説明

併用療法

本発明は一般に、哺乳動物における精神状態または神経精神状態を併用療法で治療する方法に関する。より詳細には、本発明は、抗精神病薬および体内のグルタチオンレベルを増加させる化合物を含む併用療法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、哺乳動物における精神状態または神経精神状態を併用療法で治療する方法に関する。より詳細には、本発明は、抗精神病薬および体内のグルタチオンレベルを増加させる化合物を含む併用療法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本明細書において参照する刊行物の書誌的詳細は、本記載の末尾に収載する。
【0003】
本明細書におけるいかなる先行刊行物(またはそこから得られる情報)または公知のいかなる事柄への言及も、その先行刊行物(またはそこから得られる情報)または公知の事柄が、本明細書が関連する活動分野において共通の一般知識の一部を形成することの承認もしくは了承またはいかなる形態での示唆でもなく、かつそのように解釈されるべきでもない。
【0004】
統合失調症、双極性障害、うつ病などの精神疾患は、多くの人々に影響を及ぼす。例えば、統合失調症は、100人に約1人が罹患する重篤な精神疾患である。統合失調症を特徴づける症状としては、妄想(被害、犯罪、誇大妄想、またはさせられ感(outside control)の誤った思い込み)、幻覚(幻視または幻聴)、および思考障害(追従が困難であるか、または論理的な関連なく1つの話題から別の話題に飛ぶ会話)が挙げられる。統合失調症の二次症状としては、意欲喪失、感情鈍磨、社会的離脱、および/または見識欠如が挙げられる。
【0005】
統合失調症の発症は通常青年期または早期成人期に生じるが、高齢者においても発症することが知られている。発症は迅速で、急性症状が数週間にわたって発症する場合もあれば、緩徐で、数カ月または数年にわたって発症する場合もある。
【0006】
統合失調症の原因は十分に理解されていない。しかし、この数年間で、統合失調症における酸化ホメオスタシスの全身的および中枢的な異常を支持する多数の文献が報告された。この酸化的ストレスの起源は依然として不明である。統合失調症の脳は、抗酸化防御の変化を示す以外に、酸化的攻撃の多数の化学的特質を示す。任意の組織が持続的なラジカル攻撃下にあると、脳内の重要なフリーラジカル/H2O2スカベンジャーであるグルタチオンが欠損する場合がある。最近、グルタチオンが統合失調症において実際に欠損していること、およびグルタチオン代謝に関連する抗酸化酵素活性が顕著に撹乱されることが報告された。Do KQ et al. (2000)は、薬剤を使用していない統合失調症患者では、対照と比較してグルタチオンの脳脊髄液レベルが有意に低いこと(-27%)を報告している。この低下は、以前に報告されている、このような患者の脳脊髄液中のグルタチオン代謝物γ-グルタミルグルタミンのレベルの低下と一致している(Do KQ et al., 1995)。さらに、Do et al., (2000)は、非侵襲的プロトン磁気共鳴分光学的方法を使用して、統合失調症患者の内側前頭前野皮質におけるグルタチオンレベルが対照と比較して52%低いことも見出した。
【0007】
興味深いことに、グルタチオン代謝経路のその他の局面もまた統合失調症において撹乱される。末梢グルタチオンペルオキシダーゼ(GPx)活性の低下が統合失調症患者において記載されており(Abdalla DS et al., 1986)、この低下は脳萎縮の増加と関連している(Buckman TD et al., 1987)。血漿GPxは、薬物治療を受けたまたは受けない統合失調症患者においてスコア化された精神病評価と正に相関する(Yao JK et al., 1999)。GPxは、グルタチオンによるH2O2および他のラジカルの捕捉を触媒する酵素である。
【0008】
グルタチオンレベルの欠損が、うつ病および双極性障害などの気分障害ならびに物質使用および自閉症の一因となり得ることを示唆する間接的証拠もいくつか存在する。
【0009】
これまでは、他のラジカル捕捉系の効率を増加させるなど、グルタチオン代謝の欠損を克服する間接的な手段の使用に研究の焦点が絞られていた。例えば、ビタミンC、ビタミンE(α-トコフェロール)、α-リポ酸補給、およびまたセレノメチオニオン(selenomethionione)が検討されている。現在では、研究者らはビタミンEおよびCの使用に焦点を絞っている(Yao et al., 1999、前記)。セレノメチオニオン補給は、グルタチオンペルオキシダーゼの活性を増加させることが周知である(Duffield AJ et al., 1999)。ビタミンEとセレンの併用補給は、FALSトランスジェニックマウスモデルの治療において有益な効果を提供することが既に報告されており(Gurney ME et al., 1996)、抗酸化的な利点があると思われるこのような経口補給も、脳の酸化障害において血液脳関門を通過して伝達され得ることを実証している。しかし、これらの分子は抗酸化剤として機能し得るという点でグルタチオン代謝を支持するが、それらは脳内のグルタチオンレベルを増加させる最も効率的な手段ではない。
【0010】
さらに、精神障害に罹患している多くの患者は、クロザピン、ハロペリドール、またはリスペリドンなどの抗精神病薬による治療を受ける。これらの薬剤には、薬剤誘発性パーキンソン症候群、アカシジア、遅発性ジスキネジア、糖尿病、肝毒性、白内障、ドライアイ、急性ジストニア、頻拍、低血圧、インポテンス、嗜眠、不快気分、発作、高プロラクチン血症、および神経弛緩薬性悪性症候群を含む多くの副作用がある。副作用は薬剤によって様々である。例えば、オランザピンなどの非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬よりも容易に体重増加を引き起こすようである。結果として、このような非定型抗精神病薬は糖尿病の発症と関連づけられている。同様に、クロザピンは、体内の白血球数が危険なほど減少し得る状態である無顆粒球症を誘発することが知られているため、この薬剤の投与を受けている患者は定期的に血液検査を受ける。
【0011】
したがって、例えば脳内または血中のグルタチオンレベルをさらに増加させ、抗精神病薬によって起こる副作用を悪化させず、好ましくはこれを軽減する、精神障害および神経精神障害を治療する方法を開発する必要性が継続して存在している。
【0012】
本発明に至る研究において、本発明者らは、抗精神病薬とグルタチオンレベルを増加させる化合物の組み合わせによる治療法が、統合失調症などの精神疾患の発症および/または重症度の軽減を提供し、かつ抗精神病薬の副作用のいくつかをも軽減し得ると判断した。
【発明の概要】
【0013】
以下の本明細書および特許請求の範囲を通して、特に断りのない限り、「含む(comprise)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変化形は、記載の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を含むことを意味するが、任意の他の整数もしくは段階または整数もしくは段階の群を除外することを意味するものではないと理解される。
【0014】
本発明の1つの局面は、抗精神病薬と、哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物との組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法を提供する。
【0015】
本発明のさらなる局面は、哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物と併用して抗精神病薬を哺乳動物に投与する段階を含む、抗精神病薬の副作用を軽減する方法を提供する。
【0016】
本発明の別の局面は、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明の別の局面は、抗精神病薬およびグルタチオン前駆体を含む薬学的組成物を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の局面は、精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における抗精神病薬の使用を提供し、この場合、該抗精神病薬は、グルタチオンレベルを増加させる化合物と併用して投与する。
【0019】
本発明のさらなる局面は、精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、グルタチオンレベルを増加させる化合物の使用を提供し、この場合、該化合物は抗精神病薬と併用して投与する。
