説明

低誘電率を有する誘電体層を形成するための方法

誘電体材料を堆積する方法(100)は、基板に、少なくとも1つの層をその基板の上に設けること(101)を含む。この方法は、上部層の上部表面を物質で予め濡らすこと(102)と、溶液をスピンコーティングすること(103)と、誘電体材料を形成すること(104)とをさらに含む。誘電体材料は、例示的に、比較的多孔性であり、比較的低い誘電率を有したSiOである。予め濡らすことによって、消費される溶液が減少し、処理コストが低減されることになる。さらに、誘電体層(209)は、厚さの均一性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
相互接続技術は、超大規模集積回路および超大規模集積回路、あるいはそれぞれVLSI ICおよびULSI ICにおいて、構成要素の密度を高め、性能を高めるということに対するますます増加する要求を満たすよう、常に求められている。
【0002】
よく知られているように、回路の速度は、ICの回路の抵抗(R)と相互接続部のキャパシタンス(C)の積に反比例して変化する。このいわゆるRC時定数は、適切な信号伝達およびスイッチングの速度を促進し、信号のクロストークを最低にするために、できるだけ最小にしなければならない。
【0003】
IC中の構成要素のさらなる集積化および小型化に対するますます増加する要求について、ICのRCによる限定が、システム速度に対する主な限定要因になり得る。したがって、ICの抵抗および相互接続部のキャパシタンスを低減することに、多大の関心事が存在する。
【0004】
ICの相互接続部のRC時定数を低減する1つの方法は、比較的より低い誘電率(εまたはk)を有した中間レベルおよび内部レベルの誘電体(ILD)を使用することによって、ICの様々な要素間で生成されるキャパシタンスを低減することである。これらの材料は、実用的に誘電率が3.9より小さく、稠密なSiOの誘電率である。
【0005】
1つのタイプの低k(low-k)のILDは、ヒドロシルセスキオキサン(HSQ:hydrosilsesquioxane)から形成された多孔性SiOであり、それは、スピンオンコーティング技術によって堆積することができる流動可能な酸化物である。スピンオン工程が完了後、材料がベーキングされ、溶剤が除去されて、シリコン二酸化物(ガラス)が残り、それは多孔性である。多孔性酸化物層の誘電率は、例としてほぼ2.0からほぼ3.8のオーダーであり、確実に3.9より小さい。理解可能なように、有孔率の程度が大きくなるにつれて、誘電率が小さくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スピンコーティングによって堆積された、言及した誘電体材料は、スピンオングラス(SOG)材料としばしば呼ばれる。これらの材料は、低kのILDを提供する見込みを示しているが、それらの堆積は、はなはだ高価になり得る。さらに、堆積されたILDの厚さは、ウェハ全体にわたって一様になり得ず、それは、その処理されたウェハから形成されるデバイスおよび回路の電気的特性の整合性に悪い影響を与え得る。このようなことから、既知の技術の言及した少なくとも不足分に対処する、IC用途におけるSOG層を形成する方法が、必要なものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一例である実施形態によれば、誘電体材料を堆積する方法は、基板に、少なくとも1つの層をその基板の上に設けることを含む。この方法は、ある物質で上部層の上部表面を予め濡らし、溶液をスピンコーティングして誘電体材料を形成することをさらに含む。
【0008】
他の例である実施形態によれば、半導体構造が、基板の上に配置された多孔性で低kの誘電体材料の層を含み、その材料は、層全体にわたって厚さを有し、その厚さは、表面全体にわたって標準偏差が+0.728%である均一性を有する。
【0009】
本発明は、以下の詳細な記述から、添付の図面とともに読まれたとき、最良に理解される。様々な特徴が必ずしも尺度に合わせて描かれていないことが、強調される。実際、寸法は、議論を明確にするため、任意に大きくされ、または小さくされることがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の詳細な記述では、説明する目的であって限定するものでなく、具体的な細部を開示する例である実施形態が、本発明の十分な理解を得るために、述べられる。しかし、本発明は、本明細書で開示された具体的な細部から離れた他の実施形態で実施することができることが、本開示の恩恵を受けた当業者に明らかになる。さらに、よく知られたデバイス、方法および材料についての記述は、本発明の記述をあいまいにしないように、省略することがある。
【0011】
図1は、一例である実施形態による、半導体ウェハの上に低k誘電体層を形成するプロセス100のフローチャート図である。例示するように、ウェハは、半導体基板と、その上に形成された少なくとも1つの他の層とを含む。基板の上の1つの層または複数の層は、IC中の通常の層とすることができ、これらに限定されないが、ドーピングされた半導体層、ドーピングされていない半導体層や誘電体層の金属層を含み、パターン形成された金属層や、半導体処理技術の当業者の視野内にある他の層を含む。
【0012】
ステップ101で、ウェハが準備(provide)される。ステップ102で、溶剤が、ウェハの最上部表面の上に施される。有利には、溶剤は、ウェハの上部表面を適切に洗浄するように、選択される。特徴として、溶剤は、ウェハの表面における表面張力を実質的になくさない場合でも、著しくそれを減少する。以下にさらに十分に述べるように、表面張力は、ウェハへのSOGのスラリーの付着を妨害し、それによってスラリーの堆積が妨げられる。
【0013】
