説明

交通情報通信システム、交通情報通信方法、インフラ側装置および車載装置

【課題】 インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができ、かつ、その交通情報の処理負荷を低減することができる交通情報通信システム、交通情報通信方法、インフラ側装置および車載装置を提供する。
【解決手段】 インフラ側である中央装置4の制御部401は、所定区間Lにおける車両5の平均走行速度を、所定区間Lの交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報S5として設定する。車載装置2は、通信部204にて中央装置4側から走行条件情報S5を受信する。そして、車載装置2は、制御部209の判定部209Aにおいて車両5の平均走行速度が所定値以上であると判定した場合にのみ、所定区間Lで収集したプローブ情報S3を通信部204から中央装置4側へ送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路を走行中の車両から収集したプローブ情報に基づいて交通情報を生成するための交通情報通信システム、交通情報通信方法、インフラ側装置および車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。
このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
上記VICSは、車両感知器等から5分ごとにデータを取得して情報更新しているため、時間的に高密度なデータが得られる利点があるが、VICSリンクが全ての道路に設定されていないためにエリアカバー率が低く(主要道路でも20%以下)、エリアカバー率を向上させたくてもインフラの設置コストが高いという欠点がある。
また、VICSでは、実際の走行データではない定点観測情報を利用してVICSリンクの区間速度を推定しているので、交通情報の精度が低くなるという欠点もある。
【0004】
そこで、道路の交通情報をドライバーに提供する他の技術として、プローブ車両を利用した交通情報通信システム(以下、プローブシステムという。)が提案されている。
このプローブシステムは、例えば特許文献1および2に示すように、実際に道路を走行する車両(プローブ車両)を移動体センサとして利用するもので、現時点の車両位置や速度等の移動観測情報を無線通信によって各プローブ車両から収集し、道路の交通状況を推定するものである。
【0005】
このプローブシステムは、プローブカーが走行可能な道路であれば情報取得が可能であるからエリアカバー率が高く、インフラの設置コストが不要であるため低コストであり、実際に走行中の車両速度を利用するため交通情報の精度が高いという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−151496号公報
【特許文献2】特開2005−4467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来のプローブシステムでは、渋滞以外の原因によってプローブ車両が特定のリンクで長時間停止することも想定されるが、このような通常の道路走行ではないイレギュラーな挙動の場合のプローブ情報がそのままインフラ側装置に提供されると、交通情報の推定精度が悪化する。
例えば、プローブ情報に含まれる車両の現在位置と時刻を用いてリンク旅行時間を算出できるが、ドライバーの休憩や用事のためにプローブ車両がある特定のリンクで長時間停止すると、そのリンクの旅行時間を必要以上に大きく見積もられ、当該リンクの旅行時間の推定精度が悪化することになる。
【0008】
また、プローブ車両が収集したプローブ情報をすべて一律にインフラ側装置に提供するようになっているので、例えば、交通量の多い幹線道路をプローブ情報が頻繁に走行したような場合には、インフラ側装置が大量のプローブ情報に基づいて交通情報を生成しなければならず、その処理負荷が増大するという問題がある。
【0009】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができ、かつ、その交通情報の処理負荷を低減することができる交通情報通信システム、交通情報通信方法、インフラ側装置および車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の交通情報通信システムは、車両に搭載された車載装置と、前記車載装置が外部に送信したプローブ情報に基づいて交通情報を生成するインフラ側装置とを備えた交通情報通信システムであって、前記インフラ側装置は、前記プローブ情報を受信するインフラ側通信部と、前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記インフラ側通信部に送信させるインフラ側制御部とを有し、前記車載装置は、前記走行条件情報を受信する車載側通信部と、前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記車載通信部に前記プローブ情報を送信させる車載側制御部とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の交通情報通信方法は、車両に搭載された車載装置が当該車両のプローブ情報をインフラ側装置へ送信し、このインフラ側装置が前記プローブ情報に基づいて交通情報を生成する交通情報通信方法であって、前記インフラ側装置は、前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記車載装置に送信し、前記車載装置は、受信した前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記プローブ情報を前記インフラ側装置へ送信することを特徴とする。
