説明

位置検出装置および磁気センサ出力信号検出方法

【課題】 磁気センサの出力と比較する基準値(しきい値)を容易な方法でかつ正確な値に設定することができる位置検出装置および磁気センサ出力信号検出方法を提供すること。
【解決手段】 磁気テープ8は、ピッチλにて繰り返し着磁がなされており、磁気センサ7は、磁気テープ8に対し相対的に移動可能であり、移動に伴い繰り返しなされている着磁に応じて繰り返し変化する信号を出力する。比較器32、34は、磁気センサ7の出力信号を入力し、基準値Refと比較して比較結果をパルス信号として出力する。コントローラ35は、比較器32、34からのパル信号をカウントし磁気センサ7と磁気テープ8の相対的な移動量を演算し、演算された相対的な移動量に基づきレンズ4の位置を検出する。このとき、基準値Refは、磁気センサ7が非着磁部22aにおいて出力する出力値を取得して設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置検出装置および磁気センサ出力信号検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気抵抗素子からなる磁気センサを用いた位置検出装置は、光学式エンコーダを用いた位置検出装置と比べ安価に構成できる。従って、カメラ用交換レンズにおけるレンズ位置検出用等、さまざまな分野で使用されている。このような位置検出装置は、特許文献1にあるように、磁気抵抗素子からの信号をマイクロコンピュータ等で処理するため、磁気抵抗素子からの信号をしきい値と比較し、矩形波に変換後、パルス列として出力する構成となっているものが多い。
【0003】
磁気抵抗素子からの信号をしきい値と比較し、矩形波として位置情報を得る場合、磁気抵抗素子のバラツキも考慮する必要があるため、前記しきい値が適正でないと出力パルスのDutyが50%一定とならない。その結果、精度の高い正確な位置の測定ができない。そのため、特許文献2のように、予め設定されたしきい値が得られるように抵抗等を付加し調整する方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−108485号公報
【特許文献2】特開平10−197615号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにしきい値を設定する場合、製造時に調整工程が入るため、コストアップにつながる。一方、センサ処理回路側で対応するためには、相対的に磁気抵抗素子と磁気記録媒体を移動させ、その出力パルスのDutyが50%一定となるように調整する方法が考えられる。しかし、磁気センサの取り付け角度や、接触する場合はその接触状態により、パルスのDutyが安定せず、最適なしきい値を設定することが難しかった。
【0006】
本発明は、磁気センサの出力と比較する基準値(しきい値)を容易な方法でかつ正確な値に設定することができる位置検出装置および磁気センサ出力信号検出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、位置検出対象物の位置を検出する位置検出装置に適用され、所定のピッチにて繰り返し着磁がなされている磁気記録手段と、磁気記録手段に対し相対的に移動可能であり、移動に伴い繰り返しなされている着磁に応じて出力が繰り返し変化する磁気センサ手段と、磁気センサ手段の出力を入力し、所定の基準値と比較して比較結果を出力する比較手段と、比較手段の出力に基づき磁気記録手段と磁気センサ手段の相対的な移動量を演算し、演算された相対的な移動量に基づき位置検出対象物の位置を検出する制御手段とを備え、所定の基準値は、磁気センサ手段が実質的に着磁がないところで出力する出力値とすることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、磁気記録手段は、所定のピッチにて繰り返し着磁がなされている第1の領域と実質的に着磁がない第2の領域とを有し、磁気センサ手段は、第1の領域および第2の領域の範囲を移動可能であり、制御手段は、磁気センサ手段が第2の領域へ移動したときに出力する値を取得し、取得した値を所定の基準値として比較手段に出力することを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項2に記載の位置検出装置において、制御手段は、A/D変換手段と記憶手段とD/A変換手段とを有し、磁気センサ手段が第2の領域へ移動したときに出力するアナログ値をA/D変換手段を介してデジタル値として取得し、取得したデジタル値を記憶手段に記憶し、記憶手段に記憶したデジタル値をD/A変換手段によりアナログ値に変換して所定の基準値として比較手段に出力することを