説明

位置計測システム

【課題】 計測ノイズを除去するとともに測定対象点をレスポンス良く追随することができる位置計測システムを提供する。
【解決手段】 本位置計測システムは、同心円状干渉模様光5を投射するポインター3と、ポインター3から投射された干渉模様光を検出する検出装置10,11と、検出装置10,11から得られた信号に基づいてディスプレイ100に投射された干渉模様光の中心の位置座標を求めるコンピュータ12とを備える。コンピュータ12は、求めた位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、第2の位置座標値に基づいて指示位置6を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置や方向を計測する際に問題となるノイズを除去して対象点の位置座標を求める位置計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、位置計測システムは各種のものが提案されているが、例えば特許文献1に記載されているシステムは、同心円状の干渉模様光を投射する指示装置と、指示装置から投射された干渉模様光を検出する検出装置と、検出装置から得られた信号に基づいて対象物に投射された干渉模様光の中心位置座標を求める演算装置とを備え、この中心位置座標を対象点の位置座標として計測する。このシステムは例えばポインターや位置情報システムなどに利用することができる。具体的には、例えば、指示装置をポインターとして用いることでコンピュータへの入力インタフェースとして利用することができる。
【0003】
この種の位置計測システムでは、位置や方向を計測する際に乗るノイズが問題となる。このため、測定値などにランダムに乗るノイズを除去し、真の値を算出する方法として、カルマンフィルターが良く利用される。しかし、カルマンフィルターを利用したノイズ除去において、変動の大きなノイズを除去するためには、観測値のノイズ分散を大きく設定する必要がある。しかし、そのように設定すると、測定値の俊敏な変化はノイズとして処理されるために、測定値が正しい値を示さないことがある。また、逆に観測値のノイズ分散を小さく設定すると真の値にノイズが混入しやすく、正常な値を示さないことがある。以下に例を挙げて示す。
【0004】
例えば、人間が指示装置(ポインター)で指し示した位置を計測する位置計測システムでは、計測した指示位置(指示点)をパソコン(PC)ディスプレイ画面上にカーソルとして表示し、ポインターの移動に応じてカーソルを移動させることができる。しかし、その際にノイズ除去を強く行うとカーソルの移動速度が遅くて、なかなか指示点にカーソルが到達しなかったり、逆にノイズ除去を弱くすると、ポインターを静止させてもディスプレイ画面上のカーソルが静止せず、常に振動するなどの状況が発生することがある。
【特許文献1】特開2004−28977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来、計測値に乗っているノイズを確実に除去し、ノイズに影響されない真値を算出するようにノイズフィルタをかけると、測定対象点の俊敏な動きをもノイズとして処理するために、測定対象点をレスポンス良く追随することができない。逆に測定対象点の俊敏な変化に対応できるようにノイズ除去フィルターをかけると、ノイズが計測値に残ってしまし、測定対象点が静止した場合にもノイズのために測定値が振動するという問題があった。
【0006】
従って本発明の目的は、計測ノイズを除去するとともに測定対象点をレスポンス良く追随することができる位置計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、対象点の位置座標を計測する位置計測システムであって、前記計測された位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を得る第1のノイズ除去手段と、前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を得る第2のノイズ除去手段とを有し、前記第2のノイズ除去手段で用いるノイズ除去パラメータが前記第1の位置座標値に基づいて決定される位置計測システムにより、達成される。
【0008】
ここで、前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を広くするように設定され、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を狭くするように設定されることが好ましい。前記第1のノイズ除去手段および前記第2のノイズ除去手段は共にカルマンフィルターを用いることができ、この場合、前記ノイズ除去パラメータはシステム雑音と観測雑音である。好適には、前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記システム雑音は小さくかつ前記観測雑音は大きく設定し、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記システム雑音は大きくかつ前記観測雑音は小さく設定する。
