説明

位相シフトマスクの検査方法

【課題】 位相シフト部同士が遮光部を介して隣接する遮光パターンを有する補助パターン型位相シフトマスクのパターン欠陥検査において、描画用パターンデータを的確に補正してパターン検査用データとし、パターン欠陥検査装置により得られる画像データに対するパターン検査用データの相違が生じないようにし、これらパターン検査用データと画像データとの比較により精度よく欠陥を検出する。
【解決手段】 パターン欠陥検査装置を用いて検査光により遮光パターンの画像データを得る工程と、遮光パターンの描画用パターンデータを少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて位相シフト部及び非位相シフト部を通過する検査光強度の相違による遮光パターン像の寸法変化に基づく補正を加えたパターン検査用データに変換する工程と、画像データとパターン検査用データとを比較して位相シフトマスクのパターン欠陥を検出する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフトマスクの検査方法に関し、特に、位相シフト部が遮光部を介して隣接するパターン配置を含む位相シフトマスクのパターン欠陥の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大規模集積回路(LSI)における高集積化及び回路パターンの微細化に伴い、フォトリソグラフィ工程では、解像限界の高い位相シフトマスクが提案され実用化されつつある。位相シフトマスクには、レベンソン型、エッジ協調型、補助パターン型、クロムレス型、ハーフトーン型等の種類があり、例えば、レベンソン型位相シフトマスクは、透明基板上にクロム等の金属膜等により形成された遮光パターンを備えて構成されており、ラインアンドスペースパターンのように、遮光部と透光部とが繰返し存在する場合に、遮光部を介して隣接する透光部を透過する透過光の位相が180°ずれるように構成されている。これら透光部を透過する透過光の位相がずれていることにより、回折光の干渉による解像度の低下が防止され、ラインアンドスペースパターンの解像度の向上を図ることができる。
【0003】
このような位相シフトマスクにおいては、遮光部を介して隣接する透光部間で、波長λの透過光に対して、〔λ(2m−1)/2〕(∵mは、自然数)の光路長差を生じさせることで、これら透過光の間に180°の位相差を生じさせている。このような光路長差を生じさせるためには、遮光部を介して隣接する透光部間における透明基板の厚さの差dを、透明基板の屈折率をnとしたとき、〔d=λ(2m−1)/2n〕が成立するようにすればよい。
【0004】
位相シフトマスクにおいては、透光部間における透明基板の厚さの差を生じさせるため、一方の透光部において透明基板上に透明薄膜を被着させて厚さを増すか、または、一方の透光部において透明基板を彫り込むことにより厚さを減らすことを行っている。すなわち、透明基板上に透明薄膜を被着させたシフタ被着型(凸部型)位相シフトマスクの位相シフト部は、厚さd(=λ(2m−1)/2n)の透明薄膜(シフタ)で覆われている。また、透明基板を彫り込んだ彫り込み型位相シフトマスクの位相シフト部は、透明基板が深さd(=λ(2m−1)/2n)だけエッチングされている。なお、これら透明薄膜の被着も彫り込みもなされない透光部、または、透光部が浅い彫り込み部と深い彫り込み部とを有する場合は、浅い彫り込み部が、非位相シフト部となる。
【0005】
ところで、LSIの製品歩留まり低下の大きな原因の一つとして、位相シフトマスクのパターン欠陥が挙げられる。つまり、位相シフトマスクに生じているパターン欠陥がパターン転写の際にウエハ上に転写され、転写されたパターンに欠陥が生じるために、製品歩留りが低下する。
【0006】
パターン欠陥には、欠け、エッジ不良、ピンホール、突起等、遮光パターンの遮光部の欠陥や、パターン欠落、パーティクルの付着等が含まれる。そこで、位相シフトマスクのパターン欠陥を検出するパターン欠陥検査方法の研究が盛んに行われ、また、実用化されている。
【0007】
パターン欠陥検査方法は、二つのタイプに大別することができる。第1のタイプのパターン欠陥検査方法は、同じパターンが転写された2つのチップをそれぞれパターン欠陥検査装置を用いて観察し、これらを比較することによって相違箇所を検出し、パターン欠陥を検出する方法(ダイ・トゥ・ダイ(die to die)検査法)である。第2のタイプのパターン欠陥検査方法は、パターンが転写されたチップをパターン欠陥検査装置を用いて観察して得られた測定パターンデータと、データベースに格納されている描画用パターンデータを所定の関係に従って変換して作成したパターン検査用データとを比較することによって、相違箇所を検出し、パターン欠陥を検出する方法(ダイ・トゥ・データベース(die to database)検査法)である。これらパターン欠陥検査方法のうち、フォトマスクが同じパターンが転写された複数のチップを有する場合は、ダイ・トゥ・ダイ検査が可能であるが、フォトマスクが同じパターンが転写された複数のチップを有しない場合は、ダイ・トゥ・データベース検査が必要であるため、近年では、ダイ・トゥ・データベース検査法が採用される傾向にある。
