説明

位相同期回路

【課題】ノイズが混入した場合であっても、所望の周波数で発振信号を生成することが可能な位相同期回路を提供する。
【解決手段】位相同期回路は、低域通過フィルタからの出力電圧に応じて発振回路から出力される発振信号を、制御信号に基づいた利得で増幅する可変利得増幅回路と、可変利得増幅回路からの増幅信号の位相に応じた第1の位相と、増幅信号の基準となる基準信号の第2の位相とを比較して、第1の位相と第2の位相とを一致させるための比較信号を低域通過フィルタに出力する位相比較回路と、出力電圧に基づいて、第1の位相と第2の位相とが一致しているか否かを検出する検出回路と、検出回路の検出結果に基づいて、第1の位相と第2の位相とが一致している場合、利得が所定の値となるような制御信号を生成し、第1の位相と第2の位相とが一致していない場合、利得を所定の値より増加させるような制御信号を生成する制御信号生成回路と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の多くには、所望の周波数の信号を生成するための位相同期回路(以下、PLL:Phase Locked Loop)が設けられている。図12に、PLLが設けられたラジオ受信機200の構成の一例を示す。チューナ250は、PLL260からの発振信号Voscの周波数の放送信号を受信して再生する。PLL260は、入力される設定データに基づいた周波数の発振信号Voscを生成する。PLL260は、電圧制御発振器(VCO:Voltage Controlled Oscillator)300、分周回路310、位相比較回路320、及びローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)330を含んで構成される。VCO300は、入力される電圧Vtのレベルに応じた周波数の発振信号Voscを生成する。分周回路310は、設定データに基づいた分周比で発振信号Voscを分周する。位相比較回路320は、分周回路310からの分周信号Vdivの位相と、例えば水晶発振器(不図示)からのクロック信号Vckの位相とを比較する。また、位相比較回路320は、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致するよう、LPF330のコンデンサ400の電圧Vtを変化させる。このため、PLL260の発振信号Voscの周波数は、クロック信号Vckの周波数及び分周比に基づいて定まることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−57692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のPLL260では、分周信号Vdivの位相とクロック信号Vckの位相とが一致している場合、電圧Vtは一定となる。しかしながら、例えばチューナ250からのノイズが分周回路310に入力されると、分周信号Vdivはノイズの影響を受ける。このため、電圧Vtは、例えば図13のように変化し、発振信号Voscの周波数も変化する。この結果、例えばチューナ250が所望の放送信号を受信できなくなるといった問題が生じる。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、ノイズが混入した場合であっても、所望の周波数で発振信号を生成することが可能な位相同期回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る位相同期回路は、低域通過フィルタからの出力電圧に応じて発振回路から出力される発振信号を、制御信号に基づいた利得で増幅する可変利得増幅回路と、前記可変利得増幅回路からの増幅信号の位相に応じた第1の位相と、前記増幅信号の基準となる基準信号の第2の位相とを比較して、前記第1の位相と前記第2の位相とを一致させるための比較信号を前記低域通過フィルタに出力する位相比較回路と、前記出力電圧に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致しているか否かを検出する検出回路と、前記検出回路の検出結果に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致している場合、前記利得が所定の値となるような前記制御信号を生成し、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致していない場合、前記利得を前記所定の値より増加させるような前記制御信号を生成する制御信号生成回路と、を備えることを特徴とする位相同期回路。
【発明の効果】
【0007】
ノイズが混入した場合であっても、所望の周波数で発振信号を生成することが可能な位相同期回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態であるラジオ受信機10の構成を示す図である。
【図2】インバータ73の一実施形態を示す図である。
【図3】インバータ73の等価回路を示す図である。
