説明

低温同時焼成セラミックの回路およびデバイスで使用するための混合金属システム導体

異種金属組成物間の電気的接続における界面の影響を最小限にするために、遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物が、開示される。この組成物は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含む。この組成物は、(c)組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含む。この組成物は、ビア充填での多層膜組成物として使用され得る。遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するために、この組成物を使用して、LTCCの回路およびデバイスなどの多層膜回路がさらに形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温同時焼成可能なセラミック(LTCC)の多層セラミックの回路およびデバイスの製造に用いられる、異種の導電性金属材料を接続するビア充填導体組成物および回路導体に有用な混合金属組成物に関し、そのような混合金属組成物を使用する多層膜ビア充填構造、ならびにそのような混合金属組成物および/または構造を用いるLTCCの回路およびデバイス自体も含む。本発明は、マイクロ波および他の高周波の応用における、混合金属組成物、回路およびデバイスの使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
LTCC設計の相互接続回路基板は、電気的におよび機械的に相互に接続された多数の極めて小さい回路素子から作られた電子的な回路またはサブシステムを物理的に具現化したものである。これらの多様な電子部品を、単一の密度の高いパッケージ内で物理的に分離し、かつ相互に隣接して搭載し、さらに、相互におよび/またはパッケージから延在する共通接続に、電気的に接続することができるように、1つの配置に組み合わせることはしばしば望ましいことである。
【0003】
複雑な電子回路では、その回路を、絶縁誘電体層によって分離されたいくつかの導体層から構成することが一般に必要である。これらの導電性層は、ビアと呼ばれる導電性経路によって誘電体層を通って、レベル間で相互に接続されている。LTCC技術において有用な導体は典型的には厚膜導体である。LTCC多層構造は、垂直的な集積化を可能にすることにより、従来のAl23基板より回路の密度を高くすることを可能にする。
【0004】
他の厚膜材料と同様、厚膜導体はアクティブ(活性または有効)な(導電性)金属および無機バインダで構成され、その両者とも微細に分割された形態をしており、かつ有機ビヒクル内に分散されている。導電性の相は、通常金、パラジウム、銀、白金またはそれらの合金であり、その選択は、求める特定の性能特性によって決まり、たとえば、抵抗率、はんだづけ性、はんだ浸食耐性、抵抗、ボンディング性、付着力、マイグレーション耐性などである。多層のLTCCデバイスにおいて、内部導体配線およびビア導体のために以下に挙げる付加的な性能特性が求められ、それらは、焼成時における上下の誘電体層の中への導体配線の「沈み込み」の最小化、焼成の繰り返し時における最小の抵抗率変化、ビア充填導体界面への配線導体の最適な界面接続性、および周囲のセラミック材料界面へのビア充填導体の最適な界面接着である。
【0005】
LTCCデバイスは、遠隔通信、自動車またはレーダーを含む軍事用など、従来技術の高周波応用において、その多層能力、同時焼成能力および柔軟性のある設計能力のために使用されてきた。多くの特性が、マイクロ波応用を含む高周波用の多層回路の製作で使用される導体に要求され、所望の抵抗率、はんだづけ性、はんだ浸食耐性、ワイヤーボンディング性、付着力、マイグレーション耐性および長期間安定性を含む。
【0006】
上記に列挙された導電率および他の特性の適切なレベルに加えて、ワイヤーボンディング性、セラミックおよび厚膜の両方への良い付着力、はんだづけ性ならびに表面および埋め込みの両方の他の厚膜への適合性、少ないまたはより少ない特性劣化が無い長期間安定性などの、さらに存在しなければならない多くの二次的な特性がある。
【0007】
金の導体などの貴金属の使用は、高信頼性LTCCデバイスのコストを増加させ、製造者は、期待されるように、そのような貴金属の使用の低減によりコストを低減する方法を探す。1つのそのような方法は、金の導体ではなく銀を素材とする導体を用いることである。銀を素材とする導体の信頼性は比較的より低く、かつワイヤーボンディングが可能ではない。金の導体および金のビア充填は、より低いコストかつより低い性能の銀を素材とする材料の影響を緩和するために、要所の配置においてまだ使用され得る。
