説明

不燃性の画像用シート

【課題】不燃性に対する信頼性が低下することなく、しかも強度を向上させた不燃性の画像用シートを提供する。
【解決手段】ガラスからなる複数の単繊維を束ねたガラスヤーンGYと、ポリエステル樹脂からなる樹脂繊維JYとを用いて織られており、ガラスヤーンGYに対する樹脂繊維JYの本数の比が5分の1ないし100分の1である。ガラスヤーンGYと樹脂繊維JYとが、それぞれ、縦糸および横糸として用いられ、平織りによって織られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外広告などに用いられる不燃性の画像用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、駅の構内、ビルの壁面または屋上、また、屋外の構築物に、宣伝広告のための種々のサイズの画像パネルがしばしば取り付けられる。通常、このよな画像パネルは、画像が形成された画像シートを適当なパネル枠に取り付け、画像シートの背面から蛍光灯やEL(エレクトリックルミネッセンスライト)などによって照明を行う。観察者は、照明による透過光によって画像を鮮明に見ることができる。
【0003】
従来においては、このような画像シートとして、ポリエステルからなる半透明のフィルムを支持体とし、その両面にインクジェットプリンタなどを用いて画像を印刷することによって画像を形成したものが用いられている。また、感光乳剤を塗布してなる印画フィルムを用い、その感光乳剤層に画像を焼付けて現像したものも用いられている(特許文献1)。また、写真性に優れる改良されたポリエステル支持体も提案されている(特許文献2)。
【0004】
また、ポリエステルからなる透明の樹脂フィルム層と、樹脂フィルム層の一方の表面に形成された第1の画像層と、第1の画像層の表面に形成された乳白層と、乳白層の表面に形成された第2の画像層とを有する画像シートも提案されている(特許文献3)。
【0005】
しかし、これら従来の画像シートでは、支持体がポリエステルなどの合成樹脂からなるフィルムであるので、可燃性であり、防火および防炎の上で問題があった。
【0006】
この問題に対して、ガラスからなる複数の単繊維を束ねたガラスヤーンを縦糸および横糸として用いて平織りされた光透過性および光拡散性を有するガラスクロスを用いた画像シートを、本出願人は先に提案した(特許文献4)。
【0007】
この特許文献4の画像シートによると、ガラスクロスをベース層として用いるので、不燃性となり、防火上および防炎上の問題が解消する。
【特許文献1】特開昭59−222835
【特許文献2】特開2001−342245
【特許文献3】特開2005−132090
【特許文献4】特開2007−203724
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上に述べた特許文献4においては、ガラスクロスをベース層として用いるので、強度的に弱い面があった。すなわち、画像シートを屋外で使用した場合に、風による風圧を受けるため、ガラスヤーンに極めて大きな張力が作用する。その上、風の向きが変化することによって画像用シートがはためくので、ガラスヤーンに折り曲げ力が繰り返して作用し、これによってガラスヤーンが破損に到ることがある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、不燃性に対する信頼性が低下することなく、しかも強度を向上させた不燃性の画像用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る不燃性の画像用シートは、ガラスからなる複数の単繊維を束ねたガラスヤーンと、ポリエステル樹脂からなる樹脂繊維とを用いて織られており、前記ガラスヤーンに対する前記樹脂繊維の本数の比が5分の1ないし100分の1低い割合で用いられている。
【0011】
好ましくは、前記ガラスヤーンと前記樹脂繊維とが、それぞれ、縦糸および横糸として用いられ、平織りによって織られている。
【0012】
耐久性をあげるために、両面に塩ビ樹脂をコーティングしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、不燃性に対する信頼性が低下することなく、しかも強度を向上させた不燃性の画像用シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る一実施形態の画像用シート3の全体の外観を示す正面図、図2は画像用シート3の一部を拡大して示す図、図3は図2の画像用シート3をさらに拡大して示す斜視図、図4は画像用シート3の断面図、図5は画像用シート3の製造方法を説明するための図である。
【0015】
図1において、画像用シート3は、シート状体11、およびシート状体11の周縁に取り付けられた取り付け部12,12,12,…などからなる。
【0016】
図2および図3を参照して、シート状体11は、ガラスからなる複数の単繊維を束ねたガラスヤーンGYと、ポリエステル樹脂からなる樹脂繊維JYとを用いて織られている。樹脂繊維JYの本数は、ガラスヤーンGYの本数に比べて大幅に少ない。すなわち、ガラスヤーンGYに対する樹脂繊維JYの本数の比は、5分の1ないし100分の1程度である。具体的には、例えば、5分の1、10分の1、20分の1、30分の1、50分の1、70分の1、100分の1などである。つまり、5本ないし100本のガラスヤーンGYに対して、樹脂繊維JYを1本の割合で用いる。
