献に記載される。
【0140】
競合的免疫アッセイは、代表的に、それらの結合特異性、親和性、能力などにおいてmAbを模倣し得る複合体のためのリガンドである試験試料中の分子を検出するために使用される。1つの実施形態の競合的結合アッセイにおいて、複合体に結合したAbの量は、(標識された抗Igを用いて直接的または間接的に)測定される。試験試料の存在下における競合(すなわち、複合体へのAbのより少ない結合)は、試料の1つ以上の化合物が、複合体に結合しているという証拠である。試験されるほとんどの化合物が、適度の親和性(約1〜10μM)で結合することが予想される。
【0141】
別の実施形態において、固体支持体(例えば、マイクロプレート)は、目的のmAbでコーティングされる。試験試料は添加されて、例えば、約30分間インキュベートされて、Abに対する関連分子の結合を可能にする。このプレートは洗浄されて、検出可能に標識された形態(例えば、ビオチン化された)の複合体は、競合リガンドとして添加され、Abに対する結合のための試験試料との競合を可能にする。試験試料についての「ポジティブな」結果は、固相に結合した標識された複合体のより少ない結合として表される。複合体溶液および試料溶液が同時に添加されないこのアプローチは、複合体に直接的に結合する試験試料の効果を混同することを避ける。なぜなら、任意の試験試料の存在は、固定化されたmAbによって最初に捕捉されなければならないからである。好ましくは、結合を確実にすることは特異的であり、一連の希釈が希釈曲線を得るために行われる。このことは、例えば、半分の試料で50%未満の結合/シグナル比が存在するか否かを示す。このような希釈効果の非存在下において、複数の結合の存在が、アッセイに含まれると結論され得る。結果は、mAb結合部位において分子結合が、同様の親和性を有する場合、より厳密である。
【0142】
(免疫組織化学アッセイ)
組織における抗原を検出するための1つの好ましいアッセイは、当該分野が十分に満たす任意の従来のアッセイ法を用いる、免疫組織化学によるものである。好ましいアッセイは、以下の実施例に記載されるものである。そのような方法の詳細については、例えば、Dabbs,DJ,Diagnostic Immunohistochemistry,Churchill Livingstone,2001(その全体は本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0143】
(非組織学的免疫アッセイ)
好ましい免疫アッセイは、固体支持体に固定された抗原またはAbを使用する、酵素免疫測定法(EIA)(例えば、ELISA)である。本発明の組成物および方法について、固体支持体は、好ましくは、ポリスチレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、ポリアクリルアミド、二フッ化ポリビニリデン、天然セルロース、改変セルロース、ニトロセルロール、アガロースおよび磁性ビーズのうちのいずれか1つである。好ましい実施形態において、ポリスチレンまたは他のプラスチックマルチウェルプレートの表面は、固体支持体として役立つ。別の実施形態において、Abまたは抗原に対する固体支持体は、底部に加えられるか、またはマルチウェルプレートの壁にゆるく置かれる。マルチウェルプレートは、ウェルの底にニトロセルロースまたは同様の膜物質を含み、それを介して液体は、圧力下で移動され得るか、あるいは減圧がまた使用され得る。
【0144】
代表的、および好ましい免疫アッセイとしては、固体支持体に固定化されたAbが最初に、2成分の固定化されたAb−抗原複合体の形成によって試料由来の抗原を結合または「抽出」するために試験される試料と接触される「フォワード(forward)」アッセイが挙げられる。適切なインキュベーションの後、固体支持体は洗浄されて、未結合の抗原(あれば)を含む、流体試料の残渣が除去され、次いで、未知量の標識されたAb(「レポーター分子」として機能する)を含む溶液と接触される。第2のインキュベーション後、標識されていないAbを介して固定化された抗原との複合体に対するAbの標識を可能にし、固体支持体は、2回洗浄されて、未反応の標識されたAbが取り除かれ、固定化された標識が測定される。この型のフォワードサンドイッチ(forward sandwich)アッセイは、抗原が存在するか、あるいは固定化された標識Abと抗原の既知の量を含む標準的な試料が使用される場合の固定化された量とを比較することによって定量的にされ得るか否かを決定するための簡単な「あり/なし」アッセイであり得る。
【0145】
いわゆる「同時」および「リバース」サンドイッチアッセイもまた、使用され得る。同時アッセイは、固定化されたAbとして単一のインキュベーション工程に関与し、標識Abは、試料に同時に添加される。適切なインキュベーション後、固体支持体は、洗浄されて、試料および複合体化されていない標識Abの残渣を取り除かれる。次いで、固体支持体に関連する標識Abの存在または量は、上記の従来の「フォワード」サンドイッチアッセイのように決定される。
【0146】
「リバース」アッセイにおいて、標識Abの溶液は、適切なインキュベーションの期間の後にサンプルに添加され、続いて、固定化された未標識Abが添加される。第2のインキュベーションの後、固相物質が従来の様式で洗浄されて、試料および未反応の標識Abの残渣が取り除かれる。次いで、固体支持体に関連する固定化されたAbの決定が、「同時」および「フォワードアッセイ」のように決定される。
【0147】
(全細胞上のuPARに対する抗体結合についてのアッセイ)
uPAR標的Abおよび/またはその結合体は、uPARに対する結合について、好ましくは、競合リガンド結合アッセイにおいてuPARに対する[125I]DFP−uPAの結合の阻害を測定することによって、または[125I]でAbを直接的に標識することによって、容易に試験される。このアッセイは、uPARを発現する全細胞(例えば、A2780またはHeLaのような細胞株)を使用し得る。好ましいアッセイは、以下のように実施される。細胞(約5×104/ウェル)を、24ウェルプレート中の培地(例えば、Earle’塩/10%FBS+抗生物質を含むMEM)にプレートして、次いで、細胞が70%コンフルエンスに達成するまで湿った5%CO2雰囲気でインキュベートした。触媒不活性高分子量uPA(DFP−uPA)を、約250,000cpm/μgの比活性に対してIodo−gen(登録商標)(Pierce)を用いて放射性ヨウ素で標識した。次いで、細胞含有プレートを氷上で冷却して、細胞を冷PBS/0.05%Tween−80で2回(各々5分)洗浄した。試験Absおよび/またはその結合体を、冷PBS/0.1%BSA/0.01%Tween−80中で連続希釈し、[125I]DFP−uPAの添加の10分前に最終容積0.3mLにして各ウェルに添加する。次いで、各ウェルに0.2nMの最終濃度で9500cpmの[125I]DFP−uPAを与える。次いで、プレートを4℃で2時間インキュベートし、その時間の後、細胞を冷PBS/0.05%Tween−80で3回(各々5分)洗浄する。NaOH(1N)を、0.5mL中の各ウェルに添加して細胞を溶解し、そしてプレートを室温で5分間または顕微鏡検査によって決定した場合、各ウェル中の全ての細胞が溶解するまでインキュベートする。次いで、各ウェルの内容物を吸引して、γカウンターを用いて各ウェル中の全カウントを決定する。各化合物を三連で試験し、結果を、[125I]DFP−uPA単独を含むウェル中で測定した全放射活性(最大(100%)結合を示すために得る)の割合として表す。
【0148】
uPARに対する[125I]DFP−uPAの結合阻害は通常、用量に関連し、その結果、曲線の線形部の範囲に含まれると予想される50%結合阻害(IC50値)を生じるのに必要な試験化合物の濃度を、容易に決定する。一般に、Absおよび/またはその結合体は、約10−5M未満のIC50値を有する。好ましくは、Absおよび/またはその結合体は、約10−6M未満、より好ましくは約10−7M未満のIC50値を有する。
【0149】
(抗uPAR抗体または他のリガンドの生物学的活性のアッセイ)
当業者は、本明細書中に記載するような、本発明のAbsまたは他のuPAR結合リガンドあるいはその結合体の活性を測定するための有用なインビトロアッセイおよびインビボアッセイが、例示であり、包括的でも限定するものでもないことが意図されることを理解する。
【0150】
(EC移動についてのアッセイ)
EC移動研究について、トランスウェルを、1つのトランスウェルにつき200μLのコラーゲン溶液を添加することによってI型コラーゲン(50μg/mL)でコーティングし、次いで37℃で一晩インキュベートする。このトランスウェルを、24ウェルプレート中に集めて、化学誘引物質(例えば図2)を、全容積0.8mLの培地中の底部のチャンバに添加する。トリプシンを用いて単層培養物から分離されたEC(例えば、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC))を、無血清培地で約106細胞/mLの最終濃度に希釈し、この細胞懸濁液の0.2mLを各トランスウェルの上部のチャンバに添加する。試験されるべきインヒビターは、上部および底部のチャンバの両方に添加され得、移動を37℃で湿った雰囲気下で5時間進行させる。このトランスウェルを、DiffQuik(登録商標)を用いて染色したプレートから取り除く。移動しなかった細胞を、消毒綿で剥離することによって上部のチャンバから除去し、膜を分離し、スライドガラス上に載せ、高倍率視野(400倍)でカウントして移動した細胞の数を決定する。
【0151】
(抗侵入活性の生物学的アッセイ)
Matrigel(登録商標)侵入アッセイシステムとして公知のアッセイにおけるECまたは腫瘍細胞(例えば、PC−3ヒト前立腺癌細胞)のような細胞の再構成基底膜(Matrigel(登録商標))を介して進入する能力は、周知である(Kleinmanら、Biochemistry 1986,25:312−318;Parishら、1992,Int.J.Cancer 52:378−383)。Matrigel(登録商標)は、IV型コラーゲン、ラミニン、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(例えば、パールカン(perlecan)(bGFGに結合して局在化する))、ビトロネクチン(vitronectin)ならびにトランスホーミング成長因子−β(TGFB)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)およびプラスミノーゲン活性化因子インヒビターI型(PAI−I)として公知のセルピンを含む再構成底膜である(Chambersら、Canc.Res.1995,55:1578−1585)。細胞外レセプターまたは酵素を標的とするABおよび/またはその結合体あるいは他のリガンドについてのこのタイプのアッセイにおいて得られる結果は、インビボでのこれらのAbおよび/またはその結合体の効果の予測であることが、当該分野において容認されている(Rabbaniら、Int.Cancer 1995,63:840−845)。
【0152】
このようなアッセイは、トランスウェル組織培養挿入物を使用する。侵入性細胞を、Matrigel(登録商標)およびポリカーボネート膜の上面を介して横切る細胞と定義し、膜の底部に付着する。ポリカーボネート膜(8.0μmの孔サイズ)を含むトランスウェル(例えば、Costarから提供される)を、約75μg/mLの最終濃度(例えば、1つの挿入物につき60μLの希釈されたmatrigel(登録商標))に滅菌PBS中で希釈されているMatrigel(登録商標)(例えば、Collaborative Researchから提供される)でコーティングして、24ウェルプレートのウェル中に置く。膜を生物学的安全キャビネット中で一晩乾燥し、次いで、100μLの培地(例えば、DMEM)を添加することによって元に戻し、振盪テーブル上で1時間抗生物質を補足する。DMEMを吸引によって各々の挿入物から取り除き、0.8mLの完全なDMEM(+/10%FBSおよび抗生物質)を、それがトランスウェルの外側(「より低いチャンバ」)を囲むように、24ウェルプレートの各ウェルに添加する。抗生物質(100μL)を含むDMEM、ヒトGlu−プラスミノーゲン(5μg/mL)および試験される任意のインヒビターを、トランスウェルの内側の上面(より上のチャンバ)に添加する。試験される細胞を、トリプシン処理し、DMEM+抗生物質中で再懸濁し、約8×105細胞/mLの最終濃度でトランスウェルの上面のチャンバに添加する。上面チャンバの最終容積は、200μLに調整する。次いで、合わせたプレートを、湿った5%CO2雰囲気下で72時間インキュベートする。インキュベーション後、細胞を固定して、DiffQuik(登録商標)を用いて染色(Giemsa染色)し、次いで、上面のチャンバを、消毒綿を用いて剥離してMatrigel(登録商標)および膜を介して侵入しなかったあらゆる細胞を取り除く。膜を、X−acto(登録商標)ブレードを用いてトランスウェルから分離し、Permount(登録商標)およびカバースリップを用いてスライドガラス上に載せ、次いで、高倍率(約400倍)を用いて顕微鏡下でカウントする。5〜10の数えた領域からの侵入性細胞の平均数を計算し、インヒビター濃度の関数としてプロットする。
【0153】
(血管形成活性の管形成アッセイ)
調製または商業的に得られ得るEC(例えば、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)またはヒト微小血管内皮細胞(HMVEC))を、フィブリノーゲン(1:1(v/v)の比でリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に5mg/mL)を含む2×105細胞/mLの濃度で混合する。トロンビンを添加(5ユニット/mLの最終濃度)し、混合物をすぐに24−ウェルプレートにトランスフェクトする(各ウェルにつき0.5mL)。フィブリンゲルを形成させて、次いでVEGFおよびbFGFを、試験化合物とともに各ウェルに(各々5ng/mLの最終濃度で)添加する。細胞を、4日間5%CO2中で37℃にてインキュベートし、その時点で各ウェルの細胞をカウントし、丸い、分枝を有さない細長い、1つの分枝を有する細長い、2つ以上の分枝を有する細長い細胞のいずれかとして分類する。結果は、化合物の各濃度について5つの異なるウェルの平均として表す。一般的に、血管新生阻害因子の存在下において、細胞は、円形を維持するか、または、未分化管腔を形成した(例えば、0から1つの枝)。このアッセイは、当業界において、in vivo における血管新生(または抗−血管新生)の予測的な有効性として認識される(Min et al.,Cancer Res. 1996,56 : 2428−2433)。
