説明

位置センサ

【課題】サーチコイルに対する励磁信号のノイズ的影響を除去することでセンサ出力のS/N比を向上させ、検出誤差を低減すること。
【解決手段】ロータリーエンコーダ1は、ステータコアと、ステータコアと隙間を介して対向しながら回転可能に設けられるロータコアと、ロータコアに設けられ、所定のピッチでジグザグに折り返された励磁コイルと、ステータコアに設けられ、励磁コイルと隙間を介して対向して配置され、所定のピッチでジグザグに折り返されたサーチコイル23と、励磁コイルに供給される励磁信号を出力する励磁信号出力回路31,32,33と、励磁信号と同位相又は逆位相の信号をサーチコイル23から出力されるサーチ信号に注入して合成する注入回路35とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可動体の動作位置を検出するために使用される位置センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、各分野で広く用いられている回転角センサを挙げることができる。自動車用エンジンでは、その回転速度や回転位相を検出するために、回転角センサの一つであるクランク角センサが採用されている。
【0003】
この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されたロータリー形スケールが知られている。このスケールは、互いに対向して配置されたロータとステータとを備える。ロータには、ロータ側コイルパターン(サーチコイル)が設けられ、ステータには、サーチコイルと向かい合わせになるように対向して配置されたステータ側コイルパターン(励磁コイル)が設けられる。また、ロータには、ロータ側ロータリートランスが設けられ、ステータには、ロータ側ロータリートランスと向かい合わせになるようにステータ側ロータリートランスが設けられる。ロータは、例えば、モータ等の回転軸上に取り付けられて同軸と一体回転可能に設けられ、ステータは、モータ等のケースに固定される。ここで、励磁コイル及びサーチコイルは、それぞれジグザグ状に折り返され且つ全体が円環状に形成される。そして、このロータリー形スケールでは、励磁コイルに交流電流を流すことにより、励磁信号を発生させ、ロータ(サーチコイル)の回転角度に対して(すなわち励磁コイルとサーチコイルの相対位置関係の変化に応じた電磁結合度の変化に応じて)、周期的(周期=サーチコイルのパターンピッチ)に変化する誘導電圧がサーチコイルに発生する。この誘導電圧はロータ側ロータリートランスからステータ側ロータリートランスに伝達さ、この誘導電圧の変化量から、ロータ(すなわちロータが結合されたモータ等の回転軸)の回転角度を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−216154号公報
【特許文献2】特開2000−292205号公報
【特許文献3】特表2001−520743号公報
【特許文献4】特開平4−276517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のロータリー形スケールでは、励磁コイルで発生した励磁信号の成分を、サーチコイルがノイズとして入り込んでしまい、スケール出力のS/N比を悪化させ、検出誤差を生じさせるおそれがあった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、サーチコイルに対する励磁信号のノイズ的影響を除去することでセンサ出力のS/N比を向上させ、検出誤差を低減することを可能とした位置センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、固定される固定板と、固定板と隙間を介して対向しながら動作可能に設けられる可動板と、固定板及び可動板の一方に設けられ、所定のピッチでジグザグに折り返された励磁コイルと、固定板及び可動板の他方に設けられ、励磁コイルと隙間を介して対向して配置され、所定のピッチでジグザグに折り返されたサーチコイルと、励磁コイルに供給される励磁信号を出力する励磁信号出力回路とを備えた位置センサであって、励磁信号と同位相又は逆位相の信号をサーチコイルから出力されるサーチ信号に注入して合成する注入回路を備えたことを趣旨とする。
【0008】
