説明

乳化剤系、エマルジョンおよびその使用

本発明は、a) ホエータンパク質および/またはホエータンパク質加水分解物と、b) HLB値が10〜18のショ糖脂肪酸エステル、を含有する乳化剤系に関する。本発明はさらに、該乳化剤系を用いて調製したエマルジョンに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、a) ホエータンパク質および/またはホエータンパク質加水分解物と、b) HLB値が10〜18のショ糖脂肪酸エステル、を含有する乳化剤系に関する。
【0002】
本発明はさらに、α) 少なくとも1種の脂溶性物質を含む分散相と、β) 連続相としての水と、γ) 本発明の乳化剤系、を含有するエマルジョンに関する。
【0003】
本発明はさらに、本発明のエマルジョンの調製方法、ならびにヒトの栄養品、動物の栄養品、化粧品、または医薬品産業におけるその使用に関する。本発明の更なる実施形態は特許請求の範囲から明らかとなる。以下で説明する本発明の主題の上記構成は、明示した特定の組合せにおいてだけでなく、他の組合せにおいても本発明の範囲を逸脱することなしに使用できることが理解されよう。
【背景技術】
【0004】
ドイツ特許第2 363 534号は、糖を含有する液体のビタミンおよびカロテノイド製品の製造を記載している。乳化のためにレシチンやパルミチン酸アスコルビルのような生理的に許容される乳化剤が用いられる。こうした製品の一つの欠点は、例えば該製品を低温貯蔵している間に、糖または糖アルコールが結晶化しやすいことである。この結晶化傾向は望ましくない不均質性をもたらす。
【0005】
ヨーロッパ特許第551 638号は、可能なかぎり長い貯蔵期間(>6カ月)にわたって脂溶性物質の液体製品を安定化することに関する。この目的のために、乳化剤としてアスコルビン酸の長鎖脂肪酸エステルが提案されている。しかし、このエマルジョンは冷却条件下で貯蔵する必要があり、そのため輸送コストが増大し、また取扱いが面倒である。
【0006】
日本特許第2000 212 066号は、脂溶性物質のエマルジョン用の乳化剤としてポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルまたは糖脂肪酸エステルを使用することを開示している。
【0007】
日本特許第08 120 187号は、カロテノイドエマルジョン用の乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステルとショ糖脂肪酸エステルを使用することを開示している。
【0008】
韓国特許第20 020 018 518号は、カロテノイドエマルジョン用の乳化剤としてショ糖脂肪酸エステルまたはソルビタン脂肪酸エステルを使用することを開示している。最大3%のβカロテン濃度が達成される。
【0009】
ヨーロッパ特許第1 095 986号は、分散相の凝固を防止する問題を取り上げている。この問題は、脂溶性物質の水性液体製品を安定化する方法を提供することにより解決される。この場合には、保護コロイドを含まない水中油型エマルジョンが、保護コロイドを含む脂溶性物質と混合され、この調製物が水相とブレンドされる。保護コロイドは高分子量の安定化剤である。
【0010】
ヨーロッパ特許第361 928号は、分散媒としてグリセロール/水混合物を含み、分散相として脂溶性薬物を含む、非常に微細なエマルジョンを開示している。安定化剤としては、分子量1000以上の非イオン性安定化剤が使用される。この場合の分散相の平均粒子サイズは10〜70nmである。実施例に記載されたエマルジョンには、たった3カ月後に変化が認められる。
【0011】
米国特許出願公開第2002/0107292 A1号は、親油性の生理活性物質をホエータンパク質と共に含む調製物を記載している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的の一つは、可能なかぎり多様な使用可能性を意図した乳化剤系を提供することである。特に、本乳化剤系は生理的に許容されるエマルジョンの調製に使用可能であることを目的としている。本乳化剤系は、特に活性物質が高いバイオアベイラビリティ(生物学的利用性)を示す、そうしたエマルジョンをもたらすことを意図したものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、本明細書の冒頭に記載した乳化剤系により、または冒頭に記載したエマルジョンにより本発明に従って達成される。
【0014】