【0154】
もう一方のアッセイにおいて、Matrigel(登録商標)上でECを培養する場合、EC管腔形成が観察される(SchnaperHWら、J.Cell.Physiol.1995,165:107−118)。104EC細胞/ウェルをMatrigel(登録商標)コーティング化24ウェルプレート上に移動し、48時間後に管腔形成を定量化する。それらをECとして同時に、または、その後の様々な時点において加えることによりインヒビターを試験する。また、管腔形成は、(a)血管新生成長因子(例えば、bFGFもしくはVEGF)(b)分化刺激剤(例えば、PMA)、または(c)これらの組み合わせ、を加えることにより刺激することができる。
【0155】
理論に束縛されることは望まないが、このアッセイは、ECに基底膜の特定の型、すなわち、遊走および分化しているECが最初の遭遇として予期され得るマトリックスの層に提示することにより、血管新生のモデルになる。結合した成長因子に加えて、Matrigel(登録商標)中(およびインサイチュにおける基底膜中)で見出されるマトリックス成分、またはそのタンパク質分解性生産物もまたEC管腔形成のための刺激因子であり得、このことは、このモデルを前述したフィブリンゲル血管新生モデルに対して相補的なモデルにする(Blood,CHら、Biochim.Biophys.Acta 1990,1032:89−118;Odedra,Rら.,Pharmac.Ther.1991,49:111−124)。
【0156】
(細胞増殖の阻害のためのアッセイ)
ECの増殖を阻害するための、本発明のAbおよび/または結合体の能力は、96ウェルフォーマット中で決定できる。プレートのウェルをコーティングするために、I型コラーゲン(ゼラチン)を使用する(室温で30分間、0.1mLウェル当たりPBS中に0.1〜1mg/mL)。そのプレートを洗浄後(PBSを用いて3回)、ウェル当たり3〜6×103細胞をプレートし、そして、上皮細胞成長培地(EGM;Clonetics)または0.1〜2%FBSを含むM199培地中で4時間付着させる(37℃/5%CO2)。その培地およびいかなる非接着細胞も4時間後に除去し、そしてbFGF(1〜10ng/mL)またはVEGF(1〜10ng/mL)を含む新鮮な培地を各ウェルに加える。試験する抗体および/または結合体を最後に加え、そして、そのプレートを24〜48時間インキュベートさせる(37℃/5%CO2)。色素生産性化合物MTS(Promega)を各ウェルに加え、そして、1〜4時間インキュベートさせる。各ウェルで発達する色は、直接、細胞数に比例し、それによって、カウントしている細胞の代わりとして役立つ。490nmでの吸光度を、細胞数、すなわちコントロールウェルと試験Abおよび/または結合体を含むこれらとの間の増殖における違いを決定するために使用する。
【0157】
同様のアッセイ系を、培養した付着性腫瘍細胞で行うことができる。しかしながら、コラーゲンは、このフォオーマット中で取り除くことができない。腫瘍細胞(例えば、3〜10×103/ウェル)をプレート、そして、一晩付着させる。次いで、無血清培地をウェルに加え、そして、その細胞を24時間同調させる。次いで、増殖を刺激するために10%FBSを含む培地を各ウェルに加える。試験される抗体および/または結合体は、いくつかのウェルに含まれる。24時間後、MTSをそのプレートに加え、そして、そのアッセイを発色させ、そして、上述のように判断する。
【0158】
(増殖毒性のアッセイ)
Abおよび/またはその結合体の抗増殖性物質および細胞毒性効果を、腫瘍細胞、EC、線維芽細胞およびマクロファージを含む、種々の細胞型について決定し得る。これは、治療部分(例えば、放射線治療)または毒素に結合されているAbを試験する場合、特に有用である。例えば、131Iでヨウ素化されたBolton−Hunter試薬を含む本発明のAbの1つの結合体は、uPARを発現する細胞の増殖を(ほとんどアポトーシスを誘発することによって)阻害すると予想される。抗増殖性物質効果は、腫瘍細胞および刺激された内皮細胞に対すると予想されるが、いくつかの状況下において、内皮細胞も正常なヒト真皮線維芽細胞も必要とされない。正常な細胞において観測される任意の抗増殖性物質または細胞毒性効果は、結合体の非特異的毒性を示し得る。
【0159】
代表的なアッセイは、96ウェルプレートにおいて1つのウェルにつき5〜10,000個の細胞の密度でプレーティングした細胞に関する。試験される化合物は、結合アッセイにおいて測定される10倍のIC50の濃度(これは、結合体に依存して変化する)で添加され、30分間細胞とともにインキュベートされる。細胞を培地とともに3回洗浄し、次いで、[3H]チミジン(1μCi/mL)を含む新鮮な培地を細胞に添加し、それらを24時間および48時間、5%CO2下で37℃にてインキュベートさせる。細胞を、1M NaOHを用いて種々の時点で溶解し、β−カウンターを用いて1ウェルあたりカウントする。増殖は、全細胞数を測定するためにMTS試薬またはCyQuant(登録商標)を用いて測定された非放射活性である。細胞毒性アッセイ(細胞溶解を測定すること)について、Promega96−ウェルプレート細胞毒性キットを使用する。抗増殖活性の証拠が存在する場合、アポトーシスの誘発が、TumorTACS(Genzyme)を用いて測定され得る。
【0160】
(カスパーゼ−3活性)
ECのアポトーシスを促進するAbおよび/または結合体の能力は、カスパーゼ−3の活性化を測定することにより、決定され得る。I型コラーゲン(ゼラチン)は、P100プレートをコーティングするために使用し、そして、10%FBCを含むEGM中で5×105ECを播種する。24時間後(5%CO2中37℃にて)、2%FBS、10ng/mlのbFGFおよび所望する試験化合物を含むEGMで、その培地を置き換える。6時間後、細胞を回収し、1%Triton−100界面活性剤中で細胞溶解液を調製し、そして、EnzChek(登録商標)カスパーゼ−3Assay Kit #1(Molecular Probes)を使用して、製造業者の指示に従いアッセイする。
【0161】
(角膜血管新生モデル)
使用されるプロトコルは、本質的に、Volpert,OVら、J.Clin.Invest.1996,98:71−679により記載されたものと同じものである。つまり、雌性Fischerラット(120〜140グラム)を麻酔し、そしてHydron(登録商標)、bFGF(150nM)、および試験されるAbおよび/またはその結合体から成るペレット(5μl)を、縁から1.0〜1.5mmの角膜中に小さく切開した部分に移植する。新血管新生を、移植後5日目および7日目にアッセイする。7日目に、動物を麻酔し、そして、血管を染色するために色素、例えば、コロイド性炭素で注射する。次いで、動物を安楽死させ、角膜をホルマリンで固定し、そして、角膜を平板化し、そして、新血管新生の程度を評価するために撮影する。新血管は、全血管範囲もしくは長さを画像化することにより、または単に血管をカウントすることにより定量化され得る。
【0162】
(ニワトリ絨毛尿膜(CAM)の血管新生アッセイ)
このアッセイは、本質的に、Nguyenら、Microvascular Res.1994,47:31〜40に記載されるように行う。血管新生因子(bFGF)または腫瘍細胞プラス試験化合物(ここでは抗−uPAR Abまたは結合体)のいずれかを含むメッシュを、8日齢のニワトリ胚のCAM上に置き、そして、その試料の移植後、3〜9日間、CAMを観察する。血管新生は、見える血管を含むメッシュ中の平方の百分率を測定することにより定量化する。
【0163】
(Matrigel(登録商標)プラグアッセイ)
このアッセイは、本質的に、Passaniti,Aら、1992,Lab Invest.67:519−528に記載されるように行う。氷冷Matrigel(登録商標)(例えば、500μL)(Collaborative Biomedical Products,Inc.,Bedford,MA)を、ヘパリン(例えば、50μg/ml)、FGF−2(例えば、400ng/ml)および試験される化合物と混ぜる。いくつかのアッセイにおいて、bFGFを血管新生刺激として腫瘍細胞と置換し得る。Matrigel(登録商標)混合物は、4〜8週齢の胸腺欠損ヌードマウスの腹腔正中付近に、好ましくは、マウス当たり3回、皮下的(s.c)に注射する。注射したMatrigel(登録商標)は明白な固形ゲルを形成する。注射部位は、各動物に、ポジティブコントロールプラグ(例えば、FGF2+ヘパリン)、ネガティブコントロールプラグ(例えば、バッファー+ヘパリン)および、血管新生における効果のために試験される化合物を含むプラグ(FGF−2+ヘパリン+化合物)を与えるように選択する。全ての処置群は、好ましくは、三連で行う。注射から約7日後、または、血管新生の観察に最適であり得る時に、動物を頚椎脱臼により屠殺する。そのマウスの皮膚を、腹腔正中にそって剥離し、そして、Matrigel(登録商標)プラグを回収し、そして、高解像度において、直ちに走査する。次いで、プラグを水中に分散し、そして、37℃で一晩インキュベートする。ヘモグロビン(Hb)レベルを、Drabkin’s溶液(例えば、Sigmaから得られる)を使用して、製造業者の指示に従い決定する。プラグ中のHbの量は、試料中の血液量を反映するので、血管新生の間接的な尺度となる。
【0164】
さらに、またはあるいは、屠殺する前に、フルオロフォアと結合する高分子量デキストランを含む0.1mlのバッファー(好ましくはPBS)を、動物に注射してもよい。分散したプラグ中の蛍光定量的に決定される蛍光量もまた、プラグ中の血管新生の尺度として役立つ。mAb抗−CD31(CD31は「血小板−内皮細胞吸着分子」、「PECAM」である)での染色はまた、プラグ中の新血管新生および微小血管密度を確認するために使用され得る。
【0165】
(腫瘍細胞を用いてMatrigel(登録商標)プラグアッセイを使用するインビボにおける血管新生阻害および抗腫瘍効果の評価)
このアッセイにおいて、腫瘍細胞、例えば、1〜5×106細胞の3LL Lewis肺癌腫、または、ラット前立腺細胞株のMatLyLuをMatrigel(登録商標)と混合し、次いで、上記のプロトコルに従い、マウスの横腹に注射する。およそ5〜7日後、プラグ中で、腫瘍細胞の集団および強力な血管新生応答を観察することができる。実際の腫瘍環境における化合物の抗腫瘍および抗血管新生作用はプラグ中において含まれることにより評価することができる。次いで、腫瘍重量、Hbレベルまたは(屠殺前に注射したデキストラン−フルオロフォア結合体の)蛍光レベルを測定する。Hbまたは蛍光を測定するために、最初に、組織ホモジナイザーで、プラグを均一化する。
【0166】
(皮下腫瘍増殖の異種移植モデル)
(ヒト卵巣癌)
A2780ヒト卵巣癌株を、未処置の患者由来の腫瘍組織から構築した。A2780細胞を、2mMのグルタミン、0.01mg/mLのウシインスリン、および10%のFMSを補足したRPMI 1640培地中の単層として維持する(Hamilton,TCら、Sem.Oncol.1984;11:285−293;Behrens,BCら、Cancer Res.1987;47:414−418)。200万個のA2780を、ヌードBalb/c雌性マウスの右側においてインキュベートする。A2780腫瘍を、処置を行う前に50〜200mm3の範囲にする。IgG制御Abおよび抗D2D3 uPAR mAbを、1週間に2回(月曜日および金曜日)、10mg/kgにて腹腔内経路によって投与する。シスプラチン処置群を1000mm3にし;動物に1週間に1度、6mg/kgを与えた。腫瘍体積を1週間に2回測定した。屠殺時に、血漿を得、各動物から腫瘍を切除する。腫瘍の半分を、生化学的評価のために簡単に凍らせ、残りを、組織学的評価のために亜鉛固定液に入れる。
【0167】
(ヒト肺癌)
A549、ヒト肺癌(ATCCカタログ番号CCL−185)株を、58齢のCaucasian雌由来の肺癌組織の移植片培養によって構築した(Giard,DJら、J.Natl.Cancer Inst.51:1417−23(1973))。A549細胞を、2mMのL−グルタミン、0.15%のNaHCO3、および10%のFBSを補足したHam’s F12K培地中に維持する。
【0168】
約106個のA549癌細胞を、C.B−17/Sys(scid/scid)重症複合型免疫不全(SCID)雌性マウスの右側にインキュベートする。好ましくは、処置は、腫瘍インキュベーションの後の日に開始される。IgG制御Ab(およびPBS制御)および抗−D2D3 uPAR mAb ATN−658を、月曜日と金曜日の1週間に2回、腹腔内に10mg/kg投与する。最初に、腫瘍体積を1週間に1回測定する。任意の処置群の体積が、300mm3を超えた場合、測定を1週間に2回得る。
【0169】
屠殺時に、血漿を得、各動物から腫瘍を切除する。腫瘍の半分を生化学的評価のために簡単に凍らせ、残りを組織学的評価のために亜鉛固定液に入れる。
【0170】
(転移の異種移植モデル)
Abおよび/または結合体は、Crowleyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1993,90 5021〜5025のモデルのような実験的な転移モデルを使用して、後期転移の阻害について試験された。後期転移は、腫瘍細胞が接着して血管外遊出し、局所的に侵襲し、播種し、増殖し、そして新脈管形成を誘導する工程を包含する。レポーター遺伝子、好ましくは緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子、しかし代替的として酵素クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子をコードする遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子をコードする遺伝子、またはLacZをコードする遺伝子をトランスフェクトしたヒト前立腺癌細胞(PC−3)は、ヌードマウスに接種される。このアプローチは、これらのマーカーのいずれかの利用(GFPの蛍光検出、または種々の酵素の組織化学的比色分析)を可能にし、これらの細胞の運命を追跡する。細胞は好ましくは静脈注射されて、約14日後に特に肺において転移が確認されるが、領域リンパ節、大腿骨および脳においても確認される。このことは、ヒト前立腺癌における天然で発生する転移の臓器向性を模倣している。例えば、GFP−発現PC−3細胞(マウスあたり106細胞)がヌードマウス(nu/nu)の尾部静脈中に静脈注射される。動物は、試験化合物で処置される。腹腔内に(IP)1日4回(q.d.)投与される、1日あたり動物あたり100μgの試験化合物により処置される。単独の転移細胞または病巣は、蛍光顕微鏡または光学顕微鏡の組織化学によって、あるいは検出可能な標識の組織的かつ定量的な比色分析アッセイを積み重ねること(grinding)によって可視化されそして定量され得る。
