説明

体積を小さくした多帯域の放射線検出器及び当該放射線検出器の作製方法

【課題】 赤外検出器は、様々なノイズ源によって望ましくない影響を受ける。しかも一部の赤外検出器は、たとえば熱的に励起された電流キャリアによって発生するノイズを減少させるため、液化窒素温度(77K)以下の温度で動作するように冷却される。
【解決手段】 広帯域放射線検出器は第1型の電気伝導を有する第1層を有する。第2層は、第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する。第3層は、ほぼ前記第2型の電気伝導、及び、前記第1スペクトル領域の波長よりも長い波長を有する第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する。当該広帯域放射線検出器は複数の内部領域をさらに有する。各内部領域は少なくとも部分的に前記第3層内部に設けられて良い。各内部領域は、前記第3層の屈折率とは異なる屈折率を有して良い。前記複数の内部領域は規則的に繰り返されるパターンに従って配置されて良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して放射線検出器に関し、より詳細には体積を小さくした多帯域の放射線検出器及び当該放射線検出器の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外検出器は様々な用途に用いられる。たとえば赤外検出器の中には、軍事分野、リモートセンシング、及び赤外による天文学研究に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
赤外検出器は、様々なノイズ源によって望ましくない影響を受ける。しかも一部の赤外検出器は、たとえば熱的に励起された電流キャリアによって発生するノイズを減少させるため、液化窒素温度(77K)以下の温度で動作するように冷却される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
多帯域放射線検出器及び当該多帯域放射線検出器の作製方法が開示されている。
【0005】
一の実施例によると、広帯域放射線検出器は第1電気伝導型を有する第1層を有する。第2層は、第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する。第3層は、ほぼ前記第2型の電気伝導、及び、前記第1スペクトル領域の波長よりも長い波長を有する第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する。当該広帯域放射線検出器は複数の内部領域をさらに有する。特定の実施例では、各内部領域は少なくとも部分的に前記第3層内部に設けられて良い。前記複数の内部領域の各々は、前記第3層の屈折率とは異なる屈折率を有して良い。特別な実施例では、前記複数の内部領域の各々は、有機ポリマー、シリコン化合物、及び空気ギャップのうちの1つ以上を有する。様々な実施例では、前記複数の内部領域は規則的に繰り返されるパターンに従って配置されて良い。
【0006】
方法の実施例では、広帯域放射線検出器の作製方法は、第1電気伝導型を有する第1層を形成する工程を有する。当該方法は、第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第2層を形成する工程をさらに有する。当該方法はまた、ほぼ第2型の電気伝導及び第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第3層を形成する工程をも有する。この特定実施例では、前記第2スペクトル領域は、前記第1スペクトル領域内の波長よりも長い波長を少なくとも1つ有する。当該方法は、前記第3層の一部を選択的に除去する工程を有する。この例では、前記の第3層から選択的に除去される一部は、規則的に繰り返されるパターンに従って相互に配置される。当該方法はまた、前記の第3から選択的に除去された一部の各々を、前記第3層の屈折率とは実質的に異なる屈折率を有する保護層で部分的に充填する工程をも有する。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示された特別な実施例は1つ以上の技術的な利点を供することができる。たとえば様々な実施例は、部分的にはノイズ緩和の改善に起因した明瞭な像及び広帯域赤外検出を供することが可能となる。特別な実施例は、液化窒素温度(約77K)以下の動作温度及び最大では所望の動作温度−たとえば約200〜250Kの範囲内の動作温度−での広帯域赤外検出が可能となる。特定の実施例は様々なスペクトル領域内で改善された特性を示すことができる。特定の実施例は、これらの利点の全て又は一部を供して良いし、又は全く供さなくても良い。特定の実施例は他の利点を1つ以上供することができる。そのような他の利点のうちの1つ以上は、図面、明細書、及び特許請求の範囲から当業者には自明なものであって良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1A】体積を小さくした多帯域の赤外検出器の焦点面アレイの一部に係る典型的な実施例の斜視図である。
