位置制御装置
【課題】フルクローズド位置制御に於いて、送り軸機構部の剛性が低下した場合でも、低周波の振動が発生することなく、安定に動作させる位置制御装置を提供する。
【解決手段】被駆動体の位置検出値Plとモータの位置検出値Pmの差分を入力とした1次遅れ回路17の出力と、モータの位置検出値Pmを加算した位置検出値を位置フィードバック値として使用する位置制御装置において、経年変化補正器30が被駆動体の振動を検出した場合に、前記1次遅れ回路17の時定数Tpが大きくなるように可変することで低周波振動の発生を抑制する。
【解決手段】被駆動体の位置検出値Plとモータの位置検出値Pmの差分を入力とした1次遅れ回路17の出力と、モータの位置検出値Pmを加算した位置検出値を位置フィードバック値として使用する位置制御装置において、経年変化補正器30が被駆動体の振動を検出した場合に、前記1次遅れ回路17の時定数Tpが大きくなるように可変することで低周波振動の発生を抑制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等における送り軸(テーブル、サドルあるいは主軸頭等の被駆動体)の位置制御装置、特に位置指令値に従い被駆動体位置をフルクローズド制御する位置制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の可動部にリニアスケールを取り付けて被駆動体位置を検出し、これを位置指令値と比較してフルクローズド制御を行う位置制御装置において、位置誤差を小さくするために以下の試みがなされている。
【0003】
過渡応答時の位置誤差を小さくするためには、速度ループと位置ループの各ゲインを高く設定することで、可動部の摺動抵抗の変化や切削負荷等の予測困難な負荷変動外乱に対して被駆動体を高精度に制御することが可能となる。
【0004】
図5に一般的なフルクローズド制御システムのブロック図を示す。リニアスケール11で検出した被駆動体12の位置検出値Plを位置フィードバック値として位置指令Pcとの偏差Pdifを減算器2が算出し、速度指令演算器3が前記位置偏差Pdifに基づき比例ゲインKpを乗算し速度指令Vc出力する。一方、モータ10に取り付けられた位置検出器9の位置検出値Pmを微分器14が微分し、モータの速度検出値Vmを出力する。前記速度指令Vcとモータ速度検出値Vmの偏差を減算器4により求め、速度偏差として出力する。この速度偏差と速度ループ比例ゲインPvと速度ループ積分ゲインIvに基づきトルク指令演算器(速度ループ比例ゲイン)5とトルク指令演算器(速度ループ積分ゲイン)6がそれぞれ速度偏差比例成分と速度偏差積分成分を出力し、加算器7が速度偏差比例成分と速度偏差積分成分を加算しトルク指令Tcを出力する。図5中の記号8は、トルク指令をフィルタリングする各種のフィルタ部と電流制御部を示す。
【0005】
ここで、簡単のため、速度指令Vcからモータの速度検出値Vmまでの伝達特性が1であるとし、被駆動体とモータがバネ係数Kbのバネで連結され、被駆動体の重量がM、被駆動体の粘性摩擦係数がDであるとしてモデル化する。その場合、図5のブロック図は図6に示すブロック図で表され、制御系全体の伝達関数は次の式1で表される。式1においてSはラプラス演算子を示す。
【0006】
Pl(S)/Pc(S)
=Kp・Kb/(M・S3+D・S2+Kb・S+Kp・Kb)・・・式1
【0007】
上式において、Kp<<(Kb/M)1/2と設定した場合、制御系全体のゲイン線図は図10に示す様な特性となる。
【0008】
近年、各種のフィルタ技術と制振制御および速度ループの高速化によって高い位置・速度ループゲインの設定が可能になった。しかし、経年変化による駆動系部品の磨耗・部品のゆるみ、連続動作時の温度上昇によるボールネジの伸びを原因としたボールネジのテンション低下などにより、送り軸機構部の剛性が低下する場合がある。その場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下し、式1における制御系全体のゲイン線図は図11に示す様な特性となる。即ち、高く設定された位置ループゲインにより機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が低下し、場合によっては被駆動体が低周波で振動してしまう課題が生じていた。また、大型マシニングセンタ等で想定以上の重量ワークを被駆動体に積載した場合においても、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下するため、同様の低周波振動が発生する。この課題に対する従来技術を次に説明する。
【0009】
図7は、低周波振動の抑制を目的とした従来技術を示す制御ブロック図である。図5と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。図7の位置検出値演算器20は、前記被駆動体位置検出値Plと前記モータ位置検出値Pmより、下記式2で表される位置を位置フィードバック値Pdとして出力する。式2でTpは1次遅れ回路17の時定数を示し、Sはラプラス演算子を示す。
Pd=Pm+(Pl−Pm)/(1+Tp・S)・・・式2
【0010】
式2において、1/(1+Tp・S)は1次遅れ回路を示し、式2の第2項の演算は図7中の1次遅れ回路17で行われる。
【0011】
式2において、Tp>>(Kb/M)1/2と設定した場合、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図12の点線で示す様な特性となり、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなる。さらに、送り軸機構部の剛性が低下した場合は、図12の実線で示す様な特性となり、図5の従来例で発生した低周波の振動に対する課題は解決している。
【0012】
図8は、低周波振動の抑制を目的とした他の従来技術を示す制御ブロック図である。図5と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。速度検出値演算器25は、前記被駆動体位置検出値Plを微分器21で微分して得た被駆動体速度検出値Vlと、前記モータ速度検出値Vmより、下記式3で表される速度を速度フィードバック値Vdとして出力する。式3でTvは1次遅れ回路23の時定数を示し、Sはラプラス演算子を示す。
Vd=Vm+(Vl−Vm)/(1+Tv・S)・・・式3
【0013】
式3において、1/(1+Tv・S)は1次遅れ回路を示し、式3の第2項の演算は図8中の1次遅れ回路23で行われる。
【0014】
式3において、Tv>>(Kb/M)1/2と設定した場合、図8のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図12の点線で示す様な特性となり、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなる。さらに、送り軸機構部の剛性が低下した場合は、図12の実線で示す様な特性となり、図5の従来例で発生した低周波の振動に対する課題は解決している。
【0015】
ここで、図7、図8における1次遅れ回路17、23の時定数Tp,Tvの最適値について説明する。機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を大きくし、制御系の安定性を確保するためには、時定数Tp,Tvの値を大きくすれば良い。しかし、過度にゲイン余裕を確保することは制御系の応答性を低下させることになる。即ち、ゲイン余裕を大きくすることは制御帯域におけるゲインを小さくすることを意味し、場合によっては、負荷変動外乱を抑制する効果や過渡応答時の位置誤差を小さくする効果が損なわれることとなる。したがって、機械共振周波数(Kb/M)1/2の低下、即ち、送り軸機構部の剛性の低下の度合いにあわせて、1次遅れ回路17,23の時定数Tp,Tvを大きくすることが好ましい。
【0016】
図9は、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくする従来技術を示す制御ブロック図である。減算器15は前記被駆動体位置検出値Plと前記モータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psを算出する。たわみ量検出器16は、たわみ量Psに応じた時定数係数Ktを算出し、時定数初期値Tp0を乗算して1次遅れ回路17で使用する時定数Tpを決定する。ここで、時定数係数Ktは、たわみ量Psが大きくなるに従いその値が大きくなるように構成されている。この時、1次遅れ回路17で使用する時定数TpはTp=Tp0・Ktであるから、たわみ量Psが大きくなるに従い、時定数Tpは大きくなる。ここで、送り軸機構部の剛性とたわみ量Psの関係に着目すると、送り軸機構部の剛性は被駆動体とモータを連結するバネ係数Kbのバネで表現されており、剛性が低下、即ち、バネによる結合が弱まれば被駆動体位置検出値Plとモータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psは大きくなる。即ち、たわみ量検出器16は、送り軸機構部の剛性が低下すると前記たわみ量Psが大きくなることに着目し、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしている。
【0017】
また、図9の従来技術では、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくすると同時に、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしている。たわみ量検出器16は、たわみ量Psに応じた係数Kを算出し、ゲイン初期値Kp0を乗算して速度指令演算器3で使用するゲインKpを決定する。ここで、係数Kは、たわみ量Psが大きくなるに従いその値が小さくなるように構成されている。この時、ゲインKpはKp=Kp0・Kであるから、たわみ量Psが大きくなるに従い、ゲインKpは小さくなる。即ち、たわみ量検出器16は、送り軸機構部の剛性が低下すると、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしている。
【0018】
送り軸機構部の剛性が低下した状態では、制御系全体のゲイン線図は図11に示す様な特性であったが、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたことにより、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図13の点線で示す様な特性となる。更に、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたことにより、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図13の実線で示す様な特性となる。結果、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を大きくし、図5の従来例で発生した低周波の振動を解決すると同時に、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tp、及び速度指令演算器3のゲインKpを変更することで、過度にゲイン余裕が確保され、制御系の応答性が著しく低下することを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平10−326114号公報
【特許文献2】特開平3−32550号公報
