説明

伝送状態表示方法

【課題】OFDM信号、シングルQAM信号等のディジタル伝送に重要な各地点の遅延プロファイル、周波数成分状態、BER、電界、コンスタレーション等の受信状態情報を他地点でも個別に状態把握する事を目的とする。
【解決手段】変調送信部からなる送信装置と、復調部と受信状態情報検出部と変調送信部からなる中継装置と、復調部と復号化部と受信状態情報検出部とからなる受信装置によって構成されるディジタル伝送システムにおいて、中継装置は、受信信号中のIDを検知し、検知したID値に応じて、本段で使用するID値を適時決定し、次段に受信状況情報と本段で使用するIDとを外部出力するTS信号に挿入して伝送し、受信装置は、選択信号と合致したIDの受信状態情報を、外部映像信号出力に重畳して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル信号を受信し、送信を行う中継装置の、伝送状態の可視化及び再伝送技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
映像や音声信号の無線伝送には、数年前はアナログFMによる方法で映像や音声を伝送していたが、近年、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)方式やOFDM(Orthgonal Frequency Division Multiplexing)方式などによるデジタル伝送方式が用いられるようになっている。
【0003】
このとき、伝送対象となるデータは、映像や音声信号をMPEG処理により圧縮したTS(Transport Stream)などの伝送信号であるが、この場合、一般的には、デジタル変調した伝送信号はQAMで2次元データにマッピングされるかまたはOFDMで多数の搬送波に多重して送信側から伝送し、受信側で2次元のデータまたは多数の搬送波を識別して伝送信号を再生する方式のデジタル伝送装置が使用される。ところで、上記したアナログ方式の場合、受信電界レベルによって映像や音声のS/Nが変化し、このため、例えばマラソンの中継など、電界レベルの変化が激しい移動伝送においては、中継された映像がノイズや乱れの多い品位の低い画像になり易かった。しかし、デジタル伝送方式によれば、デジタル化された情報が伝送されるので、エラー訂正処理が適用でき、このため、受信電界レベルが変化している伝送環境のもとでも、エラー訂正が働く電界レベル範囲であれば、同一の品位の映像が中継できる。反面、デジタル伝送方式では、電界レベルが或る限界値を下回るとエラー訂正が効かなくなり、この場合、突然、映像信号の再生が不可能になってしまうが、このときの電界レベルの下限値は、受信側での識別判定処理における信号状態により、或る程度、把握が可能である。例えば、伝送量が60Mbpsと比較的多い64QAM方式の場合、C/Nの最小値は27dB程度なので受信電界レベルの下限値は約−70dBmとなり、従って、映像の再生には、これ以上のレベルが必要になる。また、伝送量が35Mbpsと比較的少ない16QAM2方式の場合は、C/Nの最小値は18dB程度なので受信電界レベルの下限値は約−80dBmで、これ以上のレベルなら映像が再生できる。
そこで、このようなデータ訂正処理が適用されたデジタル伝送装置では、従来から、受信電界レベルの下限値を伝送状態や同期再生状態から把握できるようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
そこで、以下、このようなデジタル伝送装置の一例について、図3、図6により説明する。この図3は、データ訂正処理が適用されたデジタル伝送装置を映像中継システムに適用したときの全体構成の概略図で詳細な機器は省略してある。図6は、受信状態伝送の従来技術の一例を示すブロック図である。この場合、例えば走行中のマラソン選手の画像を捉えている移動車などの撮像現場が送信側で、受信側は放送局に相当し、これらの間は、例えばマイクロ波帯の電波を用いた無線伝送形式となる。さらに、放送局から撮像現場が遠い場合、或いは途中に電波の伝播に障害となる物があった場合、放送局までの途中に中継部を設ける必要が生じる。この場合、途中にあるのが中継部で、例えば小高い山頂や高層ビルの屋上などに設置される。従ってこの場合は、送信部Tx1、Tx2、Tx3、Tx4とアンテナ1、2、3、4、5、6、7、8と受信部Rx1、Rx2、Rx3、Rx4と多重部MUX5、MUX6、MUX7、MUX8を加えて電波W1、W2、W3、W4を用いた多段中継となる。
