説明

位相差補償板、位相差補償器、液晶表示装置および投射型画像表示装置

【課題】コントラストの調整を容易に行うことができ、液晶パネル間のバラツキにも柔軟に対応でき、耐環境性に優れ、微小な面内位相差を容易に得ることができる位相差補償板とこれを備えた位相差補償器、液晶表示装置および投射型画像表示装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る位相差補償板50は、屈折率の異なる第1,第2の光学膜を交互に積層した光学多層膜52と高分子フィルム53との組合せ体からなり、当該位相差補償板50の面内位相差(R0c)と、液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、1<R0c/R0p≦10の関係を満たすことを特徴とする。光学多層膜52は、屈折率の異なる無機光学膜を交互に積層した構造複屈折膜からなるもので、膜厚の制御のみで任意の垂直方向位相差Rthを容易かつ高精度に得ることができる。一方、構造複屈折膜52に高分子フィルム53を組み合わせることで面内位相差R0を発現させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶パネルの位相差補償板に用いられる位相差補償板と、これを用いた位相差補償器、液晶表示装置および投射型画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像をスクリーンに拡大投影することにより大画面を実現するプロジェクタ装置が、投射型画像表示装置として知られている。特に近年では、光源からの出射光を液晶表示装置で光変調してスクリーンに投影する、いわゆる液晶プロジェクタ装置が普及している。液晶表示装置は、液晶パネルに用いられる液晶分子の種類に対応した表示モードで画像を表示する。
【0003】
例えば、負の誘電異方性を有する液晶分子を、液晶パネルを構成する一対の基板間に垂直配向するように封入したVA(Vertically Aligned)モードの液晶表示装置が広く知られている。VAモードの液晶表示装置では、電界無印加時に液晶分子が基板の主面に対してほぼ垂直に配向するため、光は液晶層をその偏光面をほとんど変化させることなく通過する。従って、基板の上下に偏光板を設置することにより、電界無印加時において良好な黒色表示が可能である。これに対して、電界印加時には、液晶分子は基板の主面に対して傾斜配向し、その結果生じる複屈折性により入射する光の偏光面が回転する。このVAモードの液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)モードの液晶表示装置に比べて、高いコントラストを実現できるという利点を有している。
【0004】
VAモードの液晶表示装置では、電界印加時に液晶分子を傾斜配向させて複屈折性を得るようにしている。そのため、電界無印加時において液晶分子を、あらかじめ微小な傾斜角度(プレチルト角)を持たせて配向させている。このように、電界無印加時において液晶分子が基板の主面に対し完全に垂直ではなく、小さく傾いた配向をもつため、液晶パネルに残留位相差が生じる。従って、垂直方向からの入射光の偏光面が微小ながら回転してしまい、その結果、偏光板からの光漏れが生じてコントラストが低下する。
【0005】
更に、VAモードでは電界無印加時において、斜め入射光に対して位相差を与える。よって、明るさ(輝度)を得るために入射光のコーンアングルを大きく(F#を小さく)した場合、コントラストの低下を引き起こす。
【0006】
一方、RGBの各色に対応して3枚の液晶パネルを有する3板式液晶プロジェクタ装置等の投射型画像表示装置が知られている。投射型画像表示装置においては、一般的に、プリズムタイプの偏光ビームスプリッタ(PBS:Polarized Beam Splitter)が偏光分離に使用されている。しかし、プリズムタイプの偏光ビームスプリッタは、角度依存性が大きく、コントラストの低下を招く。コントラストを確保するためにコーンアングルを制限すると、明るさ(輝度)の点で不利となる。
【0007】
そこで、1/4波長板(quarter wave plate)を液晶パネルと偏光板の間に配置することにより、プリズムタイプの偏光ビームスプリッタによるコントラスト低下を補正することが提案されている(下記特許文献1参照)。
【0008】
なお、プリズムタイプの偏光ビームスプリッタの代わりに、角度依存性の小さいワイヤーグリッド偏光子と、反射型液晶パネルと、液晶パネルのプレチルトによる残留位相差(残留リターデーション)や斜め入射光に対する位相差を補償するための位相差板を組み合わせる方法が提案されている(下記特許文献2参照)。
【0009】
また、下記特許文献3には、無機材料で形成された高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した第1光学異方性層と、重合性液晶化合物の液晶分子の配向角を液晶素子の厚み方向において変化させハイブリッド配向とした第2光学異方性層とからなる位相差補償素子を使用して、液晶素子で生じた位相差を補償する液晶プロジェクタの構成が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特許第3019813号公報
【特許文献2】特開2005−18071号公報
【特許文献3】特開2006−189753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、プレチルトによって起こる偏光面の回転は液晶パネルによってバラツキがあるため、補償すべき残留位相差は液晶パネルごとに異なる。また、他の光学部品の設置角度のバラツキ等が存在するため、1/4波長板を液晶パネルと偏光板との間に配置するのみでは、安定したコントラスト調整が困難である。
【0012】
一方、液晶パネルの中心に対して垂直な軸を回転軸として1/4波長板を回転させながらコントラスト調整を行うことが考えられる。しかしながら、1/4波長板では回転角度に対する位相差の変化量が大きいため、1/4波長板を高精度(例えば0.5度以下)で回転させなければならず、コントラストの最適化は困難となってしまう。
【0013】
そして、無機光学多層膜と液晶を組み合わせた上記特許文献3の構成においては、以下の問題を有している。
【0014】
まず、液晶は温度変化に伴う位相差変化が大きく、耐環境性が低い。位相差補償板は、投影型画像表示装置内にて高照度の光に曝されるため、高い耐環境性が求められる。
【0015】
また、3板式液晶プロジェクタ装置等の投射型画像表示装置において、プリズムタイプの偏光ビームスプリッタの代わりに、角度依存性の小さいワイヤーグリッド偏光子と、反射型液晶パネルと、液晶パネルのプレチルトによる残留位相差や斜め入射光に対する位相差を補償するための位相差補償板を組み合わせた場合、位相差補償板に必要となる面内位相差は非常に小さい値となる。ここで、液晶を用いて微小位相差を制御する場合、高精度な塗布技術が必要となってしまい、位相差と光軸方向の面内ムラの制御も困難である。
【0016】
さらに、微小位相差制御に液晶を用いた場合、面内屈折率差(Δn0)は一般的に、Δn0>0.1と大きい値である。Δn0が大きい場合、定常波および異常波の反射係数に違いがあるため、反射光の偏光状態が部分的に変換され、ワイヤーグリッドから光漏れが発生し、コントラストの低下を招く。また、反射光を防ぐためのARコーティングはひとつの屈折率にしか最適化できないため、定常波、異常波両方の反射防止は不可能である。よって、Δn0が大きい場合、反射防止効果が低下し、コントラストの低下を招く。これらの対策として、Δn0の低減化が有効であるが、液晶を用いた場合、等方性化合物への含浸などの複雑な工程が必要となり、Δn0の低減化は困難である。