【0008】
LTCC導電性素子で使用される、Pd/Ag混合物またはPd/Pt/Ag混合物を使用する導電性システムは、Nairらの、譲受人共通の米国特許第7,611,645号明細書に開示されている。混合金属システムのためのパラジウム−銀遷移ビア充填導体は、Wangらの、譲受人共通の米国特許第7,550,319明細書に開示されている。
【0009】
しかしながら、そのようなシステムは異種金属間の表面の界面で特定の現象に陥る傾向があり得る。たとえば、カーケンドール効果は様々な合金システムで見つかっており、異材質間の接合に関して重要である。具体的には、それは研究されてきていて、接着界面での境界領域において、特に金属粉体焼結などの高温プロセス中に生成されるボイドを説明するのに使用されている。
【0010】
さらに、LTCCデバイス中の電気的接続場所などの異なった金属間の界面で、EMF差異起因欠陥があり得ると考えられる。
【0011】
LTCCデバイスなどの電気デバイスにおいて異なった金属材料間の接合または接続において、そのような表面欠陥を最小限にする、または除去するシステムを使用することが望ましいであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の実施形態を用いる低温同時焼成可能なセラミック(LTCC)の、多層セラミック回路の断面図を示す。
【図1B】
【図2】本発明による多層膜ビア充填構造を示す。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物を提供し、前記組成物は、
(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および
(b)有機媒体を含む。
【0014】
本発明の実施形態において、遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物は、(c)組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含む。
【0015】
本発明は、第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続は、金の配線導体または金のビアへのものであり、かつ前記第2の電気的接続は、銀の配線導体または銀のビアへのものである、上述の遷移配線導体を含む回路を提供する。
【0016】
本発明は、第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続は、金の配線導体へのものであり、かつ前記第2の電気的接続は、銀の配線導体へのものである、上述の遷移配線ビアを含む回路も提供する。
【0017】
本発明の他の実施形態において、互いに電気的接触がある少なくとも第1の層および第2の層を含む多層膜遷移ビアであって、前記第1の層は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含み、第2の層は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含み、前記第1の層および前記第2の層は異なるものであり、さらに、前記第1の層の無機の成分中の金の重量%は、前記第2の層の無機の成分中の金の重量%より大きい多層膜遷移ビアが提供される。
【0018】
この多層膜遷移ビアの実施形態は、第1の層および第2の層のどちらか一方または両方が、(c)組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物lを含む高粘度ガラスをさらに含んでもよい。
【0019】
本発明は、第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続は、第1の層と金の導体の間にあり、かつ前記第2の電気的接続は、第2の層と銀の導体の間にある、上述の多層膜遷移ビアを含む回路がさらに提供される。
【0020】
本発明は、上記の組成物を利用して多層回路を形成する方法、および高周波応用(マイクロ波応用を含む)でのこの組成物の使用をさらに対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0021】
遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物は(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体から作られ、かつ、(c)組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含んでもよい。
【0022】
本発明の遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物は、回路を形成するために使用され得て、この組成物は、ビア導体または配線導体の形態をしており、金の配線導体または金のビアならびに前記第2の電気的接続を銀の配線導体または銀のビアに接続する。
【0023】
本発明は、第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有する、前記第1の電気的接続は、金の配線導体へのものであり、かつ前記第2の電気的接続は、銀の配線導体へのものであるm上述の遷移配線ビアを含む回路をさらに提供する。
【0024】
上記で説明した通り、カーケンドール効果およびEMF差異起因欠陥のような、異種金属間の表面の界面での特定の現象は、異材質間のボンディングおよび結果として生じる電気的接続での問題を引き起こし得る。
【0025】
いかなる特定の理論または仮説によっても束縛されることを意図するものではないが、発明者らは、LTCCデバイスまたはLTCCデバイスの一部の熱処理中に互いに接する異種金属により、カーケンドール効果、および/または、EMF差異起因欠陥が、欠陥形成の原因になり得ると考える。したがって、本発明による遷移ビア、および/または、遷移配線導体の機能は、下部導体配線(ある実施形態では、銀の導体配線)および上部導体配線(前述の実施形態では、金の導体配線)において使用される金属に適合する金属の混合物を使用することによって、その異種性の影響を最小限にすることである。これは有害な影響を減少させ、性能および長期信頼性の両方の点で改善されたLTCCデバイスを創出するであろう。
【0026】
対照的に、Pd/AgまたはPd/Pt/Agなどの上述の従来の混合金属システムは、全く異なったやり方で振る舞う。上記の場合のように、その上部導体配線は金で、下部導体配線は銀である。そのような従来のビアにおいて、特にPdが存在するとき、焼成工程中に、Pdは酸化し、おおよそ40%体積を増加させる。次いで、温度が増加すると、PdOは還元され、Pdを形成する。冷却サイクルにおいて、同様な過程が逆のやり方で繰り返される。そのような「redox(酸化還元反応)」プロセスは、従来のビアおよび従来の導体配線の界面を弱めるであろう。
【0027】
対照的に、本発明によるAg/Au混合組成物は、上述のredox反応の影響を受けない。さらに、本発明によるAg/Au混合組成物は、下部の銀の配線および上部の金の配線の両方に冶金学的にはるかによく適合する。AgおよびAuは連続的な固溶体を形成すると考えられている。
【0028】
図1Aは、本発明の実施形態を用いる低温同時焼成可能なセラミック(LTCC)の、多層セラミック回路の断面図を示す。
【0029】
図1Aは、本発明の実施形態を用いる低温同時焼成可能なセラミック(LTCC)の、多層セラミック回路1の断面図を示す。回路1は、誘電材料の10層から形成され、最下層10は、上部に堆積された次の層20を有し、下部から上部へ層30、40、50、60、70、80、90および最上層100が、続く。銀の内部配線導体11、21、31、41、51、61、71、81および91は、それぞれ、層10、20、30、40、50、60、70、80および90の上に位置する。銀のビア12は、銀の内部配線導体11と21を電気的に接続し、銀のビア22は、銀の内部配線導体21と31を電気的に接続する、銀のビア32は、銀の内部配線導体31と41を電気的に接続し、銀のビア42は、銀の内部配線導体41と51を電気的に接続し、銀のビア52は、銀の内部配線導体51と61を電気的に接続し、および、銀のビア72は、銀の内部配線導体71と81を電気的に接続する。回路1のこの特定の部分において、層70または層90を通り抜けるビア接続はない。
【0030】
本発明による内部遷移配線導体73aは、銀の内部配線導体71を金のビア76に電気的に接続する。本発明による遷移配線導体73bは、内部と外部の両方の部分を有し、金のビア76と金の外表面導体75を電気的に接続する。金の外部配線導体85は、金のビア76に電気的に接続される。
【0031】
