説明

交通状況予測装置および方法

【課題】 車載機側で交通事故による渋滞発生を推測可能とすることができる交通状況予測装置とその予測方法を提供する。
【解決手段】 外部から車載機1がビーコンユニット11により交通情報を逐次受信し、交通情報記憶部14に蓄積する。通常時渋滞度統計処理部15は、蓄積した交通情報から通常時の道路リンクごとのリンク旅行時間を通常時渋滞情報として生成する。事故渋滞動向生成部16は、交通事故地点を抽出し、交通事故地点に前後に連なる特定の道路リンクのリンク旅行時間の時系列変化を事故渋滞動向情報として生成する。交通事故渋滞判定部18は、新たに取得した交通情報のリンク旅行時間と通常時渋滞情報とを比較し、所定の閾値を越えている場合、さらに過去の交通情報から最新の交通情報の含むリンク旅行時間の時系列変化と事故渋滞動向情報とを比較して、過去に交通事故があった道路リンクで交通事故による渋滞が発生しているかどうかを予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から受信した交通情報にもとづき、現在の渋滞度の変化が交通事故による渋滞かどうかを予測判定する交通状況予測装置とその予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、車載装置において、時々刻々と変化する車両の走行速度、位置等の車両情報を記録し、交通事故管理センタに送信し、交通事故管理センタにおいて、受信した走行速度、位置、時刻などの車両情報を蓄積し、場所・地形・走行速度・交通量・季節・時刻・天候・温度・湿度等をパラメータに、発生した交通事故を分析し、どのような状況のときに交通事故が発生するかのデータベースとして蓄積し、そのデータベース情報と送られてきた現在走行中の車両情報を比較・分析し、交通事故が発生する確率を算出し、状況に応じた警告情報(交通事故予測情報)を車載装置に送信する交通状況予測システムが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平11−120478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この交通事故発生の予測は、交通事故管理センタにおいて、過去の車両情報にもとづく交通事故発生を分析した結果をデータベースとして蓄積しておき、逐次交信して受信した車両情報とを比較し、交通事故が発生する確率を算出し、必要に応じて車載機に警告情報を送信するという構成のため、交通事故管理センタと通信が成立するような環境下でないと車載機側は交通事故予測情報が利用できないという問題があった。
本発明は、上記の問題点を解決するために、車載機側で交通事故による渋滞発生を推測可能とすることができる交通状況予測装置とその予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このため、本発明は、外部から車両側に交通情報を取得する交通情報取得手段と、取得された交通情報を蓄積する交通情報記憶手段と、蓄積された交通情報から交通事故地点を抽出し、抽出した交通事故地点に前後に連なる道路リンクの渋滞度の変化を時系列に生成し、事故渋滞動向情報として記憶する事故渋滞動向情報生成手段と、新たに取得した交通情報の渋滞度と前記事故渋滞動向情報を比較することにより、交通事故による渋滞が発生しているかどうかを判定する交通事故渋滞判定手段とを備えるものとした。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、通常容易に受信可能な交通情報を蓄積して、車載機側で事故渋滞動向情報を生成して保持し、走行中に受信した交通情報の渋滞度と事故渋滞動向情報とを比較することにより、交通事故による渋滞が発生しているかどうかを判定するので、センタと通信することなく交通事故による渋滞発生を予測できる。