【0171】
(薬学的組成物および治療組成物、ならびにそれらの投与)
本発明の薬学的組成物において使用され得る化合物、およびそれら化合物の薬学的に受容可能な塩は、上記のような全てのポリペプチド分子、好ましくは抗体を含む。塩基性基を含む本発明の化合物の薬学的に受容可能な酸付加塩は、当該分野で公知の方法によって、強力なまたは中程度に強力な、無毒性の有機酸または無機酸と適合する場合に形成される。本発明に包含される酸付加塩の例示は、マレイン酸塩、フマル酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、および硝酸塩である。
【0172】
酸性基を含む本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩基付加塩は、有機塩基または無機塩基から公知の方法によって調製され、そしてこのような塩としては、例えば、無毒性のアルカリ金属塩基およびアルカリ土類塩基(例えば、カルシウム、ナトリウム、カリウムおよび水酸化アンモニウム)が挙げられ;そして無毒性の有機塩基(例えば、トリメチルアミン、ブチルアミン、ピペラジンおよびトリ(ヒドロキシメチル)メチルアミン)が挙げられる。
【0173】
上記に定めたように、本発明の化合物はEC増殖、運動性または侵襲性および新脈管形成を阻害する能力を有し、これらの能力は癌、特に転移性癌の処置において活用される。本発明の組成物は、それ自体で活性であり得るか、またはインビボで活性形態へと変換される「プロドラッグ」として作用し得る。
【0174】
(治療的に標識された組成物)
好ましい実施形態において、本明細書中に記載されるmAbは、「治療的に結合体化される」かまたは「治療的に標識され」(これらの用語は相互に交換されることが意図される)、そしてその化合物が進行して(home)結合する部位(例えば、腫瘍の転移部位、または感染/炎症の病巣、再狭窄または線維症)へと治療剤を送達するために使用される。用語「治療的に結合体化される」は、改変されたmAbが、腫瘍の侵襲、新脈管形成、炎症または他の病理の根底の原因または「要素」のいずれかに向けられる別の治療剤と結合体化されることを意味する。治療標識されたポリペプチドは、適切な治療「標識」を有し、これはまた本明細書中で「治療部分」と称される。治療部分は原子、分子、化合物または任意の化学成分がペプチドに付加されて、標的の疾患または状態を処置するのに活性にさせ、その主要な1つは所望されない新脈管形成と関連する。この治療部分は、直接的または間接的にmAbに結合され得る。治療的に標識されたmAbは、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む薬学的組成物として投与され、そして好ましくはこれは注射に適した形態である。
【0175】
有用な治療的放射性同位体の例としては、以下が挙げられる:47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbおよび217Bi。これらの原子は、ペプチドと直接的に結合体化され得るか、キレートの一部として間接的に結合体化され得るか、またはヨウ素の場合にはヨウ素化Bolton−Hunter基の一部として間接的に結合体化され得る。この放射性ヨウ素は、この基がペプチド化合物に結合される前または後のいずれかに導入され得る。
【0176】
放射性核種結合体の好ましい用量は、標的部位に送達される特異的放射活性の関数であり、これは腫瘍型、腫瘍の位置および血管新生、ペプチドキャリアの動力学および体内分布、その核種による放射性排出物のエネルギー、などにより変動する。放射線療法の当業者は、過度の実験なく所望の治療利益を達成する特定の核種の用量と組み合わせたペプチドの用量を容易に調節し得る。
【0177】
本明細書に包含される別の治療アプローチとしては、ボロン中性子捕獲治療法の使用であり、ここでボロン化ペプチドは所望の標的部位(例えば、腫瘍、最も好ましくは、頭蓋内腫瘍)に送達される(Barth,RF,Cancer Invest.74.534〜550(1996);Mishima,Y(編),Cancer Neutron Capture Therapy,New York:Plenum Publishing Corp.,1996;Soloway,AHら(編),J.Neuro−Oncol.33:1〜188(1997))。安定な同位体10Bは、低エネルギー(0.025ev未満)の熱中性子を照射され、得られた核捕獲物はα−粒子および7Li核を生じ、これらは線形な高いエネルギー転移およびを有し、そしてそれぞれ約9μmおよび約5μmの路長を有する。この方法は腫瘍における10Bの蓄積に基づき、血液、上皮細胞および正常組織(例えば、脳)においてはより低いレベルである。このような送達は、上皮増殖因子を使用して達成されている(Yang.Wら,Cancer Res 57:4333−4339(1997))。
【0178】
本発明の方法に従ってmAbに結合され得る他の治療剤は、薬物、プロドラッグ、プロドラッグを活性化させるための酵素、因子を感光性するための酵素、核酸治療剤、アンチセンスベクター、ウイルスベクター、レクチンおよび他の毒素である。
【0179】
レクチンは、炭化水素に結合する、一般に植物に由来するタ質ンパクである。他の活性の中でも、いくつかのレクチンは毒性である。既知の大部分の細胞毒性物質のうちのいくつかは、細菌起源および植物起源のタンパク質毒素である(Frankel,AEら、Ann Rev Med37:125−142 (1986))。これらの分子は細胞表面に結合し、細胞のタンパク質合成を阻害する。最も一般的に使用される植物毒素はリシンおよびアブリンである;最も一般的に使用される細菌毒素は、ジフテリア毒素およびPseudomonas細胞外毒素Aである。リシンおよびアブリンの場合、これらの結合機能および毒性機能は、2つの別個のタンパク質サブユニットであるA鎖およびB鎖に含まれる。このリシンB鎖は、細胞表面の炭水化物に結合し、A鎖の細胞内への取り込みを促進する。一旦細胞内に入ると、このリシンA鎖は、真核細胞のリボソーム60Sサブユニットを不活性化することによってタンパク質合成を阻害する(Endo,Y.ら、J.Biol.Chem.262:5908〜5912(1987))。単鎖のリボソーム阻害性タンパク質である他の植物由来の毒素としては、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コムギ胚タンパク質、ゲロニン、ジアンチン(dianthin)、モモカリン(momorcharin)、トリコサンチンなどが挙げられる(Strip,F.ら,FEBS Lett.795:1〜8(1986))。ジフテリア毒素およびPseudomonas細胞外毒素Aはまた、単鎖タンパク質であり、これらの結合機能および毒性機能は、同じタンパク質の別個のドメインに存在する。Pseudomonas細胞外毒素Aは、ジフテリア毒素と同じ触媒活性を有する。リシンは、Abのような分子を標的化して毒性効果の部位特異的な送達を可能にするために、その毒性のα−鎖に結合することによって治療的に使用されている。細菌毒素はまた、抗腫瘍結合体として使用されている。本明細書中で意図されるように、毒性ペプチド鎖およびまたは毒性ドメインは、本発明の化合物と結合体化され、そして部位特異的様式でその毒性活性が所望される標的部位(例えば、転移性の病巣)へと送達される。トキシンとタンパク質(例えば、Ab)または他のリガンドとの結合体は、当該分野で公知である(Olsnes,Sら,Immunol Today 70:291〜295(1989);Vitetta,ESら, Ann.Rev Immunol 3:197〜212(1985))。
【0180】
DNA合成、RNA合成およびタンパク合成が挙げられる、重要な細胞内プロセスを阻害する細胞傷害性薬物は、Abと結合体化され、続いてインビボ治療に使用された。このような薬物(ダウノルビシン、ドキソルビシン、メトトレキセート、およびミトマイシンCが挙げられるがこれらに限定されない)はまた、本発明の化合物と結合され、この形態で治療に使用した。
【0181】
本発明の化合物およびその薬学的に受容可能な塩は、通常の投薬形態(例えば、カプセル、浸透性ウェハ、錠剤または注射可能調製物)に組み込まれ得る。固体または液体の薬学的に受容可能なキャリアが使用され得る。
【0182】
固体キャリアとしては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム二水和物、テラコッタ、ショ糖、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。液体キャリアとしては、シロップ、落花生油、オリーブ油、生理食塩水、水、ブドウ糖、グリセロールなどが挙げられる。同様に、キャリアまたは希釈剤としては、任意の徐放性材料(例えば、モノステアリン酸グリセリン、またはジステアリン酸グリセリン)を、単独でかまたはワックスと共に含み得る。液体キャリアが使用される場合、その調製物は、シロップ、エリキシル、エマルジョン、軟ゼラチンカプセル、滅菌の注射可能な液体(例えば、溶液)(例えば、アンプル)、または水性もしくは非水性の液体懸濁物の形態であり得る。このような薬学的組成物の要約は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton Pennsylvania(Gennaro 第18版 1990)に見出され得る。
【0183】
薬学的調製物は、薬学科学の通常の技術に従って作製され、錠剤形態に必要とされる場合、混合、顆粒化および圧縮の工程のような工程を包含し、また経口投与、非経口投与、局所投与、経皮投与、膣内投与、陰茎内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、頭蓋内投与、眼内投与、耳内投与、および直腸投与のための所望の産物を得るため、適切なように、成分を混合、充填、および溶解する工程を包含する。薬学的組成物はまた、少量の無毒性の助剤物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤など)を含み得る。
【0184】
本発明は、多くの動物の属および種のいずれの診断または処置にも使用され得、そしてヒト医薬または獣医薬の実施において等しく利用可能である。従って、本薬学的組成物を使用して、トリおよびより好ましくは哺乳動物、ならびにヒトが挙げられる、家畜動物および商業動物を処置し得る。
【0185】
用語「全身投与」とは、被験体の循環系中への化合物の導入を生じる様式、またはそれ以外に生体全体への拡散を可能にする様式(例えば、静脈内(i.v.)注射または静脈内注入)での、本明細書中に記載されるペプチドのような組成物または因子の投与を称する。「局所的(regional)」投与は、特異的かつ幾分より限定された解剖学上の空間内(例えば、腹腔内、包膜内、硬膜下)または特異的な器官に対する投与をいう。例としては、膣内、陰茎内、鼻腔内、気管支内(または肺点滴注入)、頭蓋内、耳内、または眼内が挙げられる。用語「局所(local)投与」とは、限定された(または境界のある)解剖学上の空間(例えば、腫瘍塊内への腫瘍内注射、皮下(s.c.)注射、筋肉内(i.m.)注射)をいう。当業者は、局所(local)投与または投与(regional)投与は、しばしば、循環系内への組成物の侵入を生じる。すなわち、皮下または筋肉内はまた、全身のための経路である。注射可能または注入可能な調製物は、溶液または懸濁物として、注射または注入前に液体中での溶液または懸濁物に適切な固体形態、あるいはエマルジョンとしてのいずれかの従来の形態で調製され得る。好ましい投与経路は、全身性(例えば、静脈内)であるが、薬学的組成物は、局所的または経皮(例えば、軟膏、クリームまたはゲル);経口;直腸(例えば、坐薬として)で投与され得る。
【0186】
局所(topical)投与のため、化合物は局所適用されるビヒクル中に、例えば、塗剤または軟膏として、局所的(topically)または経皮的に投与され得る。活性成分のためのキャリアは、噴霧可能形態または非噴霧可能形態のいずれかであり得る。非噴霧可能形態は、局所(topical)適用に固有のキャリアを含み、そして好ましくは水の動粘度より大きい動粘度を有する、半固体形態または固体形態であり得る。適切な処方物としては、溶液、懸濁物、エマルジョン、クリーム、軟膏、粉末、リニメント剤、塗剤などが挙げられるが、これらに限定されない。所望の場合、これらは、滅菌され得るか、または助剤(例えば、保存剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または浸透圧などに影響するための塩)と混合され得る。非噴霧可能な局所調製物のための好ましいビヒクルとしては、軟膏の基剤(例えば、ポリエチレングリコール−1000(PEG−1000);HEBクリームのような慣習的なクリーム;ゲル;ならびにワセリンなど)が挙げられる。
【0187】
また、化合物が、好ましくは固体または液体の不活性なキャリア材料と組み合わせて、圧搾(squeeze)ボトルに包装されるか、または加圧された揮発性の、通常は気体の推進剤と混合された、噴霧可能なエアロゾル調製物は、局所(topic)の投与および肺点滴注入に適切である。このエアロゾル調製物は、本発明の化合物に加えて、溶媒、緩衝剤、界面活性剤、香料、および/または酸化防止剤を含み得る。
【0188】
このましい局所(topical)適用のため、特にヒトのため、影響を受ける領域(例えば、皮膚表面、粘膜性の膜、目など)に対する有効量の化合物の投与が好ましい。この量は一般的に、処置される領域、症状の重篤度、および使用される局所用ビヒクルの性質に依存して、投与あたり約0.001mg〜約1gの範囲である。
【0189】
本発明のポリペプチド組成物のための他の薬学的に受容可能なキャリアは、リポソームであり、これは活性なタンパク質が、脂質層に接した水性中心層からなる小体中に分散されるかまたは種々に存在して含まれる、薬学的組成物である。活性ポリペプチドは、好ましくは、内部または外部の水性層または脂質層に存在するか、あるいは任意の事象の際、リポソーム性懸濁物として一般に公知の非均一系中に存在する。疎水層、すなわち脂質層は、一般に、リン脂質(例えば、レクチンおよびスフィンゴミエリン)、ステロイド(例えば、コレステロール)、イオン性を増減させる界面活性物質(例えば、ジセチルホスフェート、ステアリルアミンまたはホスファチジン酸)、および/または疎水性性質の他の材料を含むが、これらに限らない。当業者は、本リポソーム性処方物の他の適切な実施形態を理解する。