上記発明の構成によれば、可動板が、固定板と隙間を介して対向しながら動作することにより、励磁コイルとサーチコイルが隙間を介して対向しながら相対的に動作する。このとき、励磁信号出力回路から出力される励磁信号により励磁コイルが励磁されることにより、励磁コイルに磁界が発生してサーチコイルに誘起電力が発生する。そして、その誘起電力が、可動板の動作変位を反映したサーチ信号として出力される。ここで、注入回路にて、サーチコイルから出力されるサーチ信号に励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成されるので、励磁コイルで発生してサーチコイルにノイズとして入り込んでしまう励磁信号の成分が、上記同位相又は逆位相の信号により打ち消される。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、注入回路により励磁信号と同位相又は逆位相の信号が合成されたサーチ信号に対し検波処理を行う検波回路と、検波回路の出力を平滑化するローパスフィルタと、ローパスフィルタの出力を矩形波化するコンパレータとを備えたことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、注入回路により励磁信号と同位相又は逆位相の信号が合成されたサーチ信号に対し検波回路により検波処理が行われ、その検波回路からの出力信号がローパスフィルタにより平滑化される。そして、そのローパスフィルタの出力がコンパレータにより矩形化される。従って、コンパレータから出力される矩形波につき、その立ち上がり又は立ち下がりの両端をサーチタイミングとして使用可能となる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、サーチコイルに対する励磁信号のノイズ的影響を除去することができ、センサ出力のS/N比を向上させることができ、検出誤差を低減することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、位置センサからの出力信号に係る分解能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係り、ロータリエンコーダを示す概略構成図。
【図2】同実施形態に係り、ロータ側コイル層を示す正面図。
【図3】同実施形態に係り、ステータ側コイル層を示す正面図。
【図4】同実施形態に係り、ロータリエンコーダの電気的構成を示すブロック回路図。
【図5】同実施形態に係り、コントローラの電気的構成を示すブロック回路図。
【図6】同実施形態に係り、励磁コイルとサーチコイルとの結合状態の変化に対応する各種信号の変化を示すタイムチャート。
【図7】第2実施形態に係り、ロータ側コイル層を示す正面図。
【図8】同実施形態に係り、ステータ側コイル層を構成する第1層を示す正面図。
【図9】同実施形態に係り、ステータ側コイル層を構成する第2層を示す正面図。
【図10】同実施形態に係り、ロータリエンコーダの電気的構成を示すブロック回路図。
【図11】同実施形態に係り、コントローラの電気的構成を示すブロック回路図。
【図12】同実施形態に係り、A信号、B信号及びZ信号の変化を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
以下、この発明の位置センサを「電磁誘導式ロータリーエンコーダ」に具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1に、この実施形態のロータリエンコーダ1を概略構成図により示す。このロータリーエンコーダ1は、一例として、エンジン2のクランクシャフト3に対応して設けられ、クランクシャフト3の動作位置(回転角度)を検出するために使用される。このロータリーエンコーダ1は、ステータ4と、ステータ4と隙間5を介して対向しながら回転可能に設けられるロータ6と、コントローラ7と、これらの部品4,6,7を収容するハウジング8とを備える。ステータ4は、本発明の固定板としてのステータコア11と、ステータコア11のロータ6との対向面側に設けられるロータ側コイル層12とを含む。ロータ6は、本発明の可動板としてのロータコア13と、ロータコア13のステータ4との対向面側に設けられるステータ側コイル層14とを含む。
【0016】
ステータコア11及びロータコア13は、互いにほぼ同じ大きさの円板形状に形成される。ステータコア11を含むステータ4はハウジング8に固定され、ロータコア13を含むロータ6はハウジング8に回転可能に支持される。ロータコア13には、ロータ側コイル層14が設けられる側面と反対の側面の中央に入力軸15が一体に設けられる。この入力軸15がハウジング8から突出して設けられる。入力軸15は、カップリング16を介してクランクシャフト3に連結される。
