説明

中空状SiO2を含有する分散液、塗料組成物及び反射防止塗膜付き基材

【課題】塗料組成物とした場合、屈折率傾斜を有する低屈折率塗膜を形成することより反射防止性能が高くかつ彩度の低い反射防止膜を得ることができる、中空状SiO2の分散液を提供する。
【解決手段】中空状SiO2の1次微粒子の凝集体からなる凝集体粒子を分散媒体に分散してなり、その平均粒子径が60〜400nmの範囲にあり、かつ、当該平均粒子径が、当該シリカの平均1次粒子径の1.5倍以上の範囲にあるシリカ微粒子を分散液とする。当該分散液を含む塗料組成物とする場合、マトリックス成分が金属酸化物の前駆物質、又は有機樹脂からなることが好ましい。この塗料組成物を基材に塗布することにより反射防止塗膜付き基材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止性能が高くかつ彩度の低い反射防止膜を得るための中空状SiO2を含有する分散液及びこれからなる塗料組成物、並びに当該組成物を塗布して得られた反射防止塗膜付き基材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶、プラズマ、有機EL等ディスプレイ技術の高精細化に伴い、モニター、大型TV、パソコン等に使用するFPDに関し、反射防止性能が高くかつ彩度の低い反射防止膜の材料が強く求められている。
【0003】
従来、反射防止材料としては、低屈折率の中空状SiO2微粒子が用いられており、単層膜で反射防止性能が発現可能であるため彩度が低く有用な材料とされている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、従来の中空状SiO2微粒子は、粒子径が小さく、球状であり、これを塗料組成物に配合した場合、得られる塗膜中で、当該シリカ微粒子が均一に分散して存在するために、塗膜中に屈折率傾斜をつけ、さらに彩度を低くすることは困難であった。
【0004】
また、従来の方法により得られた中空状SiO2微粒子は、その彩度を低くするため粒子径を大きくして屈折率に傾斜をつけようとすると、当該中空状SiO2微粒子の外殻の厚みが増して透明性が低下し、一方、外殻の厚みを薄くすると、空孔が大きいために塗膜の強度が不十分であるという問題が生じるものであった。
【0005】
【特許文献1】特開2001−233611号公報(特許請求の範囲(請求項1〜11)、〔0002〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、塗料組成物とした場合、屈折率傾斜を有する低屈折率塗膜を形成することより反射防止性能が高く、かつ、彩度の低い反射防止膜を得ることができる、中空状SiO2を含有する分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(I)本発明に従えば、以下の中空状SiO2を含有する分散液が提供される。
〔1〕
中空状SiO2の1次微粒子(以下「中空状SiO21次粒子」という。)の凝集体からなる凝集体粒子(以下「中空状SiO2凝集体粒子」という。)が、分散媒体中に分散した中空状SiO2を含有する分散液であって、当該凝集体粒子の平均凝集粒子径が60〜400nmの範囲にあり、かつ、当該平均凝集粒子径は、当該SiO2の平均1次粒子径の1.5倍以上の範囲にあることを特徴とする中空状SiO2を含有する分散液。
【0008】
〔2〕
前記中空状SiO2の1次微粒子の平均1次粒子径が5〜50nmの範囲にある〔1〕に記載の中空状SiO2を含有する分散液。
【0009】
〔3〕
前記凝集体粒子は、前記中空状SiO21次微粒子が2〜10個集合した、非球形状の凝集体粒子である〔1〕又は〔2〕に記載の中空状SiO2を含有する分散液。
【0010】
(II)また、本発明に従えば、以下のシリカ微粒子分散液からなる塗料組成物が提供される。
〔4〕
〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の中空状SiO2を含有する分散液を含む塗料組成物。
【0011】
〔5〕
〔4〕に記載の塗料組成物にマトリックス成分の溶液を当該マトリックス成分の固形分質量が前記中空状SiO2の全固形分質量の0.1〜10倍の範囲で混合してなる塗料組成物。
【0012】
〔6〕
前記マトリックス成分が金属酸化物の前駆物質、及び/又は有機樹脂からなる〔5〕に記載の塗料組成物。
【0013】
〔7〕
前記金属酸化物がAl23、SiO2、SnO2、TiO2、及びZrO2より選ばれる1種または2種以上の混合物である〔6〕に記載の塗料組成物。
【0014】
〔8〕
前記有機樹脂が紫外線硬化型有機樹脂である〔6〕に記載の塗料組成物。
【0015】
(III)また、本発明によれば、以下の反射防止塗膜付き透明基材が提供される。
〔9〕
〔4〕〜〔8〕のいずれかに記載の塗料組成物を基材に塗布して得られた反射防止塗膜付き基材。
【0016】
〔10〕
可視光波長領域において、反射率の最小値が2%以下であり、かつ反射率の最大値と最小値の差が1%以下である〔9〕に記載の反射防止塗膜付き基材。
【0017】
〔11〕
前記基材が透明基材である〔9〕又は〔10〕に記載の反射防止塗膜付き基材。
【発明の効果】
【0018】