【0017】
また、ガラスヤーンGYと樹脂繊維JYとは、それぞれ、縦糸GYT、JYT、および横糸GYY、JYYとして用いられ、平織りによって織られている。つまり、ガラスヤーンGYの縦糸GYTおよび横糸GYYと、樹脂繊維JYの縦糸JYTおよび横糸JYYとが交織されている。そして、図4に示されるように、シート状体11の両面には、インクジェットプリンタによるインクがよく乗るように受像層21が形成されている。
【0018】
シート状体11は、光透過性および光拡散性を有する半透明のものである。ガラスクロスは、例えば、直径4ないし9μmの単繊維、例えば直径4μm、または直径9μmの単繊維を、複数用いて10乃至40TEXのガラスヤーンGYとし、これを縦糸GYTおよび横糸GYYとして用いる。
【0019】
また、樹脂繊維JYについても、例えば、適度な直径の単繊維を複数用いて10乃至40TEXの樹脂繊維(樹脂ヤーン)JYとし、これを縦糸JYTおよび横糸JYYとして用いる。または、例えば、適度な直径の単繊維をそのまま10乃至40TEXの樹脂繊維JYとして用いる。
【0020】
ここで、光透過性は、外部からの照明光が実用的な効率でシート状体11を透過して、観察者が十分な明るさで画像を観察できる程度に有していればよい。また、光拡散性は、照明光の光源が透けて見えたりすることのないよう、照明光がシート状体11の内部で適当に拡散し、シート状体11の面が一様な明るさとなる程度であればよい。
【0021】
シート状体11の厚さは、数十ミクロン〜数百ミクロン程度、または千ミクロン程度まで、例えば400〜500ミクロン程度である。シート状体11が厚くなるにしたがって光透過性が低下するので、背面からの照明光が十分に透過する程度で且つ適当な光拡散性を持つ程度の厚さとするのが好ましい。
【0022】
シート状体11は、すりガラスのように半透明であり、乳白色がかっており、向こう側は透けては見えない。つまり、シート状体11は、それ自体が従来からの乳白色層および光拡散層として機能する。この点において、従来から種々存在するガラスファイバー製の不透明な布とは異なる。シート状体11の縦横のサイズは、画像用シート3の用途または使用目的に応じて種々の大きさとすることができる。例えば、縦1〜5m程度、横1〜10m程度である。具体的には、例えば、縦3m程度、横5m程度である。シート状体11の製造方法については後で詳しく説明する。
【0023】
受像層21は、種々の材料によるコーティングによって形成される。例えば、防炎剤である三酸化アンチモン、白色顔料である酸化チタン、光拡散材としてシリカなどを適当なバインダ樹脂に混ぜて適度な厚さにコーティングする。また、塩ビ樹脂をコーティングする。また、表面に接着剤を塗布し、その上に剥離用の離形フィルムを貼り付けておいてもよい。
【0024】
取り付け部12は、ループ状になっており、上に述べたようにシート状体11の周縁に取り付けられている。取り付け部12は、シート状体11の周縁において、例えば、5〜20cmの間隔で取り付けられる。画像用シート3を取り付けるに際して、取り付け部12にロープやワイヤーを通し、そのロープやワイヤーを建築物や固定金具などに括り付けて固定する。画像用シート3は、ロープやワイヤーを引っ張ることによって、撓まないようにピンと張ることが好ましい。
【0025】
なお、シート状体11の周縁部は幾重に折り曲げられており、これによって強度を得ている。取り付け部12は、その折り曲げられた部分に取り付けられる。
【0026】
図5(A)において、ガラスヤーンGYを構成する単繊維TSとして、直径4乃至9μm程度の単繊維を用いる。
【0027】
そして、このような単繊維TSを複数本用い、図5に(B)にその断面を示すように、10乃至40TEX(番手)のガラスヤーンGYとする。つまり、単繊維TSを、その太さにもよるが、100〜400本程度用いてガラスヤーンGYとする。なお、TEX(番手)は、長さ1Km当たりの重量を示す。
【0028】
具体的には、例えば、直径7μmの単繊維TSを200本用い、22.5TEXのガラスヤーンGYとする。他の具体例では、直径9μmの単繊維TSを200本用い、33.7TEXのガラスヤーンGYとする。さらに他の具体例では、直径6μmの単繊維TSを400本用い、33.7TEXのガラスヤーンGYとする。さらに他の具体例では、直径5μmの単繊維TSを400本用い、22.5TEXのガラスヤーンGYとする。その他、単繊維TSの太さ、本数、TEXについて種々の組み合わせが可能である。
【0029】
なお、単繊維TSとして少し細い直径3μmのものを使用した場合には、ガラスクロスGCの強度を増すことができるが、アスベストと同様に血管の中に入ることがあるので好ましくない。
【0030】
ガラスヤーンGYの断面形状は、当初は円形または楕円形であるが、後で織ることによる加圧力により偏平な形状となる。なお、複数の単繊維TSをガラスヤーンGYとして束ねるに際して、結合剤としてでんぷん系ののりを含浸させてもよい。
【0031】
また、樹脂繊維JYについても、ガラスヤーンGYと同様にして製造することが可能である。なお、樹脂繊維JYの材料として、上に述べたようにポリエステル樹脂が用いられる。具体的には、例えば、強度があり、伸び難く、熱にも強いポリエチレンテレフタレート(PET)が用いられる。
