説明

二軸配向多層積層ポリエステルフィルム

【課題】湿度変化に対する寸法安定性と、高温化で荷重を負荷したときの伸びが小さく、表面性と巻取り性の両立が可能な二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】芳香族ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを交互に11層以上積層した積層構造を有する二軸配向多層積層フィルムであって、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の全酸成分に占める割合が、芳香族ポリエステル(A)は5モル%未満で、芳香族ポリエステル(B)は5モル%以上80モル%未満であり、一方の表面粗さ(RaX)が0.5−5nmの範囲で、他方の表面粗さ(RaY)がRaXよりも1nm以上大きく、かつ10nm以下である二軸配向積層ポリエステルフィルムおよびそれを用いた磁気記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を共重合した芳香族ポリエステルを用いた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレートに代表される芳香族ポリエステルは優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、フィルムなどに幅広く使用されている。特にポリエチレン−2,6−ナフタレートは、ポリエチレンテレフタレートよりも優れた機械的特性、寸法安定性および耐熱性を有することから、それらの要求の厳しい用途、例えば高密度磁気記録媒体などのベースフィルムなどに使用されている。しかしながら、近年の高密度磁気記録媒体などでの寸法安定性の要求はますます高くなってきており、さらなる特性の向上が求められている。
【0003】
一方、特許文献1〜4には6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸のエステル化合物であるジエチル−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートから得られるポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートが提案されている。
【0004】
特に特許文献3では、ポリエチレン−6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートを用いたフィルムで、最大の湿度膨張率を0〜8(ppm/%RH)、最大と最小の湿度膨張率の差を0〜4.0(ppm/%RH)にすることで、トラッキングズレの小さな磁気記録フレキシブルディスクが得られることを教示している。
【0005】
しかしながら、近年の磁気記録媒体などにおける記録密度向上への要求は厳しく、それに伴ってベースフィルムに求められる寸法安定性も、ポリエチレンテレフタレートはもちろん、ポリエチレン−2,6−ナフタレートや特許文献3に提示されたようなフィルムでも達成できない状況となってきていた。
【0006】
そこで、本発明者らは、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分として用いたとき、ポリアルキレン−6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエートとその共重合相手である芳香族ポリエステルの両方の優れた特性を兼備するフィルムが得られることを見出し、特許文献5および6で提案した。
【0007】
しかしながら、共重合成分として用いたためか、優れた湿度変化に対する寸法安定性は具備するものの、通常ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムでは問題とならない120℃のような高温での加工に供すると、フィルムが張力を負荷した方向に伸びやすく、その結果しわが発生して例えば塗布斑などが発生したりする問題が新たに潜在していることを見出した。さらに、高密度記録に伴う表面平坦性への要求と、巻取り性能との両立を図らなければならず、更なる改良が必要となってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭60−135428号公報
【特許文献2】特開昭60−221420号公報
【特許文献3】特開昭61−145724号公報
【特許文献4】特開平6−145323号公報
【特許文献5】国際公開第2008/010607号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2008/096612号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、湿度変化に対する寸法安定性と、高温化で荷重を負荷したときの伸びが小さく、表面性と巻取り性の両立が可能な二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決しようと鋭意研究したところ、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分として用いたフィルム層に、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合していないか、共重合したとしても微量の共重合量の、すなわち120℃のような高温での加工に供したときに伸びにくいフィルム層を交互に多層積層し、さらにフィルムの表面粗さを表裏で異なるようにすることで、湿度膨張係数を小さくしつつ、加工時の伸びを抑制でき、しかも高密度記録に好適な表面を持ったフィルムを低コストで提供しうることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
かくして本発明によれば、芳香族ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを交互に11層以上積層した積層構造を有する二軸配向多層積層フィルムであって、下記式(I)
【化1】

(上記構造式(I)中のRは、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の全酸成分に占める割合が、芳香族ポリエステル(A)は5モル%未満で、芳香族ポリエステル(B)は5モル%以上80モル%未満であり、一方の表面粗さ(RaX)が0.5−5nmの範囲で、他方の表面粗さ(RaY)がRaXよりも1nm以上大きく、かつ10nm以下である二軸配向積層ポリエステルフィルムが提供される。
【0012】
また、本発明によれば、フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が2つの最表層の両方を形成し、最表層を形成しない側のフィルム層は平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、最表層を形成する側のフィルム層は不活性粒子を含有しないか、前記最表層を形成しない側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有し、さらに表面粗さの小さな最表層を形成するフィルム層の厚み(tX)が、表面粗さの大きな最表層を形成するフィルム層の厚み(tY)の厚みに対して、1.5倍以上であること、フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が表面粗さの大きな最表層を形成し、かつ平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、表面粗さの大きな最表層を形成しない側のフィルム層が、表面粗さの小さな最表層を形成し、かつ不活性粒子を含有しないか、表面粗さの大きな最表層を形成する側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をBより少ない含有量で含有すること、さらに表面粗さの小さな最表層の厚み(tX(nm))、表面粗さの大きな最表層の厚み(tY(nm))、表面粗さの小さな最表層に隣接するフィルム層の厚み(tX’(nm))と表面粗さの大きな最表層に隣接するフィルム層の厚み(tY’(nm))が次の関係式
(式1) tX>1.5×tX’
(式2) tY>1.5×tY’
のいずれか少なくともひとつを満たすこと、2軸配向積層ポリエステルフィルムの表面粗さの大きい最表層が、平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含む第3の層(C層)からなり、積層構造を形成するフィルム層AおよびBは、不活性粒子を含有しないか、該表面粗さの大きい最表層を形成するフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有すること、2軸配向積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の最表層が不活性粒子を有する塗膜層(第4の層、D層)であること、フィルム層Aおよびフィルム層Bが不活性粒子を含有しないこと、フィルムの厚みが1−10μmの範囲にあること、ならびに二軸配向多層積層ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられることの少なくともいずれか一つを具備する二軸配向多層積層ポリエステルフィルムも提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、湿度変化に対する寸法変化が小さく、しかも高温での加工時のフィルムの伸びを抑えつつ、表面が平坦でかつ巻取り性の良好な二軸配向積層ポリエステルフィルムが提供される。
【0014】
したがって、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムを用いれば、しわなどの不具合を抑制しつつ、優れた湿度変化に対する寸法安定性を有する高密度磁気記録媒体なども提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例でのカールの測定の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<芳香族ポリエステル(B)>
