説明

作業車両

【課題】DPFをエンジンルーム内に配置する際に、キャビンからの前方視界を良好にし、エンジンのメンテナンスを容易にすることを課題とする。
【解決手段】ディーゼルエンジンEを搭載するエンジンルーム内であって、該エンジンルーム内の前方に配置しているラジエータの後方近傍でありディーゼルエンジンの上方にディーゼルパティキュレートフィルタを設ける構成とし、該ディーゼルパティキュレートフィルタは、機体の前後方向に対してその長手方向を直行する向きに配置する構成とし、前記エンジンルームを覆うボンネットの形状であって、ディーゼルパティキュレートフィルタ部分を覆うボンネットの横幅長さに対して、ディーゼルパティキュレートフィルタ後方の部分を覆うボンネットの横幅長さを短くなるように構成し、さらに、ディーゼルエンジンの側方を覆うサイドカバーを独立して開閉可能に構成したことを特徴とする作業車両の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作業車両に関する。特に、粒状化物質を捕集するためのディーゼルパティキュレートフィルタを有するディーゼルエンジンを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)をエンジンルーム内に配置する構成は公知である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2008−31955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述のような技術では、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)をエンジンルーム内の一方側(左側)に配置しているので、エンジンルーム内の空間が広くなり、その結果ボンネットも大きくなってしまって運転席からの前方視界、特に運転席から作業車の前輪付近が見えにくいという問題がある。また、エンジンの側方からエンジンやその周辺部材のメンテナンスが容易にできないという問題がある。
【0004】
本発明の課題は、前述のような不具合を解消する作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
【0006】
すなわち、請求項1記載の発明では、ディーゼルエンジン(E)のシリンダー(5)から排出される排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を設けるディーゼルエンジン(E)を搭載し、キャビン(14)を備えた作業車両において、ディーゼルエンジン(E)を搭載するエンジンルーム(61)内であって、該エンジンルーム(61)内の前方に配置しているラジエータ(62)の後方近傍でありディーゼルエンジン(E)の上方にディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を設ける構成とし、該ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)は、機体の前後方向に対してその長手方向を直行する向きに配置する構成とし、前記エンジンルーム(61)を覆うボンネット(66)の形状であって、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)に対して、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)後方の部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L2)を短くなるように構成し、さらに、ディーゼルエンジン(E)の側方を覆うサイドカバー(68)を独立して開閉可能に構成したことを特徴とする作業車両としたものである。
【0007】
ディーゼルエンジン(E)から排出された排気ガスは、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を通過して機外へ放出される。このとき、排気ガス内の粒状化物質は、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)で捕集される。ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)に対して、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)後方の部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L2)は短い。また、ディーゼルエンジン(E)の側方を覆うサイドカバー(68)は開閉する。
【0008】
