説明

主軸装置の間座製作方法

【課題】 アンクランプ力の支持のために、サイズの大きな軸受や特殊な設計がなされた軸受を使用しなくてもすむように主軸装置に設けられる間座を、正確かつ簡単に低コストで製作できる間座製作方法を提供する。
【解決手段】 内輪間座4および外輪間座5は、所定の大きさの隙間δを介して互いに軸方向に対面する荷重受け部4b,5cを有し、軸方向に直交し荷重受け部4b,5cを通る分割面F1,F2で2分割されている。荷重受け部4bを有する内輪間座分割体4Aおよび荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5Aを、同じ軸方向幅になるように同時に加工する。これに併せて、荷重受け部4bを有しない内輪間座分割体4Bおよび荷重受け部5cを有しない外輪間座分割体5Bを、同じ軸方向幅になるように同時に加工して、前者の軸方向幅aよりも後者の軸方向幅bの方が前記隙間δ分だけ長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主軸を複数の軸受で回転自在に支持し、この軸受間に内外輪間座を配した主軸装置に用いられる間座を製作する主軸装置の間座製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械における主軸装置では、スピンドルハウジングに対して、主軸先端側は、アキシアル荷重の支持が可能なラジアル型の転がり軸受で支持し、この転がり軸受に隣接して内輪間座および外輪間座を設けた構成となっている。主軸の先端側では、コレットチャックを介して、工作機械の工具が着脱自在に装着可能とされている。コレットチャックによりクランプされた工具は、チャックドローバによりアンクランプされる。特許文献1には、チャックドローバとこれに連動するコレットチャックによる工作機械のクランプおよび案クランプに関する技術が開示されている。
【0003】
この種の工作機械の主軸装置に関し、本出願人は既に、コレットチャックのクランプ力に対するアンクランプ力が転がり軸受の許容アキシアル荷重を超えた場合、その超えた分のアキシアル荷重を転がり軸受に隣接して設けた間座で受ける構造とする製品をすでに量産納入している。この構造とすることで、大きなアンクランプ力がかかる工作機械の主軸装置においても、その支持のために、サイズの大きな軸受や特殊な設計がなされた軸受を使用する必要がなくなり、主軸装置の小型化およびコストダウンを図れる。
【特許文献1】特許第3415211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図5は上記提案に係る主軸装置の転がり軸受周辺部を示す断面図である。主軸1の外周に一対の転がり軸受3,3が軸方向に離して配され、その一対の転がり軸受3,3間に、内輪間座4および外輪間座5を介在させてある。内輪間座4および外輪間座5には、隙間δを介して互いに軸方向に対面する荷重受け部4b,5cがそれぞれ設けられている。主軸1に作用するアンクランプ力P等により、転がり軸受3に許容アキシアル荷重を超えるアキシアル荷重が作用すると、転がり軸受3の内輪3aと外輪3bが軸方向にずれる。所定量以上ずれると、内輪間座4の荷重受け部4bと外輪間座5の荷重受け部5cとが接触して、両荷重受け部4b,5cにより、前記許容アキシアル荷重を超える分のアキシアル荷重が受けられる。そのため、転がり軸受3は、加工時の許容アキシアル荷重が確保されるものであれば良い。
【0005】
しかし、転がり軸受3の内輪3aと外輪3bとの軸方向のずれは工作機械の加工精度等に大きく係わるものであるため、主軸装置を上記構造とする場合、上記ずれの量を規定する内輪間座4と外輪間座5間の隙間δの寸法精度を厳しく管理しておく必要がある。寸法精度の良い隙間δを確保するには、内輪間座4および外輪間座5の各寸法を随時測定しながら加工し、さらに必要な隙間δになるように調整加工をしなければならない。そのため、内輪間座4および外輪間座5の製作が難しく、加工に手間がかかり高コストとなるという問題がでてきた。
【0006】
この発明の目的は、大きなアンクランプ力がかかる工作機械の主軸装置においても、その支持のために、サイズの大きな軸受や特殊な設計がなされた軸受を使用しなくてもすむように主軸装置に設けられる間座を、正確かつ簡単に低コストで製作できる間座製作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の主軸装置の間座製作方法は、工作機械における主軸をスピンドルハウジングに対して、アキシアル荷重の支持が可能なラジアル型の転がり軸受で支持し、この転がり軸受に隣接して内輪間座および外輪間座を設け、前記内輪間座および外輪間座に、隙間を介して互いに軸方向に対面する荷重受け部を設け、前記隙間は、前記主軸にアキシアル荷重が作用してこの荷重により前記転がり軸受の内輪と外輪との軸方向位置が所定量以上にずれた状態で、内輪間座側の荷重受け部と外輪間座側の荷重受け部とが接触する大きさであり、前記内輪間座および外輪間座は、軸方向に直交し荷重受け部を通る分割面で2分割され、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、かつ内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長い主軸装置における前記内輪間座および外輪間座を製作する間座製作方法であって、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工し、これに併せて、内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工して、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長くすることを特徴とする。