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項2から3のいずれかに記載の位置検出装置において、磁気記録手段は、磁気テープ状部材で構成され、第2の領域は、第1の領域に隣接して磁気テープ状部材の端部に形成されていることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の位置検出装置において、磁気センサ手段は、磁気記録手段の繰り返し着磁がなされている方向に配列した複数の磁気抵抗素子からなることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、レンズ鏡筒に適用され、請求項1から5のいずれかに記載の位置検出装置を備え、磁気記録手段は、レンズ鏡筒内を移動するレンズおよびレンズ鏡筒筐体のいずれか一方に設けられ、磁気センサ手段は、レンズおよびレンズ鏡筒筐体のいずれか他方に設けられ、制御手段は、演算された磁気記録手段と磁気センサ手段の相対的な移動量に基づき位置検出対象物であるレンズの位置を検出して出力することを特徴とするものである。
請求項7の発明は、2つの磁気抵抗素子を直列に接続しその接続中点から信号を出力する構成と等価な磁気センサの出力信号を検出する磁気センサ出力信号検出方法に適用され、磁気センサを実質的に磁界のないところに移動させ、そのときの磁気センサからの出力値を取得して記憶手段に記憶し、記憶手段に記憶した出力値を基準値として比較手段へ出力し、比較手段は、磁界内を移動する磁気センサからの出力信号を入力し、基準値と比較して比較結果を出力すること特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成しているので、次のような効果を奏する。
磁気センサの出力と比較する基準値(しきい値)を容易な方法でかつ正確な値に設定することができる。その結果、容易かつ正確にDuty50%のパルスを生成することができ、精度の高い位置検出などが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施の形態の位置検出装置を使用したレンズ鏡筒1、およびこのレンズ鏡筒1が取り付けられたカメラ2を示す図である。レンズ鏡筒1内には、ガイドレール3a,3bに沿って移動するレンズ4、レンズ4の移動を駆動する駆動部5、駆動部5の制御およびレンズ鏡筒1内の制御全般を行う制御部6が設けられている。
【0010】
さらに、レンズ鏡筒1内を移動するレンズ4に磁気センサ7が設けられ、レンズ鏡筒1の筐体9側に磁器記録媒体である磁気テープ8が筐体9に固定するように設けられている。筐体9は、レンズ鏡筒1のボディ(本体)部あるいはレンズ鏡筒1のケース部と言ってもよい。
【0011】
磁気センサ7は、レンズ4の移動に伴い磁気テープ8上を十分に密着して移動し、レンズ4の移動に伴って変化する信号を制御部6へ出力する。制御部6は、磁気センサ7からの出力を受信し、所定の演算を行ってレンズ4の位置を検出し、検出したレンズ4の位置情報をカメラ2のカメラ制御部10へ出力する。カメラ制御部10は、受信したレンズ4の位置情報を合焦などの種々の制御に使用する。
【0012】
次に、磁気センサ7から出力される信号について説明する。
【0013】
図2は、磁気センサ7および磁気テープ8の詳細を示す図である。磁気テープ8は、着磁部21の領域と着磁部21の両端に非着磁部22a、22bの領域が設けられている。着磁部21は、図2の横方向すなわち磁気テープ8の長手方向に、所定のピッチλでNS,SN、NS・・・と交互に繰り返し着磁されている。非着磁部22a、22bは、磁性材料は塗布されているが着磁(磁化)されていない領域である。ピッチλは例えば100μ、磁気テープ8の長さは例えば50mmとする。
【0014】
着磁部21は、磁気センサ7がその上を移動することにより出力が変化する磁場(磁界)を有する領域である。非着磁部22a、22bは、着磁部21に対し相対的に磁場が小さく、磁気センサ7の出力が変化しない領域である。非着磁部は、非磁性部と言ってもよい。すなわち、実質的に磁界のない領域である。
【0015】
レンズ4は、駆動部5により着磁部21および非着磁部22a、22bの範囲にわたって移動可能に構成されている。すなわち、磁気センサ7は着磁部21および非着磁部22a、22bの範囲にわたって移動可能である。ただし、レンズ4の位置を検出すべき範囲は、着磁部21の範囲である。
【0016】
図3は、磁気センサ7の出力波形および後述する比較器の出力波形を示す図である。本実施の形態の磁気センサ7は、着磁部21の範囲を移動すると、図3(a)、図3(b)に示す信号波形の信号を出力する。
【0017】