【0020】
本発明のなおさらなる局面は、精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物の使用を提供する。
【0021】
本発明のさらに別の局面では、抗精神病薬と、グルタチオン前駆体、または薬学的に許容されるその塩との組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法を提供する。
【0022】
本発明のさらに別の局面では、抗精神病薬、および、式(I)の化合物および薬学的に許容されるその塩の組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法を提供する:

式中、R1は-C(O)C1-4アルキルおよび-C(O)(CH2)2CH[C(O)R5]NHR6より選択され、
R2は-OR7、-NH2、および-NHCH2C(O)R8より選択され、
R3およびR4はHおよび-C1-4アルキルより独立して選択され、
R5は-OH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択され、
R6はHまたはC(O)C1-4アルキルより選択され、
R7はHおよびC1-4アルキルより選択され、かつ
R8はOH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】試験期間にわたる、CGI-Sのベースラインからの平均変化を示す。重症度は7ポイント尺度で評価する(1=正常〜7=極めて重症)。*p<0.05対プラセボ、**p<0.01対プラセボ、PDV:中止後来院。p値は、ベースラインスコアおよび治験担当医師について調整したMMRMによる。
【図2】試験期間にわたる、CGI-Iでスコアが3またはそれ未満(改善)の参加者の割合を示す。*p<0.05、**p<0.01。p値はフィッシャーの正確確率検定による。
【図3】試験期間にわたる、BASのベースラインからの平均変化を示す。*p<0.05対プラセボ、PDV:中止後来院。p値は、ベースラインスコアおよび治験担当医師について調整したMMRMによる。
【図4】ベースラインと比較した24週時の一次および二次結果基準の調整済み効果量を示す。データは、平均効果量(Cohenのd統計値)±95%信頼区間である。解析はすべて、ANCOVAを用いてベースラインおよび治験担当医師について調整した。*p<0.05対プラセボ、**p<0.01対プラセボ。
【図5】試験期間にわたる、結果基準に及ぼすNACおよびプラセボの効果を示す。データは、ベースライン時からのその後の来院時および中止後来院(PDV)時のスコアの平均変化(±SEM)である。*p<0.05対プラセボ、**p<0.01対プラセボ、***p<0.005対プラセボ。p値は、ベースラインスコアおよび治験担当医師について調整したMMRMによる。
【図6】ベースラインと比較した24週時の一次および二次結果基準の調整済み効果量(MMRM)を示す。データは、平均効果量(Cohenのd統計値)±95%信頼区間である。MMRMはベースラインスコアおよび治験担当医師について調整した。
【図7】NACおよびNACAは、CHXによって欠損する線条体グルタチオンレベルをレスキューする。データはSEM内の平均値であり、各群においてN=5であり、読み取りは3つ組で行った。
【図8】NACおよびNACAは、CHXによって欠損する肝臓グルタチオンレベルをレスキューする。データはSEM内の平均値であり、各群においてN=5であり、読み取りは3つ組で行った。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は部分的に、グルタチオンレベルを増加させる化合物、特にN-アセチルシステインと、抗精神病薬の組み合わせを投与すると、精神障害または神経精神障害、特に統合失調症の症状の発症および/または重症度を軽減でき、かつ抗精神病薬に付随する副作用をも軽減できるという判断に基づいている。グルタチオンレベルの増加の治療効果は、主に中枢神経系(すなわち脳)で起こると考えられる。しかしながら、本発明は、例えば血中のグルタチオンレベルを上昇させるなど、末梢グルタチオンレベルを上昇させることによって作用する可能性がある。
【0025】
したがって、本発明の1つの局面では、抗精神病薬と、哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物との組み合わせを投与する段階を含む、哺乳動物における精神障害または神経精神障害を治療する方法を提供する。
【0026】
本発明の別の局面では、哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物と併用して抗精神病薬を哺乳動物に投与する段階を含む、抗精神病薬の副作用を軽減する方法を提供する。
【0027】
「神経精神障害」および「精神障害」という用語は、抗精神病薬で治療することができる精神障害を指す。神経精神障害とは、例えば頭部外傷、HIV、またはライム病といった神経系の疾患に起因し得る精神障害と関係する、精神障害のサブクラスである。精神障害および神経精神障害の例としては、小児統合失調症を含む統合失調症、物質乱用(例えば、アンフェタミン誘発性精神病)、精神病(初回エピソード精神病を含む)、双極性障害、躁うつ病、大うつ病、情動障害、統合失調症様障害または統合失調感情障害、うつ病、精神病性うつ病、薬剤性精神病、譫妄、自閉症、悪心、眩暈、内耳感染(内耳炎)、慢性疼痛、緩和ケア(例えば、癌性疼痛)、死戦期激越(すなわち、終末期激越)、アルコール離脱症候群、認知症誘発性精神病、気分障害、および初回エピソード精神病を含むその他の精神障害が挙げられる。好ましくは、本発明は統合失調症の治療に関する。
【0028】
別の態様において、本発明は、双極性障害、大うつ病、または初回エピソード精神病の治療に関する。
【0029】
適切な抗精神病薬としては、精神病エピソードなどの症状の発症および/または重症度を軽減するために投与される任意の薬剤が挙げられる。抗精神病薬の例には、これらに限定されないが、クロザピン、フルオキセチン、オランザピン、シンビアックス(オランザピンとフルオキセチンの組み合わせ)、リスペリドン、ハロペリドール、ドロペリドール、ピモジド、クエチアピン、クロルプロマジン、アミスルプリド、フルフェナジン、アリプリプラゾール(aripriprazole)、フルペンチキソール、ズクロペンチキソール、トリフルオペラジン、バルプロ酸、リチウム、ジプラシドン、ビフェプルノックス、ノルクロザピン、およびテトラベナジンが含まれる。本発明に関する好ましい抗精神病薬としては、クロザピン、オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、およびジプラサドン(ziprasadone)が挙げられる。
【0030】
体内のグルタチオンレベルを増加させ得る化合物としては、グルタチオン前駆体およびシステイン前駆体、ならびにグルタチオン自体およびシステイン自体が挙げられる。本発明を任意の1つの理論または作用様式に限定するわけではないが、グルタチオンは、生組織に広く分布している、スルフヒドリル基を含むトリペプチドである。グルタチオンは、α-グルタミルシステイニルグリシンという別称または略語GSHでも知られている。グルタチオンは一般に特異的な酵素の作用の結果として形成され、ペプチドを特異的にコードする核酸分子の転写および翻訳であるペプチド合成の通常過程の直接的な結果として形成されるのではない。グルタチオンは、式HO2CCH(NH2)CH2CH2CONHCH(CH2SH)CONHCH2CO2Hの分子である。グルタチオン前駆体による生理的過程または経路の調節が本発明の範囲内に包含されることが理解されるべきである。グルタチオン合成の最初の段階は、グルタミン酸のγ-カルボキシル基とシステインのアミノ基との間にペプチド結合を形成してγ-グルタミル-システインを形成することである。これは、γ-グルタミルシステイン合成酵素によって触媒される。このペプチド結合の形成にはγ-カルボキシル基の活性化が必要であり、その活性化はATPによって提供される。結果として生じる分子は中間体であり、次いでシステインのアミノ基による攻撃を受ける。グルタチオン合成酵素によって触媒されるこの第2段階において、ATPはシステインのカルボキシル基を活性化して、グリシンのアミノ基と縮合できるようにする。したがって、グルタチオンは、律速段階の前駆体であるシステインに対する酵素の作用後に形成される分子である。グルタチオンは、還元型のチオール型(GSH)と、2つのトリペプチドがジスルフィド結合によって結合した酸化型(GSSG)とを循環する。
【0031】
