説明

作業機械の油圧システム

【課題】作業機械の油圧システムに関し、簡素な構成で操作性を向上させ、かつ、リリーフロスを軽減する。
【解決手段】センタバイパスL1,L2上に介装されたネガコンリリーフ弁5,6と、ネガコン圧を油圧ポンプ2,3のレギュレータ2a,3aに伝達するためのネガコン通路L3,L4と、センタバイパスL1,L2の最高圧を規定するメインリリーフ弁8と、を有する作業機械の油圧システムにおいて、メインリリーフ弁8からリリーフされる作動油の流路の下流側に低圧リリーフ弁9を介装する。
メインリリーフ弁8及び低圧リリーフ弁9間の作動油圧を第二ネガコン圧として第二ネガコン通路L6,L7に伝達させる。また、ネガコン通路L3,L4の該ネガコン圧及び第二ネガコン通路L6,L7の該第二ネガコン圧のうちの高圧側の一方を、シャトル弁20,21でレギュレータ2a,3aに導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガティブコントロール時におけるリリーフロスを低減させる作業機械の油圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネガティブコントロールにより油圧ポンプのレギュレータを制御する油圧回路を備えた作業機械では、作業機械に搭載された各種油圧駆動装置(油圧シリンダ,油圧モータ等)に過負荷が作用したときのリリーフロスを低減させる油圧システムが開発されている。ネガティブコントロールシステムでは、油圧ポンプから吐出される作動油を各種油圧駆動装置に供給するためのセンタバイパスが設けられ、センタバイパスの末端にリリーフ弁が介装される。
【0003】
リリーフ弁の直上流側の作動油圧はネガコン圧と呼ばれ、その大きさは各種油圧駆動装置が作動していない場合に油圧ポンプの吐出圧とほぼ等しくなり、各種油圧駆動装置の作動量に応じて低下する。したがって、ネガコン圧が低いときほど油圧ポンプからの吐出流量が増大するようにレギュレータを制御することにより、各種油圧駆動装置の負荷に応じた作動油の流量を確保することができる。
【0004】
ところで、センタバイパス上には、回路全体の最高圧を規定するメインリリーフ弁が介装される。メインリリーフ弁は、各種油圧駆動装置に大きな負荷が作用したときに作動油をタンクへリリーフする機能を有する。過負荷によりメインリリーフ弁から作動油がリリーフするとき、ネガコン圧は低圧のままとなり、油圧ポンプからの吐出流量が増大した状態となる場合がある。この場合、油圧ポンプから供給される大量の作動油がメインリリーフ弁からリリーフされることになり、甚大なエネルギーロスが発生する。
【0005】
このような課題に対し、過負荷によるリリーフロスの発生時に油圧ポンプからの吐出流量を減少させる技術が開発されている。すなわち、油圧ポンプの吐出圧をセンサで検出し、この圧力が過大になった場合にネガコン圧を強制的に変更することによって吐出流量を減少させるものである。この場合、ネガコン圧はおもに代替手段によって生成される。例えば、特許文献1では、ネガコン圧をレギュレータに伝達するための回路にシャトル弁,パイロットポンプ及び電磁弁を介装し、電磁弁を切り換えることによりネガコン圧を増大させ、油圧ポンプからの吐出流量を減少させる構成が開示されている。このような構成により、メインリリーフ弁からのリリーフ量を軽減し、省エネルギー化及び低騒音化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−117410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の従来技術では、油圧ポンプの吐出圧が所定値に達するか否かでレギュレータが二値動作する。そのため、リリーフの発生の前後における油圧ポンプからの吐出流量の変動が急激となり、良好な操作性が得られないという課題がある。例えば、油圧ショベルのバケットによる掘削中に作動油がメインリリーフ弁からリリーフすると、油圧ポンプからの吐出流量が急激に減少し、粘り強い掘削ができない。油圧ショベルの旋回時にリリーフが発生すると、油圧ポンプからの吐出流量が急激に絞られることにより旋回速度が増加しにくくなり、快適な加速性が得られないという課題もある。