【図1B】図1Aの赤外検出器の典型的実施例の断面を図示している。
【図1C】図1Aの赤外検出器の小さくなった体積のパターンを示す斜視図である。
【図2】図1Aの赤外検出器の作製に利用可能な方法に係る一の典型的な実施例を示すフローチャートである。
【図3】体積を小さくした多帯域の赤外検出器の焦点面アレイの一部の断面積に係る他の実施例を表している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明及び本発明の利点をより完全に理解するため、ここで添付の図面と共に以下の詳細な説明を参照することにする。
【0010】
本明細書において開示されている様々な例示の実施例は、放射線検出器及び当該放射線検出器の作製方法という文脈において説明される。特定の実施例は、多重赤外スペクトル領域内で改善された性能を示すことができる。様々な実施例は、少なくとも部分的にはノイズ緩和の改善に起因する、より高い動作温度での広帯域赤外検出を供することができる。さらに後述するように、特別な実施例は、赤外検出器内部のよりノイズの多い領域の体積を減少させることによって少なくとも部分的にノイズを緩和することができる。たとえ本明細書に開示された様々な例示の実施例が放射線検出器及び当該放射線検出器の作製方法という文脈において説明されるとしても、本開示の教示は、様々な他の放射線検出器に適用されて良い。様々な他の放射線検出器にはたとえば、フォトダイオード、光伝導性検出器、光起電力検出器、フォトダイオード検出器、又は様々な異なるスペクトル領域に対して応答する任意の他の放射線検出器が含まれる。それに加えて、本明細書に開示されている特別な実施例は、現時点で既知の、すなわち現存する任意の数の教示を用いて実施されて良い。本開示は、例示された実施例、検出器材料、図面、及び後述する教示に限定されてはならない。それに加えて図面は必ずしも縮尺通りに描かれている訳ではない。
【0011】
図1A-1Cは、一の例示の実施例による様々な作製段階での赤外検出器102の焦点面アレイ(FPA)100の一部を図示している。具体的には、図1Aは、FPA100の8個の赤外検出器102a、102b、102c、102d、102e、102f、102g、102hの斜視図を表している。たとえこの例が8個の赤外検出器102a-102hを有するとしても、任意の数の検出器が、本発明の技術的範囲から逸脱することなく用いられても良い。様々な実施例では、各赤外検出器102は、ノイズが減少した多帯域赤外検出をとなりうる。それに加えて、各赤外検出器102は、従来の赤外検出器の動作温度範囲よりも高い動作温度で機能することができる。たとえば特別な実施例は、液化窒素温度(約77K)以下の動作温度及び最大では所望の動作温度−たとえば約200〜250Kの範囲内の動作温度−での広帯域赤外検出が可能となる。たとえ図1Aが少なくとも8個の赤外検出器102からなる2次元アレイを表しているとしても、FPA100は、1次元、2次元、又は3次元に配列された任意の適切な数の赤外検出器を有しても良い。それに加えて各赤外検出器102は、放射線検出に適した任意の形状及び寸法を有して良い。
【0012】
図1Bは、FPA100の2つの赤外検出器102aと102bの断面を図示している。この例では、各赤外検出器102は、複数の半導体層106、108、及び110、該複数の半導体層106、108、及び110のうちの少なくとも1つの内部に設けられた複数の内部領域112、保護層114、並びにコンタクト116を有する。コンタクト116の各々は基板104の外側に設けられている。各赤外検出器102は、ギャップ118によって他の赤外検出器102とは少なくとも部分的に分離されて良い。特定の場合では、ギャップ118では検出も吸収も起こらない。さらに後述するように、様々な実施例では、半導体層106、108、及び110の選択された部分の体積が減少することで、多帯域赤外検出の性能について妥協することなく、ノイズの緩和及び/又はより高温でのFPA100の動作が可能となる。たとえ特別な実施例が、少なくとも3層の半導体層106、108、及び110、該半導体層106、108、及び110のうちの少なくとも1層内部に設けられた複数の内部領域112、保護層114、並びにコンタクト116を有するとしても、他の実施例はこれらの層の全部又は一部を有して良いし、又はこれらの層を全く有していなくても良い。それに加えて他の実施例は、たとえば1層以上の真性層を含む任意の適切な数の追加層及び/又は代替層を有して良い。任意の適切な数の追加層及び/又は別な層は光吸収及び/又は光透過をしても良いし、しなくても良い。