【0017】
本発明は上述の問題に鑑みてなされ、コントラストの調整を容易に行うことができ、液晶パネル間のバラツキにも柔軟に対応でき、耐環境性に優れ、微小な面内位相差を容易に得ることができる位相差補償板、位相差補償器、液晶表示装置および投射型画像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上の課題を解決するに当たり、本発明の位相差補償板は、複屈折性を有し、液晶パネルの残留位相差を補償するための位相差補償板であって、屈折率の異なる複数の層が規則的な順序で積層された光学多層膜と、高分子フィルムとの組合せ体からなり、当該位相差補償板の面内位相差(R0c)と、液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、1<R0c/R0p≦10の関係を満たすことを特徴とする。
【0019】
本発明では、上記光学多層膜と高分子フィルムとの組合せ体で位相差補償板を構成しており、当該位相差補償板の垂直方向位相差を上記光学多層膜で得るようにし、面内方向位相差を上記高分子フィルムで得るようにしている。
【0020】
光学多層膜は、構造複屈折膜であることが好ましい。構造複屈折膜は、互いに屈折率の異なる複数の層が、基準波長よりも小さい光学膜厚で周期的に積層された積層体であり、膜厚の制御のみで任意の垂直方向位相差を容易かつ高精度に得ることができる。一方、構造複屈折膜は面内位相差が0であるため、これに高分子フィルムを組み合わせることで、面内位相差を発現させるようにしている。
【0021】
以上の構造複屈折膜を高分子フィルムと組み合わせることにより、耐環境性に優れ、面内位相差、垂直方向位相差および光軸方向のムラが小さく、垂直方向位相差の制御性に優れ、面内屈折率差が小さい位相差補償板を構成することができる。
【0022】
また、本発明では、位相差補償板の面内位相差R0cと液晶パネルの面内位相差R0pとが、1<R0c/R0p≦10の関係を満たすように構成したことにより、液晶パネルに対して位相差補償板を設定する際の回転角度間における補償位相差量の変動を小さく抑えることができるようになる。これにより、コントラストの調整を容易に行うことができるとともに、個々の液晶パネルが有する残留位相差のバラツキにも柔軟に対応することが可能となる。
【0023】
一方、上記構成の位相差補償板を用いて位相差補償器を構成することで、液晶パネルの残留位相差を容易かつ高精度に補償することが可能となり、液晶表示装置のコントラストの調整を容易に行うことができる。これにより、液晶表示装置あるいは投射型画像表示装置のコントラストの向上を実現することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上述べたように、本発明によれば、液晶パネルのコントラストの調整を容易かつ高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0026】
本発明に係る位相差補償板および位相差補償器は、液晶表示装置を備える投射型画像表示装置において、液晶パネルの残留位相差を補償するために用いられる。まず、図1を参照して、投射型画像表示装置の一構成例とその動作について説明する。
【0027】
[投射型画像表示装置]
図1は本発明の実施形態による投射型画像表示装置15Aの概略構成図である。投射型画像表示装置15Aは、赤、緑および青の各色用の液晶ライトバルブを3枚用いてカラー画像表示を行う、いわゆる3板方式液晶プロジェクタ装置である。図1に示すように、この投射型画像表示装置15Aは、液晶表示装置1R,1G,1Bと、光源2と、ダイクロイックミラー3,4と、全反射ミラー5と、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bと、合成プリズム8と、投射レンズ9とを備えている。
【0028】
光源2は、カラー画像表示に必要とされる青色光LB、緑色光LGおよび赤色光LRを含んだ光源光(白色光)Lを発するものであり、例えばハロゲンランプ、メタルハライドランプまたはキセノンランプ等を備える。
【0029】
ダイクロイックミラー3は、光源光Lを青色光LBとその他の色光LRGとに分離する機能を有している。ダイクロイックミラー4は、ダイクロイックミラー3を通過した光LRGを赤色光LRと緑色光LGとに分離する機能を有している。全反射ミラー5は、ダイクロイックミラー3によって分離された青色光LBを偏光ビームスプリッタ6Bに向けて反射する。
【0030】
偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bは、それぞれ、赤色光LR、緑色光LGおよび青色光LBの光路に沿って設けられたプリズム型の偏光分離素子である。これらの偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bは、それぞれ、偏光分離面7R,7G,7Bを有し、この偏光分離面7R,7G,7Bにおいて、入射した各色光を互いに直交する2つの偏光成分に分離する機能を有している。偏光分離面7R,7G,7Bは、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を反射し、他方の偏光成分(例えばP偏光成分)は透過するようになっている。
【0031】
液晶表示装置1R,1G,1Bには、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bの偏光分離面7R,7G,7Bによって分離された所定の偏光成分(例えばS偏光成分)の色光が入射される。液晶表示装置1R,1G,1Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射光を変調させると共に、その変調された光を偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bに向けて反射する機能を有している。
【0032】
偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bと液晶表示装置1R,1G,1Bとの間には、1/4波長板13R,13G,13Bと位相差補償器40とがそれぞれ配置されている。1/4波長板13R,13G,13Bは、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bの有する入射光の角度依存性に起因するコントラストの低下を補正する機能を有する。また、位相差補償器40は、液晶表示装置1R,1G,1Bを構成する液晶パネルの残留位相差を補償する機能を有する。なお、位相差補償器40の詳細については後述する。
【0033】
合成プリズム8は、液晶表示装置1R,1G,1Bから出射され、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bを通過した所定の偏光成分(例えばP偏光成分)の色光を合成する機能を有している。投射レンズ9は、合成プリズム8から出射された合成光をスクリーン10に向けて投射する機能を有している。
【0034】
次に、以上のように構成された投射型画像表示装置15Aの動作について説明する。
【0035】