【0009】
前記対象点の位置は、指示装置によって指し示される指示位置とすることができる。前記指示装置の指示位置は、コンピュータに接続されたディスプレイ画面上にカーソルとして表示され得る。前記ノイズ除去パラメータは、前記指示装置の振動に伴う前記カーソルの振動を抑制するように設定されることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る位置計測システムは、同心円状干渉模様光を投射する指示装置と、前記指示装置から投射された干渉模様光を検出する検出装置と、前記検出装置から得られた信号に基づいて対象物に投射された干渉模様光の中心の位置座標を求める演算装置とを備え、前記演算装置は、前記求めた位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、前記第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、前記第2の位置座標値に基づいて前記指示装置の指示位置を決定する。
【0011】
ここで、前記第1の位置座標値および第2の位置座標値の算出は共にカルマンフィルターを用いることができ、この場合、前記第2のノイズ除去手段のノイズ除去パラメータはシステム雑音と観測雑音である。前記指示装置の指示位置は、コンピュータに接続されたディスプレイ画面上にカーソルとして表示され得る。前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記カーソルを固定し、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記カーソルを前記第2の位置座標値に移動する。
【0012】
さらに、本発明に係る位置計測方法は、前記計測された位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、前記第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、前記第2の位置座標値に基づいて前記対象点の位置座標を決定するものである。ここで、前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を広くするように設定され、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を狭くするように設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、計測ノイズを除去するとともに測定対象点をレスポンス良く追随することができる位置計測システムを得ることができる。本発明では、操作者の意図に応じて、フィルタリングのパラメータが設定されるので、測定対象点の俊敏な動きに追随できると同時に、測定対象点が静止している場合にはノイズ除去をしっかりと行い、真値を静止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る位置計測システムの実施の形態を図面に沿って説明する。
図1は、対象点の位置座標を計測する位置計測システムの一例を示す図である。本システムでは、指示装置によって指し示される指示点の位置座標が求められる。本システムは、図示のように、同心円状の干渉模様光5を投射する指示装置としてのポインター3と、ポインター3から投射された干渉模様光5を検出するCCDなどのイメージセンサを有する検出装置10,11と、検出装置10,11から得られた信号に基づいてディスプレイ100に投射された干渉模様光5の中心(指示位置)6の位置座標を求める演算装置としてのパソコン(PC)等のコンピュータ12とを備える。ポインター3は、その構成例については後述するが、半導体レーザ2、コリメータレンズ1c、および干渉レンズ1−3を備える。コンピュータ12は、検出装置10,11およびディスプレイ100に接続されている。このコンピュータ12で検出装置10,11からの検出信号を処理することにより、ポインター3の指示位置6を、ディスプレイ100の画面上にカーソルとして表示し、またポインター3の移動に応じてカーソルを移動させることができる。
【0015】
