作業車両の無段変速走行制御装置
【課題】ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、低速走行時の安定走行および高速走行時の十分な加速性を確保することができる作業車両の無段変速走行制御装置を提供することにある。
【解決手段】無段変速式作業車両は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行うにおいて、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲(F1)と、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)とを個別に設け、この無段変速制御範囲(F2)をエンジン制御範囲(F1)より大きく設定したものである。
【解決手段】無段変速式作業車両は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行うにおいて、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲(F1)と、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)とを個別に設け、この無段変速制御範囲(F2)をエンジン制御範囲(F1)より大きく設定したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御する作業車両の無段変速走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御する作業車両の無段変速走行制御装置が知られている。この無段変速走行制御装置は、特許文献1の例に示されるように、アクセルペダルの踏込み位置と対応して静油圧式無段変速機構のトラニオン軸を回動制御して停止速から最高速までの範囲で車速を無段調節するとともにエンジンをアイドリングから最大回転数までスロットル調節することができる。したがって、アクセルペダルの踏込み操作のみにより、停車時の無駄なエンジン回転を抑えるとともに、高速時に必要な動力を確保して作業車両を効率よく運転操作することができる。
【特許文献1】特開2005−343187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込量に応じて車速とエンジン回転が次第に変化することから、低車速の範囲ではエンジン回転数が低いので十分な走行動力を得ることができず、作業走行の不安定化を招くのみならず、最高車速時にエンジントルクが低下して高速走行時の十分な加速性が確保できず、路上交通の混乱を招くという問題があった。
【0004】
解決しようとする問題点は、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、低速走行時の安定走行および高速走行時の十分な加速性を確保することができる作業車両の無段変速走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲と、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲とを個別に設け、この無段変速制御範囲をエンジン制御範囲より大きく設定したことを特徴とする。
【0006】
上記構成により、アクセルペダルの踏込み操作に応じて走行車速とエンジン回転数とが増加し、最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが定格回転数に達する僅かなペダル踏込みで十分な走行動力を確保することができる。
【0007】
請求項2の発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化するエンジン制御範囲とを個別に設け、このエンジン制御範囲を無段変速制御範囲と同一範囲に設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、上記構成により、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大トルクとなるペダル位置で無段変速機構が最高車速となることから、高速走行における十分な加速性が確保される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジンが最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが定格回転数に達する僅かなペダル踏込みで十分な走行動力を確保することができるので、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、作業走行に必要な広い車速範囲について安定走行が可能となる。
【0010】
請求項2の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジンが最大トルクとなるペダル位置で無段変速機構が最高車速となることから、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、高速走行における十分な加速性が確保されて路上交通に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
本発明の適用対象となる無段変速式作業車両の一例としての多目的作業車について説明すると、この作業車両は、その平面図(a)、側面図(b)を図1に示すように、モノコックフレームに左右の前輪8、8と左右の後輪9、9を操舵可能に支持し、一般的な作業車両の構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2d、後部に荷台2tを構成し、かつ、作業機動力として機体前部にPTO軸13を備え、また、機体中間位置に車高検出機構2hを下垂状に構成する。