請求項2記載の発明では、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)の下方におけるボンネット(66)の横幅長さ(L3)の長さは、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)よりも短くなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業車両としたものである。
【0009】
ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)の下方におけるボンネット(66)の横幅長さ(L3)の長さは、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)よりも短い。
【0010】
請求項3記載の発明では、前記サイドカバー(68)の前側又は後側の一端にヒンジ(67)を設け、該ヒンジ(67)を回動支点としてサイドカバー(68)を開閉可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両としたものである。
【0011】
サイドカバー(68)はヒンジ(67)を回動支点として開閉する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のごとく構成したので、請求項1記載の発明においては、エンジンルーム(61)内において、DPF(46b)が機体前後の長手方向にわたってボンネット(66)のいずれか一方側に突出することがないので、キャビン(14)からの視界が悪くなることを防止できるようになる。ボンネット(66)の横幅方向の長さは、キャビン(14)に近いほど短いので、キャビン(14)からの前方視界がさらに良好となる。特に、前輪付近の視界が良好となる。また、ディーゼルエンジン(E)の側方を覆うサイドカバー(68)は開閉するので点検保守が容易となる。
【0013】
請求項2記載の発明においては、請求項1の効果に加え、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)の下方におけるボンネット(66)の横幅長さ(L3)の長さは、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)よりも短く構成したので、さらにキャビン(14)からの前方視界、特に前輪付近の視界が良好となる。
【0014】
請求項3の記載においては、請求項1又は請求項2の効果に加え、ヒンジ(67)を回動支点としてサイドカバー(68)を開閉可能に構成したので、サイドカバー(68)の開閉が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図
【図2】制御モードによるエンジン回転数と出力トルクの関係を示す線図
【図3】トラクタの左側面図
【図4】トラクタの平面図
【図5】吸気系と排気系の模式図
【図6】(a)エンジンルーム周辺の横側面図(b)エンジンルームの正面図(c)エンジンルームの平面図
【図7】トラクタの右側面図
【図8】トラクタの左側面図
【図9】(a)後処理装置の一部の側断面図(b)後処理装置の正面断面図
【図10】後処理装置の一部の側断面図
【図11】後処理装置の一部の側断面図
【図12】トラクタの一部の斜視図
【図13】後処理装置の側断面図
【図14】トラクタの一部の斜視図
【図15】(a)トラクタの一部の左側面図(b)トラクタの一部の正面図
【図16】後処理装置カバーの接続部の斜視図
【図17】(a)後処理装置配管の模式図(b)後処理装置配管の模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
図1は、蓄圧式燃料噴射装置の全体構成図である。蓄圧式燃料噴射装置は、例えば、多気筒ディーゼル機関に適用されるものであるが、ガソリン機関でもよい。そして、蓄圧式燃料噴射装置は、噴射圧力に相当する高圧燃料を蓄圧するコモンレール1と、このコモンレール1に取り付けられる圧力センサ2と、燃料タンク3より汲み上げた燃料を加圧してコモンレール1に圧送する高圧ポンプ4と、コモンレール1に蓄圧された高圧燃料をエンジンEのシリンダー5内に噴射する燃料噴射ノズル6と、前記高圧ポンプ4と燃料噴射ノズル6等の動作を制御する制御装置(ECU)等から構成される。ECUとは、エンジンコントロールユニットの略称である。ECU100には本機側のCPU200が接続しており、互いに情報交換をしている。
【0018】
このように、コモンレール1は、エンジンEの各シリンダー5へ燃料を噴射するものであり、燃料供給を要求された圧力とするものである。
【0019】
前記燃料タンク3内の燃料は吸入通路により燃料フィルタ7を介してエンジンEで駆動される高圧ポンプ4に吸入され、この高圧ポンプ4によって加圧された高圧燃料は吐出通路8によりコモンレール1に導かれて蓄えられる。
【0020】
