説明

作業車の運転部構造

【課題】 荷物の運搬、レジャー、軽作業、などの多目的に利用することのできる作業車において、簡単かつ安価な構造で運転部の座席下方に物品を収容することができるようにする。
【解決手段】 運転部に設けられた座席11の下方に、座部11aの移動によって上方に開放される収納ボックス13を設けてある。好ましくは、収納ボックス13を開閉可能に構成し、収納ボックス13の開放によって、車体下方に配備された原動部の一部が露出されるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の運搬、レジャー、軽作業、などの多目的に利用することのできる作業車の運転部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記作業車においては、例えば、特許文献1に開示されているように、車体フレームの上に板金構造の遮蔽カバーを取付け、その上に座席を配置する構造が採用されている。
【特許文献1】特開2005−212783号公報(図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
運転部には小物を入れる収納ボックスを設けることが望ましく、運転部前方のダッシュボードや座席の下方に収納ボックスを設けることが一般的である。座席の下方に収納ボックスを設ける場合、上記のように座席の下方に遮蔽カバーが配置される構造では、引き出し式の収納ボックスを設けることが考えられるが、収納ボックスを容易に引き出しおよび押し込み操作できるようにするには、スライド案内構造が必要になってコスト高になる。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、簡単かつ安価な構造で運転部の座席の下方に物品を収容することができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、運転部に設けられた座席の下方に、座部の移動によって上方に開放される収納ボックスを設けてあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、座席の座部を上方に揺動移動させたり、座部を取り外し移動させることで、上方に開放された収納ボックスを露出することができ、上方に大きく開放された状態で収納ボックスに物品を容易に出し入れすることができる。
【0007】
従って、第1の発明によると、収納ボックスをスライド案内する必要のない安価に製作できる構造で、運転部の座席の下方に物品を容易に収容することができる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記収納ボックスを開閉可能に構成し、収納ボックスの開放によって、車体下方に配備された原動部の一部が露出されるよう構成してあるものである。
【0009】
上記構成によると、収納ボックスが原動部の一部を開閉するメンテナンスカバーとして機能し、例えば、収納ボックスの下方に原動部用の各種液体類の注入口を臨設しておくことで、運転部から簡単に液体補充を行うことが可能となる。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、
着座位置に置かれた前記座部によって収納ボックスを閉じ位置に押圧固定するよう構成してあるものである。
【0011】
上記構成によると、移動させた座部を元の着座位置に戻すだけで収納ボックスを閉じ位置に固定することができ、収納ボックスを閉じ位置に固定するための専用の部材や機構が不要になって、構造の簡素化を図ることができるとともに、メンテナンス作業のたびに収納ボックスの固定および解除操作を行う必要もなくなり、取扱いが容易となる。
【0012】
第4の発明は、上記第3の発明において、
前記収納ボックスを、樹脂材をブロー成形した中空構造に構成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、座部の荷重を受ける収納ボックスが多少弾性変形して、座部のクッション機能を補助するとともに、車体の動揺などによって座部が浮き上がって再び収納ボックスに乗りかかる際の接当音や衝撃が緩和され、乗り心地の向上に有効となる。
【0014】
第5の発明は、上記第1〜4のいずれか一つの発明において、
前記座席の座部を二人掛け用に構成してあるものである。
【0015】
上記構成によると、収納ボックスを左右に長いものに形成しても、左右に長い二人掛け用の座部を移動させることで収納ボックス全体を上方に大きく開放することができ、収納ボックスへの部品の出し入れが一層容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に、作業車の一例である多目的車両の側面が示されている。この作業車は、車体フレーム1の前後に、独立懸架された左右の操向自在な前輪2と、独立懸架された左右の後輪3とが装備されるとともに、車体フレーム1の後半部下方に原動部4が配備され、車体フレーム1の前後中間に運転キャビン5が設けられ、かつ、車体フレーム1の後半部上方に油圧シリンダ6によって後部支点p回りに上下に揺動されるダンプ荷台7が配備された基本構造を備えている。
【0017】
原動部4は、車体フレーム1の後半部下方に防振状態に連結支持したマウントフレーム8に、前後に直結されたエンジン9とミッションケース10を搭載して構成されており、ミッションケース10で変速された動力が前輪2および後輪3に伝達されて、4輪駆動による走行が行われるようになっている。