本発明の中空状SiO2を含有する分散液中の中空状SiO2凝集体粒子は、中空状SiO21次粒子が集合して形成され、それぞれの空孔(空洞)が細分化されているため、塗膜中に配合した場合比較的薄い外殻の厚みでも得られる塗膜の強度が高い。また、本発明の中空状SiO2凝集体粒子は、比較的平均凝集粒子径が大きいため、マトリックス成分と混合して塗膜を形成した場合基材に近いほど当該マトリックス成分の存在比が高い塗膜が得られる。このように、塗膜中に屈折率傾斜がつくことで彩度の低い反射防止能の高い膜を得ることができる。さらにまた、本発明により得られる反射防止膜は透明性が高く、膜強度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、中空状SiO2凝集体粒子が、分散媒体中に分散した中空状SiO2を含有する分散液である。
【0020】
本発明の中空状SiO2凝集体粒子は、SiO2外殻の内部に完全な空隙を有する中空状SiO21次粒子が集合して形成され、比較的平均凝集粒子径の大きな低屈折粒子とみなすことができる。当該中空状SiO2凝集体粒子は、中空状SiO21次粒子の集合体であるため、空孔が細分化されており比較的薄い外殻の厚みでも、フィラーとして塗膜に配合した場合、得られる塗膜の強度を高くすることができるので好ましい。また、当該凝集体粒子は比較的平均凝集粒子径が大きいため、マトリックス成分(バインダ)と混合して塗料組成物とし、基材上に塗布した場合、当該基材に近いほど当該マトリックス成分が多く存在し、大気側に中空状SiO2凝集体粒子の存在比が高い塗膜を形成することができ、このように塗膜中に屈折率傾斜が形成されるため、彩度の低い反射防止膜を得ることができる。
【0021】
この点、従来の中空状SiO2微粒子は、粒子径が小さく、球状であり、配合した塗膜中で均一に分散して存在するために、塗膜中で厚み方向に屈折率傾斜をつけてより彩度を低くすることが困難であった。また、彩度を低くするために粒子径を大きくして屈折率に傾斜をつけようとすると、中空状SiO2微粒子の外殻の厚みが増して透明性を損ねたり、外殻の厚みを薄くすると空孔が大きいために塗膜の強度が不十分であるといった問題が生じていたことと、著しい対照をなしている。
【0022】
反射防止性能については、反射防止膜中の凝集体粒子を構成する中空状SiO21次粒子の屈折率が大きく影響し、当該中空状SiO21次粒子の屈折率は空洞の大きさとSiO2外殻の厚みによって決まる点から、本発明の中空状SiO2凝集体粒子は、特に反射防止材料として有用であり、溶媒に分散して基材に塗布することで高い反射防止性能を有する塗膜を得ることができる
【0023】
本発明の中空状SiO2凝集体粒子は、このように、SiO2外殻の内部に完全な空隙を有し、高空孔率であり、かつ、低屈折率、低誘電率であるため、反射防止材料以外にも、光学フィルター、断熱材、低誘電率材、ドラッグデリバリー等の用途に好適に用いることができる。
【0024】
(中空状SiO2凝集体粒子の製造)
本発明の中空状SiO2凝集体粒子は、一般的に、外殻がSiO2であるコア−シェル型微粒子の当該コアを除去することによって製造されることが好ましい。
【0025】
(コア粒子の種類、形状、粒径等)
コア粒子としては、熱、酸、または光によって溶解(又は分解、昇華)するものが好ましく使用され、例えば、界面活性剤ミセル、水溶性有機重合体、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱分解性有機重合体微粒子;アルミン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛等の酸溶解性無機微粒子;硫化亜鉛、硫化カドミウム等の金属カルコゲナイド半導体及び酸化亜鉛等の光溶解性無機微粒子等より選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0026】
また、当該コア粒子としては、その粒子形状は特に限定されるものではなく、例えば球状、紡錘形状、棒状、無定型、円柱状、針状、扁平状、鱗片状、葉状、チューブ状、シート状より選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0027】
また、コア粒子が単分散であると、中空状SiO2凝集体粒子が得られにくいので好ましくなく、コア微粒子が2〜10個集合した集合体を用いることが好ましい。
この場合コア粒子の平均凝集粒子径は、得られる中空状SiO2凝集体粒子の大きさに影響し、50〜350nmであることが好ましい。50nm未満では、得られた中空状SiO2凝集体粒子からは彩度の低い反射防止膜が得られにくく、350nmを超えると、当該中空状SiO2凝集体粒子を配合した塗膜の透明性が不十分となる恐れがあるため好ましくない。
【0028】
なお、コア粒子の平均1次粒子径は、得られる中空状SiO2凝集体粒子の当該空洞の大きさ及びコアを溶解する際の溶解速度を最適に維持する観点から、5〜200nmの範囲であることが好ましい。当該粒径が、5nm未満では当該中空状SiO2凝集体粒子の空洞が小さく塗膜中に配合した場合その反射防止性能が不十分であり、200nmを超えるとコアの溶解速度が不十分となり、完全な中空状粒子が得られ難くなるため好ましくない。
【0029】
当該コア微粒子を分散媒体に分散させるには、種々の方法を採用することができ、例えば溶媒中で合成する方法、コア微粒子粉末に、後記するような分散媒体及び分散剤を加えてボールミル、ビーズミル、サンドミル、ホモミキサー、ペイントシェーカー等の分散機で解膠する方法等が挙げられる。かくして得られたコア微粒子分散液の固形分濃度は、50質量%以下の範囲であることが好ましい。固形分濃度が50質量%を超えると分散液の安定性が低下するため好ましくない。
【0030】
(SiO2前駆物質)
中空状SiO2凝集体粒子を得るには、まず初めに、外殻がSiO2であるコア−シェル型微粒子及び/又はコア−シェル型微粒子凝集体(クラスタ)を製造する。