【0012】
また、操縦部2dには、その要部斜視図を図1(c)に示すように、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルRを設け、ハンドルコラム2cの側部に前後進切替レバーS、基部にはその右側位置に車速調節用のアクセルペダル5、左側位置にブレーキペダルB、クラッチペダルC等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0013】
トランスミッション14は、後に詳述するように、「HST」と略称する静油圧式無段変速機構1およびギヤ式の変速機構14aを直列に内設して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。アクセルペダル5を踏むと、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、変速機構14aで変速されて、後輪9、9または、後輪9、9および前輪8、8に伝達され、機体は前進または後進する。また、ブレーキペダルBを踏むと前輪8、8と後輪9、9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、無段変速機構1の可変油圧ポンプのトラニオン軸Hをその電動駆動部1aの制御によって中立に戻し、無段変速機構1の定量油圧モータからの出力を停止する。また、アクセルペダル5とブレーキペダルBを同時に踏むとブレーキペダルBを優先する。
【0014】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を設けて路上清掃を行ったり、芝刈機を付けて芝刈作業を行ったり、雪掻機を設けて除雪などの作業を行う。
【0015】
次に、ミッションケース14の内部構造を図2乃至図5で説明する。
ミッションケース14は、図2に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0016】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来の作業車両のミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図4に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッションケース14内のオイルを抜かずにインプットケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0017】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0018】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図2参照)
PTOクラッチ34の詳細を図5に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0019】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0020】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図5参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチYHのギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチYLのギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0021】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0022】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチGHを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチGLを構成したり、大ギア78と小ギア79が共に游転して動力切になるようにしてギア変速クラッチ3を構成している。
【0023】
クラッチ軸49の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したベベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のベベルギア63が前輪8の車軸へ装着したべベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0024】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチYHからクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチYHからクラッチギア77の小ギア79とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチYLからクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチYLからクラッチギア77の小ギア79とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0025】
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0026】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLはコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダルの踏み込みを検出するスイッチBを設けて、このスイッチBの踏込み信号で高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLのソレノイドへの電力を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0027】