本システムでは、コンピュータ12は、単にポインター3の指示位置6を求めるのではなく、求めた指示位置6の位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、この第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて上記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、この第2の位置座標値に基づいてポインターの指示位置を決定する。すなわち、カルマンフィルターを用いる場合、先ず計測値に1回目のカルマンフィルターをかけてノイズを除去し真値(第1の位置座標値)を出す。この真値から測定対象点の真の変動を推測し、次に実施するカルマンフィルターのパラメータ値を設定しノイズ除去を行って、第2の位置座標値を得る。これにより、ポインター3を人間が操作するときに生ずる手ぶれなどの身体的振動に伴って発生する指示位置6の振動を抑制することができるとともに、測定対象点の俊敏な動きに対して追随することができる。これについては後で詳述する。
【0016】
図2(a)はポインターの構成例を示す図であり、(b)は干渉レンズの一例を示す図である。ポインターは、図2(a)に示すように、光源として850nm波長の光を出射する半導体レーザ2と、その光を平行光にするコリメータレンズ1cと、この平行光を同心円状の干渉模様光5として照射する干渉レンズ1−3とを備える。干渉レンズ1−3は、例えば光軸に窪みのある光軸対象のリング形状レンズを用いる。図2(b)において、レンズ1−3はレンズの断面図を示し、レンズ1−3uはレンズを光源方向から見た正面図を示すものである。ここで、レンズ外径は3mmとした。光軸上の平面におけるレンズの入射面はx=0.5*(y−1.5)1.5(単位はmm)の非球面で構成されている。ここで、xは光軸で光の進行方向を正とし、yは光軸に垂直な半径方向の軸である。レンズ1−3の光出射面は平面とした。レンズ素材の屈折率は1.51とした。
【0017】
図2(a)において、半導体レーザ2から放射された光はコリメータレンズ1cを介して干渉レンズ1−3に入射する。光軸より上側を通過した光はディスプレイ100に光線軌跡2−3−1を経由して照射される。同様に、光軸より下側を通過した光はディスプレイ100に光線軌跡2−3−2を経由して照射される。ディスプレイ100上の同一点(干渉点)5に到達した光は、同一光源より発せられたレーザ光であるので干渉する。このように、一つの光源から放出されたレーザ光は光軸上平面において仮想的に2点の光源2−1、2−2から放出されたレーザ光であるように、ディスプレイに投影される。本実施例では、点光源の光をコリメータレンズを用いて平行光とし、これを上記レンズに入射させているが、平行光は、無限遠の光源と考えることができ、この無限遠の光源を上記レンズにより、仮想的に2点の光源としている。
【0018】
干渉レンズ1−3の光軸の延長線上にある同心円干渉模様の中心点が指示点(指示位置)となる。ディスプレイ100の角に図1に示すように検出装置10,11を設置し、同心円干渉模様5の一部を検出する。検出装置には850nmより長波長の光のみを通過させる赤外線フィルターを取り付けてもよい。これにより、室内灯などのノイズとなる光を遮断することができる。検出装置には同心円干渉模様の一部分である円弧が多数投影される。この円弧の画像をコンピュータ12により、画像処理し、同心円干渉模様5の中心位置を算出することができる。
【0019】
図3は、この円弧から同心円中心を求める方法を示す。円弧から任意の3点5−1,5−2,5−3をとり、2本の線分を決める。数学の定理より、その各々の線分の垂直2等分線の交点が円の中心5−0となる。この円の中心がポインター3の指示点(指示位置)となる。円弧の任意の3点は、検出装置が検出した全ての円弧情報から抽出することができるので、その点数を多くすればするほど、ノイズ成分がキャンセルされ高い位置精度で中心点を求めることができる。
【0020】
上記のように、ディスプレイ100に検出装置10,11を取り付けて、同心円干渉模様を検出し、コンピュータ12でポインター3が指し示した位置を算出し、この位置にカーソルを移動させる信号をコンピュータ12からディスプレイ100に送信することで、ポインター3をコンピュータへの入力インタフェースとしてカーソル表示に利用することができる。上記の実施例では、検出装置は2個設けているが、1個または3個以上設けてもよい。
【0021】
本システムでは、ポインターの指示位置の位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、この第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて上記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、この第2の位置座標値に基づいてポインターの指示位置を決定する。以下、人間が手にポインターを持ち、そのポインターでコンピュータと接続されたディスプレイ装置またはプロジェクターで投影されたディスプレイ画面を指し示しながら、プレゼンテーションを行う場合を考える。その指示点に表示されるカーソルは、ポインターの移動に応じて移動する。このとき生ずる手ぶれなどの身体的振動に伴って発生するポインターの指示位置の振動は以下のような方法により抑制される。