【0012】
本発明の交通情報通信システムおよび交通情報通信方法によれば、車載装置は、所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報に基づいてプローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみプローブ情報をインフラ側装置へ送信するようにしたので、インフラ側装置は交通情報の生成に必要なプローブ情報のみを受信することができる。したがって、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができる。また、インフラ側装置が受信するプローブ情報を少なくすることができるので、インフラ側における交通情報の処理負荷を低減することができる。
【0013】
ここで、インフラ側装置とは、例えば、交通管制センター内に設置される中央装置の他、道路上に設置される複数の光ビーコン等の路側通信装置を管理する路側通信処理装置や、交通信号機である。
また、走行条件情報とは、インフラ側装置が交通情報を生成する際に基となるデータとして採用可能な条件を規定した情報である。例えば、交通情報として、特定の地点間の平均旅行時間を算出する場合であれば、当該区間内において一旦エンジンを停止させた車両の情報は旅行時間算出の基礎データとして採用するのは好ましくないため、「当該区間内においてエンジンの停止がなかったこと」を走行条件とすることができる。
この走行条件情報を受信した車載装置は、自身が収集したプローブ情報の走行区間における走行状態が、前記走行条件に適合しているかどうかを判定し、当該判定の結果、条件に適合している場合(当該区間をエンジン停止せずに走行した場合)にのみ前記プローブ情報を前記インフラ側装置へ送信することができる。このようにすれば、インフラ側装置が平均旅行時間を算出する場合に、その精度を低下させる恐れのあるデータを確実に除外することが可能になる。
【0014】
また、前記交通情報通信システムの前記インフラ制御部は、前記所定区間における前記車両の平均走行速度を用いて前記走行条件情報を設定し、前記走行条件情報を受信した前記車載装置は、その走行条件情報に含まれている前記平均走行速度と自車両の平均走行速度とに基づいて、前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定することが好ましい。この場合は、交通情報を生成する際の指針として最も関与する平均走行速度を用いて走行条件情報を設定したので、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを効果的に防止することができる。
例えば、インフラ側装置から受信した平均走行速度と自車両の平均走行速度とを比較して、所定の閾値(例えば時速30キロ)以上の乖離があったらプローブ情報を送信しないと判定しても良いし、プローブ情報作成の対象区間内における自車両の走行速度の上限値や下限値とインフラ側装置から受信した平均走行速度との乖離が所定の閾値以上ならプローブ情報を送信しないと判定しても良い。
すなわち、平均走行速度というインフラ側が提示する走行条件との乖離が一定以上であると判断できる場合には、インフラ側の期待するプローブ情報を送信できないと判断して、送信を断念することで、インフラ側装置での情報処理を簡単にすると共に、路車間通信のトラフィックを少なくすることが可能になる。
【0015】
本発明のインフラ側装置は、車両に搭載された車載装置から送信されたプローブ情報に基づいて交通情報を生成するインフラ側装置であって、前記プローブ情報を受信する通信部と、前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記通信部に送信させる制御部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、インフラ側装置の制御部が所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を通信部に送信させるようにしたので、インフラ側装置は交通情報の生成に必要なプローブ情報のみを車載装置から受信することができる。したがって、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができる。また、インフラ側装置が受信するプローブ情報を少なくすることができるので、インフラ側における交通情報の処理負荷を低減することができる。