【0005】
中継部にある多重部MUX5は、受信部Rx1から出力される再生圧縮データTSr 1と受信状態情報Fr1と多重して送信部Tx2でアンテナ3からマイクロ波の電波W2に乗せて送信させ、アンテナ4で受信されるようにする。受信部Rx2、Rx3と多重部MUX6、MUX7と送信部Tx3、Tx4とアンテナ4、5、6、7、8を介して、電波W3、W4を受信し、受信側の受信部Rx4で映像信号を再生し、受信状態情報Fr1からFr4を多重して受信状態映像化信号として出力する。
【0006】
まず送信側では、テレビカメラCAM1で撮像した映像信号をMPEGで圧縮したTS信号が、送信部Tx1に入力され、OFDM変調されて、多数の搬送波に変換され、さらに変調され周波数変換され、アンテナ1により電波W1として送信され、山頂にあるアンテナ2に向けて伝送される。こうして山頂のアンテナ2に伝達された電波W1は、受信部Rx1に入力され、中間周波信号に変換され復調され、再生圧縮データTS2 に復元され、送信部Tx2で電波W2として送信される。順次Rx3、Tx3経由で、受信側の受信部Rx4で再生圧縮データTS4はMPEGデコーダされ、映像信号に伸張される。
【0007】
このとき、上述のように、受信電界レベルに下限値があるので、伝送状態や同期再生状態の良否を把握する必要があり、このため受信部Rx1、Rx2、Rx3、Rx4から出力される受信状態情報を図7の従来技術の受信状態情報を映像信号に重畳する一例を示すブロック図のように、遅延プロファイル情報、BER情報、電界情報、他情報を外部映像出力に重畳して伝送状態映像化信号として出力し、図示しない映像モニタで、受信状態情報が観測できるようにしてある。または、受信状態情報を図示しないオシロスコープで観測するか、または制御信号に重畳して図示しない制御装置または図示しないパソコンで観測していた (特許文献2参照) 。
【0008】
このとき、映像モニタに表示される従来技術の受信状態情報は例えば図8に示すような遅延プロファイル(反射波の有無およびレベル)になる。遅延プロファイルの異常は、フリーズを予期する上で重要な情報であり、受信点とセンタの各々でアラームとして検出する。これら受信状況情報は、受信機の出力であるTS信号や映像信号の帰線(ブランキング)期間に多重して受信状況情報を伝送する。多段にて伝送するケースも多い。そして、これにより、映像伝送の受信が中断する虞れの発生を予想し、それに備えて予め用意してある別のプログラムに切換えるなどの処置をとることができる。
【0009】
以上説明したように、複数の中継地点の伝送状態の監視を行う場合では、途中の中継地点での詳細な受信状態を個別に放送局で把握できなかった。そこで、電話回線等を用いて受信状態の情報を伝送していた。(特許文献3参照)
【特許文献1】特開平6−326735号公報
【特許文献2】特開2002−94481号公報
【特許文献3】特開2005−51755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、責任者は、スタジオ等にいて中継全体の指図を行う。移動伝送の良し悪し等の最終決定も該責任者のタスクとなる。しかし、アラームは検出できても、移動伝送の状態、すなわち、フリーズ等の異常発生に対する余裕度は、例えば小高い丘である受信点にいかなければ詳細を知ることが出来ない。多段の中継伝送を行う場合、各中継段の受信関連情報も、全体の伝送状態の把握には重要な処理である。しかし、別回線を用いないと各中継段の受信状態情報は個別に識別伝送できなかった。
【0011】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたもので、複数段中継伝送の場合でも伝送状態を状況を判断し決定する責任者がいる他地点であるスタジオ等で途中の中継点での受信状態を伝送かつの表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、多段中継伝送システムにおいて、各中継段における受信状況情報と前記各中継段を特定する情報とを重畳して次段に伝送する。
【0013】
または、変調送信部からなる送信装置と、復調部と受信状況情報検出部と変調送信部からなる中継装置と、復調部と復号化部と受信状況情報検出部とからなる受信装置によって構成されるデジタル伝送システムにおいて、前記中継装置は、受信信号中の前記各中継段を特定する情報を検知し、検知した前記各中継段を特定する情報の値に応じて、本中継段を特定する情報の値を適時決定し、次段に前記受信状況情報と前記本中継段を特定する情報の値とを伝送し、前記受信装置は、選択信号と合致した前記各中継段を特定する情報の値の受信状況情報を、外部映像信号出力またはオシロスコープ出力または制御信号に重畳する。