したがって、センタと通信できない場合でも、早い段階で当該渋滞を回避すべきかどうか運転者に判断する機会を与えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1は本交通状況予測装置を適用した車載機のブロック構成図である。
車載機1は、ナビゲーション部12と、ディスプレイ13aと、スピーカ13bと、ビーコンユニット11と、交通情報記憶部14と、通常時渋滞度統計処理部15と、事故渋滞動向生成部16と、交通事故予測パラメータ記憶部17と、交通事故渋滞判定部18とからなる。
【0007】
ナビゲーション部12は、図示省略の地図情報を格納した地図情報記憶部と現在位置座標を取得する現在位置検出部を有し、通常のナビゲーション機能である現在位置を算出したり走行方向を算出したりする現在位置算出機能、目的地検索・設定機能、経路探索・設定機能、高頻度に使用する目的地を予め登録しておく地点登録機能、現在位置周辺の地図をディスプレイ13aに表示させる機能、設定された経路にしたがってディスプレイ13aまたはスピーカ13bに情報提示して案内する経路案内機能、POI(関心地点)情報を表示する機能などを有している。
【0008】
ビーコンユニット11は、VICS4、各都道府県警察/日本道路公団5がFM放送局3の通信装置3a、または道路近傍に設けられた光ビーコン通信装置3b、電波ビーコン通信装置3cなどを経由して配信する交通情報を受信する。通信装置3aは各都道府県警察/日本道路公団5の通信装置32と、光ビーコン通信装置3bおよび電波ビーコン通信装置3cは、VICS4の通信装置31と接続している。
ビーコンユニット11で受信した交通情報は、交通情報記憶部14が所定時間分蓄積記憶する。
配信される交通情報は、道路リンクごとの渋滞度を示すパラメータとして走行所要時間であるリンク旅行時間と渋滞度指標を含んでいる。渋滞度指標は、リンク旅行時間を複数段階に分けて渋滞度を表したものであり、例えばVICSで定義されている順調、混雑、渋滞の3段階がある。
交通事故があった場合は、交通情報は、さらに事故発生場所と発生時刻を示す交通事故情報を含んでいる。
【0009】
交通事故予測パラメータ記憶部17は、通常時渋滞情報とそのベースデータを記憶する通常時パラメータ17aのエリアと、事故渋滞動向情報とそのベースデータを記憶する事故渋滞動向パラメータ17bのエリアを有している。
【0010】
通常時渋滞度統計処理部15は、道路リンクごと、時間帯ごとに通常時の渋滞度の分布を示す通常時渋滞情報を生成する。そのため、通常時渋滞度統計処理部15は、交通情報記憶部14に蓄積された交通情報を所定の周期、例えば1週間ごとに検索し、交通事故が発生して渋滞などの影響を受けていない道路リンクに対して、道路リンクごとに、時間帯ごとのリンク旅行時間を取得し、リンク旅行時間のパーセンタイル値算出の統計処理をする。
【0011】
すでに同一道路リンク、同一時間帯の通常時渋滞情報を以前に処理して記録している場合は、取得したリンク旅行時間を、通常時パラメータ17aのエリアに記憶されているその通常時渋滞情報に対応するリンク旅行時間のベースデータと合わせて、リンク旅行時間のパーセンタイル値算出の統計処理をする。
例えば道路リンクごとのリンク旅行時間の25パーセンタイル値、50パーセンタイル値、75パーセンタイル値を算出する。この算出されたパーセンタイル値を通常時渋滞情報と称し、通常時渋滞情報算出のもとになっているリンク旅行時間のベースデータも、通常時渋滞情報とともに、通常時パラメータ17aのエリアに更新記憶される。
【0012】
なお、通常時渋滞情報の時間帯区分は、例えば平日と、土日および祝日とに大きく区分され、さらに朝、夕、昼間、夜の時間帯、必要によってはさらに細かい時間帯に区分される。
なお、統計処理のベースデータとなった個々の交通情報から抽出されたリンク旅行時間には、交通情報取得の日時データが付され、各道路リンクの時間帯ごとのデータ数が所定数以上になった場合は、古いものから順に削除され、常に新しく取得されたリンク旅行時間を含む所定数のデータが保持されて、通常時渋滞情報生成に使用されるものとする。