本実施の形態の磁気センサ7は、4つの磁気抵抗素子(MR素子)R1、R2、R3、R4から構成されている。図4は、磁気センサ7の等価回路を示す図である。4つの磁気抵抗素子R1、R2、R3、R4はブリッジ回路を構成している。ただし、2つの磁気抵抗素子R1、R2に着目すれば、電源VccとGND間に直列に接続され、その中点からB相信号が出力されている。同様に、2つの磁気抵抗素子R3、R4に着目すれば、電源VccとGND間に直列に接続され、その中点からA相信号が出力されている。
【0018】
図5は、磁気抵抗素子R1、R2、R3、R4の物理的配置を示す図である。4つの磁気抵抗素子は、磁気テープ8の着磁方向すなわち図2の横方向に、磁気抵抗素子R1、磁気抵抗素子R3、磁気抵抗素子R2、磁気抵抗素子R4の順に、λ/4の間隔で配置されている。磁気抵抗素子R1〜R4がこのように配置されることにより、それぞれの磁気抵抗素子は、磁気テープ8の着磁による磁界の影響を異なって受ける。
【0019】
図6は、磁気抵抗素子の磁界感度曲線を示す図である。すなわち、磁気抵抗素子の抵抗値と磁界強度との関係を示す図である。図6は、磁界強度が磁界の方向にかかわらず大きくなることにより磁気抵抗素子の抵抗値が小さくなることを示している。このような特性を示す磁気抵抗素子R1、R2、R3、R4が図5のように配置された磁気センサ7が図2の着磁部21を移動すると、図3(a)図3(b)のような信号を出力する。
【0020】
図7は、磁気センサ7、磁気テープ8、および、制御部6のブロック図を示す図である。磁気センサ7のA相出力信号は、増幅器31で所定の増幅率で増幅され、比較器32に入力される。比較器32は、増幅器31からの信号をD/A変換器37から出力されるアナログ基準値Refと大小を比較し、その比較結果の信号Y1をコントローラ35に出力する。同様に、磁気センサ7のB相出力信号は、増幅器33で所定の増幅率で増幅され、比較器34に入力される。比較器34は、増幅器33からの信号をD/A変換器37から出力されるアナログ基準値Refと大小を比較し、その比較結果の信号Y2をコントローラ35に出力する。
【0021】
図3(c)図3(d)は、信号Y1、Y2の波形を示す。信号Y1は、増幅器31で増幅されたA相出力信号が、アナログ基準値Refより大きくなるとHigh(ハイ)になり、小さくなるとLow(ロー)になる。同様に、信号Y2は、増幅器33で増幅されたB相出力信号が、アナログ基準値Refより大きくなるとHigh(ハイ)になり、小さくなるとLow(ロー)になる。
【0022】
本実施の形態では、このアナログ基準値(しきい値)Refの設定に特徴を有する。図8は、アナログ基準値Refを設定する処理のフローチャートを示す図である。制御部6のコントローラ35が、所定のプログラムを実行することにより処理を実行する。コントローラ35は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、内部に上記所定のプログラムを格納するメモリ38を有する。
【0023】
ステップS1では、磁気センサ7を非着磁部22a(あるいは非着磁部22b)へ駆動する。具体的には、駆動部5を使用してレンズ4を非着磁部22aまで駆動する。ステップS2では、非着磁部22aにおける磁気センサ7のA相出力信号およびB相出力信号の出力値を取得する。A相出力信号およびB相出力信号は、増幅器31および増幅器33でそれぞれ所定の増幅率で増幅され、A/D変換器36でA/D変換されてコントローラ35により読み込まれる。
【0024】
ステップS3では、デジタル変換されたA相出力信号値およびB相出力信号値を平均し、平均した値を基準値Refとしてメモリ38に記憶する。ステップS4では、メモリ38に記憶された基準値RefをD/A変換器37へ出力する。D/A変換器37は、入力されたデジタルデータである基準値Refをアナログ基準値Refへ変換し、比較器32および比較器34へ出力する。
【0025】
このようにして、比較器32および比較器34への基準値Refが設定された後、レンズ4の位置の検出の処理がなされる。図9は、レンズ4の位置を検出する処理のフローチャートを示す図である。コントローラ35が、所定のプログラムを実行することにより行う。
【0026】
ステップS11では、信号Y1および信号Y2のパルス数をカウントする。ステップS12では、カウントしたパルス数に基づき、レンズ4の所定の基準位置からの移動量を演算する。レンズ4は、所定の基準位置を基準に駆動部5により駆動される。焦点調節などの通常の駆動範囲は、磁気テープ8の着磁部21の範囲である。レンズ4が移動することにより、磁気センサ7は磁気テープ8の着磁部21の表面を不図示の保護層を介して密着しながら滑るように移動する。これにより、図3(a)図3(b)に示す波形の信号を出力する。