【0017】
図2に、ロータ側コイル層14を正面図により示す。このコイル層14は、略円環状に形成された励磁コイル21と、その励磁コイル21の内側に円環状に形成されたロータ側ロータリートランス22とを含む。励磁コイル21は、所定のピッチでジグザグに折り返された導体パターンにより形成される。ロータ側ロータリートランス22は、円形に巻き重ねられた導体パターンにより形成される。これら励磁コイル21とロータ側ロータリートランス22は、絶縁層(図示略)により覆われる。
【0018】
図3に、ステータ側コイル層12を正面図により示す。このコイル層12は、略円環状に形成されたサーチコイル23と、そのサーチコイル23の内側に円環状に形成されたステータ側ロータリートランス24とを含む。サーチコイル23は、励磁コイル21と同じピッチでジグザグに折り返された導体パターンにより形成される。ステータ側ロータリートランス24は、円形に巻き重ねられた導体パターンにより形成される。これらサーチコイル23とステータ側ロータリートランス24は、絶縁層(図示略)により覆われる。
【0019】
図4に、この実施形態のロータリエンコーダ1の電気的構成をブロック回路図により示す。コントローラ7は、ステータ4に設けられるサーチコイル23とステータ側ロータリートランス24のそれぞれに接続される。ロータ6に設けられる励磁コイル21とロータ側ロータリートランス22は互いに接続される。コントローラ7は、励磁コイル21に供給される励磁信号を出力する。出力された励磁信号は、ステータ側ロータリートランス24及びロータ側ロータリートランス22を介して励磁コイル21に供給される。この励磁信号により励磁コイル21が励磁されることで、励磁コイル21に磁界が発生してサーチコイル23に誘起電力が発生する。そして、この誘起電力が、ロータ6の回転を反映したサーチ信号としてサーチコイル23からコントローラ7へ出力される。
【0020】
図5に、この実施形態のコントローラ7の電気的構成をブロック回路図により示す。コントローラ7は、高周波発振器31、正弦波化用の第1ローパスフィルタ32、リニアアンプよりなる励磁アンプ33、位相調整回路34、注入回路35、差動アンプ36、アンプ37、同期検波回路38、第2ローパスフィルタ39及びコンパレータ40を備える。
【0021】
励磁アンプ33は、励磁コイル21に供給される高周波の励磁信号を、ステータ側ロータリートランス24へ出力するようになっている。高周波発振器31は、第1ローパスフィルタ32を介して励磁アンプ33へ高周波の信号を供給するようになっている。この高周波として、例えば「1.7MHz」の周波数が想定される。この実施形態では、高周波発振器31、第1ローパスフィルタ32及び励磁アンプ33により、本発明の励磁信号出力回路が構成される。
【0022】
差動アンプ36及びアンプ37は、励磁コイル21に供給される励磁信号に応じてサーチコイル23から出力されるサーチ信号を段階的に増幅して同期検波回路38へ供給する。同期検波回路38は、供給されたサーチ信号に対し検波処理を行うようになっている。ここで、高周波発振器31から出力される高周波の信号は、位相調整回路34により位相が調整されてから同期検波回路38へ供給されるようになっている。第2ローパスフィルタ39は、同期検波回路38から出力される検波信号を平滑化してコンパレータ40へ出力するようになっている。コンパレータ40は、平滑化された検波信号をゼロクロス波形整形により矩形波化することでゼロクロス信号に整形して出力するようになっている。
【0023】
この実施形態では、励磁アンプ33から出力される励磁信号が注入回路35に供給されるようになっている。そして、差動アンプ36により増幅されたサーチ信号には、注入回路35により、励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成されるようになっている。
【0024】
ここで、上記したロータリエンコーダ1の基本動作について説明する。図6に、(A)励磁コイル21とサーチコイル23との結合状態、(B)サーチコイル23から出力されるサーチ信号、(C)第2ローパスフィルタ39から出力される平滑化された検波信号、(D)コンパレータ40から出力されるゼロクロス信号の相互関係をタイムチャートにより示す。
【0025】