まず、光源2から出射された白色光Lは、ダイクロイックミラー3の機能によって青色光LBとその他の色光(赤色光および緑色光)LRGとに分離される。このうち青色光LBは、全反射ミラー5の機能によって、偏光ビームスプリッタ6Bに向けて反射される。
【0036】
一方、その他の色光(赤色光および緑色光LRGは、ダイクロイックミラー4の機能によって、さらに赤色光LRと緑色光LGとに分離される。分離された赤色光LRおよび緑色光LGは、それぞれ、偏光ビームスプリッタ6R,6Gに入射される。
【0037】
偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bは、入射した各色光を偏光分離面7R,7G,7Bにおいて互いに直交する2つの偏光成分に分離する。このとき、偏光分離面7R,7G,7Bは、一方の偏光成分(例えばS偏光成分)を液晶表示装置1R,1G,1Bに向けて反射する。液晶表示装置1R,1G,1Bは、画像信号に基づいて与えられた駆動電圧に応じて駆動され、入射した所定の偏光成分の色光を画素単位で変調させる。
【0038】
液晶表示装置1R,1G,1Bは、変調した各色光を偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bに向けて反射する。偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bは、液晶表示装置1R,1G,1Bからの反射光(変調光)のうち、所定の偏光成分(例えばP偏光成分)のみを透過させ、合成プリズム8に向けて出射する。
【0039】
合成プリズム8は、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bを通過した所定の偏光成分の色光を合成し、投射レンズ9に向けて出射する。投射レンズ9は、合成プリズム8から出射された合成光を、スクリーン10に向けて投射する。これにより、スクリーン10に、液晶表示装置1R,1G,1Bによって変調された光に応じた映像が投影され、所望の映像表示がなされる。
【0040】
図2は本発明に係る投射型画像表示装置の他の構成例を示している。図示する投射型画像表示装置15Bは、偏光分離素子として、図1に示したプリズム型の偏光ビームスプリッタ6に代えて、ワイヤーグリッド偏光子16R,16G,16Bを配置した例を示している。なお、図1と対応する部分については同一の符号を付している。
【0041】
ワイヤーグリッド偏光子は、プリズム型の偏光ビームスプリッタに比べて入射光の角度依存性が小さく耐熱性にも優れるため、1/4波長板が不要であり、光量の大きな光源を使用する投射型画像表示装置用の偏光分離素子として好適に用いることができる。この例においても、図1と同様な作用でスクリーン(図示略)上に画像を表示する。
【0042】
なお、図2において符号17は全反射ミラー、18はリレーレンズである。また、図2には光源2の一構成例を示しており、25は光源光Lを発生するランプユニット、26,27は光源光Lの輝度を均一化する一対のマイクロレンズアレイ、28は光源光Lの偏光方向を一方向の偏光波に変換するPS変換素子、29は光源光Lの照射位置を調整する位置調整用レンズである。
【0043】
ワイヤーグリッド偏光子は、ガラス等の透明基板上に、ピッチ、幅、高さが入射光の波長より小さい複数の金属細線を格子状に形成したもので、金属細線と平行な偏光成分を反射し、金属細線と直交する偏光成分を透過させることで所定の偏光特性を出現させる。ワイヤーグリッド偏光子は、入射光に対して垂直に配置される場合には、偏光ビームスプリッタとして機能する。また、このワイヤーグリッド偏光子を偏光ビームスプリッタとして用いた場合、液晶表示装置に偏光板が不要となる。
【0044】
次に、図3を参照しながら、液晶表示装置1R,1G,1Bについて説明する。図3は、本発明の一実施形態による液晶表示装置1R,1G,1Bの一構成例を示す断面図である。図3に示すように、この液晶表示装置1R,1G,1Bは、ライトバルブである液晶パネル11と、この液晶パネル11の偏光ビームスプリッタと対向する側に設けられた位相差補償器40とを備える。
【0045】
液晶パネル11は、例えば電圧無印加状態で液晶分子が垂直配向された反射型垂直配向液晶表示素子であって、互いに対向配置された対向基板20および画素電極基板30と、これらの対向基板20および画素電極基板30の間に液晶を封入してなる液晶層12とを備える。液晶層12を構成する液晶としては、負の誘電異方性を有する液晶、例えば、負の誘電異方性を有するネマティック液晶が用いられている。
【0046】
対向基板20は、透明基材21上に、透明電極22、配向膜23が順次積層されて構成される。透明基材21は、例えばソーダガラス、無アルカリガラスまたは石英ガラス等からなるガラス基板である。透明電極22は、例えば酸化すず(SnO2)と酸化インジウム(In23)との固溶体であるITO(Indium Tin Oxide)等の透明な導電性酸化物材料からなる。この透明電極22は、全画素領域で共通の電位(例えば接地電位)とされている。
【0047】
配向膜23は、例えばポリイミド系の有機化合物からなる。この配向膜23の液晶層12側となる表面には、液晶層12を構成する液晶分子を所定方向に配向させるために、ラビング処理が施されている。
【0048】
画素電極基板30は、支持基板31上に、反射電極層33、配向膜34を順次積層して構成される。支持基板31は、例えばシリコン基板であり、この基板31上には、例えばC−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のスイッチング素子32が設けられている。反射電極層33は、複数の反射型の画素電極を備える。この画素電極には、上述のスイッチング素子32によって、駆動電圧が印加されるようになっている。
【0049】
画素電極を構成する材料としては、可視光で高い反射率を有するものが好ましく、例えばアルミニウムが用いられる。配向膜34は、対向基板20の配向膜23と同様に、例えばポリイミド系の有機化合物からなり、この配向膜34の液晶層12側となる表面には、液晶層12を構成する液晶分子を所定方向に配向させるために、ラビング処理が施されている。
【0050】
[位相差補償器]
続いて、本発明に係る位相差補償器40の詳細について説明する。位相差補償器40は、各液晶表示装置1R,1G,1Bにおける上述した構成の液晶パネル11の上にそれぞれ設けられる。
【0051】
図4は、位相差補償器40の一例を示す平面図である。図5は、位相差補償器40の一例を示す断面図である。図4および図5に示すように、位相差補償器40は、位相差補償板50と、この位相差補償板50を回転させるための回転体41と、この回転体41を液晶パネル11の主面に対して垂直な軸を回転軸として、回転自在に保持するハウジング部42とを有する。
【0052】
この位相差補償器40は、図5に示すように、液晶パネル11に対して密閉部材であるOリング45を介して密着固定される。このように密着固定することにより、液晶パネル11と位相差補償器40との間の防塵効果を得ることができる。なお、回転体41およびハウジング部42が本発明における回転手段の一例である。
【0053】
回転体41は、円盤状の形状を有し、その中央部には矩形状を有する開口41aが設けられている。また、回転体41は、その内部に位相差補償板50を保持可能に構成され、回転体41の内部に位相差補償板50を保持した状態において、開口41aから位相差補償板50が露出するようになっている。
【0054】