【0027】
本実施の形態では、磁気センサ7は、位相がλ/4ずれたA相出力信号およびB相出力信号の2つの信号を出力する。このように位相がずれた2つの信号を評価することにより、磁気センサ7がどちらの方向へ移動しているかを把握することができる。これにより、カウントするパルス数を加算したり減算したりし、現在の位置に相当するパルス数を得ることができる。そして、取得したパルス数とピッチλとを使用して、所定の基準位置からの移動量を得ることができる。
【0028】
ステップS13では、ステップS12で得たレンズ4の移動量からレンズ位置を演算し、レンズ位置情報をカメラ2のカメラ制御部10へ出力する。カメラ制御部10は、受信したレンズ4の位置情報を、焦点調節などの種々の制御に使用する。なお、位相がλ/4ずれた2つの波形を使用することにより、検出精度も2倍となる。
【0029】
図3(a)を参照して、A相出力信号についてさらに説明をする。図3(a)では、A相出力信号は、基準値Refを基準に+−する波長λの正弦波を示している。この基準値Refは、磁気抵抗素子R3と磁気抵抗素子R4の特性がまったく等しいのであれば、図4の等価回路からも分かるようにVcc/2となるのが通常である。
【0030】
しかし、磁気抵抗素子のばらつきなどから必ずしもVcc/2を基準に+−する正弦波とはならない。また、磁気センサ7の取り付け角度や、磁気センサ7が磁気テープ8と接触する場合にはその接触状態により、出力信号にもばらつきが生じる。その結果、基準値Refを単にVcc/2に対応した値、すなわち増幅器31の増幅率に対応した係数を掛けた値とすると、パルス信号である信号Y1のDutyが、50%を達成することができない。その結果、精度の高い測定が困難となる。
【0031】
そこで、本実施の形態では、上述したように、磁気センサ7を着磁のないところへ駆動し、そこで得られる磁気センサ7の出力信号を基準値Refとするようにした。着磁のないところでは、磁気抵抗素子R3と磁気抵抗素子R4は、同じように磁界の影響を受けない。このことは、着磁部21において、磁気抵抗素子R3と磁気抵抗素子R4が、N極と隣接するS極、N極と隣接するN極、S極と隣接するS極から同じ磁界の強さを受けることに相当する。B相出力信号についても同様である。
【0032】
以上のように構成された本実施の形態のレンズ鏡筒1は、次のような効果を奏する。
(1)磁気センサ7からの出力信号を比較する基準値Refを、磁気センサ7が実質的に着磁のないところ、すなわち実質的に磁界あるいは磁場のないところで出力する出力値としたので、簡単な構成で正確に比較器32比較器34の出力信号のDutyを50%にすることができる。その結果、製造時のコストアップを招くことなく精度の高いレンズ位置の検出を可能とする。
(2)姿勢差や接触状態といった磁気センサ7と磁気テープ(磁気記録媒体)8の位置関係に寄らず、原理的に磁気センサ7が有している出力の中心値をしきい値とするパルスを出力できるようになる。そのため、磁気センサ7の磁気抵抗素子を調整することなく、磁気抵抗素子のばらつきを補正することができ、信号処理回路側で安定した位置検出を行うことができる。すなわち、2つの直列に接続された磁気抵抗素子の抵抗値等のばらつきによる中点電位のばらつきに応じた値を基準値(しきい値)とするので、磁気センサ7の姿勢変動が多少あっても、正確にDuty50%のパルス信号を得ることができる。
(3)磁気テープ8の着磁部21に隣接する端部に非着磁部22a、22bを設けるようにしたので、磁気センサ7すなわちレンズ4を駆動端まで移動するだけで容易に着磁のないところでの出力を得ることができる。
(4)着磁のないところでの磁気センサ7の出力をA/D変換器36で取得して記憶し、次に、記憶したデータに基づきD/A変換器37でアナログ信号に変換して基準値Refとして出力するようにしたので、基準値Refを容易な構成で設定することができる。また、レンズ鏡筒1の使用条件異なる場合にも、容易に基準値Refの設定を変更することができる。その結果、使用条件の変化に応じて容易に精度の高いレンズ位置の測定を行うことができる。
(5)磁気センサ7に磁気抵抗素子を使用しているので、安価に精度の高いレンズ位置の検出を行うことができる。
(6)磁気センサ7は、4つの磁気抵抗素子からなるブリッジ型を使用している。すなわち、2つの磁気抵抗素子を直列に接続しその接続中点から信号を出力する構成を2組使用し、その出力信号は位相がλ/4ずれるように構成されている。これにより、磁気センサ7の移動方向を把握しながら位置検出分解能を2倍とすることが可能である。
【0033】