【0016】
本発明の車載装置は、車両に搭載され、当該車両のプローブ情報を収集してインフラ側装置に送信する車載装置であって、前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件条件を前記インフラ側装置から受信する通信部と、前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記通信部に前記プローブ情報を送信させる制御部とを有することを特徴とする。
本発明によれば、車載装置の制御部は、所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報に基づいてプローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみプローブ情報を通信部に送信させるようにしたので、インフラ側装置は交通情報の生成に必要なプローブ情報のみを受信することができる。したがって、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができる。また、インフラ側装置が受信するプローブ情報を少なくすることができるので、インフラ側における交通情報の処理負荷を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、インフラ側装置は交通情報の生成に必要なプローブ情報のみを受信することができるので、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができる。また、インフラ側装置が受信するプローブ情報を少なくすることができるので、インフラ側における交通情報の処理負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る交通情報通信システムを示す道路平面図である。
【図2】中央装置の構成を示すブロック図である。
【図3】交通信号制御機の構成を示すブロック図である。
【図4】車載装置の内部構成を示す機能ブロック図である。
【図5】交通情報通信システムにおいて実行される処理内容を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔システムの全体構成〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る交通情報通信システムを示す道路平面図である。
図1に示すように、本実施形態の交通情報通信システムは、交通信号機1、車載装置2、車両感知器3、インフラ側装置としての中央装置4、車載装置2を搭載したプローブ車両5(以下、単に車両5という場合がある。)、および光ビーコン6等を含む。
【0020】
各交通信号機1は、交差点Cに設置され、電話回線等の通信回線を介して交通管制センター内の中央装置4に接続され、中央装置4は、自身の管轄エリア内にある各交差点Cの交通信号機1とネットワークを構成している。
【0021】
従って、中央装置4は、交通信号機1とそれぞれ双方向通信が可能であり、交通信号機1は他の交差点の同信号機1とも双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0022】
車両感知器3は、交差点Cに流入する車両台数をカウントするために、対応する交差点Cの上流側に設置されており、通信回線を介して対応する各交通信号機1と繋がっている。
【0023】
〔中央装置〕
図2は、中央装置4の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、中央装置4は、制御部(インフラ側制御部)401、表示部402、通信部(インフラ側通信部)403、記憶部404および操作部405を含んでいる。
中央装置4の制御部401は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなり、交通信号機1や車両感知器3からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御および情報提供を統括的に行う。すなわち、制御部401は、自身の管轄エリアに属する交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うものであり、例えば、MODERATO(Management by Origin-DEstination Related Adaptation for Traffic Optimization)制御やプロファイル制御等を含む複数種の交通制御を実行することができる。
【0024】
中央装置4の制御部401は、この制御部401が実行するコンピュータプログラムの機能部分として、車両5が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報S5を設定する設定部401Aを備えている。この設定部401Aが行う制御処理の内容については、後述する。
【0025】