コモンレール1内の高圧燃料は各高圧燃料供給通路9により気筒数分の燃料噴射ノズル6に供給され、ECU100からの指令に基づき、各シリンダーに燃料噴射ノズル6が作動して、高圧燃料がエンジンEの各シルンダー5室内に噴射供給され、各燃料噴射ノズル6での余剰燃料(リターン燃料)は各リターン通路10により共通のリターン通路10へ導かれ、このリターン通路10によって燃料タンク3へ戻される。
【0021】
また、コモンレール1内の燃料圧力(コモンレール圧)を制御するため高圧ポンプ4に圧力制御弁11が設けられており、この圧力制御弁11はECU100からのデューティ信号によって、高圧ポンプ4から燃料タンク3への余剰燃料のリターン通路10の流路面積を調整するものであり、これによりコモンレール1側への燃料吐出量を調整してコモンレール圧を制御することができる。
【0022】
具体的には、エンジン運転条件に応じて目標コモンレール圧を設定し、レール圧力センサ2により検出されるコモンレール圧が目標コモンレール圧と一致するよう、圧力制御弁11を介してコモンレール圧をフィードバック制御する構成としている。
【0023】
作業車(農作業機)におけるコモンレール1を有するディーゼルエンジンEのECU100は、図2に示すように、回転数と出力トルクの関係において走行モードAと通常作業モードB及び重作業モードCの三種類の制御モードを有する構成としている。
【0024】
走行モードAは、エンジン回転数の変動で出力も変動するドループ制御である。即ち、エンジンに負荷が掛かると負荷に応じてエンジン回転数を減少させる制御である。例えば、ブレーキを掛けて走行速度を減速したり停止したりすると、この走行負荷の増大に伴ってエンジン回転数が低下するため走行速度の減速や停止を安全に行うことができるものである。基本的には農作業等を行わず移動走行する場合に使用するものであるが、比較的負荷の小さい作業の場合は、このドループ制御を選択することもある。
【0025】
通常作業モードBは、負荷が変動してもエンジン回転数が一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御である。通常の農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターであれば耕耘作業時に耕地が固く耕耘刃に抵抗が掛かるときであり、コンバインであれば収穫作業時に収穫物が多く負荷が増大したときでも、出力が変動して回転数を維持するときである。
【0026】
重作業モードCは、通常作業モードBと同様に負荷が変動してもエンジン回転数一定で出力を負荷に応じて変更するアイソクロナス制御に加え、負荷限界近くになると回転数を上昇させて出力を上げる重負荷制御を加えた制御である。特に、負荷限界近くで農作業を行う場合に使用するものである。例えば、トラクターで耕耘作業を行っている際に、特に、固い耕地に遭遇してもエンジン出力が通常の限界を越えて増大するので作業を中断することがなく、効率の良い作業が可能となる。
【0027】
これらの作業モードA,B,Cは、各作業モードA,B,Cを切り替え可能な作業モード切替スイッチの操作、又は農作業車(トラクター、コンバイン、田植機等)の走行変速レバーの変速操作、又は作業クラッチ(トラクターであればロータリであり、コンバインであれば刈取部、脱穀部である)の入り切り操作等によって切り替わるように構成する。
【0028】
ディーゼルエンジンEでは、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、着火遅れを短縮してディーゼルエンジンE特有のノック音を低減し、騒音を低減することが可能な構成としている。
【0029】
このパイロット噴射は、メイン噴射の前に1回又は2回に限定して行われるものであったが、前記コモンレール1の蓄圧式燃料噴射装置を用いることで、エンジンEの状況に応じてパイロット噴射の状態を変化させ、騒音の低減や不完全燃焼による白煙又は黒煙の発生を抑制できるようになる。また、メイン噴射に先立って少量の燃料をパルス的に噴射するパイロット噴射を行うことにより、排ガス中の窒素酸化物の量が減少するようになる。
【0030】
図3は、前述のようなコモンレール1を有するディーゼルエンジンを搭載したトラクターの側面図を示し、図4はその平面図を示している。平面図においては、図3に示すキャビン14を省いた状態を示している。
【0031】
トラクターは、機体の前後部に前輪12、12と後輪13、13を備え、機体前部のエンジンルーム61内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケースT内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪12、12と後輪13、13に伝えるように構成している。前記エンジンルーム61はボンネット62で覆う構成である。
【0032】