上記の実施の形態では、レンズ鏡筒1内のレンズ4の位置を検出する例を説明をしたが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。位置検出対象は、どのようなものであってもよい。すなわち、本発明は、あらゆる位置検出対象物の位置を検出する位置検出装置全般に適用することができる。
【0034】
上記の実施の形態では、磁気テープ8上、すなわち磁性材料が塗布されている(存在する)ところで着磁をしていない領域を非着磁部22a、22bとする例を説明をしたが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。磁性材料を塗布しないようにしてもよい。また、磁気テープ8自体がないところを非着磁部としてもよい。すなわち、磁気センサ7に対して実質的に磁界の影響を与えないような領域が非着磁部である。
【0035】
上記の実施の形態では、磁気テープ8の着磁の状態を図2のように説明をした。また、磁気センサ7の磁気抵抗素子の配置の状態を図5のように説明をした。しかし、必ずしもこれらの内容に限定する必要はない。磁気センサ7が、着磁部21上を移動することにより所定の基準値を基準に+−するような信号が出力されるようなものであれば、どのような着磁状態およびどのような磁気抵抗素子の配置状態であってもよい。
【0036】
上記の実施の形態では、4つの磁気抵抗素子からなる磁気センサ7の例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。2つの磁気抵抗素子からなる磁気センサであってもよいし、6個以上の磁気抵抗素子からなる磁気センサであってもよい。
【0037】
上記の実施の形態では、磁気抵抗素子からなる磁気センサ7の例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。他の素子からなる磁気センサであってもよい。すなわち、磁気センサが、着磁部21上を移動することにより所定の基準値を基準に+−するような信号が出力するようなものであれば、どのようなものであってもよい。
【0038】
上記の実施の形態では、焦点調節制御のためにレンズ鏡筒1内のレンズ4の位置を検出する例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。ズームレンズのレンズ位置を検出する場合であってもよい。
【0039】
上記の実施の形態では、レンズ鏡筒1の筐体9側に磁気テープ8を固定し、移動するレンズ4側に磁気センサ7を取り付ける例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。レンズ鏡筒1の筐体9側に磁気センサ7を設け、移動するレンズ4側の支持部等に磁気テープ8を貼りつける場合であってもよい。すなわち、磁気センサ7と着磁部21が相対的に移動する関係であればどのような態様であってもよい。
【0040】
上記の実施の形態では、取得したA相出力信号値およびB相出力信号値を平均した値を基準値Refとする例を説明したが、必ずしもこの内容に限定する必要はない。D/A変換器37を2回路設け、磁気センサ7が非着磁部22aに位置するときに取得したA相出力信号値およびB相出力信号値を、それぞれの基準値Refとするようにしてもよい。
【0041】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0042】
以下、請求項の構成要素と上記実施の形態の構成要素との対応付けについて説明する。本発明の位置検出対象物はレンズ4に対応し、磁気記録手段は磁気テープ8に対応し、磁気センサ手段は磁気センサ7に対応し、所定の基準値は基準値Refに対応し、比較手段は比較器32、34に対応し、制御手段はコントローラ35に対応する。第1の領域は着磁部21に対応し、第2の領域は非着磁部22a、22bに対応する。A/D変換手段はA/D変換器36に対応し、記憶手段はメモリ38に対応し、D/A変換手段はD/A変換器37に対応する。複数の磁気抵抗素子は磁気抵抗素子R1〜R4に対応する。なお、これらの対応付けの説明はあくまで一例であり、本発明はこの対応付けに限定して解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施の形態の位置検出装置を使用したレンズ鏡筒1、およびこのレンズ鏡筒1が取り付けられたカメラ2を示す図である。
【図2】磁気センサ7および磁気テープ8の詳細を示す図である。
【図3】磁気センサ7の出力波形および後述する比較器の出力波形を示す図である。
【図4】磁気センサ7の等価回路を示す図である。
【図5】磁気抵抗素子R1、R2、R3、R4の物理的配置を示す図である。
【図6】磁気抵抗素子の磁界感度曲線を示す図である。