乳化剤は、エマルジョンを調製するための、また安定化するための助剤である。エマルジョンとは、2種以上の相互に非混和性の液体の分散系を意味する。安定化とは、分散相α)と分散媒β)が不均質になるのを防止して、熱力学的に安定した最終状態をもたらすことを意味する。本発明に関連して、分散相とは、エマルジョンの微細に分散された相という意味である。エマルジョンの連続相は、本発明との関連において、分散媒を表す。本発明の乳化剤系は分散剤として利用される。
【0015】
本発明の乳化剤系は、成分a)として、ホエータンパク質および/またはホエータンパク質加水分解物を含む。好ましく用いられるホエータンパク質は、少なくとも80%のタンパク質含量、特に好ましくは少なくとも95%のタンパク質含量を有するホエータンパク質の噴霧乾燥物である。
【0016】
ホエータンパク質の加水分解物の場合には、酵素分解されて、加水分解度が3〜20、特に好ましくは加水分解度が4〜16(OPA法により測定)の、精製したホエータンパク質を使用することが好ましい。
【0017】
成分b)としての、HLB値が10〜18のショ糖脂肪酸エステルには、ステアリン酸スクロース、パルミチン酸スクロース、ミリスチン酸スクロース、ラウリン酸スクロース、またはオレイン酸スクロースが含まれる。モノエステル(例えば、モノステアリン酸スクロース)の割合は、それぞれの場合において、55%より多く、好ましくは70〜85%の範囲である。好適なものとして挙げられるショ糖脂肪酸エステルは、75〜85%の割合でモノラウリン酸スクロースを含む、HLB値が16のラウリン酸スクロースである。
【0018】
本発明の乳化剤系の好ましい実施形態において、成分a)と成分b)の重量比は、0.01:1〜100:1の範囲、好ましくは0.1:1〜10:1の範囲、特に好ましくは0.9:1〜1.1:1の範囲である。
【0019】
ショ糖脂肪酸エステルのほかに、乳化剤系はさらに、1種以上の低分子量乳化剤を、乳化剤系の全量に対して0.01〜70重量%、好ましくは0.1〜50重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%の濃度で含むことができる。そのようなものとして特に好適なものは両親媒性化合物または該化合物の混合物である。原則的に、HLB値が5〜20の界面活性剤はどれも適している。好適な対応する表面活性剤の例は次のものである:C10-C20-アルキルエステルのような長鎖脂肪酸とアスコルビン酸とのエステル、脂肪酸のモノおよびジグリセリドならびにそれらのエトキシル化製品、脂肪酸モノグリセリドと酢酸、クエン酸、乳酸またはジアセチル酒石酸とのエステル、ポリグリセロール脂肪酸エステル(例えば、トリグリセロールのモノステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、およびレシチン。パルミチン酸アスコルビルを用いることが好ましい。
【0020】
本発明の乳化剤系は、特に、それを用いて調製した脂溶性活性物質のエマルジョンが高いバイオアベイラビリティ効果を示す点で注目に値する。
【0021】
本発明はまた、α) 少なくとも1種の脂溶性物質α1)を含む分散相と、β) 連続相としての水と、γ) 本発明の乳化剤系、を含有するエマルジョンに関する。しかし、更なる成分が存在してもよい。本発明のエマルジョンの全成分は、該エマルジョンの重量基準で、合計100重量%となる。
【0022】
本発明のエマルジョン中に存在する脂溶性物質α1)は、原則として、どのような脂溶性物質でもよい。好ましくは、脂溶性物質α1)は生理的に許容されるものであり、すなわち、ヒトおよび動物生理学との関連において許容されるものである。しかし、植物生理学の観点から許容されるものでもよい。適当な例は、脂溶性のビタミンA、D、EもしくはK、またはそれらの誘導体、例えばビタミンAエステルおよびビタミンEエステル(酢酸レチニル、酢酸トコフェロールなど)、トコトリエノール、ビタミンK1、ビタミンK2、およびカロテノイド、例えばβカロテン、カンタキサンチン、アスタキサンチンおよびそのエステル誘導体、ゼアキサンチンおよびそのエステル誘導体、ルテインおよびそのエステル誘導体、リコペン、ならびにアポカロテナールである。カロテノイドは自然界に広範囲にある色素で、多くの食物中に微細に分散した形態で存在し、食物に特徴的な色彩を与えている。一部のカロテノイドのよく知られたプロビタミンA効果のほかに、この理由のため、カロテノイドはヒト食品および動物飼料産業ならびに医薬品産業において着色剤としても興味がもたれている。比較的高濃度のカロテノイドエマルジョンにより得られる色彩は、通常、橙色から赤色までの範囲をカバーする。これに対して、本発明の比較的高濃度のβカロテン含有エマルジョンは、多くのヒト食品にとって望ましい鮮やかな黄色の色彩と色の濃さで区別される。
