説明

乗員拘束装置

【課題】乗員の身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上する。
【解決手段】乗員拘束装置100は、金属や硬質樹脂等の硬質の材料からなる硬質保持部材2と、袋体で構成される膨出部材4とを有している。硬質保持部材2は、座席に着座した乗員の腰部又は大腿部に対し所定の間隙を介し対向する。圧力流体が膨出部材4の袋体内部へ供給されると、袋体が膨出し、膨出部材4が硬質保持部材2から膨出して着座した乗員Mの腰部や大腿部に当接し、これによって乗員Mを拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に着座した乗員を拘束する乗員拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両衝突などの緊急時に乗員の身体を拘束するための乗員拘束装置としては、一般的なシートベルト装置の他にも、例えば乗員が着座する座席に設けた肩当てなどからパットを突出させて身体を固定する構成の乗員拘束装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
シートベルト装置においては、搭乗者がリトラクタ装置からウェビングを引き出し、このウェビングに設けられたタングをバックルに係合させてウェビングを装着する。これにより、搭乗者がシートに拘束されるようになっている。
【0004】
またパットを用いる乗員拘束装置は、座席内部に設けられた貯蔵漕が車両衝突などの緊急時に乗員により圧迫されて空気圧又は油圧を発生し、この圧力によって座席の所定位置からパットを突出させて乗員の身体を固定するようになっている。
【特許文献1】特開2005−231612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記シートベルト装置及びパットを用いる乗員拘束装置は、形状が変化することのないウェビング又はパットを乗員に接触させて所定の拘束性能を得ることができる。今後は、さらに乗員の身体に対して衝撃を吸収できる拘束性能が求められている。
【0006】
本発明の目的は、乗員の身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上できる乗員拘束装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、座席に着座した乗員の腰部又は大腿部に対し所定の間隙を介し対向するように設けた硬質保持部材と、この硬質保持部材に膨出可能に設けられ、前記膨出時に前記腰部又は大腿部に当接し拘束する膨出部材とを有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明においては、膨出部材が硬質保持部材に設けられている。衝突等が発生した場合には、膨出部材は硬質保持部材から膨出し、着座した乗員の腰部又は大腿部に当接することで、乗員を拘束することができる。このとき、膨出部材は膨出変形することにより乗員の身体に対して広い受圧面積で衝撃を吸収することができる。すなわち、乗員の身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上できる。
【0009】
第2発明は、上記第1発明において、前記膨出部材は、前記硬質保持部と前記腰部又は大腿部との間の複数箇所で膨出可能に設けられていることを特徴とする。
【0010】
これにより、乗員の身体に当接して拘束する位置にのみ膨出部材を分割して配置させ、効率のよい膨出が可能となる。
【0011】
第3発明は、上記第1又は第2発明において、前記膨出部材は、前記膨出時に前記腰部又は大腿部の側面に当接し拘束することを特徴する。
【0012】
これにより、車両側面からの衝突に対しても乗員の身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上することができる。
【0013】
第4の発明は、上記第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、前記硬質保持部材を収納する収納機構を有することを特徴とする。
【0014】
これにより、座席や車両の車体などに硬質保持部材を収納した際には、乗員は硬質保持部材に邪魔されることなく円滑に車両等の乗降を行うことができる。
【0015】
第5の発明は、上記第4の発明において、前記収納機構は、前記乗員の体格や着座位置に応じて前記硬質保持部材の保持位置を調整可能であることを特徴とする。
【0016】
これにより、乗員の体格や着座位置に応じて、膨出部材を当接させるべき所定の身体部位に膨出部材を配置させることができる。
【0017】
第6の発明は、上記第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、前記膨出部材は、前記膨出動作及びその逆動作である収縮動作を、反復可能に構成されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、衝突時等において一度膨出動作した後でも、(使い切りでなく)再度収縮させて利用することができる。
【0019】
第7の発明は、上記第6発明において、前記膨出部材は、当該膨出部材を収縮時の形状に戻すための伸縮性材料からなる収縮用部材を有していることを特徴とする。
【0020】
これにより、膨出動作を行っている時以外には自動的に膨出部材を収縮時の形状に戻して維持させることができる。
【0021】
第8の発明は、上記第1乃至第7の発明のいずれかにおいて、前記膨出部材を膨出させるための圧力流体を供給する圧力流体発生装置を有することを特徴とする。
【0022】
これにより、膨出部材が圧縮空気(圧力流体)の流入により膨出する袋体などからなる場合に迅速にその膨出動作を行わせることができる。
【0023】
第9の発明は、上記第8発明において、前記膨出部材から前記圧力流体を排出可能な流体排出機構を有することを特徴する。
【0024】