すでに述べたように、ここで凝集体状のコア微粒子を用いた場合、対応するコア−シェル型微粒子の凝集体粒子を得ることができるので好ましい。
【0031】
具体的には、コア微粒子(またはコア微粒子の原料)とSiO2の前駆物質を反応させることによって、又は、コア微粒子の存在下にSiO2の前駆物質を分解反応させて、当該コア微粒子の表面にSiO2の外殻を析出・形成することにより得られる。このようにして、コア−シェル型微粒子を製造する方法は、気相法であっても液相法であってもよい。
【0032】
気相法による方法では、コア微粒子の原料と金属Si等のSiO2原料にプラズマを照射することによってコア−シェル型微粒子を製造することができる。
【0033】
一方、液相法による方法では、コア微粒子の存在下に、酸、アルカリ等の加水分解触媒を添加することでSiO2前駆物質を加水分解して当該コア微粒子の周り(外表面)に析出させることができる。SiO2前駆物質は、アルカリ条件において3次元的に重合しシェルを形成し易い。すなわち、pHが高いほどSiO2前駆物質等のケイ素化合物の加水分解・重縮合反応速度が速いのでSiO2外殻が短時間で形成できるため好ましい。したがって、溶液のpHは7以上、より好ましくはpH8以上、最も好ましくはpH=9〜11の範囲である。pHが11を超えると、加水分解速度があまり速すぎて、生成されるSiO2自体の凝集が生じ、ZnO微粒子外表面への均質な外殻の形成が困難となるため好ましくない。また、当該形成されたSiO2外殻を有するコア−シェル型微粒子は、これをさらに、熱を加えて熟成させ、当該外殻をより緻密にすることもできる。
【0034】
SiO2の前駆物質としては、ケイ酸、ケイ酸塩、及びケイ酸アルコキサイドより選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられ、それらの加水分解物または重合物であってもよい。
具体的には、ケイ酸としては、アルカリ金属ケイ酸塩を酸で分解した後、透析する方法、アルカリ金属ケイ酸塩を解膠する方法、アルカリ金属ケイ酸塩を酸型のカチオン交換樹脂と接触させる方法等によって得られるケイ酸;ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のアルカリケイ酸塩、アンモニウムケイ酸塩、テトラエチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩、エタノールアミン等のアミン類のケイ酸塩が挙げられる。
【0035】
また、ケイ酸アルコキサイドとしては、ケイ酸エチルの他、パーフルオロポリエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基等のフッ素含有官能基を含むケイ酸アルコキサイド、ビニル基及びエポキシ基より選ばれる官能基の1種または2種以上を含有するケイ酸アルコキサイドでもよい。パーフルオロポリエーテル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、例えばパーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン;パーフルオロアルキル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、パーフルオロエチルトリエトキシシラン;ビニル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン;エポキシ基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のケイ酸アルコキサイドが挙げられる。
【0036】
なお、コアとして、酸化亜鉛等の酸溶解性無機微粒子を使用する場合には、SiO2の前駆物質を混合する際のpHは8以下にすると、例えばZnO等が溶解するので、8を超える範囲であることが好ましい。
【0037】
(分散媒体、固形分濃度等)
コア−シェル型微粒子分散液を製造する際、コアのZnO粒子等を分散させ、かつ、SiO2の前駆物質の分解反応が行われる分散媒体としては、特に限定するものではなく、例えば、水;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロペンタノール、シロクペンタンジオール、シクロヘキサノール等のアルコール類;
【0038】
アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類;
グライム、ジグライム、イソプロピルエーテル、イソブチルエーテル、メチルイソプロピルエーテル、アニソール、テトラハイドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;
【0039】
酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等のエステル類;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;
【0040】
N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアミド、2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等の含窒素化合物類;
ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄化合物類等が好ましいものとして挙げられる。
【0041】