また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLに作動油を送るようにしている。
【0028】
図6は、変速レバー4を示し、変速溝96を中央のニュートラル位置Nから前後H、Lに回動することで前記のギア変速クラッチ3を高速ギアクラッチ入か低速ギアクラッチ入に変速し、この変速レバー4のグリップ80の頭部に設ける増速ボタン81を押すと高速油圧クラッチYHを入動作し、減速ボタン82を押すと低速油圧クラッチYLを入動作する。
【0029】
また、変速溝96には変速レバー4の位置を検出するセンサ90H,Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチYHが入であっても切にして、低速油圧クラッチYLが入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチYLが入であっても切にして、高速油圧クラッチYHが入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチYHを入りにする場合には、アクセルペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、レバー4が低速位置Lで減速ボタン82を押すと一速になり、レバー4が高速位置Hで増速ボタン81を押すと四速になる。
【0030】
(変速制御)
次に、変速制御について説明する。
無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジン制御とを行う制御部によって構成される。制御部による制御特性は、ペダル操作特性線図例を図7に示すように、アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジン6がアイドリングから最大回転数まで変化する2つの踏込み位置P0,P1に及ぶエンジン制御範囲F1と、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する2つの踏込み位置P0,P2に及ぶ無段変速制御範囲F2とを設け、このエンジン制御範囲F1を無段変速制御範囲F2より小さく、すなわち、踏込み開始位置P0、エンジンの最大回転数位置P1、無段変速機構の最高車速位置P2をこの順に設定する。
【0031】
上記制御特性を制御部に構成することにより、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが最大回転数に達する前の定格回転数と対応する僅かなペダル踏込みで走行動力を確保することができるので、広い車速範囲について安定走行が可能となる。
【0032】
この場合において、エンジン制御範囲F1を無段変速制御範囲F2の半分以下に狭く形成することにより、また、少ない踏込み操作でエンジンを最大回転数まで上げて無段変速機構の能力を有効に利用することができる。また、エンジンの定格回転数位置と作業走行に必要な最低車速位置とを一致させることにより、全作業車速範囲について走行動力を確保することができる。
【0033】
次に、高速走行時の負荷対応の例としては、制御部による制御特性は、ペダル操作特性線図例を図8に示すように、アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する2つの踏込み位置P0,P2に及ぶ無段変速制御範囲F2と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化する2つの踏込み位置P0,P3に及ぶエンジン制御範囲F3とを個別に設け、このエンジン制御範囲F3を無段変速制御範囲F2と同一範囲に、すなわち、無段変速機構の最高車速位置P2とエンジンの最大トルク位置P3とを同一のペダル踏込み位置としてエンジンの最大回転数位置P1までペダルの最大踏込み範囲を設定する。
【0034】
上記制御特性を制御部に構成することにより、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大トルクとなるペダル位置P3で無段変速機構が最高車速P2となることから、高速走行における十分な加速性が確保されるので、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、路上交通の混乱を招くことなく、路上走行に対応することができる。
【0035】
(副変速対応)
次に、副変速機構の切替え時の制御については、そのタイミングチャートを図9に示すように、副変速位置を低速Lから高速Hに切替えた時T1にトラニオン角度をそのままに維持するように無段変速制御をし、その後の所定の時間経過後に変速制御を行うことにより、副変速切替え時の負荷変動によってエンジン回転数が低下した際の操作性を向上することができる。
【0036】
(変速規制)
次に、無段変速機構制御について、図10の変速規制線図に示すように、走行車速に応じてトラニオンの制御角度を規制し、低速時にはトラニオン角の制御角を小さい範囲で制御することでエンジンに掛かる負担を小さくすることで加速性を向上することができる。
この場合において、複数の規制パターンA〜Cを切替え可能に制御構成することにより、馬力重視、省エネ重視等の作業内容に応じた適宜の選択が可能となる。
【0037】
また、キックダウンスイッチと称するスイッチを設け、このスイッチ操作と対応して、図11の制御特性線図に示すように、トラニオンの最大制御角度Aより小さい規制角度に無段変速機構の制御範囲を切替え可能に構成することにより、重負荷時の際にスイッチを押している間について負荷を軽減することができるので、作業性を向上することができる。