【0190】
腫瘍または癌を処置するための治療組成物は、ペプチドに加え、1つ以上のさらなる抗腫瘍剤、例えば、細胞分裂インヒビター(例えば、ビンブラスチン);アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド);葉酸インヒビター(例えば、メトトレキセート、ピリトレキシム(piritrexim)またはトリメトレキサート);抗代謝物(例えば、5−フルオロウラシルおよびシステインアラビノシド);間入性(intercalating)抗生物質(例えば、アドリアマイシンおよびブレオマイシン);酵素または酵素インヒビター(例えば、アスパラギナーゼ、エトポシドのようなトポイソメラーゼインヒビター);または生物学的応答変更因子(例えば、インターフェロンまたはインターロイキン)を含み得る。実際に、本明細書中に開示されるペプチドと組み合わせて任意の公知の抗癌剤を含む組成物は、本発明の範囲内である。薬学的組成物はまた、標的とする患者が危険性を有するさらなる症状を処置するための1つ以上の他の医薬、例えば、抗感染剤(抗細菌剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、抗ウイルス剤および抗球菌(coccidial)剤が挙げられる)を含み得る。
【0191】
投与される治療投薬量は、当業者によって知られるかまたは容易に確認可能であるような、治療上有効な量である。この用量はまた、レシピエントの年齢、健康および体重に依存し得、現在の処置の種類、存在する場合、処置の頻度に依存し得、そして所望される作用の性質(例えば、抗炎症作用または抗細菌作用)に依存し得る。
【0192】
(治療方法)
本発明の方法は、上皮細胞の増殖および遊走を阻害することによって、被験体における腫瘍の増殖および侵襲を阻害するため、または腫瘍により誘導される新脈管形成を抑制するために使用され得る。腫瘍の増殖もしくは侵襲または新脈管形成を阻害することによって、これらの方法は、腫瘍転移の阻害を生じる。脊椎動物被験体、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトは、腫瘍の増殖、侵襲または新脈管形成を阻害するのに有効な量の化合物を投与される。化合物またはその薬学的に受容可能な塩は、好ましくは、上記のような薬学的に受容可能な組成物の形態で投与される。
【0193】
タンパク質(Abを含む)、ペプチド、ペプチド多量体などの用量としては、好ましくは、有効量のペプチドを含む薬学的投薬量が挙げられる。投薬量単位形態は、単位用量として哺乳動物被験体に適する物理的に別個の単位を称する。各々の単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、必要とされる薬学的キャリアと共に含む。本発明の投薬量単位形態についての詳述は、以下によって示されるかまたは以下に直接的に依存する:(a)活性物質の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、および(b)個々の被験体の処置または感受性に対してこのような活性化合物を合成することについての、当該分野における固有の制限事項。
【0194】
有効量によって、疾患の任意の関連パラメータの測定可能な低減を生じ、そして原発性腫瘍もしくは転移性腫瘍の増殖、炎症反応性の許容される任意の指数、または疾患を有さない間隔もしくは生存の測定可能な長期化を含み得る、インビボでの安定状態の濃度を達成するのに有効な量を意味する。例えば、患者の20%において腫瘍を低減することは、効力があるとみなされる(Frei HI,E.,The Cancer Journal 3:127〜136(1997))。しかし、この量の効果は、本発明に従って効果的である用量のための最小限の要件であるとはみなされない。
【0195】
1実施形態において、有効用量は、好ましくは、本明細書中に記載されるインビボアッセイにおいて50%有効用量(ED50)の化合物よりも10倍高く、より好ましくは100倍高い。
【0196】
投与されるべき活性化合物量は、選択される正確なペプチドまたは誘導体、疾患または状態、投与経路、レシピエントの健康および体重、他の現在の処置の存在、存在する場合には処置の頻度、所望される効果の性質、例えば、腫瘍転移の阻害、ならびに熟練した実施者の判断に依存する。
【0197】
腫瘍を有する被験体、好ましくは哺乳動物、好ましくはヒトを処置するための好ましい用量は、体重1kgあたりの活性ポリペプチドベースの化合物の約100mgまでの量である。ペプチドまたはペプチド模倣物の代表的な単回の投薬量は、体重1kgあたり約1ng〜約100mgの間である。局所適用のため、化合物の約0.01%〜20%の濃度範囲(体重あたり)、好ましくは1%〜5%の濃度範囲の投薬量が提案される。約0.1mg〜約7mgの範囲の1日の総投薬量は、静脈内投与に好ましい。しかしながら、前述の範囲は示唆的である。なぜなら、個々の処置レジメンにおけるこの数の変動性は大きく、そしてこれらの好ましい値から考慮可能な可動域が期待されるからである。
【0198】
インビトロでの上皮細胞の増殖または遊走を阻害するためのペプチドの有効量または有効用量は、細胞あたり約1pg〜約5ngの範囲である。有効用量および最適用量は、インビトロで本明細書中に記載される方法を使用して決定され得る。
【0199】
本発明の化合物は、腫瘍細胞または上皮細胞の増殖、遊走、侵襲に対する阻害効果、もしくは新脈管形成に対する阻害効果、腫瘍転移に対する阻害効果、または炎症反応に対する阻害効果を生じることとして、特徴付けられる。これらの化合物は、腫瘍を有する哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、抗腫瘍効果を生じるのに特に有用であり、ここで新脈管形成の阻害は、腫瘍のサイズもしくは増殖速度の低減、または腫瘍の破壊を生じる。好ましくは、被験体はヒトである。
【0200】
上記の方法が有効である疾患または状態のより長い例としては、固形腫瘍、白血病またはリンパ腫の主要な増殖;腫瘍の侵襲、転移または腫瘍転移物の増殖;良性の過形成;アテローム性動脈硬化;心筋の新脈管形成;バルーン後の血管形成術の動脈再狭窄;動脈外傷後の新規内膜(neointima)形成;動脈移植物の再狭窄;冠状動静脈副枝の形成;深部静脈血栓症;虚血性四肢の新脈管形成;毛細血管拡張症;化膿性肉芽腫;角膜疾患;ルベオーシス;血管新生緑内障;糖尿病性網膜症および他の網膜症;水晶体後線維増殖症;糖尿病性新生血管形成;黄斑変性;子宮内膜症;関節炎;慢性炎症性状態と関連した線維症、外傷性脊髄損傷(虚血性、瘢痕性または線維性が挙げられる);肺線維症、化学療法誘導性線維症;瘢痕および線維症を伴う損傷の治癒;消化性潰瘍;骨折;または病原性細胞侵襲もしくは新脈管形成と関連した脈管形成、造血、排卵、月経、妊娠もしくは胎盤形成の障害。
【0201】
上記方法によって処置されるべき好ましい疾患または状態は、腫瘍増殖、侵襲または転移である。これには、脳腫瘍が挙げられる。このような脳損傷の例は、神経膠星状細胞腫、未分化神経膠星状細胞腫、グリア芽細胞腫、グリア芽細胞腫多型、極細胞(pilocytic)神経膠星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫、上衣下巨細胞神経膠星状細胞腫、線維性神経膠星状細胞腫、大円形細胞性星状細胞腫、原形質性星状細胞腫、希突起神経膠腫、退形成型乏突起膠腫、脳室上衣細胞腫、未分化脳室上衣細胞腫、粘液乳頭型脳室上衣腫、上衣下腫、混合性稀神経膠星状細胞腫(mixed oligoastrocytoma)および悪性稀神経膠星状細胞腫である。
【0202】
また、本方法を使用して、子宮内膜症のような子宮疾患、および増殖性糖尿病性網膜症、新脈管性加齢関連黄斑変性、早熟の網膜症、鎌状赤血球網膜症または網膜血管閉塞と関連するかまたはそれらの原因である病原性の眼性新生血管形成を処置する。
【0203】
新脈管形成インヒビターは、炎症性新脈管形成および外傷性脊髄損傷後のグリオーシスを予防し、これによって神経接合性の再構築を促進するのに役割を果たし得る(Wamil,AWら、Proc.Nat’l.Acad.Sci USA 95:13188〜13193(1998))。従って、本発明の組成物は、外傷性脊髄損傷後の可能な限り速やか、そしてその後7日〜約2週間投与され、神経接合性の再構築を立体的に妨げる新脈管形成およびグリオーシスを阻害する。この処置は、脊髄損傷部位にける損傷領域を低減し、そして神経機能の再生を促進し、これによって麻痺を防止する。本発明の化合物は、また、ウォーラー変性から軸索を保護すること、アミノ酪酸媒介性分極(外傷を受けたニューロンに生じる)を反転すること、および培養中の分離された中枢神経系の細胞および組織の神経接合性の回復を向上させることが期待される。
【0204】
(一般的な組換えDNAモデル)
分子生物学の一般的方法は、当該分野において詳細に記載されている(Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版(またはその以降の版)、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,1989;Ausubel,Fら、Current Protocols in Molecular Biology,第2巻,Wiley−Interscience,New York,(現在の版);Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);Glover,DM編、DNA Cloning:A Practical Approach,第1巻および第2巻,IRL Press,1985;Alberts B.ら、Molecular Biology of the Cell,第4版(またはそれ以降の版),Garland Publishing,Inc.,New York,NY(2002);Watson,JDら、Recombinant DNA,第2版(またはそれ以降の版),WH Freeman & Co.;第2版(1993);ならびにOld,RWら、Principles of Gene Manipulation:An Introduction to Genetic Engineering,第5版(またはそれ以降の版),Univ.of Calif.Press,Berkeley(1994)。
【0205】
他に示されない限り、特定の核酸配列は、その保存置換改変体(例えば、縮退コドンの置換体)および相補配列を包含することを意図される。用語「核酸」は、「ポリヌクレオチド」と同義語であり、そして遺伝子、DNA分子、mRNA分子、ならびにそれらの任意のフラグメント(例えば、オリゴヌクレオチド)そしてさらにその等価物(いかに十分に説明される)を含むことを意図される。核酸のサイズは、キロベース(kb)または塩基対(bp)のいずれかとして述べられる。これらは、アガロースゲル電気泳動またはポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)から、使用者によって決定される核酸配列から、または公開されている核酸配列からの見積もりである。タンパク質サイズは、PAGEから、配列決定から、そのコード核酸配列に基づく予想アミノ酸配列から、または公開されたアミノ酸配列から、見積もられる。
【0206】
特に、本発明のポリペプチドまたはその活性改変体に対応するアミノ酸配列をコードするDNA分子は、本明細書中に開示されるタンパク質配列から導かれるプライマーを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、米国特許第4,683,202号を参照のこと)によって、合成され得る。次いで、これらのcDNA配列は、真核細胞発現ベクターまたは原核細胞発現ベクター中に組込まれ得、そして得られたベクターを使用して、適切な宿主細胞(例えば、COS細胞またはCHO細胞)による、その融合ペプチドまたはそのフラグメントもしくは誘導体の合成を指揮し得る。
【0207】
用語「核酸」は本明細書中で使用される場合、そのようなフラグメントまたは等価物を含むことを意図される。
【0208】
本ポリペプチドを発現するためトランスフォームまたはトランスフェクトされる原核細胞または真核細胞の宿主細胞は、本発明の範囲内である。例えば、ポリペプチドは、E.coliのような細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス)、酵母、または哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵母細胞(CHO)またはヒト細胞)(これらはトランスフェクトされた細胞のヒトの治療への使用に好ましい)において発現され得る。他の適切な宿主は、当業者に公知である。真核細胞における発現は、組換えペプチドの部分的もしくは完全なグリコシレーション、および/または適切な分子内鎖ジスルフィド結合または分子間鎖ジスルフィド結合の形成を導く。酵母S.cerevisiaeにおける発現用ベクターの例としては、pYepSecl(Baldariら、1987,EMBO J.6:229−234)、pMFa(Kurjanら、1982 Cell 30:933−943)、pJRY88(Schultzら、1987,Gene 54:113−123)、およびpYES2 Invitrogen Corporation,San Diego,Calif.)が挙げられる。培養した昆虫細胞(SF9細胞)におけるタンパク質発現に利用可能なバキュロウイルスベクターとしては、pAcシリーズ(Smithら、1983,MoI.Cell Biol.3:2156−2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら、(1989)Virology 170:31−39)が挙げられる。一般的に、COS細胞(Gluzman 1981 Cell 23:175−182)が、哺乳動物細胞における一過性の増幅/発現のためのpCDM8(Aruffoら、前出)のようなベクターと組み合わせて使用され、一方、CHO(dhfrネガティブCHO)細胞は、安定した増幅/発現のためのpMT2PC(Kaufmanら、1987,EMBOJ.6:187−195)のようなベクターと組み合わせて使用される。NS0ミエローマ細胞株(グルタミン合成酵素発現系)は、Celltech Ltdより使用可能である。
【0209】