図6(A)の(1)〜(5)には、互いに対向する励磁コイル21とサーチコイル23との重なり具合、すなわち「結合状態」の変化を示す。ここで、(1)、(3)及び(5)は、励磁コイル21とサーチコイル23が電気角の位相で「90°」ずれた状態を示す。(2)は、励磁コイル21とサーチコイル23が電気角の位相でずれていない状態を示す。(4)は、励磁コイル21とサーチコイル23が電気角の位相で「180°」ずれた状態を示す。励磁コイル21とサーチコイル23のこのような結合状態の変化に対応したサーチ信号、平滑化された検波信号及びゼロクロス信号の変化を、図6(B)〜(D)に示す。図6(B)に示す高周波のサーチ信号を検波して平滑化することにより、図6(C)に示すような低周波の検波信号が得られ、それを矩形波化することにより、図6(D)に示すようなゼロクロス信号が得られる。
【0026】
以上説明したこの実施形態のロータリーエンコーダ1によれば、ロータ6が、ステータ4と隙間5を介して対向しながら回転することにより、励磁コイル21とサーチコイル23が隙間5を介して対向しながら相対的に回転する。このとき、励磁アンプ33から出力される励磁信号により励磁コイル21が励磁されることで、励磁コイル21に磁界が発生してサーチコイル23に誘起電力が発生する。そして、その誘起電力が、ロータ6の回転角度を反映したサーチ信号として出力される。
【0027】
ここで、この実施形態では、注入回路35にて、サーチコイル23から出力されるサーチ信号に励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成される。このため、励磁コイル21で発生し、サーチコイル23にノイズとして入り込んでしまう励磁信号の成分が、上記同位相又は逆位相の信号により打ち消される。すなわち、図5において、差動アンプ36から出力される高周波のサーチ信号には、ノイズによる歪みが含まれる。しかし、注入回路35により励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されることで、アンプ37に入力されるサーチ信号には、歪みが含まれていないことが分かる。このようにサーチ信号に入り込んだノイズ成分が除去される。この結果、サーチコイル23に対する励磁信号のノイズ的影響を除去することができ、ロータリーエンコーダ1としての出力信号のS/N比を向上させることができ、ロータリーエンコーダ1による検出誤差を低減することができる。
【0028】
この実施形態では、注入回路35により励磁信号と同位相又は逆位相の信号が合成され、アンプ37により増幅されたサーチ信号に対し、同期検波回路38により検波処理が行われる。その後、その同期検波回路38からの出力信号が第2ローパスフィルタ39により平滑化される。そして、その第2ローパスフィルタ39の出力がコンパレータ40により矩形化される。従って、コンパレータ40から出力される矩形波につき、その立ち上がり又は立ち下がりの両端をサーチタイミングとして使用が可能となる。このため、ロータリーエンコーダ1からの出力信号に係る分解能を向上させることができる。
【0029】
<第2実施形態>
次に、この発明の位置センサを「電磁誘導式ロータリーエンコーダ」に具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。この実施形態では、ステータ4、ロータ6及びコントローラ7の構成の点で、第1実施形態と構成が異なる。
【0031】
図7に、ロータ側コイル層14を正面図により示す。このコイル層14は、略円環状に形成されたA信号用及びB信号用の第1励磁コイル51と、その励磁コイル51の内側に円環状に形成されたA信号用及びB信号用の第1ロータ側ロータリートランス52と、そのロータ側ロータリートランス52の内側に略円環状に形成されたZ信号用の第2励磁コイル53と、その励磁コイル53の内側に円環状に形成されたZ信号用の第2ロータ側ロータリートランス54とを含む。第1励磁コイル51は、所定のピッチでジグザグに折り返された導体パターンにより形成される。第2励磁コイル53は、環状に巻き重ねられた二つのコイルパターンを円環状に配置することで形成される。第1及び第2のロータ側ロータリートランス52,54は、円形に巻き重ねられた導体パターンにより形成される。これら励磁コイル51,53とロータ側ロータリートランス52,54は、絶縁層(図示略)により覆われる。
【0032】
図8に、ステータ側コイル層12を構成する第1層12Aを正面図により示す。図9に、ステータ側コイル層12を構成する第2層12Bを正面図により示す。ステータ側コイル層12は、これら第1層12Aと第2層12Bを重ね合わせることにより構成される。
【0033】