【0008】
本件の目的の一つは、このような課題に鑑み創案されたもので、簡素な構成で操作性を向上させ、かつ、リリーフロスを軽減することができるようにした作業機械の油圧システムを提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
開示の作業機械の油圧システムは、センタバイパス上に介装されたネガコンリリーフ弁と、該ネガコンリリーフ弁で生じるネガコン圧を油圧ポンプのレギュレータに伝達するためのネガコン通路と、該センタバイパスの最高圧を規定するメインリリーフ弁と、を有する作業機械の油圧システムにおいて、該メインリリーフ弁からリリーフされる作動油の流路の下流側に介装された低圧リリーフ弁と、該メインリリーフ弁及び該低圧リリーフ弁間の作動油圧を第二ネガコン圧として伝達する第二ネガコン通路と、該ネガコン通路の該ネガコン圧及び該第二ネガコン通路の該第二ネガコン圧のうち、高圧側の一方を該レギュレータに導くシャトル弁と、を備える。
【0010】
また、開示の作業機械の油圧システムは、該第二ネガコン通路に介装された切換弁と、該油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサと、該圧力センサで検出された該吐出圧に基づき、該切換弁を開放又は閉鎖するコントローラと、を備える。
また、開示の作業機械の油圧システムは、該コントローラが、該吐出圧が第一所定圧以上になったときに該切換弁を開放し、該吐出圧が該第一所定圧よりも小さい第二所定圧以下になったときに該切換弁を閉鎖する。
【発明の効果】
【0011】
開示の作業機械の油圧システムによれば、ネガコン圧,第二ネガコン圧のうち高圧である一方をレギュレータに伝達することで、メインリリーフ弁からのリリーフの度合いに応じて油圧ポンプの吐出流量を減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一実施形態に係る油圧システムを備えた油圧ショベルの全体構成を示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルにおける油圧システムの回路図である。
【図3】図2の油圧システムの制御内容を説明するためのブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して作業機械の油圧システムの実施形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下に示す実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、その趣旨を逸脱しない範囲で本実施形態を種々変形して実施してもよい。
【0014】
[1.全体構成]
開示の油圧システムは、図1に示す油圧ショベル30(作業機械)に適用される。この油圧ショベル30は、クローラ式の走行装置を装備した下部走行体31と、下部走行体31に搭載された上部旋回体32とを備える。上部旋回体32は、旋回装置33を介して下部走行体31の上に旋回自在に設置される。
【0015】
上部旋回体32の車両前方側には、車両前方へ延出するフロント作業機34が設けられ、その左側方に操作者が搭乗するキャブが設けられる。
フロント作業機34は、上部旋回体32に基端部を軸支されたブーム35と、ブーム35の先端に軸支されたアーム36と、さらにアーム36の先端に軸支されたバケット37とを有する。ブーム35及び上部旋回体32の間には左右一対のブームシリンダ10が介装され、伸縮動作によりブーム35を上下方向に駆動する。同様に、ブーム35及びアーム36間にはアームシリンダ14が介装され、アーム36及びバケット37間にはバケットシリンダ11が介装される。これらのアームシリンダ14及びバケットシリンダ11は、伸縮動作によりアーム36及びバケット37をそれぞれ揺動させる。
【0016】