【0013】
事故渋滞動向生成部16は、交通情報記憶部14に蓄積された交通情報を所定の周期、例えば1週間ごとに検索し、交通事故情報を検索する。交通事故情報が検出された場合、過去に交通事故が発生した道路リンク(以下、事故発生道路リンクと称する)を含み前後に連なる、渋滞などの影響を受ける可能性のある所定距離内の道路リンク(以下、事故影響リンクと称する)に対して、道路リンクごとに、交通事故発生時刻から所定時間内の交通情報のリンク旅行時間を取得し、事故発生道路リンクのリンクIDと時間帯をラベルとして、事故渋滞動向パラメータ17bのエリアに蓄積する。
すでに以前に同一時間帯の同一事故発生道路リンクに対する、事故影響リンクのリンク旅行時間が蓄積されて所定以上の母集団になったとき、事故影響リンクに対して、交通事故発生時刻からの所定経過時間まで、所定時間間隔におけるリンク旅行時間のパーセンタイル値算出の統計処理をする。
【0014】
例えば、道路リンクの5分間隔の時間軸ごとのリンク旅行時間の25パーセンタイル値、50パーセンタイル値、75パーセンタイル値を事故渋滞動向情報として算出する。この算出されたパーセンタイル値の事故渋滞動向情報と、そのリンク旅行時間のベースデータは事故渋滞動向パラメータ17bのエリアに更新記憶される。
また、すでに同一時間帯の同一事故発生道路リンクに対する事故渋滞動向情報を以前に処理して記録している場合は、取得したリンク旅行時間を、事故渋滞動向パラメータ17bのエリアに記憶されているその事故渋滞動向情報に対応するリンク旅行時間のベースデータと合わせて、リンク旅行時間のパーセンタイル値算出の統計処理をする。
【0015】
時間帯は、通常時渋滞度統計処理の場合と同様に、例えば平日と、土日および祝日とに区分され、さらに朝、夕、昼間、夜の時間帯、必要によってはさらに細かい時間帯に区分される。
なお、統計処理のベースデータとなった個々の交通情報から抽出されたリンク旅行時間には、交通情報取得の日時データが付され、各道路リンクの時間軸ごとのデータ数が所定数以上になった場合は、古いものから順に削除され、常に新しく取得されたリンク旅行時間を含む所定数のデータが保持されて、事故渋滞動向情報生成に使用されるものとする。
【0016】
交通事故渋滞判定部18は、ナビゲーション部12が経路設定している場合は、設定された経路情報を取得し、交通事故予測パラメータ記憶部17の事故渋滞動向情報から、事故発生道路リンクを検索する。
交通事故渋滞判定部18は、ナビゲーション部12が、現在位置周辺地図表示機能の動作をしている場合は、現在位置と進行方向、道路地図データ、道路情報などを取得して、交通事故予測パラメータ記憶部17の事故渋滞動向情報から、現在位置から走行方向の所定の距離の半径の半円内の事故発生道路リンクを検索する。
【0017】
事故発生道路リンクが検索された場合、取得された最新の交通情報にもとづき、事故影響リンクに含まれる道路リンクの内の、事故発生道路リンクから自車両の現在位置側までの道路リンクのリンク旅行時間を取得し、交通事故予測パラメータ記憶部17の通常時渋滞情報の現在の時間帯のリンク旅行時間と比較し、リンク旅行時間の異常な増大があるかをチェックする。
通常時渋滞情報のリンク旅行時間からの異常な増大があるときは、交通情報記憶部14に蓄積された所定時間内過去から現在までの交通情報から、上記事故影響リンクの内の事故発生道路リンクから自車両の現在位置側までの道路リンクのリンク旅行時間を取得する。ついで、上記事故発生道路リンクに対応する現在の時間帯の事故渋滞動向情報を事故渋滞動向パラメータ17bのエリアから取得し、交通情報におけるリンク旅行時間の変化が、事故渋滞動向情報におけるリンク旅行時間の変化と一致する場合は、現在はまだ交通情報の事故情報により交通事故発生と連絡されていないが、事故発生道路リンクで交通事故が発生していると予測する。