【0013】
図2は赤外検出器102の作製に利用可能な方法に係る一の例示的実施例を表すフローチャート200である。工程202では、複数の半導体層106、108、及び110が形成される。図1Aを参照すると、1層以上の基板104が、上に複数の半導体層106、108、及び110を形成することが可能な底部を供して良い。特別な実施例では、基板104は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、テルル化カドミウム(CdTe)、テルル化カドミウム亜鉛(CdZnTe)、砒化ガリウム(GaAs)、及び/又は、半導体層106、108、及び110を上に形成することが可能な他の任意の適切な基板104若しくはその組み合わせを有するウエハであって良い。様々な実施例では、基板104は、外側に形成された半導体層106、108、及び/又は110の格子定数とほぼ一致するように備えられて良い。特定の実施例では、FPA100による放射線検出を助けるように、基板104の複数の地点が取り除かれて良い。
【0014】
特別な実施例では、半導体層106、108、及び/又は110はエピタキシー法によって形成されて良い。たとえば分子線エピタキシー法は、各異なる混晶組成を有する半導体層106、108、及び/又は110からなる積層体を可能にする。様々な混晶組成は、複数のスペクトル領域で同時に放射線の検出することを可能にする。それに加えて分子線エピタキシー法は、大面積基板上での成長を可能にする。たとえ特別な実施例が分子線エピタキシー法の文脈において説明されているとしても、任意の適切な処理方法−将来の処理方法を含む−が、基板104の外側に半導体層106、108、及び/又は110を形成するのに用いられて良い。たとえば他の実施例では、有機金属気相成長エピタキシー法及び/又は液層エピタキシー法が用いられても良い。
【0015】
半導体層106、108、及び/又は110のうちの少なくとも2層は、各対応するスペクトル領域での放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する材料を有して良い。特別の実施例では、半導体層106は約5μm〜0.5mmのスペクトル範囲に応答するエネルギーバンドギャップを有して良く、かつ、半導体層110は異なるスペクトル領域−たとえば遠赤外(LWIR)−に応答するエネルギーバンドギャップを有して良い。他の実施例では、半導体層106、108、及び/又は110は、近赤外(NIR)、短波長赤外(SWIR)、中赤外(MWIR)、超遠赤外(VLWIR)、及び/又は、赤外領域に含まれていても良いし含まれていなくても良い他のスペクトル領域のうちの1つ以上に応答して良い。本明細書で用いられているように、NIR放射線は約0.5〜1μmにわたるスペクトル領域を有し、SWIR放射線は約1〜3μmにわたるスペクトル領域を有し、MWIR放射線は約3〜8μmにわたるスペクトル領域を有し、LWIR放射線は約8〜12μmにわたるスペクトル領域を有し、かつVLWIR放射線は約12〜30μmにわたるスペクトル領域を有する。
【0016】
放射線の検出が可能な一の例示的材料はテルル化水銀カドミウム(HgCdTe)である。特別の実施例では、半導体層106、108、及び/又は110の少なくとも一部は、Hg(1-x)CdxTeの式で表されるHgCdTeを有する。HgCdTe混晶組成のxの値は、たとえば所望の赤外波長に対応する半導体層106、108、及び/又は110の光吸収を調節するように選ばれて良い。特別な実施例では、半導体層106はHg0.55Cd0.45Teを有し、かつ半導体層108はHg0.7Cd0.3Teを有して良いが、半導体層106、108、及び/又は110のHg(1-x)CdxTeのxは、たとえば光吸収の所望の範囲に依存して如何なる適切な値であっても良い。他の実施例では、半導体層106、108、及び/又は110は、放射線に応答する追加材料及び/又は代替材料を有して良い。たとえば半導体層106、108、及び/又は110は、テルル化水銀カドミウム亜鉛(HgCdZnTe)及び/又はIII-V半導体材料を有して良い。III-V半導体材料とはたとえば、GaAs、AlGaAs、InAs、InSb、GaSb、及びこれらの混晶である。別例として、半導体層106、108、及び/又は110は、Type-IIの歪み層超格子構造に基づいて良い。