ただし、SiO2前駆物質の加水分解・重縮合・外殻形成工程においては、水の存在が必須であるため、全溶媒中において、5〜100質量%の水を存在せしめることが必要である。水の含有量が5質量%未満であると反応が充分進行しないため好ましくない。なお、分散媒体中のSiO2前駆物質中のSi量に対して、少なくとも化学量論以上の水を系内に存在させることが必要である。
【0042】
また、コア−シェル型微粒子分散液を製造する際の固形分濃度は、30質量%以下、0.1質量%以上の範囲であることが好ましく、20質量%以下、1質量%以上の範囲であることがより好ましい。30質量%を超えると微粒子分散液の安定性が低下するため、好ましくなく、0.1質量%未満では、得られる中空SiO2凝集体粒子の生産性が非常に低くなり、好ましくない。
【0043】
また、コア−シェル型微粒子分散液を製造する際にイオン強度を高めてSiO2の前駆物質からシェルを形成し易くするために、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び水酸化マグネシウム等の電解質を添加してもよく、これらの電解質を用いてpHを調整することができる。
【0044】
(コア微粒子の溶解)
次に、コア−シェル型微粒子のコア微粒子を溶解又は分解させることによって中空状SiO2の粒子が得られる。
【0045】
コア−シェル型微粒子のコア微粒子からコア微粒子を溶解、又は分解させるには、すでに述べたとおり、種々の手段を採用することができ、例えば、熱による分解、酸による分解、光による分解から選ばれる1種又は2種以上の方法が挙げられる。
【0046】
コア微粒子が熱分解性有機樹脂の場合、気相もしくは液相中で加熱することによってコア微粒子を除去することができる。加熱温度は200〜1000℃の範囲とすることが好ましい。200℃未満ではコア微粒子が残存するおそれがあり、1000℃を超えるとSiO2が溶融するおそれがあるため好ましくない。
【0047】
コア微粒子が酸溶解性無機化合物の場合、気相もしくは液相中で酸もしくは酸性カチオン交換樹脂を加えることによってコア微粒子を除去することができる。酸としては、特に限定するものではなく、無機酸であっても、有機酸であってもよい。無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、亜硝酸等があげられ、有機酸としては、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。
【0048】
また、液状の酸又は酸溶液の代わりに、酸性カチオン交換樹脂を用いることも好ましい。
酸性カチオン交換樹脂としては、カルボン酸基を有するポリアクリル樹脂系またはポリメタクリル樹脂系のものでもよいが、より強酸性であるスルホン酸基を有するポリスチレン系のものがより好ましい。
【0049】
コア微粒子が光溶解性無機化合物の場合、気相もしくは液相中で光を照射することによってコア微粒子を除去することもできる。光の波長はよりエネルギーの高い380nm以下の紫外線が好ましい。
【0050】
以上の方法においてコア微粒子が除去されたかどうかは、透過型電子顕微鏡により観察し、又は、得られた微粒子の元素分析を行うことで確認することができる。
【0051】
(中空状SiO2凝集体粒子の特性)
以上のようにして得られた本発明における中空状SiO2凝集体粒子(クラスタ)は、すでに述べたように、中空状SiO2の1次微粒子が複数又は多数結合して凝集体粒子を構成し、これが分散媒体中に分散しているものである。当該凝集体粒子の平均粒子径は、その平均1次粒子径の1.5倍以上、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは10倍以上、30倍以下である。
【0052】
本発明における中空状SiO21次微粒子の平均1次粒子径は5〜50nmの範囲にあるものが好ましい。
また前記凝集体粒子は、前記中空状SiO21次微粒子が2〜10個集合した、非球形状の凝集体粒子であるものが好ましい。
【0053】
粒子形状は特に限定するものではなく、球状、棒状、紡錘形状、柱状、チューブ状、シート状より選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
当該中空状SiO2凝集体粒子の分散液中における平均凝集粒子径は、60〜400nmの範囲であり、60〜200nmであることが好ましい。60nm未満では彩度の低い反射防止膜が得られにくく、400nmを超えると塗膜の透明性が不十分となるため、好ましくない。
【0054】
中空状SiO21次粒子の外殻の厚みは、1〜20nmの範囲であり、かつ、平均1次粒子径の1/5〜1/3であることが好ましい。外殻の厚みが1nm未満で、かつ、当該粒径の1/5未満であると、ZnO微粒子を溶解した際に中空形状を保つことができず、20nmを超え、かつ、当該粒径の1/3超であると、中空状SiO2凝集体粒子を含む塗膜の透明性が不十分となるため好ましくない。
【0055】
本発明の中空状SiO2を含有する粒子分散液中に分散している固形分濃度は、50質量%以下、0.1質量%以上の範囲、好ましくは30〜0.5質量%、さらに好ましくは20〜1質量%である。特に50質量%を超えると、分散液の安定性が低下するため好ましくない。
【0056】
中空状SiO2を含有する分散液の分散媒体には、すでに述べたように水、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物等の有機溶媒を用いることができる。
【0057】
(塗料組成物)