油圧ショベル30には、上記のブームシリンダ10,アームシリンダ14,バケットシリンダ11や、走行装置,旋回装置33を駆動するための油圧モータに作動油を供給する油圧回路が設けられる。
【0017】
[2.メイン回路]
図2に、油圧ショベル30の油圧回路の全体構成を例示する。本油圧回路には、図2に示すメイン回路C1及びネガコン回路C2が備えられる。メイン回路C1は油圧アクチュエータ(各種油圧駆動装置)に供給される作動油が流通する回路であり、ネガコン回路C2は油圧ポンプ2,3のレギュレータ2a,3aの制御用の作動油が流通する回路である。ネガコン回路C2を図2中に破線で示す。
【0018】
メイン回路C1には、エンジン1によって駆動される二つの油圧ポンプ2,3が設けられる。また、この油圧回路上の油圧アクチュエータとしては、上記のブームシリンダ10,アームシリンダ14,バケットシリンダ11と、走行装置を駆動する走行モータ12a,12bと、旋回装置33を駆動する旋回モータ13とが設けられる。
油圧ポンプ2,3は、エンジン1によって駆動される容量可変型の作動油ポンプであり、タンク26から作動油を吸引し、各種油圧アクチュエータに作動油を供給する。油圧ポンプ2,3のそれぞれには、傾転斜板の傾斜角を調整することにより吐出流量及び吐出圧を制御するレギュレータ2a,3aが併設される。
【0019】
油圧ポンプ2,3から吐出される作動油の供給先は変更可能である。例えば、図2に示された状態では、一方の油圧ポンプ2がブームシリンダ10,バケットシリンダ11,アームシリンダ14及び一方の走行モータ12aに作動油を供給し、他方の油圧ポンプ3がブームシリンダ10,アームシリンダ14,旋回モータ13及び他方の走行モータ12bに作動油を供給する。
【0020】
それぞれの油圧ポンプ2,3には、吐出圧を検出するための圧力センサ16,17が個別に設けられる。一方の圧力センサ16は一方の油圧ポンプ2の吐出圧P1を検出し、他方の圧力センサ17は他方の油圧ポンプ3の吐出圧P2を検出する。これらの吐出圧P1,P2は、後述するコントローラ15に伝達される。
油圧ポンプ2,3と上記の各種油圧アクチュエータとの間には、複数の制御弁を内蔵したメインコントロールバルブユニット4が介装される。複数の制御弁は、上記の各種油圧アクチュエータに対応して設けられ、図示しない操作レバーの作動量に応じて、油圧アクチュエータに供給される作動油流量や作動油の流通方向を制御する。
【0021】
各種油圧アクチュエータの非作動時において、油圧ポンプ2,3から吐出される作動油が流通する通路のことをセンタバイパスと呼ぶ。以下、一方の油圧ポンプ2側のセンタバイパスを第一通路L1とも呼び、他方の油圧ポンプ3側のセンタバイパスを第二通路L2とも呼ぶ。
第一通路L1及び第二通路L2の末端にはそれぞれ、ネガコンリリーフ弁5,6が介装される。つまり、各種油圧アクチュエータに供給される作動油を制御するための制御弁は、ネガコンリリーフ弁5,6よりも上流側のセンタバイパス上に介装される。ネガコンリリーフ弁5,6は、その上流側にネガコン圧を生成するためのリリーフ弁である。ネガコンリリーフ弁5,6の下流側はタンク26に接続される。
【0022】
一方のネガコンリリーフ弁5の上流側には、第一通路L1から分岐して形成された第三通路L3が設けられる。同様に、他方のネガコンリリーフ弁6の上流側には、第四通路L4が第二通路L2から分岐して設けられる。第三通路L3及び第四通路L4は、それぞれレギュレータ2a,3aによるネガコン制御(ネガティブコントロール)のためのネガコン圧を伝達するネガコン通路として機能する。
【0023】
第一通路L1における制御弁よりも上流側、及び第二通路L2における制御弁よりも上流側には、合流チェック弁7が設けられる。合流チェック弁7は、第一通路L1側及び第二通路L2側から作動油を下流側へと導くとともに、下流側から第一通路L1側及び第二通路L2側への作動油の流通を防止する複合逆止弁である。