【特許文献3】特開2007−219689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図9に示した従来技術では、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりすることで、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を確保し、低周波振動を抑制している。ここで、送り軸機構部の剛性の低下はたわみ量Psの増加により検出される。しかしながら、たわみ量Psが増加する現象は、送り軸機構部の剛性が低下した場合や被駆動体の積載重量が増加した場合に限らず、被駆動体に作用する摺動抵抗が増加した場合にも発生する。被駆動体に作用する摺動抵抗が増加したことにより、たわみ量Psが増加した場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕に変動は無いため、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりする必要は無い。逆に、この状況下で時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりすることは、過度にゲイン余裕を確保することとなり、結果として制御系の応答性を低下させてしまう。それどころか、被駆動体に作用する摺動抵抗が軽くなることでたわみ量Psが減少した場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕に変動は無いにも関らず、1次遅れ回路17の時定数Tpを小さくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを大きくしたりすると低周波の振動が発生してしまう。
【0021】
摺動抵抗の影響について詳しく説明する。被駆動体に作用する摺動抵抗をFdとすると被駆動体位置検出値Plはモータ位置検出値Pmを用いて、下記式4で表される。式4においてSはラプラス演算子を示す。
Pl(S)={Kb/(M・S2+D・S+Kb)}・Pm(S)−{1/(M・S2+D・S+Kb)}・Fd(S)・・・式4
【0022】
式4においてFd=0、即ち被駆動体に作用する摺動抵抗を無視した場合、式4は図6に示すブロック図のバネ系モデル28と等価である。即ち、摺動抵抗の有無に関わらず、機械共振周波数は(Kb/M)1/2であり、送り軸機構部の剛性、及び被駆動体の積載重量によって決まる。
【0023】
しかし、被駆動体位置検出値Plは被駆動体に作用する摺動抵抗の影響を受ける。式4においてS=0とし、極低周波での駆動を想定した場合、式4は下記式5のように展開される。
Pl(S)=Pm(S)−{1/Kb}・Fd(S)・・・式5
【0024】
つまり、送り軸機構部の剛性低下、即ちバネ係数Kbが小さくなる、あるいは摺動抵抗Fdが大きくなることによって、被駆動体位置検出値Plとモータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psの大きさは増大する。
【0025】
更に、摺動抵抗Fdの大きさは被駆動体の速度によって変化する。例えば、被駆動体が滑りガイド機構により支持・駆動される場合、高速移動時は油膜面上を滑るように移動するため摺動抵抗Fdが小さくなる。一方、低速移動時は油膜の抵抗を受けながら進むため摺動抵抗Fdが大きくなる。この他にも、摺動抵抗Fdの大きさは温度や被駆動体の位置など種々の要因により変動するため、正確に把握することは困難である。即ち、被駆動体に摺動抵抗が作用し、変動する駆動系においては、たわみ量Psから送り軸機構部の剛性低下を検出することは困難であり、1次遅れ回路17の時定数Tpを適切に定めることができない。
【0026】
また、図9に示した従来技術では、1次遅れ回路17の時定数Tp、及び速度指令演算器3のゲインKpを変更することで、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を確保し、低周波振動を抑制している。しかし、ゲインKpを小さくすることは制御系を安定化する上で有効であるものの、指令に対する追従性が大きく損なわれてしまうといった問題がある。
【0027】
図6と同様に、速度指令Vcからモータの速度検出値Vmまでの伝達特性が1であるとすると、図7の制御系における位置偏差Pdif、被駆動体位置検出値Plは位置指令Pcを用いて、下記式6、式7で表される。式6、式7においてSはラプラス演算子を示す。
Pdif(S)=Pc(S)・{S・(1+Tp・S)・(M・S2+D・S+Kb)}/{S・(1+Tp・S+Kp・Tp)・(M・S2+D・S+Kb)+Kp・Kb}・・・式6
Pl(S)=Pc(S)・{(1+Tp・S)・Kp・Kb}/{S・(1+Tp・S+Kp・Tp)・(M・S2+D・S+Kb)+Kp・Kb}・・・式7
式6、式7において、Tp=0とした場合、図6の制御系における位置偏差Pdif、被駆動体位置検出値Plと一致する。
【0028】
反対に、1次遅れ回路17の時定数Tpを限りなく大きくした(Tp=∞とした)場合、式6、式7は下記式8、式9のように展開される。
Pdif(S)={S/(S+Kp)}・Pc(S)・・・式8
Pl(S)={Kp/(S+Kp)}・{Kb/(M・S2+D・S+Kb)}・Pc(S)・・・式9
【0029】
これは、モータ位置検出値Pmを位置フィードバック値Pdとした場合に等しい。更に、式8は、位置制御系の制御応答帯域が速度指令演算器3のゲインKpによって決定されることを意味しており、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしてもモータ位置検出値Pmの追従性は劣化しない。また、式9に関しても、バネ系モデル28の送り軸機構部の剛性が著しく低下して、Kp<(Kb/M)1/2の関係が損なわれない限り、被駆動体位置検出値Plの応答帯域は速度指令演算器3のゲインKpによって決定されることを意味している。即ち、被駆動体位置検出値Plの追従性の劣化は、送り軸機構部の剛性低下が影響するが、この影響分はゲインKpの一次遅れ要素で抑制された上での変動であるため、殆ど無いといえる。
【0030】
一方、速度指令演算器3のゲインKpを極端に小さくした(Kp=0とした)場合、式6は下記式10のように展開される。
Pdif(S)=Pc(S)・・・式10
【0031】
これは、位置制御系がまったく応答しない状態を意味している。速度指令演算器3のゲインKpを小さくすることは、送り軸機構部の剛性低下に起因した低周波振動を抑制することに対し効果的であるが、モータ位置検出値Pmの追従性までもが損なわれてしまう。当然のことながら、被駆動体位置検出値Plの追従性はモータ位置検出値Pmよりも更に送り軸機構部の剛性低下分だけ劣ったものとなる。
【0032】
本発明が解決しようとする課題は、摺動抵抗など被駆動体にトルク外乱が作用する駆動系において、その大きさが変動することにより、たわみ量の大きさも変動し、送り軸機構部の剛性低下が検出できなくなることである。また、送り軸機構部の剛性低下の度合いにあわせて、位置・速度フィードバック値を算出するための1次遅れ回路の時定数等の値を適切な値に調節することができなくなり、結果として、過度にゲイン余裕が確保され制御系の応答性が低下してしまったり、反対にゲイン余裕が少なくなり被駆動体に低周波振動が発生したりすることである。そして、本発明の目的は、送り軸機構部の剛性低下や被駆動体の積載重量の増加による機械共振周波数の低下を検出し、少なくとも、共振特性にあわせて1次遅れ回路の時定数を最適化することで、被駆動体の低周波振動を防止するとともに制御系の追従性の低下を最小限に止める位置制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、上記課題に対してなされたものであり、モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器とを含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、前記モータ位置検出器からの位置検出値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値の差であるたわみ量を算出する減算器と、前記たわみ量を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ位置検出器からの位置検出値を加算して位置フィードバック値を算出する加算器と、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分して速度フィードバック値を算出する微分器と、前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、を備え、経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制することを特徴とする。
【0034】
また、他の本発明は、モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器とを含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を位置フィードバック値とし、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分してモータ速度検出値を算出する微分器と、前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を微分して被駆動体速度検出値を算出する微分器と、前記モータ速度検出値と前記被駆動体速度検出値の差を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ速度検出値を加算して速度フィードバック値を算出する加算器と、前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、を備え、経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制することを特徴とする。
【0035】
好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前期振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくする。
【0036】
他の好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記速度指令演算器のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する。この場合、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、前記振動周波数から振動角周波数を算出しゲイン初期値を出力する演算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン初期値に対し予め設定されたゲイン低減分を繰り返し減算してゲイン推奨値を算出する減算器と、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン推奨値を前記速度指令演算器のゲイン設定値として更新出力し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記速度指令演算器のゲイン設定値の変更を行わず出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記速度指令演算器のゲイン設定値を小さくする、ことが望ましい。
【0037】
