説明

中空封止体の製造方法および製造装置

【課題】 設計自由度が高く、内部が減圧されて封止された中空体を容易に製造可能な、中空体の製造方法およびこの製造装置を提供する。
【解決手段】 成形炉3は通常の電気加熱炉を用いることができる。成形炉3の内部には成形型5が配置される。成形型5は少なくとも一対の上型および下型よりなり、上型および下型の間に管状素材7が挟み込まれる。成形炉3には、温度調整部9が接続される。温度調整部9は、成形炉3内部の温度を測定し、あらかじめプログラムされた昇温速度等によって、成形炉3内部の温度を調整する部位である。成形炉3には、配管19およびバルブ17を介して不活性ガス供給部13および減圧装置15等が接続される。バルブ17の操作によって、成形炉3の内部空間に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気とすることができ、また、減圧装置15によって成形炉3内部を真空に引くことも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部が減圧されて封止された中空体の製造方法およびこの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス等の中空体として、シラスバルーンが知られている。シラスバルーンは、火山の噴出物であるシラスを焼成・発砲させたものあり、無害・不燃・断熱等の特性を利用して用いられる。
【0003】
このような中空ガラス球状体の製造方法としては、例えば、火山ガラス質堆積物の微粒子と、この微粒子の親水性を減少させる親水性減少剤との混合物を生成し、流動層式加熱炉を用いることによって、混合物を900℃〜1200℃で熱処理する製造方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−24299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、加熱によって素材を発泡させるため、内部を減圧することが困難であり、また、完全に密閉された封止体を製造することが困難である。このため、特に液中で断熱材として用いる場合には、内部に液が浸入し、断熱効果を失う恐れがある。
【0006】
また、発泡による製法であるため、製造可能なサイズが限定され、自由な形状や肉厚のものを製造することが困難である。さらに、複合材等を必要とする場合には軽量化も困難であり、発砲後の材料を再利用することもできない。また、原料の採掘から製品化までの工程が多く、特殊な処理が必要であるため、製造コストが増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、設計自由度が高く、内部が減圧されて封止された中空体を容易に製造可能な、中空体の製造方法およびこの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達するために第1の発明は、中空封止体の製造方法であって、製造する中空封止体の形状に応じた凹部を少なくとも一方に有する一対の成形型の間に管状素材を配置し、前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温して、前記成形型の前記凹部の両側部で前記管状素材の一部を押圧して封止し、前記成形型の周囲を減圧することで、前記凹部の内部で前記管状素材を膨張させて前記凹部の形状に成形し、冷却固化することを特徴とする中空封止体の製造方法である。
【0009】
少なくとも一方の前記成形型の両側部には縁部が設けられ、前記縁部には、前記管状素材の断面形状に応じた形状の溝が形成され、前記凹部は、両側部の前記溝の間に設けられてもよい。
【0010】
前記管状素材はガラス製であり、前記成形型はカーボン製であってもよい。前記管状素材の昇温時に、前記成形型の周囲には不活性ガスが充填されてもよい。
【0011】
一方の前記成形型に前記管状素材を設置した状態で、他方の成形型は、前記管状素材に対して、一定の荷重を付与するように設置されてもよい。前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温し、前記成形型の周囲を減圧して前記管状素材を膨張させた後、前記管状素材の軟化温度未満の温度であって常温よりも高い温度まで除冷し、当該温度で所定時間保持してもよい。