【図4】インバータ73〜75とスイッチ71,72との等価回路を示す図である。
【図5】可変利得増幅回路50の周波数特性を示す図である。
【図6】可変利得増幅回路50が増幅できる信号レベルの周波数特性を示す図である。
【図7】可変利得増幅回路50にレベル及び周波数の異なる入力信号が入力した場合に、可変利得増幅回路50が増幅できる信号レベルの周波数特性を示す図である。
【図8】CPU54の機能ブロックを示す図である。
【図9】検出部170が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】可変利得増幅回路50にノイズが入力した際の電圧Vtの変化の一例を示す図である。
【図11】CPU54の実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図12】ラジオ受信機200の一例を示す図である。
【図13】分周回路310にノイズが入力した際の電圧Vtの変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態であるラジオ受信機の構成を示す図である。ラジオ受信機10は、放送信号を受信して再生する装置であり、アンテナ20、チューナ21、スピーカ22、システムマイコン23、及び低域通過フィルタ(LPF)24を含んで構成される。また、本実施形態のラジオ受信機10は、例えば、カーステレオ(不図示)に設けられていることとする。
【0011】
チューナ21は、アンテナ20を介して受信される放送信号から、所望の周波数の放送信号をスピーカ22で再生する回路であり、増幅回路30、ミキサ31、検波回路32、及びVCO33を含んで構成される。
増幅回路30は、アンテナ20からの放送信号を増幅する。ミキサ31は、増幅回路30で増幅された放送信号を、VCO33から出力される発振信号Voscでダウンコンバートして、中間周波数のIF(Intermediate Frequency)信号を生成する。
検波回路32は、IF信号を検波して音声信号を生成するとともに、スピーカ22へ出力する。
VCO33は、入力される電圧Vtに応じた周波数の発振信号Voscを生成する。本実施形態の発振信号Voscは、例えば、入力される電圧Vtの上昇に応じて周波数が高くなる。また、発振信号Voscの周波数は、いわゆる、チューナ21の受信周波数となる。
【0012】
システムマイコン23は、チューナ21の受信周波数を制御する回路であり、可変利得増幅回路50、分周回路51、発振回路52、位相比較回路53、ADコンバータ54、メモリ55、及びCPU56を含んで構成される。なお、本実施形態において、可変利得増幅回路50、分周回路51、発振回路52、位相比較回路53、ADコンバータ54、メモリ55、CPU56、LPF24、及びVCO33は、所望の周波数の発振信号Voscを生成するPLL40を構成する。
【0013】
LPF24は、抵抗60、コンデンサ61を含む低域通過フィルタであり、後述する位相比較回路53から出力されるパルス状の電流Ipの高周波成分を減衰させる。さらに、LPF24は、前述のPLL40における帰還ループの位相を補償する。
【0014】
==システムマイコン23の詳細==
可変利得増幅回路50は、CPU56からの制御信号に応じた利得で、発振信号Voscを増幅する回路であり、コンデンサ70、スイッチ71,72、インバータ73〜75、及び抵抗76を含んで構成される。
【0015】
コンデンサ70は、いわゆる直流成分カット用のコンデンサであり、発振信号Voscの高周波成分を通過させる。なお、ここでは、インバータ73の入力のノードをノードAとし、インバータ73の出力のノードをノードBとする。
【0016】
スイッチ71は、一端がコンデンサ70に接続され、他端がインバータ74の入力に接続される。また、スイッチ71は、制御信号に基づいて、オンまたはオフする。スイッチ72もスイッチ71と同様である。
【0017】
インバータ73は、入力される信号がインバータ73のしきい値Vthより高い場合、ローレベル(以下、Lレベル)の信号を出力し、入力される信号がしきい値Vthより低い場合、ハイレベル(以下、Hレベル)の信号を出力する。インバータ73は、図2に示すように、NMOSトランジスタ100、PMOSトランジスタ101を含んで構成される。ここで、NMOSトランジスタ100のトランスコンダクタンス係数をgmn1、PMOSトランジスタ101のトランスコンダクタンス係数をgmp1とすると、インバータ73のトランスコンダクタンス係数をgm1は、gm1=gmn1+gmp1となる。また、NMOSトランジスタ100の出力抵抗をrn1、PMOSトランジスタ101の出力抵抗をrp1とすると、インバータ70の出力抵抗r1は、r1=rn1//rp1となる。このため、インバータ73は、図3のように、トランスコンダクタンス係数gm1のトランスコンダクタンスアンプ120と、抵抗値r1の抵抗130とを含む等価回路で表現できる。
【0018】