【0014】
さらに、前記伝送状態表示情報は前記各中継段を特定する情報の値とともに、受信側に送出されるTS信号または映像信号の帰線期間または低階層変調に多重されるか、あるいは低速回線またはIP回線で伝送される。
【0015】
さらに、前記伝送状態表示情報は、遅延プロファイル情報、周波数成分状態情報、BER情報、電界情報、コンスタレーション情報の少なくとも1つである。
【0016】
つまり、本発明は、各中継地点の伝送状態表示情報を各中継地点の個別のID値とともに、受信端に伝送する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各中継地点での遅延プロファイル情報、周波数成分状態、BER情報、電界情報、コンスタレーション情報を、個別に後段へ伝送することが可能であり、最終伝送先のスタジオ等の他地点にて伝送先で各中継段の受信状況情報を個別に抽出し、映像モニタまたはオシロスコープまたはパソコンで表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、伝送状態を状況を判断し決定する責任者がいる他地点であるスタジオ等に状況を伝送かつ表示すること目的とする。従来と本発明と共通のデジタル中継システムの全体構成を示す概略図は図3であり、本発明による中継点の受信状態表示機能を備えたデジタル中継システムの第一の例の構成図を図1に示す。従来と同様に走行中のマラソン選手の画像を捉えている移動車などの撮像現場が送信側で、受信側は放送局に相当し、これらの間は、例えばマイクロ波帯の電波を用いた無線伝送形式となる。さらに、放送局から撮像現場が遠い場合、或いは途中に電波の伝播に障害となる物があった場合、放送局までの途中に中継部を設ける必要が生じる。この場合、途中にあるのが中継部で、例えば小高い山頂や高層ビルの屋上などに設置される。従ってこの場合は、送信部Tx1、Tx2、Tx3、Tx4とアンテナ1、2、3、4、5、6、7、8と受信部Rx1、Rx2、Rx3、Rx4と多重部MUX1、MUX2、MUX3、SELを加えて電波W1、W2、W3、W4を用いた多段中継となる。
【0019】
この図1の実施形態は、受信状態情報を後段に伝送する信号に重畳するのは図6の従来技術と同等であるが、従来技術と異なり、各中継段を特定する情報(例えばID)を後段に伝送するTS信号に挿入し、受信装置に受信したTS信号内の各中継段を特定する情報(例えばID)により受信状態情報の選択機能を追加することにより、受信端でも、途中の各中継点の受信状態を個別に監視できるようにしたものである。
【0020】
本発明のIDを伝送するTS信号に挿入するタイミングチャートを図2に示す。TS信号には情報量の多少などからNULLデータがある。初段では、ID値は00を付与しNULLデータをID00に置き換え、受信復号信号を次段の送信機にTS信号に形態にて渡す。第2段目の伝送先である中間点でも、2段目の受信復号信号を次段の送信機にTS信号に形態にて渡す際に、受信状況情報用ID検知器&ID制御部は、IDを調べ、00のIDがあれば、2段目の受信復号信号にID=01を付与し、NULLデータをID01に置き換える。また、3段目の装置は、00のIDがあり、かつ、01のIDがある場合は、ID=02を使用してNULLデータをID02に置き換え、3段目の受信復号信号を次段の送信機にTS信号に形態にて渡す。
【0021】
スタジオ等の受信端では、受信状態情報出力の内、選択信号と合致したIDの受信状態情報を、外部映像信号出力またはオシロスコープ出力または制御信号に重畳し、出力する。
【0022】
受信状態情報は、OFDMでは、遅延プロファイル、周波数成分状態、BER情報、電界情報などがあり、QAMでは、コンスタレーション情報などがある。
【0023】
本発明の選択済受信状態情報を映像信号に重畳する一例を示すブロック図を図4に示す。図4は、従来技術の図7に加えて、選択信号に基づき中継の各段のIDにより、表示したい中継の各段の受信状態情報を選択して映像信号に重畳し、途中の中継の各段の受信状態を受信端でも個別に監視できるようにしたものである。
【0024】