これにより、膨出状態となった膨出部材から圧力流体を迅速に排出して収縮させることができる。
【0025】
第10の発明は、上記第9発明において、前記圧力流体発生装置は、車両の状態や衝突予知情報などに応じて、前記膨出部材に対する前記圧力流体の供給と排出を制御可能であることを特徴とする。
【0026】
これにより、衝突時以外でも、例えば通常運転時において小幅に膨出・収縮させることで、居眠り抑制や速度超過等の注意喚起、その他の報知に用いることもできる。
【0027】
第11の発明は、上記第9又は第10の発明において、前記圧力流体発生装置は、前記圧力流体として内部の発火剤を燃焼させて生成した燃焼圧縮ガスを供給するインフレータと、前記圧力流体として圧縮空気の供給及びその吸気が可能なエアポンプと、前記エアポンプから前記膨出部材への前記圧縮空気の供給とその停止を切り換えるための開閉制御可能な電磁弁からなる供給弁と、前記膨出部材から前記エアポンプへの前記燃焼圧縮ガス又は前記圧縮空気の逆流を抑止するための開閉制御可能な電磁弁からなる逆止弁と、前記膨出部材から外気への前記燃焼圧縮ガス又は前記圧縮空気の排出とその停止を切り換えるための開閉制御可能な電磁弁からなる排気弁とを有することを特徴とする。
【0028】
これにより、衝突時等においてはインフレータからの燃焼圧縮ガスを膨出部材に供給して瞬発的な膨出動作を行うことができ、また通常運転時においてはエアポンプによる圧縮空気の供給及び吸気により膨出部材の小幅な膨出動作と収縮動作を行うことができ、また供給弁を開閉制御することでエアポンプから膨出部材へ圧縮空気を供給する際のタイミングと供給量を制御することができ、また逆止弁を開閉制御することでエアポンプから膨出部材へ圧縮空気を供給している際に膨出部材内の空気圧がエアポンプの供給圧を超えた場合でもエアポンプへの空気の逆流入を抑制してエアポンプが損傷することを回避でき、また排気弁を開閉制御することで膨出部材内部から圧縮空気を排出する際のタイミングと排出量を制御することができる。
【0029】
第12の発明は、上記第8乃至第11の発明のいずれかにおいて、前記圧力流体発生装置は、前記座席の下方に設けていることを特徴とする。
【0030】
これにより、乗員がアクセスすることのない座席の下方のスペースに圧力流体発生装置を配置させて、乗員が通常時にアクセスする車両内空間をより広く確保することができる。
【0031】
第13の発明は、上記第9の発明において、前記流体排出機構は、前記膨出部材に形成され、前記圧力流体発生装置からの前記圧力流体の供給速度より少ない流出速度で前記膨出部材の内部から前記圧力流体を漏出可能なベントホールを有することを特徴とする。
【0032】
これにより、衝突時に膨出部材を所定の膨出状態として乗員を拘束させた後に、過剰な拘束を回避するよう膨出部材内部の圧縮空気を継続的に漏出させて自然な収縮動作を行わせることができる。
【0033】
第14の発明は、上記第8乃至第12の発明のいずれかにおいて、前記圧力流体発生装置と前記膨出部材との間の前記圧力流体の流通経路の少なくとも一部に当該流通経路の配置を変化できる変形流通部を有していることを特徴とする。
【0034】
これにより、膨出部材が設けられている硬質保持部材が変形または収納できる構造の場合でも、その形状の変化に対応して圧力流体の流通経路における流通機能を維持させることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、乗員の身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0037】
図1は、本実施形態の乗員拘束装置の全体概略構造を表す斜視図である。
【0038】
図1において、この乗員拘束装置100は、車両等に設けられた座席1に着座した乗員Mを、車両の衝突発生時等において拘束するためのものである。
【0039】
すなわち、乗員拘束装置100は、金属や硬質樹脂等の(例えば後述の膨出部材4の膨出時の反力をとれる程度に)硬質の材料からなる硬質保持部材2と、膨出部材4とを有している。
【0040】
硬質保持部材2は、乗員Mの左右それぞれに合計2つが設けられている。各硬質保持部材2は、この例では着座した乗員Mの太腿形状に略沿うような略「へ」の字型断面形状で、かつ先端側(乗員の股間側)が基端側に対して先細となる形状を備えている。また、基端部2aは、ヒンジ等の回動支持部材(収納機構)3によって座席1の適宜の部位(この例では座部1L)に回動可能に支持されている。
【0041】
車両が停止し乗員Mが乗降するとき等においては、硬質保持部材2は、上記回動支持部材3を回動中心に、座部1Lの側方(乗員Mの股間側と反対方向)部の下方へ向かうように(非膨出状態の膨出部材4とともに)回動されて(図1中の矢印A参照)、乗降の邪魔にならないように収納された状態(収納状態)となる。乗員Mが着座後に、硬質保持部材2は、この収納状態から前述と逆に上方へと回動されて、着座した状態の乗員Mの腰部又は大腿部に対し所定の第1間隙を介し対向する状態(保持状態)となる。
【0042】
図2は、硬質保持部材2の先端側部分及びそこに設置されている膨出部材の設置構成を表す図1中X方向からの矢視図である。この図2において、膨出部材4は、上記硬質保持部材2の乗員M側(腰部又は大腿部に対向する下面側)に膨出可能に設けられている。このとき、通常時(非膨出時)において図示する例のように硬質保持部材2の表面に凸設してもよいし、または硬質保持部材2内に収納されるように設けてもよい。いずれにしても、非膨出時においては、硬質保持部材2と同様、膨出部材4も、乗員Mの着座した状態の乗員Mの腰部又は大腿部に対し所定の第2間隙(上記第1間隙と略同じか、やや小さい。又はやや大きくなる構成もあり得る)を介し対向する状態となる。
【0043】
本実施形態の例では、硬質保持部材2の乗員M側(図中下側)の平面に膨出部材4を構成する膨出部材モジュール5がボルト6の締結によって凸設されており、硬質保持部材2の内部に配置されている流体配管(圧力流体の流通経路)7を介して後述する圧力流体発生装置8(図2中では不図示、後述の図4参照)に接続されている。