【0018】
交通事故発生の予測をしたときは、交通事故渋滞判定部18は、事故発生が予測される道路リンクのリンクIDと、その予測信頼度をナビゲーション部12に出力し、ディスプレイ13aに表示させる。
なお、ナビゲーション部12の地図情報記憶部を除く部分と、通常時渋滞度統計処理部15と、事故渋滞動向生成部16と、交通事故渋滞判定部18とは、1つのCPUで構成しても良い。
また、交通情報記憶部14、交通事故予測パラメータ記憶部17は、不揮発メモリまたはHDDなどで構成する。さらに、このHDDは、交通情報記憶部14、交通事故予測パラメータ記憶部17と、ナビゲーション部12の図示省略の地図情報記憶部とを兼用しても良い。
【0019】
図2、図3は、本実施の形態における通常時渋滞情報と事故渋滞動向情報を生成する制御の流れを示すフローチャートである。
ステップ101では、車載機1のビーコンユニット11が交通情報を受信する。
ステップ102では、交通情報記憶部14が、受信された交通情報を受信日時データとともに蓄積する。
ステップ103では、通常時渋滞度統計処理部15は、定期的に蓄積された交通情報にアクセスし、前回の処理以後新しく受信された交通情報に対して、交通事故情報を検索する。
ステップ104では、交通事故情報が含まれない場合は、ステップ105へ進み、含まれる場合はステップ107へ進む。
【0020】
ステップ105では、通常時渋滞度統計処理部15は、前回の処理以後新しく受信された交通情報を、交通情報受信日時データからどの時間帯に属するかを判定し、時間帯ごとの各道路リンクのリンク旅行時間を、過去の同一時間帯のリンク旅行時間のデータベースと併せて統計処理する。つまり、交通事故予測パラメータ記憶部17の通常時パラメータ17aのエリアに記憶されている通常時渋滞情報のある時間帯の各道路リンクのリンク旅行時間ベースデータと交通情報の同一の時間帯の各道路リンクの旅行時間データを併せて、新しいリンク旅行時間の母集団における、通常時渋滞情報であるリンク旅行時間の25パーセンタイル値、50パーセンタイル値、75パーセンタイル値を算出する。
【0021】
このとき、リンク旅行時間のデータ数が所定数を越えるときは、古いデータを削除して残りの所定数のデータに対してパーセンタイルの統計処理を行う。
ステップ106では、交通事故予測パラメータ記憶部17は、ステップ105において算出した通常時渋滞情報を、通常時パラメータ17aのエリアに記憶する。また、パーセンタイル処理に用いたリンク旅行時間のデータベースも通常時パラメータ17aのエリアに更新して、記憶する。
【0022】
ステップ107では、事故渋滞動向生成部16は、交通事故情報から交通事故発生場所と日時Tを取得する。
ステップ108では、事故渋滞動向生成部16は、交通事故発生場所の前後に連なる所定の距離内に含まれる道路リンク、つまり事故影響リンクのリンクIDを交通情報から取得する。
ステップ109では、事故渋滞動向生成部16は、ステップ108で取得されたリンクIDについて、交通情報記憶部14に蓄積された時刻T〜時刻T+tまでの交通情報からリンク旅行時間を取得する。ここで、tは、事故がある道路リンク内で発生してから、その道路リンクに連なる所定の距離の道路リンクにまで渋滞が生じ始めるまでの時間を考えて設定する。
【0023】
ステップ110では、事故渋滞動向生成部16は、同一道路リンク、同一時間帯で生じた事故に対するリンク旅行時間のデータベースと今回処理する交通情報のリンク旅行時間のデータとを併せて、統計処理する。つまり、事故渋滞動向情報である交通事故発生時刻から時間軸ごとのリンク旅行時間のパーセンタイル値算出の統計処理をする。
このとき、リンク旅行時間のデータ数が所定数を越えるときは、古いデータを削除して残りの所定数のデータに対してパーセンタイルの統計処理を行う。
【0024】