以上のごとくして得られた、本発明の分散媒体に中空状SiO2が分散した、中空状SiO2を含有する分散液は、これをそのまま、又はマトリックス成分や塗料組成物を形成する場合の通常の配合剤を加えて、塗料組成物を形成することができる。
【0058】
すなわち、当該中空状SiO2を含有する分散液は、これをそのまま、または種々の配合材を加えて塗料組成物として、基材に塗布することで反射防止塗膜付き基材を得ることができる。
【0059】
本発明の塗料組成物とする場合には、当該中空状SiO2を含有する分散液に、マトリックス成分(バインダ)を混合することで塗膜の硬度を向上させることができる。マトリックス成分の固形分量は、中空状SiO2凝集体粒子の全固形分量の0.1〜10倍の範囲であることが好ましい。0.1倍未満であると塗膜の硬度が不十分であり、10倍を超えると塗膜付き基材の反射防止性能が不十分となる。
【0060】
上記マトリックス成分としては、熱または紫外線によって硬化するものが好ましく、例えば、金属酸化物の前駆物質、及び/又は有機樹脂が挙げられる。
金属酸化物としてはAl23、SiO2、SnO2、TiO2、ZrO2より選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられ、その前駆物質としては、当該金属の金属アルコキサイド及び/又はその加水分解重縮合物等が挙げられ、有機樹脂としては、紫外線硬化型有機樹脂が好ましいものとして挙げられる。例えば、具体的には、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等より選ばれる1種または2種以上の混合物が挙げられる。
【0061】
また、マトリックス成分としての金属アルコキサイドとしては、ケイ酸アルコキサイドが好ましく、例えばケイ酸エチルの他、パーフルオロポリエーテル基及び/又はパーフルオロアルキル基等のフッ素含有官能基を含むケイ酸アルコキサイド、ビニル基及びエポキシ基より選ばれる官能基の1種または2種以上を含有するケイ酸アルコキサイドでもよい。パーフルオロポリエーテル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、例えばパーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン;パーフルオロアルキル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、パーフルオロエチルトリエトキシシラン;ビニル基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン;エポキシ基を含有するケイ酸アルコキサイドとしては2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0062】
(界面活性剤等)
本発明の塗料組成物においては、基材への濡れ性を向上させるために界面活性剤を含んでもよく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のいずれのものも使用できる。界面活性剤としては、−CH2CH2O−、−SO2−、−NR−(Rは水素原子又は有機基)、−NH2−、−SO3Y、−COOY(Yは水素原子、ナトリウム原子、カリウム原子又はアンモニウムイオン)の構造単位を有するノニオン性界面活性剤が好ましい。なかでも、塗料組成物の保存安定性を損なうおそれのないことから、−CH2CH2O−の構造単位をもつノニオン系の界面活性剤が特に好ましい。
【0063】
ノニオン系の界面活性剤としては、例えば、アルキルポリオキシエチレンエーテル、アルキルポリオキシエチレン−ポリプロピレンエーテル、脂肪酸ポリオキシエチレンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトールエステル、アルキルポリオキシエチレンアミン、アルキルポリオキシエチレンアミド、ポリエーテル変性のシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0064】
(固形分濃度等)
本発明による塗料組成物の溶媒は、中空状SiO2を含有する分散液の分散媒体である上記水及びアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類、含硫黄化合物類等の有機溶媒を用いることができる。
【0065】
本発明の塗料組成物の固形分濃度は、0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。0.1質量%未満であると反射防止性能を発現するための十分な厚さの塗膜を形成し難く、50質量%を超えると塗料組成物の安定性が低下するため好ましくない。
【0066】
本発明の塗料組成物には、さらに無機物及び/又は有機物からなる各種塗料用配合剤が配合され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御、撥水、撥油、指紋除去、滑り性等より選ばれる1種または2種以上の機能が付与されてもよい。
【0067】
一方本発明の塗料組成物には、塗膜に求められる機能に応じて、通常使用される添加剤、例えば、泡立ち防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、粘度調整剤、酸化防止剤、防カビ剤等を適宜添加することができる。また、塗膜を目的に応じた色に着色するため、塗料用として通常使用される種々の顔料、例えばチタニア、ジルコニア、鉛白、ベンガラ等を配合することも可能である。
【0068】
(塗膜形成)