中央装置4の通信部403は、通信回線を介してネットワーク側と接続された通信インタフェースであり、所定時間ごとに信号灯器1bの灯色切り替えタイミング等に関する信号制御指令S1と、渋滞情報や旅行時間等を含む交通情報S2と、前記設定部401Aで設定された走行条件情報S5とを各交通信号機1に送信している。信号制御指令S1は、信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2および走行条件情報S5は例えば5分ごとに送信される。
また、通信部403は、各交通信号機1から、車載装置2からのプローブ情報S3、および車両5通過時に生じるパルス信号よりなる車両感知器5からの感知情報S4をリアルタイム(例えば、0.1〜1.0秒周期)で受信している。プローブ情報S3には、車両5の位置情報、識別情報、時刻情報および速度情報等が含まれている。
【0026】
中央装置4の記憶部404は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、前記MODERATO制御やUTMS制御を行う制御プログラムを記憶している。また、記憶部404は、制御部401が生成した前記信号制御指令S1、交通情報S2および走行条件情報S5と、ネットワーク側から取得した前記プローブ情報S3および感知情報S4とを一時的に記憶する。
【0027】
中央装置4の表示部402は、自身が管理するエリアの道路地図と、この道路地図上のすべての交通信号機1や光ビーコン6等の位置が表示された表示画面により構成され、中央オペレータに渋滞や事故等の交通状況を報知するものである。
中央装置4の操作部405は、キーボードやマウス等の入力インタフェースよりなり、この操作部405によって中央オペレータが上記表示部402に対する表示切り替え操作等を行えるようになっている。
【0028】
〔交通信号機〕
交通信号機1は、主道路RM1,RM2および従道路RS1,RS2のそれぞれに設置された4つの信号灯器1bと、この信号灯器1bと通信回線を介して接続された交通信号制御機1aとを備えている。
交通信号制御機1aは、前記MODERATO制御等の交通制御を行った結果の出力である信号制御指令S1を中央装置4から受信し、この信号制御指令S1に基づいて、各信号灯器1bに含まれる信号灯の点灯、消灯および点滅を制御する。
【0029】
また、交通信号制御機1aは、光ビーコン6とも通信回線で繋がっており、中央装置4から受信した渋滞情報等を含む交通情報S2および走行条件情報S5を光ビーコン6に送信する。
光ビーコン6は、車載装置4を搭載したプローブ車両5と光信号での双方向通信が可能であり、上記交通情報S2および走行条件情報S5をダウンリンクDLに含めて送信する。また、車載装置4が光ビーコン6に送信するアップリンクULには、前記プローブ情報S3が含まれている。このプローブ情報S3は、交通信号制御機1aを介して中央装置4に転送される。
交通信号制御機1aは、通信回線を介して車両感知器3とも繋がっており、車両感知器5からの前記感知情報S4を受信すると、これを中央装置4に転送する。
【0030】
図3は、交通信号制御機1aの構成を示すブロック図である。
図3に示すように、交通信号制御機1aは、制御部101、灯器駆動部102、通信部103および記憶部104を含んでいる。
交通信号制御機1aの制御部101は、一または複数のマイクロコンピュータから構成されている。制御部101には、内部バスを介して灯器駆動部102、通信部103および記憶部104が接続されており、制御部101はこれらのハードウェア各部の動作を制御する。
【0031】
交通信号制御機1aの制御部101は、中央装置4が系統制御や広域制御(MODERATO制御やUTMS制御等)を行った結果の出力である信号制御指令S1に従って各信号灯器1bを駆動し、その指令S1に基づく所定のタイミングで各信号灯器1bの信号灯色を切り替える。
灯器駆動部102は、半導体リレー(図示せず)を備え、上記制御部101から入力された出力指令S1に基づいて、複数の信号灯器1bの青色灯、黄色灯、赤色灯それぞれに対応して各色の信号灯に供給される交流電圧(AC100V)または直流電圧をオン/オフする。
【0032】
交通信号制御機1aの通信部103は、中央装置4および車両感知器3との間で通信を行う通信インタフェースであり、中央装置4の通信部403から信号制御指令S1、交通情報S2および走行条件情報S5を受信し、車両感知器3から車両の感知情報S4を受信する。また、通信部103は、交通情報S2および走行条件情報S5を車載装置2に送信し、プローブ情報S3を車載装置2から受信する。
【0033】
交通信号制御機1aの記憶部104は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成されており、通信部103が受信した信号制御指令S1、交通情報S2、プローブ情報S3、感知情報および走行条件情報S5を一時的に記憶している。
【0034】
〔車載装置〕
図4は、プローブ車両5に搭載された車載装置2の内部構成を示す機能ブロック図である。
この車載装置2は、光ビーコン6との間で双方向の光通信を行う路車間通信機能と、搭乗者が設定した目的地に案内するナビゲーション機能を有する。