インバータ74は、インバータ73と同様である。本実施形態のインバータ74は、NMOSトランジスタ100と同じチャネル長で、異なるチャネル幅のNMOSトランジスタ(不図示)と、PMOSトランジスタ101と同じチャネル長で、異なるチャネル幅のPMOSトランジスタ(不図示)とを含んで構成される。なお、ここでは、インバータ74のトランスコンダクタンス係数をgm2とし、出力抵抗をr2とする。
【0019】
インバータ75も、インバータ73と同様である。本実施形態のインバータ75は、NMOSトランジスタ100と同じチャネル長で、異なるチャネル幅のNMOSトランジスタ(不図示)と、PMOSトランジスタ101と同じチャネル長で、異なるチャネル幅のPMOSトランジスタ(不図示)とを含んで構成される。ここでは、インバータ75のトランスコンダクタンス係数をgm3とし、出力抵抗をr3とする。なお、ここでは、インバータ74,75のしきい値が、インバータ73のしきい値Vthと同じレベルになるよう設計されていることとする。また、インバータ73は第1トランスコンダクタンス増幅回路に相当し、インバータ74及びスイッチ71は第2トランスコンダクタンス増幅回路に相当する。
【0020】
抵抗76(帰還回路)の一端はインバータ73の入力に接続され、抵抗76の他端はインバータ73の出力に接続される。このため、ノードAのレベルとノードBのレベルとは、インバータ73のしきい値Vthのレベルとなる。また、抵抗76はインバータ73の帰還抵抗として動作するため、インバータ73は、しきい値Vthのレベルを中心に入力される信号を反転増幅する。また抵抗76は、スイッチ71,72がオンしている際にはインバータ74,75の帰還抵抗としても動作する。
【0021】
ここで、図4を参照しつつ、スイッチ71,72がオン、またはオフした際の、可変利得増幅回路50の周波数特性について説明する。なお、ここでは、直流カット用のコンデンサ70の影響は考慮しないこととする。図4において、トランスコンダクタンスアンプ121は、インバータ74のトランスコンダクタンス係数gm2を等価的に表現したアンプであり、トランスコンダクタンスアンプ122は、インバータ75のトランスコンダクタンス係数gm3を等価的に表現したアンプである。また、出力抵抗Roは、ノードBにおける抵抗、すなわち可変利得増幅回路50における出力抵抗である。さらに、コンデンサCpは、ノードBにおける寄生容量等の容量である。コンデンサCpには、例えば、分周回路51の入力容量が含まれる。また、ここでは、ノードAへの入力される電圧を入力電圧Vin、ノードBに出力される電流を出力電流Iout、ノードBにおける電圧を出力電圧Voutとする。そして、トランスコンダクタンスアンプ120〜122の合計のトランスコンダクタンス係数をGmとすると、出力電流Ioutは、
Iout=Gm×Vin・・・(1)
となる。また、出力電圧Voutは、ラプラス演算子sを用いると、
Vout=Iout×(Ro/(1+s×Ro×Cp)・・・(2)
となる。このため、入力電圧Vinと、出力電圧Voutとの間には、
Vout/Vin=(Gm×Ro)/(1+s×Ro×Cp)・・・(3)
が成立することとなる。したがって、直流カット用のコンデンサ70の影響を考慮しない場合、可変利得増幅回路50は、Gm×Roの利得を有し、カットオフ周波数が、1/(2×π×Ro×Cp)となる。つまり、可変利得増幅回路50は、利得Gm×Roを有する1次の低域通過フィルタとなる。なお、以下、可変利得増幅回路50の利得をAv=Gm×Roとし、カットオフ周波数をfc=1/(2×π×Ro×Cp)とする。
【0022】
スイッチ71,72がオフしている場合(以下、状態1とする)、トランスコンダクタンス係数Gm=gm1となり、出力抵抗Ro=r1となる。そして、スイッチ71がオンし、スイッチ72がオフしている場合(以下、状態2とする)、トランスコンダクタンス係数Gm=gm1+gm2となり、出力抵抗Ro=r1//r2となる。さらに、スイッチ71,72をオンしている場合(以下、状態3とする)、トランスコンダクタンス係数Gm=gm1+gm2+gm3となり、出力抵抗Ro=r1//r2//r3となる。このように、状態1から状態2,3へと変化するに際し、出力抵抗Roの抵抗値は小さくなる。したがって、カットオフ周波数fcは、状態1から状態2,3へと変化するにつれて高くなる。また、利得Avは、状態1では、Av=gm1×r1となり、状態2では、Av=(gm1+gm2)×(r1//r2)となり、状態3では、Av=(gm1+gm2+gm3)×(r1//r2//r3)となる。本実施形態では、前述のように、インバータ74,75のチャネル長は、インバータ73のチャネル長と同じである。このため、状態1から状態2または状態3に変化した際の利得Avの変化は、インバータ73のチャネル幅が増加した際のインバータ73の利得の変化と同様である。インバータ73の利得は、インバータ73のチャネル長の増加に応じた増加する。このため、本実施形態においても、状態1〜状態3へ変化するにつれて、利得Avは増加することとなる。したがって、可変利得増幅回路50は、図5に示すような周波数特性を有することとなる。なお、直流カット用のコンデンサ70は、周波数fpより高い周波数を通過させることとする。前述のように、状態1から、状態2へと変化させると、利得Avは増加し、カットオフ周波数fcは高くなる。また、状態2から状態3へと変化させた場合も、利得Avは増加し、カットオフ周波数fcは高くなる。このように、本実施形態の可変利得増幅回路50は、CPU50からの制御信号に応じて周波数特性が変化する。