ハウジング部42は、液晶パネル11の主面に対して垂直な軸を回転軸として、回転体41を液晶パネル11の面内方向に回転可能に保持している。ハウジング部42は、長方形の板状で、その中央部に円形状の開口42aを有している。この開口42aの側面42bは、回転体41を嵌合可能なように一様に窪んでいる。また、ハウジング部42の側面には、回転体41の端面に接続された角度調整部材44が設けられ、矢印aに示す方向に角度調整部材44を動かすと、これに連動して回転体41が矢印bに示す方向に回転されるようになっている。
【0055】
また、開口42aの周りには、回転体41の位置を固定するための固定ネジ43が1または2以上設けられている。2以上の固定ネジ43を設ける場合には、固定ネジ43は開口42aの周りに等間隔で配設される。なお、調整後の回転体41の位置固定方法は固定ネジ43の例に限らず、例えば、接着剤を用いて回転体41をハウジング部42に接着固定したり、角度調整部材44の調整位置を機械的に保持するクランプ機構を別途設けるなどしてもよい。
【0056】
本実施形態の位相差補償器40は、偏光ビームスプリッタ6R,6G,6Bあるいはワイヤーグリッド偏光子16R,16G,16Bと液晶パネル11の前面との間にそれぞれ設けられている(図1、図2)。そして、液晶パネル11に垂直な軸を回転軸として位相差補償板50を回転させ、液晶パネル11の遅相軸に対する各位相差補償板50の遅相軸の回転角度を適宜設定することで、コントラストの調整を行う。位相差補償板50の遅相軸の向きの設定は、角度調整部材44の矢印a方向の回動操作で行われる。
【0057】
[位相差補償板]
3板式液晶プロジェクタ装置等の投射型画像表示装置において、液晶パネルや光学部品の有する残留位相差を補償するために用いられる位相差補償板(リターダ)として、フィルムタイプ、結晶タイプ、液晶タイプが知られている。しかし、これらのタイプの位相差補償板は、垂直方向および面内方向の位相差ムラ、耐久性、コスト等で問題を有している。
【0058】
すなわち、フィルムタイプにおいては、回転調節により面内位相差の調整は可能であるが、垂直方向位相差はフィルムの厚さで決定されるため固定値である。このため、RGB各色毎や液晶パネル毎に合わせ込む場合、フィルムの種類増加が避けられない。更に、複数枚のフィルムを積層して用いる場合、貼合せ箇所が増えるため、ゴミ等の欠陥が発生しやすい。そして、枚数の増加に伴い、位相差、光学軸の面内均一性が低下する。
【0059】
また、結晶タイプにおいては、耐久性が高いがコストも高いという問題がある。また、Δn0(面内屈折率差)が大きいため高精度な厚み制御が必要となるほか、低位相差を得るには高精度に角度を調節した貼合せが必要となる。さらに、RGBの色毎や液晶パネル毎に合わせ込む場合、それぞれ厚みの異なる波長板が必要となる。
【0060】
そして、液晶タイプにおいては、低位相差の塗布が困難であるため、RGBの色毎や液晶パネル毎に合わせ込む場合など、高精度な塗布厚制御が不可能である。また、温度による位相差変化が大きいため、耐久性が低い。さらに、Δn0が大きいため、反射防止が困難であるとともに反射光の偏光状態変化が大きい。
【0061】
そこで、本実施形態においては、耐環境性、Rth制御性が高く、位相差ムラの小さい位相差補償板として、構造複屈折膜を用いている。構造複屈折膜は、屈折率の異なる複数の層、例えば第1、第2の光学膜の繰り返し構造からなる光学多層膜であり、特に、各層の光学的厚みが目的の基準波長よりも十分に小さく、例えば200分の1以上10分の1以下に設定されたものをいう。各層の光学的厚みを基準波長よりも小さくすることで、各層の間での光干渉を回避でき、光の透過反射特性の変化を防止することができる。従って、構造複屈折膜は、光干渉を利用して光の透過反射特性を制御する反射防止膜や光学フィルタとは区別される。
【0062】
この構造複屈折膜は、nx=ny>nzとなり、負のC−plateの特性を示す。屈折率は各層の屈折率n1,n2と膜厚a,bによって決定され、次式で表される。
第1の層:屈折率=n1、膜厚=a
第2の層:屈折率=n2、膜厚=b
全膜厚:d
垂直方向屈折率差:Δnth=ne−no(ne<no)
no2={a・n12/(a+b)}+{b・n22/(a+b)},
1/ne2={a/n12(a+b)}+{b/n22(a+b)}……(1)
ここで、no=nx=ny、ne=nzである。垂直方向位相差Rthは、
Rth=Δnth・d ……(2)
で決定される。
【0063】
一方、液晶パネルや他部材の残留位相差は波長分散性を有しており、RGBそれぞれの帯域によって残留位相差が異なるため、位相差補償板に求められる位相差はRGBそれぞれで異なる値となる。また、位相差補償板と液晶パネルは波長分散性が異なるため、可視光全帯域に対して位相差補償板を最適化できれば色差の改善を図ることができる。そのためには、RGBそれぞれで構成を変えて、異なる位相差に最適化する必要がある。図6は、液晶パネルと構造複屈折膜の波長分散を比較した一例を示す図である。この例では、構造複屈折膜として、SiO2膜とNb25膜を各々10nm積層した多層膜について表している。
【0064】
この際、位相差補償板が上述したフィルム、結晶あるいは液晶タイプの場合、フィルム枚数や種類、微細な塗布厚制御などが必要となるため、Rthの制御が困難であり、コストも高くなってしまう。一方、構造複屈折膜の場合、全層厚の最適化のみでRthの制御が可能であり、材料種類の増加や、新たな制御技術の導入は必要とならない。よって、構造複屈折膜タイプの位相差補償板は、波長分散に対しても最適化が容易であり、コストの面でも有利となる。
【0065】
図7は、図6の例において、構造複屈折膜の全膜厚をRGB各帯域において最適化したときの垂直方向位相差(Rth=Δnth・d)の波長分散性を示している。液晶パネルの残留位相差は青色帯域で最大となり、赤色帯域で最小となる。そのため、構造複屈折膜の層数は青色帯域で最大となり、赤色帯域で最小となる。以上のように、構造複屈折膜タイプの位相差補償板によれば、フィルムや液晶などを用いた場合と異なり、層数の制御のみで、可視光全帯域において、最適な位相差値が得られ、効率良く位相差補償が可能となる。また、上述した構成の投射型画像表示装置15A,15Bにおいて、各色の液晶表示装置1R,1G,1Bに対応して配置される位相差補償器40に、色光ごとに構造複屈折膜の厚みを異ならせて最適化された位相差補償板を用いることによって、適切な位相差補償が可能となる。
【0066】
図8A,Bは、位相差補償板50の一構成例を示す断面図である。図8Aに示すように、位相差補償板50は、主として、支持体51と、支持体51の一方側の表面に形成された構造複屈折膜(光学多層膜)52と、支持体51の他方側の表面に貼り合わされた高分子フィルム53とで構成されている。一方、図8Bに示す位相差補償板50は、構造複屈折膜52を一方の面に有する一対の支持体51の他方の面を、高分子フィルム53を挟んでそれぞれ接着した構成を有している。また、位相差補償板50の表面および裏面は反射防止膜54,55からなるARコーティング層とされている。
【0067】
支持体51は、構造複屈折膜52を支持するためのものであり、透明性を有し、かつ、等方性を有する。支持体51を構成する材料としては、例えばソーダガラス、無アルカリガラスもしくは石英ガラス等のガラスまたはプラスチック等を用いることができるが、良好な等方性を得るためにはガラスを用いることが好ましい。
【0068】