【0038】
この場合において、図12の制御特性線図(a)とそのシステム構成図(b)に示すように、複数の特性パターンA〜Cから切替スイッチ101によって選択可能に制御構成することにより、傾斜地等の負荷に応じて制御特性を変え、最適な走行性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】多目的作業車の平面図(a)、側面図(b)および要部斜視図(c)
【図2】トランスミッションの軸線展開図
【図3】図2のトランスミッションの要部拡大軸線展開図
【図4】図2のトランスミッションの無段変速部拡大図
【図5】図2のトランスミッションの変速機構部拡大図
【図6】変速レバーの斜視図
【図7】ペダル操作特性線図例
【図8】ペダル操作特性線図例
【図9】副変速切替え時の制御のタイミングチャート
【図10】変速規制線図
【図11】制御特性線図
【図12】制御特性線図(a)とそのシステム構成図(b)
【符号の説明】
【0040】
1 静油圧式無段変速機構(HST)
1a 電動駆動部
5 アクセルペダル
6 エンジン
F1 エンジン制御範囲
F2 無段変速制御範囲
F3 エンジン制御範囲
H トラニオン軸
P0 踏込み開始位置
P1 最大回転数位置
P2 最高車速位置
P3 最大トルク位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御する作業車両の無段変速走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御する作業車両の無段変速走行制御装置が知られている。この無段変速走行制御装置は、特許文献1の例に示されるように、アクセルペダルの踏込み位置と対応して静油圧式無段変速機構のトラニオン軸を回動制御して停止速から最高速までの範囲で車速を無段調節するとともにエンジンをアイドリングから最大回転数までスロットル調節することができる。したがって、アクセルペダルの踏込み操作のみにより、停車時の無駄なエンジン回転を抑えるとともに、高速時に必要な動力を確保して作業車両を効率よく運転操作することができる。
【特許文献1】特開2005−343187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記構成の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込量に応じて車速とエンジン回転が次第に変化することから、低車速の範囲ではエンジン回転数が低いので十分な走行動力を得ることができず、作業走行の不安定化を招くのみならず、最高車速時にエンジントルクが低下して高速走行時の十分な加速性が確保できず、路上交通の混乱を招くという問題があった。
【0004】
解決しようとする問題点は、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、低速走行時の安定走行および高速走行時の十分な加速性を確保することができる作業車両の無段変速走行制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲と、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲とを個別に設け、この無段変速制御範囲をエンジン制御範囲より大きく設定したことを特徴とする。
【0006】
上記構成により、アクセルペダルの踏込み操作に応じて走行車速とエンジン回転数とが増加し、最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが定格回転数に達する僅かなペダル踏込みで十分な走行動力を確保することができる。
【0007】
請求項2の発明は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化するエンジン制御範囲とを個別に設け、このエンジン制御範囲を無段変速制御範囲と同一範囲に設定したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、上記構成により、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大トルクとなるペダル位置で無段変速機構が最高車速となることから、高速走行における十分な加速性が確保される。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジンが最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが定格回転数に達する僅かなペダル踏込みで十分な走行動力を確保することができるので、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、作業走行に必要な広い車速範囲について安定走行が可能となる。
【0010】
請求項2の無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジンが最大トルクとなるペダル位置で無段変速機構が最高車速となることから、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、高速走行における十分な加速性が確保されて路上交通に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
本発明の適用対象となる無段変速式作業車両の一例としての多目的作業車について説明すると、この作業車両は、その平面図(a)、側面図(b)を図1に示すように、モノコックフレームに左右の前輪8、8と左右の後輪9、9を操舵可能に支持し、一般的な作業車両の構成と前後を逆に、すなわち、エンジン6を機体後部に配置し、トランスミッション14を機体前部に配置する。その機体前部に操縦部2d、後部に荷台2tを構成し、かつ、作業機動力として機体前部にPTO軸13を備え、また、機体中間位置に車高検出機構2hを下垂状に構成する。