本発明の特徴の一つは、フィルム層(B)を構成する芳香族ポリエステル(B)として、芳香族ジカルボン酸成分の5モル%以上80モル%未満が、上記式(I)で示される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合成分として用いていることである。6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の割合が下限未満では湿度膨張係数の低減効果が発現されがたい。なお、上限は、成形性などの観点から、80モル%未満である。また、驚くべきことに、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分による湿度膨張係数の低減効果は、少量で非常に効率的に発現され、50モル%未満でほぼ飽和状態に近く、50モル%未満であることが好ましい。そのような観点から好ましい6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合量の上限は、45モル%以下、さらに40モル%以下、よりさらに35モル%以下、特に30モル%以下であり、他方下限は、5モル%以上、さらに7モル%以上、よりさらに10モル%以上、特に15モル%以上である。
【0017】
このような特定量の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合した芳香族ポリエステルを少なくとも一つのフィルム層に用いることで、湿度膨張係数が低い成形品、例えばフィルムなどを製造することができる。
【0018】
また、前述の構造式(I)で示される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分としては、Rの部分が炭素数1〜10のアルキレン基であるものであり、好ましくは6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、6,6’−(トリメチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分および6,6’−(ブチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分などが挙げられ、これらの中でも本発明の効果の点からは、上記一般式(I)におけるRの炭素数が偶数のものが好ましく、特に6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分が好ましい。
【0019】
上記6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分以外の芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸成分、イソフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、2,7−ナフタレンジカルボン酸成分などが挙げられ、得られるフィルムの力学的特性の点からテレフタル酸成分、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましく、特に2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が好ましい。
【0020】
また、グリコール成分としては、エチレングリコール成分、トリメチレングリコール成分、テトラメチレングリコール成分、シクロヘキサンジメタノール成分などが挙げられ、得られるフィルムの力学的特性の点からエチレングリコール成分が好ましい。好ましいエチレングリコール成分の割合は、90〜100モル%、さらに95〜100モル%の範囲である。
もちろん、本発明における芳香族ポリエステル(B)は、本発明の効果を阻害しない範囲で、それ自体公知の他の共重合成分や、他のポリマー成分を含有しても良い。
【0021】
つぎに、本発明における芳香族ポリエステル(B)は、溶融粘度が大きくなりやすいことから、DSCで測定した融点が、260℃以下、より258℃以下、さらに255℃以下、特に253℃以下にあることが製膜性の点から好ましい。また、下限については、やはり製膜性の点から、200℃以上、さらに210℃以上、特に220℃以上、もっとも好ましくは235℃以上であることが好ましい。融点が上記上限を越えると、溶融粘度が大きく溶融押し出しして成形する際に、流動性が劣り、吐出などが不均一化しやすくなり、製膜性が低下しやすい。一方、上記下限未満になると、製膜性は優れるものの、芳香族ポリエステル(B)の機械的特性などが損なわれやすくなる。なお、通常他の酸成分を共重合して融点を下げれば、同時に機械的特性なども低下するが、製膜性が向上するためか、驚くべきことに共重合をする芳香族ポリエステルや特許文献1〜5に記載の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸のエステルを主たる繰り返し単位とするポリマーと同様な機械的特性などを発現することができる。
【0022】
また、本発明における芳香族ポリエステル(B)は、DSCで測定したガラス転移温度(以下、Tgと称することがある。)が、90〜120℃の範囲、さらに95〜119℃の範囲、特に100〜118℃の範囲、最も好ましくは110〜118℃の範囲にあることが、耐熱性や寸法安定性の点から好ましい。なお、このような融点やガラス転移温度は、共重合成分の種類と共重合量、そして副生物であるジアルキレングリコールの制御などによって調整できる。
【0023】
<芳香族ポリエステル(A)>
本発明における芳香族ポリエステル(A)は、前述の芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)の高温での加工時に生じる伸びを抑制するためのフィルム層(A)を構成するものであり、フィルム層(B)と積層して二軸配向積層フィルムとしたときに、製膜方向における粘弾性測定でのtanδが115℃以上、さらに135℃以上となるものが好ましい。
したがって、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の共重合量は、全酸成分のモル量を基準として、5モル%以下であることが必要である。
【0024】
ところで、本発明の芳香族ポリエステル(A)は、フィルム層(A)を構成するポリエステル樹脂組成物としてみたときのDSCにおけるTg(ガラス転移温度)が70℃以上、さらに95℃以上、特に110℃以上であることが、前述のtanδを満足させやすいことから好ましい。好ましい芳香族ポリエステル(A)のガラス転移温度の上限は特に制限されないがフィルム層(B)と積層したときの製膜性の点から170℃以下、さらに150℃以下が好ましい。
【0025】
このような点から、具体的な芳香族ポリエステル(A)としては、繰り返し単位の95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートからなるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが最も好ましく、さらにTgを高くできるような成分を共重合したり、ブレンドしたものであっても良い。ところで、芳香族ポリエステル(A)はエチレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエチレンテレフタレートであってもよい。ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合は、前述のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと異なり、ホモポリマーにしただけでは、前述のtanδを満足させるのが困難であり、ガラス転移温度を高くできる共重合成分を共重合したり、ポリエーテルイミドや液晶樹脂をブレンドすること(例えば、特開2000−355631号公報、特開2000−141475号公報および特開平11−1568号公報などを参照)が好ましい。本発明における芳香族ポリエステル(A)は、DSCで測定した融点が、240〜300℃の範囲、さらに250〜290℃の範囲、特に260〜280℃の範囲にあることが製膜性の点から好ましい。融点が上記上限を越えると、低温では溶融粘度が大きく溶融押し出しして成形する際に流動性が劣って層厚構成などが不均一化しやすく、高温にするとポリマーの熱劣化が進みやすくなり、結果として製膜性が低下しやすい。一方、上記下限未満になると、製膜性は優れるものの、加工時の伸び抑制効果が不十分となりやすい。
【0026】
<二軸配向多層積層ポリエステルフィルム>
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、前述のとおり、フィルム層(A)とフィルム層(B)とを交互に11層以上積層した積層構造を有するものである。好ましい積層数は、フィルム層(A)とフィルム層(B)の合計層数で下限が15以上、さらに21以上、特に31以上、最も好ましくは51以上で、他方上限は10001以下、さらに1001以下の範囲にあることが層構成の均一性と効果の発現性の点から好ましい。積層数が下限未満であると、カールの発生を抑制しがたくなったり、フィルムの延伸特性が悪化して分子鎖が配向しにくくなり、所望の湿度膨張係数を持ったフィルムを製造しがたくなる場合がある。なお、積層数の上限は特に制限されないが、積層構造を維持しやすい点から、10001以下であることが好ましい。
【0027】
本発明において、二軸配向積層ポリエステルフィルムの粘弾性測定における製膜方向の高温側tanδのピーク温度は115℃以上、さらに135℃以上であることが好ましい。上記ピーク温度が下限未満では、高温での加工時の伸びの抑制効果が乏しくなる。好ましい上記ピーク温度の下限は、120℃以上、さらに125℃以上、よりさらに135℃以上、特に140℃以上、最も好ましくは145℃以上であり、上限は200℃以下、さらに180℃以下である。このような高温のtanδのピーク温度は、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を多量に共重合しているフィルム層(B)の高温での加工時の伸びを抑制するために必要であり、フィルム層(A)によって発現させたものである。なお、tanδのピーク温度は通常高温側にフィルム層(A)に起因するピークが、低温側にフィルム層(B)に起因するピークが現れ、このような高温側のピーク温度が存在することによって、高温での加工時の伸びを抑制することができる。また、フィルム層(A)によってこのような高温側のtanδのピーク温度を高く発現させるには、前述のようなポリエステル(A)の選択と製膜方向の分子配向を高める、すなわちより高い延伸倍率などで延伸を行うことなどによって調整できる。