機体中央であってキャビン14内のハンドルポスト15にはステアリングハンドル16が支持され、その後方にはシート17が設けられている。ステアリングハンドル16の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー18が設けられている。この前後進レバー18を前側に移動させると機体は前進し、後方へ移動させると後進する構成である。
【0033】
また、ハンドルポスト15を挟んで前後進レバー18の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー25が設けられ、またステップフロア19の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル23と、左右の後輪13、13にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル24L、24Rが設けられている。ステップフロア19の左コーナー部にはクラッチペダル20が設けられている構成である。
【0034】
また、主変速レバー26はシート17の左前方部にあり、低速、中速、高速及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー27はその後方にあり、さらにその右側にPTO変速レバー28を設けている。さらに、シート17の右側には作業機21(ロータリ等)の高さを設定するポジションレバー29と圃場の耕耘深さを自動的に設定する自動耕深レバー30、これらのレバーの後に作業機21の右上げスイッチ31と右下げスイッチ32が配置され、さらにその後に作業機21の自動水平スイッチ33とバックアップスイッチ34が配置されている。バックアップスイッチ34は、機体が後進時において、作業機21を自動的に上昇させるものである。作業機21は、機体の後方にリンク22で連結されている構成である。トラクターは作業機21を駆動させて機体を走行させることで、圃場内の耕耘等の作業を行なうものである。21aは作業機21を昇降する油圧シリンダーである。
【0035】
図5はエンジンのシリンダー5内への吸気と排気の模式図であり、4サイクルのディーゼルエンジンの実施例である。過給器TBの吸気タービン36により過給された空気は、エアクリーナー35から吸気タービン36、インタークーラー37を通過して吸気マニホールド38からシリンダー5内へ送られる構成である。39は吸気バルブであり、40はピストンである。48はカムでありロッカーアーム49を介して吸排気バルブ39、41を開閉させるものである。
【0036】
シリンダー5内で燃焼した排ガスは、排気バルブ41から排気マニホールド42を通過した後、過給器TBの排気タービン45で過給器TBを駆動して排出される構成である。
【0037】
このディーゼルエンジンは、排気ガスの一部を吸気側に混入させるためのEGR(排気再循環装置)回路44を有している。EGR回路で排気ガスの一部を吸気側に混入させることで酸素量(O2)を減らして、窒素酸化物Noxの発生を低減させるように構成している。ただし、EGR率が上昇しすぎると、逆に酸素量が少なくなって不完全燃焼になるので、燃焼状態によりEGR率を調節する必要がある。この調節は、EGRバルブ43にて行う。EGR回路44は、後述する後処理装置46下流側の排気管55と過給器TBの吸気タービン36上流側の吸入管56との間を接続している。また、EGR回路44の途中にはEGRクーラ57を設ける構成としている。このEGRバルブ43の開閉具合でシリンダー5内への排気ガスの還元量が変化する。
【0038】
排気タービン45を通過後の排気ガスは、後処理装置46を通過してマフラー50から大気中に排出される。後処理装置46は、酸化触媒(DOC)46aとディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bとから構成されている。
【0039】
酸化触媒(DOC)は不燃物室を燃焼させるものであり、ディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)は粒状化物室(PM)を捕集するためのものである。前記EGRバルブ43と絞り弁47については、ECU100により制御される構成である。後処理装置46はディーゼルパティキュレートフィルター(DPF)46bのみで構成してもよい、酸化触媒(DOC)46aを設けると不燃物質が燃焼するので、よりクリーンな排気ガスとなる。
【0040】
DPF46bは、排気ガスの温度が低い状態(低負荷)が長時間続くと、PMが溜まってきて能力の低下が懸念される。そこで、後処理装置46の下手側に絞り弁47を設け、この絞り弁47を絞るとDPF46b内の圧力が高く保持されるので温度も高くなる。これにより、高い温度の影響により、DPF46bの再生が可能となる。即ち、高い温度の排気ガスがDPF46bを通過すると、DPF46b内に存在しているPMが焼き飛ばされることでDPF46bが再生される。
