説明

作業車両の原動部構造

【課題】防塵網で濾過した冷却風によってラジエータを冷却する原動部構造において、冷却・除塵切換機構の耐久性を高める。
【解決手段】冷却ファン12を冷却ファンケースAにより被覆し、該冷却ファンケースAにはラジエータ13側に冷却吸気口及び除塵送風口を設け、冷却ファンケースAのラジエータ13との反対側に、除塵吸気口及び冷却送風口を設け、冷却状態においては除塵吸気口及び除塵送風口を閉鎖させて冷却吸気口及び冷却送風口を開口させ、冷却ファン12によって冷却吸気口から冷却送風口へ送風し、除塵状態においては冷却吸気口及び冷却送風口を閉鎖させて除塵吸気口及び除塵送風口を開口させ、冷却ファン12によって除塵吸気口から除塵送風口へ送風する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両の原動部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の作業車両は、エンジンを備える原動室に防塵網を介してエンジン及びラジエータへの冷却風を導入し、原動室内への塵埃の侵入を防ぐ構造を採用している。そのため、防塵網の外面には塵埃が付着し、防塵網で濾過できない微細な塵埃がラジエータに目詰まりする。
【0003】
これら塵埃を除去するために、特許文献1に示すような、回転ファンの送風羽根の翼角を変更してラジエータの冷却をする状態と防塵網の塵埃を除去する状態とに切換える技術が知られている。
【0004】
また、特許文献2に示すように、エンジン駆動力によって常時駆動される駆動ベルトの内周面と外周面とのいずれかにプーリを押圧するテンション操作体を移動させて、回転ファンを正転状態と逆転状態とに切換え操作する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−2692号公報
【特許文献2】特開2001−263063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1及び特許文献2には以下に説明する問題により送風方向切換機構の耐久性が低下する問題がある。
特許文献1記載の技術では、回転ファンを常時一定方向に駆動しながら、回転ファンに設けた複数の送風羽根の翼角を変更するので、送風羽根及びこの送風羽根の支持軸や駆動系に過大な負荷がかかる。
【0007】
特許文献2記載の技術ではテンション捜査隊を移動させる際に、慣性力によって回転ファンが回転状態を継続しているので、プーリを駆動ベルトに押圧すると、この駆動ベルトに大きな摩擦力が発生し、ベルトの磨耗が発生する。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような課題を解決するために、次の技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、防塵網(16)と一定方向に回転駆動される冷却ファン(12)との間にラジエータ(13)を設け、前記冷却ファン(12)を冷却ファンケース(A)で覆い、該冷却ファンケース(A)にはラジエータ(13)側に冷却吸気口(I1)及び除塵送風口(O2)を設け、冷却ファンケース(A)のラジエータ(13)との反対側に、除塵吸気口(I2)及び冷却送風口(O1)を設け、前記除塵吸気口(I2)及び除塵送風口(O2)を閉鎖すると共に冷却吸気口(I1)及び冷却送風口(O1)を開口させ、冷却ファン(12)の回転駆動によって防塵網(16)及びラジエータ(13)通過後の外気を冷却吸気口(I1)から吸入して冷却送風口(O1)から吹き出す冷却状態と、前記冷却吸気口(I1)及び冷却送風口(O1)を閉鎖すると共に除塵吸気口(I2)及び除塵送風口(O2)を開口させ、冷却ファン(12)の回転駆動によって内気を除塵吸気口(I2)から吸入して除塵送風口(O2)からラジエータ(13)及び防塵網(16)へ向けて吹き出す除塵状態とに択一的に切換える送風方向切換手段(27a)を設けたことを特徴とする作業車両の原動部構造とした。
【0010】
請求項2の発明は、前記冷却ファン(12)を、該冷却ファン(12)の回転中心部から外周部に向けて放射方向に伸延する複数の羽根体を備えた遠心ファンとし、前記冷却吸気口(I1)及び除塵吸気口(I2)を、冷却ファンケース(A)における冷却ファン(12)の回転中心部に臨む部位に夫々配置し、前記冷却送風口(O1)及び除塵送風口(O2)を、冷却ファンケース(A)における冷却ファン(12)の外周部よりも外側となる部位に配置したことを特徴とする請求項1記載の作業車両の原動部構造とした。