【0028】
もちろん、本発明の効果を損なわない範囲で、他のフィルム層を積層したり、塗膜層を設けたりしても良い。なお、芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)は、より環境変化に対する寸法安定性を向上させる観点から、より厚く用いられていることが好ましい。そのような観点から、本発明の二軸配向多層積層フィルムは、フィルム層(B)の厚みの合計が、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの厚みに対して、下限が10%以上、より20%以上、さらに30%以上、よりさらに50%以上、特に55%以上、最も好ましくは60%以上であることが好ましく、他方上限は95%以下、さらに90%以下、よりさらに85%以下、特に80%以下の範囲にあることが好ましい。このような範囲とすることで、湿度変化に対する寸法安定性向上効果と加工時の伸び抑制効果とをより高度に発現出来る。下限未満では湿度膨張係数の低減効果が乏しくなりやすく、他方上限を超えるとフィルム層(A)による加工時の伸び抑制効果が乏しくなりやすい。
【0029】
本発明の二軸配向多層積層フィルムは、一方の表面粗さ(RaX)が0.5−5nmの範囲で、他方の表面粗さ(RaY)がRaXよりも1nm以上大きく、かつ10nm以下である必要がある。RaXが0.5nmよりも小さいと滑り性が悪化し巻取り性が悪化する。5nmを超えると磁気テープとしたときに電磁変換特性が悪化してしまう。RaXのより好ましい範囲は1−4nm、さらに好ましくは1.5−3nmである。RaYがRaXよりも1nm以上大きくないと、表面が平坦になりすぎるため巻取り性が悪化してしまい、一方10nmを越えるときには、磁気テープとしたときに磁性層表面に転写してしまうことにより、電磁変換特性の悪化やエラーレートの悪化をもたらす。より好ましいRaYの範囲は2−9nm、さらに好ましくは3−8nm、特に好ましくは4−7nmである。
【0030】
通常フィルムの表面粗さを粗くするには、フィルム層に不活性粒子を含有させたりして、突起を形成すればよい。含有させる不活性粒子としては、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)および粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる粒子、さらに(3)異なる素材を例えばコアとシェルに用いたコアシェル型などの複合粒子など粒子の状態で添加する外部添加粒子や(4)触媒などの析出によって形成する内部析出粒子などを挙げることができる。これらの中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンおよび二酸化ケイ素(但し、多孔質シリカなどは除く)からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが、粒子の粒径のバラツキを小さくしやすいことから好ましい。もちろん、これらは2種以上を併用しても良い。
【0031】
ただ、前述の積層構造を形成するフィルム層AおよびBだけでこのような表面粗さを満足させるのは、単純に一方のフィルム層に不活性粒子を含有させることだけでは難しい。そこで、好ましいフィルムの層構成について、さらに詳述する。
【0032】
まず、第1の層構成としては、フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が2つの最表層の両方を形成する、すなわちフィルム層AとBの合計が奇数層の場合、最表層を形成しない側のフィルム層は平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、最表層を形成する側のフィルム層は不活性粒子を含有しないか、前記最表層を形成しない側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有し、さらに表面粗さの小さな最表層を形成するフィルム層の厚み(tX)が、表面粗さの大きな最表層を形成するフィルム層の厚み(tY)の厚みに対して、1.5倍以上であることが好ましい。tXをtY対比、1.5倍以上にすることで、内側のフィルム層に内在する不活性粒子による影響を抑え、表面粗さの小さな最表層をより平坦に調整することができる。
【0033】
次に、第2の層構成については、フィルム層AとBとでそれぞれの最表層を形成させる、すなわちフィルム層AとBの合計を偶数層とし、フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が表面粗さの大きな最表層を形成し、かつ平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、表面粗さの大きな最表層を形成しない側のフィルム層が、表面粗さの小さな最表層を形成し、かつ不活性粒子を含有しないか、表面粗さの大きな最表層を形成する側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をBより少ない含有量で含有するようにすることが好ましい。この際、表面粗さの小さい最表層の厚み(tX(nm))、表面粗さの大きい最表層が厚み(tY(nm))、表面粗さの小さい最表層に隣接するフィルム層の厚み(tX’(nm))、表面粗さの大きい最表層に隣接するフィルム層の厚み(tY’(nm))は、次の関係式のいずれか少なくともひとつを満たすことが本発明の効果がより顕著となるので好ましい。
(式1) tX>1.5×tX’
(式2) tY>1.5×tY’
【0034】
式1、式2における厚み比は、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上である。上限は特に制限されないが、通常500倍以下、さらに300倍以下であることが好ましい。tXとtX’が上記(式1)を満たすことにより、表面粗さをより平坦にしやすく、他方tYとtY’が上記(式2)を満たすことにより、表面粗さをより大きく調整しやすくなる。なお、前述のフィルム層(A)と(B)は、どちらを表面粗さの小さい最表層にしても良いし、またどちらを表面粗さの大きい最表層ににしても良い。含有させる不活性粒子は、前述の物が好適に利用でき、特に表面粗さの大きな最表層に含有させる不活性粒子は、磁気記録媒体にするときのキュア工程での背面転写抑制の観点から有機粒子が好ましく、特に架橋ポリスチレン有機粒子、シリコーン樹脂粒子が好ましい。他方、表面粗さの小さな最表層に含有させる不活性粒子としては、小粒子径の均一な粒子径を有する不活性粒子を、凝集させることなく均一に分散させることが好ましく、そのような観点から球状の不活性粒子が好ましく、特に真球状シリカ粒子が好ましい。
【0035】
ところで、本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、フィルム層AとBとを交互に11層以上積層した積層構造を有しておればよく、それとは別の第3のフィルム層を形成しても良い。特にフィルム層の厚みを薄くする必要があるときに、前記積層構造を形成す部分のみでは滑り性と表面平坦性を両立する表面の形成が困難となるが、このような第3の層を設けることで、より容易に滑り性と表面平坦性を両立する表面の形成ができる。第3の層を設ける場合、2軸配向積層ポリエステルフィルムの表面粗さの大きい最表層が、平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含む第3の層(C層)からなり、積層構造を形成するフィルム層AおよびBは、不活性粒子を含有しないか、該表面粗さの大きい最表層を形成するフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有することが好ましい。なお、第3の層は、前述のフィルム層AまたはBと含有する不活性粒子の種類、大きさまたは量を異にすることが、表面粗さに違いを持たせる上で好ましい。一方、第3の層のポリマー自体の組成は、特に制限されず、ポリエステル以外の他それ自体公知の熱可塑性樹脂であっても良いが、好ましくは前述のフィルム層AやBと同じポリマーである。また、第3の層の厚みを厚くする場合、カールをより抑えやすいことから、第3の層のポリマー自体の組成は、前述の積層構造を形成するフィルム層AとBの中間の組成を有することが好ましい。
【0036】
なお、第3の層を積層する面は、フィルム層(A)または(B)のいずれの表面でもよく、前述の組合せのほかに、第3の層を表面粗さの小さな最表層を形成する層としてもよい。また、第3の層に含有させる不活性粒子は、有機粒子または有機粒子と無機粒子の組み合わせが好ましく、有機粒子としては架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂粒子、無機粒子としては球状シリカ、酸化チタンなどが好ましい。
【0037】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、その少なくとも片面に、滑り性や接着性を向上させるために、塗膜層(以下、第4の層またはD層と称することがある)を形成されたものであっても良い。塗膜層を有する場合、表面粗さは、塗膜層の表面を測定した状態で満足すればよい。この塗膜層は製膜工程中の延伸完了前の未延伸または1軸延伸フィルムへの水溶性樹脂のコーティングあるいは、製膜完了後のフィルムへのホットメルトコートまたは、製膜完了後のフィルムへの溶剤に溶解した樹脂の塗布乾燥により得ることができる。塗膜層を積層する面はフィルム層(A),(B)、さらに第3の層のいずれの面であってもよく、片面だけでなく両面であってもよい。なお、塗膜層を形成する面が、表面粗さの小さな平坦な面である場合は、塗膜層は平均粒径が1−40nmの小粒径の不活性粒子を含有していることが好ましい。好ましい不活性粒子の平均粒径は2−30nm、特に5−25nmである。他方、塗膜層を形成する面が、表面粗さの大きな粗面である場合は、塗膜層は平均粒径が30−100nmの粒子を含有していることが好ましい。好ましい不活性粒子の平均粒径は、35−80nm、特に35−60nmである。粒子の種類は球状の有機粒子が好ましく、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂粒子などが例示される。また、粗面に塗布する場合には、メチルセルロースなどの硬い樹脂を含有させると、ロール状態としたときのブロッキングも抑制できることから好ましい。なお、本発明において、塗膜層を有する場合、前述のtXおよびtYは、塗膜層の内側に位置するそれぞれ最表層側に位置するフィルム層を意味する。