外部の金の配線導体105は、本発明の実施形態による遷移ビア93によって、銀の内部配線導体91に電気的に接続される。単一層の実施形態として、図1に示される遷移ビア93は、以下に詳細に説明する通り、本発明による多層の実施形態でもあり得る。遷移ビア93の分解図は、界面接続97および98をより詳細に示し、接続97は、銀の内部配線導体91と金のビア93の間にあり、また接続98は、金のビア93と外部の金の配線導体105の間にある。本発明の実施形態において、遷移ビア93ならびに配線導体73aおよび73bの形成のため本発明による組成物を使用すると、異種金属を電気的に接続するために従来の混合金属システムが使用される接続97および98に類似した接続場所で、発現し得るものなどの界面欠陥の形成が防止される。
【0032】
本発明による多層膜遷移ビア構造は、互いに電気的接触がある少なくとも第1の層および第2の層を含み、前記第1の層および第2の層は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を提供する。
【0033】
第1の層および第2の層は組成において異なるものであり、主として第1の層の無機の成分中の金の重量%が、第2の層の無機の成分中の金の重量%より大きいからである。本発明のこの実施形態は、「2段階ビア」または「2段階プロセス」と呼び得る。
【0034】
いかなる特定の理論または仮説によっても束縛されることを意図するものではないが、発明者らは、同数のAgおよびAuの原子が遷移ビアの中にある場合、かつ、さらにAgおよびAuの拡散係数が同じである場合、カーケンドール欠陥は無視できるほどになると考える。しかしながら、AgおよびAuの拡散係数は異なり、結果的に異なり、イオンの合計の拡散を制御することができない。
【0035】
本発明による多層膜ビア実施形態の使用は、2つ以上の異なった遷移ビア組成物を利用することにより、実用的な意味合いにおいて拡散係数の差を無視できるほどにすることによって、その肯定的な効果を出すと考えられる。第1の組成物は、ビアを部分的に充填するためにたとえば印刷によって塗布される。次いで、第2の組成物は、ビアを部分的に充填するためにたとえば印刷によって塗布される。
【0036】
「2段階ビア」または「2段階プロセス」は、ビア内のカーケンドール欠陥の部分的な(または恐らく、ほとんど完全な)分配を可能にすると考えられる。その結果として、それは、ビア上部導体配線界面の欠陥および剥離、および/または、ビア下部導体配線界面の欠陥および剥離を最小限にする。熱プロセス中の結果として、ビア上部導体配線の界面(またはビア下部導体配線の界面)と比較したとき、ビアは、桁違いに多い金属原子を含んでいるので、ビア内に存在する金属イオンは相互に拡散し、また、欠陥は最小になると考えられる。
【0037】
図2において、外部の金の配線導体105は、銀の内部配線導体91に、本発明の実施形態による遷移ビア93によって電気的に接続される。単一層の実施形態として図1に示される遷移ビア93は、第1の層93aおよび第2の層93bを含む多層膜の実施形態として図2に示される。金の含有量は、第2の層93bより第1の層93aの方が高い。これは、金属含有量の差異を図1Aにあるような2つの界面(97および98)の代わりに3つの界面(97、98および99)を横切って分配し、かつ、本発明の一定の実施形態において、本発明によるより大きな改善界面欠陥を提供する。
【0038】
本発明の実施形態において、遷移ビア93aおよび93bの形成のため本発明による組成物を使用すると、異種金属を電気的に接続するために従来の混合金属システムが使用される接続97および98に類似した接続場所で発現し得るものなどの界面欠陥の形成が防止される。代わりに、第1のビア層93aおよび第2のビア層93bを形成するための本発明による組成物の使用によって、界面の欠陥は、本発明による界面97、98および99を横切って分配され、減少されるか除去される。
【0039】
さらなる態様において、本発明は、遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための、有機媒体に分散される上記組成物を含む、スクリーン印刷可能な、および/または、ステンシル塗布可能なペーストを包含するとも考えられる。さらに、本発明は、下記のパターンを有する非導電性LTCCセラミック基板を含む導電性素子を包含すると考えられ、このパターンは、このセラミック基板上に付けられた、導電性パターンおよび接続用もしくは非接続用のビア充填導電性パターンであって、この導電性素子は、上記の、スクリーン印刷可能な、および/または、ステンシル塗布可能なペーストのパターンを印刷することと、印刷された、および/または、積層されたLTCCを焼成し、有機媒体のvolatizationおよび無機材料とメタライゼーションの液相焼結を達成することと、により形成されるものである。さらに他の態様において、本発明は、導体を単独で、および/または、ビア充填材と共に作製するために、(a)非導電性のセラミック基板に上記のスクリーン印刷可能なペーストのパターニングを施された厚膜を塗布することと、(b)ある温度で、本発明の実施形態では200℃より下の温度で、この膜を乾燥することと、(c)無機材料とメタライゼーションの液相焼結を達成するために、乾燥された膜を焼成することと、を含むプロセスを対象とする。