例示の実施形態によれば、スラリーは、ヘキサメチルジシロキサン(シロキサン)の溶液中のヒドロシルセスキオキサンポリマ(HSQ)の溶液である。この溶液は、例示的に、容積で80%シロキサン/20%HSQである。この例である実施形態では、予め濡らすためのものとして使用される溶剤は、有益には、同様にシロキサンである。ステップ102で、ウェハが、約75rpmで約2.5秒間、回転させられているとき、約3.0mlから約5.0mlのシロキサンが、ウェハ上に施される。次に、ウェハが、約1000rpmの速度で約4.0秒間、スピンさせられ、ウェハ表面全体にわたってより均等に溶剤が広げられる(散布)。
【0014】
ステップ103で、HSQ/シロキサン溶液が、公知のスピンオン技術でウェハ上に施される。最適な均一性を得るために、SOG散布ステップが、有利には、約70rpmから約75rpmに増加され、回転時間が、1.5秒から2.0秒に変更される。「高速」回転ステップは、最初のスラリー堆積ステップに続いて行われる。「高速」でのウェハの回転速度は、塗布されるSOG膜の所望の厚さに応じて、最適な厚さを得るように調節される。たとえば、平均厚さが4500ÅであるSOG層には、高速ステップでのウェハの回転速度は、約4000rpmである。平均厚さが2000Åである層には、回転速度は、約2000rpmである。
【0015】
スピンステップが完了した後、ステップ104で示すように、ウェハが、公知の方法によって熱処理(ベーキング)を受ける。これによって、多孔性で低kのSiO層が形成されることになる。最後に、ステップ105で、ウェハは、さらに処理することができる。この追加の処理は、公知の技術による金属化処理およびデバイス製造を含むことができる。
【0016】
例示の方法の製造シーケンスは、図2A〜2Eに示され、そこでは例示のウェハが、例示の方法によって処理されて、低kのILDが形成される。
【0017】
図2Aは、ウェハ201を示し、それは、基板204を含み、それは、例示的に、単結晶シリコンなどの半導体である。基板は、ウェハの処理のこの段階で、少なくとも1つの他の層をその上に配置される。これらの例示の層202および203は、他の誘電体層(たとえば、ILD)、他の半導体層、酸化物内の金属層や当業者の視野内の他の層とすることができる。例である実施形態の低kのILDは、直接基板の上に製造することができ、上記に述べた層および例である実施形態の少なくとも1つの低kのILDを含め、他の層が、第1の低kのILDの上に形成することができることにも留意されたい。
【0018】
図2Bは、ウェハ201の回転206および予め濡らすための溶剤205の堆積を示し、それは、例示的に、シロキサンである。このシーケンスは、図1のステップ102に関して述べたシーケンスと実質的に同じである。
【0019】
予め濡らすことが完了された後、図2Cに示すように、予め濡らされたウェハ201が、206でスピンされている間、スラリー207が、堆積される。このシーケンスは、基本的に、ステップ103で述べたシーケンスと同じである。図2Dは、ウェハ201の上部表面の上に堆積されたスラリー208を示す。
【0020】
スラリーが堆積された後、ウェハは、ベーキングされて、図2Eに示すように、低k誘電体材料層209が、ウェハ201の上に形成される。この層209は、ILDまたは必要に応じて他の誘電体層とすることができる。低k誘電体層209の形成後、ウェハは、必要に応じてさらに処理することができる。
【0021】
図1のステップ102における、および図2Bのウェハの予め濡らすことの後の処理は、大部分について、よく知られており、たとえば、Soreb Ghandi著、「VLSIの原理および技術、シリコンおよびガリウムのヒ化物(VLSI Principles and Technology, Silicon and Gallium Arsenide)」第2版(1994年)のテキスト、725ページなどに述べられているようなものである。この参考文献の開示は、参考文献としたことにより本明細書に明確に組み込まれる。しかし、公知の処理シーケンスと例である実施形態のシーケンスの間の差は、半導体プロセス技術の当業者に容易に明らかであることに、留意されたい。
【0022】
ステップ103のスラリーの堆積およびステップ104の熱処理は、よく知られているはずであるが、図1のステップ102および図2Bの例である実施形態による予め濡らすことは、公知の方法に比べて、明確に有利である。
【0023】
例示の目的であって限定するものでなく、例である実施形態の方法によって、十分な厚さの低kのILDを生成するのに十分な厚さのスラリー層を堆積するために必要なスラリー量が、著しく減少することになる。この目的のため、例である実施形態に関して述べたように予め濡らすことによって、一定厚さの層を形成するために必要なスラリーの量が、既知の技術による4.0mlから、それは予め濡らす分を含んでいないが、その量から、この例である実施形態の予め濡らす技術が使用されたとき、スラリー量は、1.4mlに低減される。この低減は、浪費されるスラリーが、使用されるスラリー量のほぼ65%だけ、著しく低減されることになる。スラリーの成分が、半導体ウェハを処理する中でもっとも高価なものの1つになり得るからである。
【0024】
コスト節約に加えて、出願人は、例である実施形態の予め濡らす技術を使用することによって、その結果得られるSOG層(低kのILD)のウェハ全体にわたる均一性が、既知の技術に比べて著しく向上されると判断した。このため、スピンコーティングによってSOGを堆積する標準的な方法では、平均厚さが4482.73Åで、厚さの標準偏差が±39.3589.73Åまたは±0.878%になる層が、もたらされる。これとは対照的に、スラリーの浪費を減少しながら、例である実施形態の予め濡らす技術を用いて生成されるSOGの層は、厚さが4433.09Åで、その標準偏差が±32.2566Åまたは±0.728%であった。もちろん、この標準偏差は、単に例示的であり、厚さの標準偏差は、±0.728%より小さくすることができる。層の厚さの均一性のこの向上によって、他の利点の中で、このウェハから形成される回路全体にわたって、より一様でより整合性のある電気的特性が得られる。