図4に示すように、車載装置2は、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、通信部(車載側通信部)204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208および制御部(車載側制御部)209等を含む。
【0035】
GPS処理部201は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、GPS信号に含まれる時刻情報、GPS衛星の軌道、測位補正情報等に基づいて、プローブ車両5の位置(緯度、経度および高度)を計測する。
方位センサ202は、光ファイバジャイロなどで構成されており、プローブ車両5の方位および角速度を計測する。車速取得部203は、車速センサ(図示せず)が車輪の角速度を検出することにより計測したプローブ車両5の速度データを取得する。
【0036】
車載装置2の通信部204は、道路上の所定位置に設定された光ビーコン6の通信領域において、ダウンリンクULとアップリンクULを送受信する。すなわち、通信部204は、交差点Cを流出したプローブ車両5が光ビーコン6の通信領域に入ると、交通情報S2および走行条件情報S5を含むダウンリンクDLを光ビーコン6から受信し、自身のプローブ情報S3を含むアップリンクULを光ビーコン6へ送信する。
【0037】
車載装置2の記憶部205は、ハードディスクや半導体メモリ等から構成され、ダウンリンクDLに含まれる交通情報S2および走行条件情報S5や、アップリンクULに含めるプローブ情報S3等の各種情報を記憶するための記憶領域を有する。
また、記憶部205は、道路地図データも記憶している。この道路地図データには、交差点IDと交差点の位置とを対応付けた交差点データ、リンクIDと、リンクの始点・終点・補間点(道路が折れ曲がる地点に対応)それぞれの位置と、リンクの始点に接続するリンクのリンクIDと、リンクの終点に接続するリンクのリンクIDと、リンクコストとを対応付けたリンクデータなどから構成されている。
【0038】
上記リンクコストは、例えば、リンクとその終点に接続するリンクの組み合わせの数だけ用意されており、リンクの始点に進入してから当該リンクの終点を退出し、次に接続するリンクの始点に進入するまでに要する時間が設定されている。
すなわち、リンクコストには、リンクの始点から終点までを走行するのに要するコスト(時間)と、リンクの終点から次のリンクの始点までを走行するのに要するコスト(時間)、つまり、交差点を通過するのに要するコストが含まれている。
【0039】
車載装置2の操作部206は、タッチパネルやボタン等から構成されており、ドライバを含む車両5の搭乗者が目的地の設定等を行えるようになっている。
表示部207は、車両5のダッシュボード部分に取り付けられたモニタ装置(図示せず)よりなり、制御部209が後述する感応要求処理において作成した画像データを搭乗者に表示する。
音声出力部208は、制御部209が作成した音声データをスピーカー(図示せず)から出力する。
【0040】
車載装置2の制御部209は、マイクロコンピュータ等から構成され、GPS処理部201、方位センサ202、車速取得部203、通信部204、記憶部205、操作部206、表示部207、音声出力部208での各処理を制御する。
また、車載装置2の制御部209は、GPS処理部201が計測した車両5の位置、方位センサ202が計測した車両5の方位および角速度、車速取得部203が取得した車両5の速度の各データ、記憶部205に記憶している道路地図データに基づいてマップマッチング処理を行い、道路地図データのリンク上におけるプローブ車両5の位置を算出することができる。
【0041】
さらに、車載装置2の制御部209は、この制御部209が実行するコンピュータプログラムの機能部分として、通信部204で受信した走行条件情報S5に基づいてプローブ情報S3の送信可否を判定する判定部209Aを備えている。この判定部209Aが行う制御処理の内容については、後述する。
【0042】
〔交通情報通信システムの処理内容〕
図5は、交通情報通信システムにおいて実行される処理内容を示す概念図である。
以下、図5を参照しながら、上記処理内容について説明する。なお、本実施形態では、車載装置2からインフラ側へのプローブ情報S3送信手段として光ビーコン6を利用しているので、光ビーコン6,6間の走行中において生成されたプローブ情報S3の送信可否を判定する処理内容について説明する。
【0043】
まず、中央装置4の制御部401は、設定部401Aにおいて、車両5が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報S5を設定する(図5のF1)。走行条件情報S5は、プローブ車両5が上流側の光ビーコン6と送受信する第1地点Aから下流側の光ビーコン6と送受信する第2地点Bまでの所定区間Lを走行したときの平均走行速度を用いて設定される。本実施形態では、前記平均走行速度が所定値(例えば0.5km/h)以上であることを走行条件情報S5として設定している。この閾値となる所定値は、所定区間Lで渋滞した場合における車両5の平均走行速度よりも低い値に設定されている。また、前記所定値は、所定区間Lの交通状況に合わせて適宜変更することも可能である。なお、走行条件情報S5には、車両5が所定区間Lを走行することが条件となるため、所定区間LのリンクIDもしくは所定区間Lの終点である第2地点BのIDを含めることが好ましい。