ステップ111では、交通事故予測パラメータ記憶部17は、当該事故渋滞動向情報を事故渋滞動向パラメータ17bのエリアに更新記憶する。また、パーセンタイル値算出に用いたリンク旅行時間のデータベースも事故渋滞動向パラメータ17bのエリアに更新して、記憶する。
ステップ112では、通常時渋滞度統計処理部15は、ステップ108で取得されたリンクIDの道路リンクを除いて、ステップ105と同じ処理をする。
ステップ113では、交通事故予測パラメータ記憶部17は、ステップ108で取得されたリンクIDの道路リンクを除いて、ステップ106と同じ処理をする。
【0025】
図4に、ステップ105、112において生成する通常時渋滞情報を示す。通常時渋滞情報は、道路リンクごとに階層構造で、リンクIDの下に時間帯数、時間帯データのアドレス位置、下の階層には時間帯を示すデータの下にリンク旅行時間の75パーセンタイル値(75%タイル値)、50パーセンタイル値(50%タイル値)、25パーセンタイル値(25%タイル値)が記録される。
【0026】
図5、図6に交通事故渋滞動向情報の例を示す。
交通事故渋滞動向情報は、
(1)交通事故情報として、交通事故発生地点を示す道路地図のメッシュID、リンクID、当該道路リンクの中間位置座標(中心位置X、中心位置Y)、発生時間帯区分、
(2)事故発生道路リンクを含む、前後の道路リンクのリンクID、
(3)交通事故発生後の時間軸ごとの、(2)の道路リンクのリンク旅行時間と渋滞度指標
を含む。
時間軸は、例えば交通事故発生時から、その後の経過時間、例えば5分、10分、15分、20分と5分ごとの間隔で、リンク旅行時間を統計処理して作成する。なお、この時間軸は、交通情報の更新時間間隔と、交通渋滞の変化の仕方を考慮して設定する。
渋滞度指標は、リンク旅行時間からVICSの定義により対応させて求める。
図中の各リンク旅行時間は、下限値、中心値、上限値を示しているが、これは、例えばリンク旅行時間データのそれぞれ25パーセンタイル値、50パーセンタイル値、75パーセンタイル値である。
【0027】
図7は、図5、図6で示したリンク旅行時間の時間変化のテーブルをグラフ化したものである。t軸は交通事故発生時からの経過時間を、z軸は各道路リンクのリンク旅行時間を、x軸は一連の道路リンクを表す。本図では、リンクID4110の道路リンクで交通事故が発生した場合の、事故発生後のリンク旅行時間の下限値(実線)と上限値(破線)の時間変化を示している。
なお、事故渋滞動向情報の補足情報として、当該事故渋滞の解消時刻、解消に要する時間を保持しておいても良い。
【0028】
次に、車両が走行中に交通情報を受信しながら交通事故情報がまだ配信されていない段階で、自車両の経路に係わる道路リンクのリンク旅行時間の変化から、交通事故による渋滞を予測して運転者に提示する方法を説明する。
図8、図9は、本実施の形態における交通状況予測の制御の流れを示すフローチャートである。この処理は、交通事故渋滞判定部18において行われる。ここでは、運転者は車載機1に経路設定をして走行している場合を例に説明する。
【0029】
経路設定をして走行を開始すると、ステップ201では、経路に係わる事故渋滞動向情報を、交通事故予測パラメータ記憶部17の事故渋滞動向パラメータ17bのエリアから検索する。
ここで、経路に係わる事故渋滞動向情報とは、設定された経路上での過去に発生した事故だけではなく、経路から分岐して所定距離以内の道路リンクにおける過去に発生した事故によるものも含める。これは、経路から分岐して所定距離内の交通事故は、分岐点までまたは経路上にまで渋滞が及ぶ場合がありうるので、それを考慮するためである。
【0030】
ステップ202では、検索の結果過去に事故発生があったかどうかをチェックする。なかった場合は、事故渋滞予測判定の処理を終了する。あった場合はステップ203に進む。
ステップ203では、経路に係わる事故発生道路リンクのリンクIDを事故渋滞動向情報から取得する。