【0023】
カロテノイドはまた、皮膚を保護するために化粧品分野においても汎用されている。
【0024】
さらに、本発明との関連で使用可能な脂溶性物質α1)は、多価不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、リノール酸、リノレン酸(遊離形態とトリグリセリド形態の両方)、および芳香性の油、例えばオレンジ油、ペパーミント油または柑橘類の油である。
【0025】
さらに適当な脂溶性物質α1)は、多価不飽和脂肪酸のグリセリド、例えばコムギ油、ヒマワリ油、コーン油、もしくは中鎖長のトリグリセリド、または前記油の混合物である。
【0026】
最後に、ヒトまたは動物の体内で生理的役割を果たすが、その水不溶性のため、通常はエマルジョンとして加工される、ごく一般的な脂溶性物質α1)はどれも、本エマルジョンの成分として適している。
【0027】
本発明との関連で好ましい脂溶性物質α1)は特に、上で挙げた脂溶性ビタミン、例えばビタミンA、D、E、Kおよびそれらの誘導体;アスタキサンチン、リコペン、βカロテンおよびルテインからなる群より選択されるカロテノイド;ならびに多価不飽和脂肪酸である。アスタキサンチン、リコペン、βカロテンおよびルテインが特に好ましいものである。
【0028】
脂溶性物質α1)としてのカロテノイドは一般に、油に溶解した状態で存在する。油に溶解されるカロテノイドを分散相としての油と一緒に用いるのが一般的である。好適な油の例は、生理的に許容される油であればどれでもよいが、特にピーナッツ油、ヤシ油、ヒマワリ油、オリーブ油、または他のトリアシルグリセリドである。油の使用量は特定のカロテノイドの対応する油への溶解性により決まる。一般的には、カロテノイドを120〜220℃の範囲、好ましくは160〜200℃の範囲の温度で油に溶解させる。
【0029】
油とカロテノイドの重量比は、アスタキサンチンの場合、50〜1000の範囲、好ましくは100〜500、特に好ましくは200〜400の範囲でありうる。他のカロテノイドに関しては、用いるカロテノイドの溶解性に応じて、この重量比が1000を超えてもよい。
【0030】
脂溶性物質α1)とは、主に、単一の脂溶性物質を意味する。しかし、数種の脂溶性物質、例えば2種または3種の脂溶性物質α1)を組み合わせることも可能である。好ましくは、1種類のみの脂溶性物質α1)が用いられる。
【0031】
本発明の脂溶性物質α1)は通常、エマルジョンの全重量に基づいて、0.01〜50重量%の量で存在する。好適な実施形態では、脂溶性物質α1)の割合が、エマルジョンの全重量に基づいて、2〜40重量%、特に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは5〜15重量%である。
【0032】
カロテノイドを脂溶性物質α1)として使用する場合、それらは通常、エマルジョンの全重量に基づいて、0.01〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%、特に好ましくは0.05〜1重量%、最も好ましくは0.1〜0.5重量%の濃度で存在する。
【0033】
本発明のエマルジョンの分散相α)の平均粒子サイズは、一般に900nmまたはそれ以下である。本発明のさらなる実施形態では、分散相α)の平均粒子サイズは50nm〜850nmである。本発明の好適な実施形態では、分散相α)の粒子サイズは150nm〜500nmである。これに関連して、本発明のエマルジョンの平均粒子サイズは、例えば、光子相関分光測定装置を波長632.8nmで用いて、質量に基づく重量分布により測定することができる。
【0034】
乳化剤系γ)は、エマルジョンの全重量に基づいて、0.2〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%、最も好ましくは1〜3重量%である。
【0035】
応用分野に応じて、さらなる成分または添加剤を本発明のエマルジョンに加えてもよい。成分α)、β)、γ)および任意の可能な成分は、合計すると、エマルジョンに対して100重量%となる。
【0036】
ホエータンパク質およびショ糖脂肪酸エステルのほかに、本発明のエマルジョンは少なくとも1種の別の保護コロイドをさらに含むことができる。
【0037】