【0012】
また、操縦部2dには、その要部斜視図を図1(c)に示すように、ハンドルコラム2cを立設してステアリングハンドルRを設け、ハンドルコラム2cの側部に前後進切替レバーS、基部にはその右側位置に車速調節用のアクセルペダル5、左側位置にブレーキペダルB、クラッチペダルC等の操作手段をそれぞれ配置する。
【0013】
トランスミッション14は、後に詳述するように、「HST」と略称する静油圧式無段変速機構1およびギヤ式の変速機構14aを直列に内設して前後輪8,9とPTO出力軸13に駆動力を伝動する。アクセルペダル5を踏むと、エンジン6からの動力はトランスミッション14内の無段変速機構1で変速され、さらに、変速機構14aで変速されて、後輪9、9または、後輪9、9および前輪8、8に伝達され、機体は前進または後進する。また、ブレーキペダルBを踏むと前輪8、8と後輪9、9のディスクブレーキ(図示せず)を作動させるとともに、無段変速機構1の可変油圧ポンプのトラニオン軸Hをその電動駆動部1aの制御によって中立に戻し、無段変速機構1の定量油圧モータからの出力を停止する。また、アクセルペダル5とブレーキペダルBを同時に踏むとブレーキペダルBを優先する。
【0014】
PTO軸13には各種の作業機を接続して多目的作業を可能とする。例えば、路上清掃機を設けて路上清掃を行ったり、芝刈機を付けて芝刈作業を行ったり、雪掻機を設けて除雪などの作業を行う。
【0015】
次に、ミッションケース14の内部構造を図2乃至図5で説明する。
ミッションケース14は、図2に示す如く、前ケース15、繋ぎケース16、中間ケース17、後ケース18の4つの中空ケースを連結した構成で、後ケース18に軸支した入力軸19にエンジン6の駆動力が入力し、この入力軸19の回転がインプットケース20内の増速ギア21,22で第一中継軸23へ伝動し、さらに増速ギア24,25で増速され、この増速ギア25に無段変速機構1の油圧入力軸38をスプライン嵌合している。繋ぎケース16は従来の前ケース15と中間ケース17を連結してミッションケース14を長くするもので、前ケース15と中間ケース17及び後ケース18を従来のミッションケースと共用化することで製作コストを低く出来る。
【0016】
増速ギア21,22と増速ギア24,25を内装するインプットケース20は、高速走行を可能にするためにエンジン6の出力回転を増速するために設けるもので、従来の作業車両のミッションケース14内に伝動機構を収納可能にしている。このインプットケース20は図4に示す如く、密封ケースにしてミッションケース14の外部へ通じる給油管からオイルを給油するようにすれば、増速ギア21,22,24,25の修理の際にミッションケース14内のオイルを抜かずにインプットケース20のみを取り外せるので、作業が楽になる。
【0017】
無段変速機構1の内部では油圧変速により出力を大きく無段階で変速して、PTO駆動軸26と走行駆動軸27の二つの軸へ出力する。
PTO駆動軸26にはPTOギア軸28を連結し、このPTOギア軸28のギア29と第二中継軸30に遊嵌したギア31を噛み合わせ、このギア31をPTO軸32に装着したPTOクラッチ34のギア33に噛み合わせている。PTOクラッチ34はギア33からPTO軸32への回転伝動を断続する。
【0018】
PTO軸32にはPTO延長軸35を連結し、このPTO延長軸35のギア36をPTO出力軸13にスプライン嵌合したクラッチギア37に噛み合わせてPTO出力軸13を駆動している。(図2参照)
PTOクラッチ34の詳細を図5に示しているが、クラッチ入ではクラッチ盤88が繋がってケーシング86が回転して伝動するが、クラッチ切では戻しバネ87の圧でクラッチ盤88が離れてケーシング86をフリーにする。この時にケーシング86の付き回りを防ぐ為に繋ぎケース16のボス部81に当接する係止リング85をケーシング86の外周に装着している。
【0019】
走行駆動軸27には第三中継軸39を連結し、この第三中継軸39に固着したギア40ヘギア41,42を噛み合わせて第四中継軸43に伝動する。第四中継軸43にはメインギア軸44を連結している。
【0020】
メインギア軸44には、大ギア45と中ギア46を一体的に固着し、このメインギア軸44の延長上にサブギア軸47を分離して回転可能に軸支している。このサブギア軸47には小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75を一体的に固着している。従って、大ギア45と中ギア46は同一回転をし、小ギア48と大ギア74及び走行伝動ギア75は後述するクラッチギア77からの回転を受ける。(図5参照)
大ギア45はクラッチ軸49に装着した高速油圧クラッチYHのギア50と噛み合い、中ギア46はクラッチ軸49に装着した低速油圧クラッチYLのギア53と噛み合い、メインギア軸44の回転をクラッチ軸49へ高速或いは低速で伝動する。
【0021】
クラッチ軸49の延長上にスプライン軸76をスプライン嵌合し、このスプライン軸76にクラッチギア77をスプライン嵌合して、クラッチ軸49の回転をクラッチギア77に伝動している。また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチ51と低速油圧クラッチ52に作動油を送るようにしている。
【0022】
クラッチギア77には大ギア78と小ギア73を形成し、大ギア78が前記サブギア軸47の小ギア48に噛み合って増速伝動して高速ギアクラッチGHを構成したり、小ギア79がサブギア軸47の大ギア74に噛み合って減速伝動して低速ギアクラッチGLを構成したり、大ギア78と小ギア79が共に游転して動力切になるようにしてギア変速クラッチ3を構成している。
【0023】