ステップ204では、交通情報記憶部14に最新の交通情報が取得されたかどうかをチェックする。取得していない場合はステップ214へ進み、取得している場合は、ステップ205へ進む。
【0031】
ステップ205では、ナビゲーション部12から、現在位置を取得する。
ステップ206では、ステップ203で取得されたリンクIDの道路リンクを起点として自車位置側の所定リンク数分の、所定時間過去の交通情報から最新の交通情報までのリンク旅行時間を、交通情報記憶部14から取得する。
なお、ステップ203で取得されたリンクIDが複数ある場合は、先ず現在位置に近い道路リンクを選んで処理する。
【0032】
ステップ207では、ステップ206で取得した事故発生道路リンクを起点として自車位置側の所定リンク数分に対応する道路リンクの、現在の時間帯の通常時渋滞情報を交通事故予測パラメータ記憶部17から取得する。
ステップ208では、最新交通情報のリンク旅行時が対応する通常時渋滞情報のリンク旅行時間より増大しているか判定する。この判定は、通常時渋滞情報の所定の閾値、ここでは75パーセンタイル値よりも大きいかどうかで判定する。
所定の閾値より大きい場合は、通常時渋滞度を越えているとして、事故渋滞かどうかをチェックするためステップ209に進む。そうでない場合は、通常の範囲の渋滞であるとして、ステップ212に進む。
【0033】
ステップ209では、ステップ203で取得した事故発生道路リンクの、現在の時間帯に対応する事故渋滞動向情報が交通事故予測パラメータ記憶部17に記憶されているかどうかをチェックする。記憶されていないときは事故渋滞予測をせずにステップ212に進む。
ステップ210では、ステップ206で交通情報から取得したリンク旅行時間のうち、所定の道路リンク数以上のリンク旅行時間が、所定の時間分以上、事故渋滞動向情報と同一傾向かどうか判定する。つまり、ステップ206で取得した所定時間過去の交通情報から最新の交通情報までに含まれる、事故影響リンクのうちの所定数以上の道路リンクの旅行時間が、当該の事故渋滞情報の所定数以上の連続する複数の時間軸において、下限値と上限値の間にある増大傾向を示しているとき同一傾向と判定する。
事故渋滞動向情報と同一傾向の場合は、ステップ211に進み、そうでない場合はステップ212に進む。
【0034】
ステップ211では、当該道路リンクで交通事故発生と予測する。ステップ211の後、ステップ212に進む。
ステップ212では、ステップ203で取得した道路リンクで、事故渋滞予測の処理がなされていない事故発生道路リンクが残っているかどうかをチェックする。
残っている場合はステップ206に戻り、次の事故発生道路リンクに対して処理を行う。
【0035】
残っていない場合は、ステップ213に進み、ステップ211で交通事故発生と予測している場合に、交通事故発生予測情報を提示する。
図10は、交通事故発生予測情報の表示例を示す。自車両の位置をマーカ41で、×印で推定した事故発生道路リンク上に事故発生予測位置(過去に事故のあった位置)42を示す。そして、両者の間の経路の道路リンクに対して、最新の交通情報における渋滞度指標を、走行方向を示す矢印で、順調(白い矢印)、混雑(粗い斜線の矢印)、渋滞(細かい斜線の矢印)の3段階で表示する。各矢印に添えられた数字はリンクIDを示す。
事故発生予測位置42からは、吹き出しで「事故発生の可能性あり!、信頼度:80%、・解消予想時刻:hh:mm」のメッセージが添えられている。
【0036】
なお、信頼度は、交通事故渋滞判定部18において、交通情報から取得した事故発生予測地点の道路リンクの前後に連なる道路リンクのリンク旅行時間が、事故渋滞動向情報のリンク旅行時間の上限値、中心値、下限値に対してどの位置にあるかで評価する。事故渋滞動向情報の中心値に近いほど信頼度が高いとし、信頼度100%に近づき、上限値または下限値に近いほど信頼度が低いとして評価する。
【0037】
