説明

主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスからの粒子の除去

主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスは、ガス状有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)に加えて超微細粒子も含有する。2010年以降の欧州におけるEU−5−排ガス基準の導入に伴い、初めてガソリン車両用のこれらの粒子排出物の法的な制限が与えられる。これらの車両の将来の排ガス浄化計画は、これらの粒子を除去する装置を含有しなければならない。ガス状有害物質であるCO、HC及びNOxに加えて、粒子も排ガスから除去するのに適している、触媒活性な微粒子捕集フィルター、排ガス浄化設備及び主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガスを浄化する方法が紹介される。微粒子捕集フィルターは、フィルター本体と、2層からなる触媒活性なコーティングとを含有する。第一の層は、流入する排ガスと、第二の層は、流出する排ガスと接触する。双方の層は、酸化アルミニウムを含有する。第一の層は、パラジウム含有である。第二の層は、ロジウムに加えて酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学量論的混合気で主に運転される内燃機関の排ガスから粒子を除去するのに特に適している触媒活性な微粒子捕集フィルター(Partikelfilter)に関する。さらに、主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスから粒子、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物を除去する方法及びそのために適した装置が、本発明の対象である。
【0002】
化学量論的混合気で主に運転される内燃機関の排ガスは、従来の方法において三元触媒を用いて浄化される。これらは、前記機関の3つの本質的なガス状有害物質、すなわち炭化水素、一酸化炭素及び窒素酸化物を、同時に無害な成分へ転化することができる。ガス状有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)以外に、ガソリン機関の排ガスは、燃料の不完全燃焼から生じ、かつ本質的にはすすからなる超微細粒子(PM)も含有する。
【0003】
ディーゼル機関の粒子排出物とは異なり、主に化学量論的に運転されるガソリン機関の排ガス中の粒子は極めて小さく、すなわちこれらの粒子は、1μm未満の平均粒度を有する。典型的な粒度は、10〜100nmの範囲内である。肺に達する(lungengaengigen)最小粒子("Feinstaub(fine dust)")に由来する健康を損なう潜在性に基づいて、既に2010年以降の欧州におけるEU−5排ガス基準の導入に伴い、ガソリン機関についても許容される粒子排出物の制限が与えられる。粒子質量を把握する方法から粒子計数法への粒子測定法の切り替えのために、次の欧州排ガス基準EU−6については、粒子質量極限値からより臨界的な粒子数極限値への極限値の切り替えが見込まれうる。その結果、化学量論的に運転される内燃機関のための将来の排ガス浄化計画は、粒子の除去のために効率的に働く装置も含有しなければならなくなる。
【0004】
ディーゼル機関の排ガスから粒子を除去する方法及びそのための装置は、十分知られている。これは、触媒活性なディーゼル微粒子捕集フィルターを含み、その際にディーゼル排ガス浄化法用の微粒子捕集フィルター上の触媒コーティングは、たいてい酸化触媒コーティングであり、これらのコーティングは、フィルター上に析出されうるすす粒子の燃焼を容易にし、かつこうしてすす着火温度(Russzuendtemperatur)を低下させるのにとりわけ利用される。すす着火温度の低下により、フィルターに特徴的な"バランスポイント温度(Balance Point Temperature)"(BPT)は低下する。"バランスポイント"(BPT)を用いて、単位時間あたりのフィルター中に蓄積される粒子の量が、単位時間あたりの焼却した粒子の量に相当する温度が、表される。BPTは、触媒活性化されたフィルターに特徴的なパラメーターであり、このパラメーターは、機関の選択される運転点もしくはフィルターの入口での排ガス温度、排ガス質量流量及び排ガスの組成に依存する。
【0005】
国際公開(WO)第00/29726号には、触媒活性なフィルターが含まれている、ディーゼル排ガスの浄化用の装置が記載されている。前記フィルターは、第一の白金族金属及び第一のセリウム化合物を含有する第一の触媒を含む。前記装置は、そのうえ、第二のセリウム化合物を含有する第二の触媒を含有する。双方の触媒がフィルター基材上に配置されている実施態様が記載されている。この系は、第二の触媒中に含まれるセリウム化合物を用いて、ディーゼル粒子状物質中ですす粒子に付着する揮発性有機成分含分("volatile organic fraction"VOF)が、酸化により除去されることができることにより特徴付けられる。故に、特に好ましい実施態様において、第二の触媒は、触媒活性なディーゼル微粒子捕集フィルターの前に配置される。
【0006】
本出願人の国際公開(WO)第02/26379号には、希薄燃焼機関の排ガス中の一酸化炭素、炭化水素及びすす粒子を、微粒子捕集フィルターの使用下で低下させる方法が記載されており、その際にすす粒子は、すす着火温度Tzを有し、かつ微粒子捕集フィルターは時々、すす着火温度を超える微粒子捕集フィルターの温度の上昇及びすす粒子の燃焼により再生される。使用される微粒子捕集フィルターには、すすの着火温度を低下させるために、少なくとも1つの酸素貯蔵成分及び少なくとも1つの白金族金属である白金、パラジウム及びロジウムを含有する触媒活性なコーティングが設けられている。微粒子捕集フィルターの好ましい一実施態様において、前記コーティングは、一酸化炭素及び炭化水素の酸化に利用され、かつ少なくとも1つの白金族金属である白金、パラジウム及びロジウムを酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、ゼオライト又はそれらの混合物からなる群から選択される担体材料上に担持されて含有する化合物の第二の群を含有する。双方の物質群は好ましくは、2つの別個の、相互に重なり合っている層中に配置され、その際に酸化触媒活性なコーティングは、フィルター基材の流入チャネル上に直接施与されており、かつすす着火温度を低下させるコーティングがその上に配置されているので、浄化すべき排ガスがまず最初に、すす着火温度を低下させるコーティングと接触している。
【0007】
すす着火温度の低下は、ディーゼル排ガスの浄化のための微粒子捕集フィルターの使用の際に特別な意義がある、それというのも、ディーゼル機関中の"冷"燃焼プロフィールのために、後に配置された排ガス設備中での400℃を上回る温度の発生は、しばしば難しいからである。それに応じて、多数のさらなる特許出願があり、これらは酸化触媒活性なコーティング及び/又はすす着火温度を低下させるコーティングを有する微粒子捕集フィルターを対象にしている。幾つかの出願明細書、例えば米国特許出願公開(US-A1)第2006/0057046号明細書において、さらにまた、フィルター基材の排ガス背圧の問題点が考慮される。この場合に、触媒コーティングの特別な空間配置により、構造部材の全長に亘るフィルターウォールを経ての排ガスのできるだけ均一な流動が発生される。
【0008】