【0012】
第1の発明によれば、管状素材を成形型の凹部に挟み込んだ状態で軟化させ、周囲を減圧することで管状素材を膨張させて中空封止体を製造するため、成形型の設計により任意の大きさおよび形状の中空体を製造することができる。また、管状素材の肉厚を適宜設定することで、中空体の肉厚も容易に制御することができる。
【0013】
また、得られた中空体は、完全に封止されており、液中で用いたとしても、内部に液が浸入することがない。また、中空体の内部が減圧されているため、高い断熱効果を得ることができる。
【0014】
また、成形型に管状素材を設置した後、製造装置としては温度および成形炉内の圧力を制御するのみであるため、特殊な技能を有さずに大量に再現性よく中空体を製造することができる。
【0015】
また、成形型の端部に縁部を設け、管状素材を設置可能な溝を形成することで、管状素材の位置決めができるとともに、管状素材と成形型とを面接触させ、成形型からの熱を効率良く管状素材に伝達することができる。
【0016】
また、本発明は、特に従来成型が困難であったガラス中空体の製造に好適である。この際、成形型をカーボン製とすることで、耐熱性に優れ、また、ガラスとの離型性にも優れ、熱処理時の変形もない。このため、製造作業が容易である。
【0017】
また、軟化点までの昇温時に、成形炉内(成形型周囲)を不活性ガス雰囲気とすることで、得られた中空体の内部に微量の不活性ガス(減圧状態)を封止することができる。このため、内部に水分等が混入することがない。
【0018】
また、管状素材の凹部間の封止が、一方の成形型からの一定の荷重により行われるため、過剰な荷重によって管状素材を軟化前に破損することがなく、軟化時には特殊な制御を必要とせずに凹部の周囲を封止することができる。
【0019】
また、管状素材を膨張させた後、軟化点未満の温度で一定時間保持すれば、急激な冷却に伴う中空体の破損の恐れがなく、また、膨張した状態の形状を安定化することができる。
【0020】
第2の発明は、中空封止体の製造装置であって、製造される中空封止体の形状に応じた凹部を少なくとも一方に有する一対の成形型と、前記成形型を設置可能な成形炉と、前記成形炉の温度を制御する温度調整部と、前記成形炉内を減圧することが可能な減圧装置と、を具備し、管状素材が挟み込みこまれた前記成形型が前記成形炉内に配置された状態で、前記温度調整部は前記成形炉を前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温し、前記管状素材が軟化後、前記減圧装置は前記成形型の周囲を減圧し、前記管状素材を膨張させて前記凹部の形状に成形することが可能であることを特徴とする中空封止体の製造装置である。
【0021】
第2の発明によれば、内部が減圧されて密閉された中空体を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、設計自由度が高く、内部が減圧されて封止された中空体を容易に製造可能な、中空体の製造方法およびこの製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】中空封止体製造装置1を示す概略図。
【図2】成形型5に管状素材7を設置する状態を示す図。
【図3】成形型5に管状素材7を設置する状態を示す図で、(a)は図2のC−C線断面図、(b)は上型5aを閉じた状態を示す図。
【図4】温度条件を示す図。
【図5】上型5aからの押圧による、軟化した管状素材7の変形を示す図。
【図6】減圧による、管状素材7の膨張を示す図
【図7】成形型5を開いた状態を示す図。
【図8】(a)は中空封止体40を示す斜視図、(b)は中空封止体40の使用例を示す図。
【図9】(a)は中空封止体50を成形型51に従呈した状態を示す図、(b)は中空封止体50同士が溶着した断熱構造体53を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、中空封止体製造装置1を示す概略図である。中空封止体製造装置1は、主に、成形炉3、成形型5、温度調整部9、制御部11、減圧装置15等から構成される。
【0025】