【0011】
請求項3の発明は、前記冷却ファンケース(A)を、冷却ファン(12)を覆う第一ファンケース(21)と、該第一ファンケース(21)を覆う第二ファンケース(22)で構成し、前記第一ファンケース(21)のラジエータ(13)側の外側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一外側吸気口(21b,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)側の外側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一外側送風口(21d,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一内側吸気口(21a,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一内側送風口(21c,…)を設け、前記第二ファンケース(22)のラジエータ(13)側の外側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二外側吸気口(22b,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)側の外側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二外側送風口(22d,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二内側吸気口(22a,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二内側送風口(22c,…)を設け、前記第一ファンケース(21)及び第二ファンケース(22)を前記冷却ファン(12)の回転中心となる冷却ファン軸(12a)回りに回転可能に支持し、送風方向切換手段(27a)によって第二ファンケース(22)を回転させて第一ファンケース(21)に対する位相を変更する構成とし、前記冷却状態においては、第一外側吸気口(21b,…)と第二外側吸気口(22b,…)及び第一内側送風口(21c,…)と第二内側送風口(22c,…)とが夫々連通することで冷却吸気口(I1)と冷却送風口(O1)が開口し、第一内側吸気口(21a,…)と第二内側吸気口(22a,…)及び第一外側送風口(21d,…)と第二外側送風口(22d,…)とは夫々連通しないために、除塵吸気口(I2)と除塵送風口(O2)は開口せず、前記除塵状態においては、第一内側吸気口(21a,…)と第二内側吸気口(22a,…)及び第一外側送風口(21d,…)と第二外側送風口(22d,…)が夫々連通することで前記除塵吸気口(I2)と除塵送風口(O2)が開口し、第一外側吸気口(21b,…)と第二外側吸気口(22b,…)及び第一内側送風口(21c,…)と第二内側送風口(22c,…)とは夫々連通しないために、冷却吸気口(I1)と冷却送風口(O1)は開口しない構成としたことを特徴とする請求項2記載の作業車両の原動部構造とした。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記冷却ファンケース(A)の除塵送風口(O2)に対向して、該除塵送風口(O2)から排出された風を前記ラジエータ(13)に向けて案内する補助送風ガイド板(30)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の作業車両の原動部構造とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によると、冷却状態においては冷却吸気口(I1)及び冷却送風口(O1)を開口させて、防塵網(16)の外側から内側に向けて冷却風を吸入してラジエータ(13)を冷却し、除塵状態においては、除塵吸気口(I2)及び除塵送風口(O2)を開口させて、防塵網(16)の内側から外側へ送風してラジエータ(13)に目詰まりした塵埃や、防塵網(16)の外面に付着した塵埃を除去することができる。そして、冷却ファン(12)を一定方向に回転駆動しながら、冷却ファンケース(A)の吸気口(I1,I2)及び送風口(O1,O2)の開口状態と閉鎖状態を切換えることで、冷却ファン(12)の送風方向を切換えることができるので、この送風方向の切換時に冷却ファン(12)やこの冷却ファン(12)の駆動系に過大な負荷がかからず、耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項2記載の発明によると、上記請求項1記載の発明による効果に加え、遠心ファン式の冷却ファン(12)の回転中心部に臨む部位に冷却吸気口(I1)及び除塵吸気口(I2)を配置し、冷却ファン(12)の外周部より外側となる部位に冷却送風口(O1)及び除塵送風口(O2)を配置したので、冷却状態と除塵状態との何れの状態においても円滑に送風できる。