【0044】
図3は、上記膨出部材モジュール5の詳細な構成を表す斜視図であり、図3(a)は全体の外観を表す図、図3(b)は分解図である。この図3において、膨出部材モジュール5は、全体が略矩形形状で両端に設置用のボルト孔9が形成されているアウタープレート10と、内部に圧力流体(例えば圧縮ガス等)等が供給されることで膨出可能な袋体(図中では収縮している非膨出状態)で構成されている膨出体本体11と、この膨出体本体11の内部に挿入される略矩形形状のインナープレート12とで構成されている。
【0045】
インナープレート12の4カ所の隅部には係止孔13が形成されており、アウタープレート10にはそれら係止孔13に対応する位置で固定鋲14が設けられている。インナープレート12を膨出体本体11の内部に挿入した状態で、それぞれの係止孔13に上記アウタープレート10の固定鋲14を挿入させて締結(各固定鋲の突出した頭部を打壊するかまたはナットなどにより締結)することにより、膨出体本体11とアウタープレート10とが合体される。この状態で膨出体本体11は、インナープレート12の広い表面面積でアウタープレート10に挟まれて固定される。
【0046】
図4は、上記のように硬質保持部材2に設置される膨出部材4へ圧力流体を供給する圧力流体発生装置8の構成とそれらを接続する流体配管7の接続構成を概念的に表す模式図である。この図4において、圧力流体発生装置8は座席1の座部1Lの下方に配置されている。この圧力流体発生装置8は中央配管15を有しており、この中央配管15には、圧力流体として膨出部材4を急速に膨出展開(膨張展開)させるための燃焼圧縮ガスを供給するインフレータ16と、中央配管15内の流体圧力を計測する圧力計17と、外気と通じる排気弁(流体排出機構)18と、中央配管15から順に逆止弁19及び供給弁20を介して通じるエアポンプ21とが接続されている。
【0047】
排気弁18、逆止弁19、及び供給弁20は、制御信号の入力により圧力流体の流通を許容する開放状態と流通を遮断する閉止状態とを切り換える開閉制御可能な電磁弁であり、特に逆止弁19は閉止状態でもエアポンプ21側から中央配管側15への圧力流体の流入のみを許容可能な構成となっている。エアポンプ21は、圧力流体としての圧縮空気の供給とその強制的な吸気が可能なものである。
【0048】
そして、中央配管15は座席1の座部1Lの内部に通じて2つの流体配管7に分岐しており、それぞれの分岐した流体配管7が各硬質保持部材2の内部を通じて各膨出体本体11に連通接続されている。なお、本実施形態の例において、各膨出体本体を十分な膨出状態とするにはそれぞれ2〜10L(リットル)程度の容量の圧力流体が必要となる。また、ヒンジ等で構成される上記回動支持部材3の近傍位置では、各流体配管7が可撓性材料で蛇腹構造となる変形流通部22で構成されており、上述した回動支持部材3を回動中心とする硬質保持部材2の回動に応じて変形して圧力流体の流通経路の配置を変化できるようになっている。
【0049】
図5は、本発明に係る乗員拘束装置の制御系を表す制御ブロック図である。この図5において、乗員Mが乗車する車体Aの適宜箇所に衝突物Bが衝突した際の衝撃を検出する衝撃センサ、例えば加速度センサ31と、衝突物Bと車体Aとの距離を計測する距離センサ、例えばレーダセンサ32とを備え、それらの各センサ31,32は、制御ユニット33に接続されている。
【0050】
この制御ユニット33は、排気弁18、逆止弁19、及び供給弁20のそれぞれに対して開閉制御可能に接続され、インフレータ16に対してその内部で膨張用ガス発生のための燃焼開始を制御できるよう接続され、エアポンプ21に対して圧縮空気の供給と吸気を制御できるよう接続され、圧力計17に対して中央配管15内の圧力流体の圧力を検出できるよう接続されている。
【0051】
図5において、車体Aに向けて車体側方から他の車両Bが接近してくると、車両Bがレーダセンサ32によって検出される。そして、レーダセンサ32からの信号に基づいて制御ユニット33によって車両Bの位置、接近速度等が計測され、それによって衝突可能性が判断される。
【0052】
そして、制御ユニット33において、衝突可能性が大であると判断された場合には、エアポンプ21に圧縮空気の供給と吸気を短い周期で繰り返させて膨出部材4を脈動(小刻みに震わせる)させるようにし、それによる振動を乗員Mの腰部や大腿部に伝えて衝突可能性が大きいことを体感的に報知する。この状態は、車両Bの衝突可能性が小さくなるまで維持される。
【0053】
このように膨出部材4に脈動を行わせる際には、圧力流体発生装置8の内部で排気弁18を閉止状態とし、逆止弁19及び供給弁20を開放状態としてエアポンプ21からの圧縮空気の供給による膨出動作と吸気による収縮動作を反復することで膨出部材4に脈動を行わせる。またこのとき制御ユニット33は、圧力計17により検知した中央配管15内の空気圧(すなわち各膨出部材4への圧縮空気の供給圧)に基づいて圧縮空気の過剰な供給と吸気を抑制するように調整する(図4参照)。
【0054】
なお、後述する変形例のように、膨出部材4の膨出体本体11自体にその収縮時の形状に戻すための収縮用部材が設けられている場合には、エアポンプ21に吸気作動を行わせずとも膨出部材4を脈動させることができる(詳しくは後述する変形例において説明する)。
【0055】
一方、図5において、車体Aに車両Bが衝突した場合には、その衝撃は加速度センサ31を介して制御ユニット33によって検出される。すると、制御ユニット33によってインフレータ16の発火剤が点火され、それによって燃焼圧縮ガスが発生される。この燃焼圧縮ガスは、中央配管15から各流体配管7を介して各膨出部材4内に噴出され、それによって図6に示すように各膨出部材4の膨出体本体11が硬質保持部材2から大きく急速に膨出し、着座した乗員Mの腰部や大腿部に当接して乗員Mを拘束する。このとき、膨出状態の膨出部材4は乗員の身体に対して広い受圧面積で衝撃を吸収することができる。
【0056】