【0008】
パターン欠陥検査装置は、図8に示すように、位相シフトマスクに検査光を照射する照明光学系201と、位相シフトマスクの画像データを収集するデータ収集手段202とを有して構成されている。データ収集手段202は、対物レンズ203、位置決め機構204及び画像データを得る検出器205を有して構成されている。また、このパターン欠陥検査装置を用いてダイ・トゥ・データベース検査法を実行するには、特許文献1に記載されているように、データ発生手段206により、データベース207から描画用パターンデータを読み出して補正し、パターン検査用データを得るとともに、比較手段208により、検出器205により得られた画像データとパターン検査用データとを比較する。
【0009】
そして、この特許文献1には、パターン検査用データとして、レベンソン型位相シフトマスクの位相シフト部と非位相シフト部との間の光強度の違いに起因する遮光パターンの寸法変化を補正したデータを使用することが記載されている。具体的には、遮光部を介して交互に位相シフト部と非位相シフト部とが配置されたライン・アンド・スペースパターンに対し、パターン寸法に応じて、位相シフト部と非位相シフト部とを通過する検査光の光強度の違いを補正するバイアス量を算出し、描画用パターンデータを補正してパターン検査用データとすることが記載されている。
【0010】
なお、彫り込み部の側壁エッジからの散乱光により生ずる暗部の影響のため、位相シフト部を通過する検査光は、非位相シフト部とを通過する検査光よりも光強度が低くなることが知られている。
【0011】
このように、描画用パターンデータにおける位相シフト部に相当する箇所にあらかじめバイアス(マイナスサイジング)を掛けて補正したパターン検査用データを用いることにより、パターン検査用データをより画像データに近づけ、パターン検査におけるノイズ成分を低減させることが可能となる。
【0012】
一方、特許文献2には、補助パターン型位相シフトマスクが記載されている。この補助パターン型位相シフトマスクは、図9に示すように、矩形状の非位相シフト部301と、この非位相シフト部301の各辺に沿ってこの非位相シフト部301を囲むようにして形成された位相シフト部302とを有し、これら非位相シフト部301及び位相シフト部302以外の領域が遮光部303となされた遮光パターンを有している。前記位相シフト部302を形成する遮光パターンは、露光光の解像限界以下のパターンであり、非位相シフト部301を形成する矩形状遮光パターンの転写パターンの解像度を向上させるものである。
【0013】
このような補助パターン型位相シフトマスクの遮光パターンにおいては、位相シフト部302同士が、遮光部303を介して隣接している箇所があるという点で、前述したレベンソン型位相シフトマスクのようにライン・アンド・スペースパターンにおける透光部に交互に位相シフト部を有するパターン配置とは異なる特徴がある。
【0014】
【特許文献1】特開2003−162043公報
【特許文献2】特許第2710967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献2に記載されている補助パターン型位相シフトマスクのような、遮光部を介して隣接する位相シフト部を含む遮光パターンを有する位相シフトマスクに対して、特許文献1に記載された位相シフトマスクの検査方法を適用した場合には、パターンの寸法のみを考慮してバイアス量を決定し、描画用パターンデータを補正してパターン検査用データを得ているために、このパターン検査用データがパターン欠陥検査装置により得られる画像データに対して相違してしまい、これらパターン検査用データと画像データとの比較により欠陥を検出することが困難である。
【0016】
すなわち、図10中の(a)に示すように、遮光部303を介して隣接する位相シフト部302を含む遮光パターンを有する位相シフトマスクに対して、パターンの寸法のみを考慮してバイアス量を決定して描画用パターンデータを補正した場合には、図10中の(b)に示すように、位相シフト部302の寸法を一律に縮小する補正がなされ、さらに、パターン欠陥検査装置の光学系における画像の変化に対応した補正がなされて、図10中の(c)に示すように、パターン検査用データが得られる。このパターン検査用データは、特に、位相シフト部302,302間の距離Dが短い場合には、図10中の(d)に示す画像データと一致しない。したがって、このパターン検査用データに基づいて、位相シフトマスクにおけるパターン欠陥を正確に検出することはできない。