他の好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する。この場合、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、予め設定したゲイン換算初期値を出力するゲイン換算初期値設定器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン換算初期値に対し予め設定されたゲイン低減率分を繰り返し減算してゲイン換算値を算出する減算器と、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン換算値を前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値に乗算し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値の変更を行わず、出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合にのみ前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値を小さくする、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明による位置制御装置によれば、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、経年変化補正器が機構部の剛性低下に起因した振動を検出し、位置検出値演算部の1次遅れ回路の時定数Tp、または、速度検出値演算部の1次遅れ回路の時定数Tvの値を大きくする。その結果、送り軸機構部の剛性が低下しても低周波の振動を発生させることなく被駆動体を動作させることができる。更に、必要に応じて速度指令演算器、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくする。その結果、送り軸機構部の剛性が低下しても低周波の振動を発生させることなく被駆動体を動作させることができるとともに制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の経年変化補正器の実施例を示すブロック図である。
【図4A】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4B】本発明の他の実施形態における経年変化補正器を示すブロック図である。
【図4C】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4D】本発明の他の実施形態における経年変化補正器を示すブロック図である。
【図5】従来技術を示すブロック図である。
【図6】従来技術を示すブロック図である。
【図7】従来技術を示すブロック図である。
【図8】従来技術を示すブロック図である。
【図9】従来技術を示すブロック図である。
【図10】機械共振周波数が低下する前のゲイン線図例である。
【図11】機械共振周波数が低下したときのゲイン線図例である。
【図12】1次遅れ回路時定数を大きくしたときのゲイン線図例である。
【図13】1次遅れ回路時定数を大きく、速度指令演算器のゲインを小さくしたときのゲイン線図例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施例について説明する。従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。本発明の制御ブロック図を図1、図2に示す。経年変化補正器30は位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路17または23で使用する時定数Tp,Tvを可変する。
【0041】
具体的に、時定数Tp,Tvを可変する実施例を図3に示す。位置指令値Pcを2次微分器31に入力し、2階微分することで指令加速度Acを算出する。算出された指令加速度Acは比較器33により予め設定された指令加速度閾値Acrefと比較され、指令加速度Acが指令加速度閾値Acref以下の場合には、駆動系が加減速状態に無い(定常状態にある)と判断し、振動検出開始信号を振動検出器38に出力する。
【0042】
一方、振動検出器38は、振動検出開始信号の他に位置指令値Pcと被駆動体位置検出値Plとの差分により定義される被駆動体の位置誤差信号を入力に持ち、振動検出開始信号が出力されている間の被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数fpを算出し出力する。この時、振動周波数fpの検出範囲は予め定数設定されたfstからfenの範囲に限定される。更に、被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の大きさ(振幅)が予め定数設定されたSPrefの値よりも大きい場合にのみ振動が存在していると見なし、振動周波数fpとして出力する。除算器39は振動周波数fpが出力された場合に逆数である振動周期を算出し、時定数初期値T0を出力する。
【0043】
算出された時定数初期値T0は、1次遅れ回路17または23で使用する時定数Tp,Tvの初期値として設定される。時定数Tp,Tvの値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ41,44がカウントアップされ、予め定数設定された時定数増加量分ΔTp,ΔTvの加算が行われ、時定数増加量分ΔTp,ΔTvだけ時定数Tp,Tvの値が大きくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまで時定数Tp,Tvの値が大きくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけ時定数Tp,Tvの値が大きくされ、必要以上に大きな時定数が設定されることを防ぐことができる。
【0044】
なお、除算器39の出力である時定数初期値T0は、振動検出器38において異なる振動周波数fpが検知された場合に、その値が更新されるものとし、振動検出器38が振動を検出していない間は、その値が保持されるものとする。
【0045】
同様に、カウンタ41,44のカウンタ値nは、振動検出器38において異なる振動周波数fpが検知された場合に、カウントクリアされるものとし、振動検出器38が振動を検出していない間は、その値が保持されるものとする。ただし、前述のように同一の振動周波数fpを検出し続けている間はカウントアップ動作を行うものとする。
【0046】
また、振動検出器38は、振動検出開始信号が出力されている間の被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数fpを算出することを示したが、その振動検出アルゴリズムの実現にあたっては、工学的に良く知られているDFT(FFT)等を利用することによって実現できる。もしくは被駆動体の位置誤差信号が最大値あるいは最小値をとる時間の間隔を計測し、直接振動周期を検出することも可能である。なお、この場合、時定数初期値T0を単位換算のみで直接的に定めることが可能であるため、除算器39による振動周波数fpから時定数初期値T0に換算する処理は不要となる。
【0047】
また、本実施例では、経年変化補正器30により1次遅れ回路で使用する時定数Tp,Tvを可変することを前提としているが、図1、図2に示した制御ブロック17,23の伝達特性Gp(S),Gv(S)は必ずしも1次遅れ特性である必要はない。具体的には、高域遮断特性を持つフィルタであればよく、例えば移動平均演算を行うFIRフィルタであってもよい。この場合、制御系におけるサンプリング周期Tsに対し、Tp/Ts段、Tv/Ts段の移動平均を構成すれば効果的な振動抑制効果を得ることができる。
【0048】
以上のように、本発明による位置制御装置によれば、図11のように機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tp,Tvを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、図12の実線で示す様なゲイン特性となる。結果として、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。また、時定数Tp,Tvの値として必要以上に大きな値が設定されることがないため、過度にゲイン余裕が確保され制御系の応答性を低下させることもない。更に、経年変化補正器30は、被駆動体の振動を検出して時定数Tp,Tvを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【0049】
次に、他の実施形態について、図4A、図4Bを参照して説明する。図4Aは位置制御装置の制御ブロックを示した図である。この図4のブロック図で示される位置制御装置は、図1の位置制御装置に対し、経年変化補正器30が別構成の経年変化補正器51に代わり、1次遅れ回路17で使用する時定数Tpに加え、速度指令演算器3のゲインKpを可変する構成となっていることを除けば、図1に示したものと同じである。また、図4Bは図4Aで用いる経年変化補正器51の構成を示す図である。
【0050】
図4Bに示した経年変化補正器51は、位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路17で使用する時定数Tpに加え、さらに、速度指令演算器のゲインKpも可変する。
【0051】
具体的には、図4に示す経年変化補正器30は、図3を用いて説明した流れと同じ流れで、時定数Tpを可変する。また、次の手順で、速度指令演算器のゲインKpも可変する。
【0052】
振動検出器38から振動周波数fpが出力された場合、振動周波数fpを角周波数演算器50にて振動角周波数に換算し、ゲイン初期値K0を出力する。比較器48では、時定数Tpと予め定数設定された許容時定数Tprefと比較される。この比較の結果、時定数Tpが許容時定数Tprefを超えた場合に、算出されたゲイン初期値K0が、ゲイン出力切替器49にて速度指令演算器3で使用するゲインKpの初期値として設定される。
【0053】
ゲインKpの値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ53がカウントアップされ、予め定数設定されたゲイン低減量分ΔKpの減算が行われ、ゲイン低減量分ΔKpだけゲインKpの値が小さくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまでゲインKpの値が小さくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけゲインKpの値が小さくされ、必要以上に小さなゲインが設定されることを防ぐことができる。更に時定数Tpを大きくしても振動を抑制できない場合にのみゲインKpを小さくするため位置制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。
【0054】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、図1、図3を用いて説明した場合と同様の作用効果が、得られる。すなわち、本実施形態によれば、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tpを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。
【0055】
また、時定数Tpを大きくしても振動抑制できないほど機械共振周波数が低下した場合には、ゲインKpを小さくすることで振動を抑制するため、時定数Tpのみで振動抑制する場合に比べ、広範囲の周波数帯での振動抑制が可能となる。更に、時定数Tpの値として必要以上に大きな値が設定されたり、ゲインKpの値として必要以上に小さな値が設定されたりすることがないことに加え、振動抑制する上で時定数Tpによる抑制を優先的に行うため、過度にゲイン余裕が確保されることもなく、制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。また、経年変化補正器51は、被駆動体の振動を検出して時定数Tp、ゲインKpを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【0056】