主に化学量論的に運転されるガソリン機関の排ガスからの粒子の除去の際に、排ガス温度、排ガス組成及び粒子の性質に関して本質的な差異がある。これらは、適した排ガス浄化計画において反映されなければならない。
【0009】
既に記載されたように、粒子は、ガソリン機関の排出物中で、明らかにより小さい平均粒度を有する。技術水準において知られた全てのフィルター本体が、粒子排出物の排ガスのできるだけ完全な浄化に適しているのではなくて、むしろ、微細粒子についても透過しない基材が使用されなければならないことをまねく。それに応じて、米国特許出願公開(US-A1)第2006/0133969号明細書には、酸化触媒及び酸化窒素吸着剤を含むウォッシュコート組成物が設けられている触媒セラミックウォールフローフィルターを含有する内燃機関用の排ガス系が記載されており、その際にコーティングされていないセラミックウォールフローフィルターは、多孔度>40%及び8〜25μmの平均孔径を有し、かつウォッシュコート組成物は、8μm/それ以下のD50を有する。ウォッシュコート組成物は、白金及び/又はパラジウムを酸化触媒活性成分として及びアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類金属又はそれらの混合物の群から選択される金属の金属酸化物を酸化窒素吸着剤として含む。一実施態様において、前記フィルターの出口チャネル上にロジウムが施与されている。米国特許出願公開(US)第2006/0133969号明細書に記載された触媒活性化されたフィルターは、"NOx粒子トラップ"("NOx particulate trap"NPT)であり、これは主に希薄で運転されるディーゼル機関及びガソリン機関の排ガスからの粒子及び窒素酸化物の除去に特に適しており、かつ濃厚な排ガス及び希薄な排ガスからのサイクルを伴い周期的に運転されるべきである。
【0010】
主に化学量論的混合気で運転されるガソリン機関は、希薄燃焼機関よりもたいてい本質的により高い排ガス温度を有する。故に、主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガスの浄化に使用される触媒コーティングされた微粒子捕集フィルターは、とりわけ高い熱老化安定性により特徴付けられていなければならない。特に、この種の粒子トラップは、十分な触媒活性で、より長い期間にも亘る1100℃までの温度及び強い熱サイクルに耐えなければならない。技術水準から知られた触媒活性化されたディーゼル微粒子捕集フィルターは、これらの要求に通例沿っていない。
【0011】
本出願人の欧州特許出願公開(EP-A1)第1 300 193号明細書には、内燃機関の排ガス中の有害物質の触媒転化法が記載されており、その際に排ガスは、場合により両面に触媒コーティングされ、開放細孔構造を有する多孔質担体ウォールを通過する。その際に、担体自体が触媒活性材料からなっていてよい。前記方法の特別な一実施態様は、化学量論的に運転される内燃機関の排ガスの浄化に適している。その場合に、同時に窒素酸化物、炭化水素及び一酸化炭素を転化することができる三元触媒コーティングを有する基材が使用される。
【0012】
本発明の課題は、粒子及びガス状有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を、主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガスから除去し、かつ1100℃までの温度での十分な熱老化安定性及び高い熱サイクル抵抗性を有する触媒活性な微粒子捕集フィルターを提供することである。さらに、本発明の課題は、粒子、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を除去する装置及び方法を提供することであり、これを用いて主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガスが、将来の法的な排ガス基準が遵守されることができるようにして浄化される。
【0013】
この課題は、フィルター本体及び触媒活性なコーティングを含有する触媒活性な微粒子捕集フィルターにより解決され、その際に触媒活性なコーティングは、双方とも活性酸化アルミニウムを含有する2層からなる。これらの層は、第一の層が、流入する排ガスにより直接接触されるのに対し、第二の層が、流出する排ガスと直接接触するように、配置されている。触媒活性な微粒子捕集フィルターは、第一の層中の酸化アルミニウムが、パラジウムで触媒活性化されている一方で、第二の層が、ロジウムを触媒活性成分として及び追加的に、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有することにより特徴付けられている。
【0014】
本明細書の意味での流入する排ガス及び流出する排ガスは、流出する排ガスが、流入する排ガスよりもより少なく粒子を含有するか、もしくは大体において粒子を含まないことでとりわけ相違する。
【0015】
希薄燃焼機関と主に化学量論的に運転されるガソリン機関との間での排ガスの本質的な差異は、排ガスの酸素含量にある。希薄燃焼機関の排ガス中に酸素15体積%まで含まれていてよいのに対し、主に化学量論的に運転されるガソリン機関の排ガスは、通例、少ない酸素含量により特徴付けられる。その結果として、フィルター基材上でのすす着火温度を低下させるコーティングの使用は、大体において効果がない、それというのも、前記排ガスは、低下された温度でのすす焼却のために十分な酸化剤を含有しないからである。他方では、主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガス中に少ないすす量でのみ存在しているので、使用されるフィルターは、約0.7体積%の通常存在している酸素量で、すす着火温度を上回る温度でできるだけ多くすすが恒久的に焼却されることができるように構成されるべきである。恒久的な焼却を、軽度に濃厚な運転段階におけるHC及びCOの転化の際に完全に望ましい酸素貯蔵効果により妨げられないように、故に本発明の好ましい一態様は、流入する排ガスにより直接接触される第一の層が、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有しない場合である。
【0016】
触媒活性な貴金属のための担体酸化物として、流入する排ガスと接触する第一の層中で活性酸化アルミニウムが使用される。流出する排ガスと接触する第二の層中で、触媒活性な貴金属は、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物上にも施与されていてよい。
【0017】
好ましくは、酸化アルミニウムの全質量を基準として、酸化ランタン1〜10質量%で安定化されている活性酸化アルミニウムが使用される。たいていドープされたこれらの酸化アルミニウムは、純粋な酸化アルミニウムよりも高温で明らかにより高い表面安定性を有する。
【0018】
第一の層の活性酸化アルミニウム上へパラジウムが施与される。米国特許(US)第6,103,660号明細書に記載された方法により、パラジウムは好ましくは硝酸パラジウムから出発して、塩基として水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムの使用下に、析出される。こうして得られた懸濁液を用いて、フィルター本体は直ちにコーティングされることができる。施与された層は、引き続き乾燥され、かつ場合によりか焼される。その際に、懸濁液中のパラジウムの量もしくはコーティング懸濁液の量は、第一の層中のパラジウムの濃度が乾燥及びか焼後に、微粒子捕集フィルターの体積を基準として、0.1〜10g/L、好ましくは0.5〜8g/Lであるように選択される。