構造複屈折膜52は、屈折率の異なる第1,第2の光学膜52a,52bを交互に積層して構成された光学多層膜からなる。第1,第2の光学膜52a,52bの構成は、屈折率が互いに異なるものであれば特に限定されず、所望の屈折率差Δnthに応じて選定される。具体的に、TiO2、Nb25、MgO、CeO2、ZrO2、Ta25、CaF2、Al23、SiO2、SnO2、MgF2などの公知の無機材料を適宜選択して構成することができる。これらの光学膜52a,52bの成膜方法としては、例えばスパッタリング法が挙げられる。なお、以下の説明では、第1,第2の光学膜52a,52bのうち、屈折率の高い方を高屈折率膜と称し、屈折率の低い方を低屈折率膜と称することとする。
【0069】
なお、構造複屈折膜52の垂直方向位相差、膜厚、積層数は、所望の屈折率差Δnthに応じて適宜選定される。好適には、垂直方向位相差は100nm以上500nm以下であり、膜厚は基準波長の200分の1以上10分の1以下であり、積層数は10層以上500層以下である。
【0070】
このような構造複屈折膜52は、垂直入射光に対しては屈折率の一様な媒質と等価であり、斜め入射光に対しては異方性が生じることにより、一軸性の傾斜していない負の屈折率楕円体(負のC−plate)の光学特性を有している。この構造複屈折膜52は平滑性が高く、周期構造積層体の材料、厚み、周期構造ピッチの周期などを適宜選択することにより、垂直方向位相差(Rth)を容易かつ高精度に得ることが可能となる。
【0071】
一方、垂直入射光に対する残留位相差を補償する際は、補償板に面内位相差が要求される。構造複屈折膜52は面内位相差が0であるため、面内位相差を有する層と組み合わせる必要がある。そこで、本発明では、この構造複屈折膜52に高分子フィルム53を組み合わせることで、面内位相差を発現させるようにしている。
【0072】
本実施形態では、位相差補償板50の面内位相差を30nm以下としている。また、液晶パネルとの関係において、位相差補償板50の面内位相差R0cと液晶パネル11の面内位相差R0pとが、1<R0c/R0p≦10、好ましくは、2≦R0c/R0p≦10、更に好ましくは、5≦R0c/R0p≦8の関係を満たすように高分子フィルム53の面内位相差が設定される。
【0073】
1≧R0c/R0pである場合には、位相差補償板50の回転調整角度の制限により補償位相差量が足りない、または液晶パネル11ごとの位相差のばらつきや光学部品の設置角度のバラツキに対応できなくなる傾向がある。一方、10<R0c/R0pである場合には、位相差補償板50の回転に対する補償位相差量の変動が大きくなり、微調整が困難になる傾向がある。
【0074】
図9は、位相差補償板50の遅相軸の方向を示す模式図である。図9に示すように、位相差補償板50の遅相軸R2の方向は、液晶パネル11の遅相軸R1の方向に対して角度θ回転させた位置に設定される。これら位相差補償板50の遅相軸R2と液晶パネル11の遅相軸R1とのなす角θは、45度以上85度以下、より好ましくは、45度以上65度以下の範囲に設定される。なお、液晶パネル11の遅相軸R1の方向は、液晶分子の傾斜配向方向を示している。
【0075】
遅相軸R2の方向は、液晶パネル11の面内位相差(R0p)と位相差補償板50の面内位相差(R0c)との値により決定される。つまり、位相差補償器40の面内位相差と液晶パネル11の面内位相差とが一致するように位相差補償板50の光学軸を回転させて組み合わされる。位相差補償器40は、±10度以下(−10度〜+10度)の範囲で位相差補償板50を回転可能に構成されている。
【0076】
以下、具体例を挙げて説明する。
図10は液晶パネル11の遅相軸方向を示す模式図である。図11は位相差補償板の遅相軸方向を示す模式図である。図12は、面内位相差が3nmの液晶パネルの上に、面内位相差が6nmの微小位相差板を設け、液晶パネルの遅相軸R1と位相差補償板の遅相軸R2とが一致する位置を0度として、時計回りに位相差補償板を回転させたときの遅相軸の回転角度(θ)と補償位相差量との関係を示している。なお、図12において一点鎖線は、比較として、1/4波長板(面内位相差128nm)を用いて測定を行ったときの結果を示している。
【0077】
図12に示した例において、液晶パネルが持つ面内位相差が3nmの場合、位相差補償板の補償位相差量として−3nmが必要となる。そこで、位相差補償板として1/4波長板を用いた場合では、その遅相軸の回転に対する補償位相差量の変動が非常に大きいため、−3nm程度の補償位相差量を得るためには、±0.5度以下の精度で遅相軸の回転角度を設定しなければならず、コントラストの最適化が困難となる。また、遅相軸の方向にズレが生じた場合には、補償位相差量が大きく変化するため補償機能が大幅に減少してしまう。
【0078】
これに対して、面内位相差が6nmの微小位相差補償板を用いた場合、−3nmの補償位相差量を得るためには、遅相軸R2をおよそ60度回転すればよい。この場合、遅相軸R2の回転に対する補償位相差量の変動量が小さく、±10度の遅相軸R2の回転によりコントラストの微調整が容易であるので、液晶パネル毎のバラツキにも対応することができる。また、遅相軸R2の方向にズレが発生した場合にも、補償機能の低下が小さいことがわかる。
【0079】
以上のように、位相差補償板の遅相軸方向を調整するとともに微調整用の回転機構を持たせることにより、高い精度でコントラストの最適化が可能となり、液晶パネルごとのプレチルト量のバラツキに柔軟に対応した位相差補償が可能となる。
【0080】
次に、図13は、位相差補償板の面内位相差R0cと液晶パネルの面内位相差R0pとの比(R0c/R0p)を異ならせたときの位相差補償板の遅相軸R2の回転角度と補償位相差量との関係を示している。図の例では、液晶パネルの面内位相差R0pが3nm、位相差補償板の面内位相差R0cがそれぞれ3nm(R0c/R0p=1)、4.5nm(R0c/R0p=1.5)、6nm(R0c/R0p=2)および9nm(R0c/R0p=3)の場合を示している。
【0081】
図13に示すように、R0c/R0p=1の場合には、位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して約85度回転させることで−3nmの補償位相差量が得られる。軸位置変化に対する補償位相差量の変動はほとんどなく、安定したコントラスト補償が可能である。しかしながら、液晶パネルの面内位相差が3nmからばらついた場合は、±10度以上の大きな回転角度調整が必要となり、必要な補償位相差量が得られない場合も発生し得る。また、位相差補償器を液晶パネル上に組み付ける構造上、位相差補償板を±10度以上の範囲にまで回転させる機構を付することは困難である。
【0082】
これに対して、R0c/R0p=1.5の場合には液晶パネルの遅相軸R1に対して位相差補償板の遅相軸R2を約65度回転させることで約−3nmの補償位相差量が得られる。R0c/R0p=2の場合には約62度〜63度、R0c/R0p=3の場合には約52度回転させることで同様な補償位相差量を得ることができる。位相差補償板の軸位置変化に対する補償位相差量の変動は、R0c/R0p=1の場合に比べて大きくなるが、1/4波長板のような大きな変化ではなく、コントラストへの影響は小さい。また、−3nmを中心に大小両方向に補償位相差量の調整が可能であり、位相差量にバラツキをもった液晶パネルに対して最適化が可能である。また、位相差補償板の回転調整角度が±10度以下の範囲で液晶パネルの位相差量のバラツキに対応可能である。
【0083】
以上のように、R0c/R0p>1の関係を満たすように、位相差補償板の面内位相差R0cを液晶パネルの面内位相差R0pよりも大きくすることで、液晶パネルの面内位相差量を高い精度で補償することができるとともに、コントラストの調整を容易に行うことが可能となる。