【0038】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの交互積層された多層部分の厚みは、上記のように最外層とそれ以外で厚みを変えることが好ましいが、その厚みの変化は、最外層のみ厚くすることも可能であるし、また、交互積層部分の厚みを厚み方向に連続的に変化させることも可能である。
【0039】
なお、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの前記積層構造を形成する最表層以外のフィルム層の平均厚み(フィルム層Aの平均厚み:tA(nm)、フィルム層Bの平均厚み:tB(nm))には特に制約はないが、延伸性を確保するための総層数と全厚みの関係から、0.5−1000nmが好ましく、より好ましくは1−300nm、さらに好ましくは2−200nm、特に好ましくは3−100nmである。
【0040】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの好ましい態様について、さらに詳述する。
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、磁気テープなどのベースフィルムとして用いたとき、ベースフィルムが伸びないようにフィルム面方向における少なくとも一方向は、ヤング率が6.0GPa以上という高いヤング率を有することが好ましい。しかも、このようにヤング率を高くすることで、より湿度膨張係数を小さくすることができる。ヤング率の上限は制限されないが、通常18GPaである。好ましいヤング率は、フィルムの長手方向が4〜11GPa、さらに5〜10GPa、特に5.5〜9GPaの範囲であり、フィルムの幅方向が5〜18GPa、さらに6〜15GPa、さらに7〜12GPa、特に8〜10GPaの範囲である。
【0041】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、少なくとも一方向の湿度膨張係数が0.1〜9ppm/%RH、さらには1〜6ppm/%RH、特に2〜5ppm/%RHの範囲にあることが、磁気記録テープにしたときの寸法安定性の点で好ましい。特に、磁気記録テープにベースフィルムに用いる場合、湿度膨張係数の小さい方向が二軸配向ポリエステルフィルムの幅方向であることが、トラックずれなどを極めて抑制できることから好ましい。なお、本発明において、フィルムの幅方向とは、フィルムの製膜方向(長手方向、縦方向と称することもある。)に直交する方向であり、横方向と称することもある。
【0042】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、幅方向の温度膨張係数が−10〜+10ppm/℃、さらには−5〜+5ppm/℃、特に−5〜0ppm/℃の範囲にあることが、磁気記録テープにしたときの寸法安定性の点で好ましい。
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの好ましい全厚みは1−10μm、さらには2−8μm、特に好ましくは3−7μmである。
【0043】
<芳香族ポリエステル樹脂の製造方法>
つぎに、本発明における6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合している芳香族ポリエステルの製造方法について、詳述する。なお、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合していない芳香族ポリエステルは、それ自体公知の方法の製造されたものを好適に用いることができる。
【0044】
まず、6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸もしくはそのエステル形成性誘導体と例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸やテレフタル酸もしくはそれらのエステル形成性誘導体と、例えばエチレングリコールとを反応させ、ポリエステル前駆体を製造する。そして、このようにして得られたポリエステル前駆体を重合触媒の存在下で重合することで製造でき、必要に応じて固相重合などを施しても良い。このようにして得られる芳香族ポリエステルのP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(重量比40/60)の混合溶媒を用いて35℃で測定した固有粘度は、0.4〜1.5dl/g、さらに0.5〜1.3dl/gの範囲にあることが本発明の効果の点から好ましい。なお、前述のポリエステル前駆体を製造する工程でエチレングリコール成分は、全酸成分のモル数に対して、1.1〜6倍、さらに2〜5倍、特に3〜5倍用いることが生産性の点から好ましい。
【0045】
また、ポリエステルの前駆体を製造する際の反応温度としてはエチレングリコールの沸点以上で行うことが好ましく、特に190℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。190℃よりも低いと反応が十分に進行しにくく、250℃よりも高いと副反応物であるジエチレングリコールが生成しやすい。また、反応を常圧下で行うこともできるが、さらに生産性を高めるために加圧下で反応を行ってもよい。より詳しくは、反応圧力は絶対圧力で10kPa以上200kPa以下、反応温度は通常150℃以上250℃以下、好ましくは180℃以上230℃以下で、反応時間10分以上10時間以下、好ましくは30分以上7時間以下行われるのが好ましい。このエステル化反応によってポリエステル前駆体としての反応物が得られる。
【0046】
ポリエステルの前駆体を製造する反応工程では、公知のエステル化もしくはエステル交換反応触媒を用いてもよい。例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、チタン化合物などが上げられる。
【0047】
つぎに、重縮合反応について説明する。まず、重縮合温度は得られるポリマーの融点以上でかつ230〜280℃以下、より好ましくは融点より5℃以上高い温度から融点より30℃高い温度の範囲である。重縮合反応では通常30Pa以下の減圧下で行うのが好ましい。30Paより高いと重縮合反応に要する時間が長くなり且つ重合度の高い共重合芳香族ポリエステル樹脂を得ることが困難になる。
【0048】
重縮合触媒としては、少なくとも一種の金属元素を含む金属化合物が挙げられる。なお、重縮合触媒はエステル化反応においても使用することができる。金属元素としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、スズ、コバルト、ロジウム、イリジウム、ジルコニウム、ハフニウム、リチウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げられる。より好ましい金属としては、チタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズなどであり、中でも、チタン化合物はエステル化反応と重縮合反応との双方の反応で、高い活性を発揮するので特に好ましい。
【0049】
これらの触媒は単独でも、あるいは併用してもよい。かかる触媒量は、共重合芳香族ポリエステルの繰り返し単位のモル数に対して、0.001〜0.5モル%、さらには0.005〜0.2モル%が好ましい。
【0050】
具体的な重縮合触媒としてのチタン化合物としては、例えば、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソブチルチタネート、テトラ−tert−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェエルチタネート、テトラベンジルチタネート、蓚酸チタン酸リチウム、蓚酸チタン酸カリウム、蓚酸チタン酸アンモニウム、酸化チタン、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステル、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルとヒドロキシカルボン酸とリン化合物からなる反応生成物、チタンのオルトエステル又は縮合オルトエステルと少なくとも2個のヒドロキシル基を有する多価アルコール、2−ヒドロキシカルボン酸、又は塩基からなる反応生成物などが挙げられる。
【0051】
本発明におけるポリエステルには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の熱可塑性ポリマー、紫外線吸収剤等の安定剤、酸化防止剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、顔料、核剤、充填剤あるいはガラス繊維、炭素繊維、層状ケイ酸塩などを必要に応じて配合しても良い。他種熱可塑性ポリマーとしては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリエーテルイミド、ポリイミドなどが挙げられる。
【0052】
<不活性粒子の添加方法>
本発明における前述の不活性粒子の、フィルム層(A)、(B)および第3の層への添加方法は、特に制限されず、それぞれの層を構成する樹脂の重合段階で添加したり、重合後に二軸懇練押出機などで練り込んだりすればよい。好ましくは、フィルム層中での粒子の分散性をより向上させやすいことから、重合段階で最終のフィルムでの使用よりも多量に不活性粒子を含有させたマスターポリマーを作成し、それを不活性粒子を含有しないポリマーで所望の粒子濃度になるように希釈する方法が好ましい。その際、フィルターなどのろ過によって、粗大粒子などを取り除くことが好ましい。