このように膨出部材4を急速に大きく膨出させる際には、圧力流体発生装置8の内部で排気弁18、逆止弁19、及び供給弁20を全て閉止状態とし、インフレータ16から発生する燃焼圧縮ガスをそのまま膨出部材4に流入させて膨出動作を行わせる。なお、圧力流体発生装置8を作動させることのない通常運転時には、排気弁18、逆止弁19、及び供給弁20を全て閉止状態としておく。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の乗員拘束装置においては、衝突等が発生した場合には、膨出部材4が硬質保持部材2から膨出し、着座した乗員Mの腰部又は大腿部に当接することで、乗員Mを拘束することができる。このとき、膨出部材4は膨出変形することにより乗員Mの身体に対して広い受圧面積で衝撃を吸収することができる。すなわち、乗員Mの身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上できる。
【0058】
なお、本実施形態の乗員拘束装置は、ステアリングハンドルやコンソールパネル等に設けられる公知のエアバッグと併せて用いることにより、乗員Mの身体に対して多様な方向でより広い受圧面積で拘束できることから、衝撃の吸収性能をさらに向上させることができる。
【0059】
また、本実施形態においては、膨出部材4は、硬質保持部材2と腰部又は大腿部との間の複数箇所で膨出可能に設けられていることにより、乗員Mの身体に当接して拘束する位置にのみ膨出部材4を分割して配置させ、効率のよい膨出が可能となる。
【0060】
なお、本実施形態においては、各膨出部材4を、膨出時に乗員Mの腰部前面又は大腿部上面に当接させるように配置させていたが、本発明はこれに限られず、例えば図7に示すように膨出時に腰部又は大腿部の側面に当接し拘束するよう配置された膨出部材23を設けてもよい。これにより、車両側面からの衝突に対しても乗員Mの身体を拘束しつつ衝撃の吸収性能を向上することができる。
【0061】
また、本実施形態においては、硬質保持部材2を収納するために回動支持部材3を有していることにより、座席1や車両の車体などに硬質保持部材2を収納した際には、乗員Mは硬質保持部材2に邪魔されることなく円滑に車両等の乗降を行うことができる。
【0062】
また、本実施形態においては、回動支持部材3は、乗員Mの体格や着座位置に応じて硬質保持部材2の保持位置を調整することが可能である。本実施形態の例においては、乗員Mの大腿部の大きさに応じて膨出部材4の上下方向の位置を調整することができる。この結果、膨出部材4を当接させるべき所定の身体部位に膨出部材4を配置させることができる。
【0063】
また、本実施形態においては、膨出部材4は、膨出動作及びその逆動作である収縮動作を反復可能に構成されていることにより、衝突時等において一度膨出動作した後でも、(使い切りでなく)再度収縮させて利用することができる。
【0064】
また、本実施形態においては、膨出部材4を膨出させるための圧力流体を供給する圧力流体発生装置8を有することにより、膨出部材4が圧縮空気(圧力流体)の流入により膨出する袋体などからなる場合に迅速にその膨出動作を行わせることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、膨出部材4から圧力流体を排出可能な排気弁18を有することにより、膨出状態となった膨出部材4から圧力流体を迅速に排出して収縮させることができる。
【0066】
また、本実施形態においては、圧力流体発生装置8は、車両の状態や衝突予知情報などに応じて、膨出部材4に対する圧力流体の供給と排出を制御可能であることにより、衝突時以外でも、例えば通常運転時において小幅に膨出・収縮させることで、居眠り抑制や速度超過等の注意喚起、衝突可能性が大きい状態であることの報知、その他の報知に用いることもできる。
【0067】
また、本実施形態においては、圧力流体発生装置8は、インフレータ16と、エアポンプ21と、供給弁20と、逆止弁19と、排気弁18とを有している。これにより、衝突時等においてはインフレータ16からの燃焼圧縮ガスを膨出部材4に供給して瞬発的な膨出動作を行うことができ、また通常運転時においてはエアポンプ21による圧縮空気の供給及び吸気により膨出部材4の小幅な膨出動作と収縮動作を行うことができ、また供給弁20を開閉制御することでエアポンプ21から膨出部材4へ圧縮空気を供給する際のタイミングと供給量を制御することができ、また逆止弁19を開閉制御することでエアポンプ21から膨出部材4へ圧縮空気を供給している際に膨出部材4内の空気圧がエアポンプ21の供給圧を超えた場合でもエアポンプ21への空気の逆流入を抑制してエアポンプ21が損傷することを回避でき、また排気弁18を開閉制御することで膨出部材4内部から圧縮空気を排出する際のタイミングと排出量を制御することができる。
【0068】
また、本実施形態においては、圧力流体発生装置8を座席の下方に設けていることにより、乗員Mがアクセスすることのない座席の下方のスペースに圧力流体発生装置8を配置させて、乗員Mが通常時にアクセスできる車両内空間をより広く確保することができる。
【0069】
また、本実施形態においては、圧力流体発生装置8と膨出部材4との間の圧力流体の流通経路(流体配管7)の少なくとも一部に当該流通経路の配置を変化できる変形流通部22を有している。これにより、膨出部材4が設けられている硬質保持部材2が変形または収納できる構造であっても、その形状の変化に対応して圧力流体の流通経路における流通機能を維持させることができる。
【0070】
なお、本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0071】
(1)膨出部材を側方にスライド収納する場合
図8は、この変形例による乗員拘束装置200の全体概略構造(但し膨出部材4の収縮状態;後述の図10も同様)を表す斜視図であり、上記図1に相当する図である。また、図9は、図8中のIX−IX線による縦断面図である。各図ともに図1と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。なお、図9においては、図示の煩雑を避けるために、膨出部材4に接続する流体配管7の図示を省略している。