【0023】
図6は、可変利得増幅回路50に入力信号が無いが場合の可変利得増幅回路50が増幅できる信号レベルと、周波数特性との関係を示す概念図である。図6においては、例えば、状態1の可変利得増幅回路50は、点線より高いレベルの信号のみを増幅する。前述のように、可変利得増幅回路50は、状態1から状態2へと変化させると利得が増加する。このため、状態2は状態1より小さいレベルの信号を増幅できるようになる。なお、状態2から状態3へと変化させた場合も同様である。
【0024】
ところで、実際の増幅回路(不図示)の利得は必ず非線形である。非線形な増幅回路(不図示)に、例えば、所望の周波数ω1の入力信号S1と、ノイズ等の不要な周波数ω2の入力信号S2とが入力された場合、入力信号S1のレベルが入力信号S2のレベルより高くなるにつれて入力信号S2が増幅されにくくなる、いわゆるブロッキングが生じる。同様に、例えば、入力信号S1、入力信号S2(入力信号S1>>入力信号S2)が非線形な増幅回路(不図示)に入力された場合において、増幅回路の利得を増加させると、入力信号S1より小さな入力信号S2はブロックされ、増幅されにくくなる。本実施形態の可変利得増幅回路50も非線形性を有する。このため、入力信号S1、入力信号S2(入力信号S1>>入力信号S2)が可変利得増幅回路50に入力された場合、可変利得増幅回路50が増幅できる信号レベルと、周波数特性との関係は、図7のようになる。つまり、入力信号S1、入力信号S2(入力信号S1>>入力信号S2)が可変利得増幅回路50に入力されている場合に、可変利得増幅回路50の状態を、状態1から状態2へと変化させると、入力信号S2は、状態1と場合より増幅されにくくなる。そして、可変利得増幅回路50の状態を、例えば、状態2から状態3へと変化させると、可変利得増幅回路50が増幅できる信号レベルが入力信号S2のレベルより高くなる。このため、可変利得増幅回路50が状態3となると、可変利得増幅回路50に入力信号S1、入力信号S2(入力信号S1>>入力信号S2)が入力されている場合であっても、入力信号S2は増幅されることは無い。このように、本実施形態の可変利得増幅回路50は、利得が高くなるよう変更されると、所望の信号のみを増幅することができる。
【0025】
分周回路51は、受信周波数に応じた設定データが入力されると、設定データを記憶するとともに、設定データに基づいた分周比で出力電圧Voutを分周する。なお、設定データは、例えば利用者が受信周波数を決定するための操作部(不図示)から操作結果に応じて、カーチューナを統括制御するホストマイコン(不図示)から出力される。また、分周回路51からの出力を分周信号Vdivとする。
【0026】
発振回路52は、所定の周波数のクロック信号Vckを生成する。発振回路52は、例えば、水晶発振回路で実現される。
【0027】
位相比較回路53は、分周信号Vdivの位相(第1の位相)と、クロック信号Vckの位相(第2の位相)とを比較し、位相差に応じたパルス状の電流Ipを生成する。具体的には、位相比較回路53は、分周信号Vdivの位相がクロック信号Vckの位相より遅れている場合、位相差に応じた期間だけコンデンサ61を充電する。この結果、コンデンサ61の電圧Vtは上昇し、発振信号Voscの周波数も高くなる。一方、位相比較回路53は、分周信号Vdivの位相がクロック信号Vckの位相より進んでいる場合は、位相差に応じた期間だけコンデンサ61を放電する。この結果、コンデンサ61の電圧Vtは低下し、発振信号Voscの周波数は低くなる。したがって、位相比較回路53は、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致するよう、コンデンサ61の電圧Vtを変化させる。また、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致している場合、位相比較回路53は、コンデンサ61の電圧Vtを変化させることは無い。このため、発振信号Voscが所望の周波数の場合、電圧Vtのレベルは一定となる。なお、発振信号Voscの周波数を変更すべく、分周回路51の分周比を設定する設定データが変更されると、分周回路51の分周比が変化する。このため、設定データが変更されると、電圧Vtは、所望の発振信号Voscに応じた電圧Vtとなるまで過渡的に変化する。
【0028】
ADコンバータ(ADC)54は、コンデンサ61の電圧Vtをデジタルデータに変換し、CPU55に出力する。メモリ55は、CPU56が実現するプログラムを記憶する。
【0029】