【0053】
<フィルムの製造方法>
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、製膜方向と幅方向に延伸してそれぞれの方向の分子配向を高めたものであり、例えば以下のような方法で製造することが、製膜性を維持しつつ、ヤング率を向上させやすいことから好ましい。
【0054】
まず、ポリエステル(少なくとも一つのフィルム層は上述の6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を共重合している芳香族ポリエステル)を原料とし、これを乾燥後、溶融状態、好ましくはそれぞれの層を形成するポリエステルの融点(Tm:℃)ないし(Tm+70)℃の温度で溶融した後に流路中で所定の層数だけ分割を行ない、交互に積層した後に口金から吐出させ、急冷固化して積層未延伸フィルムとし、さらに該積層未延伸フィルムを二軸延伸する。このとき分岐流路の形状を工夫することにより、最外層の厚みのみを厚くすることや、厚み方向で厚みを徐々に変えることも可能である。また、交互積層している層を形成後、口金から押し出す前の段階までに、第3の樹脂を合流させてどちらかの最外層に積層させた構造体を作ることも可能である。
【0055】
なお、本発明で規定する両方向のヤング率、さらにαtやαhを満足させるには、その後の延伸を進行させやすくすることから、冷却ドラムによる冷却を非常に速やかに行うことが好ましい。そのような観点から、冷却ドラムの温度は、特許文献3に記載されるような80℃といった高温ではなく、20〜60℃という低温で行うことが好ましい。このような低温で行うことで、未延伸フィルムの状態での結晶化が抑制され、その後の延伸をよりスムーズに行うことができる。
【0056】
二軸延伸としては、逐次二軸延伸でも同時二軸延伸でもよい。
ここでは、逐次二軸延伸で、縦延伸、横延伸および熱処理をこの順で行う製造方法を一例として挙げて説明する。まず、最初の縦延伸は芳香族ポリエステル(A)もしくは(B)のどちらか高いほうのガラス転移温度(Tg:℃)ないし(Tg+40)℃の温度で、3〜10倍に延伸し、次いで横方向に先の縦延伸よりも高温で(Tg+10)〜(Tg+50)℃の温度で3〜10倍に延伸し、さらに熱処理としてポリマーの融点以下の温度でかつ(Tg+50)〜(Tg+150)℃の温度で1〜20秒、さらに1〜15秒熱固定処理するのが好ましい。特に、熱固定処理の温度は180〜220℃、さらに好ましくは190〜210℃の範囲で行うことが好ましい。
【0057】
前述の説明は逐次二軸延伸について説明したが、本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは縦延伸と横延伸とを同時に行う同時二軸延伸でも製造でき、例えば先で説明した延伸倍率や延伸温度などを参考にすればよい。
【0058】
さらには、滑り性向上や、易接着性を目的としてコーティング層を設けることも可能である。コーティング層は製膜工程中の未延伸フィルムや一軸延伸フィルムに水性塗液を塗布して延伸および熱固定しながら乾燥させることも可能であるし、2軸延伸終了後に塗布することで形成させることもできる。
【0059】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの厚みは、用途に応じて適宜決めればよく、磁気記録テープのベースフィルムに用いる場合は、2〜10μm、さらに3〜7μm、特に4〜6μmの範囲が好ましい。
【0060】
なお、粒子を含有させる方法については、それ自体公知の方法を採用でき、例えばポリエステルの製造工程において、反応系に添加しても良いし、ポリエステルに溶融混練によって添加してもよい。粒子の分散性の点から、好ましくはポリエステルの反応系に添加して、粒子濃度の高いポリエステル組成物をマスターポリマーとして製造し、それを粒子を含まないか、粒子濃度低いポリエステル組成物と混ぜ合わせる方法が好ましい。
【0061】
本発明によれば、本発明の上記二軸配向多層積層ポリエステルフィルムをベースフィルムとし、その平坦面側の表面に非磁性層および磁性層がこの順で形成され、走行面側の表面にバックコート層を形成することなどで磁気記録テープとすることができる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明では、以下の方法により、その特性を測定および評価した。
【0063】
(1)固有粘度
得られたポリエステルの固有粘度はP−クロロフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(40/60重量比)の混合溶媒を用いてポリマーを溶解して35℃で測定して求めた。
【0064】
(2)ガラス転移点および融点
ガラス転移点および融点は、それぞれの層に用いる芳香族ポリエステル(A)と(B)とを用意し、DSC(TAインスツルメンツ株式会社製、商品名:Thermal lyst2920)により、昇温速度20℃/minで測定した。
【0065】
(3)共重合量
グリコール成分については、それぞれの層に用いる芳香族ポリエステル(A)と(B)とを用意し、試料10mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1(容積比)混合溶液0.5mlに80℃で溶解した。イソプロピルアミンを加えて、十分に混合した後に600MHzのH−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて80℃で測定し、それぞれのグリコール成分量を測定した。
また、芳香族ジカルボン酸成分については、それぞれの層に用いる芳香族ポリエステル(A)と(B)とを用意し、試料50mgをp−クロロフェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=3:1混合溶液0.5mlに140℃で溶解し、100MHz 13C−NMR(日本電子製 JEOL A600)にて140℃で測定し、それぞれの酸成分量を測定した。
【0066】
(4)ヤング率
得られたフィルムを試料巾10mm、長さ15cmで切り取り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算した。
【0067】
(5)湿度膨張係数(αh)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向または幅方向が測定方向となるように長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、30℃の窒素雰囲気下で、湿度30%RHと湿度70%RHにおけるそれぞれのサンプルの長さを測定し、次式にて湿度膨張係数を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値をαhとした。
αh=(L70−L30)/(L30×△H)
ここで、上記式中のL30は30%RHのときのサンプル長(mm)、L70は70%RHのときのサンプル長(mm)、△H:40(=70−30)%RHである。
【0068】
(6)温度膨張係数(αt)
得られたフィルムを、フィルムの製膜方向または幅方向が測定方向となるようにそれぞれ長さ15mm、幅5mmに切り出し、真空理工製TMA3000にセットし、窒素雰囲気下(0%RH)、60℃で30分前処理し、その後室温まで降温させる。その後25℃から70℃まで2℃/minで昇温して、各温度でのサンプル長を測定し、次式より温度膨張係数(αt)を算出する。なお、測定方向が切り出した試料の長手方向であり、5回測定し、その平均値を用いた。
αt={(L60−L40)}/(L40×△T)}+0.5
ここで、上記式中のL40は40℃のときのサンプル長(mm)、L60は60℃のときのサンプル長(mm)、△Tは20(=60−40)℃、0.5は石英ガラスの温度膨張係数(ppm/℃)である。
【0069】
(7)積層フィルムおよびフィルム層の厚み
積層フィルムを層間の空気を排除しながら10枚重ね、JIS規格のC2151に準拠し、(株)ミツトヨ製ダイヤルゲージMDC−25Sを用いて、10枚重ね法にて厚みを測定し、1枚当りのフィルム厚みを計算する。この測定を10回繰り返して、その平均値を1枚あたりの積層フィルムの全体の厚みとした。
一方、フィルム層(A)およびフィルム層(B)の厚みは、フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約60nmの厚みの超薄切片(フィルムの製膜方向および厚み方向に平行に切断する)を作成する。この超薄切片の試料を透過型電子顕微鏡(日立製作所製H−800型)にて観察しその境界をからフィルム層(A)とBの厚みを求めた。
【0070】
(8)粘弾性測定
フィルムサンプルをフィルムの製膜方向(MD)に長さ35mm、幅方向(TD)に幅3mmとなるように切り、オリエンテック(株)製のバイブロン装置(DDV−01FP)を用い、荷重3g、周波数1Hzで室温から200℃まで5℃/分で昇温して、MD方向に測定する。得られたチャートよりtanδのピーク温度及びピーク強度を求める。
【0071】
(9)巻取り性
製膜の完了したフィルムロールを、幅1m長さ10000mに100本裁断し、以下の判定基準で○以上の本数を合格とし、100本中の良品の本数としてあらわした。
◎ 欠点なし。
○ わずかにシワまたはへこみがある。
△ 顕著なシワまたはへこみまたはブツがある。
× シワとへこみ、ブツの内2つ以上が存在する。
【0072】
(10)カール
縦25cm横10cmにフィルムを切り出し、フィルムを荷重をかけない状態でオーブンに入れ、110℃で1分間加熱した後取り出す。このとき、カールが発生しているとフィルムの一方向における両端部が、巻かれた状態となる。そして、図1に示すように、水平な台の上に、カールしていない平坦な部分が接するように置き、フィルムの全長(L1)とを測定し、L1からL2を差し引いたカールしている部分の長さ(△L)を算出し、その△LをL1で割った値をカールとして、100分率で示した。このカールの値が小さいほど、カールが少なく、好適であることを意味する。
【0073】
(11)表面粗さ(Ra)