次に、他の実施形態について、図4C、図4Dを参照して説明する。図4Cは位置制御装置の制御ブロックを示した図である。図2に対し、経年変化補正器30が別構成の経年変化補正器54に代わり、1次遅れ回路23で使用する時定数Tvに加え、速度指令演算器3のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvを可変する構成となっていることを除けば、図2に示したものと同じである。また、図4Dは図4Cで用いる経年変化補正器54の構成を示す図である。
【0057】
図4Dに示した経年変化補正器54は、位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路23で使用する時定数Tvに加え、さらに、速度指令演算器のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvも可変する。
【0058】
具体的には、図4Dに示した経年変化補正器54は、図3を用いて説明した流れと同じ流れで、時定数Tvを可変する。また、次の手順で速度指令演算器のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvも可変する。
【0059】
振動検出器38から振動周波数fpが出力された場合、ゲイン換算初期値設定器55はゲイン換算初期値Ksを出力する。なお、Ksには1(100%)よりも若干小さい値を設定しておくものとする。
【0060】
比較器48では、時定数Tvと予め定数設定された許容時定数Tvrefと比較される。この比較の結果、時定数Tvが許容時定数Tvrefを超えた場合に、ゲイン出力切替器49はゲイン換算初期値Ksを、ゲイン換算値Kとして出力する。このゲイン換算値Kをトルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvに乗算し、各値を更新することで、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくする。ゲイン設定値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ53がカウントアップされ、予め定数設定されたゲイン低減率分ΔKの減算が行われ、ゲイン低減率分ΔKだけゲイン換算値Kの値が小さくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまでゲイン換算値Kの値が小さくなる。そして、この比率分だけトルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvの値が小さくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけゲイン設定値が小さくされ、必要以上に小さなゲインが設定されることを防ぐことができる。更に時定数Tvを大きくしても振動を抑制できない場合にのみゲイン設定値を小さくするため速度制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。なお、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくした場合、速度フィードバック系の制御応答帯域が低下するため、速度指令演算器3のゲインKpを高い設定値のままにしておくと、位置制御系が不安定となり、振動的な応答を示す場合がある。このような場合、ゲイン換算値Kに従い、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvを低減するのと同時に、速度指令演算器3のゲインKpを低減することで解決できる。
【0061】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、図2、図3を用いて説明した場合と同様の作用効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tvを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。
【0062】
また、時定数Tvを大きくしても振動抑制できないほど機械共振周波数が低下した場合には、トルク指令演算器、速度指令演算器のゲイン設定値を小さくすることで振動を抑制するため、時定数Tvのみで振動抑制する場合に比べ、広範囲の周波数帯での振動抑制が可能となる。更に、時定数Tvの値として必要以上に大きな値が設定されたり、ゲイン設定値を必要以上に小さくしたりすることがないことに加え、振動抑制する上で時定数Tvによる抑制を優先的に行うため、過度にゲイン余裕が確保されることもなく、制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。また、経年変化補正器54は、被駆動体の振動を検出して時定数Tv、トルク指令演算器、速度指令演算器のゲインを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 上位制御装置、2,4,15,22,34,46 減算器、3 速度指令演算器(位置ループゲイン)、5 トルク指令演算器(速度ループ比例ゲイン)、6 トルク指令演算器(速度ループ積分ゲイン)、7,18,24,42,45 加算器、8 各種フィルタ部,電流制御部、9 モータ位置検出器、10 モータ、11 リニアスケール、12 被駆動体、13 ボールネジ、14,21 微分器、16 たわみ量検出器、17,23 一次遅れ回路、20 位置検出値演算器、25 速度検出値演算器、26 速度指令からモータ速度の伝達特性、27 積分器、28 バネ系モデル、30,51,54 経年変化補正器、31 2次微分器、32,35,36,37,40,43,47,52,56,57,58 係数、33,48 比較器、38 振動検出器、39 除算器、41,44,53 カウンタ、49 ゲイン出力切替器、50 角周波数演算器、55 ゲイン換算初期値設定器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等における送り軸(テーブル、サドルあるいは主軸頭等の被駆動体)の位置制御装置、特に位置指令値に従い被駆動体位置をフルクローズド制御する位置制御装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の可動部にリニアスケールを取り付けて被駆動体位置を検出し、これを位置指令値と比較してフルクローズド制御を行う位置制御装置において、位置誤差を小さくするために以下の試みがなされている。
【0003】
過渡応答時の位置誤差を小さくするためには、速度ループと位置ループの各ゲインを高く設定することで、可動部の摺動抵抗の変化や切削負荷等の予測困難な負荷変動外乱に対して被駆動体を高精度に制御することが可能となる。
【0004】
図5に一般的なフルクローズド制御システムのブロック図を示す。リニアスケール11で検出した被駆動体12の位置検出値Plを位置フィードバック値として位置指令Pcとの偏差Pdifを減算器2が算出し、速度指令演算器3が前記位置偏差Pdifに基づき比例ゲインKpを乗算し速度指令Vc出力する。一方、モータ10に取り付けられた位置検出器9の位置検出値Pmを微分器14が微分し、モータの速度検出値Vmを出力する。前記速度指令Vcとモータ速度検出値Vmの偏差を減算器4により求め、速度偏差として出力する。この速度偏差と速度ループ比例ゲインPvと速度ループ積分ゲインIvに基づきトルク指令演算器(速度ループ比例ゲイン)5とトルク指令演算器(速度ループ積分ゲイン)6がそれぞれ速度偏差比例成分と速度偏差積分成分を出力し、加算器7が速度偏差比例成分と速度偏差積分成分を加算しトルク指令Tcを出力する。図5中の記号8は、トルク指令をフィルタリングする各種のフィルタ部と電流制御部を示す。
【0005】
ここで、簡単のため、速度指令Vcからモータの速度検出値Vmまでの伝達特性が1であるとし、被駆動体とモータがバネ係数Kbのバネで連結され、被駆動体の重量がM、被駆動体の粘性摩擦係数がDであるとしてモデル化する。その場合、図5のブロック図は図6に示すブロック図で表され、制御系全体の伝達関数は次の式1で表される。式1においてSはラプラス演算子を示す。
【0006】
Pl(S)/Pc(S)
=Kp・Kb/(M・S3+D・S2+Kb・S+Kp・Kb)・・・式1
【0007】
上式において、Kp<<(Kb/M)1/2と設定した場合、制御系全体のゲイン線図は図10に示す様な特性となる。
【0008】
近年、各種のフィルタ技術と制振制御および速度ループの高速化によって高い位置・速度ループゲインの設定が可能になった。しかし、経年変化による駆動系部品の磨耗・部品のゆるみ、連続動作時の温度上昇によるボールネジの伸びを原因としたボールネジのテンション低下などにより、送り軸機構部の剛性が低下する場合がある。その場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下し、式1における制御系全体のゲイン線図は図11に示す様な特性となる。即ち、高く設定された位置ループゲインにより機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が低下し、場合によっては被駆動体が低周波で振動してしまう課題が生じていた。また、大型マシニングセンタ等で想定以上の重量ワークを被駆動体に積載した場合においても、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下するため、同様の低周波振動が発生する。この課題に対する従来技術を次に説明する。
【0009】
図7は、低周波振動の抑制を目的とした従来技術を示す制御ブロック図である。図5と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。図7の位置検出値演算器20は、前記被駆動体位置検出値Plと前記モータ位置検出値Pmより、下記式2で表される位置を位置フィードバック値Pdとして出力する。式2でTpは1次遅れ回路17の時定数を示し、Sはラプラス演算子を示す。
Pd=Pm+(Pl−Pm)/(1+Tp・S)・・・式2
【0010】
式2において、1/(1+Tp・S)は1次遅れ回路を示し、式2の第2項の演算は図7中の1次遅れ回路17で行われる。
【0011】
式2において、Tp>>(Kb/M)1/2と設定した場合、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図12の点線で示す様な特性となり、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなる。さらに、送り軸機構部の剛性が低下した場合は、図12の実線で示す様な特性となり、図5の従来例で発生した低周波の振動に対する課題は解決している。
【0012】
図8は、低周波振動の抑制を目的とした他の従来技術を示す制御ブロック図である。図5と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。速度検出値演算器25は、前記被駆動体位置検出値Plを微分器21で微分して得た被駆動体速度検出値Vlと、前記モータ速度検出値Vmより、下記式3で表される速度を速度フィードバック値Vdとして出力する。式3でTvは1次遅れ回路23の時定数を示し、Sはラプラス演算子を示す。
Vd=Vm+(Vl−Vm)/(1+Tv・S)・・・式3
【0013】
式3において、1/(1+Tv・S)は1次遅れ回路を示し、式3の第2項の演算は図8中の1次遅れ回路23で行われる。
【0014】
式3において、Tv>>(Kb/M)1/2と設定した場合、図8のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図12の点線で示す様な特性となり、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなる。さらに、送り軸機構部の剛性が低下した場合は、図12の実線で示す様な特性となり、図5の従来例で発生した低周波の振動に対する課題は解決している。