CPU56は、メモリ55に格納されたプログラムを実行することにより、各種機能を実現する。なお、図8は、CPU56がプログラムを実行することにより実現される機能ブロックの構成を示す図である。CPU56は、プログラムを実行することにより検出部170及び制御部171を実現する。なお、ADコンバータ54、検出部170が検出回路に相当し、制御部171が制御信号生成回路に相当する。
【0030】
検出部170は、デジタルデータに変換された電圧Vtに基づいて、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致しているか否かを検出する。具体的には、検出部170は、図9に示すような処理を実行する。まず、検出部170は、ADコンバータ54から順次出力されるデジタルデータのうち、現在のデータから過去n個分のデータまでの最大値と最小値との差を算出する(S100)。そして、検出部170は、設定データの変更にともなう電圧Vtの変化の影響を排除すべく、現在のデータから過去nサンプルの間に、設定データが変更されたか否かを判定する。具体的には、検出部170は、分周回路51に記憶される設定データが、現在から過去nサンプルの間に変更された場合(S101:YES)、再度、処理S100を実行する。一方、検出部170は、分周回路51に記憶される設定データが、現在から過去nサンプルの間に変更されていない場合(S101:NO)、次の処理S102を実行する。そして、検出部101は、最大値と最小値との差が、所定の値以上でない場合(S102:NO)、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していることを検出する(S103)。また、検出部170は、最大値と最小値との差が、所定の値以上の場合(S102:YES)、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していないことを検出する(S104)。
【0031】
制御部171は、検出部170の検出結果に応じた制御信号でスイッチ71,72を制御する。具体的には、検出部170が分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していないことを検出すると、制御部171は、まずスイッチ71をオンするための制御信号を出力する。そして、スイッチ71がオンされた後、さらに、検出部170が分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していないことを検出すると、制御部171は、スイッチ72をオンする制御信号を出力する。
【0032】
==ラジオ受信機10の動作==
ここで、可変利得増幅回路50にノイズが入力された場合のラジオ受信機10の動作について、図10、図11を参照しつつ説明する。なお、ここでは、発振信号Voscのレベルは、例えば、図7で示した入力信号S1のレベルであり、ノイズのレベルは、図7の入力信号S2のレベルであることとする。つまり、発振信号Voscのレベルは、ノイズのレベルより十分大きい。また、図10における時刻t1に、ノイズが発生し、ノイズが可変利得増幅回路50に入力されることとする。
【0033】
まず、時刻t1より前では、ノイズは生じておらず、PLL40は、所望の周波数の発振信号Voscを出力し、ラジオ受信機10は所望の受信局の放送信号を再生している。この場合には、PLL40において、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致している。したがって、電圧Vtのレベルは一定であり、検出部170は、電圧Vtのレベルに基づいて、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していることを検出する(S200:YES)。そして、検出部170は、処理S200を繰り返す。なお、この間、制御部171は、スイッチ71,72がオフし、可変利得増幅回路50の利得が、インバータ73のトランスコンダクタンス係数に基づいて定まる所定の利得となるような制御信号を出力している。
【0034】
つぎに、時刻t1となると、例えばチューナ21からのノイズが可変利得増幅回路50に入力する。この結果、電圧Vtは、ノイズの影響により変化する。そして、例えば時刻t2に検出部170が、電圧Vtに基づいて、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していないことを検出する(S200:NO)。そして制御部171は、検出部170の検出結果に基づいて、時刻t3にスイッチ71をオンする制御信号を出力する(S201)。スイッチ71がオンされると、前述のように、可変利得増幅回路50の利得は増加する。しかしながら、可変利得増幅回路50は、例えば図7に示したように、一点鎖線より高いレベルの入力信号を増幅する。このため、可変利得増幅回路50からは、発振信号Voscとノイズとに応じた出力電圧Voutが引き続き出力される。したがって、電圧Vtのレベルはノイズの影響により変動し続ける。