【0017】
そこで、本発明の目的は、従来、位相シフトマスクに対する検査精度が不十分であったダイ・トゥ・データベース検査法の検査精度を向上させ、特に、位相シフト部同士が遮光部を介して隣接しているパターン配置を有する位相シフトマスクのパターン欠陥検査において、描画用パターンデータを的確に補正してパターン検査用データを得ることによって、パターン欠陥検査装置により得られる画像データに対するパターン検査用データの相違が生じないようにして、これらパターン検査用データと画像データとの比較により精度よく欠陥を検出することができる位相シフトマスクの検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述したように、従来の位相シフトマスクの検査方法においては、位相シフト部の光学特性をパターン検査用データに反映させるために、パターン検査用データにおける位相シフト部にバイアス(マイナスサイジング)を掛けて対応しているが、補助パターン型位相シフトマスクにおいては、一律方向のバイアス(マイナス方向のサイジング)では対応できないパターンが存在する。
【0019】
そこで、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0020】
〔構成1〕
透明基板上に遮光部と透光部とからなる遮光パターンを有し透光部が位相シフト部及び非位相シフト部からなり位相シフト部が遮光部を介して隣接するパターン配置を含む位相シフトマスクの検査方法において、パターン欠陥検査装置を用いて検査光により遮光パターンの画像データを得る工程と、位相シフトマスクの遮光パターンの描画用パターンデータを少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて位相シフト部及び非位相シフト部を通過する検査光の光強度の相違に起因する遮光パターン像の寸法変化に基づく補正を加えたパターン検査用データに変換する工程と、画像データとパターン検査用データとを比較して位相シフトマスクのパターン欠陥を検出する工程とを有することを特徴とするものである。
【0021】
〔構成2〕
構成1を有する位相シフトマスクの検査方法において、補正は、遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離が所定の値よりも大きい部分について描画用パターンデータを縮小する補正とし、該位相シフト部間の距離が所定の値より小さい部分について描画用パターンデータを拡大する補正とすることを特徴とするものである。
【0022】
〔構成3〕
構成2を有する位相シフトマスクの検査方法において、補正は、描画用パターンデータから遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離が所定の値よりも小さい部分を抽出し、この抽出した部分について、描画用パターンデータを拡大する補正を施し、抽出した部分以外の位相シフト部について、描画用パターンデータを縮小する補正を施すことを特徴とするものである。
【0023】
〔構成4〕
構成1乃至構成3のいずれか一を有する位相シフトマスクの検査方法において、位相シフト部は、透明基板を所定の深さに彫り込むことにより形成されたものであることを特徴とするものである。
【0024】
このような構成を有する本発明に係る位相シフトマスクの検査方法においては、少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて描画用パターンデータを補正してパターン検査用データとするため、一律方向のバイアスでは対応できない特定パターンを有する補助パターン型位相シフトマスクのパターン検査においても、高精度の検査が可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る位相シフトマスクの検査方法においては、少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて描画用パターンデータを補正してパターン検査用データとするため、一律方向のバイアスでは対応できない特定パターンを有する補助パターン型位相シフトマスクのパターン検査においても、高精度の検査が可能となる。
【0026】
すなわち、本発明は、位相シフトマスクに対する検査精度が不十分であったダイ・トゥ・データベース検査法の検査精度を向上させ、特に、位相シフト部同士が遮光部を介して隣接しているパターン配置を有する補助パターン型位相シフトマスクのパターン欠陥検査において、描画用パターンデータを的確に補正してパターン検査用データを得ることによって、パターン欠陥検査装置により得られる画像データに対するパターン検査用データの相違によるノイズ成分が生じないようにして、これらパターン検査用データと画像データとの比較により精度よく欠陥を検出することができる位相シフトマスクの検査方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に述べる実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