所望のコード配列およびコントロール配列を含む適切なベクターの構築は、当該分野で周知の標準的なライゲーション技術および制限技術を使用する。単離されたプラスミド、DNA配列または合成オリゴヌクレオチドは、所望の形態に切断され、加工(talor)され、そして再ライゲーションされる。ベクターを形成するDNA配列は、多くの供給源より利用可能である。骨格ベクターおよびコントロール系は、一般的に、構築において大部分の配列について使用される、利用可能な「宿主」ベクターに見られる。関係するコード配列のため、最初の構築物は、cDNAまたはゲノムDNAライブラリー由来の適切な配列を回復するものであり得、通常はそのようなものである。しかし、一旦配列が開示されると、個々のヌクレオチド誘導体から開始する遺伝子配列全体をインビトロで合成することが可能である。500bp〜1000bpの範囲の長さの遺伝子に関する遺伝子配列全体は、個々の重複する相補的オリゴヌクレオチドを合成し、そしてデオキシリボヌクレオチド三リン酸の存在下でDNAポリメラーゼを使用して非重複部分の1本鎖を埋めることによって調製され得る。このアプローチは、公知配列のいくつかの遺伝子の構築において首尾よく使用されている。例えば、Edge,Nature 1981,292:756;Nambairら,Science 1984,223:1299;およびJay,J.Biol.Chem.1984,259:6311を参照のこと。合成オリゴヌクレオチドは、上記の参考文献、またはBeaucageら,Tetrahedron Lett.1981,22:1859;およびMatteucciら,J.Am.Chem Soc.1981,103:3185により記載される方法によって調製され得る。
【0210】
所望のベクターの成分は、標準的な制限手順およびライゲーション手順を使用して切り出しおよびライゲーションされ得る。部位特異的DNA切断は、適切な制限酵素を用いて、当該分野で一般的に理解されている条件およびこれら市販の制限酵素の製造業者により特定されるその条件の詳細の下で処理することによって実施される。例えば、New England Biolabsの製品カタログを参照のこと。所望の場合、切断フラグメントのサイズ分離は、標準的なポリアクリルアミドゲル電気泳動手順またはアガロースゲル電気泳動手順によって実施され得る(例えば、Meth Enzymol.(1980)65:499−560)。
【0211】
コード配列に突然変異を導入して変異体を生成するため(これらが組み換え産生されるべき場合)、多くの方法が使用され得る。これらの突然変異としては、単純な欠失または挿入、バーのクラスターの系統的な欠失、挿入または置換、あるいは単塩基置換が挙げられる。部位特異的突然変異誘発によるDNA配列の改変は周知の技術であり、そのためのプロトコルおよび試薬は市販されている(Zollerら,Nucleic Acids Res.1982,10:6487−6500;Adelmanら,DNA 1983,2:183−193)。単離されたDNAは、制限方法によって分析され、そして/またはジデオキシヌクレオチド方法によって配列決定される(Sanger,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1977,74:5463;Messingら,Nucleic Acids Res.1981,9:3091またはMaxamら,Meth.Enzymol.、前出)。
【0212】
ベクターDNAは、リン酸カルシウム共沈殿物もしくは塩化カルシウム共沈殿物、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションのような慣用的な手順を介して哺乳動物細胞中に導入され得る。宿主細胞を形質転換するのに適切な方法は、Sambrookら、前出または他の標準的なテキストにおいて見出され得る。融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性の切断部位は、レポーター群と標的タンパク質との連結において導入されて、その融合タンパク質の精製に続く、レポーター群からのその標的タンパク質の分離を可能にする。このような切断配列および認識配列のためのタンパク質分解酵素としては、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが挙げられる。
【0213】
ここで、本発明を一般に記載したが、類似物は以下の実施例の参照を介してより容易に理解される。これら実施例は、例示のための提供であって、特記しない限り、本発明の限定ではないことを意図される。
【実施例】
【0214】
(実施例I)
(材料および方法)
(タンパク質発現細胞株)
Drosophila発現系(DESTM;Invitrogen,Inc.)は、Drosophila melanogaster由来のSchneider 2(S2)細胞株および異種タンパク質の発現のためのプラスミドベクターを利用する。S2細胞における発現のためのこれらプラスミドベクターは、非常に用途が広く、メタロチオネイン(MT)プロモーターにより駆動されるタンパク質の誘導発現を可能にする。類似にプラスミドはまた、タンパク質が細胞から周囲の倍地中に分泌され、タンパク質精製を大いに単純化することを可能にする。複数コピーのベクターは、S2細胞のゲノムDNA中に安定に導入されて、タンパク質発現レベルを増加し得る。S2細胞において発現されたタンパク質は、最小限にグリコシル化され、このことはuPARのタンパク質成分に対するAbの生成に重要である。精製後の代表的なタンパク質収量は、約95%の純度で25mg/L〜50mg/Lである(図1)。以下のタンパク質を発現する細胞株を作製した:suPAR、Dl、D2D3、scuPA、ATF1−143、ATFl−135、Kringle47−143およびKringle47−135。さらに、N−連結グリコシル化部位が破壊されたsuPARについてのクローンを作製した。
【0215】
(試薬)
Amersham CorpからNa125Iとして125Iを購入した(1μgのヨウ素あたり480−630MBq[13−17mCi])。
【0216】
(腫瘍細胞株)
以下の腫瘍細胞株を使用した:A549、HeLa、およびA2780。A2780ヒト卵巣癌株を、未処置の患者由来の腫瘍組織から確立した。A2780細胞を、2mM グルタミン、0.01mg/mL ウシインスリンおよび10% FBS(前出)補充したRPMI1640培地中で単層として維持した。A549(上記した、ヒト肺癌、ATCCカタログ番号CCL−185)を、2mM L−グルタミン、0.15% NaHCO3および10% FBSを補充したHam’s F12K培地中で維持した。
【0217】
A2780細胞(2×l06)を、雌性のBalb/c マウスの右横腹に接種した。処置開始前に、腫瘍を50〜200mm3の範囲に段階付けた。IgGコントロールAbおよび抗D2D3 uPAR mAbを、月曜日と金曜日の週2回、10mg/kgにて腹腔内投与した。シスプラチン処置群は、1000mm3まで段階付けた;動物に6mg/kgを週1回投与した。
【0218】
A549癌細胞(106)を雌性C.B−17/Sys(scid/scid)マウスの右横腹に接種した(scid:重篤な併発性の免疫不全)。腫瘍接種後に処置を開始した。IgGコントロールAb(およびPBSコントロール)および抗D2D3 uPAR mAb ATN−658を、月曜日と金曜日の週2回、10mg/kgにて腹腔内投与した。初期に腫瘍体積を週に1回測定した。いずれかの処置群においてその体積が300mm3を超える場合に、測定を週2回行った。
【0219】
屠殺の時、各動物から血漿を得、そして腫瘍を切除した。腫瘍の半分を生化学的アッセイのために瞬間凍結し、その残りを組織化学的評価のために亜鉛固定液に入れた。
【0220】
(実施例II)
(抗D2D3mAb)
KLHと結合体化した組み換えsuPARのD2D3ドメインを用いたBalb/cマウスの免疫は、強力な免疫応答を生じた。続く融合タンパク質実験は、組み換えタンパク質を使用してウエスタンブロッティングおよびELISAアッセイによって測定した場合、uPARのD2D3ドメインとの特異的な交差反応性を有する親クローンを生じた。これらの親クローンを限界希釈に供して、D2D3特異的なmAbのパネルを得た。これらAbのうちの4つの特性を表3に要約する。アイソタイプ決定により、同定された全てのクローンをIgG1,κと同定した。uPARに対する特異性を、ウエスタンブロッティングによって確認した。Abの親和性を直接的な結合アッセイを使用して決定した。クローンの大部分は、1mM〜5nMの親和性を有した。
【0221】
【表3】
これらの抗体のうちの2つのATN−615およびATN−658を使用したウエスタンブロット実験の結果を図3に示す。両方のmAbはsuPARを特異的に認識し、そして特にuPARのD2D3ドメインを認識した。
【0222】
抗D2D3抗体の機能活性を、移動度アッセイにおいて試験した。以前の実験は、uPAR発現CHO細胞が、改変したBoydenチャンバーアッセイにおいてuPAの方へと遊走すること(図4)およびこの遊走がuPAのGFDに依存すること(示さず)を実証した。図4に示されるように、細胞の遊走は、D2D3に特異的なmAbおよびuPARに対するウサギポリクローナルAbにより阻害される。興味深いことに、細胞遊走はまた、抗α5インテグリンAbにより阻害されるが、抗α6インテグリンAbによっては阻害されない。これらを併せると、これらのデータはインテグリンα5β1およびuPARがuPA誘発性遊走に重要であることを示す。
【0223】
診断画像法または治療剤の標的化のために種々の抗D2D3 Abの利用は、それらが細胞表面上のuPARに高親和性で結合する能力に依存する。図5に示されるように、ヨウ素化Ab ATN−658は、約1.5nMのKDでHeLa細胞に結合する。これは、直接的結合実験において決定したこのAbについてのKDと一貫しており(表3)、このことは結合が標識化プロセスによって影響を受けないことを示す。
【0224】
uPAは、腫瘍細胞または上皮細胞の表面上のuPARレセプターにインビボで結合され得る。従って、uPAの存在下でuPARに結合するAbは、これによって、診断剤および治療剤としてさらなる機能を有する。mAb ATN−658は、scuPAがHeLa細胞表面上のuPARに結合することを阻害しせず(図6)、そしてscuPAの存在下でHeLa細胞に結合し得る。従って、ATN−658は細胞表面上の占有されたレセプターおよび非占有のレセプターの両方を標的化し得る。
【0225】
ATN−658およびATN−615の3つのCDRを含むVL定常鎖およびVH定常鎖のアミノ酸配列は、標準的な方法により決定され、そして上記されており、従ってここでは繰り返さないが、これらは本例示的開示に包含されるようにみなされるべきである。
【0226】
(実施例III)
(uPAのuPARに対する結合)
uPAのuPARに対する結合を、125I標識化uPAおよびHeLa細胞を使用して測定した。HeLa細胞は大量のuPARを発現するが、uPAは発現しない。簡潔に述べると、100μgのscuPAを、Iodo−GenTMヨウ素化試薬(Pierce Biotechnology Inc)を使用して、100μCiの[125I]NaIにより標識した。サイズ排除カラムを使用して取り込まれなかった標識化NaIを標識化タンパク質から除去し、そして標識化タンパク質を、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含むTris緩衝化生理食塩水中に溶出した。HeLa細胞を、0.1% BSAを含むPBS中に希釈した漸増濃度の[125I]−scuPAと共に2時間4℃でインキュベートした。細胞をPBS/0.1% BSAを用いて徹底的に洗浄し、細胞の単層を1M NaOHにより溶解し、そして結合した総数を測定した。細胞を、大過剰の未標識scuPAの存在下で[125I]−scuPAと共にインキュベートすることによって、特異的な結合を決定した。また、uPAおよびuPARの両方を発現するMDA−MB231細胞との結合を実施した。scuPAの結合を決定するため、最初にMDA−MB231細胞の表面より内在性uPAを、0.1Mグリシン/100mM NaClを含む緩衝液(pH3)を用いて4℃で5分間洗浄することによって除去した。また、このプロトコルを使用して、[125I]−ATFのHeLa細胞への結合を測定した。Abが[125I]−scuPAまたは[125I]−ATFのいずれかがHeLa細胞に結合することを阻害する能力を、[125I]標識化タンパク質の添加前に、漸増量の未標識Abと共に細胞を4℃で15分間インキュベートすることによって決定した。
【0227】
(実施例IV)
(細胞遊走の阻害)
uPAまたはuPARに特異的なAbによる細胞遊走の阻害を、以前に記載されたように改変したBoydenチャンバーアッセイ(Taruiら、(2003)J.Biol.Chem,278 29863−29872)を使用して試験した。簡潔に述べると、Boydenチャンバフィルタの下側を、下側チャンバに添加した500nM uPAおよび無血清遊走緩衝液(10mM Hepesおよび0.5% ウシ血清アルブミンを含むダルベッコ改変イーグル培地)によってコーティングした。uPAR発現CHO細胞を無血清遊走緩衝液に再懸濁し(8×105細胞/ml)、そして100μlを上側チャンバに添加した。抗uPA Abまたは抗uPAR Abが細胞遊走を阻害する能力を試験するため、細胞を上側チャンバに添加する前に、10μg/ml Abと共に15分間予めインキュベートした。次いで、これらの細胞を5% CO2中で37°Cで20時間インキュベートした。細胞が下側チャンバに遊走することを、0.5% クリスタルバイオレットを用いた染色および光学顕微鏡によって検出した。
【0228】
(実施例V)
(ビオチン化ATN−658を使用した、ATN−658と同じエピトープを認識する抗体についてのアッセイ)
抗D2D3 Ab、ATN−658をEZ−linkTM スルホ−NHS−LC−ビオチン(Pierce Biotechnology Inc)を使用して、製造業者の指示に従ってビオチン化した。代表的に、20倍モル濃度過剰のビオチン標識化試薬を使用して、ATN−658を標識し、そして取り込まれなかったビオチンをサイズ除去カラムを使用して標識化Abから除去した。標識化AbがuPARに対する親和性を保持していることを確認するため、ビオチン−ATN658をscuPARへの結合についてELISAアッセイにおいて試験した。結合したビオチン−ATN−658をHRP結合体化したストレプトアビジンを使用して検出した。ビオチン標識化は、ATN−658のsuPARに対する親和性を低減しなかった(図9)。ATN−658と同じエピトープを認識するAbを同定するため、競合アッセイを確立した。簡潔に述べると、96ウェルのEIA/RIAタンパク質高結合プレートを、ウェルあたり100ngのsuPARにより一晩4℃でコーティングした。1%カゼインとの非特異的結合によりブロッキングした後、プレートをPBSを用いて洗浄し、試験されるべき抗体を、0.2nM ビオチン−ATN−658を含むPBS/0.1%カゼイン中に希釈し、適切なウェルに添加した。プレートをさらに室温で1時間インキュベートし、PBS/0.05% Tween−20を用いて徹底的に洗浄し、そして結合したビオチン−ATN−658をHRP結合体化ストレプトアビジンおよび適切な基質を使用して決定した(図10A/10B)。