【0008】
この間座製作方法によれば、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体の軸方向幅、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体の軸方向幅は特に定められておらず、両軸方向幅の差が必要な隙間と一致するようにだけ管理すれば良いので、加工および寸法測定が簡単であり、コスト面でも有利である。
また、内輪間座および外輪間座は、軸方向に直交し荷重受け部を通る分割面で2分割され、荷重受け部が間座分割体の端面に位置しているため、荷重受け部の加工が容易である。この荷重受け部の加工は、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体との軸方向幅を揃える加工、および内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体との軸方向幅を揃える加工の際に、併せて加工することができる。
【0009】
この発明の間座製作方法において、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体を同じ軸方向幅にする加工、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を同じ軸方向幅にする加工は、同時研磨加工または同時すり合わせ加工によるものとすることができる。同時研磨加工は、複数の被加工物を砥石により同時に研磨する加工のことであり、同時すり合わせ加工は、複数の被加工物体を砥粒により同時にすり合わる加工のことである。
上記加工に同時加工を採用すれば、各組の間座分割体の軸方向幅を正確かつ容易に揃えることができる。
【0010】
同時加工を採用する場合、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、共通の同時加工面の上に並べて加工すると良い。
2つの間座分割体を共通の同時加工面の上に並べて加工すると、両間座分割体の軸方向幅を精度良く揃えられるうえ、加工能率が良い。
【0011】
この発明の間座製作方法では、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、それぞれ同じ軸方向幅になるように加工した後、前記荷重受け部を有する内輪間座分割体と前記荷重受け部を有しない内輪間座分割体とを組み合わせて1つの内輪間座とし、かつ前記荷重受け部を有する外輪間座分割体と前記荷重受け部を有しない外輪間座分割体とを組み合わせて1つの外輪間座とする。
【0012】
この発明の間座製作方法において、前記内輪間座および外輪間座は、互いに背面組合せとなる複数の転がり軸受の間に介在させたものとしても良い。
主軸装置が上記背面組合せの軸受配置である場合に、上記内輪間座側および外輪間座側に対面する荷重受け部を設けたことによるアンクランプ力によるアキシアル荷重の支持が効果的になされる。
【0013】
この発明の間座製作方法において、前記外輪間座が、前記転がり軸受に対して潤滑油を供給するノズルを有するものとしても良い。
外輪間座をノズル付きのものとする場合、内径側に突出した形状となるため、その突出形状を荷重受け部用の環状突部に兼用することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の主軸装置の間座製作方法は、工作機械における主軸をスピンドルハウジングに対して、アキシアル荷重の支持が可能なラジアル型の転がり軸受で支持し、この転がり軸受に隣接して内輪間座および外輪間座を設け、前記内輪間座および外輪間座に、隙間を介して互いに軸方向に対面する荷重受け部を設け、前記隙間は、前記主軸にアキシアル荷重が作用してこの荷重により前記転がり軸受の内輪と外輪との軸方向位置が所定量以上にずれた状態で、内輪間座側の荷重受け部と外輪間座側の荷重受け部とが接触する大きさであり、前記内輪間座および外輪間座は、軸方向に直交し荷重受け部を通る分割面で2分割され、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、かつ内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長い主軸装置における前記内輪間座および外輪間座を製作する間座製作方法であって、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工し、これに併せて、内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工して、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長くするため、大きなアンクランプ力がかかる工作機械の主軸装置においても、その支持のために、サイズの大きな軸受や特殊な設計がなされた軸受を使用しなくてもすむように主軸装置に設けられる間座を、正確かつ簡単に低コストで製作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明の間座製作方法により製作された間座を備えた主軸装置の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。