【0015】
請求項3の発明によると、上記請求項2記載の発明の効果に加え、第二ファンケース(22)の第一ファンケース(21)に対する回転位相を変更することによって、前記冷却吸気口(I1)と冷却送風口(O1)及び除塵吸気口(I2)と除塵送風口(O2)の何れかの組合せが択一的に開口するので、この冷却状態と除塵状態との切換時に第二ファンケース(22)を回転させる送風方向切換手段(27a)に負荷が掛からず、切換機構の耐久性を更に向上させることができる。また、第一ファンケース(21)に対する第二ファンケース(22)の回転位相を変更するのみで送風方向の切換が行えるので、コストを低減することができる。
【0016】
請求項4の発明によると、上記請求項1又は請求項2又は請求項3記載の発明の効果に加え、第二ファンケース(22)の外周部外側に対向して補助送風ガイド板(30)を設けたので、第二ファンケース(22)の周辺部から外側へ吹き出した風をラジエータ(13)に案内することができ、ラジエータ(13)の除塵効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】エンジン冷却構成の側面図である。
【図4】冷却状態における冷却ファンケースを示す説明図である。
【図5】除塵状態における冷却ファンケースを示す説明図である。
【図6】キャビン部の平面図である。
【図7】キャビン部の一部省略した側面図である。
【図8】キャビン部の一部省略した側面図、平面図である。
【図9】キャビン部の一部省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。まず、図1及び図2に基づき本発明を備えたコンバインの全体構成について説明する。
コンバイン1の走行車体2の下方には、左右一対のクローラ走行装置3,3を配設し、走行車体2の右前側部に操縦部4を、その後方にグレンタンク5を配設し、左側部に脱穀部6を配設し、脱穀部6及びグレンタンク5の後方に排藁処理装置7を配設している。操縦部4及び脱穀部6の前方には、植立穀稈を分草引起しながら刈り取り後方の脱穀部6に向けて搬送する刈取搬送部8を昇降自在に設けている。
【0019】
次に、図3乃至図5に基づきエンジンE、ラジエータ13の冷却及び除塵構成ついて説明する。
操縦部4の運転席10の下方部にエンジンルーム11を設け、エンジンルーム11内にエンジンEを配設している。エンジンEの進行方向右外側に冷却ファン12を軸架し、冷却ファン12の右外側にラジエータ13を配設し、ラジエータ13の外側方にオイルクーラ及びインタクーラを配設している。
【0020】
そして、ラジエータカバー14は、エンジンルーム11の外側枠体に着脱自在に取り付け、その内側部でラジエータ13を覆い、ラジエータカバー14の外側に枠体15を設け、枠体15に防塵網16を張設している。しかして、冷却ファン12の回転により発生した冷却風は防塵網16を通過して塵埃を濾過されてラジエータ13に供給され、ラジエータ13を冷却するようにしている。
【0021】
図3に示すように、エンジンEのフレーム部Eaに筒状体26を取り付け、筒状体26内に冷却ファン12駆動用の遠心ファン軸12aをベアリング12b,12bを介して支架し、遠心ファン軸12aの突出端部にプーリ12cを取り付け、エンジンEの出力軸からベルト伝動装置を介して動力を伝動している。冷却ファン12は、駆動軸心方向から円周方向に向けて放射状に延出した羽根体を複数有し、中心部から外周方向に送風する遠心ファンである。
【0022】
冷却ファン12の外周部を遠心ファンケースAにより被覆している。この遠心ファンケースAを偏平円筒状で相似形の第一ファンケース21及びこの第一ファンケース21の外側を覆う第二ファンケース22により構成している。第一ファンケース21を筒状体26に回転しないように固定状態で支持し、第二ファンケース22を筒状体26にベアリング26aを介して回転自在に支持し、切換モータ27により冷却位置あるいは除塵位置に回動可能に構成している。
【0023】