【0040】
A.導電性材料
本発明による導電性材料または無機の成分は、(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される。本発明において使用されるこれらの金属は、市販で入手可能なものから選択することができる。上記金属材料の粒径は、本発明におけるそれらの技術的な有効性の観点からは有意な影響を有するとは考えられない。しかしながら、それらは、もちろん、それらが塗布される方法、通常はスクリーン印刷、および/または、ステンシル塗布であるがその方法、ならびに焼成条件に対して適切な大きさであるべきである。さらに、前述の金属粉末の粒径および形態は、2ミルから10ミルの厚さの未焼成のセラミックテープ上への、スクリーン印刷、および/または、ステンシル塗布において、ならびに、合成物の積層条件および焼成条件に対して適切であるべきである。
【0041】
B.有機媒体
無機の成分は、印刷に適したコンシステンシー(粘稠度)およびレオロジー(流動性)を有する「ペースト」と呼ばれる粘性の組成物を形成するために機械的な混合によって有機媒体へ通常分散される。様々な不活性な液体を、有機媒体として使用することができる。媒体のレオロジー特性は、それらが組成物に良好な塗布特性を与えるようなものである必要があり、固形物の安定した分散、スクリーン印刷に対する適切な粘度およびチキソトロピー、許容できる未焼成の「グリーン」の強度、基板およびペースト固形物の適切なぬれ性、良好な乾燥速度ならびに良好な焼成および燃え尽き特性を含む。有機媒体は通常、溶媒中のポリマーの溶液である。付加的に、界面活性剤などのような少量の添加剤が、有機媒体の一部分であり得る。この目的のための最もしばしば用いられているポリマーはエチルセルロースである。ポリマーの他の例として、エチルヒドロキシエチルセルロース、ウッドロジン、エチルセルロースとフェノール樹脂の混合物、低級アルコールのポリメタクリレートが挙げられ、エチレングリコールモノアセタートのモノブチルエーテルも使用することができる。厚膜組成物で見られる最も広く使用される溶媒は、エステルアルコール、およびαもしくはβテルピネオールなどのテルペン、または、それらと他の溶媒との混合物であり、他の溶剤としては、灯油、フタル酸ジブチル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセタート、ヘキシレングリコール、ならびに高沸点アルコールおよびアルコールエステルなどである。さらに、基板に塗布の後に急速な硬化を促進するための揮発性の液体をビヒクルに含むことができる。所望の粘度および揮発性の必要条件を得るために、これらおよび他の溶媒の様々な組合せが、調剤される。
【0042】
無機質の粒子は、スクリーン印刷、および/または、ステンシル塗布のための適切なコンシステンシーおよびレオロジーを有するペースト状の組成物を形成するために、通常機械的な混合(たとえばロールミル上で)によって不活性な液体媒体(ビヒクルまたは媒体)と混合される。後者は、LTCCグリーンテープ上に「厚膜」として従来のやり方で印刷される。いかなる不活性な液体もビヒクルとして使用され得る。様々な有機液体が、増粘剤および/もしくは安定化剤、ならびに/または他の一般的な添加剤の有無にかかわらず、ビヒクルとして使用され得る。ビヒクルの唯一の特有の条件は、それがLTCCグリーンテープの中に存在する有機物と化学的に適合しなければならないということである。使用することができる有機液体の例示的のものとして、脂肪族アルコール;このようなアルコールのエステル、たとえば酢酸塩およびプロピオナート;松根油などのテルペン;テルピノールなど;テキサノールなど;松根油のような溶媒中の、エチルセルロースなどの樹脂の溶液;ならびにエチレングリコールモノアセタートのモノブチルエーテルが挙げられる。
【0043】
テープへの塗布の後に急速な硬化を促進するために、ビヒクルは揮発性の液体を含み得る。
【0044】