【0084】
高分子フィルムの面内屈折率差はΔn0<0.005であり、Δn0の低減化は容易である。よって、反射光の偏光状態の変化が小さく、光漏れが少ない、同時に屈折率差が小さいので、AR特性の向上が可能である。また、材料の選択により、高Tg(ガラス転移温度)化が可能であり、耐環境性にも優れた位相差補償板が得られる。微小な面内位相差の制御は、一軸延伸や二軸延伸によって行う。この際、フィルムの積層を用いてもよい。さらに、垂直方向位相差Rthは、構造複屈折膜により適宜調整が可能であるため、必要なフィルム枚数が減少する。よって、面内位相差ムラ、光軸方向ムラの低減が可能となる。
【0085】
高分子フィルム53としては、耐熱性、低吸水性および低光弾性係数等の特性を有し、位相差量のバラツキが小さい材料を用いることが好ましい。これらの特性を満たすフィルムとして、例えばノルボルネン系フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルム等の高分子フィルムが挙げられる。その中でも、ノルボルネン系フィルムは特に優れた特性を有する。
【0086】
高分子フィルム53は、一方の面に光学多層膜52を支持する支持体51の他方側の面に接着されている。高分子フィルム53と支持体51との接着方法は特に限定されず、粘着剤または粘着シート等の感圧性接着剤、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂等の各種接着剤を用いた接着が採用可能である。何れも、アクリル系、エポキシ系などの樹脂を用いることが可能であるが、透明性などの光学特性面からアクリル系樹脂が好ましい。
【0087】
また、接着剤の硬化後の屈折率は、高分子フィルム53の屈折率とほぼ同等であるか、高分子フィルム53の屈折率と支持体51の屈折率の中間にあることが好ましい。接着剤の硬化後の熱膨張係数については、高分子フィルム53の熱膨張係数とほぼ同等であるか、高分子フィルム53の熱膨張係数と支持体51の熱膨張係数の中間にあることが好ましい。
【0088】
反射防止膜54,55は、入射する光(例えば赤色光、緑色光、青色光)の反射を防止するためのものであり、反射率を1%以下とすることが好ましい。反射率を1%以下とすることにより、反射光によるコントラストの低下を抑えることができる。反射防止膜54,55は、例えば単層反射防止膜または2層以上の多層反射防止膜である。これらの反射防止膜54,55の成膜方法としては、例えばスパッタリング法が挙げられる。
【0089】
以上述べたように、本実施形態によれば、位相差補償板50を構造複屈折膜52と高分子フィルム53の組合せ体で構成したので、耐環境性に優れ、面内位相差、垂直方向位相差および光軸方向のムラが小さく、垂直方向位相差の制御性に優れ、面内屈折率差が小さい位相差補償板を構成することができる。
【0090】
特に、本実施形態の位相差補償板50によれば、構造複屈折膜52の膜厚制御で垂直方向位相差(Rth)を容易に調整できるので、フィルムを複数種用いたRthの調整が不要となる。また、反射防止膜54,55の成膜と同時にサンプルごとのRth調整も可能である。さらに、各色の液晶パネル毎に最適なRthを有する位相差補償板を構成できるので、波長分散特性の影響を少なくして表示画像の高画質化を図ることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
以下のようにして作製した構造複屈折膜の垂直方向位相差(Rth)の制御性を評価した。
【0093】
図14に示すように、石英基板からなる支持体61上に、低屈折率膜としてSiO2膜と、高屈折率膜としてNb25膜をそれぞれ交互に70層(サンプル1)、90層(サンプル2)および100層(サンプル3)積層してなる構造複屈折層(光学多層膜)62を作製した。
【0094】
SiO2膜、Nb25膜の膜厚は共に10nmとした。成膜装置には、アルバック社製「ULDis−900CV」を用いた。これらのサンプル1〜3について、大塚電子社製「RETS−100」を用いて位相差入射角依存性を測定した。その結果を図15に示す。図中、横軸は入射角、縦軸はRe(リターデーション)の大きさを示している。
【0095】
図15に示すように、垂直入射光に対しては、位相差は0nmとなっており、面内位相差R0=0nmである。斜め入射光に対しては、角度増加に伴い、位相差が増加する。よって、屈折率はnx=ny>nzの関係であり、負のC−plateとなっている。垂直方向位相差Rthは、層数が70、90、100の順で増加している。これは、層数の増加に伴う合計膜厚の増加が要因である。
【0096】
SiO2膜およびNb25膜の膜厚がそれぞれ10nm、合計100層の条件で作製したサンプル(サンプル3)について、そのRe入射角依存性の測定データと、上記(1)式を用いて算出したRe入射角依存性の計算値とを比較した結果を図16に示す。図16において、実線は測定データを示し、一点鎖線は計算結果を示している。図16からわかるように、測定データと計算値はほぼ一致しており、膜厚制御により高精度にRthの制御が可能であることがわかる。
【0097】
(実施例2)
以下のようにして、本発明に係る構造複屈折膜を備えた位相差補償板と、この構造複屈折膜を備えていない位相差補償板を作製し、それぞれの位相差補償効果を確認した。
【0098】
構造複屈折膜として、厚み0.3mmの2枚の石英基板上にSiO2膜とNb25膜の70層の繰り返し多層膜を成膜した。膜厚はともに10nmとした。成膜装置には、アルバック社製「ULDis−900CV」を用いた。その後、サンプルの表面に青色帯域用のARコーティングを施した。反射率は430nm〜500nmの帯域において0.5%以下であった。
【0099】
各々の石英基板の成膜面とは反対側の面に、面内位相差8nm、垂直方向位相差−40nmのノルボルネン系高分子フィルム(JSR株式会社製「アートンフィルム(商品名)」を挟んで接着した(図8B参照)。接着に可視光硬化型樹脂を用いた。得られた積層体は、その後、スライサーで加工し、目的の大きさに個片取りした。以上のようにして、面内位相差R0=8nm、垂直方向位相差Rth=−320nm、青色帯域における反射率が0.5%以下の位相差補償板を得ることができた。
【0100】
(比較例1)
図17に示すように、厚み0.3mmの2枚の石英基板71,71上に、青色帯域用のARコーティング層74,75を形成した。ARコーティング層74,75の反射率は430〜500nmの帯域において0.5%以下であった。
【0101】
各々の石英基板71,71の成膜面とは反対側の面に、面内位相差が50nm、垂直方向位相差が−100nmの二軸延伸ノルボルネン系高分子フィルム73Aと、面内位相差が70nm、垂直方向位相差が−100nmの二軸延伸ノルボルネン系高分子フィルム73Bとを、積層後の面内位相差が20nmとなるように、互いに光学軸を直交させて接着した。接着には可視光硬化型樹脂を用いた。得られた積層体は、その後、スライサーで加工し、目的の大きさに個片取りした。以上のようにして、面内位相差R0=20nm、垂直方向位相差Rth=−200nm、青色帯域における反射率が0.5%以下の位相差補償板を作製した。
【0102】