そして、検出部170は、スイッチ71がオンされた後の時刻t4に、分周信号Vdivの位相とクロック信号Vckの位相とが一致していないことを検出する(S202:NO)。制御部171は、検出部170の検出結果に基づいて、時刻t5にスイッチ72をオンする制御信号を出力する(S203)。この結果、可変利得増幅回路50の利得は増加し、可変利得増幅回路50は、例えば図7の実線に示したように、実線よりも高いレベルの信号のみを増幅することとなる。したがって、可変利得増幅回路50の出力電圧Voutはノイズの影響を受けることがなくなり、発振信号Voscのみに応じて変化する。この結果、PLL40は、可変利得増幅回路50にノイズが入力する場合であっても、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とを一致させることができる。
【0035】
なお、例えば、発生するノイズのレベルによっては、スイッチ71がオンされることにより、ノイズの影響が排除されることがある。このような場合、検出部170は、図11の処理S202にて、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していることを検出する(S202:YES)。この結果、処理S202は繰り返されることとなる。
【0036】
以上、本実施形態のラジオ受信機10について説明した。本実施形態の検出部170は、電圧Vtに基づいて、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致しているか否かを検出する。そして、制御部171は、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致している場合、可変利得増幅回路50の利得が所定の利得となるような制御信号を出力する。一方、制御部171は、ノイズ等の影響により、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していない場合、可変利得増幅回路50の利得が所定の利得より増加するような制御信号を出力する。この結果、可変利得増幅回路50の利得は増加される。そして、発振信号Voscとノイズ等が入力される可変出力回路50においては、可変利得増幅回路50の利得が増加すると、例えば、ノイズ等は発振信号Voscによりブロックされる。このため、可変利得増幅回路50に発振信号Voscとノイズ等が入力される場合であっても、可変利得増幅回路50の出力電圧Voutにおいて、ノイズ等の影響を排除することが可能となる。このように、本実施形態のPLL40は、ノイズ等が混入した場合であっても、所望の周波数で発振信号を生成することが可能である。
【0037】
また、例えば、トランスコンダクタンスアンプ121は、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致している場合の制御信号に基づいて、出力電流の生成を停止する。一方、トランスコンダクタンスアンプ121は、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致していない場合の制御信号に基づいて、出力電流を生成する。このように、可変利得増幅回路50は、制御信号に応じて動作状態が変化するトランスコンダクタンスアンプ121を含む。このため、本実施形態では、制御信号に応じて可変利得増幅回路50の利得を変化させることができる。
【0038】
また、本実施形態の可変利得増幅回路50は、インバータ73〜75と、インバータ74に直列接続されたスイッチ71と、インバータ75に直列接続されたスイッチ72と、を含んで構成される。本実施形態では、ノイズ等が発生せず、発振信号Voscの位相と、クロック信号Vckの位相とが一致している場合に、例えばスイッチ71,72はオフしている。このような場合、インバータ74,75は動作しないため、可変利得増幅回路50の消費電流は抑制される。
【0039】
また、本実施形態の可変利得増幅回路50は、スイッチ71,72がオンした際に、インバータ73〜75の夫々の出力を、入力に帰還する抵抗76を含んで構成される。例えば、抵抗76が無い場合では、インバータ73〜75の夫々は、入力電圧Vinの電圧のレベルがしきい値Vthのレベルを超えない限り、入力電圧Vinを増幅することはできない。しかしながら、前述のように、インバータ73〜75の出力は、抵抗76を介して夫々の入力に帰還されている。このため、インバータ73〜75の夫々は、しきい値Vthのレベルを中心に、入力電圧Vinを反転増幅することができる。したがって本実施形態では、入力電圧Vinのレベルが小さい場合であっても、確実に増幅することができる。
【0040】
また、本実施形態では、インバータ73〜75の出力を、一つの抵抗75で入力に帰している。このため、インバータ73〜75の夫々が帰還抵抗を有する場合と比較すると、部品点数を削減できる。
【0041】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0042】