この主軸装置は、工作機械の主軸装置であって、主軸1を、スピンドルハウジング2に対して、軸方向に離れた2箇所の位置で、転がり軸受3により回転自在に支持している。各転がり軸受3は、アキシアル荷重の支持が可能なラジアル型の軸受であり、ここでは単列のアンギュラ玉軸受を用いている。これらアンギュラ玉軸受3は、内輪3aと外輪3b間に、保持器(図示せず)に保持されたボール3cを介在させたものであり、互いに背面組合せに配置されている。両アンギュラ玉軸受3,3間に、主軸1の外径面に外嵌する内輪間座4、およびスピンドルハウジング2の内径面に内嵌する外輪間座5が介在されている。
【0016】
内輪間座4は、軸方向に直交する分割面F1で、内輪間座分割体4A,4Bに2分割されている。一方(図1の右側)の内輪間座分割体4Aには、外周におけるもう一方(図1の左側)の内輪間座分割体4B側の端部に、外径側に突出する環状突部4aが形成されている。この環状突部4aの内輪間座分割体4B側を向く面は分割面F1の延長上にあり、この面が内輪間座側の荷重受け部4bとされる。
【0017】
外輪間座5は、軸方向に直交する分割面F2で、外輪間座分割体5A,5Bに2分割されている。両外輪間座分割体5A,5Bには、内径側に突出する環状突部5a,5bがそれぞれ形成されている。これら環状突部5a,5bは外輪間座5全体に対する突部であり、一方(図1の左側)の外輪間座分割体5Aの環状突部5aは、この外輪間座分割体5Aの軸方向ほぼ全域にわたっている。環状突部5aの外輪間座分割体5B側を向く面は分割面F2の延長上にあり、この面が外輪間座側の荷重受け部5cとされる。
【0018】
上記内輪間座側の荷重受け部4bと外輪間座側の荷重受け部5cは、隙間δを以って対面している。この隙間δの大きさは、主軸1にアキシアル荷重が作用してこの荷重により転がり軸受3の内輪3aと外輪3bとの軸方向位置が所定量以上にずれた状態で、内輪間座側の荷重受け部4bと外輪間座側の荷重受け部5cとが接触する大きさとされている。上記所定量は、例えば、転がり軸受3に許容アキシアル荷重以上の荷重が作用したときに生じる内輪3aと外輪3bの軸方向位置のずれ量の最小値、つまり、許容アキシアル荷重に丁度相当する荷重が作用したときの内輪3aと外輪3bの軸方向位置のずれ量とする。上記隙間δは、これよりも小さな値、例えば加工時の負荷によって荷重受け部4b,5cが接しない範囲で、できるだけ小さいものとしても良い。
【0019】
各外輪間座分割体5A,5Bは、隣合う転がり軸受3の軸受空間内に潤滑油を供給するためのノズル5dを有している。このノズル5dは前記環状突部5a,5bに設けられている。ノズル5dは、スピンドルハウジング2内に設けられた図示しない潤滑油供給経路に連通しており、アンギュラ玉軸受3の軌道面はノズル5dより供給される潤滑油により潤滑される。
【0020】
上記内輪間座分割体4A,4Bおよび外輪間座分割体5A,5Bの軸方向幅につき、次の関係が成り立つ。すなわち、荷重受け部4bを有する内輪間座分割体4Aと荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5Aとは軸方向幅aが等しく、荷重受け部4bを有しない内輪間座分割体4Bと荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5Bとは軸方向幅bが等しい。また、荷重受け部4b,5cを有する内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aの軸方向幅aより、荷重受け部4b,5cを有しない内輪間座分割体4Bおよび外輪間座分割体5Bの軸方向幅bの方が、前記隙間δ分だけ長い(b−a=δ)。これらの関係は、内輪間座4および外輪間座5の製作方法に因る。
【0021】
内輪間座4および外輪間座5の製作方法を説明する。
荷重受け部4bを有する内輪間座分割体4Aおよび荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5Aを、同じ軸方向幅aになるように同時に加工する。例えば図2(A)に示すように、砥石等の工具20における研削・研磨面からなる同時加工面20aに内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aを並べて同時に加工することにより、正確かつ容易に加工できる。これに併せて、荷重受け部4bを有しない内輪間座分割体4Bおよび荷重受け部5cを有しない外輪間座分割体5Bを、同じ軸方向幅bになるように同時に加工する。前記同様、図2(B)に示すように、同時加工面20aに内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aを並べて同時に加工すると良い。これらの加工を、軸方向幅aよりも軸方向幅bの方が隙間δ分だけ長くなるように管理しながら行えば良い。この同時加工の方法は、同時研磨加工である。