【0041】
DPF46bを再生させるためのDPF再生運転としては、EGRバルブ43と絞り弁47の両方を絞る。そして、燃料噴射タイミングのリタード(遅角)と合わせてDPF46b内のガス温度を上昇させ、DPF46bが再生に入るようにする。これにより、燃料のアフター噴射(排気ガス温度を上昇させるため)が不要となったり、アフター噴射の回数を減らすことができるようになるので、燃料消費量を抑制できて環境にもよい。
【0042】
このようなDPF再生運転を行うための条件としては、後処理装置46の上手側に圧力センサ52を設けておいて、この圧力センサ52の値が所定値以上になるとDPF46b内にPMが蓄積して抵抗となっている状態なので、DPF再生運転を行うようにする。
【0043】
また、DPF再生運転に入った状態が長時間続くと、過熱状態となってしまいDPF46bが損傷してしまう。そこで、後処理装置46の下手側に温度センサ53を設け、この温度センサ53の値が所定値を超えるとDPF再生運転を止めて通常運転に戻るようにする。
【0044】
通常の運転は、EGRバルブ43と絞り弁47を同時に制御してEGR量を適宜コントロールするようにする。特に、絞り弁47を有することで、DPF46b内のガス温度を高く保持することができるようになる。
【0045】
前述のような構成としたことで、吸気スロットルが不要となる。即ち、過給器付き機関では吸気側圧力が高いので、EGRガス量を確保するために排気絞り弁または吸気スロットルを設け、EGRバルブと連動した制御が必要となるが、このようなシステムが不要となる。
【0046】
また、DPF46b下流の排気ガスを取り出すために、過給器TBの汚れに伴う性能劣化を生じることを防止できるようになる。そして、EGRガスはEGRクーラ57で冷却されるため、NOx低減に対して効果が大きくなる。
【0047】
前述したように、DPFの再生運転を行なうDPF強制再生モードにおいては、排気絞り弁47を絞り、ON−OFF制御によってEGRバルブ43を全閉とするように構成する。したがって、排気ガスの還元が行なわれないのでNOが増加し、このNOが酸化触媒(DOC)46aによってNO2に転換され、DPF46bの再生が促進されるようになる。
【0048】
また、DPF46bの強制再生中において、エンジン回転がローアイドルに移行した場合は、前記EGRバルブ43を全開とする。DPF46bの下流側には温度センサ53を設けているので、この温度センサ53による検出値が所定値以上に上昇したことも条件に加えるようにしてもよい。
【0049】
前述のように構成している後処理装置46において、トラクターのどこに搭載するかが問題となる。この場合、DFP46bのみの配置でもよいし、DOC46aとDPF46bの両方を配置する構成としてもよい。図6に示すような配置とする。具体的にはエンジンルーム61内に設ける構成とする。即ち、エンジンEの前方に配置しているラジエータ62の後方近傍、及びエンジンEの上方に配置する構成とする。そして、車体の前後方向に対して直行する向きに配置する構成とする。この配置構成において、エンジンE周辺の補器類を避けるために45度程度まで斜め状態となるように配置してもよい。
【0050】
エンジンEとDPF46bとの間は、仕切板64で仕切る構成としている。この仕切板64は、過給器TBの位置まで構成している。また、ラジエータ62とDPF46bとの間も仕切板65で仕切る構成とする。これにより、冷却ファン63からの風が直接DPF46bに当たらなくなるので、DPF46bの再生時に必要な熱をDPF46bから奪うことなく、DPF46bの再生が良好に行われるようになる。
【0051】
エンジンルーム61を覆うボンネット66において、DPF46bの近傍位置には、スリット67を構成している。冷却風の多くは矢印Y1方向へと流れるが、冷却風の一部は乱流などのため矢印Y2方向へと流れる。この矢印Y2方向に流れる冷却風を前記スリット67から機外へと排出構成としている。この矢印Y2の冷却風の温度は、エンジンEを通過後の冷却風であるので、比較的温度が高い状態であるため、DPF46bに及ぼす影響は少ない。むしろDPF46b周辺の雰囲気温度を下げる効果がある。DPF46bは、冷却しすぎると粒状化物質(PM)の再生ができなくなるが、熱くなる過ぎると周辺機器に対して熱害を及ぼしてしまう。このため、DPF46b周辺の雰囲気温度は、高くなりすぎない方がよい。このため、前述の冷却風の矢印Y2の流れが寄与している。
【0052】
また、図6(c)に示しているように、DPF46bを配置している所のボンネット66の幅をL1として、その後方のボンネット66の幅をL2とすると、L1>L2の関係となるようにボンネット66を構成する。これにより、シート17(図3)に着座している運転者からの前輪12付近の視界が良好となる。特に、農業機械であるトラクタは、前輪12の走行位置を確認しながら作業走行を行うことがあるので、このような作業走行時に運転がしやすくなる。