【0015】
ここで、図7、図8における1次遅れ回路17、23の時定数Tp,Tvの最適値について説明する。機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を大きくし、制御系の安定性を確保するためには、時定数Tp,Tvの値を大きくすれば良い。しかし、過度にゲイン余裕を確保することは制御系の応答性を低下させることになる。即ち、ゲイン余裕を大きくすることは制御帯域におけるゲインを小さくすることを意味し、場合によっては、負荷変動外乱を抑制する効果や過渡応答時の位置誤差を小さくする効果が損なわれることとなる。したがって、機械共振周波数(Kb/M)1/2の低下、即ち、送り軸機構部の剛性の低下の度合いにあわせて、1次遅れ回路17,23の時定数Tp,Tvを大きくすることが好ましい。
【0016】
図9は、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくする従来技術を示す制御ブロック図である。減算器15は前記被駆動体位置検出値Plと前記モータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psを算出する。たわみ量検出器16は、たわみ量Psに応じた時定数係数Ktを算出し、時定数初期値Tp0を乗算して1次遅れ回路17で使用する時定数Tpを決定する。ここで、時定数係数Ktは、たわみ量Psが大きくなるに従いその値が大きくなるように構成されている。この時、1次遅れ回路17で使用する時定数TpはTp=Tp0・Ktであるから、たわみ量Psが大きくなるに従い、時定数Tpは大きくなる。ここで、送り軸機構部の剛性とたわみ量Psの関係に着目すると、送り軸機構部の剛性は被駆動体とモータを連結するバネ係数Kbのバネで表現されており、剛性が低下、即ち、バネによる結合が弱まれば被駆動体位置検出値Plとモータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psは大きくなる。即ち、たわみ量検出器16は、送り軸機構部の剛性が低下すると前記たわみ量Psが大きくなることに着目し、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしている。
【0017】
また、図9の従来技術では、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくすると同時に、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしている。たわみ量検出器16は、たわみ量Psに応じた係数Kを算出し、ゲイン初期値Kp0を乗算して速度指令演算器3で使用するゲインKpを決定する。ここで、係数Kは、たわみ量Psが大きくなるに従いその値が小さくなるように構成されている。この時、ゲインKpはKp=Kp0・Kであるから、たわみ量Psが大きくなるに従い、ゲインKpは小さくなる。即ち、たわみ量検出器16は、送り軸機構部の剛性が低下すると、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしている。
【0018】
送り軸機構部の剛性が低下した状態では、制御系全体のゲイン線図は図11に示す様な特性であったが、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたことにより、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図13の点線で示す様な特性となる。更に、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたことにより、図7のブロック図における制御系全体のゲイン線図は図13の実線で示す様な特性となる。結果、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を大きくし、図5の従来例で発生した低周波の振動を解決すると同時に、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tp、及び速度指令演算器3のゲインKpを変更することで、過度にゲイン余裕が確保され、制御系の応答性が著しく低下することを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平10−326114号公報
【特許文献2】特開平3−32550号公報
【特許文献3】特開2007−219689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図9に示した従来技術では、送り軸機構部の剛性の低下にあわせて1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりすることで、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を確保し、低周波振動を抑制している。ここで、送り軸機構部の剛性の低下はたわみ量Psの増加により検出される。しかしながら、たわみ量Psが増加する現象は、送り軸機構部の剛性が低下した場合や被駆動体の積載重量が増加した場合に限らず、被駆動体に作用する摺動抵抗が増加した場合にも発生する。被駆動体に作用する摺動抵抗が増加したことにより、たわみ量Psが増加した場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕に変動は無いため、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりする必要は無い。逆に、この状況下で時定数Tpを大きくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを小さくしたりすることは、過度にゲイン余裕を確保することとなり、結果として制御系の応答性を低下させてしまう。それどころか、被駆動体に作用する摺動抵抗が軽くなることでたわみ量Psが減少した場合、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕に変動は無いにも関らず、1次遅れ回路17の時定数Tpを小さくしたり、速度指令演算器3のゲインKpを大きくしたりすると低周波の振動が発生してしまう。
【0021】
摺動抵抗の影響について詳しく説明する。被駆動体に作用する摺動抵抗をFdとすると被駆動体位置検出値Plはモータ位置検出値Pmを用いて、下記式4で表される。式4においてSはラプラス演算子を示す。
Pl(S)={Kb/(M・S2+D・S+Kb)}・Pm(S)−{1/(M・S2+D・S+Kb)}・Fd(S)・・・式4
【0022】
式4においてFd=0、即ち被駆動体に作用する摺動抵抗を無視した場合、式4は図6に示すブロック図のバネ系モデル28と等価である。即ち、摺動抵抗の有無に関わらず、機械共振周波数は(Kb/M)1/2であり、送り軸機構部の剛性、及び被駆動体の積載重量によって決まる。
【0023】
しかし、被駆動体位置検出値Plは被駆動体に作用する摺動抵抗の影響を受ける。式4においてS=0とし、極低周波での駆動を想定した場合、式4は下記式5のように展開される。
Pl(S)=Pm(S)−{1/Kb}・Fd(S)・・・式5
【0024】
つまり、送り軸機構部の剛性低下、即ちバネ係数Kbが小さくなる、あるいは摺動抵抗Fdが大きくなることによって、被駆動体位置検出値Plとモータ位置検出値Pmの差であるたわみ量Psの大きさは増大する。
【0025】
更に、摺動抵抗Fdの大きさは被駆動体の速度によって変化する。例えば、被駆動体が滑りガイド機構により支持・駆動される場合、高速移動時は油膜面上を滑るように移動するため摺動抵抗Fdが小さくなる。一方、低速移動時は油膜の抵抗を受けながら進むため摺動抵抗Fdが大きくなる。この他にも、摺動抵抗Fdの大きさは温度や被駆動体の位置など種々の要因により変動するため、正確に把握することは困難である。即ち、被駆動体に摺動抵抗が作用し、変動する駆動系においては、たわみ量Psから送り軸機構部の剛性低下を検出することは困難であり、1次遅れ回路17の時定数Tpを適切に定めることができない。
【0026】
また、図9に示した従来技術では、1次遅れ回路17の時定数Tp、及び速度指令演算器3のゲインKpを変更することで、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕を確保し、低周波振動を抑制している。しかし、ゲインKpを小さくすることは制御系を安定化する上で有効であるものの、指令に対する追従性が大きく損なわれてしまうといった問題がある。
【0027】
図6と同様に、速度指令Vcからモータの速度検出値Vmまでの伝達特性が1であるとすると、図7の制御系における位置偏差Pdif、被駆動体位置検出値Plは位置指令Pcを用いて、下記式6、式7で表される。式6、式7においてSはラプラス演算子を示す。
Pdif(S)=Pc(S)・{S・(1+Tp・S)・(M・S2+D・S+Kb)}/{S・(1+Tp・S+Kp・Tp)・(M・S2+D・S+Kb)+Kp・Kb}・・・式6
Pl(S)=Pc(S)・{(1+Tp・S)・Kp・Kb}/{S・(1+Tp・S+Kp・Tp)・(M・S2+D・S+Kb)+Kp・Kb}・・・式7
式6、式7において、Tp=0とした場合、図6の制御系における位置偏差Pdif、被駆動体位置検出値Plと一致する。
【0028】
反対に、1次遅れ回路17の時定数Tpを限りなく大きくした(Tp=∞とした)場合、式6、式7は下記式8、式9のように展開される。
Pdif(S)={S/(S+Kp)}・Pc(S)・・・式8
Pl(S)={Kp/(S+Kp)}・{Kb/(M・S2+D・S+Kb)}・Pc(S)・・・式9
【0029】
これは、モータ位置検出値Pmを位置フィードバック値Pdとした場合に等しい。更に、式8は、位置制御系の制御応答帯域が速度指令演算器3のゲインKpによって決定されることを意味しており、1次遅れ回路17の時定数Tpを大きくしてもモータ位置検出値Pmの追従性は劣化しない。また、式9に関しても、バネ系モデル28の送り軸機構部の剛性が著しく低下して、Kp<(Kb/M)1/2の関係が損なわれない限り、被駆動体位置検出値Plの応答帯域は速度指令演算器3のゲインKpによって決定されることを意味している。即ち、被駆動体位置検出値Plの追従性の劣化は、送り軸機構部の剛性低下が影響するが、この影響分はゲインKpの一次遅れ要素で抑制された上での変動であるため、殆ど無いといえる。
【0030】
一方、速度指令演算器3のゲインKpを極端に小さくした(Kp=0とした)場合、式6は下記式10のように展開される。
Pdif(S)=Pc(S)・・・式10
【0031】
これは、位置制御系がまったく応答しない状態を意味している。速度指令演算器3のゲインKpを小さくすることは、送り軸機構部の剛性低下に起因した低周波振動を抑制することに対し効果的であるが、モータ位置検出値Pmの追従性までもが損なわれてしまう。当然のことながら、被駆動体位置検出値Plの追従性はモータ位置検出値Pmよりも更に送り軸機構部の剛性低下分だけ劣ったものとなる。
【0032】
