説明

位相検出回路及びデータ処理装置

【課題】回路構成が簡素化され、低消費電力化され集積回路化する上で有利な構成の回路を得る。
【解決手段】第1クロックが各クロック入力端に与えられる複数段のフリップフロップ回路(Q1−Q7)と、第2クロックが入力される直列接続された複数段の遅延素子(D1−D6)と、前記複数段の遅延素子の出力をそれぞれ、前記複数段のフリップフロップ回路の各データ入力端に与える接続部(L1−L7)と、前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて変化する制御信号を得る信号生成回路(163)と、前記信号生成回路からの制御信号に応じて、前記第1若しくは第2クロックを相調整する位相調整信号を出力する位相調整信号出力部(164)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位相検出回路及びデータ処理装置に関するものであり、回路構成が簡素化され、そして低消費電力化され集積回路化する上で有利な構成の回路である。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号をアナログデジタル変換するアナログデジタル変換器(ADC)では、変換タイミングの基準となる基準クロックCLOCK_Aが用いられる。また、ADCから出力されたデジタルデータを受信する又はラッチする受信部では、前記デジタルデータの基準クロックに位相同期したサンプリングクロックCLOCK_FFが用いられる。前記サンプリングクロックCLOCK_FFは、前記基準クロックCLOCK_Aに位相同期する位相ロックループ(PLL)回路が用いられるのが通常である。
【0003】
しかしPLL回路を用いた場合、回路及び装置全体の大規模化、さらには消費電力の削減が困難となる。
【特許文献1】特開平9−247133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の目的は、回路構成が簡素化され、低消費電力化され集積回路化する上で有利な構成の位相検出回路及びデータ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためにこの発明の一面では、第1クロックが各クロック入力端に与えられる複数段のフリップフロップ回路と、第2クロックが入力される直列接続された複数段の遅延素子と、前記複数段の遅延素子の出力をそれぞれ、前記複数段のフリップフロップ回路の各データ入力端に与える接続部と、前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて変化する制御信号を得る信号生成回路と、前記信号生成回路からの制御信号に応じて、前記第1若しくは第2クロックを相調整する位相調整信号を出力する位相調整信号出力部を有する。
【発明の効果】
【0006】
上記の手段によると、前記第2のクロックの位相を前記第1のクロックに合わせこむ機能を簡単な構成で得ることができる。よって、回路構成が簡素化され、低消費電力化され集積回路化する上で有利な構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下図面を参照して、この発明の実施の形態を説明する。図1はこの発明に基づく位相検出回路を用いた位相制御装置及びデータ処理装置の基本構成を示す図である。例えば電圧制御発振器(VCO)11からの発振出力は、クロック分配回路12において、振幅調整され、アナログデジタル変換器(ADC)13にサンプリングクロックとして入力される。アナログデジタル変換器13では、入力端子14から入力されるアナログ信号を、前記サンプリングクロックに基づくレートでデジタル化して、デジタルデータDATA_Aを出力する。デジタルデータDATA_Aの出力タイミングは、アナログデジタル変換器13で用いられているクロックCLOCK_Aに同期している。このデジタルデータDATA_Aは、受信部としてのフリップフロップ部15にてラッチされる。ここでのラッチタイミングは、クロックCLOCK_FFである。
【0008】
ここで、デジタルデータDATA_Aの出力タイミングを決めるクロックCLOCK_Aと、クロックCLOCK_FFとは、位相同期していることが好ましい。
【0009】
しかしながら、現実の回路では、クロックCLOCK_Aと、クロックCLOCK_B(クロックCLOCK_FFに相当する)との位相差が生じる。この位相差は、アナログデジタル変換器13の仕様、レイアウトが確定するまでは値が判明しない。またこのアナログデジタル変換装置を組み込んだLSIの使用条件、製造時のばらつきなども、上記位相差に影響を及ぼしている。さらには、使用中において温度ドリフト、時間経過などでアナログデジタル変換器13の内部のクロックCLOCK_Aに位相変動が生じることがある。また、クロックCLOCK_FFにもその伝送系路の温度ドリフト、時間経過などで位相変動が生じることがある。
【0010】
このような位相変動の影響を防止するために、位相検出回路16とこれを用いた位相制御装置が設けられる。位相検出回路16は、クロックCLOCK_Aと、クロックCLOCK_B(クロックCLOCK_FFに相当する)との位相差を検出する。検出結果としての位相調整信号をクロック分配回路12内のセレクタ121の制御部に与える。セレクタ121は、VCO11の発振出力を用いて、位相差が少しずつずれた複数のクロックの中から、位相調整信号に応じていずれか1つを選択して出力する。この選択されたクロックS_CLOCKが、先のクロックCLOCK_B及びクロックCLOCK_FFとして用いられる。
【0011】