【0229】
(実施例VI)
(インビボにおけるmAbの活性)
2つのモデル:A549非小細胞ヒト肺癌モデルおよびA2780卵巣癌モデルにおいて、実施例Iに記載したプロトコルを使用して、インビボにおける腫瘍増殖を阻害する能力について抗体を試験した。腫瘍接種後の日に、処置を開始した。IgGコントロールAb(およびPBSコントロール)および抗D2D3 UPAR mAb ATN−658を腹腔内経路で10mg/kgにて月曜日と金曜日の週2回投与した。
【0230】
ATN−658は、これらのモデルの両方において増殖を有意に阻害した(図7および図8)
上に記載した全ての参考文献は、具体的に援用されるにせよ、そうでないにせよ、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0231】
ここで本明細書を完全に記載したが、類似物が、等価なパラメータ、濃度および条件の広い範囲の内で、本発明の精神および範囲から逸脱することなくかつ過度な実験なしに実施され得ることが当業者に理解される。
【0232】
上記に開示されるアミノ酸配列と本明細書に添付されるかまたは後日提出される電子上または紙面上の配列リストにおけるアミノ酸配列との間に何らかの差異がある場合、上記の配列が優先する。
【図面の簡単な説明】
【0233】
【図1】S2細胞において発現されるATFおよびsuPARフラグメントのSDS−PAGE分析。AFT(aa1〜143)およびsuPAR(aa1〜279)を、Drosophila Schneider S2細胞においてクローニングし、発現させた。細胞を、7日間、銅(0.5nM)を用いて組み換えタンパク質を発現させるために誘導した。細胞上清を収集し、遠心分離および濾過によって清澄化した。プロテアーゼインヒビターの添加後、タンパク質を、DEAE−セファロース(pH7.5)(ATF)またはSP−セファロース(pH8.8)(suPAR)のいずれかにおいて、イオン交換クロマトグラフィーによって精製した。ATFおよびsuPARを、RP−HPLCを使用してさらに精製した。精製された組み換えsuPARを、キモトリプシンで切断し、可溶性ドメイン2/ドメイン3(D2D3)フラグメントを生成した。免疫化の前に、D2D3タンパク質を、キャリアタンパク質であるキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に結合体化した。
【図2】ATN−658は、suPARの非グリコシル化変異体に結合し、このことは、ATN−658が、他のほとんどの抗uPAR mAbのように、ペプチド(炭水化物ではない)エピトープに向けられることを示す。
【図3】2つの抗D2D3 mAb(ATN−615およびATN−658)を用いたウエスタンブロットである。組み換えタンパク質をSDS−PAGEによって分離させ、PVDFメンブレンにトランスファーした。メンブレンを、精製された抗体(5μg/ml)で探索した。ATN−615およびATN−658は、suPARおよびD2D3を特異的に認識する。
【図4】抗D2D3抗体は、uPA誘導性遊走を阻害する。uPA(500nM)に対するuPAR発現CHO細胞の遊走を、改変Boydenチャンバーアッセイを使用して決定した。抗インテグリンα5、抗uPARおよび抗D2D3抗体は遊走を阻害し、このことは、インテグリンα5β1およびuPARが、uPA誘導性遊走のために重要であることを示唆する。
【図5】125I標識したATN−658は、高親和性でHeLa細胞に結合する。24ウェルプレートにおけるHeLa細胞のコンフルエントな単層を、室温にて1時間、増加する濃度の[125I]−ATN−658と一緒にインキュベートした。細胞を、PBS/Tween20で大規模に洗浄し、結合物質を1MのNaOHで可溶化した。非特異的な結合を、非標識Abの100倍過剰量の存在下で決定した。
【図6】図6は、mAb ATN−658が、uPAのHeLa細胞への結合とは競合しないことを示す。ATN−658のHeLa細胞への結合は、125I−scuPAの結合を阻害しなかった。HeLa細胞を、5nMの125I−scuPAと一緒に、300nMの非標識scuPAまたは300nMのATN−658のいずれかの存在下または非存在下でインキュベートした。uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR mAbであるATN−617は、scuPA結合と競合することが示されている。
【図7】図7は、ATN−658が、シスプラチンと同程度の効率で、A2780卵巣癌モデルにおいて腫瘍成長を阻害することを示す。A2780細胞は、uPARのみを発現し、uPAは発現しない。
【図8】図8は、ATN−658が、106腫瘍細胞が接種されたA549肺癌(非小細胞)モデルにおける腫瘍成長を阻害する。A549細胞は、uPAおよびuPARの両方を発現する。
【図9】図9は、ビオチン化ATN−658がsuPARに飽和性で結合することを示す。
【図10A】図10Aは、suPAR上の同じエピトープを認識するmAbを同定するための、ビオチン標識されたATN−658を使用する競合アッセイの結果を示す。ATN−616およびATN−617は、uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR抗体である。ATN−616は、リガンドに占有されたuPARに特異的に結合する。
【図10B】図10Bは、suPAR上の同じエピトープを認識するmAbを同定するための、ビオチン標識されたATN−658を使用する競合アッセイの結果を示す。ATN−616およびATN−617は、uPAのuPARへの結合をブロックする抗uPAR抗体である。ATN−616は、リガンドに占有されたuPARに特異的に結合する。
【0234】
(配列表)
【0235】
【表4−1】
【0236】
【表4−2】
【0237】
【表4−3】
【0238】
【表4−4】
【0239】
【表4−5】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドであって、該リガンドは二元uPa−uPAR複合体に結合するが、該リガンドがuPa−uPAR結合を阻害しないように(i)遊離のuPaにも、(ii)uPaを認識しuPaに結合するuPARの領域にも、実質的に結合しない、リガンド。
【請求項2】
uPA−uPARとさらなる分子Xとの三元複合体に結合するリガンドであって、該リガンドは、
(a)uPA−uPAR−X複合体に結合し、
(b)以下:
(i)uPA−uPAR複合体、
(ii)uPA−X複合体、
(iii)uPARのuPA認識領域およびuPA結合領域、
(iv)XのuPA認識領域およびuPA結合領域、
(v)遊離のuPA、
(vi)遊離のX
のいずれにも実質的に結合せず;そして
(c)uPA−uPAR結合もuPA−X結合も実質的に阻害しない、リガンド。
【請求項3】
XがプロテインPAI−1である、請求項2に記載のリガンド。
【請求項4】
遊離のuPARに実質的に結合しない、請求項1〜3のいずれかに記載のリガンド。
【請求項5】
ポリペプチドである、請求項1〜3のいずれかに記載のリガンド。
【請求項6】
ポリペプチドである、請求項4に記載のリガンド。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項5に記載のリガンド。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項6に記載のリガンド。
【請求項9】
mAbである、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
mAbである、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項13】
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む、精製されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項16】
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む、精製されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb;
(b)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb;
(c)ATN−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb;および
(d)ATN−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
からなる群より選択される、請求項7に記載のmAb。
【請求項18】
uPA−uPAR複合体がこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドと結合することを阻害する、請求項1に記載のリガンド。
【請求項19】
uPA−uPAR複合体がこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドと結合することを阻害する、請求項4に記載のリガンド。
【請求項20】
ポリペプチドである、請求項18に記載のリガンド。
【請求項21】
ポリペプチドである、請求項15に記載のリガンド。
【請求項22】
前記別の生物学的リガンドがインテグリンである、請求項18に記載のリガンド。
【請求項23】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3、αvβ5、α3β1、およびα6β1、α4β1からなる群より選択される、請求項22に記載のリガンド。
【請求項24】
前記リガンドが、(a)フィブロネクチンのuPAR媒介性集合、(b)インテグリンα5β1に対するフィブロネクチンもしくはそのフラグメトの結合、または(c)ビトロネクチン成分の集合を干渉し、阻害する、請求項2、18、20または23に記載のリガンド。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれかに記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項26】
請求項4に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項27】
請求項5に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項28】
請求項7に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項29】
請求項9に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項30】
請求項11に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項31】
請求項12に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項32】
請求項13に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項33】
請求項14に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項34】
請求項15に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項35】
請求項16に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項36】
請求項17に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項37】
(a)請求項25に記載の標識リガンドと、
(b)診断的に受容可能なキャリア
とを含む、診断用組成物。
【請求項38】
前記リガンドが、放射性核種、PET造影剤、MRI造影剤、蛍光剤、蛍光原、発色団、クロモゲン、リン光剤、化学発光剤または生物発光剤で標識される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記標識が、3H、14C、35S、67Ga、68Ga、72As、89Zr、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Ybおよび201Tlからなる群より選択される放射性核種である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記標識が、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレサミン、フルオレセイン誘導体、Oregon Green、Rhodamine Green、Rhodol GreenおよびTexas Redからなる群より選択される蛍光剤または蛍光原である、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移を阻害する治療用抗脈管形成薬学的組成物または抗腫瘍薬学的組成物であって、
(a)請求項25に記載の治療的に活性なリガンドの有効量;および
(b)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、薬学的組成物。
【請求項42】
注入に適切な形態である、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項43】
治療的に活性な部分が前記リガンドに直接結合しているか、または間接的に結合している、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項44】