【0019】
硝酸パラジウムを沈殿させるための塩基としての水酸化バリウム又は水酸化ストロンチウムの使用は、か焼後に、第一の層中の活性酸化アルミニウムの表面上に析出されている酸化バリウム又は酸化ストロンチウムの残留をもたらす。
【0020】
前記の手順とは選択的に、貴金属は触媒の各固体成分上に別個に析出されることもできる。その後はじめて、ついで例えばパラジウム又はロジウムで活性化された酸化アルミニウム又はロジウムで活性化されたセリウム/ジルコニウム複合酸化物が、製造すべき層に必要とされる比で水中に懸濁され、かつフィルター本体上へ施与される。そのような手順は、一方では酸化アルミニウム及び他方ではセリウム/ジルコニウム複合酸化物上での触媒活性な貴金属の濃度を意図的に調整することを可能にし、このことは、特に流出する排ガスにより直接接触された第二の層の老化安定性に有利でありうる。好ましくは、酸化アルミニウム及び/又はセリウム/ジルコニウム複合酸化物上への貴金属の別個の析出のためには、欧州特許(EP)第0 957 064号明細書に記載された方法が使用される。
【0021】
第二の層中の貴金属の導入の種類とは独立して、コーティング懸濁液中のロジウム量及びコーティング懸濁液自体の量は、完成した微粒子捕集フィルターの第二の層中のロジウムの濃度が、前記微粒子捕集フィルターの体積を基準として0.01〜1g/L、好ましくは0.03〜0.5g/Lであるように選択されることができる。
【0022】
実際に使用すべき貴金属濃度は、まず第一にガス状有害物質である一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)の所望の転化率により決定される。これらは、しかしながら生じる触媒活性化された微粒子捕集フィルターのBPTへの影響も有する。活性及び老化安定性への特別な要求の場合に、触媒活性なフィルターの特殊な実施態様は、一方の層又は双方の層中でパラジウムもしくはロジウムに加えて白金を含有することができる。好ましくは、ついで、第一の層の活性酸化アルミニウム及び/又は第二の層の活性酸化アルミニウム及び/又は第二の層の酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物は、追加的に白金で触媒活性化される。その際に、白金の濃度は、これらが第一の層中で及び/又は第二の層中で、微粒子捕集フィルターの体積をそれぞれ基準として、各0.01〜10g/Lであるように選択される。
【0023】
触媒活性なフィルターの寿命のさらなる改善のために、特に温度安定性及び熱サイクル抵抗性に関して、前記コーティング中での酸化物助剤の添加は有利でありうる。例えば、本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい態様は、第一の層中に追加的に酸化ランタン又は酸化ネオジムを及び/又は第二の層中に追加的に酸化ジルコニウムを含有する。酸化ジルコニウムは、酸化ジルコニウムの全質量を基準として、好ましくは希土類金属酸化物1〜30質量%で安定化されており、その際に特に好適な実施態様において、安定化された酸化ジルコニウムの全質量を基準として、酸化セリウム15質量%以下が含まれている。
【0024】
本発明による微粒子捕集フィルターは、粒子に加えて、ガス状有害物質である炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NO)も、排ガスから除去することができる。O2 最大0.7体積%を有する主に化学量論的に運転される内燃機関の排ガスは、少ない量のみの酸素を含有するので、適した酸素貯蔵材料の選択が重要である。恒久的なすす粒子焼却のための微粒子捕集フィルターの能力を損なわないように、流入する排ガスと直接接触する第一の層は、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含まなくてよい。流出し、かつ粒子が浄化された排ガスと接触する第二の層は、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有し、かつそれゆえ、触媒活性化された微粒子捕集フィルターの、ガス状有害物質であるCO、HC及びNOxの転化に必要な三元触媒活性を保証する。その際に、第二の層中で、セリウム/ジルコニウム複合酸化物の全質量を基準として、金属酸化物1〜15質量%、特に好ましくは5〜10質量%で、安定化されているセリウム/ジルコニウム複合酸化物が好ましくは使用される。これらは、好ましくは、鉄、マンガン、チタン、ケイ素、スズ、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム又はそれらの混合物からなる群から選択される金属の酸化物である。1〜0.1、特に0.8〜0.2の酸化ジルコニウムに対する酸化セリウムの質量比を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物が好適である。これらの材料の比表面積は有利には50〜100m2/gの範囲内である。
【0025】
主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガス中に含まれる粒子は、ディーゼル機関の排ガス中に含まれる粒子よりも、通例より小さい平均粒度を有する。このことは、フィルター本体の選択の際に顧慮されなければならない。セラミックウォールフローフィルター基材、焼結金属フィルター本体又はセラミックフォーム構造又は金属フォーム構造の群から選択されるフィルター本体が適している。特にフォーム構造及び焼結金属フィルター本体の場合に、適切なフィルター作用の達成のために孔径は大きすぎないように選択されなければならない。好ましくは、フィルター本体はセラミックウォールフローフィルター基材の群から選択されている。特に、ウォールが40〜80%、好ましくは45〜65%の多孔度を有する開気孔構造及び9〜30μmの平均孔径を有するセラミックウォールフローフィルター基材が適している。特に好ましいのは、特に微細な粒子9〜18μmの場合に9〜22μmの平均孔径を有するウォールフローフィルター基材である。
【0026】
本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターのフィルター本体上へ、2つの触媒活性層が施与されている。前記層の配置は、任意ではなくて、むしろ、耐老化性への高い要求が、構造部材による排ガス背圧のできるだけ少ない発生で満たされるされることができるように選択されなければならない。次の点は、コーティング配置の選択の際に特に考えるべきである:
・触媒コーティングされたフィルターは、1100℃までの温度でのより長期の熱負荷後にも、良好なCO転化率、HC転化率及びNOx転化率を排ガス中の最大0.7体積%の酸素含量で示すべきである。熱老化後の触媒活性な微粒子捕集フィルターの必要な高い三元活性は、触媒活性成分であるパラジウム及びロジウムの空間的に分離する場合に達成されることができる。双方の貴金属の空間的な近接は、より高い温度で、あまり触媒活性でない合金の形成をまねきうる。
【0027】
・構造部材により発生され、かつ駆動のために利用可能な機関出力の損失をまねく排ガス背圧を最小限にするために、前記層は、これらができる限り僅かな流れ抵抗で排ガスに抵抗するように配置されていなければならない。それにも拘わらず、触媒活性成分との排ガスの接触時間は、高い空間速度でも十分な空時収率を保証するために、長期に十分でなければならない。
【0028】