【0053】
また、図6(b)に示すように、ボンネット66の幅L1の部分において、その下方の位置(DPF46bが存在しない位置)においては、ボンネット66の幅をL3とすると、L1>L3となるように構成する。これにより、前輪12付近の視界確保がさらに良好となる。
【0054】
また、エンジンEの側方部分については、別のサイドカバー68で構成する。サイドカバー68は、メッシュ構造部材で構成すると共に、別の支持構成(ヒンジ67)で支持する。このように、サイドカバー68は、ヒンジ68を支点として回動(略90度)する構成としているので、メンテナンスが良好に行えるようになる。前記ヒンジ68はサイドカバー68の後側に構成しているが、サイドカバー68の前側に構成してもよい。また、サイドカバー68の上側又は下側にヒンジ68を設ける構成としてもよい。
【0055】
ボンネット66自体の開閉は、後側支点で開閉してもよいし、前側支点で開閉してもよい。また、ヒンジ67を構成せずに、サイドカバー68は単独で着脱可能に構成してもよい。
【0056】
図7の構成について説明する。
【0057】
DPF46bをフロントアクスルブラケット69の先端に配置する構成とし、さらに、後ろ傾斜の斜め状態に配置する構成とする。また、DPF46bの出口フランジに結露水用のドレンコック70を設けている。
【0058】
このように、DPF46bはキャビン14から離れる配置としたので、キャビンのフロントガラスが高温になるのを防止でき、また、ボンネット66で覆われたエンジンルーム内の熱バランスが悪くなるのを防止できるので、エンジンEの冷却効率に影響を与えない。DPF46bの出口フランジに結露水用のドレンコック70を設けているので、DPF46bの劣化を防ぎメンテナンス性が向上する。
【0059】
図8はDPF46bをエンジンの冷却風の流れに対して横置きとすることで、DPF46bの温度を均一化し、局部的な温度上昇を防止する構成としている。また、ボンネット66に別の開閉蓋71を設け、この開閉蓋71を開けることで、DPF46bの点検保守が可能な構成としている。
【0060】
後処理装置46を覆う外カバー73を上流側に延長し、延長部分に内径の小さい円筒パイプ74を設ける。そして、排気ガス導入パイプ72を前記外カバー73と円筒パイプ74に貫通させる構成とする。そして、排気ガス導入パイプ72においては、外カバー73と円筒パイプ72との間の部分に複数の穴75を設けている。円筒パイプ74においては、排気ガス導入パイプ72と後処理装置46の間の部分に複数の穴76を設ける構成としている。従って、排気ガスはW1の流れとW2の流れで後処理装置46内へ導かれる。これにより、後処理装置46の中心部と外周部の温度を均一に保持可能となるので、後処理装置46の機能を発輝することが可能となる。
【0061】
図10に示すように、仕切板78を後処理装置46の途中まで延長することで、排気ガスが後処理装置46の外周部に流れ込むので、後処理装置46の温度低下を防止できるようになる。
【0062】
前述した図7においては、DPF46bをフロントアクスルブラケット69の先端において、後ろ傾斜の斜め状態に配置する構成としたが、図12では、DPF46bを機体左右方向の横向きに配置する構成とする。従来、この部分にはバッテリーがあったが、バッテリー79をステップ80の下方に配置する構成としてもよい。
【0063】
図11に示すように、後処理装置46を覆う外カバー73の上流側への延長部分において、排気ガス導入パイプ72を斜め状態で貫通させるように構成してもよい。そして、排気ガスは、排気ガス導入パイプ72の複数の穴77から排出されて後処理装置46へと向かうので、排気ガスへの抵抗が減って流れの損失が少なくなり、勢いが付いた状態で後処理装置46内に流れる。したがって、後処理装置46に均一に排気ガスが流れるので、触媒の性能低下を防止できるようになる。
【0064】
図13に示すように、後処理装置46(DOC46aとDPF46b)を覆う外カバー73を二分割(上流カバー73a,下流カバー73b)する構成とする。この上流カバー73aと下流カバー73bとの接続部をDPF46bの中間部としてボルト81で固定しておくと、ボルト81と下流カバー73bを外すのみでDPF46bの交換が容易となる。図14に示すように、DOC46aとDPF46bを分割して並列状態でエンジンEの上方に配置する構成とする。これにより、メンテナンスが容易となる。また、図15に示すように、DPF46bをエンジンEの上方に前後方向に配置し、二分割したDPF46bを左右ステップ80の下方に配置するように構成してもよい。
【0065】
図13で説明したように、上流カバー73aと下流カバー73bとの接続部をボルト81で固定する構成としていたが、図16に示すように、T型ボルトナット82で固定するように構成してもよい。