本発明が解決しようとする課題は、摺動抵抗など被駆動体にトルク外乱が作用する駆動系において、その大きさが変動することにより、たわみ量の大きさも変動し、送り軸機構部の剛性低下が検出できなくなることである。また、送り軸機構部の剛性低下の度合いにあわせて、位置・速度フィードバック値を算出するための1次遅れ回路の時定数等の値を適切な値に調節することができなくなり、結果として、過度にゲイン余裕が確保され制御系の応答性が低下してしまったり、反対にゲイン余裕が少なくなり被駆動体に低周波振動が発生したりすることである。そして、本発明の目的は、送り軸機構部の剛性低下や被駆動体の積載重量の増加による機械共振周波数の低下を検出し、少なくとも、共振特性にあわせて1次遅れ回路の時定数を最適化することで、被駆動体の低周波振動を防止するとともに制御系の追従性の低下を最小限に止める位置制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明は、上記課題に対してなされたものであり、モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器とを含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、前記モータ位置検出器からの位置検出値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値の差であるたわみ量を算出する減算器と、前記たわみ量を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ位置検出器からの位置検出値を加算して位置フィードバック値を算出する加算器と、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分して速度フィードバック値を算出する微分器と、前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、を備え、経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制することを特徴とする。
【0034】
また、他の本発明は、モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器とを含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を位置フィードバック値とし、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分してモータ速度検出値を算出する微分器と、前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を微分して被駆動体速度検出値を算出する微分器と、前記モータ速度検出値と前記被駆動体速度検出値の差を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ速度検出値を加算して速度フィードバック値を算出する加算器と、前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、を備え、経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制することを特徴とする。
【0035】
好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前期振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくする。
【0036】
他の好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記速度指令演算器のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する。この場合、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、前記振動周波数から振動角周波数を算出しゲイン初期値を出力する演算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン初期値に対し予め設定されたゲイン低減分を繰り返し減算してゲイン推奨値を算出する減算器と、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン推奨値を前記速度指令演算器のゲイン設定値として更新出力し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記速度指令演算器のゲイン設定値の変更を行わず出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記速度指令演算器のゲイン設定値を小さくする、ことが望ましい。
【0037】
他の好適な態様では、前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する。この場合、前記経年変化補正器は、前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、予め設定したゲイン換算初期値を出力するゲイン換算初期値設定器と、前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン換算初期値に対し予め設定されたゲイン低減率分を繰り返し減算してゲイン換算値を算出する減算器と、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン換算値を前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値に乗算し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値の変更を行わず、出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合にのみ前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値を小さくする、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明による位置制御装置によれば、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、経年変化補正器が機構部の剛性低下に起因した振動を検出し、位置検出値演算部の1次遅れ回路の時定数Tp、または、速度検出値演算部の1次遅れ回路の時定数Tvの値を大きくする。その結果、送り軸機構部の剛性が低下しても低周波の振動を発生させることなく被駆動体を動作させることができる。更に、必要に応じて速度指令演算器、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくする。その結果、送り軸機構部の剛性が低下しても低周波の振動を発生させることなく被駆動体を動作させることができるとともに制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の経年変化補正器の実施例を示すブロック図である。
【図4A】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4B】本発明の他の実施形態における経年変化補正器を示すブロック図である。
【図4C】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【図4D】本発明の他の実施形態における経年変化補正器を示すブロック図である。
【図5】従来技術を示すブロック図である。
【図6】従来技術を示すブロック図である。
【図7】従来技術を示すブロック図である。
【図8】従来技術を示すブロック図である。
【図9】従来技術を示すブロック図である。
【図10】機械共振周波数が低下する前のゲイン線図例である。
【図11】機械共振周波数が低下したときのゲイン線図例である。
【図12】1次遅れ回路時定数を大きくしたときのゲイン線図例である。
【図13】1次遅れ回路時定数を大きく、速度指令演算器のゲインを小さくしたときのゲイン線図例である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の実施例について説明する。従来例と同一要素には同一符号を付しており説明は省略する。本発明の制御ブロック図を図1、図2に示す。経年変化補正器30は位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路17または23で使用する時定数Tp,Tvを可変する。
【0041】
具体的に、時定数Tp,Tvを可変する実施例を図3に示す。位置指令値Pcを2次微分器31に入力し、2階微分することで指令加速度Acを算出する。算出された指令加速度Acは比較器33により予め設定された指令加速度閾値Acrefと比較され、指令加速度Acが指令加速度閾値Acref以下の場合には、駆動系が加減速状態に無い(定常状態にある)と判断し、振動検出開始信号を振動検出器38に出力する。
【0042】
一方、振動検出器38は、振動検出開始信号の他に位置指令値Pcと被駆動体位置検出値Plとの差分により定義される被駆動体の位置誤差信号を入力に持ち、振動検出開始信号が出力されている間の被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数fpを算出し出力する。この時、振動周波数fpの検出範囲は予め定数設定されたfstからfenの範囲に限定される。更に、被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の大きさ(振幅)が予め定数設定されたSPrefの値よりも大きい場合にのみ振動が存在していると見なし、振動周波数fpとして出力する。除算器39は振動周波数fpが出力された場合に逆数である振動周期を算出し、時定数初期値T0を出力する。
【0043】
算出された時定数初期値T0は、1次遅れ回路17または23で使用する時定数Tp,Tvの初期値として設定される。時定数Tp,Tvの値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ41,44がカウントアップされ、予め定数設定された時定数増加量分ΔTp,ΔTvの加算が行われ、時定数増加量分ΔTp,ΔTvだけ時定数Tp,Tvの値が大きくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまで時定数Tp,Tvの値が大きくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけ時定数Tp,Tvの値が大きくされ、必要以上に大きな時定数が設定されることを防ぐことができる。
【0044】
なお、除算器39の出力である時定数初期値T0は、振動検出器38において異なる振動周波数fpが検知された場合に、その値が更新されるものとし、振動検出器38が振動を検出していない間は、その値が保持されるものとする。
【0045】
同様に、カウンタ41,44のカウンタ値nは、振動検出器38において異なる振動周波数fpが検知された場合に、カウントクリアされるものとし、振動検出器38が振動を検出していない間は、その値が保持されるものとする。ただし、前述のように同一の振動周波数fpを検出し続けている間はカウントアップ動作を行うものとする。
【0046】
また、振動検出器38は、振動検出開始信号が出力されている間の被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数fpを算出することを示したが、その振動検出アルゴリズムの実現にあたっては、工学的に良く知られているDFT(FFT)等を利用することによって実現できる。もしくは被駆動体の位置誤差信号が最大値あるいは最小値をとる時間の間隔を計測し、直接振動周期を検出することも可能である。なお、この場合、時定数初期値T0を単位換算のみで直接的に定めることが可能であるため、除算器39による振動周波数fpから時定数初期値T0に換算する処理は不要となる。
【0047】
また、本実施例では、経年変化補正器30により1次遅れ回路で使用する時定数Tp,Tvを可変することを前提としているが、図1、図2に示した制御ブロック17,23の伝達特性Gp(S),Gv(S)は必ずしも1次遅れ特性である必要はない。具体的には、高域遮断特性を持つフィルタであればよく、例えば移動平均演算を行うFIRフィルタであってもよい。この場合、制御系におけるサンプリング周期Tsに対し、Tp/Ts段、Tv/Ts段の移動平均を構成すれば効果的な振動抑制効果を得ることができる。
【0048】