【図7】磁気センサ7、磁気テープ8、および、制御部6のブロック図を示す図である。
【図8】アナログ基準値Refを設定する処理のフローチャートを示す図である。
【図9】レンズ4の位置を検出する処理のフローチャートを示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 レンズ鏡筒
2 カメラ
3a,3b ガイドレール
4 レンズ
5 駆動部
6 制御部
7 磁気センサ
8 磁気テープ
9 筐体
10 カメラ制御部
21 着磁部
22a、22b 非着磁部
31、33 増幅器
32、34 比較器
35 コントローラ
36 A/D変換器
37 D/A変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出対象物の位置を検出する位置検出装置であって、
所定のピッチにて繰り返し着磁がなされている磁気記録手段と、
前記磁気記録手段に対し相対的に移動可能であり、移動に伴い前記繰り返しなされている着磁に応じて出力が繰り返し変化する磁気センサ手段と、
前記磁気センサ手段の出力を入力し、所定の基準値と比較して比較結果を出力する比較手段と、
前記比較手段の出力に基づき前記磁気記録手段と前記磁気センサ手段の相対的な移動量を演算し、前記演算された相対的な移動量に基づき前記位置検出対象物の位置を検出する制御手段とを備え、
前記所定の基準値は、前記磁気センサ手段が実質的に着磁がないところで出力する出力値とすることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出装置において、
前記磁気記録手段は、前記所定のピッチにて繰り返し着磁がなされている第1の領域と実質的に着磁がない第2の領域とを有し、
前記磁気センサ手段は、前記第1の領域および前記第2の領域の範囲を移動可能であり、
前記制御手段は、前記磁気センサ手段が前記第2の領域へ移動したときに出力する値を取得し、前記取得した値を前記所定の基準値として前記比較手段に出力することを特徴とする位置検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の位置検出装置において、
前記制御手段は、A/D変換手段と記憶手段とD/A変換手段とを有し、前記磁気センサ手段が前記第2の領域へ移動したときに出力するアナログ値を前記A/D変換手段を介してデジタル値として取得し、前記取得したデジタル値を前記記憶手段に記憶し、前記記憶手段に記憶したデジタル値を前記D/A変換手段によりアナログ値に変換して前記所定の基準値として前記比較手段に出力することを特徴とする位置検出装置。
【請求項4】
請求項2から3のいずれかに記載の位置検出装置において、
前記磁気記録手段は、磁気テープ状部材で構成され、
前記第2の領域は、前記第1の領域に隣接して前記磁気テープ状部材の端部に形成されていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の位置検出装置において、
前記磁気センサ手段は、前記磁気記録手段の繰り返し着磁がなされている方向に配列した複数の磁気抵抗素子からなることを特徴とする位置検出装置。
【請求項6】
レンズ鏡筒であって、
請求項1から5のいずれかに記載の位置検出装置を備え、
前記磁気記録手段は、レンズ鏡筒内を移動するレンズおよびレンズ鏡筒筐体のいずれか一方に設けられ、
前記磁気センサ手段は、前記レンズおよび前記レンズ鏡筒筐体のいずれか他方に設けられ、
前記制御手段は、前記演算された前記磁気記録手段と前記磁気センサ手段の相対的な移動量に基づき前記位置検出対象物である前記レンズの位置を検出して出力することを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項7】
2つの磁気抵抗素子を直列に接続しその接続中点から信号を出力する構成と等価な磁気センサの出力信号を検出する磁気センサ出力信号検出方法であって、
前記磁気センサを実質的に磁界のないところに移動させ、そのときの前記磁気センサからの出力値を取得して記憶手段に記憶し、
前記記憶手段に記憶した出力値を基準値として比較手段へ出力し、
前記比較手段は、磁界内を移動する前記磁気センサからの出力信号を入力し、前記基準値と比較して比較結果を出力すること特徴とする磁気センサ出力信号検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−242709(P2006−242709A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57710(P2005−57710)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】