非接触式三次元表面粗さ計(ZYGO社製:New View5022)を用いて測定倍率25倍、測定面積283μm×213μm(=0.0603mm)の条件にて測定し、該粗さ計に内蔵された表面解析ソフトMetro Proにより中心面平均粗さ(Ra)を求めた。なお、第3の層や第4の層がある場合は、その表面を測定した。
【0074】
(12)加工時の伸びによる塗布斑
ダイコーターで、20MPaの張力条件で、幅500mmにスリットされた長さ500mのフィルムの一方の表面に、下記組成の非磁性塗料、磁性塗料を同時に、乾燥後の非磁性層および磁性層の厚みが、それぞれ1.2μmおよび0.1μmとなるように膜厚を変えて塗布し、磁気配向させて120℃×30秒の条件で乾燥させる。さらに、小型テストカレンダ−装置(スチ−ルロール/ナイロンロール、5段)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダ−処理した後、70℃、48時間キュアリングする。そして、得られた磁性層付フィルムについて、目視判定により、以下の基準で塗布斑を評価した。なお、目視判定は、フィルムの裏側に蛍光灯を設置し、磁性層の抜けによる光の漏れをカウントすることで行ない、この磁性層付フィルムを必要に応じてバックコート層などを設けた上で、幅12.65mmにスリットし、カセットに組み込みことで磁気記録テープにできる。
○:塗布抜けが2個/250m 未満
△:塗布抜けが2個/250m 以上10個/250m 未満
×:塗布抜けが10個/250m 以上
【0075】
非磁性塗料の組成
・二酸化チタン微粒子:100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体:10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン: 1重量部
・メチルエチルケトン:75重量部
・メチルイソブチルケトン:75重量部
・トルエン:75重量部
・カーボンブラック: 2重量部
・ラウリン酸:1.5重量部
【0076】
磁性塗料の組成
・鉄(長さ:0.3μm、針状比:10/1、1800エルステッド)
:100重量部
・エスレックA(積水化学製塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体:10重量部
・ニッポラン2304(日本ポリウレタン製ポリウレタンエラストマ):10重量部
・コロネートL(日本ポリウレタン製ポリイソシアネート) : 5重量部
・レシチン: 1重量部
・メチルエチルケトン:75重量部
・メチルイソブチルケトン:75重量部
・トルエン:75重量部
・カーボンブラック: 2重量部
・ラウリン酸:1.5重量部
【0077】
(13)データストレージ(磁気テープ)の作成
上記(12)で作成した磁性層付フィルムを用意し、その磁性層の反対面に下記組成のバックコートを固形分の厚みが0.5μmとなるように塗布した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理し、巻き取る。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、それをLTO用のケースに組み込み、長さが850mで磁気記録容量が0.8TBのデータストレージカートリッジを作成した。
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
【0078】
(14)電磁変換特性
上記(13)の方法で作成した磁気テープを、市販のLTO−G3ドライブ(IBM社製、MR再生ヘッドを搭載)を用いて、BBSNR(平均信号強度と広帯域積分平均雑音との比)を測定した。なお、結果は、実施例2の結果を基準として評価した。
【0079】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるポリエチレン−テレフタレートのペレットを得た。得られたペレットにポリエーテルイミドを、組成物の重量を基準として、10重量%濃度となるように混合し、同回転2軸押出機により混練した後に再度ペレット化してフィルム層(A)用の芳香族ポリエステル(A−1)とした。
【0080】
また、テレフタル酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の82モル%がテレフタル酸成分、酸成分の18モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−1)を得た。なお、この芳香族ポリエステル(B−1)には、定法により、ペレット中の濃度が0.1重量%となるように平均粒経0.25μmの架橋ポリスチレン粒子を含有させた。この芳香族ポリエステル(B−1)の融点は245℃、ガラス転移温度は80℃であった。
【0081】
このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−1)と(B−1)を170℃で3時間乾燥後、それぞれ押出機に供給し、295℃まで加熱して溶融状態とした。そして、芳香族ポリエステル(A−1)を最表層(tX層)用としてまず1層分岐させ、次いで残りの芳香族ポリエステル(A−1)を99層、芳香族ポリエステル(B−1)を100層に分岐させた後、芳香族ポリエステル(A−1)の層と芳香族ポリエステル(B−1)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して積層した後に、最表層のtX層を積層した。なお、層構成については、フィルム層(A)/(B)・・・(A)/(B)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するフィルム層(A)(tX層)の厚みは1000nm、中間に位置するフィルム層(A)の層の厚みはそれぞれ10nm、フィルム層(B)の層の厚みはそれぞれ30nmになるように分岐し、積層した。
【0082】
つぎに、その積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度20℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、芳香族ポリエステル(A−1)の層と芳香族ポリエステル(B−1)の層が交互に積層された総数200層の未延伸多層積層フィルムを作成した。尚、フィルム層(B)と(A)の吐出比率は3:2とした。得られた未延伸多層積層フィルムを、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が105℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率4.5倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、125℃で横方向(幅方向)に延伸倍率4.0倍で延伸し、その後190℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ5μmの二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0083】
[実施例2]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルとエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、グリコール成分の1.5モル%がジエチレングリコール成分であるポリエチレン−2,6−ナフタレートをフィルム層(A)用の芳香族ポリエステル(A−2)として得た。なお、芳香族ポリエステル(A−2)には、重縮合反応前に得られる樹脂組成物の重量を基準として、平均粒径0.1μmのシリカ粒子を0.1重量%含有させた。
【0084】
また、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸そしてエチレングリコールとを、チタンテトラブトキシドの存在下でエステル化反応およびエステル交換反応を行い、さらに引き続いて重縮合反応を行い、酸成分の29モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、酸成分の71モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分、グリコール成分の98モル%がエチレングリコール成分、グリコール成分の2モル%がジエチレングリコール成分であるフィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−2)を得た。この芳香族ポリエステル(B−2)には、樹脂組成物の重量を基準として平均粒経0.25μmの架橋ポリスチレン粒子を0.1重量%含有させた。
【0085】
このようにして得られた芳香族ポリエステル(A−2)と(B−2)を170℃で6時間乾燥後、押出し機に供給し、295℃まで加熱して溶融状態とし、芳香族ポリエステル(A−2)を最表層(tX層)用としてまず1層分岐させ、次いで残りの芳香族ポリエステル(A−2)を49層に分岐させ、さらに芳香族ポリエステル(B−2)を50層に分岐させた後、(A−2)の層と(B−2)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して積層した後に、最表層のtX層を積層した。すなわち、層構成については、フィルム層(A)/(B)・・・(A)/(B)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するフィルム層(A)(tX層)の厚みは2500nm、中間に位置するフィルム層(A)の層の厚みはそれぞれ10nm、フィルム層(B)の層の厚みはそれぞれ24nmになるように分岐し、積層した。この積層状態を保持したままダイへと導き、溶融状態で回転中の温度50℃の冷却ドラム上にシート状に押し出し、芳香族ポリエステル(A−2)の層と芳香族ポリエステル(B−2)の層が交互に積層された総数100層の未延伸多層積層フィルムを作成した。尚、フィルム層(B)と(A)の吐出比率は3:1.2とした。そして、製膜方向に沿って回転速度の異なる二組のローラー間で、上方よりIRヒーターにてフィルム表面温度が135℃になるように加熱して縦方向(製膜方向)の延伸を、延伸倍率5.3倍で行い、一軸延伸フィルムを得た。そして、この一軸延伸フィルムをステンターに導き、145℃で横方向(幅方向)に延伸倍率7.0倍で延伸し、その後205℃で5秒間熱固定処理を行い、厚さ4.2μmの二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0086】