S_CLOCKが、クロックCLOCK_B及びクロックCLOCK_FFとして出力されるときバッファ素子17が用いられるが、この素子は、クロックの入力側・出力側間の回路負荷の整合と、クロックCLOCK_BとクロックCLOCK_FF間で遅延量の調整を得るためである。
【0012】
クロックCLOCK_AとクロックCLOCK_B(クロックCLOCK_FF)の位相同期を得るための手段、つまり位相検出回路16、セレクタ121、バッファ素子17に変わるループとして、セレクタ121の部分にフィルタ、バッファ素子17の部分にVCOを採用した位相ロックループを用いることも考えられる。しかしこれでは、回路規模が大きくなり、消費電力も大きくなる。そこで、この実施の形態では、上記した位相検出回路16、セレクタ121、バッファ素子17に変わるループを適用している。
【0013】
ここで位相検出回路16が、クロックCLOCK_B(クロックCLOCK_FF)の位相をクロックCLOCK_Aに同期させることの技術を説明する。
【0014】
図2は、位相検出回路16の構成を具体的に示している。入力端子161には、第1クロックとしてのクロックCLOCK_Aが入力される。入力端子162には、第2クロックとしてのクロックCLOCK_Bが入力される。
【0015】
クロックCLOCK_Aは、複数段のフリップフロップ回路Q1−Q7各クロック入力端に与えられる。クロックCLOCK_Bは、直列接続された複数段の遅延素子D1−D6の初段に入力される。入力端子のクロック及び各遅延素子D1−D6の出力クロックは、接続部としての接続ラインL1−L7を介して複数段のフリップフロップ回路Q1−Q7の各データ入力端に与えられる。
【0016】
各フリップフロップ回路Q1−Q7のデータ出力は、信号生成回路163に入力される。この信号生成回路163は、フリップフロップ回路Q1−Q7からのデータ内容に応じて、制御信号を出力し、アップダウンカウンタ164のアップカウント、ダウンカウント、出力保持動作を制御する。
【0017】
アップダウンカウンタ164は、信号生成回路163からの制御信号に応じて、クロックCLOCK_Aをクロックとして、カウンタ出力値のカウントアップ若しくはカウントダウン若しくは出力保持を実行する。このアップダウンカウンタ164の出力は、位相調整信号として先のセレクタ121に与えられる。セレクタ121は、位相調整信号に応じて、いずれか1つのクロックを選択して出力する。
【0018】
信号生成回路163には、端子165を通じて外部から強制制御信号を与えることもできる。強制制御信号は、アップダウンカウンタ164のカウント値の最大値から最小値の中心値を設定するプリセット信号として利用することができる。
【0019】
次に動作例を説明する。今、クロックCLOCK_AとクロックCLOCK_Bが図3に示すような位相関係にあるものとする。また、各フリップフロップ回路Q1−Q7に入力するクロック位相が図3のDin1−Din7に示すような位相の状態にあるものとする。
【0020】
この例であると、Din5のクロックがクロックCLOCK_Aに位相同期している。したがって、各フリップフロップ回路Q1−Q7の出力を示すと、図4に示すようにQ5出力が不定(H又はLのいずれにもなり得る)である。Q1−Q4はハイレベル(H)、Q6,Q7はローレベル(L)である。
【0021】
ここで、位相同期させる目標が、クロックCLOCK_AとQ4出力を位相同期させることであるとする。すると、図4の状態から次に制御すべき方向は、クロックCLOCK_Bを遅らせる方向へ制御しなければならない。このときは、フリップフロップ回路Q1−Q7の出力に応じて、信号生成回路163がアップダウンカウンタ164のカウント値を例えばダウンカウントの方向へ進める。これにより、セレクタ121は、遅延量の大きいほうのクロックを選択して出力する。これにより、今度は、Q1−Q3はハイレベル(H)、Q5−Q7はローレベル(L)、Q4は、不定(HまたはL)となる。
【0022】
このときは、クロックCLOCK_AとクロックCLOCK_Bの位相関係が所望の位相関係であるから、信号生成回路163は、アップダウンカウンタ164に対して、出力を保持するための制御信号を送る。
【0023】
図5には、上記した位相検出回路16の位相制御形態と、各フリップフロップ回路Q1−Q7の出力状態をテーブル化して示している。Q1−Q3がハイレベル(H)、Q5−Q7がローレベル(L)、Q4がHまたはLのとき、アップダウンカウンタ164の出力保持状態となる。
【0024】
図6には本発明の位相検出回路、およびクロック位相制御部を用いた次世代デジタルビデオディスクプレイヤー(HD DVD プレーヤー)の構成例を示している。
【0025】
601は、光ディスクであり、その記録情報は、光ビームを利用したピックアップヘッド(PUH)602により読取られる。光電変換された情報信号は、前置増幅器603で増幅され、さらに前置波形等化器604でノイズ成分を除去され、再生高周波(RF)信号としてアナログデジタル変換器13に入力される。ここでは、先に説明したクロックCLOCK_Aを用いたアナログデジタル変換が行なわれる。ここでアナログデジタル変換器13は、入力された再生RF信号をデジタルRF信号(多値化RF信号)に変換する素子である。このデジタルRF信号は、略一定時間間隔で出力される多値のデジタル値である。A/D変換の周期(時間間隔)が電圧制御発振器11の発振周波数に基づいて定まる。
【0026】
前記アナログデジタル変換器13の出力は、波形等化器605にて波形等化される。この波形等化器605は、多値化RF信号をPR(Partial Response)波形に等化するフィルタである。波形等化器605はトランスバーサルフィルタ等からなり、適応的波形等化器として機能し、再生歪みを修正すると共に、再生RF信号のオフセット(ゼロレベル/スライスレベル)及び振幅を調整するための信号調整情報をビタビ復号器606へと出力する。