上記実施例2に係るサンプルと比較例1に係るサンプルのそれぞれについて、位相差補償特性を評価した。光学系には、垂直配向反射型液晶パネルとワイヤーグリッド偏光子を組み合わせた光学系(図2参照)を用いた。青色用液晶パネルと青色用ワイヤーグリッド偏光子との間に位相差補償板を配置し、この位相差補償板をその法線方向を回転軸にしてコントラストが最大となる回転角度を決定し、そのときの黒色強度、白色強度、コントラストを測定した。測定の結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1に示したように、実施例2のコントラストは3147、比較例1のコントラストは2969であり、構造複屈折膜の優位性が確認できた。なお、今回の実施例では行っていないが、構造複屈折膜の層数、膜厚を青色帯域に合わせて最適化することにより、更なるコントラストの向上を図ることができる。
【0105】
(実施例3〜6)
以下のようにして、実施例および比較例の位相差補償板の遅相軸を回転させたときの、液晶パネルに対する補償位相差量を測定した。なお、回転は、液晶パネルの遅相軸R1と位相差補償板の遅相軸R2とが一致する角度を0度として時計まわりで行った(図10,11参照)。液晶パネルの面内位相差(R0p)は2.5nmとした。
【0106】
[実施例3]
面内位相差R0c=12nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=4.8)。
【0107】
[比較例2]
面内位相差R0c=30nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=12)。
【0108】
図18は、上述の実施例3および比較例2の補償位相差量の測定結果を示している。液晶パネルがもつ面内位相差R0pが2.5nmの場合、位相差補償板の補償位相差量として−2.5nmが必要となる。図18から、以下のことがわかる。
【0109】
すなわち、比較例2では、遅相軸の回転に対する補償位相差量の変動が非常に大きいため、−2.5nm程度の補償位相差量を得るためには、±0.5度以下の精度で遅相軸R2を設定しなければならず、コントラストの最適化が困難となってしまうことがわかる。また、遅相軸R2の方向にズレが生じた場合には、補償位相差量が大きく変化するため、補償機能が大幅に減少してしまうことがわかる。
【0110】
これに対して、実施例3の場合、−2.5nmの補償位相差量を得るためには、遅相軸R2をおよそ51度回転すればよく、遅相軸R2の回転に対する補償位相差量の変動が小さく、遅相軸R2の回転によりコントラストの微調整が容易である。また、±2nmの範囲でコントラスト補償が可能となるため、液晶パネルごとのバラツキや光学部品の設置角度のバラツキにも対応できることがわかる。更に、遅相軸R2の方向にズレが発生した場合でも、補償機能の低下が小さいことがわかる。
【0111】
次に、位相差補償板の面内位相差R0cと、液晶パネルの面内位相差R0pとの関係を検証するための実施例について説明する。
【0112】
[実施例4]
面内位相差R0c=20nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=8)。
【0113】
[実施例5]
面内位相差R0c=9nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=3.6)。
【0114】
[実施例6]
面内位相差R0c=6nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=2.4)。
【0115】
[比較例3]
面内位相差R0c=2.5nmを有する位相差補償板を準備し、この位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して回転させたときの補償位相差量の変化を測定した(R0c/R0p=1)。
【0116】
図19は、実施例3〜6および比較例3の補償位相差量の測定結果を示している。図19に示すように、R0c/R0p=1の関係にある比較例3においては、位相差補償板の遅相軸R2を液晶パネルの遅相軸R1に対して約85度回転させることで、−2.5nmの補償位相差量が得られる。軸位置変化に対する補償位相差量の変動はほとんどなく、安定したコントラスト補償が得られる。しかし、液晶パネルの面内位相差が2.5nmからばらついた場合は、±10度以上の大きな回転角度調整が必要となり、必要な補償位相差量が得られない場合も発生し得る。また、位相差補償器を液晶パネル上に組み付ける構造上、位相差補償板を±10度以上の範囲にまで回転させる機構を付することは困難である。
【0117】
これに対して、R0c/R0p=4.8の関係にある実施例3においては、液晶パネルの遅相軸R1に対して位相差補償板の遅相軸R2を約51度回転させることで約−2.5nmの補償位相差量が得られる。R0c/R0p=8の関係にある実施例4においては約49度、R0c/R0p=3.6の関係にある実施例5においては約53度、R0c/R0p=2.4の関係にある実施例6においては約57度回転させることで、同様な補償位相差量を得ることができる。位相差補償板の軸位置変化に対する補償位相差量の変動は、R0c/R0p=1の場合に比べて大きくなるが、R0c/R0p=12の比較例2のような大きな変化ではなく、コントラストへの影響は小さい。また、−2.5nmを中心に大小両方向に補償位相差量の調整が可能であり、位相差量にバラツキをもった液晶パネルに対して最適化が可能である。また、位相差補償板の回転調整角度が±10度以下、例えば±5度以下の範囲で、液晶パネルの位相差量のバラツキに対応可能である。
【0118】
以上のように、1<R0c/R0p、より好ましくは、2≦R0c/R0pの関係を満たすように位相差補償器の面内位相差R0cを調整することで、液晶パネルの面内位相差を高い精度で補償することができるとともに、コントラストの調整が容易となる。
【0119】
なお、10<R0c/R0pになると、遅相軸R2の角度変化に対する補償位相差量の変化が増大するため、微調整が困難となる。10≧R0c/R0pの範囲内であれば、コントラストへの影響は低減される。
【0120】
以上、本発明の実施形態および実施例について説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【0121】
例えば以上の実施形態では、位相差補償板50を構成する構造複屈折膜52を支持体51の上に成膜したが、支持体51を省略して、構造複屈折膜52を高分子フィルム53上に直接成膜することも可能である。
【0122】
また、以上の実施形態では、投射型画像表示装置に適用される液晶表示装置として、反射型液晶表示装置を例に挙げて説明したが、これに限らず、透過型液晶表示装置についても本発明は適用可能である。この場合、位相差補償板は、その両主面のうち光入射側にのみ反射防止膜を設ければよい。
【0123】
さらに、投射型画像表示装置の光学系は上述した3板式に限らず、単板式でもよい。さらに、フラットパネルディスプレイとしての直視型液晶表示装置にも本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の実施形態による投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態による投射型画像表示装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態による液晶表示装置の構成を概略的に示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態による位相差補償器の構成を示す平面図である。
【図5】図4における[5]−[5]線方向断面図である。
【図6】位相差補償板を構成する構造複屈折膜と液晶パネルにおける垂直方向位相差の波長依存性の一例を示す図である。