前記治療的に活性な部分が、化学療法剤、毒素または治療的放射性核種である、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項45】
前記放射性核種が、47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbおよび217Biからなる群より選択される、請求項44に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項46】
治療的に活性な部分が前記リガンドに融合されたペプチドまたはポリペプチドである、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項47】
前記融合ペプチドまたはポリペプチドが毒素である、請求項46に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項48】
細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成を阻害するため、あるいはアポトーシスを誘導するための方法であって、該方法は、望ましくない細胞移動、浸潤、増殖または新脈管形成に関連する細胞を、請求項25に記載の治療的に活性なリガンドの有効量と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項49】
望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移によって特徴付けられる疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、請求項41に記載の治療用薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項50】
サンプルにおいて請求項1に記載のリガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するためのアッセイ方法であって、該方法は、
(a)該サンプルをuPa−uPAR複合体と接触させ、該複合体に対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(b)該サンプルを遊離のuPARと接触させ、該uPARに対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、
ここで、(a)において結合が存在し、かつ(b)において結合が実質的に存在しないかまたは結合が有意に低いことは、該サンプル中に該物質が存在することの指標である、方法。
【請求項51】
前記リガンドが、遊離のuPARと実質的に結合しないリガンドであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記リガンドが、ポリペプチドであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記リガンドが、抗体またはその抗原結合フラグメントであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記アッセイが直接結合アッセイである、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記アッセイが、uPA−uPAR複合体に結合する標識結合パートナーを用いる競合結合アッセイであり、前記サンプル中の前記物質が該結合パートナーと結合を競合する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
サンプルにおいて請求項2〜3のいずれかに記載のリガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するための方法であって、該方法は、
(a)該サンプルをuPA−uPAR−X複合体と接触させ、該複合体に対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(b)該サンプルを、
(i)uPA:X複合体
(ii)uPA−uPAR複合体または
(iii)複合体化していないX
のうちの1つ以上と接触させ、uPA−X、uPA−uPARまたはXに対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、
ここで、(a)において結合が存在すること、かつ(b)において結合が実質的に存在しないかまたは結合が有意に低いことは、該サンプルにおいて該物質が存在することの指標である、方法。
【請求項57】
前記複合体が細胞表面上にある、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記複合体が細胞表面上にある、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
mAb ATN−615またはmAb ATN−658が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体または他のリガンドを同定するためのアッセイ方法であって、該方法は、
該抗体または他のリガンドを含むと考えられるサンプルが
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3ドメインまたは
(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも20%の競合阻害は、抗体または他のリガンドが該同じエピトープに結合することを示す、方法。
【請求項60】
(a)mAb ATN−615、(b)mAb ATN−658、あるいは(c)mAb ATN−615またはmAb ATN−658の結合特性を有する抗体または他のリガンドによって認識されるペプチドを同定するための方法であって、該方法は、該ペプチドまたは候補ペプチドを含むと考えられるサンプルが、
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3または
(iii)suPARもしくはD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたmAb ATN−615またはmAb ATN−658あるいは同じ結合特性を有する該抗体または他のリガンドの結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも約20%の競合結合は、該ペプチドが該結合特性を有することを示す、方法。
【請求項61】
uPAR構造体に結合する場合にATN−615またはATN−658が結合する場合と本質的に同じ結合特性を有する化合物をスクリーニングするためか、または候補化合物がuPAR構造体に結合する場合にATN−615またはATN−658が結合する場合と本質的に同じ結合特性を有するかどうかを決定するためのアッセイであって、該アッセイは、スクリーニングされるサンプルまたは候補化合物が
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3または
(iii)suPARもしくはD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも約20%の競合阻害は、該化合物が該結合特性を有することを示す、アッセイ。
【請求項62】
前記スクリーニングされる化合物または前記候補化合物が、約50Daと約2500Daとの間の分子量を有する有機低分子である、請求項61に記載のアッセイ。
【請求項63】
前記スクリーニングされる化合物または前記候補化合物が、核酸分子である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記核酸分子がオリゴヌクレオチドである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドがRNAi分子またはアプタマーである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項67】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項68】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項69】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項70】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下:
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb、または
(b)ATN−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
によって認識される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項71】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下:
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb、または
(b)ATN−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
によって認識される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項1】
リガンドであって、該リガンドは二元uPa−uPAR複合体に結合するが、該リガンドがuPa−uPAR結合を阻害しないように(i)遊離のuPaにも、(ii)uPaを認識しuPaに結合するuPARの領域にも、実質的に結合しない、リガンド。
【請求項2】
uPA−uPARとさらなる分子Xとの三元複合体に結合するリガンドであって、該リガンドは、
(a)uPA−uPAR−X複合体に結合し、
(b)以下:
(i)uPA−uPAR複合体、
(ii)uPA−X複合体、
(iii)uPARのuPA認識領域およびuPA結合領域、
(iv)XのuPA認識領域およびuPA結合領域、
(v)遊離のuPA、
(vi)遊離のX
のいずれにも実質的に結合せず;そして
(c)uPA−uPAR結合もuPA−X結合も実質的に阻害しない、リガンド。
【請求項3】
XがプロテインPAI−1である、請求項2に記載のリガンド。
【請求項4】
遊離のuPARに実質的に結合しない、請求項1〜3のいずれかに記載のリガンド。
【請求項5】
ポリペプチドである、請求項1〜3のいずれかに記載のリガンド。
【請求項6】
ポリペプチドである、請求項4に記載のリガンド。
【請求項7】
抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項5に記載のリガンド。
【請求項8】
抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項6に記載のリガンド。
【請求項9】
mAbである、請求項7に記載の抗体。
【請求項10】
mAbである、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項13】
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を含む、精製されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;および
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項15】
前記抗体またはその抗原結合フラグメントが、
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項16】
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を含む、精製されたモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb;
(b)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb;
(c)ATN−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb;および
(d)ATN−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
からなる群より選択される、請求項7に記載のmAb。
【請求項18】
uPA−uPAR複合体がこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドと結合することを阻害する、請求項1に記載のリガンド。
【請求項19】
uPA−uPAR複合体がこれらの複合体に対する別の生物学的リガンドと結合することを阻害する、請求項4に記載のリガンド。
【請求項20】
ポリペプチドである、請求項18に記載のリガンド。
【請求項21】
ポリペプチドである、請求項15に記載のリガンド。
【請求項22】
前記別の生物学的リガンドがインテグリンである、請求項18に記載のリガンド。
【請求項23】
前記インテグリンが、α5β1、αvβ3、αvβ5、α3β1、およびα6β1、α4β1からなる群より選択される、請求項22に記載のリガンド。
【請求項24】
前記リガンドが、(a)フィブロネクチンのuPAR媒介性集合、(b)インテグリンα5β1に対するフィブロネクチンもしくはそのフラグメトの結合、または(c)ビトロネクチン成分の集合を干渉し、阻害する、請求項2、18、20または23に記載のリガンド。
【請求項25】
請求項1〜3のいずれかに記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項26】
請求項4に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項27】
請求項5に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項28】
請求項7に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項29】
請求項9に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項30】
請求項11に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項31】
請求項12に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項32】