【0027】
ビタビ復号器606は、等化されたデータを復号するよう構成されている。このビタビ復号器606の出力がデジタル復調データとして利用される。ビタビ復号器606の出力はまた波形等化器605ヘフィードバックされる。
【0028】
クロック位相制御装置611は、図2から図5で説明した内容であり、アナログデジタル変換器13の出力データが、波形等化器605に安定して供給されるように、クロック位相を制御している。
【0029】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1はこの発明に基づく位相検出回路を用いたデータ処理装置の基本構成を示す図である。
【図2】この発明の位相検出回路の構成例を示す図である。
【図3】図2の回路の動作例を説明するために示した各部の信号波形例である。
【図4】図2のフリップフロップ回路の出力の例を示す説明図である。
【図5】図2のフリップフロップ回路の出力の各種のパターンに対してクロックCOCK_Bの位相制御例を示す説明図である。
【図6】この発明に係るデータ処理装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
11・・・電圧制御発振器、12・・・クロック分配回路、13・・・アナログデジタル変換器、15・・・フリップフロップ部、16・・・位相検出回路、17・・・バッファ素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クロックが各クロック入力端に与えられる複数段のフリップフロップ回路と、
第2クロックが入力される直列接続された複数段の遅延素子と、
前記複数段の遅延素子の出力をそれぞれ、前記複数段のフリップフロップ回路の各データ入力端に与える接続部と、
前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて変化する制御信号を得る信号生成回路と、
前記信号生成回路からの制御信号に応じて、前記第1若しくは第2クロックを相調整する位相調整信号を出力する位相調整信号出力部と、
を有したことを特徴とする位相検出回路。
【請求項2】
前記位相調整信号出力部は、アップダウンカウンタであり、
前記信号生成回路は、前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて前記アップダウンカウンタの出力値のカウントアップ若しくはカウントダウン若しくは出力保持の制御データを出力し、前記第1若しくは第2クロックの遅延量を制御する制御信号を得ることを特徴とする請求項1記載の位相検出回路。
【請求項3】
前記信号生成回路は、外部から強制的に出力データを設定するための端子を有することを特徴とする請求項1記載の位相検出回路。
【請求項4】
アナログ信号をデジタル化するアナログデジタル変換器と前記アナログデジタル変換器の出力データをラッチする受信部とを有した装置であって、
前記アナログデジタル変換器にクロックを供給するとともに、このクロックを用いて位相がずれた複数のクロックを生成し、この複数のクロックの中から位相調整信号に応じていずれか1のクロックを選択して出力するクロック分配回路と、
前記アナログデジタル変換器で用いられている前記クロックが第1クロックとして各クロック入力端に与えられる複数段のフリップフロップ回路と、
前記クロック分配回路で選択されたクロックが第2クロックとして、入力される直列接続された複数段の遅延素子と、
前記複数段の遅延素子の出力をそれぞれ、前記複数段のフリップフロップ回路の各データ入力端に与える接続部と、
前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて変化する制御信号を得る信号生成回路と、
前記信号生成回路からの制御信号に応じて、前記クロック分配回路に前記1つのクロックを選択するための前記位相調整信号を与える位相調整信号出力部と、
を有したことを特徴とするデータ処理装置。
【請求項5】
前記位相調整信号出力部は、アップダウンカウンタであり、
前記信号生成回路は、前記複数段のフリップフロップ回路の出力データが入力され、この出力データ内容に応じて前記アップダウンカウンタの出力値のカウントアップ若しくはカウントダウン若しくは出力保持の制御データを出力し、前記第1若しくは第2クロックの遅延量を制御する制御信号を得ることを特徴とする請求項4記載のデータ処理装置。
【請求項6】
前記信号生成回路は、外部から強制的に出力データを設定するための端子を有することを特徴とする請求項4記載のデータ処理装置。
【請求項7】
前記アナログデジタル変換器の前段には、光ディスクから読取った再生高周波信号を得る前置増幅器及び前置波形等化器が設けられていることを特徴とする請求項4記載のクロック位相制御装置。
【請求項8】
前記アナログデジタル変換器の出力は、受信部に供給され、この受信部は、前記第2クロックを遅延させた第3クロックのタイミングで前記アナログ変換器の出力を受信することを特徴とする請求項4記載のデータ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−5297(P2009−5297A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166785(P2007−166785)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】