【0022】
(実施例1)
図4は、本発明に係る位置計測システムにおけるノイズ除去のアルゴリズムの一実施例を示すフローチャートである。本例では、ノイズ除去にカルマンフィルターを用いる。図4において、まずステップ41にて、ポインターの指示位置X1を計測する。ポインターの指示位置X1は、例えば図3の説明で述べたように、ポインターからディスプレイに照射された同心円干渉模様の円弧から求められる同心円の中心位置座標である。このポインターの指示位置はディスプレイ画面上の座標(x,y)で表される。ステップ42にて、この指示位置X1が初回の計測かどうかを判断する。初回の場合は、X0=X1としてステップ45に移行し、初回でない場合は、X0=X3としてステップ45に移行する。ここで、X0は比較対象値、X3は前回の算出値である。
【0023】
次に、ステップ45(第1のノイズ除去手段)にて、X0(初回の場合はX1、初回でない場合はX3)を第1のカルマンフィルターに通してノイズ除去し真の位置(真値)X2(第1の位置座標値)を算出する。カルマンフィルターの状態ベクトルXは以下の式で表される。
【0024】
【数1】

【0025】
ここで、x(k),y(k)は時刻kにおける指示点の位置座標、Vx(k),Vy(k)は時刻kにおける指点の移動速度である。カルマンフィルターの基本モデルは一般的な以下のモデルとした。
【0026】
【数2】

【0027】
ここで、Fは状態遷移行列、Gは駆動行列、Hは観測行列である。Wkはシステム雑音、Vkは観測雑音であり、それらの共分散行列は以下で表される。
【0028】
【数3】

【0029】
σwとσvは分散値で、I2×2は2×2の単位行列を意味する。
カルマンフィルターによるノイズ除去は状態ベクトルXの算出により行われる。その計算は以下の漸化式を順次実施ことにより得られる。
【0030】
【数4】

【0031】
このようにして、第1のノイズ除去手段では、状態ベクトルXk|kを求め、各計測時刻kにおいて計測された指示位置X0から第1のノイズを先ず除去する。これを指示位置の真値X2(第1の位置座標値)とする。続いて、ステップ46にて、X2をX0(初回の場合はX1、初回でない場合はX3)と比較して変化量、この場合は、カーソル移動距離Lを算出する。その移動距離Lは、
L=|X2−X0| (11)
で表わされる。ここで記号||は絶対値を表す。
【0032】
この移動距離Lに応じて、カルマンフィルターのシステム雑音と観測雑音のノイズ分散値σwとσvを決定する。すなわち、この移動距離L(変化量)が基準値より小さい場合には、人間は特定の箇所を指し示しており、カーソルを固定することが望ましい。逆に、移動距離L(変化量)が基準値より大きい場合には、人間は他の場所を指し示すためにポインターをダイナミックに移動させているので、カーソルもそれに俊敏に追随して移動することが望ましい。そこで、ステップ47にて、移動距離Lの関数として、カルマンフィルターのノイズ分散値σwとσvを次のようにして決定する。
σw=L*A (12)
σv=B/L (13)
ここでA,Bは定数である。式(5)、(12)、(13)から分かるように、X2とX0との差(移動距離)Lが基準値よりも小さい場合には、システム雑音は小さくかつ観測雑音は大きく設定され、X2とX0との差(移動距離)Lが基準値よりも大きい場合には、システム雑音は大きくかつ観測雑音は小さく設定される。ここで、Lが基準値より大きいか、小さいかにより処理方法を変化させているが、この基準値は、例えばポインタで指し示した位置にカーソル振動が停止している、あるいは人間が目で見て違和感が無い程度の小さい振動であるところにおくことができるが、これに限定されるものではなく、自由に設定することができる。また、システム雑音および観測雑音の大きい又は小さいの設定も上記と同様に、人間が見てカーソル振動が違和感ないことを基準として、これを実現できるような「大きさ」あるいは「小ささ」のパラメータ設定を行う。
【0033】
そして、ステップ48(第2のノイズ除去手段)にて、このノイズ分散値σwとσvをノイズ除去パラメータとして用いて、再びカルマンフィルターを掛けて状態ベクトルXk|kを算出する。すなわち、X2(第1の位置座標値)を第2のカルマンフィルターに通してX3を算出する。ステップ49にて、この値X3(第2の位置座標値)はメモリーに格納されるとともに、ステップ44にて、次のX0=X3として次回のノイズ除去処理に利用される。また、ステップ50にて、この値X3にカーソルが移動される。ステップ51では、以上の処理を終了するかどうかが判断され、終了する場合以外はステップ41に戻り、上記処理を繰り返す。以上の手法により、人間がポインターで特定場所を指し示している場合にはカーソルは手ぶれ振動せずに止まり、ポインターを移動させている場合にはカーソルがそれに俊敏に追随することが可能となる。
【0034】