【0017】
様々な実施例では、半導体層106、108、及び/又は110は、各対応する電気伝導型を有して良い。たとえば半導体層106と110はそれぞれn型で、半導体層108がp型であることで、n-p-n極性が形成されて良い。別例として、半導体層106と110はそれぞれp型で、半導体層108がn型であることで、p-n-p極性が形成されて良い。様々な他の適切な電気伝導性のバリエーションが、半導体層106、108、及び/又は110に用いられて良い。このようなバリエーションにはたとえば半導体層の増減も含まれる。図3に表された他の実施例を参照すると、半導体層306と310はそれぞれ、構造及び機能の点において半導体層106と110の実施例と実質的に同一のn型層で、半導体層308は、構造及び機能の点において半導体層108の実施例と実質的に同一のp型層であって良い。任意の適切なドーパント及びドーパント濃度が、半導体層106、108、110、306、308、及び/又は310を、n型又はp型のいずれかとするのに用いられて良い。
【0018】
工程204では、内部領域112の少なくとも一部は、対応する半導体層106、108、及び/又は110の体積を減少させることによって、半導体層106、108、及び/又は110の内部に形成される。たとえば半導体層106、108、及び/又は110の一部は選択的に除去されて良い。特別な実施例では、前記一部は、フォトリソグラフィ及びエッチングによって選択的除去されて良いが、如何なる適切な体積減少プロセス又は該プロセスを組み合わせたものが用いられても良い。半導体層106、108、及び/又は110は、該半導体層106、108、及び/又は110のうちの対応する層を介して光子の運動に影響を及ぼすように設計された周期パターンで構成されて良い。このようにして、内部領域112は、内部領域112を内部に設けることが可能な特別な半導体層106、108、及び/又は110に共鳴効果を引き起こすことが可能となる。よって、たとえ体積が半導体層106、108、及び/又は110の光子検出領域のうちの1つ以上から除去可能であるとしても、これらの減少した体積領域は依然として、正確な放射線検出のため、活性材料中に十分な光子を吸収して共鳴することが可能である。
【0019】
図1Cは、一の実施例によるFPA100の赤外検出器102a、102b、102c、102d、102e、102f、102g、及び102h内部のパターン内に形成された多数の内部領域112を表す斜視図である。この例では、各検出器102は、フォトニック結晶のパターンをとるように配置された28個の内部領域112を有する。特定の場合では、内部領域112に1つ以上のフォトニック結晶パターンを用いることで、半導体層106、108、及び/又は110の1つ以上の光子吸収領域を補償することができる。たとえば1つ以上のフォトニック結晶パターンは、光子の吸収を助けるように、半導体層106、108、及び/又は110の体積が減少した領域を介して電磁波の伝播に影響を及ぼすことができる。たとえこの例が、フォトニック結晶パターンをとるように配置された環状開口部を有する28個の内部領域を有するとしても、任意の(複数の)適切な形状(たとえば長方形、正方形、八角形、楕円、菱形等)及び/又はパターンが用いられて良い。それに加えて他の実施例は放射線検出器102のアレイを有して良い。その放射線検出器102のアレイは、該アレイの他の放射線検出器102とは異なった状態で備えられた各放射線検出器102に対応する内部領域112を有する。
【0020】
様々な実施例では、内部領域112はそれぞれ一般的には、半導体層106、108、及び/又は110の1つ以上の平面に対して実質的に垂直な軸に沿って延在する。図1Aに図示されているように、たとえば各内部領域112は、半導体層110の外側面から、半導体層110の内側面及び半導体層108の外側面と内側面を介して、半導体層106へ少なくとも部分的に入り込むように延在する。たとえ図示された実施例において、各内部領域112が半導体層106、108、及び/又は110の一部を介して連続的に延在しているとしても、他の実施例において、半導体層106、108、及び/又は110は各対応する内部領域112を有して良く、その各対応する内部領域112は、半導体層106、108、及び/又は110の他の内部領域112と連続していなくて良い。それに加えて内部領域112の一部又は全部は、半導体層106、108、及び/又は110を貫通しても良いし、半導体層106、108、及び/又は110へ部分的に入り込むように延在しても良いし、又は半導体層106、108、及び/又は110へは全く入り込まなくても良い。
【0021】