本実施形態の位相比較回路53は、分周信号Vdivの位相と、クロック信号Vckの位相とを比較することとしたが、これに限られるものでは無い。例えば、分周回路51を設けず、位相比較回路53は、出力電圧Voutの位相(第1の位相)と、クロック信号Vckの位相とを比較しても良い。その場合には、発振信号Voscの周波数はクロック信号Vckの周波数と一致することとなる。
【符号の説明】
【0043】
10 ラジオ受信機
20 アンテナ
21 チューナ
22 スピーカ
23 システムマイコン
24 低域通過フィルタ(LPF)
30 増幅回路
31 ミキサ
32 検波回路
33 電圧制御発振回路(VCO)
40 位相同期回路(PLL)
50 可変利得増幅回路
51 分周回路
52 発振回路
53 位相比較回路
54 ADコンバータ(ADC)
55 CPU
60,76,130,150 抵抗
61,70,151 コンデンサ
71,72 スイッチ
73〜75 インバータ
100 NMOSトランジスタ
101 PMOSトランジスタ
120〜122 トランスコンダクタンスアンプ
170 検出部
171 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低域通過フィルタからの出力電圧に応じて発振回路から出力される発振信号を、制御信号に基づいた利得で増幅する可変利得増幅回路と、
前記可変利得増幅回路からの増幅信号の位相に応じた第1の位相と、前記増幅信号の基準となる基準信号の第2の位相とを比較して、前記第1の位相と前記第2の位相とを一致させるための比較信号を前記低域通過フィルタに出力する位相比較回路と、
前記出力電圧に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致しているか否かを検出する検出回路と、
前記検出回路の検出結果に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致している場合、前記利得が所定の値となるような前記制御信号を生成し、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致していない場合、前記利得を前記所定の値より増加させるような前記制御信号を生成する制御信号生成回路と、
を備えることを特徴とする位相同期回路。
【請求項2】
請求項1に記載の位相同期回路であって、
前記可変利得増幅回路は、
前記発振信号が前記所定の値の利得で増幅されて出力されるよう、前記所定の値の利得に応じた第1トランスコンダクタンス係数で前記発振信号を変換した第1電流を出力する第1トランスコンダクタンス増幅回路と、
前記制御信号に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致していない場合、所定の第2トランスコンダクタンス係数で前記発振信号を変換した第2電流を前記第1電流に加算すべく出力し、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致している場合、前記第2電流の出力を停止する第2トランスコンダクタンス増幅回路と、
を含むことを特徴とする位相同期回路。
【請求項3】
請求項2に記載の位相同期回路であって、
前記第1トランスコンダクタンス増幅回路は、
前記第1トランスコンダクタンス係数を有する第1インバータであり、
前記第2トランスコンダクタンス増幅回路は、
前記制御信号に基づいて、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致していない場合にオンし、前記第1の位相と前記第2の位相とが一致している場合にオフするスイッチ回路と、
前記第2トランスコンダクタンス係数を有し、前記スイッチ回路がオンした場合に第2電流を前記第1電流に加算すべく出力し、前記スイッチ回路がオフした場合に前記第2電流の出力を停止する第2インバータと、
を含むこと、
を特徴とする位相同期回路。
【請求項4】
請求項3に記載の位相同期回路であって、
前記可変利得増幅回路は、
前記スイッチ回路がオンした際に、前記第1及び第2インバータの出力を前記第1及び第2インバータの入力に帰還する帰還回路を更に含んで構成されること、
を特徴とする位相同期回路。
【請求項5】
請求項4に記載の位相同期回路であって、
前記帰還回路は、
前記スイッチ回路がオンした際に、前記第1及び第2インバータの出力と前記第1及び第2インバータの入力とを接続する抵抗を含んで構成されること、
を特徴とする位相同期回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−23797(P2011−23797A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164679(P2009−164679)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】