クラッチ軸49の走行伝動ギア75は、スプライン軸76に遊嵌したベベルギア軸62にスプライン嵌合した走行ギア56に噛み合ってベベルギア軸62を駆動している。ベベルギア軸62のベベルギア63が前輪8の車軸へ装着したべベルギアへ駆動力を伝動するのである。
【0024】
ベベルギア軸62は、高速油圧クラッチYHからクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による四速か、高速油圧クラッチYHからクラッチギア77の小ギア79とサブギア軸47の大ギア74への伝動による三速か、低速油圧クラッチYLからクラッチギア77の大ギア78とサブギア軸47の小ギア48への伝動による二速か、低速油圧クラッチYLからクラッチギア77の小ギア79とサブギア軸47の大ギア74への伝動による一速かのどれかで回転することになる。
【0025】
また、ベベルギア軸62の回転は、走行ギア56からPTO軸32に装着した大小ギア59の小ギア部57へ伝動し、さらに大ギア部58に噛み合う後輪駆動軸61のクラッチギア60で適宜に後輪9へ駆動力を伝動可能にしている。
【0026】
走行ギア56は、ベベルギア軸62に伝動すると共に大小ギア59を介して後輪駆動軸61へ伝動しているので、伝動構成を単純化して前後に長くなるのを防いでいる。
尚、高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLはコントローラからの制御信号によりソレノイドを介してどちらかを入に保持するのであるが、ブレーキペダルの踏み込みを検出するスイッチBを設けて、このスイッチBの踏込み信号で高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLのソレノイドへの電力を断って両クラッチ51,52をニュートラルにするようにしている。このニュートラルの状態でブレーキを作用することで素早く停止でき、ギア変速クラッチ3の切換えがスムースに行える。
【0027】
また、クラッチ軸49を支持する繋ぎケース16のボス部81にはクラッチ軸49の油圧孔に通じる油圧用孔82,83,84を設けて、高速油圧クラッチYHと低速油圧クラッチYLに作動油を送るようにしている。
【0028】
図6は、変速レバー4を示し、変速溝96を中央のニュートラル位置Nから前後H、Lに回動することで前記のギア変速クラッチ3を高速ギアクラッチ入か低速ギアクラッチ入に変速し、この変速レバー4のグリップ80の頭部に設ける増速ボタン81を押すと高速油圧クラッチYHを入動作し、減速ボタン82を押すと低速油圧クラッチYLを入動作する。
【0029】
また、変速溝96には変速レバー4の位置を検出するセンサ90H,Lを設けて、変速レバー4が低速位置Lから高速位置Hに移動すると高速油圧クラッチYHが入であっても切にして、低速油圧クラッチYLが入になって三速になり、高速位置Hから低速位置Lに移動すると低速油圧クラッチYLが入であっても切にして、高速油圧クラッチYHが入になって二速になるようマイコン制御を行っている。なお、高速油圧クラッチYHを入りにする場合には、アクセルペダル5が3/4以上踏込まれて無段変速機構が高速であれば一旦低速にして変速ショックを低減させる。また、レバー4が低速位置Lで減速ボタン82を押すと一速になり、レバー4が高速位置Hで増速ボタン81を押すと四速になる。
【0030】
(変速制御)
次に、変速制御について説明する。
無段変速走行制御装置は、アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジン制御とを行う制御部によって構成される。制御部による制御特性は、ペダル操作特性線図例を図7に示すように、アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジン6がアイドリングから最大回転数まで変化する2つの踏込み位置P0,P1に及ぶエンジン制御範囲F1と、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する2つの踏込み位置P0,P2に及ぶ無段変速制御範囲F2とを設け、このエンジン制御範囲F1を無段変速制御範囲F2より小さく、すなわち、踏込み開始位置P0、エンジンの最大回転数位置P1、無段変速機構の最高車速位置P2をこの順に設定する。
【0031】
上記制御特性を制御部に構成することにより、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大回転数に達した後に無段変速機構が最高車速に達することから、エンジンが最大回転数に達する前の定格回転数と対応する僅かなペダル踏込みで走行動力を確保することができるので、広い車速範囲について安定走行が可能となる。
【0032】
この場合において、エンジン制御範囲F1を無段変速制御範囲F2の半分以下に狭く形成することにより、また、少ない踏込み操作でエンジンを最大回転数まで上げて無段変速機構の能力を有効に利用することができる。また、エンジンの定格回転数位置と作業走行に必要な最低車速位置とを一致させることにより、全作業車速範囲について走行動力を確保することができる。
【0033】
次に、高速走行時の負荷対応の例としては、制御部による制御特性は、ペダル操作特性線図例を図8に示すように、アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構が停止速から最高車速まで変化する2つの踏込み位置P0,P2に及ぶ無段変速制御範囲F2と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化する2つの踏込み位置P0,P3に及ぶエンジン制御範囲F3とを個別に設け、このエンジン制御範囲F3を無段変速制御範囲F2と同一範囲に、すなわち、無段変速機構の最高車速位置P2とエンジンの最大トルク位置P3とを同一のペダル踏込み位置としてエンジンの最大回転数位置P1までペダルの最大踏込み範囲を設定する。