【0025】
他の例である実施形態によれば、厚さの均一性および再現性は、予め濡らす処理を施す前にヘキサメチルジシラザン(HMDS)でウェハに「下塗り(priming)」することによって、上記の例である実施形態に比べて、さらに改良することができる。すなわち、ステップ102または図2Bのシーケンスの前に、HMDS蒸気が供給され、その後120℃で約10分間、真空熱処理(ベーキング)が施される。
【0026】
これまで述べた例である実施形態は、予め濡らすためのものとしてのシロキサンとともに、SOGの材料としてのシロキサン溶液中のHSQの使用に主に焦点を合わせている。他の材料が、予め濡らすものおよびSOGスラリーとして使用することができることに、留意されたい。たとえば、オクタメチルトリシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサンを予め濡らすためのものとして使用して、プロセスラチチュードを多分さらに改良し、ウェハ毎に低k誘電体を形成するために必要なSOG溶液(スラリー)の容積を多分さらに減少することができる。
【0027】
他の例である実施形態では、必要なスラリー量および堆積された膜の均一性のさらなる効率化を達成するために、シロキサンだけの代わりにHSQのための溶剤としてのヘキサメチルジシロキサンと組み合わせて、オクタメチルトリシロキサン(容積で約5から約50%の濃度である)を使用することができる。
【0028】
例である複数の実施形態を、例示の複数の実施形態の議論に関して詳細に記述してきたが、本開示の利益を受ける当業者に、本発明の変更が明らかになることは、明確である。そのような変更および変形は、特許請求の範囲の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】例である実施形態による誘電体層を形成するプロセスのフローチャート図である。
【図2A】例である実施形態による誘電体層を形成する形成シーケンス中の集積回路の一断面図である。
【図2B】例である実施形態による誘電体層を形成する形成シーケンス中の集積回路の一断面図である。
【図2C】例である実施形態による誘電体層を形成する形成シーケンス中の集積回路の一断面図である。
【図2D】例である実施形態による誘電体層を形成する形成シーケンス中の集積回路の一断面図である。
【図2E】例である実施形態による誘電体層を形成する形成シーケンス中の集積回路の一断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料を堆積する方法であって、
基板に、少なくとも1つの層を前記基板の上に設け、
上部層の上部表面を物質で予め濡らし、
溶液をスピンコーティングし、
前記誘電体材料を形成する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記物質が、ヘキサメチルジシロキサン(シロキサン)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶液が、ヒドロシルセスキオキサン(HSQ)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記溶液の溶剤が、シロキサンである、請求項3の方法。
【請求項5】
前記予め濡らすことが、前記物質を堆積する間、前記ウェハをスピンすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記誘電体材料が、SiOである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が、
予め濡らす前に、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)の蒸気で前記ウェハを下塗りし、
前記下塗り後、しかし前記予め濡らす前に、前記基板に熱を加える、
ことを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記物質が、オクタメチルトリシロキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記物質が、デカメチルテトラシロキサンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記物質が、オクタメチルトリシロキサンである、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
半導体構造であって、
基板上に配置された、多孔性で低kの誘電体材料の層を含み、
前記材料が、前記層にわたって厚さを有し、
前記厚さが、表面にわたって標準偏差が+0.728%である均一性を有する、
半導体構造。
【請求項12】
前記表面が、ウェハの上部表面である、請求項11に記載の半導体構造。
【請求項13】
前記層が、中間層の誘電体層である、請求項11に記載の半導体構造。
【請求項14】
前記層が、内部層の誘電体層である、請求項11に記載の半導体構造。
【請求項15】
前記層が、約2.0から約3.8の範囲の誘電率を有する、請求項11に記載の半導体構造。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【公表番号】特表2007−506276(P2007−506276A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526795(P2006−526795)
【出願日】平成16年9月18日(2004.9.18)
【国際出願番号】PCT/IB2004/051793
【国際公開番号】WO2005/029567
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(501344315)コニンクリユケ フィリップス エレクトロニクス エヌ.ブイ. (174)
【Fターム(参考)】