図8に示すように、第1層12Aは、略円環状に形成されたA信号用の第1サーチコイル55と、そのサーチコイル55の内側に円環状に形成されたA信号用及びB信号用の第1ステータ側ロータリートランス56と、そのステータ側ロータリートランス56の内側に略円環状に形成されたZ信号用の第2サーチコイル57と、そのサーチコイル57の内側に円環状に形成されたZ信号用の第2ステータ側ロータリートランス58とを含む。第1サーチコイル55は、第1励磁コイル51と同じピッチでジグザグに折り返された導体パターンにより形成される。第2サーチコイル57は、環状に巻き重ねられた複数のコイルパターンをずらしながら重ねて円環状に配置することで形成される。第1及び第2のステータ側ロータリートランス56,58は、それぞれ円形に巻き重ねられた導体パターンにより形成される。これらサーチコイル55,57とステータ側ロータリートランス56,58は、絶縁層(図示略)により覆われる。
【0034】
図9に示すように、第2層12Bは、略円環状に形成されたB信号用の第3サーチコイル59を含む。第3サーチコイル59は、第1サーチコイル55と同じピッチでジグザグに折り返された導体パターンにより形成される。第3サーチコイル59は、第1層12Aの上に、第1サーチコイル55と電気角の位相で「90°」ずらしながら重ねて配置され、絶縁層(図示略)により覆われる。
【0035】
図10に、この実施形態のロータリエンコーダ1の電気的構成をブロック回路図により示す。コントローラ7は、ステータ4に設けられる第1〜第3のサーチコイル55,57,59と第1及び第2のステータ側ロータリートランス56,58のそれぞれに接続される。ロータ6に設けられる第1励磁コイル51と第1ロータ側ロータリートランス52は互いに接続される。ロータ6に設けられる第2励磁コイル53と第2ロータ側ロータリートランス54は互いに接続される。コントローラ7は、第1及び第2の励磁コイル51,53に供給される励磁信号を出力する。出力された励磁信号は、第1及び第2のステータ側ロータリートランス56,58及び第1及び第2のロータ側ロータリートランス52,54を介して第1及び第2の励磁コイル51,53に供給される。この励磁信号により第1及び第2の励磁コイル51,53が励磁されることで、それら励磁コイル51,53に磁界が発生して第1〜第3のサーチコイル55,57,59に誘起電力が発生する。そして、これら誘起電力が、ロータ6の回転を反映したサーチ信号として第1〜第3のサーチコイル55,57,59からコントローラ7へA信号、B信号及びZ信号として出力される。
【0036】
図11に、この実施形態のコントローラ7の電気的構成をブロック回路図により示す。コントローラ7は、高周波発振器31、正弦波化用の第1ローパスフィルタ32、リニアアンプよりなる第1励磁アンプ33A、第2励磁アンプ33B、位相調整回路34、第1注入回路35A、第2注入回路35B、第3注入回路35C、第1差動アンプ36A、第2差動アンプ36B、第3差動アンプ36C、第1アンプ37A、第2アンプ37B、第3アンプ37C、第1同期検波回路38A、第2同期検波回路38B、第3同期検波回路38C、第2ローパスフィルタ39A、第3ローパスフィルタ39B、第4ローパスフィルタ39C、第1コンパレータ40A、第2コンパレータ40B及び第3コンパレータ40Cを備える。
【0037】
第1励磁アンプ33Aは、第1励磁コイル51に供給される高周波の励磁信号を、第1ステータ側ロータリートランス56へ出力するようになっている。第2励磁アンプ33Bは、第2励磁コイル53に供給される高周波の励磁信号を、第2ステータ側ロータリートランス58へ出力するようになっている。高周波発振器31は、第1ローパスフィルタ32を介して第1及び第2の励磁アンプ33A,33Bへ高周波の信号を供給するようになっている。この高周波として、例えば「1.7MHz」の周波数が想定される。この実施形態では、高周波発振器31、第1ローパスフィルタ32、第1及び第2の励磁アンプ33A,33Bにより、本発明の励磁信号出力回路が構成される。
【0038】
第1差動アンプ36A及び第1アンプ37Aは、第1励磁コイル51に供給される励磁信号に応じて第1サーチコイル55から出力されるサーチ信号であるA信号を段階的に増幅して第1同期検波回路38Aへ供給する。第1同期検波回路38Aは、供給されたA信号に対し検波処理を行うようになっている。ここで、高周波発振器31から出力される高周波の信号は、位相調整回路34により位相が調整されてから第1同期検波回路38Aへ供給される。第2ローパスフィルタ39Aは、第1同期検波回路38Aから出力される検波信号を平滑化して第1コンパレータ40Aへ出力するようになっている。第1コンパレータ40Aは、平滑化された検波信号をゼロクロス波形整形により矩形波化することによりゼロクロス信号に整形してA信号として出力するようになっている。