【0072】
これら図8、図9において、各硬質保持部材202は膨出部材4が設けられた外側先端部202aと内側基端部202bの2つの部材で構成されており、この例では着座した乗員Mの太腿形状に略沿うような略「へ」の字型断面形状の外側先端部202aが内側基端部202bの外側(乗員Mの股間側と反対側)で重なって長手方向(図中の上下方向)で移動可能に組み立てられている。内側基端部202bの上端部分(外側先端部202aと重なっている側の端部)にはギア241が軸設されており、このギア241が外側先端部202aの内面に形成されているラック242と噛合している。このギア241を図示しないモータなどで回転駆動することで、外側先端部202aの移動を自動的に制御することが可能であり、またギア241の回転量をポテンショメーターなどのセンサで検出することで外側先端部202aの移動位置を把握することも可能である。
【0073】
また、内側基端部202bはその長手方向の中央位置で、ヒンジで構成される回動支持部材203によって座席1の座部1Lの側面に回動可能に支持されている。そして座席1の座部1Lの内部には、エアポンプ21からの圧縮空気の供給と吸気によりピストン243aの突出量を制御可能なエアシリンダ243が設置されており、そのピストン243aが座部1Lの側面から内側基端部202bの下端部分の内面に当接する方向で突出していることで、そのピストン243aの突出長さにより内側基端部202b(及び外側先端部202aを含む硬質保持部材202全体)の外側に向かう方向(図9中の時計回り方向)の回動限界位置が規定されるようになっている。
【0074】
そして、車両が停止し乗員Mが乗降するとき等においては、本変形例の硬質保持部材202は、図8に示した状態から、外側先端部202aを下方に移動させて全体を短く変形させるとともに、エアシリンダ243のピストン243aを引き込ませて硬質保持部材202全体が外側へ向かう方向の回動が許容され(図8中の矢印参照)、図10に示すように乗降の邪魔にならないよう座部1Lの側方にほぼ大部分又は全部が収納された状態(収納状態)とすることができる。乗員Mが着座後に、硬質保持部材202はその収納状態から前述と逆方向に変形・回動移動されて、着座した状態の乗員Mの腰部又は大腿部に対し所定の第1間隙を介し対向する状態(保持状態)となる。上記の構成及び動作以外は上記実施形態と同様である。
【0075】
以上において、ギア241、ラック242、回動支持部材203、及びエアシリンダ243が収納機構を構成する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0076】
(2)膨出部材を前後方向に回動収納する場合
図11は、この変形例による乗員拘束装置300の全体概略構造(但し膨出部材4の収縮状態;後述の図12も同様)を表す斜視図であり、上記図1や図7に相当する図である。図1等と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0077】
図11においては、硬質保持部材302は膨出部材4が設けられた先端部302aと基端部302bの2つの部材で構成されており、先端部302aと基端部302bがヒンジで構成される回動関節部材302cを介して屈曲可能に結合されている。また基端部302bは、座席1の座部1Lの側面に設けられた回動軸303(軸線方向が車両の略左右方向である)に軸支されており、これによって硬質保持部材302全体は、回動軸303を回動中心として、車両前後方向(図11中左下〜右上方向)に回動可能となっている。なお、回動関節部材302c及び回動軸303は、図示しないラッチ構造により、それぞれ任意の屈曲角度と任意の回動角度で固定できるようになっている。
【0078】
そして、車両が停止し乗員Mが乗降するとき等においては、本変形例の硬質保持部材302は、図11に示した状態から、先端部302aと基端部302bが略直線上に配置するよう回動関節部材302cを回動中心に先端部302aを回動させて屈曲を戻す(図11中の矢印B参照)とともに、硬質保持部材302全体が座部1Lの前方(図11中左下側)へ向かうように(収縮状態の膨出部材4とともに)回動軸303を回動中心に回動され(図11中の矢印C参照)、図12に示すように乗降の邪魔にならないように座部1Lの側方空間に収納した状態(収納状態)となる。乗員Mが着座後に、硬質保持部材2はその収納状態から前述と逆に上方へと回動されるとともに、先端部302aと基端部302bを屈曲させて、着座した状態の乗員Mの腰部又は大腿部に対し所定の第1間隙を介し対向する状態(保持状態)となる。上記の構成及び動作以外は上記実施形態と同様である。
【0079】
以上において、回動関節部材302c及び回動軸303が収納機構を構成する。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0080】
(3)膨出部材を前後方向にスライド収納する場合
図13は、この変形例による乗員拘束装置400の全体概略構造(但し膨出部材4の収縮状態;後述の図14も同様)を表す斜視図であり、上記図1、図7、及び図11に相当する図である。図1等と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0081】
図13においては、硬質保持部材402は膨出部材4が設けられた先端部402aと移動用エアシリンダ(収納機構)451とで構成されており、移動用エアシリンダ451は車両の略前方(図13中左下方向)に向けてピストン451aを突出させる姿勢で座席1の背部1Bの側面にそのシリンダ本体451bが固定されている。そして先端部402aは、移動用エアシリンダ451のピストン451aの端部において長手方向に沿うよう固定されている。移動用エアシリンダ451は、エアポンプ21からの圧縮空気の供給と吸気によりピストン451aの突出量を制御できるとともに、ピストン451aをその軸線周りに回転制御でき、それらピストン451aの突出量及び回転角度は図示しないロック機構により任意に固定できるようになっている。