ステップ213の後、ステップ214に進む。ステップ214では、ナビゲーション機能が動作中かどうかをチェックする。動作中の場合は、ステップ204に戻り、新しい交通情報を取得したかどうかチェックして、事故渋滞予測を続ける。ナビゲーション機能が動作していない場合は、事故渋滞予測の処理を終了する。
【0038】
本実施の形態のフローチャートにおけるステップ101、204は本発明の交通情報取得手段を、ステップ102は交通情報記憶手段を、ステップ103、104、107〜111は、事故渋滞動向情報生成手段を、ステップ201〜203、205〜212、214は交通事故渋滞判定手段を構成する。
【0039】
以上のように本実施の形態によれば、車載機1側において、受信した交通情報を蓄積し、交通情報に含まれる交通事故情報にもとづいて、交通事故が発生した道路リンクの前後に連なる一連の道路リンクのリンク旅行時間を、事故発生からの時間の経過によるリンク旅行時間の推移として、統計処理して各時間軸におけるリンク旅行時間の上限値、中心値、下限値を求めて事故渋滞動向情報として記憶している。
また、事故が発生していない場合の、通常時のリンク旅行時間を統計処理して、上限値、中心値、下限値を求めて通常時渋滞情報として記憶している。
そして、最新の受信した交通情報から、過去に事故が発生した道路リンクの前後に連なる道路リンクのリンク旅行時間を取得して、対応する道路リンクの通常時渋滞情報と比較し、異常な増大がないかチェックする。
交通情報のリンク旅行時間に異常な増大が見つかったとき、受信した所定の過去から最新までの交通情報によって、過去に事故が発生した道路リンクの前後に連なる道路リンクの交通情報のリンク旅行時間を、事故渋滞動向情報と比較して、事故発生を予測している。
【0040】
したがって、従来例のようにセンタ側で現在事故が発生している可能性があるかどうかを予測して、その結果を車載機に配信するということをしていないので、センタと車載機との間で通信が確保できない場合でも、支障なく交通情報にもとづいて現時点の事故発生予測ができる。特に交通情報はFM通信、またはビーコン通信によるものであり、通常受信可能な情報である。
【0041】
また、交通事故発生による渋滞予測は、1箇所の道路リンクのリンク旅行時間に依存せず、複数の連なる道路リンクの内の所定数以上の道路リンクのリンク旅行時間が、所定数以上の連続する時間軸にわたって、事故渋滞動向情報の傾向と一致するとき、事故による渋滞の可能性ありと判定するので確度の高い判定ができる。
【0042】
なお、本実施の形態においては、通常時渋滞情報、事故渋滞動向情報は車載機1側で生成して記憶するものとしたが、交通情報配信センタ側において、交通情報を常時解析して、図1の通信装置19により車載機1が接続してきたときに、最新の通常時渋滞情報と事故渋滞動向情報を送信し、車載機1側で交通事故予測パラメータ記憶部17に記憶するものとしても良い。
さらに、通常時渋滞情報および事故渋滞動向情報のリンク旅行時間の上限値、中心値、下限値の設定の仕方を、本実施の形態では例えば75パーセンタイル値、50パーセンタイル値、25パーセンタイル値としたがそれに限定されるものではない。
【0043】
さらに、本実施の形態では、道路リンクごとのリンク旅行時間を直接用いたが、複数の連続する道路リンクをまとめて、1つの区間リンクと定義し、区間リンク全体の走行に要する所要時間、つまり区間リンク旅行時間を算出し、それでもって通常時渋滞情報、事故渋滞動向情報のリンク旅行時間の代わりとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態の構成を示す図である。
【図2】通常時渋滞情報と事故渋滞動向情報を生成する制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】通常時渋滞情報と事故渋滞動向情報を生成する制御の流れを示すフローチャートである。
【図4】通常時渋滞情報を説明する図である。