人間が手でポインターを持った場合、往々にして手が震え、その結果ディスプレイ画面上に表示されるカーソルが振動することがおこるので、本システムでは指示位置の真値から人間の意図を汲み取りカーソルの振動を抑制することにした。ポインターを利用したプレゼンテーションではある特定の位置を指し示す場合には、手が振動してもその移動距離は一定の範囲に入っていることが多い。一方、他の場所を示す場合には、その指示位置の移動距離は大きくなるので、これと手ぶれによる振動とは識別できる。
【0035】
(実施例2)
本実施例は、ノイズ除去の第1のフィルターとして、過去の測定値を指数関数的に減衰させるものを用いる。第2のフィルターとしては、実施例1と同様にカルマンフィルターを用いる。いま、測定を開始してからn回目に計測されたカーソル座標を(x,y)とする。減衰係数をaとし、ノイズを除去した値を(x,y)とし、(x,y)を以下のように算出する。
【0036】
【数5】

【0037】
ここで、下添え字の1,2,3などはi番目のフレーム数を表す。例えば、減衰係数a=5と設定すると、n=100番目フレームでは(x,y)は次のようになる。
【0038】
【数6】

【0039】
この計算のアルゴリズムはシンプルで、各フレームi毎に
【0040】
【数7】

【0041】
を繰り返すだけで、上記の等比級数が得られる。このようなノイズ除去手段を用いて、測定値を算出する。この値と前回の測定値との差(移動距離)Lを式(11)にもとづいて算出する。この後、上記実施例1と同様にカルマンフィルターを利用して、カーソル移動の速度を式(12)、式(13)のように設定する。これにより、実施例1と同様に、操作者の意図を汲んだようなカーソル移動をすることができる。
【0042】
(実施例3)
本実施例は、式(11)に示すカルマンフィルターのシステム雑音σvと観測雑音σwを測定位置の関数とするものである。本実施例では、第1のカルマンフィルターを、ノイズ分散値σv=1、σw=100、とし、先ずノイズを除去する。次に、式(11)からカーソルの移動距離Lを算出する。そして、その移動距離Lに対して、第2のカルマンフィルターを、ノイズ分散値σv0=10−6、σw0=10として、
σv0=σv0*L (20)
σw0=σw0/L (21)
という関数を作用させる。この結果を図5に示す。
【0043】
図5は、入力信号、第1のカルマンフィルターを通したもの、および第2のカルマンフィルターを通したものについて、カーソル位置座標の各画像毎の変化をそれぞれ示すグラフである。グラフ横軸は画像のフレーム番号(時刻)を示し、グラフ縦軸は画像上でのカーソル位置座標(x、y)のy座標を示す。ここで、入力信号は同心円干渉模様から求められた同心円の中心位置座標(ノイズ除去前のカーソル位置座標)である。図示のとおり、入力信号は破線で示すようにノイズが大きく上下振動が激しいが、これを第1のカルマンフィルターに通すと細実線で示すようにノイズが一定量除去されて上下振動が緩和され、さらにこれを第2のカルマンフィルターに通すと太実線で示すようにノイズがより良好に除去されて上下振動が収まることが分かる。
【0044】
以上の実施例は、例えばコンピュータプログラムを用いて実行することができる。本発明によれば、操作者の意図に応じて、フィルタリングのパラメータが設定されるので、測定対象点の俊敏な動きに追随できると同時に、測定対象点が静止している場合にはノイズ除去をしっかりと行い、真値を静止させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、位置や方向を計測する際に問題となるノイズを除去して対象点の位置座標を求める位置計測システムに関するものであり、産業上の利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】対象点の位置座標を計測する位置計測システムの一例を示す図である。
【図2】(a)はポインターの構成例を示す図であり、(b)は干渉レンズの一例を示す図である。
【図3】円弧から同心円中心を求める方法を示す図である。
【図4】本発明に係る位置計測システムにおけるノイズ除去のアルゴリズムの一実施例を示すフローチャートである。
【図5】入力信号、第1のカルマンフィルターを通したもの、および第2のカルマンフィルターを通したものについて、カーソル位置座標の時刻変化をそれぞれ示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1c コリメータレンズ
1−3 干渉レンズ
2 半導体レーザ
3 ポインター
5 同心円状干渉模様項
6 指示位置
10,11 検出装置
12 コンピュータ