【0082】
そして、車両が停止し乗員Mが乗降するとき等においては、本変形例の硬質保持部材402は、図13に示した状態から、ピストン451aを回転させて先端部402aを背部1Bの側方(乗員Mの股間側と反対方向)へ向かうように回動(図13中の矢印D参照)させるとともに、ピストン451aを引き込ませて先端部402aが車両の略後方(図13中右上方向)へ移動され、図14に示すように乗降の邪魔にならないよう背部1Bの側方近傍に収納された状態(収納状態)とすることができる。乗員Mが着座後に、硬質保持部材402はその収納状態から前述と逆方向に先端部402aを移動・回動されて、着座した状態の乗員Mの腰部又は大腿部に対し所定の第1間隙を介し対向する状態(保持状態)となる。
【0083】
上記の構成及び動作以外は上記実施形態と同様である。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0084】
(4)膨出部材を膨出・収縮反復可能に構成した場合
以上においては、膨出部材4の膨出・収縮の反復性について特に配慮されていなかったが、これに限られない。すなわち、圧力流体の流入によっていったん膨出した後、圧力流体の排出(強制排出、あるいは自然排出や漏れ等も含む)によって収縮し、また再度使用可能な構成としてもよい。
【0085】
図15(a)は、このような膨出部材4の変形例の概略構造を表す横断面図(但し非膨出すなわち収縮状態)である。図15(b)は、その膨出状態を表す横断面図であり、図1中XV−XV線による横断面図に相当する。図1等と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0086】
図15(a)において、本変形例の膨出部材4は、この例では、2つの基布4a,4bを、その一方側の逢着部K1と他方側の逢着部K2とでそれぞれ縫合する(又は接着等でもよい)ことにより、前述の袋体を構成している。そして一方の基布4aの一部に、小さい径のベントホール61(圧力流体を漏出させる孔)が形成されている。また、その袋体の内部には、上記逢着部K1,K2を接続するように例えばバネや網目材等の適宜の伸縮性材料からなる伸縮材(収縮用部材)4cが設けられている。この伸縮材4cは例えば図15(a)の状態では(張力が0かそれに近い)自然長である。なお、このような膨出部材4は図示想像線で示すカバーCで覆うようにしてもよい(上記図1等においては図示省略している)。
【0087】
この非膨出(収縮)状態において、車両の衝突発生時(あるいは予知時)に前述のようにして圧力流体発生装置8からの圧力流体が発生されると、この発生した圧力流体は、流体配管7を介し上記基布4,4bの内部空間、すなわち袋体内部へ供給されて基布4a,4bが押し広げられ袋体が膨出し硬質保持部材2から膨出する。図15(b)はこの膨出状態を表している。
【0088】
図15(b)において、上記膨出状態では、前述のようにして基布4a,4bが押し広げられることで逢着部K1,K2の距離が大きく広がる。この結果、これら逢着部K1,K2を接続するように設けた上記伸縮材4cは引き延ばされる。これにより、伸縮材4cには、図15(a)の状態に戻ろうとする張力(復元力)が加わっている(図中矢印F参照)。
【0089】
したがって、例えば前述の圧力流体の供給が停止し(又は少なくなり)、上記ベントホール61を介した漏れ(図中矢印G参照)によって袋体内部の圧力が低下した場合(あるいは排気弁18が開放状態となって流体配管7を介し袋体内部の圧力流体が排気された場合)、上記伸縮材4cの復元力が作用する。すなわち、伸縮材4cが元の状態に縮むことにより逢着部K1,K2の距離が小さくなり、基布4a,4bが元のように折り畳まれる結果、図15(a)に示す最初の状態(非膨出、収縮状態)に戻る。
【0090】
なお、上記ベントホール61は、膨出部材4の迅速な膨出動作を阻害することがないよう、圧力流体発生装置8からの圧力流体の供給速度より少ない流出速度で膨出部材4の内部から圧力流体を漏出するだけの十分小さな径で形成される。
【0091】
なお、伸縮材4cは基布4a,4bの内部でなく外側に設けてもよい。図16(a)及び図16(b)はそのような他の変形例を表す断面図であり、上記図15(a)及び図15(b)にそれぞれ相当する。図15等と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0092】
図16(a)において、本変形例の膨出部材4では、2つの基布4a,4bを逢着部K1,K2で縫合する(又は接着等でもよい)ことで袋体を構成している。そして、伸縮材4cは、上記袋体の外縁部を上記逢着部K1,K2が近接するように折り畳んだ状態で、当該逢着部K1,K2を接続するように設けられている。
【0093】
この非膨出(収縮)状態において、前述と同様、圧力流体が、上記基布4,4bの内部空間へ供給されて上記折り畳まれた外縁部が(伸縮材4cを引き延ばしながら)押し広げられた後、袋体が膨出し硬質保持部材2から膨出する。図16(b)はこの膨出状態を表している。
【0094】
図16(b)において、上記膨出状態では、前述のようにして袋体が膨出することで逢着部K1,K2の距離は大きく広がる。この結果、これら逢着部K1,K2を接続するように設けた上記伸縮材4cは一方側の基布(この例では基布4b)の外周側に沿うように大きく引き延ばされる。
【0095】
この状態で、伸縮材4cには、図16(a)の状態に戻ろうとする張力(復元力)が加わっている(図中矢印H参照)。袋体内部の圧力が低下した場合等においては、上記伸縮材4cが復元力で元の状態に縮むことにより、逢着部K1,K2の距離が小さくなり、基布4a,4bからなる袋体が元のように折り畳まれる結果、図16(a)に示す最初の状態(非膨出、収縮状態)に戻る。
【0096】
さらに、上記のカバー自体を伸縮材で構成してもよい。図17(a)及び図17(b)はそのような他の変形例を表す断面図であり、上記図15(a)及び図15(b)にそれぞれ相当する。図15等と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0097】