【図5】事故発生道路リンクに連なる一連の道路リンクのリンク旅行時間の、事故発生後の変化を示す事故渋滞動向情報を示す図である。
【図6】事故発生道路リンクに連なる一連の道路リンクのリンク旅行時間の、事故発生後の変化を示す事故渋滞動向情報を示す図である。
【図7】事故発生道路リンクに連なる一連の道路リンクのリンク旅行時間の、事故発生後の変化を説明する図である。
【図8】事故渋滞予測の制御の流れを示すフローチャートである。
【図9】事故渋滞予測の制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】交通事故発生予測情報の表示を説明する図である。
【符号の説明】
【0045】
1 車載機
3 FM放送局
3a 通信装置
3b 光ビーコン通信装置
3c 電波ビーコン通信装置
4 VICS
5 都道府県警察/日本道路公団
11 ビーコンユニット
12 ナビゲーション部
13a ディスプレイ
13b スピーカ
14 交通情報記憶部
15 通常時渋滞度統計処理部
16 事故渋滞動向生成部
17 交通事故予測パラメータ記憶部
17a 通常時パラメータ
17b 事故渋滞動向パラメータ
18 交通事故渋滞判定部
19、31、32 通信装置
41 マーカ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から車両側に交通情報を取得する交通情報取得手段と、
前記取得された交通情報を蓄積する交通情報記憶手段と、
前記蓄積された交通情報から交通事故地点を抽出し、該抽出した交通事故地点に前後に連なる特定の道路リンクの渋滞度の変化を時系列に生成し、事故渋滞動向情報として記憶させる事故渋滞動向情報生成手段と、
新たに取得した交通情報の渋滞度と前記事故渋滞動向情報とを比較することにより、交通事故による渋滞が発生しているかどうかを判定する交通事故渋滞判定手段とを備えることを特徴とする交通状況予測装置。
【請求項2】
前記事故渋滞動向情報は、各前記特定の道路リンクの事故発生後の経過時間による渋滞度の変化を、当該道路リンクの走行に掛かる所要時間であるリンク旅行時間の変化で表し、
さらに、前記経過時間ごとのリンク旅行時間の段階別の閾値とすることを特徴とする請求項1に記載の交通状況予測装置。
【請求項3】
前記交通事故渋滞判定手段は、新たに取得した交通情報に含まれるリンク旅行時間が、前記事故渋滞動向情報の各前記特定の道路リンクのリンク旅行時間の閾値以上であるかどうかを比較し、前記取得した交通情報が、所定回数以上連続して前記閾値以上であることを示すとき、交通事故による渋滞が発生していると判定することを特徴とする請求項2に記載の交通状況予測装置。
【請求項4】
前記交通事故渋滞判定手段が、交通事故による渋滞が発生していると判定したとき、交通事故が発生したと推測する道路リンクを事故発生道路リンクとして提示し、
現在位置から前方へ前記交通事故発生予測道路リンクを含む経路を示す交通事故発生予測情報を乗員に提示することを特徴とする請求項2または3に記載の交通状況予測装置。
【請求項5】
外部から車両側に交通情報を取得し、
前記取得した交通情報を蓄積し、
前記蓄積した交通情報から交通事故地点を抽出し、該抽出した交通事故地点に前後に連なる特定の道路リンクの渋滞度の変化を時系列に生成し、事故渋滞動向情報として記憶し、
新たに取得した交通情報の渋滞度と前記事故渋滞動向情報とを比較することにより、交通事故による渋滞が発生しているかどうかを判定することを特徴とする交通状況予測方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−38469(P2006−38469A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214158(P2004−214158)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】