【0034】
上記制御特性を制御部に構成することにより、アクセルペダルの踏込み操作に応じてエンジン回転数と走行車速とが増加し、エンジンが最大トルクとなるペダル位置P3で無段変速機構が最高車速P2となることから、高速走行における十分な加速性が確保されるので、ペダル操作による作業車両の簡易な車速調節操作と効率的なエンジン制御とを確保しつつ、路上交通の混乱を招くことなく、路上走行に対応することができる。
【0035】
(副変速対応)
次に、副変速機構の切替え時の制御については、そのタイミングチャートを図9に示すように、副変速位置を低速Lから高速Hに切替えた時T1にトラニオン角度をそのままに維持するように無段変速制御をし、その後の所定の時間経過後に変速制御を行うことにより、副変速切替え時の負荷変動によってエンジン回転数が低下した際の操作性を向上することができる。
【0036】
(変速規制)
次に、無段変速機構制御について、図10の変速規制線図に示すように、走行車速に応じてトラニオンの制御角度を規制し、低速時にはトラニオン角の制御角を小さい範囲で制御することでエンジンに掛かる負担を小さくすることで加速性を向上することができる。
この場合において、複数の規制パターンA〜Cを切替え可能に制御構成することにより、馬力重視、省エネ重視等の作業内容に応じた適宜の選択が可能となる。
【0037】
また、キックダウンスイッチと称するスイッチを設け、このスイッチ操作と対応して、図11の制御特性線図に示すように、トラニオンの最大制御角度Aより小さい規制角度に無段変速機構の制御範囲を切替え可能に構成することにより、重負荷時の際にスイッチを押している間について負荷を軽減することができるので、作業性を向上することができる。
【0038】
この場合において、図12の制御特性線図(a)とそのシステム構成図(b)に示すように、複数の特性パターンA〜Cから切替スイッチ101によって選択可能に制御構成することにより、傾斜地等の負荷に応じて制御特性を変え、最適な走行性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】多目的作業車の平面図(a)、側面図(b)および要部斜視図(c)
【図2】トランスミッションの軸線展開図
【図3】図2のトランスミッションの要部拡大軸線展開図
【図4】図2のトランスミッションの無段変速部拡大図
【図5】図2のトランスミッションの変速機構部拡大図
【図6】変速レバーの斜視図
【図7】ペダル操作特性線図例
【図8】ペダル操作特性線図例
【図9】副変速切替え時の制御のタイミングチャート
【図10】変速規制線図
【図11】制御特性線図
【図12】制御特性線図(a)とそのシステム構成図(b)
【符号の説明】
【0040】
1 静油圧式無段変速機構(HST)
1a 電動駆動部
5 アクセルペダル
6 エンジン
F1 エンジン制御範囲
F2 無段変速制御範囲
F3 エンジン制御範囲
H トラニオン軸
P0 踏込み開始位置
P1 最大回転数位置
P2 最高車速位置
P3 最大トルク位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、
上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲(F1)と、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)とを個別に設け、この無段変速制御範囲(F2)をエンジン制御範囲(F1)より大きく設定したことを特徴とする作業車両の無段変速走行制御装置。
【請求項2】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、
上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化するエンジン制御範囲(F3)とを個別に設け、このエンジン制御範囲(F3)を無段変速制御範囲(F2)と同一範囲に設定したことを特徴とする作業車両の無段変速走行制御装置。
【請求項1】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、
上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、エンジンがアイドリングから最大回転数まで変化するエンジン制御範囲(F1)と、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)とを個別に設け、この無段変速制御範囲(F2)をエンジン制御範囲(F1)より大きく設定したことを特徴とする作業車両の無段変速走行制御装置。
【請求項2】
アクセルペダルの踏込み位置と対応して走行車速とエンジン回転数とを制御するように無段変速機構制御とエンジンスロットル制御とを行う作業車両の無段変速走行制御装置において、
上記アクセルペダルの踏込み開始からの操作について、無段変速機構(1)が停止速から最高車速まで変化する無段変速制御範囲(F2)と、エンジンがアイドリングから最大トルクまで変化するエンジン制御範囲(F3)とを個別に設け、このエンジン制御範囲(F3)を無段変速制御範囲(F2)と同一範囲に設定したことを特徴とする作業車両の無段変速走行制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−78089(P2010−78089A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248276(P2008−248276)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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