まず、補助パターン型位相シフトマスクの作製方法を説明する。まず、図1中の(a)に示すように、石英等からなる透明基板101上に、遮光体としてクロム膜102を被着させ、このクロム膜102上に1回目のレジスト膜103を塗布する。次に、レジスト膜103に対する電子線描画を行って現像処理し、図1中の(b)に示すように、レジストパターンを形成する。このレジストパターンに従ってクロム膜102をパターニング(ドライエッチング)し、遮光パターンの遮光部を形成する。そして、図1中の(c)に示すように、レジスト膜103を剥離させ、洗浄すると、透明基板101上には、パターニングされたクロム膜102のみが残る。
【0029】
次に、図1中の(d)に示すように、遮光体パターンとしてパターニングされたクロム膜102上に、2回目のレジスト膜104を塗布し、電子線描画によりシフタパターンを形成する。そして、レジスト膜104を現像処理し、図1中の(e)に示すように、遮光部と遮光部との間(透光部)の所定箇所を露出させるエッチングマスクを形成する。次に、エッチングマスクを使って透明基板101をドライエッチングして彫り込みを形成すると、彫り込み部105が形成される。
【0030】
そして、図1中の(f)に示すように、レジスト膜104を剥離させ、洗浄すると、片彫り式の彫り込み型位相シフトマスクが作製される。このような片彫り式の彫り込み型位相シフトマスクでは、彫り込み部105のパターンが位相シフト部であり、透明基板101と同じ基板面の透光部パターンが非位相シフト部である。
【0031】
この位相シフトマスクの検査方法は、図1に示したような、透明基板101上に遮光部と透光部とからなる遮光パターンを有する位相シフトマスクの検査方法であって、パターン欠陥を検出するためのものである。透光部は、位相シフト部及び非位相シフト部からなる。そして、この位相シフトマスクの遮光パターンには、図9に示すように、位相シフト部302が遮光部303を介して隣接するパターン配置が含まれている。なお、遮光パターンの遮光部303には、半透光部が含まれる。
【0032】
なお、パターン欠陥としては、遮光パターン欠陥(遮光パターン中に発生する白欠陥、または、透光部に発生する黒欠陥)及び位相シフト部の位相欠陥(他の位相シフト部と位相差が異なる欠陥)を含む。位相欠陥についても、検査光による画像において他の位相シフト部との位相差が発生する。
【0033】
位相シフト部302は、透明基板を所定の深さに彫り込むことにより形成された彫り込み型(凹部型)及び透明基板上に透明薄膜を被着させたシフタ被着型(凸部型)のいずれであってもよい。
【0034】
また、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法は、図8により前述したような、パターン欠陥検査装置を用いて実行することができる。すなわち、このパターン欠陥検査装置においては、位相シフトマスクに検査光を照射する照明光学系201と、位相シフトマスクの画像データを収集するデータ収集手段202とが設けられている。データ収集手段202は、位相シフトマスクからの透過光が入射される対物レンズ203、位相シフトマスクの位置決めを行う位置決め機構204及び対物レンズ203を経た光束を受光して画像データを得る検出器205を有して構成されている。そして、このパターン欠陥検査装置を用いて、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法を実行するには、データ発生手段206により、データベース207から描画用パターンデータを読み出して補正し、パターン検査用データを得るとともに、比較手段208により、検出器205により得られた画像データとパターン検査用データとを比較する。
【0035】
図2は、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法の手順を示すフローチャートである。
【0036】
この位相シフトマスクの検査方法においては、図2に示すように、まず、ステップst1において、パターン欠陥検査装置を使って、検査光により、遮光パターンの画像データ(遮光パターン像)を得る。
【0037】