成形炉3は通常の電気加熱炉を用いることができる。成形炉3の内部には、成形型5が配置される。成形型5は少なくとも一対の上型および下型よりなり、上型および下型の間に管状素材7が挟み込まれる。なお、成形型5については、詳細を後述する。
【0026】
成形炉3には、温度調整部9が接続される。温度調整部9は、成形炉3内部の温度を測定し、あらかじめプログラムされた昇温速度等によって、成形炉3内部の温度を調整する部位である。温度調整部9としては、例えば、PID制御により成形炉3のヒータへ供給される電流値を制御すればよい。
【0027】
成形炉3には、配管19およびバルブ17を介して不活性ガス供給部13および減圧装置15等が接続される。不活性ガス供給部13は、必要に応じて接続されるものであり、例えば窒素等のボンベである。また、減圧装置15は、例えば通常の真空ポンプを使用することができる。すなわち、バルブ17の操作によって、成形炉3の内部空間に不活性ガスを供給して不活性ガス雰囲気とすることができ、また、減圧装置15によって成形炉3内部を真空に引くことも可能である。
【0028】
なお、温度調整部9およびバルブ17(減圧装置15等の動作)は、制御部11により制御してもよい。例えば、制御部11としてシーケンサ等を用い、各部の動作をあらかじめプログラム化してもよい。
【0029】
次に、成形型5について説明する。図2は、成形型5の分解斜視図である。成形型5は、一対の上型5aおよび下型5bからなる。なお、上型5aおよび下型5bはそれぞれ複数に分割されていてもよい。下型5bの両側部(図中左右方向)には、縁部21が形成される。縁部21は、上型5aとの対向面において他の部位よりも突出した部位である。
【0030】
縁部21には、溝23が形成される。溝23は、管状素材7が設置される部位となる。また、溝23は、管状素材7の断面形状に応じた形状に形成される。したがって、両端の溝23にまたがるように管状素材7を設置すると(図中矢印A方向)、管状素材7の外表面と溝23とを面接触させることができる。すなわち、溝23は、管状素材7の位置決めの機能とともに、後述する加熱時に、成形型5からの熱を効率良く管状素材7に伝達する機能を奏する。
【0031】
両端の縁部21(溝23)の間には、複数の凹部25が形成される。凹部25は、成形後の中空封止体の外形に応じた形状に形成される。すなわち、中空封止体は凹部25の形状に成形される。
【0032】
下型5bにはピン27が一対形成される。ピン27は、上型5aとの対向面方向に突出する。上型5aを下型5bに対向させた際に、ピン27に対応する位置にはガイド孔29が設けられる。したがって、上型5aと下型5b上とを組み合わせると、ピン27がガイド孔29に挿入される。したがって、上型5aと下型5bとの位置ずれが生じることがない。また、下型5bに対して上型5aをまっすぐに移動させることができる。
【0033】
図3(a)は、上型5aと下型5bとを対向させた状態を示す断面図であり、図2のC−C線断面図である。前述の通り、下型5bには、管状素材7の設置面に対して凹部25が形成される。また、上型5aにも同様に凹部25が形成される。ここで、凹部25の両側部を凸部31とする。すなわち、凸部31は、管状素材7の設置面となる。
【0034】
図3(b)は、管状素材7を下型5bと上型5aの間に設置して、上型5aを下型5bに組み合わせた状態を示す図である。前述の通り、管状素材7の両端は溝23に収められる。また、下型5bおよび上型5aのそれぞれの凸部31が管状素材7に接触する。ここで、上型5aが管状素材7上に設置されると、管状素材7には上型5aの自重分の荷重が付与される。
【0035】
なお、本実施形態では、円断面形状の管状素材7を用い、略球形の中空封止体を形成する例について説明するが、本発明はこれに限られない。例えば、使用する管状素材7の肉厚や形状、凹部25の形状等を適宜設計することで、任意の形態の中空封止体を得ることができる。また、以下の図の例では、凹部25(溝23)が複数列に形成される例を示すが、凹部25の設置数や列数は、図示した例に限られない。また、凹部25の形状を各列で変更することも可能である。さらに、成形する中空封止体の形状によって、凹部25は、少なくとも上型5aまたは下型5bの一方にのみ形成されてもよい。
【0036】