本発明においては、中空状SiO2を含有する分散液を含む上記塗料組成物を基材上に塗布、乾燥することにより反射防止用塗膜、すなわち低折率性塗膜を形成することができる。
【0069】
本発明による反射防止用塗膜の膜厚は、10〜3000nmの範囲であることが好ましい。10nm未満であると反射防止性能が不十分であり、3000nmを超えるとクラックが入りやすくなったり、干渉縞が発生したり、傷が目立ちやすくなるおそれがあるため、好ましくない。
【0070】
塗膜の反射率は、分光光度計で測定することができるが、本発明による反射防止用塗膜は、波長380〜780nmの可視光領域において、反射率の最小値が2%以下であることが好ましく、かつ、反射率の最大値と最小値の差が1%以下であることが好ましい。反射率の最小値が2%超であると、低屈折率性塗膜としての機能が不充分となるおそれがある。また反射率の最大値と最小値の差が1%超であると、彩度が高くなりすぎ好ましくない。
【0071】
また、本発明により得られる反射防止用塗膜は、波長550nmでの反射率が極小値をとるように膜厚を調整することが好ましい。なお、膜厚の調整は、膜厚=λ/4n(ただし、λは光の波長、nは膜の屈折率)により行うことができる。
【0072】
塗膜の透明性は、JIS K−7150の規格に則り、ヘイズ値で評価することが好ましい。塗膜のヘイズ値は、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。ヘイズ値が1%超であると、透過率が低く透明性が悪いので好ましくない。 本発明による塗膜の表面には、無機物及び/又は有機物からなる特定の機能を有する塗膜がさらに形成され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御、撥水、撥油、指紋除去、滑り性等より選ばれる1種または2種以上の機能が付与されてもよい。
【0073】
(基材)
本発明の塗料組成物を塗布する基材は、目的に応じて任意のものが使用可能であり、特に限定するものではない。例えば特に反射防止用塗膜形成を目的とする場合は、基材は透明又は不透明のどちらでもよいが、透明な基材であることがより好ましく、例えばガラス、有機樹脂基材が挙げられる。基材の形状は、板状でもフィルム状であってもよく、また、基材の形状は平板に限らず、全面又は一部に曲率を有していてもよい。
【0074】
基材を形成する有機樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、トリアセチルセルロース等より選ばれる1種または2種以上の混合物が好ましいものとして挙げられる。
【0075】
なお、これら基材には、あらかじめ無機物及び/又は有機物からなる塗膜が形成され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御等より選ばれる1種または2種以上の機能が付与されていてもよい。さらにまた、本発明の塗料組成物が塗布されてなる中空状SiO2凝集体粒子を含む塗膜の上に無機物及び/又は有機物からなる機能性の塗膜が形成され、ハードコート、着色、導電、帯電防止、偏光、紫外線遮蔽、赤外線遮蔽、防汚、防曇、光触媒、抗菌、蓄光、電池、屈折率制御、撥水、撥油、指紋除去、滑り性等より選ばれる1種または2種以上の機能が付与されてもよい。
【0076】
(塗布方法)
本発明の塗料組成物は、それ自身公知の方法で塗布することができる。例えば、はけ塗り、ローラー塗布、手塗り、刷毛塗り、ディッピング、回転塗布、浸漬塗布、各種印刷方式による塗布、カーテンフロー、バーコート、ダイコート、グラビアコート、マイクログラビアコート、リバースコート、ロールコート、フローコート、スプレーコート、ディップコート等が挙げられる。
【0077】
また、塗膜の機械的強度を高める目的で、必要に応じて、加熱や紫外線や電子線等による照射を行ってもよい。当該加熱は基材の耐熱性を加味して決定すればよいが、60〜700℃が好ましい。
【0078】
本発明の塗料組成物を塗布するにあたり、有機樹脂基材に対して特に前処理は必要としないが、塗膜の密着性をより高める目的で、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、オゾン処理等の放電処理、水、酸やアルカリ等の化学処理、又は 研磨剤を用いた物理的処理を施すことができる。
【実施例】
【0079】
以下に、本発明の実施例(例1〜3)及び比較例(例4)をあげて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこの実施例に限定されるものではない。
〔例1〕(粒子=中空状SiO2凝集体粒子、マトリックス=SiO2、基材=ガラスの場合)
(1)容量200mlのガラス製反応容器に、エタノール60g、ZnO微粒子クラスタ水分散液(境化学工業社製、製品名:NANOFINE−50、平均1次粒子径20nm、平均凝集粒子径100nm、固形分濃度10質量%)30g、テトラエトキシシラン(SiO2換算固形分濃度29質量%)10gを加えた後、アンモニア水溶液を添加し、pH=10として、20℃で6時間撹拌して、コア−シェル型微粒子分散液(固形分濃度6質量%)の100gを得た。
【0080】
(2)得られたコア−シェル型微粒子分散液に強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名:ダイヤイオン、総交換容量2.0(meq/ml)以上)を100g加え、1時間撹拌してpH=4となった後、ろ過により強酸性カチオン交換樹脂を除去することで、中空状SiO2を含有する分散液100gを得た。当該中空状SiO21次粒子の外殻の厚みは10nm、空孔径は20nmであった。また、当該中空状SiO2微粒子は凝集体粒子であり、平均凝集粒子径100nm、固形分濃度3質量%であった。