分散体での固形物に対するビヒクルの比は、相当に変わることができ、分散体が塗布されるやり方および使用されるビヒクルの種類、ならびに、導体の使用が、導体配線のためか、および/または、ビア充填導体接続のためかに依存する。通常は良好な被覆を達成するために、分散体は、60〜98%の固形物および40〜2%の有機媒体(ビヒクル)を含む。内部導体組成物および表面導体組成物では、無機に対する有機の比を減少させ得る。さらに本発明による調合物での有機成分は、本発明の組成物が、導体配線組成物としてのものか、ビア充填組成物としてのものかのいずれかに依存して、変わってもよい。本発明の組成物は、もちろん、他の材料の付加によって変更され得て、この他の材料は組成物の有用な特性に影響しない。本発明の事例において、上記に説明されるような有機材料の変化および調合は、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。
【0045】
C.金属の酸化物または混合酸化物
ビア充填組成物配線導体組成物および多層膜遷移ビア実施形態を含む本発明の実施形態は、(c)組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含んでもよい。
【0046】
応用
本発明の組成物は、多層の電子回路を形成するために、グリーンテープTM低温同時焼成セラミック(LTCC)などの未硬化のセラミック材料および様々な他のペースト成分と共に、使用され得る。グリーンテープTMは、多層の電子回路のために誘電体または絶縁材料として通常使用される。グリーンテープTMのシートは、回路の実寸法よりやや大きいサイズに、隅部の各々に、位置決め孔を打ち抜き加工される。多層回路の様々な層を電気的に接続するために、ビア孔がグリーンテープTMに形成される。これは、機械的パンチングによって通常行われるが、任意の適切な方法が利用されてもよい。たとえば、鋭く集光されたレーザーを、揮発させてかつグリーンテープTMにおいてビア孔を形成するために使用することができる。
【0047】
ビアを本発明による組成物または他の従来の厚膜導電性組成物(ビア充填組成物)のいずれかで充填すると、層間の相互接続が形成される。ビア充填組成物は、一般的なスクリーン印刷技術によって通常塗布されるが、任意の適切な塗布技術が使用されてもよい。回路類の各層は、導体トラックのスクリーン印刷によって通常完成する。これらのトラックには、本発明の組成物もしくは他の適切な導体組成物、またはそれらの組合せを利用することができる。さらに、抵抗インクまたは、高誘電率インクを、抵抗性または容量性の回路素子を形成するために、選択された層上に印刷することができる。導体、抵抗、コンデンサーおよび他の素子は、従来のスクリーン印刷技術によって通常形成され、機能的な層として認められる。
【0048】
本発明の組成物は、回路の(外面または露出した)最外層上に、積層化の前または後のいずれかに、印刷され得る。加えて、本発明の組成物は、1つまたは複数の(内部の)回路の内部層に同様に使用されてもよい。さらに、本発明の組成物の実施形態は、ビア充填組成物として同様に使用されてもよい。回路が、「未使用の層」、または、機能的な導電性、抵抗性、もしくは容量性の層が堆積されていない誘電体もしくは絶縁材料の層を含んでもよいことは当業者によって理解されている。
【0049】
回路の最外層は素子を取り付けるために使用される。素子は、通常、ワイヤーボンディングされるか、接着されるか、または、焼成された部分の表面へはんだ付けされる。
【0050】
回路の各層が完成した後、個々の層は丁合いがとられ、積層される。層間の精密な位置合わせの確実にするために、密閉単軸プレスダイまたは等方圧プレスダイが通常使用される。組立品は積層化、または焼成の後に適切な寸法に仕上げされる。焼成は、コンベヤーベルト炉内またはプログラムされた加熱サイクルを用いるボックス炉内において通常実行される。テープは、焼成工程中に束縛焼結されても、または自由焼結されてもいずれでもよい。たとえば、Steinbergの米国特許第4,654,095号明細書およびMikeskaの米国特許第5,254,191号明細書において開示された方法が、当業者に公知の他の方法と同様に利用され得る。
【0051】
本明細書で使用するとき、用語「焼成」は、組立品を、空気などの酸化性雰囲気中で、その集合体の層の中の有機材料を揮発させ(燃え尽きさせ)、テープおよび導体の両方の無機の素子の反応と焼結を可能にするのに十分である、ある温度に、ある時間の間、加熱することを意味する。「焼成」は、層の中の無機の素子を反応または焼結させ、したがって組立品全体の密度を高め、したがって焼成された製品を形成する。この焼成された製品は、遠隔通信、軍事または自動車用途(自動車の位置センサー、レーダー、送信受信モジュール、アンテナその他、など)において使用される、多層の回路であり得る。