【0044】
次に、中央装置4の制御部401は、設定部401Aにおいて設定された走行条件情報S5を、中央装置4の通信部403から交通信号制御機1aの通信部103を介して第1地点Aの光ビーコン6に送信させる(図5のF2)。
走行条件情報S5を受信した第1地点Aの光ビーコン6は、第1地点Aの通信領域に進入したプローブ車両5の車載装置2からアップリンクULを受信すると(図5のF3)、ダウンリンクDLに走行条件情報S5を含めて車載装置2へ送信する(図5のF4)。
【0045】
車載装置2は、通信部204においてダウンリンクDLを受信し、判定部209Aにおいて走行条件情報S5に含まれている平均走行走度と自車両で取得した平均走行走度とに基づいてプローブ情報S3の送信可否を判定する(図5のF5)。
具体的には、所定区間Lにおいてプローブ車両5(自車両)が取得した平均走行速度と走行条件情報S5に含まれている平均走行走度(前記所定値)とを比較し、プローブ車両5が取得した平均走行速度が前記所定値以上であるか否かによって判定される。判定基準となる平均走行速度は、プローブ車両5が第1地点Aから第2地点Bまで走行する間に車速取得部203が一定時間毎または一定距離毎に取得した複数の速度データから、その平均値を算出することによって得られる。
【0046】
判定部209Aにおいて、その判定結果が肯定的である場合、すなわち前記平均走行速度が所定値以上であり、走行条件情報S5に適合すると判定された場合には、車載装置2の制御部209は、プローブ情報S3を通信部204に送信させる。具体的には、プローブ車両5が第2地点Bの光ビーコン6の通信領域に進入したときに、所定区間Lにおいて生成されたプローブ情報S3をアップリンクULに含め、通信部204が前記光ビーコン6へ送信する(図5のF6)。そして、光ビーコン6は、受信したアップリンクULに含まれるプローブ情報S3を、交通信号制御機1aの通信部103を介して中央装置4の通信部403へ送信する(図5のF7)。中央装置4の制御部401は、このプローブ情報S3に基づいて交通情報の生成を行う。
【0047】
一方、車載装置2の判定部209Aにおいて、その判定結果が否定的である場合、すなわち前記平均走行速度が所定値未満であり、走行条件情報S5に適合しないと判定された場合には、車載装置2の制御部209は、プローブ車両5が第2地点Bの光ビーコン6の通信領域に進入しても、通信部204からプローブ情報S3を光ビーコン6へ送信させない(図5のF8)。
【0048】
ここで、平均走行速度が所定値未満である場合とは、例えば、プローブ車両5が第1地点Aから第2地点Bに至る途中に、休憩や道路沿いの店に立ち寄るため等、渋滞以外の原因で車両5を長時間停車する場合が挙げられる。
したがって、長時間停車した車両5のプローブ情報S3は、中央装置4が所定区間Lにおける渋滞等の交通情報を高精度に生成する際に妨げとなるため、不必要な情報として車載装置2から中央装置4側へ提供されることはない。その結果、中央装置4に提供されるプローブ情報S3は、交通情報の精度を高めるために必要なプローブ情報S3のみとなり、不必要なプローブ情報S3を排除することができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態に係る交通情報通信システムによれば、車載装置2は、所定区間Lの交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報S5に基づいてプローブ情報S3の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみプローブ情報S5を中央装置4へ送信するようにしたので、中央装置4は交通情報の生成に必要なプローブ情報S3のみを受信することができる。したがって、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを防止することができる。また、中央装置4が受信するプローブ情報S3を少なくすることができるので、インフラ側における交通情報の処理負荷を低減することができる。
【0050】
また、中央装置4の設定部401Aで設定される走行条件情報S5を、交通情報を生成する際に最も関与する車両5の平均走行速度を用いて設定したので、インフラ側において生成される交通情報の精度が悪化するのを効果的に防止することができる。
【0051】
〔その他の変形例〕
上記実施形態は例示であって本発明の範囲を制限するものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内のすべての変更が本発明に含まれる。
【0052】