・排ガス中の少ない酸素含量は、できる限り効率的に利用されなければならない。このことは、酸素貯蔵材料の配置の際に顧慮されるべきである。
【0029】
本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターは、第一の層中に、触媒活性成分としてパラジウムを含有する。この層は、流入する、すなわち粒子に富む排ガスと直接接触するように配置されている。第二の触媒活性層は、ロジウムを触媒活性成分として及び酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する。この層は、流出する、すなわち粒子の乏しいもしくは粒子を含まない排ガスと直接接触するように配置されている。
【0030】
本発明による微粒子捕集フィルターの一態様において、フィルター本体は、ロジウム含有の第二の層のための担体として使用され、その際に前記ロジウム含有層は、構造部材の全長を占める。ロジウム含有の第二の層でコーティングされたこのフィルター本体は、ついでパラジウム含有の第一の層のための担体として利用される。これは、構造部材の長さの40〜100%を占め、かつ構造部材の流入側に配置されている。部分コーティングは、特に、フィルター本体が、流動基材、すなわち例えばセラミックフォーム構造又は金属フォーム構造である場合に行われるべきである。図1は、流動フィルター構造部材中の相応する層配置を略示的に示す。部分図[1a]は、全構造部材の平面図を示す。排ガスの流れ方向は、矢印により示されている。帯域Aは前記フィルターの流入側を、帯域Bは流出側を、特徴付ける。部分図[1b]は、流れチャネルのコーティングされたウォールの略示図を示し、その際に(1)パラジウム含有の第一の層、(2)ロジウム含有の第二の層及び(3)フィルター本体の場合により気密なウォールを表す。
【0031】
セラミックウォールフローフィルター基材がフィルター本体として使用される場合には、パラジウム含有コーティングは、流入チャネル中に、ロジウム含有コーティングは、流出チャネル中に導入される。本発明の好ましい態様において、前記コーティングは完全に又は少なくとも部分的に、ウォールフローフィルター基材の多孔質ウォール中に配置される。そのような措置は、生じる本発明による構造部材により発生される排ガス背圧を最小限にすることに寄与する。
【0032】
図2は、本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい態様を略示的に示し、ここで、流入する排ガスにより接触されるパラジウム含有の第一の層(1)は、構造部材の全長に亘ってセラミックウォールフローフィルター基材(3a)のウォールの細孔中へ導入されており、かつウォール中に均質に分布している。流出する排ガスと直接接触する第二の層は、流出チャネル(5)中でウォール上へ施与されている。これは構造部材の長さの40〜100%を占め、かつ流出側に配置されている。ウォールフローフィルター基材中で、流入チャネル(4)は流出側に、流出チャネル(5)は流入側に気密にシールされている(3b)ので、排ガスが、多孔質ウォールの通過を強制される。矢印は、排ガスの流れ経路を示す。
【0033】
図3は、本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい他の態様を示し、ここで、流出する排ガスと直接接触するロジウム含有の第二の層(2)は、構造部材の全長に亘ってセラミックウォールフローフィルター基材のウォールの細孔中へ導入されており、かつウォール中に均質に分布している。流入する排ガスにより接触されるパラジウム含有の第一の層(1)は、流入チャネル(4)中の構造部材の全長に亘ってウォール上へ施与されている。
【0034】
熱老化後の高い三元活性が、構造部材の最小限にされた排ガス背圧よりも優位にある適用において、そのうえ、流入する排ガスにより接触されるパラジウム含有の第一の層(1)が、流入チャネル(4)中の構造部材の全長に亘ってウォール(3a)上へ施与されており、かつ流出する排ガスと直接接触する第二の層(2)が、流出チャネル(5)中で、ウォール上に施与されて(3a)施与されている、本発明による微粒子捕集フィルターの態様が好適である。その際に、第二の層(2)は、構造部材の長さの40〜100%を占めることができ、その際にこれは流出側に配置されていなければならない。そのような一実施態様は図4に略示的に示されている。
【0035】
本発明による微粒子捕集フィルターは、前記の態様において、主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスからの粒子、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)の除去のために特に使用されることができる。そのためには、これは車両の相応する排ガス浄化設備中へ組み込まれなければならない。できるだけ効率的な恒久的なすす焼却を保証するために、本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターは好ましくは機関近くの位置に配置される。
【0036】
車両の排ガス設備及び浄化すべき粗排出物の態様に応じて、本発明による微粒子捕集フィルターに加えて、セラミック流動基材又は金属流動基材及び触媒活性なコーティングを含有する三元触媒を使用することは有利でありうる。追加的な三元触媒は、本発明による微粒子捕集フィルターに対して流入側に又は流出側に配置されていてよい。
【0037】
三元触媒が、本発明による微粒子捕集フィルターに対して流入側に配置されている場合には、前記三元触媒の体積を基準として、100g/Lより少ない酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する場合が有利である。本発明による微粒子捕集フィルターに対して流入側に酸素を貯蔵する材料の高すぎる含量は、フィルター上での粒子焼却に必要とされる、そうでなくとも既に制限された酸化剤(酸素)の量を、望ましくなく減少させる。故に、微粒子捕集フィルターに対して流入側に配置された三元触媒が、三元触媒の体積を基準として、75g/Lより少ない酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を、0.35〜0.1、特に好ましくは0.25〜0.15の酸化ジルコニウムに対する酸化セリウムの比で含有するそのような配置の場合に、排ガス設備の特に好ましい態様が含まれる。
【0038】
追加的な三元触媒が、本発明による微粒子捕集フィルターに対して流出側に配置されている場合には、例えば車両の加速段階の間に存在しうる特に軽度に濃厚な排ガス中に、良好なCO転化率及びHC転化率を保証するように、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物の含量が高められることができる。そのような配置中で、追加的な三元触媒は、三元触媒の体積を基準として、好ましくは100g/Lを上回る酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する。特に好ましくは、そのような配置中で、三元触媒の体積を基準として、100g/Lを上回る酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を0.4〜1の酸化セリウム/酸化ジルコニウム比で含有する三元触媒が使用される。極めて特に好ましくは、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物は、本発明による微粒子捕集フィルターに対して流出側に配置された三元触媒中で0.5〜0.9の酸化セリウム/酸化ジルコニウム比を有する。