内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5A、または内輪間座分割体4Bおよび外輪間座分割体5Bの軸方向幅を加工するに際しては、図3に示すように、支持体21における平滑な同時加工面21aと当該間座分割体の間に砥粒22を介在させて、すり合わせ加工を行っても良い。なお、図3は内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aを加工する状態を示している。この同時加工の方法は、同時すり合わせ加工である。
【0022】
上記方法で、荷重受け部4bを有する内輪間座分割体4Aおよび荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5A、ならびに荷重受け部4bを有しない内輪間座分割体4Bおよび荷重受け部5cを有しない外輪間座分割体5Bを、それぞれ同じ軸方向幅になるように加工した後、荷重受け部4bを有する内輪間座分割体4Aと荷重受け部4bを有しない内輪間座分割体4Bとを組み合わせて1つの内輪間座4とし、かつ荷重受け部5cを有する外輪間座分割体5Aと荷重受け部5cを有しない外輪間座分割体5Bとを組み合わせて1つの外輪間座5とする。
【0023】
この間座製作方法によれば、内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aの軸方向幅a、ならびに内輪間座分割体4Bおよび外輪間座分割体5Bの軸方向幅bは特に定められておらず、両軸方向幅a,bの差が必要な隙間δと一致するようにだけ管理すれば良いので、加工および寸法測定が簡単であり、コスト面でも有利である。2つの間座分割体4A,5A(または4B,5B)の軸方向幅を同じにする加工は、同時加工等を採用することで正確かつ容易に行うことができる。
また、内輪間座4および外輪間座5は、軸方向に直交し荷重受け部4b,5cを通る分割面F1,F2で2分割されているため、荷重受け部4b,5cがそれぞれ内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aの端面に位置しており、荷重受け部4b,5cの加工が容易である。例えば、この実施形態のように、内輪間座分割体4Aおよび外輪間座分割体5Aの軸方向幅に加工する際に、荷重受け部4b,5cの加工も併せて行うことができる。
これらのことから、内輪間座4および外輪間座5を加工が正確かつ簡単に製作することができ、製作コストを低く抑えることができる。
【0024】
この構成の主軸装置によると、内輪間座4および外輪間座5に、隙間δを介して互いに軸方向に対面する荷重受け部4b,5cを設けたため、主軸1にアンクランプ力Pが作用して許容アキシアル荷重以上等の大きなアキシアル荷重が転がり軸受3に作用し、転がり軸受4の内輪3aと外輪3bとが軸方向にずれても、所定量以上ずれると、内輪間座4と外輪間座5の荷重受け部4b,5cが互いに接触して許容アキシアル荷重を超えるアキシアル荷重が支持される。
そのため、転がり軸受3は、加工時の許容アキシアル荷重が確保されるものであれば良く、アンクランプ力の支持のために、軸受サイズを大きくしたり、許容アキシアル荷重を高めた特殊な軸受とする必要がなく、サイズ増やコスト増が抑えられる。
なお、アンクランプ時に内輪間座4側の荷重受け部4bと外輪間座5側の荷重受け部5cとが接触するが、アンクランプは転がり軸受3の回転停止時に行われ、主軸装置の運転時には上記接触は起こらないため、上記荷重受け部4b,5cの接触による主軸装置の運転上の問題は生じない。
【0025】
図4に、上記主軸装置の全体を示す断面図である。この主軸装置は、主軸1の先端側の端部を図1で示した2列のアンギュラ玉軸受3,3で支持し、その反対側の端部を円筒ころ軸受11で支持したものである。
主軸1は、内径孔1aを有する中空軸とされていて、工具10のテーパシャンク部を嵌合するテーパ孔1bを先端に有し、このテーパ孔1bに続いて、工具10のプルスタッド10aを把持するコレットチャック8が設けられている。コレットチャック8は、主軸1の内径孔1a内に挿通されたチャックドローバ7を後方に引っ張ることでクランプ状態となるものであり、この引っ張り力が、主軸1に内蔵のばね部材9によって常時与えられている。チャックドローバ7は、主軸1の後端または中間位置に設けられた操作部6を主軸前側(白矢印方向)へ押すことで、コレットチャック8をアンクランプさせるものとされている。このため、アンクランプ操作を行うと、主軸1を前方へ押すアンクランプ力が作用する。
【0026】
このアンクランプが、従来の主軸装置ではラジアル型の転がり軸受である例えばアンギュラ玉軸受で受けられることになるが、この実施形態では、ある程度以上にアンクランプ力が作用すると、図1と共に前述したように、内輪間座4と外輪間座5の荷重受け部4b,5cが互いに接触して支持される。
【0027】