【0018】
運転部を構成する運転キャビン5の後方下部には座席支持枠部14が床面より一段高く組上げられており、この座席支持枠部14の上方に、左側の運転席と右側の助手席とを一連に形成した二人掛け用の座席11が配備されるとともに、運転キャビン5における内部前方の運転席側(この例では左側)に、操縦ハンドル12や図示されていないブレーキペダルや加速ペダルなどが設けられている。
【0019】
座席11は、座席支持枠部14の前部から立設されたヒンジ17に支点q周りに上下揺動可能に支持された座部11aと、キャビン内の後壁下部に固定配備された背もたれ11bとで構成されており、この座部11aの下方に左右に長い収納ボックス13が配備されている。
【0020】
収納ボックス13は、樹脂材をブロー成形して中空構造に構成されており、上方に開口された左右一対の物入れ凹部13aが備えられるとともに、左右両端部には取っ手13bが一体突設され、収納ボックス13の底部には位置決め用の段部13cが突出形成されている。座席支持枠部14の上面に形成された開口18に段部13cを嵌入して前後左右方向への位置決めがなされた状態で、収納ボックス13を座席支持枠部14の上面に載置できるようになっている。
【0021】
座部11aを振り上げて前方上方に移動させることで、収納ボックス13が全体的に上方に開放され、着座位置に降ろした座部11aを収納ボックス13で受け止めることで、収納ボックス13が座部11aで押圧固定されるようになっている。
【0022】
座部11aを振り上げ移動して収納ボックス13を取り外すと、座席支持枠部14に形成した開口18が開放され、原動部4における油圧系の作動油タンク15の周辺およびエンジン9の前端部が露出される。このように、収納ボックス13を取り外して開口18を開放することで、作動油タンク15の上面に備えられた注入口16からの油補充や、エンジン9の前端部におけるベルト調節などのメンテナンス作業を、大きい開口18から容易に行えるようになっている。
【0023】
〔他の実施例〕
(1)前記座席11の座部11aを脱着可能とし、座部11aを取り外し移動することで収納ボックス13の上方を開放するように構成することもできる。
(2)座席11は、座部11aと背もたれ部11bを一体化したものであってもよい。
(3)前記収納ボックス13を取り外すように構成するのではなく、前端を中心にして上方に揺動してキャビン底部を開放することも可能である。
(4)収納ボックス13に形成した物入れ凹部13aを左右に長い一連のものに形成すれば、長い物品の収容が可能となり、便利に使用することができる。
(5)座席11おける座部11aを、運転席と助手席とが分離されたものに構成し、分離された各座部11aを個別に開放移動して、その下部に配備した収納ボックス13を開放するよう構成することもできる。この場合、収納ボックス13は、上記のように左右に一連に長いものでもよく、あるいは、各座部11aの横幅に対応した横幅に形成された2つの収納ボックス13を左右に並列配備して、各収納ボックス13を個別に開閉できるように構成するもよい。
(6)原動部4におけるラジエータやエアークリーナを運転キャビン5(運転部)の下方に入り込むように配備して、収納ボックス13の開放によって冷却水の補給やクリーナエレメントの交換を行えるように構成することも可能である。
(7)上記実施例では運転キャビン5付きの運転部を搭載した仕様の機種を例示しているが、日除け(キャノピー)だけを装備した開放型の運転部を搭載した仕様の機種に本発明を適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】作業車の全体側面図
【図2】作業車の全体平面図
【図3】車体の骨組み構造を示す斜視図
【図4】座席の支持構造を示す正面図
【図5】座席の支持構造を示す使用状態の側面図(イ)と開放状態の側面図(ロ)
【図6】収納ボックスの支持構造を示す縦断正面図
【符号の説明】
【0025】
4 原動部
5 運転部(運転キャビン)
11 座席
11a 座部
13 収納ボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転部に設けられた座席の下方に、座部の移動によって上方に開放される収納ボックスを設けてあることを特徴とする作業車の運転部構造。
【請求項2】
前記収納ボックスを開閉可能に構成し、収納ボックスの開放によって、車体下方に配備された原動部の一部が露出されるよう構成してある請求項1記載の作業車の運転部構造。
【請求項3】
着座位置に置かれた前記座部によって収納ボックスを閉じ位置に押圧固定するよう構成してある請求項2記載の作業車の運転部構造。
【請求項4】
前記収納ボックスを、樹脂材をブロー成形した中空構造に構成してある請求項3記載の作業車の運転部構造。
【請求項5】
前記座席の座部を二人掛け用に構成してある請求項1〜4のいずれか一項に記載の作業車の運転部構造。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−87739(P2008−87739A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−274001(P2006−274001)
【出願日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】