また、第一ファンケース21のラジエータ13側の外側面中心部には、遠心ファン軸12aの回りに所定間隔毎に扇状の第一内側吸気口21a,…、エンジンE側となる内側面中心部には第一外側吸気口21b,…を夫々設けている。第二ファンケース22には同様に外側面中心部の第二内側吸気口22a,…、内側面中心部の第二外側吸気口22b,…を夫々設けている。
【0024】
また、第一ファンケース21の内側面周辺部、外側面周辺部に所定間隔毎に例えば四角形状の第一内側送風口21c,…、第一外側送風口21d,…を設け、第二ファンケースの内側面及び外側面の周辺部には、第二内側送風口22c,…、第二外側送風口22d,…をそれぞれ設けている。
【0025】
そして、切換モータ27により第二ファンケース22を冷却風導入位置に回動させて切換えると(図4)、第一内側吸気口21a,…と第二内側吸気口22a,…とが回転方向にずれた位置となって閉鎖状態となり、また、第一外側吸気口21b,…と第二外側吸気口22b,…とが軸方向に連通して開口状態となって、冷却吸気口I1を形成する。
【0026】
そして、第一外側送風口21d,…と第二外側送風口22d,…とが回転方向にずれた位置となって閉鎖状態となり、第一内側送風口21c,…と第二内側送風口22c,…とが軸方向に連通して開口状態となって冷却送風口O1を形成する。
【0027】
しかして、冷却ファン12が回転駆動されると、この冷却ファン12が放射方向の送風を行うので、冷却吸気口I1から冷却送風口O1へと冷却風が流れる。すなわち、防塵網16で濾過しながら取込んだ外気をラジエータ13を通過させてエンジンE側へと送風して、ラジエータ13及びエンジンEを冷却する。
【0028】
また、切換モータ27により第二ファンケース22を除塵風吹出位置に切換えると(図5)、第一外側吸気口21b,…と第二外側吸気口22b,…とが回転方向にずれた位置となって閉鎖状態となり、また、第一内側吸気口21a,…と第二内側吸気口22a,…とが軸方向に連通して開口状態となって、除塵吸気口I2を形成する。
【0029】
そして、第一内側送風口21c,…と第二内側送風口22c,…とが回転方向にずれた位置となって閉鎖状態となり、第一外側送風口21d,…と第二外側送風口22d,…とが軸方向に連通して開口状態となって除塵送風口O2を形成する。
【0030】
しかして、冷却ファン12の回転により、エンジンE側の内気を除塵吸気口I2から除塵送風口O2へと送風し、ラジエータ13側に吹出すことで、ラジエータ13のコアに目詰まりした塵埃や、防塵網16の外面に付着する藁屑や塵埃を除去することができる。
【0031】
第二ファンケース22の外周部内側及び外周部外側に対向して補助送風ガイド板30,…をそれぞれ設け、第二ファンケース22の周辺部から吹き出した内側向きあるいは外側向きの風を遠心ファン軸12aの軸方向に沿って内外方向に案内し、ラジエータ13の冷却効果及び防塵網16の除塵効果を高めるようにしている。
【0032】
また、筒状体26に回転自在に取り付けている第二ファンケース22の周辺部には、切換リミットスイッチを設け、前記冷却風導入位置、除塵風吹出位置を検出し、コントローラの指令により切換モータ27の駆動を停止するようにしている。コントローラから所定時間毎に切換モータ27に冷却風導入位置切換指令と除塵風吹出位置切換指令を出し、第二ファンケース22を切り換え回動して、ラジエータ13及びエンジンEの冷却とラジエータ13及び防塵網16の除塵を交互に行う構成としている。
【0033】
なお、第二ファンケース22に切換ワイヤを連結し回動可能に構成し、操縦席からの切換操作により第二ファンケース22を切換回動するようにしてもよい。
また、コンバインの刈取作業時において後進走行時にコントローラから除塵位置切換指令を出力して切換モータ27を切換作動し、第二ファンケース22を除塵位置に切り換え回動するようにしてもよい。
【0034】
以上の構成により、冷却ファン12を常時一定方向に駆動して、切換モータ27によって第二ファンケース22を冷却風導入位置に切換えた冷却状態と、第二ファンケース22を除塵風吹出位置に切換えた除塵状態との何れかに切換えることで、送風方向を内外に切換えることができる。従って、従来の軸流型ファンの翼角を反転させる構成のものや、ファンの駆動プーリにベルトの内周面と外周面との何れかを択一的に押圧させる構造によってファンの回転方向を正逆転させる構成の切換機構のように切換時にファンの羽根体やベルトに過大な負荷が掛かる問題が無く、耐久性を向上させることができ、構造を簡単化することでコストを低減することができる。
【0035】
次に、図6乃至図9に基づき操縦部4に設けたステップ51の出し入れ構成について説明する。