以上のように、本発明による位置制御装置によれば、図11のように機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tp,Tvを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、図12の実線で示す様なゲイン特性となる。結果として、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。また、時定数Tp,Tvの値として必要以上に大きな値が設定されることがないため、過度にゲイン余裕が確保され制御系の応答性を低下させることもない。更に、経年変化補正器30は、被駆動体の振動を検出して時定数Tp,Tvを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【0049】
次に、他の実施形態について、図4A、図4Bを参照して説明する。図4Aは位置制御装置の制御ブロックを示した図である。この図4のブロック図で示される位置制御装置は、図1の位置制御装置に対し、経年変化補正器30が別構成の経年変化補正器51に代わり、1次遅れ回路17で使用する時定数Tpに加え、速度指令演算器3のゲインKpを可変する構成となっていることを除けば、図1に示したものと同じである。また、図4Bは図4Aで用いる経年変化補正器51の構成を示す図である。
【0050】
図4Bに示した経年変化補正器51は、位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路17で使用する時定数Tpに加え、さらに、速度指令演算器のゲインKpも可変する。
【0051】
具体的には、図4に示す経年変化補正器30は、図3を用いて説明した流れと同じ流れで、時定数Tpを可変する。また、次の手順で、速度指令演算器のゲインKpも可変する。
【0052】
振動検出器38から振動周波数fpが出力された場合、振動周波数fpを角周波数演算器50にて振動角周波数に換算し、ゲイン初期値K0を出力する。比較器48では、時定数Tpと予め定数設定された許容時定数Tprefと比較される。この比較の結果、時定数Tpが許容時定数Tprefを超えた場合に、算出されたゲイン初期値K0が、ゲイン出力切替器49にて速度指令演算器3で使用するゲインKpの初期値として設定される。
【0053】
ゲインKpの値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ53がカウントアップされ、予め定数設定されたゲイン低減量分ΔKpの減算が行われ、ゲイン低減量分ΔKpだけゲインKpの値が小さくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまでゲインKpの値が小さくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけゲインKpの値が小さくされ、必要以上に小さなゲインが設定されることを防ぐことができる。更に時定数Tpを大きくしても振動を抑制できない場合にのみゲインKpを小さくするため位置制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。
【0054】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、図1、図3を用いて説明した場合と同様の作用効果が、得られる。すなわち、本実施形態によれば、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tpを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。
【0055】
また、時定数Tpを大きくしても振動抑制できないほど機械共振周波数が低下した場合には、ゲインKpを小さくすることで振動を抑制するため、時定数Tpのみで振動抑制する場合に比べ、広範囲の周波数帯での振動抑制が可能となる。更に、時定数Tpの値として必要以上に大きな値が設定されたり、ゲインKpの値として必要以上に小さな値が設定されたりすることがないことに加え、振動抑制する上で時定数Tpによる抑制を優先的に行うため、過度にゲイン余裕が確保されることもなく、制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。また、経年変化補正器51は、被駆動体の振動を検出して時定数Tp、ゲインKpを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【0056】
次に、他の実施形態について、図4C、図4Dを参照して説明する。図4Cは位置制御装置の制御ブロックを示した図である。図2に対し、経年変化補正器30が別構成の経年変化補正器54に代わり、1次遅れ回路23で使用する時定数Tvに加え、速度指令演算器3のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvを可変する構成となっていることを除けば、図2に示したものと同じである。また、図4Dは図4Cで用いる経年変化補正器54の構成を示す図である。
【0057】
図4Dに示した経年変化補正器54は、位置指令Pcと被駆動体位置検出値Plを入力とし、駆動系が非加減速状態にあるときの被駆動体の振動を検出する。更に、被駆動体の振動が検出された場合には、1次遅れ回路23で使用する時定数Tvに加え、さらに、速度指令演算器のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvも可変する。
【0058】
具体的には、図4Dに示した経年変化補正器54は、図3を用いて説明した流れと同じ流れで、時定数Tvを可変する。また、次の手順で速度指令演算器のゲインKp、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvも可変する。
【0059】
振動検出器38から振動周波数fpが出力された場合、ゲイン換算初期値設定器55はゲイン換算初期値Ksを出力する。なお、Ksには1(100%)よりも若干小さい値を設定しておくものとする。
【0060】
比較器48では、時定数Tvと予め定数設定された許容時定数Tvrefと比較される。この比較の結果、時定数Tvが許容時定数Tvrefを超えた場合に、ゲイン出力切替器49はゲイン換算初期値Ksを、ゲイン換算値Kとして出力する。このゲイン換算値Kをトルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvに乗算し、各値を更新することで、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくする。ゲイン設定値が更新されても振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている場合、カウンタ53がカウントアップされ、予め定数設定されたゲイン低減率分ΔKの減算が行われ、ゲイン低減率分ΔKだけゲイン換算値Kの値が小さくなる。上記カウントアップ操作は振動検出器38が振動周波数fpを検出し続けている間継続して行われるため、振動検出器38にて振動が検出されなくなるまでゲイン換算値Kの値が小さくなる。そして、この比率分だけトルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvの値が小さくなる。言い換えれば、被駆動体の振動を抑制するのに必要な分だけゲイン設定値が小さくされ、必要以上に小さなゲインが設定されることを防ぐことができる。更に時定数Tvを大きくしても振動を抑制できない場合にのみゲイン設定値を小さくするため速度制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。なお、トルク指令演算器のゲイン設定値を小さくした場合、速度フィードバック系の制御応答帯域が低下するため、速度指令演算器3のゲインKpを高い設定値のままにしておくと、位置制御系が不安定となり、振動的な応答を示す場合がある。このような場合、ゲイン換算値Kに従い、トルク指令演算器の比例ゲインPv、積分ゲインIvを低減するのと同時に、速度指令演算器3のゲインKpを低減することで解決できる。
【0061】
以上の説明から明らかなとおり、本実施形態によれば、図2、図3を用いて説明した場合と同様の作用効果が得られる。すなわち、本実施形態によれば、機械共振周波数(Kb/M)1/2が低下した場合に発生する低周波振動に対し、振動が観測されなくなるまで時定数Tvを大きくすることにより、機械共振周波数(Kb/M)1/2におけるゲイン余裕が大きくなるため、制御系を安定化し、低周波振動の発生を抑制することができる。
【0062】
また、時定数Tvを大きくしても振動抑制できないほど機械共振周波数が低下した場合には、トルク指令演算器、速度指令演算器のゲイン設定値を小さくすることで振動を抑制するため、時定数Tvのみで振動抑制する場合に比べ、広範囲の周波数帯での振動抑制が可能となる。更に、時定数Tvの値として必要以上に大きな値が設定されたり、ゲイン設定値を必要以上に小さくしたりすることがないことに加え、振動抑制する上で時定数Tvによる抑制を優先的に行うため、過度にゲイン余裕が確保されることもなく、制御系の追従性の低下を最小限に止めることができる。また、経年変化補正器54は、被駆動体の振動を検出して時定数Tv、トルク指令演算器、速度指令演算器のゲインを可変するため、摺動抵抗など被駆動体に作用するトルク外乱の大きさが変動する送り軸駆動系においても、適切に機構部の剛性低下を検出し、低周波振動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 上位制御装置、2,4,15,22,34,46 減算器、3 速度指令演算器(位置ループゲイン)、5 トルク指令演算器(速度ループ比例ゲイン)、6 トルク指令演算器(速度ループ積分ゲイン)、7,18,24,42,45 加算器、8 各種フィルタ部,電流制御部、9 モータ位置検出器、10 モータ、11 リニアスケール、12 被駆動体、13 ボールネジ、14,21 微分器、16 たわみ量検出器、17,23 一次遅れ回路、20 位置検出値演算器、25 速度検出値演算器、26 速度指令からモータ速度の伝達特性、27 積分器、28 バネ系モデル、30,51,54 経年変化補正器、31 2次微分器、32,35,36,37,40,43,47,52,56,57,58 係数、33,48 比較器、38 振動検出器、39 除算器、41,44,53 カウンタ、49 ゲイン出力切替器、50 角周波数演算器、55 ゲイン換算初期値設定器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器と、を含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、
前記モータ位置検出器からの位置検出値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値の差であるたわみ量を算出する減算器と、
前記たわみ量を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ位置検出器からの位置検出値を加算して位置フィードバック値を算出する加算器と、
前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、
前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分して速度フィードバック値を算出する微分器と、
前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、
前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、
を備え、