これに関して、「グルタチオン前駆体」への言及は、グルタチオンを直接または間接的に導出することができる任意の分子への言及と理解されるべきである。本分子は天然型であっても非天然型であってもよい。グルタチオンを形成するための単一段階での分子の修飾は、前駆体から直接導出されるグルタチオンの一例である。さらに修飾を受けてグルタチオンを形成する「中間体」分子を形成するための分子の修飾は、本前駆体から間接的に導出されるグルタチオンの一例である。
【0032】
システインは、グルタチオンを間接的に導出する天然型前駆体である。したがって、システインおよびシステイン前駆体は本発明によるグルタチオン前駆体である。具体的には、システインが触媒されてγ-グルタミルシステインを形成した後、この分子が触媒されてグリシンを取り込み、それによってグルタチオンを形成する。
【0033】
グルタチオン前駆体には、非天然型であり、かつインビボで中間体分子を生成し、次いでグルタチオンの生合成に用いられる分子も含まれ、このような分子には、これらに限定されないが、N-アセチルシステインおよびN-アセチルシステインアミドなどのシステイン誘導体が含まれる。
【0034】
好ましい態様において、グルタチオンレベルを増加させる化合物はグルタチオン前駆体である。
【0035】
さらにより好ましい態様において、グルタチオンレベルを増加させる化合物は、式(I)の化合物、および薬学的に許容されるその塩である:

式中、R1は-C(O)C1-4アルキルおよび-C(O)(CH2)2CH[C(O)R5]NHR6より選択され、
R2は-OR7、-NH2、および-NHCH2C(O)R8より選択され、
R3およびR4はHおよび-C1-4アルキルより独立して選択され、
R5は-OH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択され、
R6はHまたはC(O)C1-4アルキルより選択され、
R7はHおよびC1-4アルキルより選択され、かつ
R8はOH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択される。
【0036】
式(I)の好ましい態様では、以下のうちの少なくとも1つが適用される:
R1は-C(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2H)NHC(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2CH3)NHC(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2CH2CH3)NHC(O)CH3、または-C(O)(CH2)2CH(CONH2)NHC(O)CH3であり、特に-C(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2H)NHC(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2CH2CH3)NHC(O)CH3、または-C(O)(CH2)2CH(CONH2)NHC(O)CH3であり、さらに特には-C(O)CH3である;
R2は-OH、-OCH3、-OCH2CH3、-NH2、-NHCH2CO2H、-NHCH2CO2CH3、-NHCH2CO2CH2CH3、または-NHCH2CONH2であり、特に-OH、-OCH2CH3、-NH2、-NHCH-2CO2H、-NHCH2CO2CH2CH3、または-NHCH2CO2NH2であり、さらに特には-OHまたは-NH2である、
R3はHまたは-CH3であり、特にHである;および
R4はHまたは-CH3であり、特にHである。
【0037】
式(I)の好ましい化合物としては、
N-アセチルシステイン、
N-アセチルシステインアミド、
N-アセチルシステインエチルエステル、
N-アセチルβ,β-ジメチルシステインエーテルエステル(N-アセチルペニシラミンエチルエステル)、
N-アセチルβ,β-システイン(N-アセチルペニシラミン)、
グルタチオンエチルエステル、
N-アセチルグルタチオンエチルエステル、
N-アセチルグルタチオン、
N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシルエチルエステル(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオンエチルエステル)、
N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシン(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオン)、
γ-グルタミルシステインエチルエステル、
N-アセチルグルタチオンアミド、
N-アセチルβ,β-ジメチルシステインアミド、
N-アセチルβ-メチルシステインアミド、および
N-アセチルシステイングリシンアミド
が挙げられる。
【0038】
別の好ましい態様において、グルタチオンレベルを増加させる化合物は式(II) の化合物である:

式中、R9はOH、OC1-6アルキル、NH2(C1-6アルキル)、およびN(C1-6アルキル)2から選択される。式(II)の好ましい化合物はプロシステインである。
【0039】
本明細書で使用する「アルキル」という用語は、飽和した直鎖または分枝炭化水素鎖を指す。アルキル基は特定数の炭素原子を有してよく、例えば、C1-4アルキルは炭素原子を1、2、3、または4個有する直鎖または分枝炭化水素鎖である。アルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2-メチル-プロピル、およびtert-ブチルが含まれる。
【0040】
グルタチオンレベルを増加させる化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。しかしながら、薬学的に許容されない塩も、薬学的に許容される塩の調製における中間体として有用である場合があり、または貯蔵もしくは輸送中に有用である場合があるため、本発明の範囲内に入ると理解される。適切な薬学的に許容される塩には、これらに限定されないが、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、および臭化水素酸などの薬学的に許容される無機酸の塩、または酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸、および吉草酸などの薬学的に許容される有機酸の塩が含まれる。
【0041】
塩基性塩には、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、およびアルキルアンモニウムなどの薬学的に許容されるカチオンと共に形成されるものが含まれる。
【0042】
塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物などのハロゲン化低級アルキル、ジメチル硫酸およびジエチル硫酸のようなジアルキル硫酸等の薬剤で四級化され得る。
【0043】
本発明の化合物は不斉中心を有してよく、そのため2つ以上の立体異性体で存在し得ることも認識される。したがって本発明はまた、例えば、約95%もしくは97% eeまたは99% ee超など約90% ee超である、1つまたは複数の不斉中心で実質的に純粋な異性体である化合物、およびそのラセミ混合物を含む混合物に関する。このような異性体は、例えばキラル中間体を用いた不斉合成によって、またはキラル分割によって調製することができる。
【0044】
本発明の方法によって軽減または抑制できる抗精神病薬の副作用としては、薬剤誘発性パーキンソン症候群、急性ジストニア、頻拍、低血圧、インポテンス、嗜眠、アカシジア、発作、高プロラクチン血症、および遅発性ジスキネジアなどの錐体外路副作用(すなわち、様々な運動障害)が挙げられる。その他の副作用としては、糖尿病、肝毒性、白内障、ドライアイ、不快気分、および神経弛緩薬性悪性症候群が挙げられる。
【0045】
本明細書で使用する「組み合わせ」という用語は、単一組成物として同時に、または異なる組成物として別々にもしくは連続して、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物を中枢神経系に投与することを指す。2つの成分は、それらの少なくとも一部が同時に生物学的活性を有するように投与する。場合によっては、成分の一方は1日に単回用量が必要であるのに対し、もう一方は複数回用量が必要である場合がある。別の場合には、各成分は、それらが少なくとも部分的に同時に活性を有するように各成分の有効量を維持するために、1日に複数回用量を必要とする。
【0046】