操縦部4をキャビン52で被覆し、キャビン52の右側のドアフレーム部52aに右ドア53を縦軸回りに開閉自在に設け、キャビン52の右ドア53の下方にステップ51を設けている。
【0036】
このステップ51をキャビン53のフレーム部に左右方向に出し入れ調節自在に構成し、図8に示すように、右ドア53の軸支部近傍にステップ出し入り手段58作動用のスイッチ55を設けている。このスイッチ55を平歯車54の近傍に設け、スイッチ55にはドア53の内側及び外側から操作できる操作ツマミ55a,55bを設け、キャビン52の内側及び外側から操作できるように構成している。
【0037】
また、右ドアフレーム部52aの右ドア53の軸支部近傍に縦軸回りに回転する平歯車54を軸架し、右ドア53にガイド56に沿って移動自在にキー57を設けている。そして、スイッチ55がONのときには、キー57が平歯車54側に突出しその先端が平歯車54に係合し、右ドア53が開方向に回動すると、キー57を介して平歯車54を回転するように構成している。また、スイッチ55をOFFにすると、キー57が平歯車54から退避離脱し、キー57はボールとスプリングとから構成するデテント機構による位置決め装置59により所定位置に係止される。
【0038】
また、図7に示すように、平歯車54をステップ出し入り手段58の小径の平歯車58a、縦軸58b、ベベルギヤ58c,58d、横軸58e、ピニオンギヤ58f、ラックギヤ58gを介してステップ51に連動連結している。
【0039】
しかして、ドア53の開放回動に連動してステップ51が平行状に外側に突出し、オペレータの足を安定して載せることができる。また、ドア53の閉鎖回動に連動してステップ51が平行状に内側に退避収納され、機体幅を狭くすることができる。ステップ51は機体内側に収納した状態で、キャビン52の外側面よりわずかに(例えば100mm程度)突出した状態となり、収納状態で操縦者が足を掛けることが可能である。
【0040】
なお、前記ピニオンギヤ58fとラックギヤ58gを連動するにあたり、ラックギヤ58gの両端にストッパを設け、ピニオンギヤ58fの離脱を防止している。
また、前記ベベルギヤ58c,58dをウォームホイールとウォームギヤで構成してもよい。
【0041】
前記構成によると、ステップ51の乗降時においてドア53の開作動に関連してステップ51を外側に突出させることができ、オペレータは広いステップ51に足を確実に載せて安全に乗降することができる。また、ドア53の閉回動に関連してステップ51を内側に移動収納し機体幅を狭くし、安全に路上走行をすることができる。
【符号の説明】
【0042】
12 冷却ファン
12a 冷却ファン軸
13 ラジエータ
16 防塵網
21 第一ファンケース
21a 第一内側吸気口
21b 第一外側吸気口
21c 第一内側送風口
21d 第一外側送風口
22 第二ファンケース
22a 第二内側吸気口
22b 第二外側吸気口
22c 第二内側送風口
22d 第二外側送風口
30 補助送風ガイド板
A 遠心ファンケース
E エンジン
I1 冷却吸気口
I2 除塵吸気口
O1 冷却送風口
O2 除塵送風口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防塵網(16)と一定方向に回転駆動される冷却ファン(12)との間にラジエータ(13)を設け、前記冷却ファン(12)を冷却ファンケース(A)で覆い、該冷却ファンケース(A)にはラジエータ(13)側に冷却吸気口(I1)及び除塵送風口(O2)を設け、冷却ファンケース(A)のラジエータ(13)との反対側に、除塵吸気口(I2)及び冷却送風口(O1)を設け、前記除塵吸気口(I2)及び除塵送風口(O2)を閉鎖すると共に冷却吸気口(I1)及び冷却送風口(O1)を開口させ、冷却ファン(12)の回転駆動によって防塵網(16)及びラジエータ(13)通過後の外気を冷却吸気口(I1)から吸入して冷却送風口(O1)から吹き出す冷却状態と、前記冷却吸気口(I1)及び冷却送風口(O1)を閉鎖すると共に除塵吸気口(I2)及び除塵送風口(O2)を開口させ、冷却ファン(12)の回転駆動によって内気を除塵吸気口(I2)から吸入して除塵送風口(O2)からラジエータ(13)及び防塵網(16)へ向けて吹き出す除塵状態とに択一的に切換える送風方向切換手段(27a)を設けたことを特徴とする作業車両の原動部構造。
【請求項2】