様々な実施例では、内部領域112は少なくとも、半導体積層体106、108、及び110の最も長い波長のバンドギャップ吸収を有する半導体層106、108、及び/又は110内部に設けられて良い。従って特定の場合では、FPA100の各検出器102内部に内部領域112が形成される結果、FPA100の最も長い波長のバンド吸収領域の体積が減少する。この最も長い波長のバンド吸収領域の体積減少は多数の利点を供することができる。たとえば最も長い波長のバンド吸収領域の体積が減少することで、減少しなければこの領域によって発生すると思われる様々なノイズを減少させることができる。特に、拡散と再結合によって生じる電流に起因するノイズは、内部領域112によって減少可能な電気信号ノイズの種類であると考えられる。それに加えて、1/fノイズ源は、内部領域112によって実現される堆積の減少によって緩和することができる。本明細書において用いられている1/fノイズという語は概して、S(f)∝1/fαで表されるパワースペクトル密度を有するノイズを意味する。ここで、fは周波数で、0<α<2で、通常αは1に近い値である。従来の赤外検出器に係る様々な他の種類のノイズもまた、FPA100の最も長い波長のバンド吸収領域内部に内部領域112を形成することによって緩和することができる。
【0022】
特定の実施例では、半導体層106、108、及び/又は110の体積が減少する結果、体積の減少した半導体層106、108、及び/又は110の表面積と体積に対する表面の割合が増大する。表面積と体積に対する表面の割合が増大することで、再結合及び/又はキャリア損失の危険性を増大させることで、高ノイズ電流及び様々な他の問題を招く恐れがある。
【0023】
工程206では、保護層114がFPA100の一部の外側に形成される。図1Bに図示されているように、たとえば保護層114は、半導体層106、108、及び/又は110の実質的に全てが曝露された表面の外側に形成されて良い。特別な実施例では、保護層114は少なくとも部分的に各内部領域112の空間を埋めて良い。たとえば内部領域112の曝露表面を含むこれらの曝露表面の保護は、特定の場合では、再結合及び/又はキャリア損失の危険性を緩和することができる。一の実施例によると、保護層114は、ワイドバンドギャップグループであるII-VI族材料−たとえばテルル化カドミウム(CdTe)−を有して良い。しかし保護層114は、任意の適切な材料、材料積層体、及び/又は材料の組み合わせを有して良い。
【0024】
工程208では、内部領域112は全体的又は部分的に埋め戻されて良い。たとえば各内部領域112の空間の残りの部分は少なくとも部分的に埋められて良い。特別な実施例では、空間を埋める(複数の種類の)材料は、内部領域112を内部に設けることが可能な半導体層106、108、及び/又は110の各対応する屈折率とは異なる屈折率を有して良い。たとえば先に工程206で述べたとおり、空間は全体的又は部分的に保護層114によって埋められて良い。それに加えて又はその代わりに、空間は全体的又は部分的に1層以上の他の層によって埋められて良い。他の層とはたとえば、有機ポリマー(たとえばフォトレジスト)、酸化物(たとえば二酸化シリコン)、窒化物(たとえばシリコン窒化物)、及び/又は他の適切な充填層である。様々な実施例では、空間の全部又は一部は埋められないままにされることで、内部領域112内部に空気ギャップが設けられた状態にされて良い。他の実施例では、各空間は少なくとも部分的に、1種類以上の気体で充填された、かつ/又は実質的に物質を含まない(たとえば真空状態の)閉じられた領域を画定して良い。特定の実施例では、全体的又は部分的に埋められた内部領域112の屈折率及び/又は誘電率は、内部領域112を内部に設けることができる特別な半導体層106、108、及び/又は110の屈折率及び/又は誘電率とは異なる。屈折率及び/又は誘電率におけるこれらの差異は、特定の場合では、半導体層106、108、及び/又は110を貫通するように移動する光子への有利な共鳴効果を有することができる。
【0025】
工程210では、半導体層の積層体の最も外側の表面が平坦化されて良い。図1Aに図示されているように、たとえば半導体層110の最も外側の表面は、より平坦な表面を供するようにエッチバックされて良い。特別な実施例では、平坦化は、各内部領域112の外側に1つ以上の各対応する微少電気機械システム(MEMS)を形成する工程をさらに、あるいは代わりに有して良い。たとえば各内部領域112は、該内部領域112の内部に設けられた犠牲材料の外側に形成されたMEMS又はブリッジを有して良い。続いて犠牲材料は全体的又は部分的に除去されることで、その除去された場所に、アンダーカットされたMEMS構造の内側に空気ギャップが設けられた状態にすることができる。このようにして、内部領域112の各々は各対応する空気ギャップを有し、かつ最も外側の半導体層106、108、及び/又は110はそれでもなお実質的に平坦な表面を供することができる。