本明細書で使用する「哺乳動物」という用語には、ヒト、霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、およびロバ)、実験用試験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、ペット(例えば、イヌ、ネコ)、および捕獲された野生動物(例えば、キツネ、カンガルー、シカ)が含まれる。好ましくは、哺乳動物はヒトまたは実験用試験動物である。さらにより好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0047】
「治療」への言及は、その最も広い文脈で考慮されるべきである。「治療」という用語は、必ずしも、対象を完全に回復するまで治療すること、または治療が完全な回復を提供することを意味するわけではない。したがって、治療には、特定の状態もしくは障害の症状もしくは症状発症の改善、または特定の状態もしくは症状の重症度もしくは持続の軽減が含まれる。治療には、併用療法における、成分の一方によって起こる副作用の軽減も含まれ得る。したがって、「治療」という用語は、予防的処置および治療的処置の両方を含むことが意図される。
【0048】
本発明の方法は、好ましくは、精神障害または神経精神障害の軽減、遅延、またはさもなくば抑制を促進する。「軽減、遅延、またはさもなくば抑制する」ことへの言及は、神経精神障害の任意の1つまたは複数の原因または症状の部分的または完全な抑制を誘導または促進することへの言及であると理解されるべきである。これに関し、精神障害または神経精神障害などの状態は、同時に生じることが多い数多くの生理学的事象を含み、極めて複雑であることが理解されるべきである。本発明は、障害の任意の1つもしくは複数の症状を緩和すること(例えば、1つまたは複数の精神病事象を緩和すること)、または障害の原因の遅延もしくは停止を促進すること(例えば、酸化的ストレスを軽減し、それによって任意のさらなる神経損傷を最小限に抑えること)の両方を意図することが理解されるべきである。本発明のいくつかの方法では、抗精神病薬の副作用を軽減、遅延、またはさもなくば抑制する。「軽減、遅延、またはさもなくば抑制する」ことへの言及は、抗精神病薬によって起こる1つまたは複数の副作用、特に運動障害の部分的または完全な抑制を誘導または促進することを含むことが理解されるべきである。
【0049】
抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物の投与は、任意の簡便な様式で同時に、別々に、または連続して行うことができる。「有効量」とは、少なくともある程度、所望の応答を達成するため、または治療する特定の状態の発症を遅延させる、または進行を抑制する、または1つもしくは複数の症状もしくは進行を完全に停止させるのに必要な各成分の量、あるいは抗精神病薬の1つもしくは複数の副作用の発症を遅延させる、その進行を抑制する、または副作用を完全に停止させるのに必要な各成分の量を意味する。その量は、治療すべき個体の健康状態および身体状態、治療すべき個体の分類群、所望の防御の程度、1つまたは複数の組成物の剤形、医学的状況の評価、およびその他の関連要因に応じて変化する。その量は、日常的試験により決定され得る比較的広い範囲内に入ると予想される。
【0050】
抗精神病薬の有効量は、グルタチオンレベルを増加させる化合物の非存在下で抗精神病薬を投与する場合に通常提供される量であってよい。例えば、クロザピンは典型的に、12.5〜900 mg、またはより一般的には100〜300 mgを1日に3回投与する。バルプロ酸は典型的に、1000〜2500 mg/日を3回の分割用量で投与する。リチウムは典型的に、0.5〜1 g/日を、1日に2回または3回などの分割用量で投与する。あるいは、抗精神病薬は、グルタチオンレベルを増加させる化合物の非存在下で抗精神病薬を投与する場合に通常提供される量よりも少ない量で投与してもよい。
【0051】
グルタチオンレベルを増加させる化合物の有効量は、最適な治療応答を提供するように調節することができる。例えば、10 mg〜150 mg/kg体重/日といった投与量である。有効量は、単回用量として、もしくは数回の分割用量として毎日、毎週、毎月、もしくはその他の適切な時間間隔で投与してもよいし、または状況の緊急性に応じて用量を比例的に低減してもよい。化合物は、経口、静脈内(水溶性の場合)、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、もしくは座剤経路、または埋め込み(例えば、分子の徐放を使用)によるなど、簡便な様式で投与することができる。好ましくは、化合物は経口投与し、0.1〜10グラム/日の投与量である。より好ましくは、投与量は1〜5グラム/日であり、特に約2グラム/日である。
【0052】
2つの化合物は単一の組成物として投与してもよいし、または別々の組成物として投与してもよい。単一の組成物または別々の組成物として投与する場合、両成分の経口投与が好ましい。しかし、別々に投与する場合には、成分は同じまたは異なる経路により投与することができる。連続して投与する場合には、成分は任意の順序で投与することができる。
【0053】
1つの態様において、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物は、単一の組成物、例えばカプセル剤として提示することができる。例えば、本発明の単一の組成物は、中にクロザピンおよびNACを含有するカプセル剤を含み得る。このような組成物の例は、カプセル剤中のクロザピン150 mgおよびNAC 600 mgであってよい。クロザピン300 mg/NAC 700 mgの単回用量も可能であり得ると想定される。このような用量は、1日に3回投与することができる。
【0054】
別の態様では、リスペリドン0.25〜16 mg/日を、グルタチオンレベルを増加させる化合物と共に単一の組成物としてまたは別々の用量として投与することができる。典型的に、リスペリドン0.5〜8.0 mg/日を用いることができる。
【0055】
グルタチオンレベルを増加させる化合物は、プロドラッグの形態で投与することもできる。「プロドラッグ」という用語はその最も広い意味で用いられ、インビボで本発明の化合物に変換される誘導体を包含する。当業者はこのような誘導体を容易に想到すると考えられ、これには、フェノールおよびアルコールのN-α-アシルオキシアミド、N-(アシルオキシアルコキシカルボニル)アミン誘導体、およびα-アシルオキシアルキルエステルが含まれる。プロドラッグは、本発明の化合物の官能基の1つまたは複数に対する修飾を含み得る。
【0056】
「プロドラッグ」という用語は、脂質と本発明の化合物との組み合わせを包含する。脂質の存在は、細胞膜を介した細胞質または核への化合物の移行に役立ち得る。適切な脂質には、脂肪酸エステルの形成によって化合物に連結され得る脂肪酸が含まれる。好ましい脂肪酸には、これらに限定されないが、ラウリン酸、カプロン酸、パルミチン酸、およびミリスチン酸が含まれる。
【0057】
別の官能基に関して用いられる「インビボで変換され得る誘導体」という語句は、哺乳動物への投与に際して、既定の官能基に変換され得るすべての官能基または誘導体を含む。当業者は、日常的な酵素試験または動物試験を用いて、インビボである基が別の官能基に変換され得るかどうかを容易に判定することができる。
【0058】
併用療法で有用な抗精神病薬は商業的に入手することができ、または公知の合成法によって調製することができる。グルタチオンレベルを増加させる化合物も商業的に入手することができ、または公知の方法によって合成することができる。例えば、N-アセチルシステイン(NAC)は商業的に入手することができ[Aldrich 616-91-1]、またはN-アセチル化によりシステインから調製することができる。例えば、N-アセチル化は、カルボキシ基を任意に保護したシステインを塩基の存在下でアセチル無水物と反応させることによって行うことができる。式(I)のその他の化合物は、アセチル化、エステル化、およびアミド結合形成などの公知の手順によって調製することができる。反応は特定の部位を対象にすることができ、感受性のある基は、ペプチド合成で周知である保護基の使用により反応を妨げることができる。式(II)の化合物は、置換オキソチアゾリジンを調製するための公知の化学に基づいて調製することができる。N-アセチルシステインアミド、N-アセチルシステインエチルエステル、N-アセチルβ,β-ジメチルシステインエーテルエステル(N-アセチルペニシラミンエチルエステル)、N-アセチルβ,β-システイン(N-アセチルペニシラミン)、グルタチオンエチルエステル、N-アセチルグルタチオンエチルエステル、N-アセチルグルタチオン、N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシルエチルエステル(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオンエチルエステル)、N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシン(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオン)、N-アセチルグルタチオンアミド、N-アセチルβ,β-ジメチルシステインアミド、N-アセチルβ-メチルシステインアミド、およびN-アセチルシステイングリシンアミドを含む式(I)のいくつかの化合物の合成は、US 6,420,429に提供されている。