次に、中空封止体の成形工程について説明する。図4は、前述した温度調整部9(図1)による成形炉3内部の温度設定の一例を示す図である。温度調整は、急速加熱領域(図中P1)、温度保持領域(図中P2)、除冷領域(図中P3)、安定化領域(図中P4)、冷却領域(図中P5)により行われる。なお、設定温度と実際の温度とはずれが生じる。このため、実温度とのずれを考慮して設定温度が設定される。
【0037】
急速加熱領域は、成形型5がセットされた成形炉3内の温度を上昇させる工程である。急速加熱領域は、対象となる管状素材7の軟化点以上の温度まで、昇温する。ここで、軟化点とは、管状素材7が軟らかくなり始め、例えば自重でも変形が生じ始めて元の形状を保持できなくなる温度である。
【0038】
例えば、管状素材7が熱可塑性樹脂で構成される場合には、当該樹脂を変形させることが可能な温度とすればよい。例えば、ポリエチレンやポリプロピレンの例では実温度が200〜250℃程度とすればよい。
【0039】
また、管状素材7がガラス製であれば、当該ガラスの軟化点温度以上とすればよい。例えば、珪ホウ酸ガラスであるパイレックス(登録商標)を用いる場合には、実温度が、軟化点である720℃以上に昇温されればよい。また、昇温速度は、成形炉に応じて設定されるが、例えば20℃/min程度とすればよい。また、昇温温度の上限は、材質に応じて後述する加工が可能な範囲で適宜設定される。
【0040】
温度保持領域では、管状素材7を軟化させた後、後述するように、管状素材7を膨張させて成形する間の保持時間となる。管状素材が十分に軟化温度以上となれば、この膨張保持時間は1分程度あれば十分である。
【0041】
除冷領域は、管状素材7の軟化点以下の温度に除冷して、成形体を固化する時間となる。例えば、10℃/min程度の速度で冷却すればよい。
【0042】
安定化領域は、軟化点温度未満、常温以上の温度で所定時間保持し、成形後の中空封止体を安定化させる時間となる。一定時間の安定化後、冷却領域で急冷等によって冷却される。
【0043】
上記の設定温度例としては、例えば、パイレックス(登録商標)の例では、急速加熱領域の設定を950℃まで60分で昇温し、温度保持領域の設定を950℃×1分とすることで、実温度を約775℃程度(max)とすることができ、その後、除冷領域として560℃まで40分で除冷し、さらに安定化領域で560℃×60分保持すればよい。ここで、安定化領域の温度としては、常温(20℃)に対する軟化温度(720℃)の約70〜80%程度の温度とすればよい。
【0044】
次に、前述した温度調整により中空封止体が成形される状態について説明する。まず、図2(b)の状態で管状素材7が設置された成形型5が、成形炉3内部に設置された状態で、温度調整部9により成形炉3が昇温される。この際、成形炉3内部の温度が上昇するに伴い、成形型5および管状素材7も昇温される。特に、前述の通り、管状素材7が溝23で成形型5と面接触するため、成形型5からの熱伝達により、管状素材7を効率良く昇温することができる。
【0045】
図5(a)は、管状素材7が軟化を開始した状態を示す図である。管状素材7には、上型5aからの自重が常に付与されている。すなわち、上型5aは、管状素材7に対して、一定の荷重を付与するように設置される。したがって、管状素材7が軟化を開始すると、上型5aからの荷重により、管状素材7が変形を開始する。
【0046】
具体的には、上型5aの凸部31に接触する管状素材7の部位が、上方から押圧されて潰される。この際、上型5aは、下型5bに対してピン27およびガイド孔29によってまっすぐに移動して(図中矢印D方向)、管状素材7を変形させることができる。なお、上型5aには、必要に応じて錘を設けてもよい。
【0047】
図5(b)は、完全に管状素材7の一部が上型5aによって潰された状態を示す図である。完全に上型5aと下型5bとで管状素材7を押しつぶすと、それぞれの凸部31間では管状素材7が融着するとともに薄肉化する。したがって、凹部25の両側部(両側の凸部31)で管状素材7が封止される。
【0048】
ここで、管状素材7の昇温時に、成形炉3内部を不活性ガス雰囲気としておくことで、図5(b)で封止された空間(凹部25で挟まれた空間の管状素材7)内部は、加熱状態の不活性ガスが封止されることとなる。なお、不活性ガスを用いずに空気その他のガスを封止することもできる。
【0049】