【0026】
工程212では、各対応するコンタクト116が、各赤外検出器102の外側に形成される。特別な実施例では、各コンタクト116は、図3を参照しながら後で詳述するように、赤外検出器112が、読み出し回路へ電気的に信号を送ることを可能にする。コンタクト116は、ニッケル、金、銅などを含む任意の適切な導体を有して良い。特定の実施例では、コンタクト116は従来のフォトリソグラフィ法によって形成されて良いが、如何なる形成手法が用いられても良い。様々な実施例では、当業者には分かるように、追加のコンタクトが形成されても良い。たとえば1層以上の半導体層106、108、及び/又は110に対して電気的な接地を供することが可能な接地コンタクト(明示されていない)がFPA100の端部に形成されても良い。
【0027】
動作時においては、半導体層106、108、及び/又は110のうちの少なくとも2層は、十分なエネルギーの光子がこれらの層のうちの1層内において価電子帯から伝導帯へ電子を励起させるときに、放射線を検出することが可能となる。そのような電子は、適切な読み出し集積回路(ROIC)によって収集され、かつ電気信号に変換される。特別な実施例では、FPA100はまた、図3で詳述するように、検出器のアレイをROICに対して物理的に一致させることを表し、かつそのような物理的に一致させることを含んで良い。
【0028】
図3は、他の実施例による体積を小さくした多帯域赤外検出器302の焦点面アレイ(FPA)300の一部の断面を図示している。この例では、各対応する導体コネクタ320(たとえばインジウム製バンプ)は、各赤外検出器302をROIC324へ電気的かつ物理的に結合させる。FPA300の動作は、FPA300に衝突する各対応する波長を有する3つの光ビーム350、352、及び354の文脈において説明することができる。赤外検出器302aの半導体層306は、光ビーム350と352から光子を吸収することができる。光ビーム354は半導体306を通り抜けて半導体層310を照射することができる。ここで光ビーム354の光子は赤外検出器302bによって吸収される。光子が吸収された結果、ROIC324は、伝導帯へ励起されたその光子吸収に対応する電子を、対応する赤外検出器302から検出することが可能となる。よって特別な実施例は、1つの赤外検出器302が有する2つの異なる領域での2つの異なる光子エネルギーを吸収することが可能である。
【0029】
特別な実施例では、半導体層306と310はそれぞれ、構造及び機能の点において半導体層106と110の実施例と実質的に同一のn型層で、半導体層308は、構造及び機能の点において半導体層108の実施例と実質的に同一のp型層であって良い。よって半導体積層体は、特定の実施例では、他のn型半導体層306とp型半導体層308との間に設けられたn型半導体層310を有して良い。特定の実施例では、内部領域312、層314、及びコンタクト316はそれぞれ、構造及び機能の点において図1Bの内部領域112、保護層114、及びコンタクト116と実質的に同一であって良い。
【0030】
従って特別な実施例は広帯域の放射線検出が可能である。特定の実施例では、放射線検出器の2つの異なる領域は各対応する異なるバンドギャップを有して良い。ノイズの多いバンドギャップ領域の体積を減少することで、支配的なノイズ源のノイズ寄与を減少させることが可能である。一部の実施例では、他の領域の体積を減少させても良い。それは、その領域が拡散ノイズ源であるか否かにはよらない。たとえば層108と308が拡散ノイズ源であるか否かによらず、FPA100と300のいずれも層108と308の体積を減少させた状態を表している。たとえ一部の実施例において吸収領域の材料が除去されるとしても、体積が減少した吸収領域の共鳴に影響を及ぼす内部領域112のパターンを含めることによって、検出器の性能は維持可能であるし、場合によっては向上させることすら可能である。特別な実施例では、フォトニック結晶パターンが内部領域112に用いられて良い。ノイズを減少させることができる可能性に加えて、様々な放射線検出器は、従来の赤外検出器の動作温度よりも高い動作温度で機能しうる。前述したように、特別な実施例は、検出波長に依存して、約200〜250Kの範囲内の動作温度での広帯域の赤外検出が可能である。
【0031】