【0059】
併用療法における各成分は単独でまたは混合物として投与することができるが、各成分の投与は単一の薬学的組成物の形態が好ましく、または各成分を別々の薬学的組成物として投与することもできる。両成分を含むかまたは一成分を含むかにかかわらず、各薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体を含み得る。
【0060】
本発明の1つの局面では、任意に1つまたは複数の薬学的に許容される担体と共に、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物を含む薬学的組成物を提供する。
【0061】
担体は、組成物の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないという意味において「許容され」なければならない。
【0062】
薬学的製剤としては、経口、直腸、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、膣内、もしくは非経口(筋肉内、皮下、および静脈内を含む)投与に適したもの、または吸入もしくは吹送による投与に適した形態のものが挙げられる。したがって、本発明の各成分は、慣用的な佐剤、担体、賦形剤、または希釈剤と共に、単一または別々の薬学的組成物の形態およびその単位剤形にすることができ、このような形態では、いずれも経口用の、錠剤もしくは充填カプセル剤などの固体、または溶液、懸濁液、乳濁液、エリキシル剤、もしくはこれらを充填したカプセル剤などの液体として、直腸投与用の坐剤の形態で、または非経口(皮下を含む)用の滅菌注射液の形態で使用することができる。このような薬学的組成物およびその単位剤形は、付加的な活性化合物または活性成分と共にまたはそれらなしで、慣用的な成分を慣用的な割合で含んでよく、このような単位剤形は、使用すべき予定1日投与量範囲に相応する任意の適切な有効量の有効成分を含み得る。本発明の成分は、非常に多様な経口および非経口剤形で、特に経口剤形で投与することができる。以下の剤形が、有効成分として本発明の成分または本発明の成分の薬学的に許容される塩を含み得ることは、当業者に明らかであると考えられる。
【0063】
本発明の成分から薬学的組成物を共にまたは別々に調製するに当たり、薬学的に許容される担体は固体であっても液体であってもよい。固体形態の調製物としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、香味剤、可溶化剤、潤滑剤、懸濁化剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、または封入剤としても作用し得る1つまたは複数の物質であってよい。
【0064】
例えば、1つの態様において、固体調製物は少なくとも1つの他の抗酸化剤(すなわち、保存剤)を含んでよい。適切な抗酸化剤は当技術分野で公知であり、これにはアスコルビン酸またはメタ重亜硫酸が含まれる。これは、式(I)の化合物(例えば、NAC)またはその前駆体上の遊離スルフヒドリル基の酸化を防ぐために特に好ましい。そのような化合物の酸化を防ぐ別の方法は、製剤内の酸素の存在を最小限にするかまたは阻止するように製剤化することである。これは、例えば、気密封入または密封ゼラチンカプセル剤の使用を含み得る。
【0065】
散剤では、担体は、一緒のまたは別々の微粉状有効成分と混合物状態にある微粉状固体である。
【0066】
錠剤では、有効成分を共にまたは別々に、必要な結合能力を有する担体と適切な割合で混合して、所望の形状および大きさに圧縮成形する。
【0067】
散剤および錠剤は、好ましくは5または10〜約70パーセントの有効成分を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、澱粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオ脂等である。「調製物」という用語は、一緒のまたは別々の成分と、1つまたは複数のカプセル剤を提供する担体としての封入剤との製剤を含むことが意図され、カプセル剤内で有効成分は担体と共にまたは担体を含まずに担体によって囲まれ、そのようにして担体と関連している。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジ剤は、経口投与に適した固体形態として用いることができる。
【0068】
坐剤を調製するには、脂肪酸グリセリドまたはカカオ脂の混合物などの低融点ワックスを最初に融解し、撹拌によってその中に有効成分を均一に分散させる。次いで、融解した均一な混合物を簡便な大きさの型に流し込み、冷却し、それによって凝固させる。
【0069】
膣内投与に適した製剤は、一緒のまたは別々の有効成分に加えて、適切であることが当技術分野で公知である担体を含む腟坐薬、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤、またはスプレー剤として提示することができる。
【0070】
液体形態の調製物としては、溶液、懸濁液、および乳濁液、例えば水溶液または水-プロピレングリコール溶液が挙げられる。例えば、非経口注射溶液調製物を、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液として製剤化することができる。
【0071】
したがって、本発明による成分は、共にまたは別々に非経口投与(例えば注射、例えばボーラス注射または連続注入による)用に製剤化することができ、アンプル、充填済み注射器、少量注入の単位剤形で、または保存剤を添加した複数回用量の容器で提供することができる。組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳濁液のような形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤などの製剤化剤を含み得る。あるいは、有効成分は、使用前に適切な媒体、例えば発熱物質を含まない滅菌水によって構成するための、滅菌固体の無菌的単離によって、または溶液からの凍結乾燥によって得られた粉末形態であってもよい。
【0072】
経口使用に適した水溶液は、有効成分を共にまたは別々に水中に溶解し、必要に応じて適切な着色剤、香料、安定化剤、および増粘剤を添加することによって調製することができる。
【0073】
経口使用に適した水性懸濁液は、微粉状有効成分を共にまたは別々に、天然もしくは合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または他の周知の懸濁化剤などの粘稠性物質と共に水中に分散させることによって作製することができる。
【0074】
使用する直前に経口投与用の液体形態調製物に変換されるよう意図された個体形態調製物もまた含まれる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液、および乳濁液が挙げられる。これらの調製物は、一緒のまたは別々の有効成分に加えて、着色剤、香料、安定化剤、緩衝剤、人工および天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤等を含み得る。
【0075】
表皮に局所投与するには、成分を共にまたは別々に、軟膏剤、クリーム剤、もしくはローション剤として、または経皮パッチとして製剤化することができる。軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を添加して、水性または油性基剤を用いて製剤化することができる。ローション剤も水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、一般に、1つまたは複数の乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤をさらに含む。
【0076】
溶液または懸濁液は、例えば点滴器、ピペット、またはスプレーを使用する慣用的手段によって、鼻腔に直接投与される。製剤は、単回用量剤形または複数回用量剤形で提供することができる。点滴器またはピペットによる後者の場合、これは、適切な所定量の溶液または懸濁液を患者が投与することによって達成され得る。スプレーの場合には、これは、例えば計量噴霧スプレーポンプを用いて達成され得る。鼻腔送達および保持を改善するには、本発明による成分をシクロデキストリンで封入するか、または鼻粘膜における送達および保持を増強すると考えられる薬剤と共に製剤化することができる。
【0077】
気道への投与もまたエアロゾル製剤によって達成することができ、この製剤では、成分の1つまたは両方が、クロロフルオロカーボン(CFC)(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、またはジクロロテトラフルオロエタン)、二酸化炭素、または他の適切なガスなどの適切な噴霧剤と共に、加圧パック中に提供される。エアロゾル剤は、好都合にレシチンなどの界面活性剤も含んでよい。成分の用量は、定量弁を備えることによって調節することができる。
【0078】
あるいは、有効成分は共にまたは別々に乾燥粉末の形態で、例えば、ラクトース、澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロースのような澱粉誘導体、およびポリビニルピロリドン(PVP)などの適切な粉末基剤中の化合物の粉末混合物の形態で提供することができる。
【0079】
都合よく、粉末担体は鼻腔内でゲルを形成する。粉末組成物は、例えばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジ、または吸入器によりそれから粉末が投与され得るブリスターパック中の単位剤形として提供することができる。
【0080】
鼻腔内製剤をはじめとする、気道への投与を意図した製剤では、化合物は一般に、例えば1〜10ミクロンまたはそれ未満のオーダーの小さい粒径を有する。このような粒径は、当技術分野で公知の手段によって、例えば微粒子化によって得ることができる。
【0081】
必要に応じて、有効成分の徐放または持続放出をもたらすように適合化された製剤を使用してもよい。そのような製剤は当技術分野で公知であり、徐放または持続放出賦形剤も公知である。圧縮および腸溶コーティングの使用などの、徐放または持続放出を得るために用いられる他の技法もまた想定される。棒(rod)、カプセル、もしくは棒状物(bar)としての皮下埋め込み、または経皮パッチなど、徐放または持続放出に適している他の製剤もまた意図される。
【0082】
薬学的調製物は、好ましくは単位剤形である。このような剤形では、調製物は、有効成分の適量を共にまたは別々に含む単位用量に分割される。単位剤形は包装された調製物であってよく、包装物は、小包装された錠剤、カプセル剤、およびバイアルまたはアンプル中の粉末のような個別量の調製物を含む。また、単位剤形は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、もしくはロゼンジ剤自体であってもよいし、または包装された形態の適切な数のこれらのいずれかであってもよい。
【0083】
鼻腔内投与用の液体または粉末、経口投与用の錠剤またはカプセル剤、および静脈内投与用の液体が好ましい組成物である。
【0084】
本発明のいくつかの好ましい局面を説明する以下の実施例を参照して、本発明を説明する。しかしながら、本発明の以下の記載の特殊性は、本発明の先の記載の一般性に優先するものではないことが理解されるべきである。
【0085】
実施例1:統合失調症用のグルタチオン前駆体としてのN-アセチルシステイン
統合失調症では抗酸化防御が低下している、特に、主要な内因性酸化防御であるグルタチオンが低下しているという前臨床の証拠がある。N-アセチルシステイン(NAC)は、生物学的に利用可能なグルタチオン前駆体である。本実施例は、統合失調症の治療における、抗精神病薬と併用したNACの使用に関する無作為二重盲検多施設プラセボ対照試験である。全部で140名の個体を無作為に割り付けて、個体の通常投与量の抗精神病薬と共に、2分割用量での毎日2 gのNAC、またはプラセボを投与した。
【0086】
方法
試験デザイン
参加者を、二重盲検様式で無作為かつ継続的にNACまたはプラセボによる治療に割り当てた。伝統的なコイン投げ法を用いて、独立した個体により無作為化記録が作成された。治験担当医師および臨床医は、データ解析が完了するまで盲検のままであった。無作為化計画を作成する人は、参加者の適格性または結果測定に関する参加者との面接に関与しなかった。
【0087】
参加者は全員、治験の期間中、参加者の通常の抗精神病薬薬物治療を続けた。一次療法の用量はモニターした。参加者は、広告、症例臨床医による推薦、およびデータベーススクリーニングを通して採用した。参加者は全員、プロトコール遵守の一環として、書面によるインフォームド・コンセントを提出した。
【0088】
用量原理
NACはZambon、イタリアから購入した。精度はHPLCで判定して99.8%であった。活性化合物および不活性プラセボの封入は、DFC Thompson、オーストラリア、シドニーが行った。NACは独特の匂いを有する。盲検を維持するため、ボトルは薬局が密封、分配し、治験担当医師がそれらを見る機会がないように薬局に返却された。したがって、薬のカウントは薬局が行った。参加者との面接は個別に行われ、参加者には報告を比較する機会はなかった。
【0089】
無作為に割り付けた参加者全員に、全用量が1日2 gとなるようにNAC(500 mg)カプセル剤2個を1日に2回、または対応するプラセボカプセル剤を投与した。ヒトへの投薬は、有害作用なしに5 g/日まで可能である(Louwerse E.S. et al., 1995)。公表された臨床試験における有効範囲内の1日量(Adair J. C. et al., 2001、Van Schooten F.J. et al., 2002、およびBehr J, et al., 2002)を選択した。管理する上で服薬遵守が難しいことが知られている統合失調症の薬物治療では、1日1回の投薬が望ましい。しかし、血漿半減期がわずか2〜3時間であるため(Holdiness M.R., 1991、およびKelly G.S., 1998)、1日1回のNACの経口用量で定常状態血漿レベルを達成することはできない。1日2回(BID)の投与計画も定常状態血漿レベルを達成しないと予想されるが、BIDを超える用量間隔は、この集団において不履行のリスクが顕著に増加すると考えられた。
【0090】
対象および除外基準
対象とするには、患者は、統合失調症の精神障害の診断と統計マニュアル第4版(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, fourth edition;DSM-IV)(Association AP, 1994)の基準を満たし、かつPANSS合計スコアが≧55であるか、または陽性および/もしくは陰性項目の少なくとも2項目が>3であるか、またはCGI-Sが≧3であることが必要であった。患者は試験に同意する能力があることが必要とされ、年齢は18〜65歳であった。入院患者および外来患者のいずれにも資格があった。参加者は、現在抗精神病薬を服用している必要があり、女性でかつ出産可能年齢である場合には、有効な避妊法を使用している必要があった。除外基準には、腎臓、肝臓、甲状腺、または血液に異常な所見が認められる患者、喘息、アレルギー、または気管支痙攣、呼吸不全、および近年の胃腸潰瘍の任意の病歴をはじめとする全身的医学的障害が認められる患者、ならびにベースライン時に妊娠スクリーニング検査で陽性であった女性を含めた。気分安定薬(例えば、リチウム、バルプロ酸、およびカルバマゼピン)を服用中の参加者は除外し、GSH欠損を妨げることが知られている薬剤(NAC 500+ mg/日、セレン200+ ug/日、またはビタミンE 500+ IU/日)を現在服用している参加者も除外した。以前にNACもしくは調製物のいずれかの成分に対して有害反応を示した参加者、またはインフォームド・コンセントの要件もしくは治療プロトコールを遵守できない参加者も除外した。
【0091】
参加者の評価