請求項13に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項33】
請求項14に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項34】
請求項15に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項35】
請求項16に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項36】
請求項17に記載のリガンドであって、
(a)診断によって検出可能に標識されているか、あるいは
(b)治療的に活性な部分で標識されているか、治療的に活性な部分に結合されているか、または治療的に活性な部分と融合され、該リガンドを治療的に活性にする、リガンド。
【請求項37】
(a)請求項25に記載の標識リガンドと、
(b)診断的に受容可能なキャリア
とを含む、診断用組成物。
【請求項38】
前記リガンドが、放射性核種、PET造影剤、MRI造影剤、蛍光剤、蛍光原、発色団、クロモゲン、リン光剤、化学発光剤または生物発光剤で標識される、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記標識が、3H、14C、35S、67Ga、68Ga、72As、89Zr、97Ru、99Tc、111In、123I、125I、131I、169Ybおよび201Tlからなる群より選択される放射性核種である、請求項38に記載の組成物。
【請求項40】
前記標識が、フルオレセイン、ローダミン、ダンシル、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒド、フルオレサミン、フルオレセイン誘導体、Oregon Green、Rhodamine Green、Rhodol GreenおよびTexas Redからなる群より選択される蛍光剤または蛍光原である、請求項38に記載の組成物。
【請求項41】
望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移を阻害する治療用抗脈管形成薬学的組成物または抗腫瘍薬学的組成物であって、
(a)請求項25に記載の治療的に活性なリガンドの有効量;および
(b)薬学的に受容可能なキャリア
を含む、薬学的組成物。
【請求項42】
注入に適切な形態である、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項43】
治療的に活性な部分が前記リガンドに直接結合しているか、または間接的に結合している、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項44】
前記治療的に活性な部分が、化学療法剤、毒素または治療的放射性核種である、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項45】
前記放射性核種が、47Sc、67Cu、90Y、109Pd、125I、131I、186Re、188Re、199Au、211At、212Pbおよび217Biからなる群より選択される、請求項44に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項46】
治療的に活性な部分が前記リガンドに融合されたペプチドまたはポリペプチドである、請求項41に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項47】
前記融合ペプチドまたはポリペプチドが毒素である、請求項46に記載の治療用薬学的組成物。
【請求項48】
細胞移動、細胞浸潤、細胞増殖または新脈管形成を阻害するため、あるいはアポトーシスを誘導するための方法であって、該方法は、望ましくない細胞移動、浸潤、増殖または新脈管形成に関連する細胞を、請求項25に記載の治療的に活性なリガンドの有効量と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項49】
望ましくない新脈管形成、腫瘍増殖および/または腫瘍転移によって特徴付けられる疾患、障害または状態を有する被験体を処置するための方法であって、該方法は、請求項41に記載の治療用薬学的組成物の有効量を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
【請求項50】
サンプルにおいて請求項1に記載のリガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するためのアッセイ方法であって、該方法は、
(a)該サンプルをuPa−uPAR複合体と接触させ、該複合体に対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(b)該サンプルを遊離のuPARと接触させ、該uPARに対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、
ここで、(a)において結合が存在し、かつ(b)において結合が実質的に存在しないかまたは結合が有意に低いことは、該サンプル中に該物質が存在することの指標である、方法。
【請求項51】
前記リガンドが、遊離のuPARと実質的に結合しないリガンドであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記リガンドが、ポリペプチドであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記リガンドが、抗体またはその抗原結合フラグメントであると考えられる、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記アッセイが直接結合アッセイである、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
前記アッセイが、uPA−uPAR複合体に結合する標識結合パートナーを用いる競合結合アッセイであり、前記サンプル中の前記物質が該結合パートナーと結合を競合する、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
サンプルにおいて請求項2〜3のいずれかに記載のリガンドの結合特性を有すると考えられる物質を検出するための方法であって、該方法は、
(a)該サンプルをuPA−uPAR−X複合体と接触させ、該複合体に対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(b)該サンプルを、
(i)uPA:X複合体
(ii)uPA−uPAR複合体または
(iii)複合体化していないX
のうちの1つ以上と接触させ、uPA−X、uPA−uPARまたはXに対する該サンプルの成分の結合を決定する工程;
(c)(a)の結合と(b)の結合とを比較する工程
を包含し、
ここで、(a)において結合が存在すること、かつ(b)において結合が実質的に存在しないかまたは結合が有意に低いことは、該サンプルにおいて該物質が存在することの指標である、方法。
【請求項57】
前記複合体が細胞表面上にある、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記複合体が細胞表面上にある、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
mAb ATN−615またはmAb ATN−658が結合するエピトープと同じエピトープに結合する抗体または他のリガンドを同定するためのアッセイ方法であって、該方法は、
該抗体または他のリガンドを含むと考えられるサンプルが
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3ドメインまたは
(iii)suPARもしくはsuPARのD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも20%の競合阻害は、抗体または他のリガンドが該同じエピトープに結合することを示す、方法。
【請求項60】
(a)mAb ATN−615、(b)mAb ATN−658、あるいは(c)mAb ATN−615またはmAb ATN−658の結合特性を有する抗体または他のリガンドによって認識されるペプチドを同定するための方法であって、該方法は、該ペプチドまたは候補ペプチドを含むと考えられるサンプルが、
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3または
(iii)suPARもしくはD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたmAb ATN−615またはmAb ATN−658あるいは同じ結合特性を有する該抗体または他のリガンドの結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも約20%の競合結合は、該ペプチドが該結合特性を有することを示す、方法。
【請求項61】
uPAR構造体に結合する場合にATN−615またはATN−658が結合する場合と本質的に同じ結合特性を有する化合物をスクリーニングするためか、または候補化合物がuPAR構造体に結合する場合にATN−615またはATN−658が結合する場合と本質的に同じ結合特性を有するかどうかを決定するためのアッセイであって、該アッセイは、スクリーニングされるサンプルまたは候補化合物が
(i)固定されたsuPAR、
(ii)固定されたsuPAR D2D3または
(iii)suPARもしくはD2D3の固定されたフラグメト
に対する検出可能に標識されたATN−615またはATN−658の結合を競合的に阻害する能力を測定する工程を包含し、
ここで、少なくとも約20%の競合阻害は、該化合物が該結合特性を有することを示す、アッセイ。
【請求項62】
前記スクリーニングされる化合物または前記候補化合物が、約50Daと約2500Daとの間の分子量を有する有機低分子である、請求項61に記載のアッセイ。
【請求項63】
前記スクリーニングされる化合物または前記候補化合物が、核酸分子である、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記核酸分子がオリゴヌクレオチドである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記オリゴヌクレオチドがRNAi分子またはアプタマーである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)それぞれ配列番号3、配列番号4および配列番号5のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号6、配列番号7および配列番号8のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項67】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)配列番号1の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号2の配列を有するVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項68】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)それぞれ配列番号11、配列番号12および配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVL鎖;ならびに
(b)それぞれ配列番号14、配列番号15および配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDRを含むVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項69】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下の特徴:
(a)配列番号9の配列を有するVL鎖;および
(b)配列番号10の配列を有するVH鎖
を有するmAbによって結合される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項70】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下:
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−658と称されるmAb、または
(b)ATN−658と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
によって認識される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【請求項71】
少なくとも3つのアミノ酸を含む単離されたペプチドであって、該ペプチドは、より長いアミノ酸配列の一部であるとき、以下:
(a)ATCC受託番号 を有するハイブリドーマによって産生されるATN−615と称されるmAb、または
(b)ATN−615と本質的に同じ抗原結合特性を有するmAb
によって認識される直鎖状エピトープ中に存在する、単離されたペプチド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【公表番号】特表2008−509086(P2008−509086A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515288(P2007−515288)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/018322
【国際公開番号】WO2005/116077
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503033884)アテニュオン, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【国際出願番号】PCT/US2005/018322
【国際公開番号】WO2005/116077
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(503033884)アテニュオン, エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】
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