好適かつ有利な追加のコロイドは、水溶性または水膨潤性の保護コロイドであり、例えば次のものである:ウシ、ブタもしくは魚のゼラチン、特にブルーム強度が0〜250の範囲にある酸分解型または塩基分解型ゼラチン、特に好ましくはゼラチンA 100、A 200、B 100およびB 200、ならびにブルーム強度0および分子量15000〜25000 Dの酵素分解型低分子量ゼラチン、例えばCollagel AおよびGelitasol P (Eberbach、Stoess社製)、およびこれらのゼラチン型の混合物、さらにデンプン、デキストリン、ペクチン、アラビアゴム、リグニンスルホン酸、キトサン、ポリスチレンスルホン酸、アルギン酸塩、カゼイン、カゼイン酸塩(カゼイン酸ナトリウムなど)、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、改質デンプン(オクテニルスクシネートデンプンナトリウム(Capsul、National Starch社製)など)、植物タンパク質、例えばダイズ、コメおよび/またはコムギタンパク質(これらの植物タンパク質は部分的に分解されたまたは分解されていない形態でありうる)。好適な合成ヒドロコロイドは、例えばポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンである。
【0038】
好適な保護コロイドは、改質デンプン、カゼインおよび/またはカゼイン酸ナトリウム、ダイズタンパク質、およびゼラチンであるが、カゼインおよび/またはカゼイン酸ナトリウムが特に好ましいものである。
【0039】
追加的に用いられる保護コロイドの量は、エマルジョンの乾燥分に基づいて、0.1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは2〜20重量%、最も好ましくは3〜10重量%である。
【0040】
追加の保護コロイドは、本発明の乳化剤系に加えて、分散相を安定化するために飲料や他の水性液に本発明のエマルジョンを加えるときに使用することが好ましい。こうして、好ましくは高分子量の安定化剤が、特に本発明のエマルジョンを使用する(例えばヒト食品および動物飼料の分野で配合物に本発明のエマルジョンを添加する)際に添加される。
【0041】
さらに、本エマルジョンはまた、活性物質を保護するための、酸化防止剤および/または防腐剤のような、少なくとも1種の低分子量安定化剤を含むことができる。好適な酸化防止剤または防腐剤の例は、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、tert-ブチルヒドロキシトルエン、tert-ブチルヒドロキシアニソール、レシチン、エトキシキン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、または安息香酸ナトリウムである。酸化防止剤または防腐剤は、エマルジョンの乾燥分に基づいて、0.01〜50重量%、好ましくは0.1〜30重量%、特に好ましくは0.5〜20重量%、最も好ましくは1〜10重量%の量で使用される。
【0042】
パルミチン酸アスコルビルの酸化防止効果は、公知の方法で、分散相α)に加えてトコフェロールを混合することにより、さらに増大させることができる。トコフェロールの割合は、本発明のエマルジョンの全量に基づいて、0.01〜4重量%、好ましくは0.05〜0.5重量%とすることが好ましい。
【0043】
従来のエマルジョン、特にUS 2002/0107292 A1に記載されるエマルジョン(乳化剤系としてホエータンパク質とエトキシル化ソルビタン脂肪酸エステル(Tween 20)を使用)と比較して、本発明のエマルジョンは、該エマルジョン中に分散相として存在する脂溶性活性物質のバイオアベイラビリティの改善を示す。
【0044】
本発明のエマルジョンはさらに高い色彩強度を示す。色彩強度のために用いられる尺度は相対的な色彩強度であり、これはE1/1値とも呼ばれている。E1/1値は、1cmキュベットに入れた1.0%濃度の水性エマルジョンの吸収極大での比吸収係数を規定する。本発明に関連して、高い色彩強度とは、特に相対的色彩強度が100以上であることを意味する。本発明のエマルジョンの相対的色彩強度は通常100〜200である。
【0045】
本発明のさらなる実施形態において、本発明のエマルジョンは有利な低い混濁度を有し、このことは例えば特定のヒト食品にとって望ましいことである。エマルジョンの混濁度は一般に、ISO 7027/DIN EN 27027に規定されるとおりに決定される。本発明のエマルジョンは、その特定の組成に応じて、通常50 NTU〜1000 NTUの混濁度を有する。低い混濁度は一般に50 NTU〜400 NTU、特に好ましくは50 NTU〜200 NTUである。特にβカロテンの実施形態で、上記の高割合の脂溶性物質α1)を用いるときでさえ、低い混濁度が本発明のエマルジョンにより達成される。