図4において、映像変換部12から15で重畳済信号から遅延プロファイル、BER情報、電界情報受信状態他の受信状態情報を抽出し同期信号C.SYNCに同期した映像信号に変換して、映像重畳部16で選択信号と合うIDを有する中継点の受信状態情報を選択重畳して、選択済受信状態信号として選択済受信状態映像化信号VOsaを出力する。
【0025】
本発明の一例の選択済み受信状態情報映像化信号を図5に示す。図5の選択済受信状態映像化信号VOsaは、図8の従来技術での受信状態映像化信号VOsbに加えて、ID番号と中継地点名が表示されている。図5では、ID番号は00で、山頂の中継の受信状態の遅延プロファイルが表示された例である。
【0026】
受信状態情報データとIDとは、TS信号または映像信号の帰線期間に挿入されることが多いが、低階層変調に多重されるか、電話回線等の低速回線またはIP回線で伝送されても良い。低階層変調は、OFDMの1Kモードで10本、2Kモードで16本のキャリアのTMCC等、情報量は少ないが、受信状況の劣化に耐えるので、低速度で確実に伝送できる。電話回線は費用がかかるが安定に伝送できる。IP回線は、伝送速度と遅延は不安定だが急速に広帯域化し、電話回線に加え無線や光接続など接続ポイントも急速に増加し、将来の通信の主力になりつつある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の受信状態情報伝送機能を備えたデジタル中継システムの一例を示すシステム構成図
【図2】本発明のIDを伝送するTS信号に挿入するタイミングチャート
【図3】デジタル中継システムの全体構成の一例を示すシステム構成図
【図4】本発明の選択済み受信状態情報を映像信号に重畳する一例を示すブロック図
【図5】本発明の一例の選択済み受信状態情報映像化信号
【図6】伝播状態表示機能を備えた従来のデジタル中継システム構成図
【図7】従来技術の受信状態情報を映像信号に重畳する一例を示すブロック図
【図8】従来技術の受信状態情報映像化信号
【符号の説明】
【0028】
Tx1、Tx2、Tx3、Tx4:送信部 CAM1:テレビカメラ
Rx1、Rx2、Rx3、Rx4:受信部
ID1、ID2、ID3:ID検出兼制御部
MUX1、MUX2、MUX3、MUX5、MUX6、MUX7、MUX8:多重部 SEL:選択多重部
1、2、3、4、5、6、7、8:アンテナ
11、17:重畳情報抽出映像重畳部
12、13、14、15:重畳情報抽出映像変換部 16、18:映像重畳部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段中継伝送システムにおいて、各中継段における受信状況情報と前記各中継段を特定する情報とを重畳して次段に伝送することを特徴とする伝送状態把握方法。
【請求項2】
変調送信部からなる送信装置と、復調部と受信状況情報検出部と変調送信部からなる中継装置と、復調部と復号化部と受信状況情報検出部とからなる受信装置によって構成されるデジタル伝送システムにおいて、
前記中継装置は、受信信号中の前記各中継段を特定する情報を検知し、検知した前記各中継段を特定する情報の値に応じて、本中継段を特定する情報の値を適時決定し、次段に前記受信状況情報と前記本中継段を特定する情報の値とを伝送し、前記受信装置は、選択信号と合致した前記各中継段を特定する情報の値の受信状況情報を、外部映像信号出力またはオシロスコープ出力または制御信号に重畳することを特徴とするデジタル伝送状態把握方法。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2の伝送状態把握方法において、
前記伝送状態表示情報は前記各中継段を特定する情報の値とともに、受信側に送出されるTS信号または映像信号の帰線期間または低階層変調に多重されるか、あるいは低速回線またはIP回線で伝送されることを特徴とする伝送状態把握方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の伝送状態把握方法において、
前記伝送状態表示情報は、遅延プロファイル情報、周波数成分状態情報、BER情報、電界情報、コンスタレーション情報の少なくとも1つであることを特徴とする伝送状態把握方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−251705(P2007−251705A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73750(P2006−73750)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】