図17(a)において、本変形例の膨出部材4では、2つの基布4a,4bからなる袋体を、伸縮性材料からなるカバー(収縮用部材)Coで覆っている。
【0098】
この非膨出(収縮)状態において、前述と同様、圧力流体が、上記基布4,4bの内部空間へ供給されて(カバーCoをその内周側より押し広げながら)袋体が膨出し、硬質保持部材2から膨出する。図17(b)はこの膨出状態を表している。
【0099】
図17(b)において、上記膨出状態では、前述のようにして袋体が膨出することでカバーCoは基布4a,4bの外周側に沿うように大きく延ばし広げられる。
【0100】
この状態で、カバーCoには、図17(a)の状態に戻ろうとする張力(復元力)が加わっている(図中破線矢印I参照)。袋体内部の圧力が低下した場合等においては、上記カバーCoが復元力で元の状態に縮むことにより、基布4a,4bからなる袋体が元のように折り畳まれる結果、図17(a)に示す最初の状態(非膨出、収縮状態)に戻る。なお、この構成の場合には、カバーCoにもベントホール62を設け、基布4aから漏出してカバーCo内に流入した圧力流体をベントホール62から漏出させる必要がある。
【0101】
これらの変形例においては、膨出部材4が当該膨出部材4を収縮時の形状に戻すための伸縮性材料からなる伸縮材4c又はカバーCoを有していることにより、膨出動作を行っている時以外には自動的に膨出部材4を収縮時の形状に戻して維持させることができる。
【0102】
また、本変形例においては、圧力流体を排出する構成として、膨出部材4に形成され、圧力流体発生装置8からの圧力流体の供給速度より少ない流出速度で膨出部材4の内部から圧力流体を漏出可能なベントホール61を有していることにより、衝突時に膨出部材4を所定の膨出状態として乗員Mを拘束させた後に、過剰な拘束を回避するよう膨出部材4内部の圧縮空気を継続的に漏出させて自然な収縮動作を行わせることができる。
【0103】
そしてこのように膨出部材4自体にその収縮時の形状に戻すための収縮用部材(上記変形例における伸縮材4c又はカバーCo)が設けられている場合には、前述したように圧力流体発生装置8のエアポンプ21に吸気作動を行わせずとも膨出部材4を脈動させることができる(図4参照)。具体的には、供給弁20を開放状態とし、逆止弁19を閉止状態としてエアポンプ21から常に圧縮空気を供給させておき、排気弁18を閉止状態とすることで中央配管15及び各流体配管7の内圧が上昇し、各膨出部材4に圧縮空気を流入させて膨出動作を行わせる。なお、この際に中央配管15内の圧力がエアポンプ21の供給圧を超えた場合でも逆止弁19の機能によりエアポンプ21への逆流を抑制することができる。
【0104】
また排気弁18を開放状態として圧縮空気が排気されることで、中央配管15及び各流体配管7の内圧が下がり、また各膨出部材4が有する上記収縮用部材の張力によって各膨出部材4の収縮動作が行われる。この際にはエアポンプ21からの圧縮空気の供給量より多く排気できるよう排気弁18は広く開口させる必要がある。
【0105】
そして制御ユニット33は、圧力計17により検知した中央配管15内の空気圧(すなわち各膨出部材4への圧縮空気の供給圧)に基づいて排気弁18の開閉を切り換えるタイミング(膨出動作と収縮動作を切り換えるタイミング)を調整する。
【0106】
上述した実施形態及び各変形例の具体的な構成は、本発明の内容を厳密に限定するものではなく、細部に関しては本発明の趣旨に沿って多様に変更できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の一実施形態による乗員拘束装置であって膨出部材が収縮状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図2】硬質保持部材の先端側部分及びそこに設置されている膨出部材の設置構成を表す図1中X方向からの矢視図である。
【図3】膨出部材モジュールの詳細な構成を表す斜視図であり、全体外観図と分解図である。
【図4】圧力流体発生装置の構成と接続する流体配管の接続構成を概念的に表す模式図である。
【図5】乗員拘束装置の制御系を表す制御ブロック図である。
【図6】一実施形態による乗員拘束装置であって膨出部材が膨出状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図7】膨出時に乗員の大腿部の上面及び側面にそれぞれ当接させる2つの膨出部材を設けた構成を表す図である。
【図8】膨出部材を側方にスライド収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が保持状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図9】図8中のIX−IX線による縦断面図である。
【図10】膨出部材を側方にスライド収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が収納状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図11】膨出部材を前後方向に回動収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が保持状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図12】膨出部材を前後方向に回動収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が収納状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図13】膨出部材を前後方向にスライド収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が保持状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図14】膨出部材を前後方向にスライド収納する変形例による乗員拘束装置であって硬質保持部材が収納状態にある場合の全体概略構造を表す斜視図である。