【0039】
こうして、本発明による排ガス設備中で本発明による微粒子捕集フィルターに加えて配置されている三元触媒中のOSC材料が、良好なCO転化率及びHC転化率を濃厚な排ガスでの短時間の負荷でどのように保証することができるかは、追加的な三元触媒がさらにアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び希土類金属酸化物又はそれらの組合せの群から選択される酸化窒素貯蔵材料を含有する場合に、助けになりうる。そのような補充は、希薄な排ガスでの排ガス設備の短時間の負荷で望ましくない窒素酸化物排出物が生じないことを確実にする。
【0040】
主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスを浄化するために、排ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)及び粒子の除去のために本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターに導通される。ガス状有害ガスは、フィルター本体上へ施与されたコーティングの触媒作用下に、無害な排ガス成分(CO2、N2、H2O)に転化される。流入する排ガス中に含まれる粒子は、微粒子捕集フィルター中に捕集され、かつ十分な排ガス温度及び相応する酸化剤供給の際に、フィルターコーティング上で直接燃焼される。微粒子捕集フィルター中へ搬入される粒子状物質が、恒久的に焼却される粒子の量よりも多い場合には、フィルター中の粒子の凝集が増大するにつれて排ガス背圧の上昇となる。排ガス背圧が機関制御中で臨界的な所定値を超える場合には、微粒子捕集フィルター再生のための追加的な措置が開始されなければならない。
【0041】
微粒子捕集フィルターの再生は、400〜700℃の排ガス温度で酸素に富む排ガスの導通により行われる。主に化学量論的混合気で運転される機関の場合に、酸素に富む排ガスの発生は、例えば推力遮断(Schubabschaltung)により行われることができる。その際に、シリンダー中の燃料供給は、吸気管中の完全に開放されたスロットルフラップで短時間で中断される。そのような推力遮断は、現代の燃料を節約する車両の場合に例えば、車両運転におけるいわゆる"エンジンブレーキ"の利用による遅延が行われる場合に常に生じる。さらにまた、本発明による微粒子捕集フィルターの再生に必要とされる酸素に富む排ガスの発生は、排ガスライン(Abgasstrang)中への二次空気の吹込みにより行われることができる。そのような方法の態様は、そうでなくとも二次空気ポンプを携帯する全ての車両が考えられうる。
【0042】
本発明は、幾つかの図及び実施例に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】流動フィルター構造部材中の相応する層配置の略示図。
【図2】本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい態様の略示図。
【図3】本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい他の態様を示す図。
【図4】本発明による微粒子捕集フィルターの好ましい他の態様を示す図。
【図5】λ=1での製造したての触媒活性な微粒子捕集フィルターのCO転化率、HC転化率及びNOx転化率を示す図。
【図6】触媒活性な微粒子捕集フィルターの、試験体の体積を基準としてすす各5g/Lの負荷後の相応する転化率値を示す図。
【図7】すすを含まない状態で水熱老化後の、触媒活性な微粒子捕集フィルターのCO転化率、HC転化率及びNOx転化率を示す図。
【図8】水熱老化及び触媒活性な微粒子捕集フィルターの体積を基準としてすす約5g/Lの施与後の、触媒活性な微粒子捕集フィルターのCO転化率、HC転化率及びNOx転化率を示す図。
【0044】
図1〜4は、本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルター中の多様なコーティング配置を示す。その中で以下のものを表す
(1)パラジウム含有の第一の層;
(2)ロジウム含有の第二の層;
(3)フィルター本体のウォール;
(3a)ウォールフローフィルター基材の多孔質ウォール;
(3b)ウォールフローフィルター基材中の流れチャネルの気密なシール;
(4)流入チャネル;
(5)流出チャネル。
【0045】
図5〜8は、本発明による微粒子捕集フィルター及び技術水準による微粒子捕集フィルターで行った多様な試験の結果を示す。以下のことを示す:
図5:製造したてで、かつすすを含まない状態での、技術水準による微粒子捕集フィルター(比較例1からのVGPF1(‖) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な層を有する微粒子捕集フィルター;比較例2からのVGPF2(=) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な二重層を有する微粒子捕集フィルター)と比較した、本発明による微粒子捕集フィルターGPF1(黒塗り)のλ=1でのHC転化率、CO転化率及びNOx転化率
図6:製造したての状態で、触媒活性な微粒子捕集フィルターの体積を基準としてすす約5g/Lの施与後の、技術水準による微粒子捕集フィルター(比較例1からのVGPF1(‖) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な層を有する微粒子捕集フィルター;比較例2からのVGPF2(=) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な二重層を有する微粒子捕集フィルター)と比較した、本発明による微粒子捕集フィルターGPF1(黒塗り)のλ=1でのHC転化率、CO転化率及びNOx転化率
図7:すすを含まない状態で水熱老化後の、技術水準による微粒子捕集フィルター(比較例1からのVGPF1(‖) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な層を有する微粒子捕集フィルター;比較例2からのVGPF2(=) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な二重層を有する微粒子捕集フィルター)と比較した、本発明による微粒子捕集フィルターGPF1(黒塗り)のλ=1でのHC転化率、CO転化率及びNOx転化率
図8:水熱老化及び触媒活性な微粒子捕集フィルターの体積を基準としてすす約5g/Lの施与後の、技術水準による微粒子捕集フィルター(比較例1からのVGPF1(‖) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な層を有する微粒子捕集フィルター;比較例2からのVGPF2(=) − 流入チャネル中に施与された触媒活性な二重層を有する微粒子捕集フィルター)と比較した、本発明による微粒子捕集フィルターGPF1(黒塗り)のλ=1でのHC転化率、CO転化率及びNOx転化率。
【0046】
例及び比較例に記載されたコーティングされた微粒子捕集フィルターの製造及び試験:
例及び比較例に記載された触媒活性な微粒子捕集フィルターを製造するために、楕円断面(断面直径(Stirnflachendurchmesser):10.21cm×19.84cm)及び17.4cmの長さを有するチタン酸アルミニウム(タイプ:Corning Duratrap AT)からなるウォールフローフィルター基材をコーティングした。ウォールフローフィルター基材は、0.33mmのセル壁厚で平方センチメートルあたり46.5セルのセル密度を有していた。これらは、52%の多孔度及びフィルター本体の体積を基準として3.5kg/Lの密度を有していた。