【0066】
図17は複数のDPF46bを並列に配置するものである。そして、上流側のバルブ83,84を交互に切り換える構成としている。これにより、複数のDPF46b内には均一に排気ガスが通過するので、DPF46bの性能を充分に発輝させることができる。排気ガスの量が多いときにおいては、前記バルブ83,84を全てオープンし、全てのDPF46bに排気ガスが流れるようにすることで、効率良く排気ガスを処理可能となる。
【0067】
前記DFP46bにおいては、溜まったPMを定期的に除去(再生)する必要がある。このため、PMの量を正確に予測する必要がある。エンジンの通常運転時においては、エンジン回転数と空燃比に応じて排出量を積算していく。そして、アクセル開度が上昇側で約5%/sec以上変化した場合は、エンジン回転数と空燃比から算出したPMを約15倍して加算する構成とする。これにより、PMの堆積量予測の精度が向上するようになる。
【0068】
そして、DPF46bの再生が必要になると、再生の必要な負荷を演算し、この再生に必要な負荷をメーター等で作業者に報知する構成とする。すると、作業者は、その再生に必要な負荷となるように、速度増加等による負荷変更を実施することで、DPF46bの自動再生が可能となる。
【0069】
なお、前記した各実施例は、理解を容易にするために、個別または混在させて図示、あるいは説明しているが、これらは夫々種々組合せ可能であり、これらの説明順序・表現等によって、構成・作用等が限定されるものではなく、また、相乗効果を奏する場合も勿論存在する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
トラクターやコンバイン等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。
【符号の説明】
【0071】
5 ディーゼルエンジンのシリンダー
14 キャビン
46b ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)
61 エンジンルーム
62 ラジエータ
66 ボンネット
67 ヒンジ
68 サイドカバー
E ディーゼルエンジン
PM 粒状化物質
L1 横幅長さ
L2 横幅長さ
L3 横幅長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン(E)のシリンダー(5)から排出される排気ガス中の粒状化物質(PM)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を設けるディーゼルエンジン(E)を搭載し、キャビン(14)を備えた作業車両において、ディーゼルエンジン(E)を搭載するエンジンルーム(61)内であって、該エンジンルーム(61)内の前方に配置しているラジエータ(62)の後方近傍でありディーゼルエンジン(E)の上方にディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)を設ける構成とし、該ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)は、機体の前後方向に対してその長手方向を直行する向きに配置する構成とし、前記エンジンルーム(61)を覆うボンネット(66)の形状であって、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)に対して、ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)後方の部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L2)を短くなるように構成し、さらに、ディーゼルエンジン(E)の側方を覆うサイドカバー(68)を独立して開閉可能に構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)の下方におけるボンネット(66)の横幅長さ(L3)の長さは、前記ディーゼルパティキュレートフィルタ(46b)部分を覆うボンネット(66)の横幅長さ(L1)よりも短くなるように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記サイドカバー(68)の前側又は後側の一端にヒンジ(67)を設け、該ヒンジ(67)を回動支点としてサイドカバー(68)を開閉可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−251585(P2011−251585A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125165(P2010−125165)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】