合流チェック弁7の下流側には、メインリリーフ弁8が設けられる。メインリリーフ弁8は、第一通路L1及び第二通路L2の最高圧(リリーフ圧)を規定する圧力制御弁である。例えば、第一通路L1の作動油圧が所定圧以上になると、第二通路L2側の作動油圧の大きさに関わらずメインリリーフ弁8が開放され、第一通路L1側の作動油がタンク26にリリーフされる。また、第二通路L2の作動油圧が所定圧以上になると、第一通路L1側の作動油圧の大きさに関わらずメインリリーフ弁8が開放され、第二通路L2側の作動油がリリーフされる。
【0024】
メインリリーフ弁8の下流側には、低圧リリーフ弁9が介装される。低圧リリーフ弁9は、メインリリーフ弁8からリリーフされた作動油量を検出するために設けられたリリーフ弁である。低圧リリーフ弁9の上流側には、メインリリーフ弁8からリリーフされた作動油量に対応する大きさの圧力(第二ネガコン圧)が生じる。また、低圧リリーフ弁9の上流側には、メインリリーフ弁8との間の通路から分岐する第五通路L5が設けられる。したがって、第五通路L5にはメインリリーフ弁8からリリーフされた作動油量に対応する大きさの圧力が導入される。
【0025】
[3.ネガコン回路]
ネガコン回路C2は二つのレギュレータ2a,3aを制御するための作動油圧を伝達する回路であり、前述の第三通路L3,第四通路L4及び第五通路L5を含む回路である。
第五通路L5はその下流側で二つの通路、すなわち第六通路L6及び第七通路L7に分岐する。第六通路L6の下流側は、シャトル弁20の一方の入力側に接続される。また、シャトル弁20の他方の入力側には第三通路L3が接続される。シャトル弁20は、第六通路L6から伝達される作動油圧と第三通路L3から伝達される作動油圧とのうち、高圧である一方を下流側に出力する高圧選択弁である。シャトル弁20の下流側には、油圧ポンプ2のレギュレータ2aが接続される。
【0026】
同様に、第七通路L7の下流側は、シャトル弁21の一方の入力側に接続される。また、シャトル弁21の他方の入力側には第四通路L4が接続される。シャトル弁21は、第七通路L7から伝達される作動油圧と第四通路L4から伝達される作動油圧とのうち、高圧である一方を下流側に出力する。シャトル弁21の下流側には、油圧ポンプ3のレギュレータ3aが接続される。
【0027】
以下、シャトル弁20とレギュレータ2aとを接続する通路を第八通路L8と呼び、シャトル弁21とレギュレータ3aとを接続する通路を第九通路L9と呼ぶ。レギュレータ2a,3aは、第八通路L8,第九通路L9から伝達される作動油圧が低圧であるほど油圧ポンプ2,3からの吐出流量を増大させ、作動油圧が高圧であるほど吐出流量を減少させるネガコン制御を実施する。
【0028】
図2に示すように、レギュレータ2a,3aのそれぞれには、第八通路L8,第九通路L9のほか、パイロットポンプ25から伝達される作動油圧を伝達する通路が接続される。この通路は、ポンプ出力(馬力)を設定するための出力制御圧(パワーシフト圧)を伝達する通路である。出力制御圧の大きさは、電磁比例減圧弁22によって調節される。
【0029】
第六通路L6及び第七通路L7のそれぞれには、通路を開閉する二位置式の電磁切換弁18,19(切換弁)が介装される。電磁切換弁18は、そのスプール位置がa位置の時に第六通路L6を遮断し、b位置の時に開放(連通)する。同様に、電磁切換弁19は、そのスプール位置がa位置の時に第七通路L7を遮断し、b位置の時に開放(連通)する。
これらの電磁切換弁18,19のスプール位置はコントローラ15によって切換制御され、第五通路L5の圧力がシャトル弁20,21に伝達されることを許可又は禁止するように機能する。
【0030】
[4.コントローラ]
コントローラ15は、周知のマイクロプロセッサやROM,RAM等を集積したLSIデバイスとして提供された電子制御装置である。ここでは、圧力センサ16,17で検出された吐出圧P1,P2に基づき、電磁切換弁18,19のスプール位置を二位置の何れかに切り換える制御が実施される。コントローラ15の内部でソフトウェア又はハードウェア回路としてプログラミングされている機能を、図3に模式的に示す。
【0031】