【0039】
第2差動アンプ36B及び第2アンプ37Bは、第1励磁コイル51に供給される励磁信号に応じて第2サーチコイル57から出力されるサーチ信号であるB信号を段階的に増幅して第2同期検波回路38Bへ供給する。第2同期検波回路38Bは、B信号に対し検波処理を行うようになっている。ここで、高周波発振器31から出力される高周波の信号は、位相調整回路34により位相が調整されてから第2同期検波回路38Bへ供給される。第3ローパスフィルタ39Bは、第2同期検波回路38Bから出力される検波信号を平滑化して第2コンパレータ40Bへ出力するようになっている。第2コンパレータ40Bは、平滑化された検波信号をゼロクロス波形整形により矩形波化することによりゼロクロス信号に整形してB信号として出力するようになっている。
【0040】
第3差動アンプ36C及び第3アンプ37Cは、第2励磁コイル53に供給される励磁信号に応じて第3サーチコイル59から出力されるサーチ信号であるZ信号を段階的に増幅して第3同期検波回路38Cへ供給する。第3同期検波回路38Cは、Z信号に対し検波処理を行うようになっている。ここで、高周波発振器31から出力される高周波の信号は、位相調整回路34により位相が調整されてから第3同期検波回路38Cへ供給される。第4ローパスフィルタ39Cは、第3同期検波回路38Cから出力される検波信号を平滑化して第3コンパレータ40Cへ出力するようになっている。第3コンパレータ40Cは、平滑化された検波信号をゼロクロス波形整形により矩形波化することによりゼロクロス信号に整形してZ信号として出力するようになっている。
【0041】
この実施形態では、第1励磁アンプ33Aから出力される励磁信号が第1及び第2の注入回路35A,35Bに供給されるようになっている。そして、第1及び第2の差動アンプ36A,36Bにより増幅されたサーチ信号には、第1及び第2の注入回路35A,35Bにより、励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成されるようになっている。同様に、第2励磁アンプ33Bから出力される励磁信号が第3注入回路35Cに供給されるようになっている。そして、第3差動アンプ36Cにより増幅されたサーチ信号には、第3注入回路35Cにより、励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成されるようになっている。
【0042】
上記したロータリエンコーダ1では、高周波発振器31から出力される「1.7MHz」の高周波信号を正弦波化し、A信号及びB信号と、Z信号との2系統に分配するようになっている。ここで、A信号及びB信号は、180Xのコイル出力を同期検波した後に第1及び第2のコンパレータ40A,40Bにより矩形波化した出力である。また、Z信号は、1Xのコイル出力を同期検波した後に第3コンパレータ40Cにより矩形波化した出力である。
【0043】
図12に、A信号、B信号及びZ信号の変化をタイムチャートにより示す。図12に示すように、Z信号は機械角で「360°」の周期で変化し、A信号及びB信号は機械角で「2°」の周期で変化する。また、A信号とB信号との間には、電気角で「90°」の差がある。
【0044】
以上説明したこの実施形態のロータリーエンコーダ1によれば、第1〜第3の注入回路35A〜35Cにて、第1〜第3のサーチコイル55,57,59から出力されるサーチ信号(A信号、B信号及びZ信号)と同位相又は逆位相の信号が注入されて合成されるので、第1及び第2の励磁コイル51,53で発生し、各サーチコイル55,57,59にノイズとして入り込んでしまう励磁信号の成分が、上記同位相又は逆位相の信号により打ち消される。すなわち、図11において、各差動アンプ36A〜36Cから出力される高周波のサーチ信号(A信号、B信号及びZ信号)には、ノイズによる歪みが含まれる。しかし、各注入回路35A〜35Cにより励磁信号と同位相又は逆位相の信号が注入されることで、第1〜第3のアンプ37A〜37Cに入力されるサーチ信号(A信号、B信号及びZ信号)には、歪みが含まれていないことが分かる。このようにサーチ信号(A信号、B信号及びZ信号)に入り込んだノイズ成分が除去される。この結果、第1〜第3のサーチコイル55,57,59に対する励磁信号のノイズ的影響を除去することができ、ロータリーエンコーダ1としての出力信号のS/N比を向上させることができ、ロータリーエンコーダ1による検出誤差を低減することができる。