参加者が連続7日間の治験薬物治療を終了するか、または有効な避妊法を終了するか、または妊娠した場合に、治験からの離脱が起こった。一次抗精神病薬がある薬物治療から別のものに変わった場合、参加者は試験から離脱する必要があった。同様に、気分安定薬が追加された場合にも参加者の離脱が必要であった。既存の薬物治療に対する用量変化は除外基準ではなく、これはモニターした。他の適応症の向精神薬(抗うつ薬を含む)で薬物治療中の参加者は、無作為化の前に少なくとも1カ月間その薬剤で治療している必要があった。参加者は全員、ベースライン時に書面によるインフォームド・コンセントを提出した。参加者が同意を撤回したか、または試験薬に関連した重篤な有害事象を発症した場合に、参加者は試験から離脱した。有害事象による中止は、参加者の要望、または治験担当医師の裁量によって行われた。本治験は、参加する各研究および倫理委員会(Barwon Health、Southwest Area Mental Health Service、Bendigo Health、Ballarat Health、いずれもオーストラリア、ビクトリア州、およびローザンヌ大学、スイス)により承認され、GCPガイドラインに準拠して行われた。
【0092】
スクリーニング、登録、および離脱理由の概要を表1に示す。
【0093】
(表1)Consort E-フローチャート‐統合失調症治験におけるN-アセチルシステイン

【0094】
一次および二次エンドポイント
参加者は、ベースライン時に、構造化臨床面接(MINI、DSM-IV)により評価した。一次結果基準には、精神病の評価尺度:陽性および陰性症状評価尺度(PANSS)、ならびに臨床全般印象(CGI)改善度(CGI-I)および重症度(CGI-S)尺度を使用した。二次基準には、機能の全体的評定尺度(GAF)、社会的・職業的機能評定尺度(SOFAS)を含めた。加えて、錐体外路有害作用を、異常不随意運動評価尺度(AIMS)、Simpson-Angus評価尺度(SAS)、およびBarnesアカシジア評価尺度(BAS)を用いて評価した。治療の耐用性は、44の身体項目のチェックリストに基づいた承認スコアによって評価した。評価は、試験前に信頼性を最適化するように訓練を受けた盲検の治験担当医師により実施した。これらの尺度評価は、最初の8週間(「急性期」治療)は2週間ごとに、または参加者が8週よりも前に離脱する場合には試験終了日に繰り返した。治療は、4週間ごとに評価を行いながら8週から全部で24週まで継続し、その時点でNACまたはプラセボを終了した。治験完了後は、中止後の追跡来院を4週間(±2週間)行い、治療中止後の参加者の状態の任意の変化を判定した。任意の4回またはそれ以上の来院時にCGI-Iスコアが≦3であった対象に対して、改善者解析を行った。このコホートでは血漿グルタチオンレベルをアッセイしなかったが、並行した試験により、この用量のNACによって血漿グルタチオンが有意に増加すると判断された。
【0095】
ベースライン時には、完全な身体検査および神経学的検査も実施した。有害事象は表にした。ベースライン時および8週の時点で日常的な臨床検査を行い、腎層、甲状腺、血液、および肝臓機能を評価した。血圧、脈拍、および体重は来院ごとにモニターした。
【0096】
少なくとも1回のベースライン後評価が得られた無作為化参加者は全員、解析に含めた。無作為化は来院1の時点で行った。エンドポイントは、治療期に所与の基準に関して患者で得られた最後のベースライン後値として定義した。完了した患者の場合、エンドポイントは来院9(24週)の所見に対応した。早期に中止した患者の場合、エンドポイントはその繰越最終所見(LOCF)に対応した。
【0097】
統計解析
解析は、クリーンでありかつロックされたデータベースに対してWindows用のSASバージョン8.2(SAS Institute、ノースカロライナ州、キャリー)を用いて、治療の割り当てを知らない外部コンサルタント統計学者が行った。解析はすべて、医薬品規制調和国際会議E9統計的原則(International Conference on Harmonisation: Guidance on Statistical Principles for Clinical Trials, 1997)に従って行った。一次解析は治療企図原則に従って行い、ベースラインから来院9(24週)までの平均治療群差を評価した。この解析では試験における全結果基準の長期的プロファイルを調べたが、これは尤度に基づく混合効果モデル反復測定アプローチ(MMRM)である。MMRMモデルには、治療、治験担当医師、来院、および治療-来院相互作用の固定カテゴリー効果、ならびにベースラインスコアおよびベースラインスコア-来院相互作用の連続固定共変量を含めた。MMRMは、各時点の利用可能な全データを含む(Mallinckrodt C. et al., 2004)。どの成分が臨床改善を含むのかを確認するため、改善者(任意の4回またはそれ以上の来院時にCGI-Iスコアが≦3である対象)のMMRM解析を全結果について実施した。
【0098】
共分散解析(ANCOVA)を用いて、ベースラインからエンドポイントまでの変化における治療手段間の差も比較した。この解析に関して、および早期に中止した患者に関しては、エンドポイントはその繰越最終所見(LOCF)に対応した。ANCOVAモデルは、ベースラインスコアの固定連続共変量、ならびに治療、治験担当医師、および治療-治験担当医師相互作用のカテゴリー固定効果を含んだ。治療-治験担当医師相互作用は、0.10レベルで検定した。二次解析も一次解析と同様に、その他の全結果基準に対して行った。
【0099】
二分データの解析の結果は、必要に応じて95%信頼区間およびフィッシャーの正確なp値と共に比率として提示する。パラメトリック法に関する仮定が侵害される場合には、ノンパラメトリック統計を使用した。
【0100】
カプラン・マイヤー推定値およびログランク検定およびWilcoxon-Breslow-Gehan検定を用いて、全理由による中止までの期間を評価した。必要に応じてベースラインスコア、治験担当医師、治療、および治療-治験担当医師相互作用について調整した後、NAC群およびプラセボ群の結果基準におけるベースラインからエンドポイントスコアまでの最小二乗平均変化として効果量(Cohenのd)を算出した。
【0101】
必要に応じてベースラインスコア、治験担当医師、治療、および治療-治験担当医師相互作用について調整した後、治療群(NAC)および対照群(プラセボ)の結果基準におけるベースラインからエンドポイントスコアまでの最小二乗平均変化として効果量を算出した。次に、これら2つのスコア間の差を、標準偏差の合併推定値の平方根で割った。計算によれば、プラスの結果はNACがプラセボよりも有利であることを示し、逆にマイナスの結果はプラセボがNACよりも有利であることを示す。効果量が大きいほど、治療群間の分離が大きいことを示す。Cohenのガイドラインを適用すると(Cohen J., 1988)、0.2〜0.4という効果量は小さな効果とみなされ、0.5〜0.7は中程度の効果とみなされ、≧0.8は大きな効果とみなされる。例えば、治療抵抗性統合失調症の患者群において、定型抗精神病薬薬物治療から最適なクロザピン治療への切り換えは、特定の陽性および陰性症状の改善に関して中程度の効果量(0.5)を有した(Pickar D. and Bartko J., 2003)。0.5〜0.8という効果量に基づいて、患者40〜100名という標本が統合失調症における薬剤増加の試験に推奨される(Anil Yagcioglu A. et al., 2005、Stern R. et al., 1997、Taylor C. et al., 2001、およびHenderson D. and Goff D., 1996)。
【0102】
治療効果の試験はすべて、0.05の両側アルファレベルを用いて行い、95%信頼区間を提示した。本試験については、多重比較の調整を行わなかった。本報告における有意という用語は、統計的有意性(P≦0.05)を示す。
【0103】
参加者のベースライン特性の概要を表2に示す。
【0104】
(表2)参加者のベースライン特性

*特記しない限り、プラス-マイナス値は平均値±SDである。NAC群とプラセボ群の差は、a2標本t検定(等分散)、bフィッシャーの正確確率検定、またはcKruskall-Wallis解析に基づき、統計的に有意(p≦0.05)ではなかった。
^データは参加者67名から得た
§データは参加者64名から得た
#データは参加者131名から得た

データは参加者70名から得た
\データは参加者68名から得た
+データは参加者138名から得た
‡入院データは、1=入院1回、2=入院2回、3=入院3回、4=入院4回、5=入院5回、6=入院6〜10回、7=入院11回以上に基づいてスコア化した
【0105】
(表3)ベースライン時の一次および二次結果基準、ならびに8週および24週時の変化

略語:LS平均、最小二乗平均;CI、信頼区間。