【0047】
比較例1において、流入チャネル中にコーティング懸濁液を施与した。比較例2及び例において、連続して2つの異なるコーティング懸濁液を施与し、その際に第一のコーティング懸濁液を流入チャネル中に配置した。第二のコーティングを、比較例において同様に流入チャネル中に配置した。本発明による微粒子捕集フィルター(例)の場合に、第二のコーティング懸濁液を流出チャネル中に配置した。各コーティング懸濁液を施与した後に、前記部材を乾燥させ、かつ500℃で4時間の期間に亘ってか焼した。
【0048】
こうして得られた部材から、触媒キャラクタリゼーションのために、2.54cmの直径及び17.4cmの長さを有するそれぞれ2つの円柱形のボーリングコアを取り出した。
【0049】
こうして得られた試験体のそれぞれ1つを、まず最初に、製造したてで、すすを含まない状態でモデルガス設備で、当業者によく知られている常用の試験法により"ラムダ−スイープテスト(lambda-Sweeptest)"にかけた。
【0050】
引き続き、これらの部材を、室温で意図的にすすを負荷した。そのためには、商業的に入手可能なすす(製造者:degussa.)を、前記試験体の体積を基準としてすす5g/Lの量が導入されるまで、空気の導通により舞い上がらせ、かつフィルターに吹き込んだ。すすが負荷されたボーリングコアを、新たに"ラムダ−スイープテスト"において調べた。
【0051】
それぞれ残った試験体を、触媒特性のキャラクタリゼーションの前に、16時間の期間に亘って、窒素中に酸素10体積%及び水蒸気10体積%を含有する雰囲気中で925℃の温度に暴露した。こうして老化された部材を、同様に"ラムダ−スイープテスト"にかけ、前記の方法によりすす5g/Lを負荷し、新たに"ラムダ−スイープテスト"において調べた。
【0052】
全ての場合に、"ラムダ−スイープテスト"において次のパラメーターに調節した:
【表1】

【0053】
比較例1:
水酸化バリウムを水に溶解させた後、セリウム/ジルコニウム複合酸化物の全量を基準として、20質量%の酸化セリウム含量を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物で懸濁させ、かつ絶えず撹拌しながら硝酸ロジウム溶液の添加によりロジウムで活性化させた。その後、酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(比表面積:140g/m2)及び40質量%の酸化セリウム含量をセリウム−ジルコニウム複合酸化物の全質量を基準として有する別のセリウム/ジルコニウム複合酸化物を懸濁液に添加した。ついで、硝酸パラジウム溶液の添加を絶えず撹拌しながら行った。生じたコーティング懸濁液を、ウォールフローフィルター基材のコーティングに直接使用した。前記懸濁液をフィルター本体の流入チャネル中にのみ施与した。コーティングされたフィルターを乾燥させ、かつか焼した。完成した触媒活性な微粒子捕集フィルターは、流入チャネル中で次の組成を有するコーティングを含有していた:
酸化セリウム20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 14g/l
ランタンで安定化された酸化アルミニウム 28g/l
酸化セリウム40質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 14g/l
酸化バリウム 2g/l
パラジウム 1.236g/l(全成分につき)
ロジウム 0.176g/l(CeO2 20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物につき)。
【0054】
こうして得られた触媒活性な微粒子捕集フィルターVGPF1の全貴金属負荷は7:1のロジウムに対するパラジウムの比で1.412g/lであった。
【0055】
比較例2:
第一の層の製造:
酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(比表面積140m2/g)及び40質量%の酸化セリウム含量を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を、米国特許(US)第6,103,660号明細書に従い、塩基として水酸化バリウムの使用下に、硝酸パラジウムから出発するパラジウムと共に活性化した。生じた懸濁液を、ウォールフローフィルター基材のコーティングに直接使用した。前記懸濁液をフィルター本体の流入チャネル中にのみ施与した。コーティング後に、前記フィルターを乾燥させ、かつか焼した。完成した第一の層は、以下のコーティング量を含有していた:
ランタンで安定化された酸化アルミニウム 10g/l
酸化セリウム40質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 10g/l
酸化バリウム 1g/l
パラジウム 1.236g/l(全成分につき)。
【0056】
第二の層の製造:
20質量%の酸化セリウム含量を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を水中に懸濁させた。その後、前記懸濁液に、硝酸ロジウムの水溶液を、絶えず撹拌しながら供給し、酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(比表面積:140m2/g)を添加した。既に流入チャネル中に第一の層が設けられたウォールフローフィルター基材を、第二のコーティング懸濁液でコーティングし、その際に第二の層を同様に流入チャネル中へ導入した。前記フィルターを乾燥させ、かつか焼した。完成した第二の層は、以下のコーティング量を含有していた:
ランタンで安定化された酸化アルミニウム 10g/l
酸化セリウム20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 10g/l
ロジウム 0.176g/l(CeO2 20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物につき)。
【0057】
こうして製造された触媒活性な微粒子捕集フィルターVGPF2の全貴金属負荷は7:1のロジウムに対するパラジウムの比で1.412g/lであった。
【0058】
例:
第一の層の製造:
酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(比表面積140m2/g)及び40質量%の酸化セリウム含量を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を、米国特許(US)第6,103,660号明細書に従い、塩基として水酸化バリウムの使用下に、硝酸パラジウムから出発するパラジウムと共に活性化した。生じた懸濁液を、前記ウォールフローフィルター基材のコーティングに直接使用した。前記懸濁液をフィルター本体の流入チャネル中にのみ施与した。コーティング後に、前記フィルターを乾燥させ、かつか焼した。完成した第一の層は、以下のコーティング量を含有していた:
ランタンで安定化された酸化アルミニウム 14g/l
酸化セリウム40質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 14g/l
酸化バリウム 2g/l
パラジウム 1.236g/l(全成分につき)。
【0059】
第二の層の製造:
20質量%の酸化セリウム含量を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を水中に懸濁させた。その後、前記懸濁液に、硝酸ロジウムの水溶液を、絶えず撹拌しながら供給し、酸化ランタン3質量%で安定化された酸化アルミニウム(比表面積:140m2/g)を添加した。流入チャネル中に既に第一の層が設けられたウォールフローフィルター基材を、第二のコーティング懸濁液でコーティングし、その際に第二の層を流出チャネル中へのみ導入した。前記フィルターを乾燥させ、かつか焼した。完成した第二の層は、以下のコーティング量を含有していた:
ランタンで安定化された酸化アルミニウム 16g/l
酸化セリウム20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物 14g/l
ロジウム 0.176g/l(CeO2 20質量%を有するセリウム/ジルコニウム複合酸化物につき)。
【0060】
こうして製造された触媒活性な微粒子捕集フィルターGPF1の全貴金属負荷は7:1のロジウムに対するパラジウムの比で1.412g/lであった。
【0061】
"ラムダ−スイープテスト"における触媒キャラクタリゼーションの結果:
既に記載されたように、例及び比較例において製造された触媒活性な微粒子捕集フィルターから、2.54cmの直径及び17.4cmの長さを有するそれぞれ2つの円柱形のボーリングコアを取り出した。試験体のそれぞれ1つを、製造したての状態ですすを含まずに及びすすを負荷して、調べた。それぞれ残ったボーリングコアを、まず最初に925℃で16時間の期間に亘って水蒸気10体積%及び酸素10体積%を含有する雰囲気中で合成的に老化させ、ついですすを含まない状態及びすすが負荷された状態で測定した。
【0062】
"ラムダ−スイープテスト"の結果は、図5〜8に示されている。
【0063】
図5は、λ=1での製造したての触媒活性な微粒子捕集フィルターのCO転化率、HC転化率及びNOx転化率を示す。図6は、触媒活性な微粒子捕集フィルターの、試験体の体積を基準としてすす各5g/Lの負荷後の相応する転化率値を示す。
【0064】
本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターGPF1が、新鮮な状態で、技術水準により製造された微粒子捕集フィルターVGPF1及びVGPF2(二重層)と比較して殆ど利点を示さないことは明らかである。すすが負荷された状態ではじめて、本発明による微粒子捕集フィルターは、従来のコーティングされた微粒子捕集フィルターと比較してNOx転化率及びHC転化率における軽度の利点を示す。
【0065】
本発明による微粒子捕集フィルターの利点は、熱老化後に明らかになる。既にすすを含まない状態で、明らかにより良好な有害ガス転化率が観察される。すすの負荷後に、本発明によるフィルターGPF1での3つの通常の有害ガスであるNOx、CO及びHCの転化率は、技術水準によるコーティングされたフィルターVGPF1及びVGPF2よりも明らかに高い。一様な触媒コーティングVGPF1を用いるたいてい使用される変法と特に比較して、本発明による微粒子捕集フィルターGPF1は明らかな利点を示す。こうして、本発明によるGPF1のNOx転化率は95%で、VGPF1よりも絶対的に12%高い。HC転化率は96%で、VGPF1よりも絶対的に9%高い。99%のCO転化率は、VGPF1よりも絶対的に7%高い。
【0066】
さらに、熱老化された状態での本発明による触媒活性な微粒子捕集フィルターの示された転化率の利点は、主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスからの粒子及び従来の有害ガスであるCO、HC及びNOxの除去のためのそのような構造部材の成功した使用の前提条件を達成する。
【符号の説明】
【0067】
1 パラジウム含有の第一の層、 2 ロジウム含有の第二の層、 3 フィルター本体のウォール、 3a ウォールフローフィルター基材の多孔質ウォール、 3b ウォールフローフィルター基材中の流れチャネルの気密なシール、 4 流入チャネル、 5 流出チャネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルター本体と、2層からなる触媒活性なコーティングとを有する触媒活性な微粒子捕集フィルターであって、その際に双方の層が活性酸化アルミニウムを含有し、かつ第一の層が、流入する排ガスにより直接接触されるのに対し、第二の層が、流出する排ガスと直接接触しているものであって、かつ、
第一の層中の酸化アルミニウムがパラジウムで触媒活性化されているのに対し、第二の層が、ロジウムを触媒活性成分として及び追加的に、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する
ことを特徴とする、触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項2】
第一の層が、酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有しない、請求項1記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項3】
第一の層及び第二の層の活性酸化アルミニウムがそれぞれ、酸化アルミニウムの全質量を基準として、酸化ランタン1〜10質量%で安定化されている、請求項1又は2記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項4】
第一の層中のパラジウムの濃度が、微粒子捕集フィルターの体積を基準として0.1〜10g/Lである、請求項1又は2記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項5】
第一の層中の活性酸化アルミニウムが、追加的に白金で触媒活性化されており、かつ白金の濃度が、微粒子捕集フィルターの体積を基準として0.01〜10g/Lである、請求項4記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項6】
第一の層中の活性酸化アルミニウムが追加的に酸化ストロンチウム又は酸化バリウムで表面上にコーティングされている、請求項3から5までのいずれか1項記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項7】
第一の層が追加的に酸化ランタン又は酸化ネオジムを含有する、請求項6記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項8】
第二の層中のロジウムの濃度が、微粒子捕集フィルターの体積を基準として0.01〜1g/Lである、請求項1から7までのいずれか1項記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項9】
第二の層中で、活性酸化アルミニウム及び/又は酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物が追加的に白金で触媒活性化されており、かつ白金の濃度が、微粒子捕集フィルターの体積を基準として0.01〜10g/Lである、請求項8記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項10】
第二の層が追加的に酸化ジルコニウムを含有する、請求項8又は9記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項11】