【図7】RGB各色に対して膜厚が最適化された上記構造複屈折膜と液晶パネルにおける垂直方向位相差の波長依存性の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による位相差補償板の構成例を模式的に示す断面図である。
【図9】液晶パネルの遅相軸と位相差補償板の遅相軸との関係を説明する模式図である。
【図10】液晶パネルの遅相軸方向を示す模式図である。
【図11】位相差補償板の遅相軸方向を示す模式図である。
【図12】液晶パネルに対する位相差補償板の回転角度と補償位相差量との関係を示す図である。
【図13】液晶パネルに対して面内位相差が異なる複数の位相差補償板を適用したときの、位相差補償板の回転角度と補償位相差量との関係を示す図である。
【図14】本発明の実施例1において説明するサンプルの概略構成を示す模式図である。
【図15】本発明の実施例1において説明する各種サンプルについてのリターデーション(Re)の入射角依存性を示す図である。
【図16】本発明の実施例1において説明するサンプルについてのリターデーション(Re)の測定データと計算値とを比較する図である。
【図17】本発明の比較例1において説明するサンプルの概略構成を示す模式図である。
【図18】本発明の実施例3において説明する位相差補償板の回転角に対する補償位相差量の変化を示す図である。
【図19】本発明の実施例3〜6において説明する位相差補償板の回転角に対する補償位相差量の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1R,1G,1B…液晶表示装置、2…光源、3,4…ダイクロイックミラー、5…全反射ミラー、6R,6G,6B…偏光ビームスプリッタ、8…合成プリズム、9…投射レンズ、10…スクリーン、11…液晶パネル、12…液晶層、15A,15B…投射型画像表示装置、16R,16G,16B…ワイヤーグリッド偏光子、40…位相差補償器、41…回転体、42…ハウジング部、44…角度調整部材、50…位相差補償板、51…支持体、52…構造複屈折膜(光学多層膜)、53…高分子フィルム、54,55…反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性を有し、液晶パネルの残留位相差を補償するための位相差補償板であって、
屈折率の異なる複数の層が規則的な順序で積層された光学多層膜と、高分子フィルムとの組合せ体からなり、
当該位相差補償板の面内位相差(R0c)と、前記液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、
1<R0c/R0p≦10
の関係を満たす
ことを特徴とする位相差補償板。
【請求項2】
前記光学多層膜は、負の垂直方向位相差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相差補償板。
【請求項3】
前記光学多層膜は、構造複屈折膜である
ことを特徴とする請求項1に記載の位相差補償板。
【請求項4】
前記高分子フィルムは、30nm以下の面内位相差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相差補償板。
【請求項5】
前記高分子フィルムは、0.005よりも小さい面内屈折率差を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の位相差補償板。
【請求項6】
前記高分子フィルムは、ノルボルネン系樹脂フィルムである
ことを特徴とする請求項1に記載の位相差補償板。
【請求項7】
複屈折性を有する位相差補償板を備え、液晶パネルの残留位相差を補償する位相差補償器であって、
前記位相差補償板は、屈折率の異なる複数の層が規則的な順序で積層された光学多層膜と、高分子フィルムとの組合せ体からなり、
前記位相差補償板の面内位相差(R0c)と、前記液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、
1<R0c/R0p≦10
の関係を満たす
ことを特徴とする位相差補償器。
【請求項8】
前記位相差補償板に垂直な軸を回転軸として当該位相差補償板を回転させる回転手段を備えた
ことを特徴とする請求項7に記載の位相差補償器。
【請求項9】
前記位相差補償板の回転角度範囲は、±10度以下である
ことを特徴とする請求項8に記載の位相差補償器。
【請求項10】
透過光を制御する液晶パネルと、
前記液晶パネル上に設けられ、複屈折性を有する位相差補償板を備えた位相差補償器とを有し、
前記位相差補償板は、屈折率の異なる複数の層が規則的な順序で積層された光学多層膜と、高分子フィルムとの組合せ体からなり、
前記位相差補償板の面内位相差(R0c)と、前記液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、
1<R0c/R0p≦10
の関係を満たす
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項11】
前記位相差補償板は、当該位相差補償板の遅相軸と前記液晶パネルの遅相軸とのなす角が、45度以上85度以下である
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記位相差補償器は、前記液晶パネルに垂直な軸を回転軸として、前記位相差補償板を回転するための回転手段を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶パネルは、反射型液晶表示素子からなる
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記液晶パネルは、垂直配向型液晶表示素子からなる
ことを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
光源光を発生する光源と、
前記光源光を偏光分離する偏光分離素子と、
前記偏光分離された光源光を変調し画像光を形成する液晶パネルと、
前記画像光を表示するスクリーンと、
前記画像光を前記スクリーンへ投射する投射レンズとを備えた投射型画像表示装置であって、
前記液晶パネルの上には、複屈折性を有する位相差補償板を備えた位相差補償器が配置されており、
前記位相差補償板は、屈折率の異なる複数の層が規則的な順序で積層された光学多層膜と、高分子フィルムとの組合せ体からなり、
前記位相差補償板の面内位相差(R0c)と、前記液晶パネルの面内位相差(R0p)とが、
1<R0c/R0p≦10
の関係を満たす
ことを特徴とする投射型画像表示装置。
【請求項16】
前記光源光を三原色光に分離する分離光学系を有し、
前記液晶パネルおよび前記位相差補償器は、分離した各色光ごとにそれぞれ配置されている
ことを特徴とする請求項15に記載の投射型画像表示装置。
【請求項17】
前記位相差補償板を構成する光学多層膜は、各色ごとに厚みが異なっている
ことを特徴とする請求項16に記載の投射型画像表示装置。
【請求項18】
前記偏光分離素子は、ワイヤーグリッド偏光子である
ことを特徴とする請求項15に記載の投射型画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−70666(P2008−70666A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250143(P2006−250143)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】