例えば、上記実施形態では、中央装置4をインフラ側装置として説明したが、交通信号制御機1aや、光ビーコン6等の路側通信装置を管理する路側通信処理装置をインフラ側装置とすることも可能である。また、中央装置4、交通信号制御機1aおよび前記路側通信処理装置から独立してインフラ側装置を単独で設置することも可能である。
また、上記実施形態では、設定部401Aで設定される走行条件情報S5として、車両5の平均走行速度が所定値以上である場合としたが、平均走行速度が所定範囲に含まれる場合とすることも可能である。また、車両5の平均走行速度(または走行速度の上限値や下限値)とインフラ側装置から受信した平均走行速度との乖離が所定値(例えば30km/h)以上である場合とすることも可能である。さらに、平均走行速度以外に、所定区間Lにおける車両5の旅行時間を用いたり、所定区間Lにおいて車両5のエンジンが停止しなかったこと等を走行条件情報S5として設定することも可能である。
【0053】
さらに、上記実施形態では、プローブ情報S3を車載装置2と光ビーコン6との光通信でアップリンクしているが、プローブ情報S3は、携帯電話機等を含む電波による無線通信手段によってインフラ側に送信することもできる。この場合、例えば携帯電話機の無線通信は有料であることから、車両5におけるインフラ側との通信コストを低減することができる。
また、本発明は、プローブ情報S3に基づいて車両5に渋滞情報等を含む交通情報を生成するシステムに適用する場合について説明したが、プローブ情報に基づいて車両5を自動運転制御するシステム(例えば、特開2009−69938号公報参照)に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0054】
2 車載装置
4 中央装置(インフラ側装置)
5 プローブ車両(車両)
204 通信部(車載側通信部)
209 制御部(車載側制御部)
401 制御部(インフラ側制御部)
403 通信部(インフラ側通信部)
L 所定区間
S3 プローブ情報
S5 走行条件情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載装置と、前記車載装置が外部に送信したプローブ情報に基づいて交通情報を生成するインフラ側装置とを備えた交通情報通信システムであって、
前記インフラ側装置は、前記プローブ情報を受信するインフラ側通信部と、
前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記インフラ側通信部に送信させるインフラ側制御部とを有し、
前記車載装置は、前記走行条件情報を受信する車載側通信部と、前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記車載通信部に前記プローブ情報を送信させる車載側制御部とを有することを特徴とする交通情報通信システム。
【請求項2】
前記インフラ制御部は、前記所定区間における前記車両の平均走行速度を用いて前記走行条件情報を設定し、
前記走行条件情報を受信した前記車載装置は、その走行条件情報に含まれている前記平均走行速度と自車両の平均走行速度とに基づいて、前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定する請求項1に記載の交通情報通信システム。
【請求項3】
車両に搭載された車載装置が当該車両のプローブ情報をインフラ側装置へ送信し、このインフラ側装置が前記プローブ情報に基づいて交通情報を生成する交通情報通信方法であって、
前記インフラ側装置は、前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記車載装置に送信し、
前記車載装置は、受信した前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記プローブ情報を前記インフラ側装置へ送信することを特徴とする交通情報通信方法。
【請求項4】
車両に搭載された車載装置から送信されたプローブ情報に基づいて交通情報を生成するインフラ側装置であって、
前記プローブ情報を受信する通信部と、
前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件情報を前記通信部に送信させる制御部と
を有することを特徴とするインフラ側装置。
【請求項5】
車両に搭載され、当該車両のプローブ情報を収集してインフラ側装置に送信する車載装置であって、
前記車両が走行する所定区間の交通情報を生成する際の指針となる走行条件条件を前記インフラ側装置から受信する通信部と、
前記走行条件情報に基づいて前記所定区間で収集した前記プローブ情報の送信可否を判定し、この判定結果が肯定的である場合にのみ前記通信部に前記プローブ情報を送信させる制御部と
を有することを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262473(P2010−262473A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112727(P2009−112727)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】