本明細書において開示されたシステム及び装置の構成要素は一体化されても良いし、それぞれ別個に存在しても良い。しかも素子及び/又は層の機能は、構成要素を増やす、減らす、又は他の構成要素を追加することによって実行されて良い。たとえば特別な実施例は、1層以上のフィルタリング層及び/又は1層以上の回折格子を有して良い。別例として、特別な実施例は2層の半導体層しか有していなくても良い。当該方法は、より多くの工程、より少ない工程、又は別な工程を有しても良い。たとえば工程206及び208が、内部領域112内部に保護層114を形成する工程を有する1つの工程に組み込まれても良い。それに加えて複数の工程は如何なる適切な順序で実行されても良い。本明細書において開示されたシステム及び装置の動作は、コンピュータによる読み取りが可能な媒体において実施される任意の適切なロジックを用いて実行されて良い。
【符号の説明】
【0032】
100 焦点面アレイ(FPA)
102 赤外検出器
104 基板
106 半導体層
108 半導体層
110 半導体層
112 内部領域
114 保護層
116 コンタクト
118 ギャップ
302 赤外検出器
306 半導体層
308 半導体層
310 半導体層
312 内部領域
314 層
316 コンタクト
318 ギャップ
320 導体コネクタ
324 読み出し集積回路(ROIC)
350 光ビーム
352 光ビーム
354 光ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気伝導型を有する第1層;
第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第2層;
前記第2型の電気伝導、及び、前記第1スペクトル領域の波長よりも長い波長を有する第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第3層;並びに、
複数の内部領域;
を有する広帯域放射線検出器であって、
前記複数の内部領域の各々は、少なくとも部分的に前記第3層の内部に設けられ、
前記複数の内部領域の各々は、前記第3層の屈折率とは異なる屈折率を有し、かつ
前記複数の内部領域は規則的に繰り返されるパターンに従って配置される、
広帯域放射線検出器。
【請求項2】
前記複数の内部領域の各々は、有機ポリマー、シリコン化合物、及び空気ギャップからなる群から選ばれる1つ以上のスペーサを有する、請求項1に記載の広帯域放射線検出器であって、
0.1μm以上かつ0.5μm未満、0.5μm以上かつ1μm未満、1μm以上かつ3μm未満、3μm以上かつ8μm未満、8μm以上かつ12μm未満、及び、12μm以上かつ30μm未満からなる群から選ばれる少なくとも2つのスペクトル波長範囲内の赤外(IR)放射線に応答する、広帯域放射線検出器。
【請求項3】
1つの焦点面を有するアレイ内に配置される複数の広帯域放射線検出器のうちの1つである、請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項4】
前記第1層がp型材料を有し、かつ
前記第2層及び第3層がn型材料を有する、
請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項5】
最大250Kの動作温度での広帯域赤外検出が可能である、請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項6】
前記第1層が前記第2層と第3層との間に設けられている、請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項7】
前記第3層が前記第1層と第2層との間に設けられている、請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項8】
前記複数の内部領域の各々が少なくとも、前記第3層の第1表面から、前記第3層を介して、前記第3層の第2表面まで延在する、請求項1に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項9】
前記複数の内部領域の各々が少なくとも部分的に前記第1層へ入り込むように延在する、請求項8に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項10】
前記複数の内部領域の各々が少なくとも部分的に前記第2層へ入り込むように延在する、請求項8に記載の広帯域放射線検出器。
【請求項11】
前記複数の内部領域の各々が、前記第1層、前記第2層、及び前記第3層の一部へ入り込むように延在する請求項1に記載の広帯域放射線検出器であって、
前記第1層、前記第2層、及び前記第3層の各々を通過する光子を検出することが可能な、広帯域放射線検出器。
【請求項12】
第1電気伝導型を有する第1層を形成する工程;
第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第2層を形成する工程;