【0045】
また、この実施形態では、第1〜第3の注入回路35A〜35Cにより励磁信号と同位相又は逆位相の信号が合成され、第1〜第3のアンプ37A〜37Cにより増幅されたサーチ信号であるA信号、B信号及びZ信号に対し、第1〜第3の同期検波回路38A〜38Cにより検波処理が行われる。その後、それら同期検波回路38A〜38Cからの出力信号が第2〜第4のローパスフィルタ39A〜39Cにより平滑化される。そして、それらローパスフィルタ39A〜39Cの出力が第1〜第3のコンパレータ40A〜40Cにより矩形化される。従って、各コンパレータ40A〜40Cから出力される矩形波のA信号、B信号及びZ信号につき、それらの立ち上がり又は立ち下がりの両端をサーチタイミングとして使用が可能となる。このため、ロータリーエンコーダ1から出力されるA信号、B信号及びZ信号に係る分解能を向上させることができる。
【0046】
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜に変更して実施することもできる。
【0047】
(1)前記各実施形態では、ステータ4にサーチコイル23を設け、ロータ6に励磁コイル21を設けたが、ステータに励磁コイルを設け、ロータにサーチコイルを設けるように構成してもよい。
【0048】
(2)前記各実施形態では、本発明の位置センサを「電磁誘導式ロータリーエンコーダ」に具体化したが、この位置センサを「電磁誘導式リニアエンコーダ」に具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、電磁誘導式ロータリーエンコーダや電磁誘導式リニアエンコーダに利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 ロータリエンコーダ(位置センサ)
4 ステータ
5 隙間
6 ロータ
7 コントローラ
11 ステータコア(固定板)
12 ステータ側コイル層
13 ロータコア(可動板)
14 ロータ側コイル層
21 励磁コイル
23 サーチコイル
31 高周波発振器(励磁信号出力回路)
32 第1ローパスフィルタ(励磁信号出力回路)
33 励磁アンプ(励磁信号出力回路)
33A 第1励磁アンプ(励磁信号出力回路)
33B 第2励磁アンプ(励磁信号出力回路)
35 注入回路
35A 第1注入回路
35B 第2注入回路
35C 第3注入回路
38 同期検波回路
38A 第1同期検波回路
38B 第2同期検波回路
38C 第3同期検波回路
39 第2ローパスフィルタ
39A 第2ローパスフィルタ
39B 第3ローパスフィルタ
39C 第4ローパスフィルタ
40 コンパレータ
40A 第1コンパレータ
40B 第2コンパレータ
40C 第3コンパレータ
51 第1励磁コイル
53 第2励磁コイル
55 第1サーチコイル
57 第2サーチコイル
58 第2ステータ側ロータリートランス
59 第3サーチコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定される固定板と、
前記固定板と隙間を介して対向しながら動作可能に設けられる可動板と、
前記固定板及び前記可動板の一方に設けられ、所定のピッチでジグザグに折り返された励磁コイルと、
前記固定板及び前記可動板の他方に設けられ、前記励磁コイルと隙間を介して対向して配置され、前記所定のピッチでジグザグに折り返されたサーチコイルと、
前記励磁コイルに供給される励磁信号を出力する励磁信号出力回路と
を備えた位置センサであって、
前記励磁信号と同位相又は逆位相の信号を前記サーチコイルから出力されるサーチ信号に注入して合成する注入回路を備えたことを特徴とする位置センサ。
【請求項2】
前記注入回路により前記励磁信号と同位相又は逆位相の信号が合成された前記サーチ信号に対し検波処理を行う検波回路と、
前記検波回路の出力を平滑化するローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタの出力を矩形波化するコンパレータと
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−220914(P2011−220914A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92001(P2010−92001)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】