[実施例3]
実施例1における芳香族ポリエステル(A−1)の代わりに、芳香族ポリエステル(A−1)の製造過程で製造されたポリエーテルイミドを含有させる前の不活性粒子を含まないポリエチレンテレフタレートをフィルム層(A)用の芳香族ポリエステル(A−3)とした。また、実施例1における芳香族B層用のポリマー(B−1)において、酸成分の81モル%がテレフタル酸成分、29モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更し、かつ不活性粒子である架橋ポリスチレン粒子を含有させなかったものをフィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−3)とした。さらに、実施例1におけるB層用のポリマー(B−1)において、酸成分の88モル%がテレフタル酸成分、12モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更した架橋ポリスチレン粒子を含有するものを第3の層(C層)用の芳香族ポリエステル(C−3)として準備した。これらを170℃で4時間乾燥後それぞれ3台の押出機に供給し、芳香族ポリエステル(A−3)と(B−3)はそれぞれ10層に分岐後交互積層し、その後に芳香族ポリエステル(C−3)からなるC層を最外層に位置するフィルム層(B)の表面に積層させた。すなわち、層構成については、フィルム層(A)/(B)・・・(A)/(B)/(C層)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するCの層の厚みは500nm、フィルム層(A)と(B)の層の厚みはそれぞれ220nmになるように分岐し、積層した。
そして、延伸倍率を長手方向3.2倍、幅方向5.5倍とした以外は実施例1と同様にして二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0087】
[実施例4]
実施例2の芳香族ポリエステル(B−2)において、酸成分の80モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、20モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更し、かつ不活性粒子である架橋ポリスチレン粒子を平均粒経0.3μmの真球状シリカに変更し、さらに真球状シリカ粒子の含有量を0.2重量%に変更したものをフィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−4)とした。そして、実施例2における芳香族ポリエステル(A−2)をフィルム層(A)用に用い、それら芳香族ポリエステル(A−2)と芳香族ポリエステル(B−4)とを170℃で6時間乾燥後2台の押出機を用いて溶融させた。なお、交互積層の前に最外層用の芳香族ポリエステル(A−2)および(B−4)を一旦分岐し、さらにA−2樹脂を24層、B−4樹脂を24層に交互積層した後に、最外層用の芳香族ポリエステル(A−2)および芳香族ポリエステル(B−4)からなるフィルム層(A)と(B)を、先に交互積層したそれぞれフィルム層(B)とフィルム層(A)の表面に積層した。すなわち、層構成については、フィルム層(A)/(B)・・・(A)/(B)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するフィルム層(A)の層の厚みは500nm、最外層に位置するフィルム層(B)の層の厚みは2500nm、残りのフィルム層(A)と(B)の層の厚みはそれぞれ10nmになるように分岐し、積層した。その後縦延伸倍率を5.2倍とする以外は実施例2と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに、下記の組成からなるコーティング液を、最外層に位置するフィルム層(A)の表面に表1に示す厚みとなるように塗布し、続いて連続的にテンターに導入して、幅方向に7.0倍延伸し、210℃で4秒間熱固定をすることにより、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0088】
塗膜層の組成:
(1)アクリル―ポリエステル樹脂:75重量%
・ポリエステル成分:テレフタル酸(70モル%)、イソフタル酸(18モル%)、5―ナトリウムスルホイソフタル酸(12モル%)/エチレングリコール(92モル%)、ジエチレングリコール(8モル%)
・アクリル樹脂成分:メチルメタクリレート(80モル%)、グルシジルメタクリレート(15モル%)、n―ブチルアクリレート(5モル%)
・ポリエステル成分/アクリル樹脂成分のモル比=3/7
(2)アクリル樹脂微粒子:5重量%
・平均粒径20nm
・体積形状係数0.50
(3)界面活性剤:20重量%
・日本油脂製 ノニオンNS―240
【0089】
[実施例5]
フィルム層A用として、実施例1における芳香族ポリエステル(A−1)の添加粒子を平均粒経0.06μmの架橋ポリスチレン粒子に変更した芳香族ポリエステル(A−5)を準備した。また、フィルム層(B)用として、実施例1における芳香族ポリエステル(B−1)を、酸成分の60モル%がテレフタル酸成分、40モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更し、かつ架橋ポリスチレン粒子を添加する代わりに、平均粒経0.3μmの真球状シリカを0.2重量%含有させたものを芳香族ポリエステル(B−5)として準備した。
【0090】
そして、これら芳香族ポリエステル(A−5)と(B−5)のそれぞれを170℃で4時間乾燥後に2台の押出機から供給した。そこで、まず芳香族ポリエステル(A−5)は最終厚みが100−5nmとなるように、芳香族ポリエステル(B−5)は最終厚みが20−70nmとなるように、それぞれ厚み配分を連続的に変化させて41層に分岐し、交互に積層した。すなわち、層構成については、フィルム層(A:100nm)/(B:20nm)・・・(A:5nm)/(B70nm)となっている。なお積層にあたっては、A層及びB層のそれぞれ最も厚い層がそれぞれの最外層となるように積層した他は、実施例1と同様に未延伸多層積層フィルムを得た。得られた未延伸多層積層フィルムを長手方向3.1倍、幅方向6.1倍に延伸する以外は実施例1と同様にして二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0091】
[実施例6]
フィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−6)として、実施例2の芳香族ポリエステル(B−2)において、酸成分の76モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、24モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更し、かつ不活性粒子である架橋ポリスチレン粒子を平均粒経0.1μmの真球状シリカに変更し、さらに真球状シリカ粒子の含有量を0.1重量%に変更したものを準備した。また、フィルム層(A)用の芳香族ポリエステル(A−6)として、実施例2の芳香族ポリエステル(A−2)において、不活性粒子である真球状シリカを平均粒経0.25μmの架橋ポリスチレン粒子に変更し、さらに架橋ポリスチレン粒子の含有量を0.1重量%に変更したものを準備した。
【0092】
そして、これら芳香族ポリエステル(A−6)と(B−6)のそれぞれを170℃で6時間乾燥後に2台の押出機から供給した。芳香族ポリエステル(B−6)を最表層(tX層)用としてまず1層分岐させ、次いで残りの芳香族ポリエステル(B−6)を49層に分岐させ、さらに芳香族ポリエステル(A−6)を50層に分岐させた後、(A−6)の層と(B−6)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して積層した後に、最表層のtX層を積層した。すなわち、層構成については、フィルム層(B)/(A)・・・(B)/(A)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するフィルム層(B)(tX層)の厚みは2500nm、中間に位置するフィルム層(B)の層の厚みはそれぞれ10nm、フィルム層(A)の層の厚みはそれぞれ24nmになるように分岐し、積層した。
そして、延伸倍率を長手方向5.5倍幅方向7.5倍とする以外は実施例2と同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0093】
[実施例7]
フィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−7)として、実施例5の芳香族ポリエステル(B−4)において、酸成分の86モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、14モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更したものを準備した。また、フィルム層(A)用の芳香族ポリエステル(A−7)として、実施例2の芳香族ポリエステル(A−2)において、酸成分の96モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、4モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更したものを準備した。
【0094】