【0046】
さらなる実施形態において、ヒト食品分野(飲料産業)および動物飼料分野での本発明のエマルジョンの適用可能性は良好である。すなわち、本明細書に記載する有望な性質が、特に飲料産業での適用例に対して、それぞれの場合に、または種々の組合せで、達成される。
【0047】
本エマルジョンをヒト食品分野および動物飼料分野で使用する場合、望ましいカロテノイド濃度は特に5 ppm〜100 ppmほどである。
【0048】
本エマルジョンを飲料産業で使用する場合、高含量の電解質を存在させることがさらに可能である。高電解質含量は、特に、各種塩類を高含量で含む濃縮液または等張飲料水のような臨界系において達成される。
【0049】
さらに、本エマルジョンを飲料産業で使用する場合、一般には低pHとする。本発明に関連して、低pHとは、特にpH6以下、例えばpH2〜pH5、とりわけpH2〜3を意味する。
【0050】
本発明のさらなる実施形態において、本発明のエマルジョンはその静菌作用により区別される。この静菌作用とは、細菌を殺すことなく、細菌の生育および増殖を防止することを意味する。
【0051】
本発明のエマルジョンの各種成分の混合は、ヒト食品、飲料、動物飼料、化粧品または医薬品にエマルジョンを添加する前に、直接行うことができる。しかし、本発明のエマルジョンをまずは、その調製後に容器に充填して保存し、必要になったときだけ、ヒト食品、飲料、動物飼料、化粧品または医薬品にエマルジョンを添加するようにしてもよい。
【0052】
好ましい実施形態において、本発明のエマルジョンは、0.1〜0.5重量%の、アスタキサンチンの実施形態の脂溶性物質α1)、1.0〜3.0重量%の、ホエータンパク質a)とHLB値が16のラウリン酸スクロースb)を含む実施形態の本発明の乳化剤系γ)を含有する。
【0053】
本発明のエマルジョンの調製方法は当業者に公知である。本発明のエマルジョンは例えば2段階で調製することができる:
− 脂溶性物質α1)を分散媒β)中に乳化して粗製のエマルジョンを調製するための予備乳化段階、および
− 最終エマルジョンを調製するための最終乳化段階。
【0054】
本発明のエマルジョンを調製するには、直径D=10〜15mmのローター/ステーターシステムを用いて、一般には6000〜10000回転/分、好ましくは8000〜10000回転/分の回転速度で乳化し、続いて高圧ホモジナイザーに1回または複数回通過させて乳化することが好ましい。さらなる予備乳化法は膜乳化法によって可能である。
【0055】
最終的な乳化は、粗製のエマルジョンを、例えば高圧ホモジナイザーに1回以上(例えば2回または3回)通過させることにより行うことができる。一般的には、200〜1200バール、好ましくは600〜1000バールの圧力のもとで乳化を行う。
【0056】
本発明のエマルジョンは、多様な目的のために、特に着色もしくはビタミン添加(特にプロビタミンA)のために使用したり、またはヒト食品(特に飲料、特に好ましくはソフトドリンク、ビタミンジュース、スポーツドリンク)における酸化防止剤として使用したりすることができる。動物の栄養品、化粧品、または医薬品産業で使用することも考えられる。
【0057】
本発明のエマルジョンは、単純かつ正確な配量のために、液体のヒト食品または動物飼料に例えばビタミン類を添加するために、またはβ-カロテンの場合には飲料(例えばレモネード)に色を付けるために、きわめて適している。
【0058】
本発明はまた、本発明の乳化剤系または本発明のエマルジョンを含むヒト食品、動物飼料、化粧品または医薬品に関する。
【実施例1】
【0059】
アスタキサンチン含有O/W型エマルジョン
O/W型エマルジョンの組成(エマルジョン1kgあたり)
連続相(エマルジョンの60重量%)
580gの再蒸留水
10gのラウリン酸スクロース(L-1695、三菱化学フーズ社製)
10gのホエータンパク質(BiPRO(登録商標)、米国Davisco社製)
分散相(エマルジョンの40重量%)
0.7gのα-トコフェロール
1.54gのアスタキサンチン
398gの中鎖長トリグリセリド(Miglyol)
【0060】
このエマルジョンを次のように調製した:
結晶質のアスタキサンチンを中鎖長トリグリセリド中に懸濁させ、振動ミルで粉砕して約20μmの粒子サイズとした。微粉砕した懸濁液を、加熱したコイルの中に送って一時的に160〜200℃の温度に上げた。このときアスタキサンチンが溶解した。次いで、分散相α)を乳化剤系γ)と混合し、これを分散媒β)に一緒に添加して、Ultra Turrax(直径D=12mm)を用いて10000回転/分で約15秒間ホモジナイズした。エマルジョンの温度は70℃ほどであった。その後最終的に、この粗製エマルジョンを600バールでスリットを通過させて乳化し、続いてMicrofluidics社製のMicrofluidizerを用いて1000バールでさらに乳化し、狭い粒度分布の分散相α)の小さな液滴を得るためにこれを3回繰り返した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ホエータンパク質および/またはホエータンパク質加水分解物、および
b) HLB値が10〜18のショ糖脂肪酸エステル、
を含有する乳化剤系。
【請求項2】
成分a)と成分b)の重量比が0.01:1〜100:1の範囲である、請求項1に記載の乳化剤系。
【請求項3】
ショ糖脂肪酸エステルがHLB値16のラウリン酸スクロースである、請求項1または2に記載の乳化剤系。
【請求項4】
ホエータンパク質加水分解物が3〜20の加水分解度を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の乳化剤系。
【請求項5】
α) 少なくとも1種の脂溶性物質α1)を含む分散相、
β) 連続相としての水、および
γ) 請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳化剤系、
を含有するエマルジョン。
【請求項6】
脂溶性物質α1)がビタミンA、D、EもしくはKまたはそれらの誘導体、または多価不飽和脂肪酸のグリセリドである、請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項7】
脂溶性物質α1)が少なくとも1種のカロテノイドである、請求項5に記載のエマルジョン。
【請求項8】
脂溶性物質α1)がアスタキサンチン、リコペン、βカロテンおよびルテインからなる群より選択される少なくとも1種のカロテノイドである、請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項9】
脂溶性物質α1)の含量が、エマルジョンの全重量に基づいて、0.01〜50重量%である、請求項5または6に記載のエマルジョン。
【請求項10】
カロテノイドの含量が、エマルジョンの全重量に基づいて、0.01〜5重量%である、請求項7に記載のエマルジョン。
【請求項11】
乳化剤系が、エマルジョンの全重量に基づいて、0.2〜20重量%に相当する、請求項5〜10のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項12】
分散相α)の平均粒子サイズが900nmまたはそれ以下である、請求項5〜11のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項13】
少なくとも1種の別の乳化剤が存在する、請求項5〜12のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項14】
少なくとも1種の別の保護コロイドが存在する、請求項5〜13のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項15】
少なくとも1種の低分子量安定化剤が存在する、請求項5〜14のいずれか1項に記載のエマルジョン。
【請求項16】
予備乳化と、その後の最終乳化によって、請求項5〜15のいずれか1項に記載のエマルジョンを調製する方法。
【請求項17】
ローター/ステーターシステムを使用し、その後高圧ホモジナイザーで乳化する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ヒトの栄養品、動物の栄養品、化粧品または医薬品産業における請求項5〜15のいずれか1項に記載のエマルジョンの使用。
【請求項19】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の乳化剤系または請求項5〜15のいずれか1項に記載のエマルジョンを含むヒト食品、動物飼料、化粧品または医薬品。

【公表番号】特表2009−500151(P2009−500151A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518859(P2008−518859)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063740
【国際公開番号】WO2007/003599
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】