前記冷却ファン(12)を、該冷却ファン(12)の回転中心部から外周部に向けて放射方向に伸延する複数の羽根体を備えた遠心ファンとし、前記冷却吸気口(I1)及び除塵吸気口(I2)を、冷却ファンケース(A)における冷却ファン(12)の回転中心部に臨む部位に夫々配置し、前記冷却送風口(O1)及び除塵送風口(O2)を、冷却ファンケース(A)における冷却ファン(12)の外周部よりも外側となる部位に配置したことを特徴とする請求項1記載の作業車両の原動部構造。
【請求項3】
前記冷却ファンケース(A)を、冷却ファン(12)を覆う第一ファンケース(21)と、該第一ファンケース(21)を覆う第二ファンケース(22)で構成し、前記第一ファンケース(21)のラジエータ(13)側の外側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一外側吸気口(21b,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)側の外側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一外側送風口(21d,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一内側吸気口(21a,…)を設け、第一ファンケース(21)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第一内側送風口(21c,…)を設け、前記第二ファンケース(22)のラジエータ(13)側の外側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二外側吸気口(22b,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)側の外側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二外側送風口(22d,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の中心部に、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二内側吸気口(22a,…)を設け、第二ファンケース(22)のラジエータ(13)とは反対側の内側面の外周部には、円周方向に所定の間隔をおいて配置した複数の第二内側送風口(22c,…)を設け、前記第一ファンケース(21)及び第二ファンケース(22)を前記冷却ファン(12)の回転中心となる冷却ファン軸(12a)回りに回転可能に支持し、送風方向切換手段(27a)によって第二ファンケース(22)を回転させて第一ファンケース(21)に対する位相を変更する構成とし、前記冷却状態においては、第一外側吸気口(21b,…)と第二外側吸気口(22b,…)及び第一内側送風口(21c,…)と第二内側送風口(22c,…)とが夫々連通することで冷却吸気口(I1)と冷却送風口(O1)が開口し、第一内側吸気口(21a,…)と第二内側吸気口(22a,…)及び第一外側送風口(21d,…)と第二外側送風口(22d,…)とは夫々連通しないために、除塵吸気口(I2)と除塵送風口(O2)は開口せず、前記除塵状態においては、第一内側吸気口(21a,…)と第二内側吸気口(22a,…)及び第一外側送風口(21d,…)と第二外側送風口(22d,…)が夫々連通することで前記除塵吸気口(I2)と除塵送風口(O2)が開口し、第一外側吸気口(21b,…)と第二外側吸気口(22b,…)及び第一内側送風口(21c,…)と第二内側送風口(22c,…)とは夫々連通しないために、冷却吸気口(I1)と冷却送風口(O1)は開口しない構成としたことを特徴とする請求項2記載の作業車両の原動部構造。
【請求項4】
前記冷却ファンケース(A)の除塵送風口(O2)に対向して、該除塵送風口(O2)から排出された風を前記ラジエータ(13)に向けて案内する補助送風ガイド板(30)を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載の作業車両の原動部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−111452(P2012−111452A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264437(P2010−264437)
【出願日】平成22年11月27日(2010.11.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】