そして、これら芳香族ポリエステル(A−7)を170℃で6時間乾燥させ、また芳香族ポリエステル(B−7)を170℃で4時間乾燥後に2台の押出機から供給した。芳香族ポリエステル(A−7)を最表層(tX層)用としてまず1層分岐させ、次いで残りの芳香族ポリエステル(A−7)を50層に分岐させ、さらに芳香族ポリエステル(B−7)を50層に分岐させた後、50層に分岐した(A−6)の層と50層に分岐した(B−6)の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して積層した後に、最表層のtX層を(B−6)の層の表面に積層した。すなわち、層構成については、フィルム層(A)/(B)・・・(B)/(A)となっており、得られる二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの状態で、最外層に位置するフィルム層(A)(tX層)の厚みは2500nm、中間と他方の最表層に位置するフィルム層(A)の層の厚みはそれぞれ10nm、フィルム層(B)の層の厚みはそれぞれ24nmになるように分岐し、積層した。
そして、得られた未延伸フィルムを実施例6と同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0095】
[実施例8]
実施例5と同様にして、一軸延伸フィルムを得た。得られた一軸延伸フィルムに、下記の組成からなるコーティング液を、最外層に位置するフィルム層(B)の表面に表1に示す厚みとなるように塗布した以外は、実施例5と同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0096】
塗膜層の組成:
・共重合ポリエステル樹脂 60重量%
テレフタル酸97モル%/イソフタル酸1モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%//エチレングリコール60モル%/ジエチレングリコール8モル%
・シリカ粒子(平均粒径60nm)10重量%
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース 20重量%
・日本油脂製 ノニオンNS−208.5 10重量%
【0097】
[比較例1]
実施例1において、フィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−1)の代わりに、6,6’−(エチレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸を共重合せず、ポリエーテルイミドを、樹脂組成物の重量を基準として、10重量%添加したものを使用し、延伸倍率を長手方向4.2倍、幅方向3.8倍とした以外は同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0098】
[比較例2]
実施例2において、フィルム層(B)用の芳香族ポリエステル(B−1)の代わりに、添加する不活性粒子を架橋ポリスチレン粒子に変えて平均粒径0.1μmの球状シリカ粒子を0.1重量%含有するものに変更したほかは同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向多層積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0099】
[比較例3]
実施例4において、tX層となるフィルム層(A)の最終の厚みを10nmとなるように変更し、tY層となる最表層に位置するフィルム層(B)の最終の厚みを3000nmになるように変更した以外は同様にして、二軸配向多層積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0100】
[比較例4]
実施例2において、多層積層とせず、1層のA層と1層のB層の2層積層フィルムと変更し、かつ芳香族ポリステル(B−2)の代わりに、酸成分の71モル%が2,6−ナフタレンジカルボン酸成分、29モル%が6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分となるように変更したものを準備した以外は、同様な操作を繰り返して、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
得られた二軸配向積層ポリエステルフィルムの特性を表1に示す。
【0101】
【表1】

【0102】
ここで、表1中の、PETはポリエチレンテレフタレートを、PENはポリエチレン2,6−ナフタレートを、PEIはポリエーテルイミドを、ANAは6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分を、PSは架橋ポリスチレン粒子を。シリカは球状シリカ粒子を意味する。また、A層およびB層の欄にある比率はPEIまたはANAの割合を示し、添加量は不活性粒子の添加量を意味する。また、C層の欄にあるPET−ANA12モル%は、実施例3で説明した芳香族ポリエステル(C−3)を意味し、D層の欄にあるアクリル変性PESは、実施例4で説明した塗布層を、D層の欄にある共重合PESは、実施例8で説明した塗布層を意味する。また層厚みの欄にある上段は厚み、下段はフィルム層(A)、(B)、(C)のいずれであるかを示す。また、CTEは温度膨張係数、CHEは湿度膨張係数、tanδは粘弾性測定におけるピーク温度を意味する。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の二軸配向多層積層ポリエステルフィルムは、優れた寸法安定性と表面の平坦性を兼ね備えていることから、さまざまな用途に利用でき、特に高密度磁気記録媒体の支持体として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0104】
A フィルム
B 台
C カールしていない部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ポリエステル(A)からなるフィルム層(A)と芳香族ポリエステル(B)からなるフィルム層(B)とを交互に11層以上積層した積層構造を有する二軸配向多層積層フィルムであって、
下記式(I)で表される6,6’−(アルキレンジオキシ)ジ−2−ナフトエ酸成分の全酸成分に占める割合が、芳香族ポリエステル(A)は5モル%未満で、芳香族ポリエステル(B)は5モル%以上80モル%未満であり、一方の表面粗さ(RaX)が0.5−5nmの範囲で、他方の表面粗さ(RaY)がRaXよりも1nm以上大きく、かつ10nm以下であることを特徴とする二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【化1】

(上記構造式(I)中のRは、炭素数1〜10のアルキレン基を示す。)
【請求項2】
フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が2つの最表層の両方を形成し、最表層を形成しない側のフィルム層は平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、最表層を形成する側のフィルム層は不活性粒子を含有しないか、前記最表層を形成しない側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有し、さらに表面粗さの小さな最表層を形成するフィルム層の厚み(tX)が、表面粗さの大きな最表層を形成するフィルム層の厚み(tY)の厚みに対して、1.5倍以上である請求項1記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【請求項3】
フィルム層AまたはBのいずれか一方のフィルム層が表面粗さの大きな最表層を形成し、かつ平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含み、表面粗さの大きな最表層を形成しない側のフィルム層が、表面粗さの小さな最表層を形成し、かつ不活性粒子を含有しないか、表面粗さの大きな最表層を形成する側のフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をBより少ない含有量で含有する請求項1記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【請求項4】
表面粗さの小さな最表層の厚み(tX(nm))、表面粗さの大きな最表層の厚み(tY(nm))、表面粗さの小さな最表層に隣接するフィルム層の厚み(tX’(nm))と表面粗さの大きな最表層に隣接するフィルム層の厚み(tY’(nm))が次の関係式のいずれか少なくともひとつを満たす請求項3記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
(式1) tX>1.5×tX’
(式2) tY>1.5×tY’
【請求項5】
2軸配向積層ポリエステルフィルムの表面粗さの大きい最表層が、平均粒経0.01−1.0μmの不活性粒子を0.001−5重量%含む第3の層(C層)からなり、積層構造を形成するフィルム層AおよびBは、不活性粒子を含有しないか、該表面粗さの大きい最表層を形成するフィルム層よりも平均粒経の小さな粒子を含有するか、同じ平均粒経の不活性粒子をより少ない含有量で含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【請求項6】
2軸配向積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の最表層が不活性粒子を有する塗膜層(第4の層、D層)である、請求項1〜5のいずれかに記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【請求項7】
フィルム層Aおよびフィルム層Bが不活性粒子を含有しない請求項5または6のいずれかに記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。
【請求項8】
フィルムの厚みが1−10μmの範囲にある請求項1〜7のいずれかに記載の二軸配向積層ポリエステルフィルム。
【請求項9】
二軸配向多層積層ポリエステルフィルムが、磁気記録媒体のベースフィルムに用いられる請求項1〜8のいずれかに記載の二軸配向多層積層ポリエステルフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−208274(P2010−208274A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59452(P2009−59452)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】