この状態で、図6に示すように、減圧装置15によって成形炉3内部を減圧とする。成形炉3内が真空となることで、成形型5の周囲が減圧されて、管状素材7の封止された空間が膨張する(図中矢印E方向)。膨張した管状素材7は、凹部25の内面に押し付けられて、凹部25の形状に成形される。
【0050】
凹部25の形状に成形された後、前述の通り、成形炉3内の温度を降温して、膨張した形状の封止体を固化させる。さらに安定化処理を施した後冷却される。
【0051】
冷却後、図7に示すように、成形型5が開かれて、内部に成形された中空封止体33が取り出される。この際、凹部25以外で押圧されて潰されていた部位(凸部31同士でつぶされていた部位や端部)は、厚みが薄いバリ状になっており、容易に除去することができる。また、除去された材料は、再度利用することもできる。
【0052】
以上、本発明によれば、容易に任意の形状の中空封止体を成形することができる。例えば、球形、円筒形、四角等の中空封止体を大量に製造することができる。また、使用する管状素材のサイズと成形型によって任意の大きさ、任意の肉厚の中空封止体を成形することもできる。例えば、2mmΦの管体を用いれば、2mm以上の中空封止体を成形することができる。
【0053】
また、中空封止体の内部が減圧状態(略真空)にすることができるため、断熱特性にも優れる中空封止体を得ることができる。また、完全に密閉された中空封止体を成形することができるため、液体中で用いても、内部に液体が浸入することがない。
【0054】
また、本発明によれば、従来加工が困難であったガラス中空封止体であっても、容易に成形することが可能である。このようなガラス中空封止体は、樹脂製の中空封止体に対して、その使用温度も高く、強度にも優れ、断熱特性(熱伝導率が0.09W/mK程度)にも優れる。この際、成形型5をカーボン製とすることにより、ガラス製の中空封止体であっても離型性に優れ、耐熱性にも優れる。このため、ガラスの軟化点まで昇温しても問題がなく、メンテナンスフリーで繰り返し使用することが可能である。
【0055】
また、成形型5には、溝23が形成されるため、管状素材7の設置ずれがなく、また、効率良く管状素材7を加熱することができる。また、成形型5にはピンおよびガイド孔が形成されるため、位置ずれの恐れがなく、管状素材7の変形時にもまっすぐに上型5aを下型5b方向に移動させることができる。
【0056】
また、管状素材7は、上型5aから一定の荷重で押さえられ、管状素材7の軟化に伴って押圧されて潰されるため、過剰な荷重によって軟化前に管状素材7が破損することがなく、また、複雑な押圧機構が不要である。
【0057】
また、成形後、急激に冷却せずに、軟化温度未満の温度所定時間保持されるため、急激な温度変化による割れや変形の恐れがない。
【0058】
次に、本発明の中空封止体を用いた利用例を説明する。図8(a)は中空封止体40を示す斜視図である。中空封止体40は、ガラス製の中空封止体であり、断面が略U字状の凹溝41を有する部材である。
【0059】
図8(b)は、中空封止体40を床暖房パネルとして使用する例を示す断面図である。構造材であるパーティクルボード43には、温水の回路に沿って溝49が形成される。溝49には、中空封止体40が設置される。中空封止体40の凹溝41には、伝熱板等を介して銅管47が配置される。さらに銅管47の上面側は金属板45で被覆される。
【0060】
銅管47には温水が流される。温水の熱は、伝熱板等を介して床暖房パネルの上面側に伝達される。一方、温水の熱が床暖房パネルの下方に伝達されると、熱のロスとなるため、銅管47の下方側へは断熱される。中空封止体40が真空中空ガラスであれば、その熱伝導率は0.09W/mK程度であるため、中空封止体40の凹溝41に銅管47を配置することで、銅管47からの熱の逃げを抑制することができる。すなわち、構造材であるパーティクルボード(熱伝導率は0.15W/mK程度)のみの場合よりも、より確実に断熱することができる。したがって、より効率のよい床暖房パネルを得ることができる。
【0061】
また、図9に示すように、断熱構造体53として用いることもできる。まず、図9(a)に示すように、本発明の方法で成形された例えばガラス製の球形の中空封止体50を成形型51に充填する。成形型51は例えばカーボン製である。
【0062】