一方、ステップst2において、遮光パターンの描画用パターンデータ(設計データ)を補正することにより、パターン検査用データに変換する。この補正においては、少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて、位相シフト部及び非位相シフト部を通過する検査光の光強度の相違に起因する遮光パターン像の寸法変化に基づく補正を加えるものとする。この補正値は、実際の露光波長と検査光の波長との違いに基づく導波路効果による位相シフト部透過光と非位相シフト部透過光との間の光強度の違い等に起因する遮光パターン像の寸法変化を相殺するものであって、実験等により求めることができる。
【0038】
求められた補正値は、ルールベース化しておくことが望ましい。すなわち、少なくとも遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離及びその他の位相シフト部のパターン寸法、隣接している部分のパターン長さなどのパラメータと、補正値(バイアス量)との相関関係を規定して、テーブル化しておくことが望ましい。このようにルールベース化しておくことにより、遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離及びその他のパラメータに基づいて、ルールベースから補正値を読み出して、パターン検査用データを迅速に生成することができる。また、この補正には、パターン欠陥検査装置の光学系における画像の変化に対応した補正も含んでいる。
【0039】
次に、ステップst3において、比較手段により、パターン欠陥検査装置により得られた画像データと、パターン検査用データとを比較し、位相シフトマスクのパターン欠陥を検出する。
【0040】
図3は、光学系における画像の変化に対応した補正のみを行ったパターン検査用データと画像データとの関係(強度プロファイル)を示すグラフである。
【0041】
ところで、光学系における画像の変化に対応した補正のみを行ったパターン検査用データと画像データとを比較すると、図3に示すように、位相シフト部302(彫り込み部105)同士が近接していない箇所(図3中のA)では、画像データにおける光強度がパターン検査用データにおける光強度よりも低くなっている。したがって、この箇所では、パターン検査用データにおけるパターン寸法を、より縮小する方向に補正する(バイアスを掛ける)必要があるといえる。
【0042】
ところが、遮光部を介して隣接する位相シフト部302同士が近接する箇所(図3中のB)では、画像データにおける光強度がパターン検査用データにおける光強度よりも高くなっている。したがって、この箇所では、パターン検査用データにおけるパターン寸法を、より拡大する方向に補正する(バイアスを掛ける)必要があるといえる。
【0043】
そこで、本発明においては、以下の〔表1〕に示すように、遮光部を介して隣接する位相シフト部302間の距離(D)が、所定の値(R)より小さい場合には、位相シフト部302が遮光部を介して対向する辺のみを拡大方向にサイジングする補正を行い、この位相シフト部302の他の部分については縮小方向にサイジングする補正を行うようにする。
【0044】
図4は、辺の一部において遮光部を介して隣接する位相シフト部について行う補正を示す平面図である。
【0045】
すなわち、図4に示すように、辺の一部においてのみ遮光部を介して隣接する位相シフト部302,302については、これら位相シフト部302,302間の距離(D)が所定の値(R)より小さい場合には、互いに隣接している辺の一部についてのみ、拡大方向にサイジングする補正を行う。
【0046】
そして、位相シフト部間の距離(D)が所定の値(R)より大きい場合には、この位相シフト部の全体を一律に縮小方向にサイジングする補正を行う。
【0047】
【表1】

【0048】
図5は、パターン検査用データへの変換のための描画用パターンデータの補正(位相シフト部間の間隔Dが広い場合)の内容を示す平面図である。
【0049】
この位相シフトマスクの検査方法においては、具体的には、以下のようにして、パターン検査用データを作成する。まず、図5中の(a)に示すように、遮光パターンにおける遮光部(透明基板上のクロム膜のパターン)を形成するための描画用パターンデータを得る。遮光部を形成するための描画用パターンデータとは、前述した彫り込み型位相シフトマスクの作成方法において、図1中の(b)に示した遮光体パターン102を形成する際のレジストパターンである。
【0050】
次に、図5中の(b)に示すように、描画用パターンデータの補正を行う。このとき、前述した彫り込み型位相シフトマスクの作成方法において、図1中の(e)に示した彫り込み部105を形成する際のレジストパターンに基づいて、遮光部303を介して隣接する位相シフト部302間の距離(D)が、所定の値(R)より小さいかどうかを判別する。
【0051】