コントローラ15は、二つの設定器23,24を備える。設定器23は、圧力センサ16で検出された吐出圧P1の大きさを判定して、オン/オフの何れかの信号を出力するものである。図3中にグラフで示すように、判定時に出力している信号の種類に応じて、出力信号を切り換えるための条件が異なっている。
自身の出力信号がオフであるときには、出力信号をオンにするための条件が「吐出圧P1≧所定圧PBであること」である。一方、自身の出力信号がオンであるときには、出力信号をオフにするための条件が「吐出圧P1≦所定圧PAであること(ただし、PA<PB)」である。設定器23の出力信号は、電磁切換弁18に伝達される。切り換え条件にヒステリシスを設けることで、出力信号が安定する。
【0032】
同様に、設定器24は圧力センサ17で検出された吐出圧P2の大きさを判定して、オン/オフの何れかの信号を出力する。自身の出力信号がオフであるときには、出力信号をオンにするための条件が「吐出圧P2≧所定圧PDであること」である。一方、自身の出力信号がオンであるときには、出力信号をオフにするための条件が「吐出圧P2≦所定圧PCであること(ただし、PC<PD)」である。設定器24の出力信号は、電磁切換弁19に伝達される。
【0033】
このように、コントローラ15は、吐出圧P1,P2のそれぞれが第一所定圧PB,PDのそれぞれ以上になったときに電磁切換弁18,19のそれぞれを開放する機能を持つ。また、コントローラ15は、吐出圧P1,P2のそれぞれが第一所定圧PB,PDのそれぞれよりも小さい第二所定圧PA,PCのそれぞれ以下になったときに電磁切換弁18,19のそれぞれを閉鎖する機能を持つ。
【0034】
[5.作用]
[5−1.バケット操作時]
フロント作業機34の操作時には、センタバイパスを流通する作動油が各制御弁を介して対応する油圧アクチュエータに供給される。例えば、バケット37の操作時には、油圧ポンプ2から吐出された第一通路L1の作動油がバケットシリンダ11に供給される。バケットシリンダ11に供給される作動油量は操作量に対応した大きさとなる。これにより、第一通路L1に介装されたネガコンリリーフ弁5で生成されるネガコン圧が低下し、低圧のネガコン圧がレギュレータ2aに導入される。したがって、油圧ポンプ2からの吐出流量が増大し、バケット37の操作量に応じた流量が確保される。
【0035】
バケットシリンダ11に作用する負荷が増大すると、第一通路L1内の作動油圧が上昇する。この作動油圧がリリーフ圧に達すると、第一通路L1側の作動油は合流チェック弁7を通り、メインリリーフ弁8及び低圧リリーフ弁9を介してタンク26側にリリーフされる。またこのとき、油圧ポンプ2の吐出圧P1が圧力センサ16に検出され、コントローラ15に伝達される。
【0036】
ここで、吐出圧P1が所定圧PB未満である場合、コントローラ15の設定器23からオフ信号が出力され、電磁切換弁18が第六通路L6を遮断した状態となる。したがって、シャトル弁20では第三通路L3側から伝達される作動油圧が第八通路L8側に導入され、レギュレータ2aでは通常のネガコン制御が実施される。このとき、バケット37の操作量が大きいほど、第三通路L3の作動油圧が低圧となり、油圧ポンプ2の吐出流量が増大する。これにより、バケット37による粘り強い掘削が可能となる。
【0037】
一方、吐出圧P1が所定圧PB以上になると、コントローラ15の設定器23からオン信号が出力され、電磁切換弁18が第六通路L6を開放する。これにより、リリーフ流量に応じた大きさの作動油圧が第五通路L5及び第六通路L6を通ってシャトル弁20に導入される。このとき、第三通路L3の作動油圧は低圧であるから、第六通路L6側の高圧の作動油圧がレギュレータ2aに導入され、油圧ポンプ2の吐出流量が減少する。したがって、第一通路L1からリリーフされる作動油量が少なくなり、リリーフロスが大幅に低減される。
【0038】