【0081】
(3)容量200mlのガラス製反応容器に、得られた中空状SiO2凝集体粒子を含有する分散液23g、エタノール65g、マトリックス成分としてテトラエトキシシランを硝酸で加水分解して得られるケイ酸オリゴマー溶液(固形分濃度3質量%、エタノール溶媒)10g、界面活性剤溶液(日本ユニカー社製、商品名:L−77、固形分濃度1質量%、エタノール溶媒)2gを加え、10分間撹拌して、反射防止用塗料組成物を得た。
【0082】
(4)得られた中空状SiO2凝集体粒子及び反射防止用塗料組成物については以下のようにして評価試験を行った。
(A)中空状SiO2凝集体粒子
当該中空状SiO2凝集体粒子に関し、以下の評価を行った。評価結果は表1に示す。
(i)中空状SiO21次粒子の平均1次粒子径、形態及びコアの残存は透過型電子顕微鏡(日立社製、型式:H−9000)により観察した。
(ii)中空状SiO2凝集体粒子の平均凝集粒子径は、動的光散乱法粒度分析計(日機装社製、型式:マイクロトラックUPA)により測定した。
【0083】
(B)塗料組成物はこれを塗布して得られる塗膜により評価した。
当該塗料組成物を、エタノール拭きした基板(100mm×100mm、厚さ3.5mm)(なお、基板の屈折率は、ガラス基板の場合、1.52、PMMA基板の場合、1.58とした。)上に塗布し、回転数200rpmで60秒間スピンコートして均一化した後、200℃で10分間乾燥し、厚さ100nmの塗膜を形成し、これを測定サンプルとした。塗膜の形成されたサンプルについて以下の評価を行った。結果を表2に示した。
【0084】
(i)反射率評価として、得られた塗膜の反射率を分光光度計(日立製作所社製、型式:U−4100)により測定した。
(ii)外観評価として、得られる塗膜の塗布ムラを目視により判断した。塗布ムラがなく外観上良好なものを○、塗布ムラがあり実用的でないものを×として評価した。
【0085】
(iii)透明性評価として、ヘイズ値により評価を行った。ヘイズ測定はJIS K−7105に則り、評価を行った。基板上の塗膜のヘイズ値をヘーズコンピューター(スガ試験機社製、型名:HGM−3DP)で測定した。
(iv) 耐磨耗性評価として、サンプルの塗膜表面を、テーパー摩耗試験機で100回往復磨耗した後、塗膜の剥離状況を肉眼で観察した。塗膜が全く剥がれない場合を○、一部が剥がるものの半分以上の面積が残っている場合を△、半分を超えて剥離する場合を×とした。
【0086】
〔例2〕(粒子=中空状SiO2凝集体粒子、マトリックス=TiO2、基材=ガラス)
(1)例1と同様にして操作を行い、中空状SiO2凝集体粒子の分散液(平均凝集粒子径100nm、固形分濃度3質量%)100gを得た。また当該中空状SiO21次粒子の外殻の厚みは10nm、空孔径は20nmであった。この中空状SiO2を含有する分散液の粒子測定結果を表1に示す。
【0087】
(2)容量200mlのガラス製反応容器に、得られた中空状SiO2凝集体粒子を含有する分散液23g、エタノール65g、チタニウムイソプロポキシドを硝酸で加水分解して得られるチタン酸オリゴマー溶液(固形分濃度3質量%、エタノール溶媒)10g、界面活性剤溶液(日本ユニカー社製、商品名:L−77、固形分濃度1質量%、エタノール溶媒)2gを加え、10分間撹拌して、反射防止用塗料組成物を得た。この塗料組成物について、例1と同様にして当該基板上に塗膜を形成し、これを評価した。結果を表2に示す。
【0088】
〔例3〕(粒子=中空状SiO2凝集体粒子、マトリックス=PMMA、基材=ガラス)
(1)例1と同様にして操作を行い、中空状SiO2凝集体粒子を含有する分散液(平均凝集粒子径100nm、固形分濃度3質量%)100gを得た。また当該中空状SiO21次粒子の外殻の厚みは10nm、空孔径は20nmであった。この中空状SiO2を含有する分散液の測定結果を表1に示す。
【0089】
(2)容量200mlのガラス製反応容器に、得られた中空状SiO2凝集体粒子分散液23g、エタノール65g、マトリックス樹脂としてメチルメタクリレートモノマー溶液(固形分濃度3%、光開始剤0.1%、酢酸ブチル、イソプロピルアルコール溶媒)10g、界面活性剤溶液(日本ユニカー社製、商品名:L−77、固形分濃度1質量%、エタノール溶媒)2gを加え、10分間撹拌して、反射防止用塗料組成物を得た。
【0090】
この塗料組成物について、例1と同様にして当該基板上に塗膜を形成し、さらに紫外線を10分間照射して塗膜を硬化させた。これを例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0091】
〔例4〕(コア=アルミン酸ナトリウム+ケイ酸ナトリウム、マトリックス=SiO2、基材=ガラス)
(1)容量200mlのガラス製反応容器に、SiO2微粒子分散液(触媒化成社製、商品名:SI−550、平均粒径5nm、SiO2 濃度20質量%、水溶媒)1g、水19gを加え、混合して80℃に加熱した。
【0092】
この微粒子分散液(pH=10.5)に、ケイ酸ナトリウム水溶液(SiO2固形分濃度1.2質量%)90gとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al23固形分濃度0.8質量%)90gとを同時に添加し反応させSiO2 とAl23を析出させた。添加終了後の、微粒子分散液のpHは12.5であった。反応液を室温まで冷却して、限外濾過膜によってSiO2 −Al23 コア微粒子分散液(固形分濃度20質量%)200gを得た。