100 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象点の位置座標を計測する位置計測システムであって、前記計測された位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を得る第1のノイズ除去手段と、前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を得る第2のノイズ除去手段とを有し、前記第2のノイズ除去手段で用いるノイズ除去パラメータが前記第1の位置座標値に基づいて決定されることを特徴とする位置計測システム。
【請求項2】
前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を広くするように設定され、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を狭くするように設定されることを特徴とする請求項1に記載の位置計測システム。
【請求項3】
前記第1のノイズ除去手段および前記第2のノイズ除去手段が共にカルマンフィルターであり、前記ノイズ除去パラメータがシステム雑音と観測雑音であることを特徴とする請求項1に記載の位置計測システム。
【請求項4】
前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記システム雑音は小さくかつ前記観測雑音は大きく設定し、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記システム雑音は大きくかつ前記観測雑音は小さく設定することを特徴とする請求項3に記載の位置計測システム。
【請求項5】
前記対象点の位置が、指示装置によって指し示される指示位置であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の位置計測システム。
【請求項6】
前記指示装置の指示位置が、コンピュータに接続されたディスプレイ画面上にカーソルとして表示され得ることを特徴とする請求項5に記載の位置計測システム。
【請求項7】
前記ノイズ除去パラメータが、前記指示装置の振動に伴う前記カーソルの振動を抑制するように設定されることを特徴とする請求項6に記載の位置計測システム。
【請求項8】
同心円状干渉模様光を投射する指示装置と、前記指示装置から投射された干渉模様光を検出する検出装置と、前記検出装置から得られた信号に基づいて対象物に投射された干渉模様光の中心の位置座標を求める演算装置とを備えた位置計測システムであって、前記演算装置は、前記求めた位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、前記第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、前記第2の位置座標値に基づいて前記指示装置の指示位置を決定することを特徴とする位置計測システム。
【請求項9】
前記第1の位置座標値および第2の位置座標値の算出が共にカルマンフィルターを用いて行われ、前記第2のノイズ除去手段のノイズ除去パラメータがシステム雑音と観測雑音であることを特徴とする請求項8に記載の位置計測システム。
【請求項10】
前記指示装置の指示位置が、コンピュータに接続されたディスプレイ画面上にカーソルとして表示され得ることを特徴とする請求項8または9に記載の位置計測システム。
【請求項11】
前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記カーソルを固定し、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記カーソルを前記第2の位置座標値に移動することを特徴とする請求項10に記載の位置計測システム。
【請求項12】
対象点の位置座標を計測する位置計測方法であって、前記計測された位置座標からノイズを除去して第1の位置座標値を算出し、前記第1の位置座標値に基づいて決定されるノイズ除去パラメータを用いて前記第1の位置座標値から再度ノイズを除去して第2の位置座標値を算出し、前記第2の位置座標値に基づいて前記対象点の位置座標を決定することを特徴とする位置計測方法。
【請求項13】
前記第1の位置座標値を前回の第1の位置座標値と比較して得られる変化量が基準値より小さい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を広くするように設定され、前記変化量が基準値より大きい場合には、前記ノイズ除去パラメータはノイズとして除去する変動範囲を狭くするように設定されることを特徴とする請求項12に記載の位置計測方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−163251(P2007−163251A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358687(P2005−358687)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】