【0032】
このようなガラスヤーンGYおよび樹脂繊維JYを原糸として用い、図5(C)(D)および図3に示すように、平織(Plain )によって織物であるガラスクロスGCとする。平織では、その平面視が図5(D)に示されるように、縦糸と横糸とが1本ごとに交錯している。通常、目あきとはせず、密なものとする。しかし、多少の目あきとすることも可能である。縦糸として、ガラスヤーンGYまたは樹脂繊維JYを密度50〜70本/25mmとし、横糸として、密度50〜70本/25mmとする。具体的には、例えば、縦糸は密度60本/25mm、横糸は密度57本/25mmとする。
【0033】
平織によって織物とした後に、上に述べたように種々の樹脂などをコーティングして受像層21を形成する。このコーティングにおいて、塗布の後に、ヘラ状のナイフなどを用いて表面をスクイズし、表面を滑らかに仕上げておいてもよい。また、グラビア印刷のような輪転シリンダを用いてコーティングを行ってもよい。
【0034】
コーティングによって、バインダ樹脂が、平織りされた織物の目の隙間にしみ込む。つまり、図4に示すように、バインダ樹脂は、織物の谷の部分に多く塗布され、一部が織物の山の部分にも薄く塗布される。
【0035】
このように、ガラスヤーンGYおよび樹脂繊維JYを用いて平織りしてガラスクロスGCとすることによって、不燃性の画像用シート3を製造することができる。密な平織りとすることによって糸目が目立つことなく、一様な光拡散性が得られる。また、適当な光透過性と光拡散性が得られれば、平織りでなく他の織り方で織ってもよい。
【0036】
本実施形態においては、ガラス繊維(ガラスヤーン)の強度を増加させるために、上に述べたようにポリエステル繊維と交織する。しかし、本実施形態において、ガラス繊維の不燃性とポリエステル繊維による強度増加の両目的の最大公約数を実験上で求めることによって、縦および横のそれぞれにおけるガラス繊維とポリエステル繊維との比率を決める。例えば、ガラス繊維5に対してポリエステル繊維を1以上に増加したときは可燃性が高まり、ポリエステル繊維の比率を少なくしたときは強度が低下する。
【0037】
したがって、引っ張り風圧などに対する強度を重点的に考えて製作する場合には、比率の限度を、ガラス繊維5に対してポリエステル繊維を1以上にはしないと設定し、不燃性を重点的に考えて製作する場合には、ポリエステル繊維1に対してガラス繊維を5より少なくしないようにする。
【0038】
上に述べた画像用シート3によると、ほとんどがガラスヤーンGYからなっており、不燃性である。樹脂繊維JYが少ない割合で交織されているので、強度が向上している。例えば、使用時に強風などによって画像用シート3がはためいたときに、ガラスヤーンGYとともに樹脂繊維JYにも折り曲げ力が繰り返して作用するが、樹脂繊維JYの存在によって強度が向上しており、破れ難くまた割れ難い。火災などによって樹脂繊維JYが燃えた場合であっても、燃えるのは画像用シート3の一部のみであり、全体として不燃性である。
【0039】
このように、画像用シート3は、ガラスヤーンGYと樹脂繊維JYとの交織によって構成されているので、不燃性が維持され、かつ強度が向上している。
【0040】
上に述べた実施形態において、その全体または各部の構造、構成、形状、寸法、個数、材質、組成などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る一実施形態の画像用シートの一部を示す断面図である。
【図2】画像用シートの一部を拡大して示す図である。
【図3】図2の画像用シートをさらに拡大して示す斜視図である。
【図4】画像用シートの断面図である。
【図5】画像用シートの製造方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
3 画像用シート
11 シート状体
12 取り付け部
21 受像層
GC ガラスクロス
GY ガラスヤーン
JY 樹脂繊維
GYT、JYT 縦糸
GYY、JYY 横糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスからなる複数の単繊維を束ねたガラスヤーンと、ポリエステル樹脂からなる樹脂繊維とを用いて織られており、
前記ガラスヤーンに対する前記樹脂繊維の本数の比が5分の1ないし100分の1の低い割合で用いられている、
ことを特徴とする不燃性の画像用シート。
【請求項2】
前記ガラスヤーンと前記樹脂繊維とが、それぞれ、縦糸および横糸として用いられ、平織りによって織られている、
請求項1記載の不燃性の画像用シート。
【請求項3】
両面に塩ビ樹脂がコーティングされている、
請求項2記載の不燃性の画像用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−37671(P2010−37671A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199249(P2008−199249)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(591243893)株式会社フオトクラフト社 (26)
【Fターム(参考)】