上記実施形態では、転がり軸受3としてアンギュラ玉軸受を用いたが、円すいころ軸受や、深溝玉軸受、その他の転がり軸受であっても良い。また、複列の転がり軸受であっても良い。さらに、2個のアンギュラ玉軸受によって主軸を支持した例を示したが、3個以上で支持するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の間座製作方法により製作された間座を備えた主軸装置の部分断面図である。
【図2】(A),(B)は同主軸装置の間座の製作方法を示す説明図である。
【図3】(A),(B)は異なる間座の製作方法を示す説明図である。
【図4】同主軸装置の全体断面図である。
【図5】提案例の主軸装置の部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…主軸
2…スピンドルハウジング
3a…内輪
3b…外輪
4…内輪間座
4A,4B…内輪間座分割体
4a…内輪間座の環状突部
4b…内輪間座側荷重受け部
5…外輪間座
5A,5B…外輪間座分割体
5a,5b…外輪間座の環状突部
5c…外輪間座側荷重受け部
5d…ノズル
20a,21a…同時加工面
δ…隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械における主軸をスピンドルハウジングに対して、アキシアル荷重の支持が可能なラジアル型の転がり軸受で支持し、この転がり軸受に隣接して内輪間座および外輪間座を設け、前記内輪間座および外輪間座に、隙間を介して互いに軸方向に対面する荷重受け部を設け、前記隙間は、前記主軸にアキシアル荷重が作用してこの荷重により前記転がり軸受の内輪と外輪との軸方向位置が所定量以上にずれた状態で、内輪間座側の荷重受け部と外輪間座側の荷重受け部とが接触する大きさであり、前記内輪間座および外輪間座は、軸方向に直交し荷重受け部を通る分割面で2分割され、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、かつ内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体と外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体とは軸方向幅が等しく、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長い主軸装置における前記内輪間座および外輪間座を製作する間座製作方法であって、
内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工し、これに併せて、内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、同じ軸方向幅になるように同時に加工して、前者の軸方向幅よりも後者の軸方向幅の方が前記隙間分だけ長くすることを特徴とする主軸装置の間座製作方法。
【請求項2】
請求項1において、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体を同じ軸方向幅にする加工、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を同じ軸方向幅にする加工が、同時研磨加工または同時すり合わせ加工によるものである主軸装置の間座製作方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、内輪間座における荷重受け部を有する内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有する外輪間座分割体、ならびに内輪間座における荷重受け部を有しない内輪間座分割体および外輪間座における荷重受け部を有しない外輪間座分割体を、それぞれ同じ軸方向幅になるように加工した後、前記荷重受け部を有する内輪間座分割体と前記荷重受け部を有しない内輪間座分割体とを組み合わせて1つの内輪間座とし、かつ前記荷重受け部を有する外輪間座分割体と前記荷重受け部を有しない外輪間座分割体とを組み合わせて1つの外輪間座をする主軸装置の間座製作方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、前記内輪間座および外輪間座は、互いに背面組合せとなる複数の転がり軸受の間に介在させたものである主軸装置の間座製作方法。
【請求項5】
請求項1または請求項4において、前記内輪間座は外径側へ突出する間座中心と同心の環状突部を有し、かつ前記外輪間座は内径側へ突出する間座中心と同心の環状突部を有し、これらの環状突部の互いに対向する側面がそれぞれ内輪間座および外輪間座の前記荷重受け部となる主軸装置の間座製作方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、前記外輪間座が、前記転がり軸受に対して潤滑油を供給するノズルを有するものとした主軸装置の間座製作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−113164(P2009−113164A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289863(P2007−289863)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】