位相シフト部302間の距離(D)が、所定の値(R)より小さいかどうかの判別方法としては、例えば、DRC処理(Design Ruie Check)を行うことにより、遮光パターン間距離(D)が所定の値(R)よりも小さい箇所を抽出する方法が挙げられる。DRC処理とは、本来は、設計図において半導体のデバイス設計の基本となるデザインルールに違反した箇所がないかどうかをチェックするための処理である。このDRC処理を行うソフトウェアは、通常、所定の線幅の遮光パターン、または、透光部を抽出し、抽出した箇所をデータ化する機能を有している。そのため、この機能を用いて、拡大方向にサイジングする対象となる箇所を抽出することができる。
【0052】
そして、上記DRC処理の結果抽出されなかった箇所については、一律に縮小方向にサイジングする補正を行う。すなわち、位相シフト部間の距離(D)が所定値(R)より大きい場合には、ルールベースに蓄積された補正値にしたがって、位相シフト部の全体を一律に縮小方向にサイジングする補正を行うこととなる。
【0053】
さらに、図5中の(c)に示すように、パターン欠陥検査装置の光学系における画像の変化に対応した補正を行い、パターン検査用データを作成する。
【0054】
そして、このパターン検査用データと、パターン欠陥検査装置によって得られた位相シフトマスクの画像データとを比較対照することによって、正確にパターン欠陥検査を行うことができる。
【0055】
図6は、パターン検査用データへの変換のための描画用パターンデータの補正(位相シフト部間の間隔Dが狭い場合)の内容を示す平面図である。
【0056】
そして、図6中の(a)に示すように、遮光部303を介して隣接する位相シフト部302間の距離(D)が所定の値(R)より小さいと判別された場合には、描画用パターンデータの補正において、図6中の(b)に示すように、位相シフト部が遮光部を介して対向する側のみを拡大方向にサイジングする補正を行い、この位相シフト部の他の部分については縮小方向にサイジングする補正を行う。この補正は、ルールベースに蓄積された補正値にしたがって行う。
【0057】
さらに、図6中の(c)に示すように、パターン欠陥検査装置の光学系における画像の変化に対応した補正を行い、パターン検査用データを作成する。
【0058】
そして、このパターン検査用データと、パターン欠陥検査装置によって得られた位相シフトマスクの画像データとを比較対照することによって、正確にパターン欠陥検査を行うことができる。
【0059】
このように、本発明に係る位相シフトマスクの検査方法においては、遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離が狭い場合であっても、彫り込み部の側壁エッジからの散乱光により生ずる暗部(導波路効果)に起因するパターン検査用データと画像データとの不一致が補正され、これらを比較することによって、露光波長と検査光との波長の違いによる位相差ずれ、導波路効果、パターン欠陥検査装置の光学系におけるフォーカス等の画像変化等が生じていても、正確にパターン欠陥を検出することができる。
【0060】
ところで、この位相シフトマスクの検査方法においては、前述の所定の値(R)を決定する要素としては、以下の〔表2〕に示すものが考えられ、これらの要素と所定の値(R)の傾向との間には、以下の〔表2〕に示す関係がある。
【0061】
【表2】

【0062】
すなわち、前述した描画用パターンデータの補正においては、遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離(D)についての所定の値(R)、すなわち、隣接する位相シフト部同士が対向する辺が拡大補正を行うべき箇所か否かを判断するための基準は、隣接する位相シフト部のパターン寸法及びこれら位相シフト部が対向する辺の長さに基づいて変化させるべきである。
【0063】
そして、描画用パターンデータの補正値(補正量)は、縮小方向にサイジングする補正については、以下の〔表3〕に示すように、位相シフト部のパターン寸法を勘案して決定されるべきである。
【0064】
【表3】

【0065】
また、描画用パターンデータの補正値(補正量)は、拡大方向にサイジングする補正については、以下の〔表4〕に示すように、遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離(D)、これら位相シフト部のパターン寸法及びこれら位相シフト部同士が対向する辺の長さを勘案して決定されるべきである。
【0066】
【表4】

【0067】
図7は、遮光部を介して隣接し、かつ、一部が連続されている(つながっている)位相シフト部を示す平面図である。
【0068】
なお、図7に示すように、遮光部303を介して隣接し、かつ、一部が連続されている(つながっている)位相シフト部302についても、前述したような描画用パターンデータの補正に関するルールベースにしたがって補正することができる。
【0069】