また、第一通路L1の作動油圧が低下して、圧力センサ16で検出される吐出圧P1が所定圧PA以下になると、コントローラ15の設定器23からオフ信号が出力され、電磁切換弁18が第六通路L6を遮断する。これにより、レギュレータ2aでは再び通常のネガコン制御が実施され、油圧ポンプ2の吐出流量が増大する。これにより、バケットシリンダ11に供給される作動油量が増大し、バケット37による粘り強い掘削が可能となる。
【0039】
[5−2.旋回操作時]
また、例えば油圧ショベル30の旋回装置33の操作時には、油圧ポンプ3から吐出された第二通路L2の作動油が旋回モータ13に供給される。旋回モータ13に供給される作動油量は操作量に対応した大きさとなる。これにより、第二通路L2に介装されたネガコンリリーフ弁6で生成されるネガコン圧が低下し、低圧のネガコン圧がレギュレータ3aに導入される。したがって、油圧ポンプ3からの吐出流量が増大し、旋回装置33の操作量に応じた流量が確保される。
【0040】
旋回モータ13に作用する負荷が増大すると、第二通路L2内の作動油圧が上昇する。この作動油圧がリリーフ圧に達すると、第二通路L2側の作動油は合流チェック弁7を通り、メインリリーフ弁8及び低圧リリーフ弁9を介してタンク26側にリリーフされる。またこのとき、油圧ポンプ3の吐出圧P2が圧力センサ17に検出され、コントローラ15に伝達される。
【0041】
ここで、吐出圧P2が所定圧PD未満である場合、コントローラ15の設定器24からオフ信号が出力され、電磁切換弁19が第七通路L7を遮断した状態となる。したがって、シャトル弁21では第四通路L4側から伝達される作動油圧が第九通路L9側に導入され、レギュレータ3aでは通常のネガコン制御が実施される。このとき、旋回装置33の操作量が大きいほど、第四通路L4の作動油圧が低圧となり、油圧ポンプ3の吐出流量が増大する。これにより、旋回装置33の加速性が確保される。
【0042】
一方、吐出圧P2が所定圧PD以上になると、コントローラ15の設定器24からオン信号が出力され、電磁切換弁19が第七通路L7を開放する。これにより、リリーフ流量に応じた大きさの作動油圧が第五通路L5及び第七通路L7を通ってシャトル弁21に導入される。このとき、第四通路L4の作動油圧は低圧であるから、第七通路L7側の高圧の作動油圧がレギュレータ3aに導入され、油圧ポンプ3の吐出流量が減少する。したがって、第二通路L2からリリーフされる作動油量が少なくなり、リリーフロスが大幅に低減される。
【0043】
また、第二通路L2の作動油圧が低下して、圧力センサ17で検出される吐出圧P2が所定圧PC以下になると、コントローラ15の設定器24からオフ信号が出力され、電磁切換弁19が第七通路L7を遮断する。これにより、レギュレータ3aでは再び通常のネガコン制御が実施され、油圧ポンプ3の吐出流量が増大する。
【0044】
[6.効果]
このように、開示の作業機械の油圧システムによれば、第三通路L3及び第四通路L4のネガコン圧と、第六通路L6及び第七通路L7の作動油圧(第二ネガコン圧)とのうち高圧である一方をレギュレータ2a,3aに伝達することで、メインリリーフ弁8からのリリーフの度合いに応じて油圧ポンプ2,3の吐出流量を減少させることができる。また、メインリリーフ弁8の下流側に低圧リリーフ弁9を設けるという簡素な構成で、リリーフの度合いに応じた圧力(第二ネガコン圧)を正確かつ容易に取り出すことができ、制御の信頼性を高めることができる。
【0045】
また、油圧ポンプ2,3の吐出圧に応じて電磁切換弁18,19を開閉することで、メインリリーフ弁8からのリリーフの状態を容易に把握することができ、そのリリーフ状態に応じて油圧ポンプ2,3の吐出流量を制御することができる。
また、電磁切換弁18の閉鎖条件に係る所定圧PAを開放条件に係る所定圧PBよりも小さくすることで、電磁切換弁の18の開閉状態を安定させることができる。同様に、電磁切換弁19の閉鎖条件に係る所定圧PCを開放条件に係る所定圧PDよりも小さくすることで、電磁切換弁19の開閉状態を安定させることができる。
【0046】
[7.その他]