【図15】膨出部材を膨出・収縮反復可能に構成した変形例の概略構造を表す横断面図である。
【図16】膨出部材を膨出・収縮反復可能に構成した他の変形例の概略構造を表す横断面図である。
【図17】膨出部材を膨出・収縮反復可能に構成したさらに他の変形例の概略構造を表す横断面図である。
【符号の説明】
【0108】
1 座席
2 硬質保持部材
3 回動支持部材(収納機構)
4 膨出部材
4c 伸縮材(収縮用部材)
7 流体配管
8 圧力流体発生装置
16 インフレータ
17 圧力計
18 排気弁(流体排出機構)
19 逆止弁
20 供給弁
21 エアポンプ
22 変形流通部
33 制御ユニット
61 ベントホール(流体排出機構)
100 乗員拘束装置
200 乗員拘束装置
202 硬質保持部材
203 回動支持部材(収納機構)
241 ギア(収納機構)
242 ラック(収納機構)
243 エアシリンダ(収納機構)
300 乗員拘束装置
302 硬質保持部材
302c 回動関節部材(収納機構)
303 回動軸(収納機構)
400 乗員拘束装置
402 硬質保持部材
451 移動用エアシリンダ(収納機構)
M 乗員
Co カバー(収縮用部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に着座した乗員の腰部又は大腿部に対し所定の間隙を介し対向するように設けた硬質保持部材と、
この硬質保持部材に膨出可能に設けられ、前記膨出時に前記腰部又は大腿部に当接し拘束する膨出部材と
を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材は、前記硬質保持部と前記腰部又は大腿部との間の複数箇所で膨出可能に設けられていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材は、前記膨出時に前記腰部又は大腿部の側面に当接し拘束することを特徴する乗員拘束装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乗員拘束装置において、
前記硬質保持部材を収納する収納機構を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項5】
請求項4記載の乗員拘束装置において、
前記収納機構は、前記乗員の体格や着座位置に応じて前記硬質保持部材の保持位置を調整可能であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材は、前記膨出動作及びその逆動作である収縮動作を、反復可能に構成されていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項7】
請求項6記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材は、当該膨出部材を収縮時の形状に戻すための伸縮性材料からなる収縮用部材を有していることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材を膨出させるための圧力流体を供給する圧力流体発生装置を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項9】
請求項8記載の乗員拘束装置において、
前記膨出部材から前記圧力流体を排出可能な流体排出機構を有することを特徴する乗員拘束装置。
【請求項10】
請求項9記載の乗員拘束装置において、
前記圧力流体発生装置は、車両の状態や衝突予知情報などに応じて、前記膨出部材に対する前記圧力流体の供給と排出を制御可能であることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項11】
請求項9又は10記載の乗員拘束装置において、
前記圧力流体発生装置は、
前記圧力流体として内部の発火剤を燃焼させて生成した燃焼圧縮ガスを供給するインフレータと、
前記圧力流体として圧縮空気の供給及びその吸気が可能なエアポンプと、
前記エアポンプから前記膨出部材への前記圧縮空気の供給とその停止を切り換えるための開閉制御可能な電磁弁からなる供給弁と、
前記膨出部材から前記エアポンプへの前記燃焼圧縮ガス又は前記圧縮空気の逆流を抑止するための開閉制御可能な電磁弁からなる逆止弁と、
前記膨出部材から外気への前記燃焼圧縮ガス又は前記圧縮空気の排出とその停止を切り換えるための開閉制御可能な電磁弁からなる排気弁と
を有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載の乗員拘束装置において、
前記圧力流体発生装置は、前記座席の下方に設けていることを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項13】
請求項9記載の乗員拘束装置において、
前記流体排出機構は、前記膨出部材に形成され、前記圧力流体発生装置からの前記圧力流体の供給速度より少ない流出速度で前記膨出部材の内部から前記圧力流体を漏出可能なベントホールを有することを特徴とする乗員拘束装置。
【請求項14】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載の乗員拘束装置において、
前記圧力流体発生装置と前記膨出部材との間の前記圧力流体の流通経路の少なくとも一部に当該流通経路の配置を変化できる変形流通部を有していることを特徴とする乗員拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−222200(P2008−222200A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144043(P2007−144043)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】