酸化ジルコニウムが、酸化ジルコニウムの全質量を基準として、希土類金属酸化物1〜30質量%で安定化されている、請求項10記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項12】
酸化ジルコニウムが、安定化された酸化ジルコニウムの全質量を基準として酸化セリウム15質量%以下を含有する、請求項11記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項13】
第二の層中のセリウム/ジルコニウム複合酸化物が、前記複合酸化物の全質量を基準として、金属酸化物1〜15質量%で安定化されており、前記金属酸化物は、鉄、マンガン、チタン、ケイ素、スズ、イットリウム、ランタン、プラセオジム、ネオジム、サマリウム又は混合物からなる群から選択される金属の酸化物である、請求項2記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項14】
第二の層中のセリウム/ジルコニウム複合酸化物が、1〜0.1の酸化ジルコニウムに対する酸化セリウムの質量比を有する、請求項13記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項15】
フィルター本体が、セラミックウォールフローフィルター基材、焼結金属フィルター本体又はセラミックフォーム構造又は金属フォーム構造の群から選択されている、請求項1記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項16】
フィルター本体が、セラミックウォールフローフィルター基材の群から選択されており、かつ40〜80%の多孔度及び9〜30μmの平均孔径を有する開気孔構造を有するウォールを有する、請求項15記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項17】
フィルター本体が、ロジウム含有の第二の層のための担体として利用され、その際にこれが構造部材の全長に亘って占め、かつ
ロジウム含有の第二の層が設けられたフィルター本体がパラジウム含有の第一の層のための担体として利用されることを特徴とする、請求項1記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項18】
パラジウム含有の第一の層が、構造部材の長さの40〜100%を占め、かつ構造部材の流入側に配置されている、請求項17記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項19】
流入する排ガスにより接触される第一の層が、構造部材の全長に亘って、セラミックウォールフローフィルター基材のウォールの細孔中へ導入されており、かつウォール中に均質に分布しており、かつ流出チャネル中の流出する排ガスと直接接触する第二の層が、ウォール上へ施与されている、請求項16記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項20】
流出する排ガスと直接接触する第二の層が、構造部材の長さの40〜100%を占め、かつ流出側上に配置されている、請求項19記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項21】
流出する排ガスと直接接触する第二の層が、構造部材の全長に亘ってセラミックウォールフローフィルター基材のウォールの細孔中へ導入されており、かつウォール中に均質に分布しており、かつ流入する排ガスにより接触される第一の層が、流入チャネル中の構造部材の全長に亘ってウォール上へ施与されている、請求項16記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項22】
流入する排ガスにより接触される第一の層が、流入チャネル中の構造部材の全長に亘ってウォール上へ施与されており、かつ流出チャネル中の流出する排ガスと直接接触する第二の層が、ウォール上へ施与されている、請求項16記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項23】
流出する排ガスと直接接触する第二の層が、構造部材の長さの40〜100%を占め、かつ流出側に配置されている、請求項22記載の触媒活性な微粒子捕集フィルター。
【請求項24】
主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスから粒子、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)及び窒素酸化物(NO)を除去するための、請求項1から23までのいずれか1項記載の触媒活性な微粒子捕集フィルターの使用。
【請求項25】
請求項1から23までのいずれか1項記載の触媒活性な微粒子捕集フィルターを有する、主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスを浄化するための排ガス浄化設備。
【請求項26】
触媒活性な微粒子捕集フィルターが、機関近くの位置に配置されている、請求項24記載の排ガス浄化設備。
【請求項27】
セラミック流動基材又は金属流動基材及び触媒活性なコーティングを含有する三元触媒が、微粒子捕集フィルターに対して流入側又は流出側に含まれている、請求項25又は26記載の排ガス浄化設備。
【請求項28】
三元触媒が、微粒子捕集フィルターに対して流入側に配置されており、かつ三元触媒の体積を基準として、100g/Lより少ない酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する、請求項27記載の排ガス浄化設備。
【請求項29】
三元触媒が、微粒子捕集フィルターに対して流出側に配置されており、かつ三元触媒の体積を基準として、100g/Lを上回る酸素を貯蔵するセリウム/ジルコニウム複合酸化物を含有する、請求項27記載の排ガス浄化設備。
【請求項30】
三元触媒が、追加的にアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物及び希土類金属酸化物又はそれらの組合せの群から選択される酸化窒素貯蔵材料を含有する、請求項28又は29のいずれか1項記載の排ガス浄化設備。
【請求項31】
主に化学量論的混合気で運転される内燃機関の排ガスを浄化する方法において、
一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)及び粒子を除去するための排ガスを、請求項1から23までのいずれか1項記載の触媒活性な微粒子捕集フィルターに導通することを特徴とする、排ガスを浄化する方法。
【請求項32】
微粒子捕集フィルターの再生が、400〜700℃の排ガス温度で酸素に富む排ガスを導通することにより行われる、請求項31記載の方法。
【請求項33】
酸素に富む排ガスの発生が、推力遮断により行われる、請求項32記載の方法。
【請求項34】
酸素に富む排ガスの発生が、排ガスライン中への二次空気の吹込みにより行われる、請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−540217(P2010−540217A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526172(P2010−526172)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003015
【国際公開番号】WO2009/043390
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】