経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制する、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器と、を含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、
前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を位置フィードバック値とし、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、
前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分してモータ速度検出値を算出する微分器と、
前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を微分して被駆動体速度検出値を算出する微分器と、
前記モータ速度検出値と前記被駆動体速度検出値の差を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ速度検出値を加算して速度フィードバック値を算出する加算器と、
前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、
前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、
を備え、
経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制する、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前期振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
を備え、
被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記速度指令演算器のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
前記振動周波数から振動角周波数を算出しゲイン初期値を出力する演算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン初期値に対し予め設定されたゲイン低減分を繰り返し減算してゲイン推奨値を算出する減算器と、
前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン推奨値を前記速度指令演算器のゲイン設定値として更新出力し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記速度指令演算器のゲイン設定値の変更を行わず出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、
を備え、
被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記速度指令演算器のゲイン設定値を小さくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
予め設定したゲイン換算初期値を出力するゲイン換算初期値設定器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン換算初期値に対し予め設定されたゲイン低減率分を繰り返し減算してゲイン換算値を算出する減算器と、
前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン換算値を前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値に乗算し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値の変更を行わず、出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、
を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合にのみ前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値を小さくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項1】
モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器と、を含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、
前記モータ位置検出器からの位置検出値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値の差であるたわみ量を算出する減算器と、
前記たわみ量を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ位置検出器からの位置検出値を加算して位置フィードバック値を算出する加算器と、
前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、
前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分して速度フィードバック値を算出する微分器と、
前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、
前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、
を備え、
経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制する、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項2】
モータ位置検出器と、モータにより駆動される被駆動体の被駆動体位置検出器と、を含み、被駆動体の位置をフルクローズド制御する被駆動体の位置制御装置であって、
前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を位置フィードバック値とし、前記位置フィードバック値と上位装置から入力される位置指令値との偏差を比例増幅して速度指令値を出力する速度指令演算器と、
前記モータ位置検出器からの位置検出値を微分してモータ速度検出値を算出する微分器と、
前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を微分して被駆動体速度検出値を算出する微分器と、
前記モータ速度検出値と前記被駆動体速度検出値の差を入力とする1次遅れ回路の出力と前記モータ速度検出値を加算して速度フィードバック値を算出する加算器と、
前記速度フィードバック値と前記速度指令値との偏差を比例積分増幅してトルク指令値を出力するトルク指令演算器と、
前記トルク指令値に応じて前記モータを駆動する手段と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値を入力とし、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数が大きくなるように当該時定数を可変する経年変化補正器と、
を備え、
経年変化により機械共振周波数が低下しても低周波振動の発生を抑制する、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前期振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
を備え、
被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記速度指令演算器のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
前記振動周波数から振動角周波数を算出しゲイン初期値を出力する演算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン初期値に対し予め設定されたゲイン低減分を繰り返し減算してゲイン推奨値を算出する減算器と、
前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン推奨値を前記速度指令演算器のゲイン設定値として更新出力し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記速度指令演算器のゲイン設定値の変更を行わず出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、
を備え、
被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記速度指令演算器のゲイン設定値を小さくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項6】
請求項2に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、前記可変した時定数が、予め設定した許容時定数を超えた場合に、前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値が小さくなるように、当該ゲイン設定値を可変する、ことを特徴とする位置制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の位置制御装置であって、
前記経年変化補正器は、
前記位置指令値を2階微分して指令加速度を出力する2次微分器と、
前記指令加速度の大きさが閾値以下である場合に駆動系が加減速状態に無いと判断し振動検出開始信号を出力する比較器と、
前記位置指令値と前記被駆動体位置検出器からの位置検出値との差分から被駆動体の位置誤差を算出する減算器と、
前記振動検出開始信号の出力時に前記被駆動体の位置誤差信号に含まれる振動の振動周波数を算出し出力する振動検出器と、
前記振動周波数から振動周期を算出し時定数初期値を出力する除算器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記時定数初期値に対し予め設定された時定数増加分を繰り返し加算して前記1次遅れ回路の時定数を更新出力する加算器と、
予め設定したゲイン換算初期値を出力するゲイン換算初期値設定器と、
前記振動検出器が振動を検出している間、前記ゲイン換算初期値に対し予め設定されたゲイン低減率分を繰り返し減算してゲイン換算値を算出する減算器と、
前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合に前記ゲイン換算値を前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値に乗算し、前記1次遅れ回路の時定数が予め設定した許容時定数に満たない場合は前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値の変更を行わず、出力値を保持し続けるゲイン出力切替器と、
を備え、被駆動体の振動が検出された場合に前記1次遅れ回路の時定数を大きくし、可変した時定数が予め設定した許容時定数を超えた場合にのみ前記トルク指令演算器および前記速度指令演算器の少なくとも一方のゲイン設定値を小さくする、
ことを特徴とする位置制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−168926(P2012−168926A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283744(P2011−283744)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
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