開示の実施形態の一例に関わらず、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。本実施形態の各構成及び各処理は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせてもよい。
上述の実施形態では、二つの油圧ポンプ2,3を備えた二ポンプ型の油圧回路を例示したが、単一の油圧ポンプを備えた油圧回路としてもよい。少なくとも、ネガコン制御により油圧ポンプの吐出流量が制御されるものであればよい。また、上述の油圧回路は、油圧アクチュエータとしてブームシリンダ10,アームシリンダ14,バケットシリンダ11,走行モータ12a,12b及び旋回モータ13を備えているが、具体的な油圧アクチュエータの種類や数はこれに限定されない。
【0047】
また、上述の実施形態のコントローラ15は、図3に示す制御特性を有する設定器23,24を備えたものであるが、設定器23,24における具体的な特性の設定内容はこれに限定されない。なお、電磁切換弁18,19の代わりに、油圧ポンプ2,3の吐出圧P1,P2をパイロット作動油圧として開閉駆動する切換弁を用いて、上述の実施形態と同様の制御を実施することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ネガコン制御により油圧ポンプの吐出流量を制御する油圧システム全般に適用することができ、このような油圧システムを備えた作業機械(例えば、油圧ショベルや油圧式クレーン等)全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
2,3 油圧ポンプ
2a,3a レギュレータ
5,6 ネガコンリリーフ弁
8 メインリリーフ弁
9 低圧リリーフ弁
15 コントローラ
16,17 圧力センサ
18,19 電磁切換弁(切換弁)
20,21 シャトル弁
22 電磁比例減圧弁
23,24 設定器
C1 メイン回路
C2 ネガコン回路
L1 第一通路(センタバイパス)
L2 第二通路(センタバイパス)
L3 第三通路(ネガコン通路)
L4 第四通路(ネガコン通路)
L5 第五通路(第二ネガコン通路)
L6 第六通路(第二ネガコン通路)
L7 第七通路(第二ネガコン通路)
L8 第八通路
L9 第九通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センタバイパス上に介装されたネガコンリリーフ弁と、該ネガコンリリーフ弁で生じるネガコン圧を油圧ポンプのレギュレータに伝達するためのネガコン通路と、該センタバイパスの最高圧を規定するメインリリーフ弁と、を有する作業機械の油圧システムにおいて、
該メインリリーフ弁からリリーフされる作動油の流路の下流側に介装された低圧リリーフ弁と、
該メインリリーフ弁及び該低圧リリーフ弁間の作動油圧を第二ネガコン圧として伝達する第二ネガコン通路と、
該ネガコン通路の該ネガコン圧、及び該第二ネガコン通路の該第二ネガコン圧のうち、高圧側の一方を該レギュレータに導くシャトル弁と、
を備えたことを特徴とする、作業機械の油圧システム。
【請求項2】
該第二ネガコン通路に介装された切換弁と、
該油圧ポンプの吐出圧を検出する圧力センサと、
該圧力センサで検出された該吐出圧に基づき、該切換弁を開放又は閉鎖するコントローラと、
を備えたことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の油圧システム。
【請求項3】
該コントローラが、
該吐出圧が第一所定圧以上になったときに該切換弁を開放し、
該吐出圧が該第一所定圧よりも小さい第二所定圧以下になったときに該切換弁を閉鎖する
ことを特徴とする、請求項2記載の作業機械の油圧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236971(P2011−236971A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109028(P2010−109028)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】