第2型の電気伝導、及び、前記第1スペクトル領域内の波長よりも長い波長を少なくとも1つ有する第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第3層を形成する工程;
前記第3層の一部を選択的に除去する工程であって、前記の第3層から選択的に除去される一部は規則的に繰り返されるパターンに従って配置される、工程;
前記の第3から選択的に除去された一部の各々を、前記第3層の屈折率とは実質的に異なる屈折率を有する保護層で部分的に充填する工程;
を有する広帯域放射線検出器の作製方法。
【請求項13】
前記第3層の誘電率とは異なる誘電率を有する材料によって、前記複数の内部領域の他の部分を少なくとも部分的に充填する工程をさらに有する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
当該広帯域放射線検出器が、0.1μm以上かつ0.5μm未満、0.5μm以上かつ1μm未満、1μm以上かつ3μm未満、3μm以上かつ8μm未満、8μm以上かつ12μm未満、及び、12μm以上かつ30μm未満からなる群から選ばれる少なくとも2つのスペクトル波長範囲内の赤外(IR)放射線に応答する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
1つの焦点面を有するアレイ配置内に複数の当該広帯域放射線検出器を形成する工程をさらに有する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第1層がp型材料を有し、かつ
前記第2層及び第3層がn型材料を有する、
請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第1層及び第2層のうちの1層以上から一部を選択的に除去する工程であって、前記の第1層及び第2層のうちの1層以上から選択的に除去される一部の各々は、前記の第3層から選択的に除去された一部のうちの1つに対応する、工程;並びに、
前記の第1層及び第2層のうちの1層以上から選択的に除去された各部分を、前記保護層によって少なくとも部分的に充填する工程;
をさらに有する、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
1つの焦点面を有するアレイ内に配置された多帯域放射線検出器のアレイであって、
各多帯域放射線検出器は:
第1電気伝導型を有する第1層;
第2型の電気伝導及び第1スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第2層;
前記第2型の電気伝導、及び、前記第1スペクトル領域の波長よりも長い波長を有する第2スペクトル領域内の放射線に応答するエネルギーバンドギャップを有する第3層;並びに、
複数の内部領域であって、前記複数の内部領域の各々は、少なくとも部分的に前記第3層の内部に設けられ、かつ前記複数の内部領域の各々は、前記第3層の屈折率とは異なる屈折率を有する、複数の内部領域;
複数の金属コンタクトであって、各金属コンタクトは、当該多帯域放射線検出器のアレイのうちの1つに係る複数の内部領域の外側に設けられている、複数の金属コンタクト;
を有し、
前記複数の内部領域は規則的に繰り返されるパターンに従って配置され、
前記第2層及び第3層は、0.1μm以上かつ0.5μm未満、0.5μm以上かつ1μm未満、1μm以上かつ3μm未満、3μm以上かつ8μm未満、8μm以上かつ12μm未満、及び、12μm以上かつ30μm未満からなる群から選ばれる複数のスペクトル波長範囲のうちの1つ以上の範囲内の赤外(IR)放射線に応答する、
多帯域放射線検出器のアレイ。
【請求項19】
前記複数の内部領域の各々が、保護層、シリコン化合物を有する層、及び空気ギャップからなる群から選ばれる1つ以上のスペーサを有する、請求項18に記載の多帯域放射線検出器のアレイ。
【請求項20】
複数の微少電気機械システム(MEMS)構造をさらに有する請求項18に記載の多帯域放射線検出器のアレイであって、前記MEMS構造の各々は前記複数の内部領域のうちの1つの外側に設けられる、請求項18に記載の多帯域放射線検出器のアレイ。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−139058(P2011−139058A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279431(P2010−279431)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】