すなわち、縮小方向にサイジングする補正については、つながった部分に着目し、この部分(位相シフト部)のパターン寸法(線幅及び線長)に基づいて、〔表3〕に示すように、パターン寸法が大きい場合には、補正値(補正量)を小さくする。
【0070】
そして、拡大方向にサイジングする補正については、つながっていない部分に着目し、〔表4〕に示すように、これらのパターン寸法(線幅及び線長)及び対向する辺(内側の辺)の長さが大きく、かつ、位相シフト部間の距離(D)が小さいならば、補正値(補正量)を大きくする。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】片彫り式の彫り込み型位相シフトマスクを作成する工程を示す断面図である。
【図2】本発明に係る位相シフトマスクの検査方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】光学系における画像の変化に対応した補正のみを行ったパターン検査用データと画像データとの関係を示すグラフである。
【図4】前記位相シフトマスクの検査方法において、辺の一部において遮光部を介して隣接する位相シフト部について行う補正を示す平面図である。
【図5】前記位相シフトマスクの検査方法において、パターン検査用データへの変換のための描画用パターンデータの補正(位相シフト部間の間隔が広い場合)の内容を示す平面図である。
【図6】前記位相シフトマスクの検査方法において、パターン検査用データへの変換のための描画用パターンデータの補正(位相シフト部間の間隔が狭い場合)の内容を示す平面図である。
【図7】遮光部を介して隣接し、かつ、一部が連続されている(つながっている)位相シフト部を示す平面図である。
【図8】パターン欠陥検査装置の構成を示すブロック図である。
【図9】補助パターン型位相シフトマスクの構成を示す平面図である。
【図10】従来の位相シフトマスクの検査方法における描画用パターンデータの補正内容を示す平面図である。
【符号の説明】
【0072】
201 照明光学系
202 データ収集手段
206 データ発生手段
208 比較手段
301 非位相シフト部
302 位相シフト部
303 遮光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、遮光部と透光部とからなる遮光パターンを有し、前記透光部が位相シフト部及び非位相シフト部からなり、位相シフト部が前記遮光部を介して隣接するパターン配置を含む位相シフトマスクの検査方法において、
パターン欠陥検査装置を用いて、検査光により、前記遮光パターンの画像データを得る工程と、
前記位相シフトマスクの遮光パターンの描画用パターンデータを、少なくとも前記遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離に応じて、位相シフト部及び非位相シフト部を通過する前記検査光の光強度の相違に起因する遮光パターン像の寸法変化に基づく補正を加えたパターン検査用データに変換する工程と、
前記画像データと前記パターン検査用データとを比較して、前記位相シフトマスクのパターン欠陥を検出する工程と
を有することを特徴とする位相シフトマスクの検査方法。
【請求項2】
前記補正は、前記遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離が所定の値よりも大きい部分について前記描画用パターンデータを縮小する補正とし、該位相シフト部間の距離が所定の値より小さい部分について前記描画用パターンデータを拡大する補正とする
ことを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクの検査方法。
【請求項3】
前記補正は、前記描画用パターンデータから前記遮光部を介して隣接する位相シフト部間の距離が所定の値よりも小さい部分を抽出し、この抽出した部分について、前記描画用パターンデータを拡大する補正を施し、前記抽出した部分以外の位相シフト部について、前記描画用パターンデータを縮小する補正を施す
ことを特徴とする請求項2記載の位相シフトマスクの検査方法。
【請求項4】
前記位相シフト部は、前記透明基板を所定の深さに彫り込むことにより形成されたものである
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一に記載の位相シフトマスクの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−11169(P2007−11169A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−194625(P2005−194625)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】