中空封止体50を成形型51に充填した状態で、軟化点程度の温度まで昇温すると、中空封止体50同士が溶着する。したがって、図9(b)に示すように、複数の中空封止体50が溶着された断熱構造体53を得ることができる。断熱構造体53は、強度および断熱性に優れるため、種々の断熱構造に用いることができる。この際、接着剤等を用いることなく断熱構造体53が構成されるため、高温でも十分な強度を得ることができる。
【0063】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0064】
1………中空封止体製造装置
3………成形炉
5………成形型
5a………上型
5b………下型
7………管状素材
9………温度調整部
11………制御部
13………不活性ガス供給部
15………減圧装置
17………バルブ
19………配管
21………縁部
23………溝
25………凹部
27………ピン
29………ガイド孔
31………凸部
33、40、50………中空封止体
41………凹溝
43………パーティクルボード
45………金属板
47………銅管
49………溝
51………成形型
53………断熱構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空封止体の製造方法であって、
製造する中空封止体の形状に応じた凹部を少なくとも一方に有する一対の成形型の間に管状素材を配置し、
前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温して、前記成形型の前記凹部の両側部で前記管状素材の一部を押圧して封止し、
前記成形型の周囲を減圧することで、前記凹部の内部で前記管状素材を膨張させて前記凹部の形状に成形し、冷却固化することを特徴とする中空封止体の製造方法。
【請求項2】
少なくとも一方の前記成形型の両側部には縁部が設けられ、前記縁部には、前記管状素材の断面形状に応じた形状の溝が形成され、前記凹部は、両側部の前記溝の間に設けられることを特徴とする請求項1記載の中空封止体の製造方法。
【請求項3】
前記管状素材の昇温時に、前記成形型の周囲には不活性ガスが充填されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の中空封止体の製造方法。
【請求項4】
一方の前記成形型に前記管状素材を設置した状態で、他方の成形型は、前記管状素材に対して、一定の荷重を付与するように設置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の中空封止体の製造方法。
【請求項5】
前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温し、前記成形型の周囲を減圧して前記管状素材を膨張させた後、前記管状素材の軟化温度未満の温度であって常温よりも高い温度まで除冷し、当該温度で所定時間保持することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の中空封止体の製造方法。
【請求項6】
前記管状素材はガラス製であり、前記成形型はカーボン製であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の中空封止体の製造方法。
【請求項7】
中空封止体の製造装置であって、
製造される中空封止体の形状に応じた凹部を少なくとも一方に有する一対の成形型と、
前記成形型を設置可能な成形炉と、
前記成形炉の温度を制御する温度調整部と、
前記成形炉内を減圧することが可能な減圧装置と、
を具備し、
管状素材が挟み込みこまれた前記成形型が前記成形炉内に配置された状態で、前記温度調整部により前記成形炉を前記管状素材の軟化温度以上の温度に昇温することで前記管状素材を軟化させた後、前記減圧装置は前記成形型の周囲を減圧し、前記管状素材を膨張させて前記凹部の形状に成形することが可能であることを特徴とする中空封止体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−228819(P2012−228819A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98341(P2011−98341)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】