【0052】
用語「機能的な層」は導電性、抵抗性、容量性、誘電性の機能性を有する、印刷されたグリーンテープTMを指す。したがって、上記に示すように、典型的なグリーンテープTM層は、1つまたは複数の、導電性トレース、導電性ビア、抵抗および/またはコンデンサーを有し含んでもよい。
【0053】
上記の通り、本発明の、組成物、多層回路およびデバイスのいくつかの実施形態は、マイクロ波応用において特に有用である。「マイクロ波応用」は本明細書において300MHzから300GHz(3×108から3×1011Hz)までの範囲の周波数を必要とする応用として定義する。さらに、本発明は、送信/受信モジュールおよびレーダー応用など高周波応用において有用である。さらに、本発明の実施形態のうちのいくつかは、以下のマイクロ波回路素子の形成において有用であり、アンテナ、フィルタ、平衡不平衡変成器、ビーム成形器、I/O、カプラー、貫通接続(ビアまたはEM結合)、ワイヤーボンド接続および伝送回線を含むが、これらに限定されない。
【0054】
厚膜組成物(ペースト)の調合
本発明の厚膜組成物は、以下の一般的な方法論により調製され得る。無機固形物が、3ロールミルなどの適切な装置を用いて、有機媒体と混合され、分散され、懸濁液を形成し、その結果、粘度が、配線導体組成物用に、4秒−1のせん断速度で100〜200パスカル秒の範囲内にあり、ビア充填導体用に、同じく、1000〜5000パスカル秒である組成物が得られる。
【0055】
調合は、Nairらの譲受人共通の米国特許第7,611,645号明細書に記載の方法で実行され得て、その手順は参照により、本明細書に組込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移ビアおよび遷移配線導体を形成するための組成物であって、前記組成物が、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含む、組成物。
【請求項2】
(c)前記組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続が、金の配線導体または金のビアへのものであり、かつ前記第2の電気的接続が、銀の配線導体または銀のビアへのものである、請求項1または2に記載の遷移配線導体を含む回路。
【請求項4】
第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続が、金の配線導体へのものであり、かつ前記第2の電気的接続が、銀の配線導体へのものである、請求項1または2に記載の遷移ビアを含む回路。
【請求項5】
互いに電気的接触がある少なくとも第1の層および第2の層を含む多層膜遷移ビアであって、前記第1の層は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含み、前記第2の層は、(a)(i)20〜45重量%の金および80〜55重量%の銀と、(ii)100重量%の銀−金の固溶体合金とからなる群から選択される無機成分、および(b)有機媒体を含み、前記第1の層および前記第2の層は異なるものであり、さらに、前記第1の層の前記無機の成分中の金の重量%は、前記第2の層の前記無機の成分中の金の重量%より大きい多層膜遷移ビア。
【請求項6】
前記第1の層および前記第2の層のどちらか一方または両方が、(c)前記組成物の重量に対して1〜5重量%の、Cu、Co、MgおよびAlからなる群から選択される金属の酸化物または混合酸化物、および/または、主として高融点酸化物を含む高粘度ガラスをさらに含む、請求項5に記載の多層膜遷移ビア。
【請求項7】
第1の電気的接続および第2の電気的接続を少なくとも有し、前記第1の電気的接続は、前記第1の層および金の導体の間にあり、かつ前記第2の電気的接続は、前記第2の層および銀の導体の間にある、請求項5または請求項6に記載の多層膜遷移ビアを含む回路。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−516771(P2013−516771A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547261(P2012−547261)
【出願日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/062327
【国際公開番号】WO2011/082213
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】