【0093】
(2)容量1000mlのガラス製反応容器に、上記コア微粒子分散液5g及び純水17gを加えて98℃に加熱し、ケイ酸ナトリウム水溶液を強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名:ダイヤイオン)で脱アルカリして得られたケイ酸液(SiO2濃度3.5質量%)30gを加えてSiO2を析出させ、反応液を室温まで冷却して、限外濾過膜によってSiO2 −Al23 をコアとする、SiO2で被覆した微粒子分散液(固形分濃度13質量%)500gを得た。
【0094】
(3)次に、純水2167g、強酸性カチオン交換樹脂(三菱化学社製、商品名:ダイヤイオン、総交換容量2.0(meq/ml)以上)を加えて、SiO2 −Al23 コアを溶解除去した。1時間撹拌してpH=4となった後、ろ過により強酸性カチオン交換樹脂を除去することにより、中空状SiO2粒子を含有する分散液(平均凝集粒子径40nm、固形分濃度3質量%)2667gを得た。また当該中空状SiO21次粒子の外殻の厚みは5nm、空孔径は30nmであった。
【0095】
(4)容量200mlのガラス製反応容器に、水65g、得られた中空状SiO2粒子を含有する分散液23g、SiO2オリゴマー溶液(固形分濃度3質量%、エタノール溶媒)10g、界面活性剤溶液(日本ユニカー社製、商品名:L−77、固形分濃度1質量%、エタノール溶媒)2gを加え、10分間撹拌して、反射防止用塗料組成物を得た。
【0096】
この塗料組成物について、例1と同様にして当該基板上に塗膜を形成し、これを評価した。結果を表2に示す。
当該塗膜は特に反射率の最大値が高かった。これはコア微粒子は完全に溶解せず、残存していることが透過型顕微鏡により観察されたことより、十分な反射防止性能が得られなかったためと考えられる。
【0097】
また、当該塗膜は、反射率の最大値と最小値の差が非常に大きく、彩度が高かった(すなわち、塗膜は着色していた。)。すでに述べたように、中空状SiO2粒子を塗膜に配合した場合、塗膜中では単分散であるため、膜の厚み方向に充分な屈折率傾斜が形成されないためであると推定される。
この塗料組成物について、例1と同様にして当該基板上に塗膜を形成し、さらに紫外線を10分間照射して塗膜を硬化させた。これを評価した。結果を表2に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の中空状SiO2を含有する分散液を含む塗料組成物やその塗膜付き基材は、用途としては、自動車ガラス、建築ガラス、ディスプレイガラス、タッチパネルガラス、光学レンズ、太陽電池カバー、光学フィルター、反射防止フィルム、偏光フィルム、断熱フィラー、低屈折率フィラー、低誘電率フィラー、ドラッグデリバリー担持体等種々の産業分野に利用できるものであり、その産業上の利用可能性はきわめて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状SiO2の1次微粒子の凝集体からなる凝集体粒子が、分散媒体中に分散した中空状SiO2を含有する分散液であって、当該凝集体粒子の平均凝集粒子径が60〜400nmの範囲にあり、かつ、当該平均凝集粒子径は、当該SiO2の平均1次粒子径の1.5倍以上の範囲にあることを特徴とする中空状SiO2を含有する分散液。
【請求項2】
前記中空状SiO2の1次微粒子の平均1次粒子径が5〜50nmの範囲にある請求項1に記載の中空状SiO2を含有する分散液。
【請求項3】
前記凝集体粒子は、前記中空状SiO21次微粒子が2〜10個集合した、非球形状の凝集体粒子である請求項1又は2に記載の中空状SiO2を含有する分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の中空状SiO2を含有する分散液を含む塗料組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の塗料組成物にマトリックス成分の溶液を当該マトリックス成分の固形分質量が前記中空状SiO2の全固形分質量の0.1〜10倍の範囲で混合してなる塗料組成物。
【請求項6】
前記マトリックス成分が金属酸化物の前駆物質、及び/又は有機樹脂からなる請求項5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記金属酸化物がAl23、SiO2、SnO2、TiO2、及びZrO2より選ばれる1種または2種以上の混合物である請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記有機樹脂が紫外線硬化型有機樹脂である請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれかに記載の塗料組成物を基材に塗布して得られた反射防止塗膜付き基材。
【請求項10】
可視光波長領域において、反射率の最小値が2%以下であり、かつ反射率の最大値と最小値の差が1%以下である請求項9に記載の反射防止塗膜付き基材。
【請求項11】
前記基材が透明基材である請求項9又は10に記載の反射防止塗膜付き基材。

【公開番号】特開2006−335881(P2006−335881A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−162487(P2005−162487)
【出願日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】