a治療群間で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、および治験担当医師の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
b治療群内で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、および治験担当医師の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
cCGI-Iではベースラインスコアを測定しない。その後の測定値はすべて、ベースライン状態を参照したものである。平均値(CI)はその時点でのスコアを指す。
d治療群内および治療群間で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、治験担当医師、および治療-治験担当医師(相互作用)の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
集団:すべて無作為化患者
*0.05で有意な平均差
**0.001で有意な平均差
【0106】
(表4)24週時の一次および二次結果基準、ならびに治療中止後(休薬、28週)の変化

略語:LS平均、最小二乗平均;CI、信頼区間。
a治療群間で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、および治験担当医師の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
b治療群内で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、および治験担当医師の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
cCGI-Iではベースラインスコアを測定しない。その後の測定値はすべて、ベースライン状態を参照したものである。平均値(CI)はその時点でのスコアを指す。
d治療群内および治療群間で、LS平均、CI、およびp値は、ベースラインスコア、治療、治験担当医師、および治療-治験担当医師(相互作用)の項目を用いたLOCF ANCOVAモデルによる。
24週時には有意な改善が認められたが、治療中止後(休薬、28週)には明白でなかったもの。
集団:すべて無作為化患者
*0.05で有意な平均差
**0.001で有意な平均差
【0107】
結果
試験集団
治験への参加のため、全部で665名の人をスクリーニングした。これらのうち525名が登録されず、140名が登録され、そのうち71名が無作為にプラセボ群に割り付けられ、69名が無作為に治療(NAC)群に割り付けられた。全部で111名の参加者が急性期(8週まで)を完了し、84名が治験の維持期(24週)を完了し、61名が中止後来院を完了した。この標本における未完了の最も多い理由は、参加者による同意の撤回であった。表1に配置フローチャートを示す。
【0108】
ベースライン測定のいずれについても、2群間に有意差は認められなかった(表2)。標本の平均年齢は36.6歳であり、女性は42名で男性は98名であった。平均疾患期間は12.2年であり、参加者の報告によると、疾患経過中の入院は平均して2.1回(中央値1回)であった。併存する精神医学的診断は両群で全体的に同様であったが、プラセボ群では社会恐怖症(N=22)および薬物乱用(N=13)を認める個体数がNAC群(それぞれN=11、N=4)と比較して有意に多かった。MINIでの任意の自殺念慮は、回答者の54%によって支持された。回答した参加者(N=138)のうち、プラセボ群では参加者4名およびNAC群では5名が自殺未遂歴のあったことを示した。統合失調症、うつ病、不安症、および双極性障害の陽性家族歴はそれぞれ17%、31%、8%、および7%に見られたが、治療群の差は認められなかった。
【0109】
クロザピン(参加者の45%)およびオランザピン(参加者の20%)が、最も多く使用された2種類の一次抗精神病薬であった。この点で、治療群間に有意差は認められなかった。その他の非定形抗精神病薬(リスペリドン、クエチアピン、およびアリピプラゾール)および定型デポー抗精神病薬が残りを占めた。プラセボ群[598.2 mg(SE 56.1)]およびNAC群[716.4 mg(SE 57.0)]におけるクロルプロマジン等価物の平均用量に有意差はなかった。来院1(ベースライン)と来院9(24週)の間で、NAC群ではクロルプロマジン等価物20.6 mgおよびプラセボ群では73.1 mgの有意でない平均用量増加があった。同様に、抗うつ薬、ベンゾジアゼピン、抗精神病薬(一次抗精神病薬以外)、および「その他」に分けられる他の薬物治療もベースライン時に記録した。このパラメータにおいて、標本には群間の有意差はなかった。治療アドヒアランスデータは、薬物治療パックの返却を監査することにより判断したが、24週の治療期にわたり、プラセボ群およびNAC群でそれぞれ5.9%および2.2%という有意でない不一致が認められた。
【0110】
カプラン・マイヤー生存分析から、患者主導の理由(同意撤回、追跡不明、非アドヒアランス、不履行、または信頼性なし)、または臨床医主導の理由(有害事象、気分安定薬の追加、一次抗精神病薬の変更または中止、治験担当医師による離脱)の全理由に関する28週の治験期間にわたる離脱率は、NAC群とプラセボ群間で変わらないことが示された(全比較でp>0.1)。
【0111】
一次結果基準
平均したCGI-Sスコアは、NAC治療群ではプラセボ群と比較して、すべての来院にわたって有意に減少していた(平均差[95% CI]:-0.26[-0.08、-0.44]、p=0.004;表3、図1)。同様にCGI-Iスコアに関しても、NAC治療対象は、全来院にわたってプラセボ治療対照よりも大きな臨床改善を示した(平均差[95% CI]:-0.22[-0.03、-0.41]、p=0.025;表3、図2)。
【0112】
臨床的有益性の発現はCGI尺度において迅速であり、治療開始の2週間(CGI-S、図1)および4週間(CGI-I、図2)内に、NAC治療群ではプラセボ群と比較してスコアが有意により良好であった(CGI-Sに関してはMMRM解析を使用し、CGI-1に関してはフィッシャーのカテゴリー解析を使用)。2つの間隔:急性治療期の終了(8週)時および維持治療期の終了(24週)時でのみ、CGI-SスコアのLOCF解析を実施した。これにより、NAC治療が、いずれの間隔においてもプラセボと比較して改善を誘導したことが確認された(8週、p=0.027;24週、p=0.022;表3)。
【0113】
プラセボ群も4〜8週の間に改善し、そのためCGI-Iではその間隔で、およびCGI-Sでは8週時に群間の差の有意性が失われたが、CGI-Sでは4週、6週、12週、16週、および24週時に改善は有意であって、全体としてはプラセボと比較してNAC治療の有益性は治療間隔(24週)にわたって持続した(図2)。12週、16週、および24週時には、プラセボと比較して有意により多くのNAC治療群の対象(約25%)が、CGI-Iにおいて改善を示した(図1)。本発明者らはまた、2つの所定間隔でCGI-Sスコアに関してANCOVAを実施した。表3は、8週(抗精神病薬治験の慣例的治療間隔)の終了および治療の終了(24週)からの例証データを示す。NAC治療対象は、プラセボと比較して両間隔において改善した(8週、LS平均差0.24、p=0.027;24週、LS平均差0.32、p=0.022;表3)。平均CGI-SスコアにおけるNAC群とプラセボ群との間の臨床改善差の大きさを明らかにするため、本発明者らはCGI-Sスコアのベースラインからのシフトも解析した。MMRM解析から、プラセボ群とNAC群との間の最大差は治療の16週時であることが明らかになった(図1)。その来院時には、残っているプラセボ対象44名のうち9名が、ベースラインスコアから1またはそれ以上のCGI-Sポイント(範囲1〜2)分改善していた。比較すると、NAC治療では、残っている対象44名のうち21名が、ベースラインから1〜3ポイントの範囲で改善していた(p=0.007)。したがって、NAC群とプラセボ群との間のCGI-Sスコアの差は平均として表した場合には小さいが、臨床医の認めた改善を示した患者の数は、NAC群ではプラセボ群よりも2倍超多かった。
【0114】
CGI-Iによって検出される臨床改善の質を特徴づけるため、全結果について改善者のMMRM解析を実施した。CGI-Iにおける改善は、PANSS陽性、陰性、総合、および合計下位尺度、ならびにCGI-S、GAF、およびSOFASにおける改善を有意に伴うが、SAS、BAS、およびAIMSにおける改善を伴わないことが判明した。したがって、CGI-Iで認められた治療効果は、おそらくは統合失調症症状の改善を反映するものであって、単に全般的健康のみを反映するものではない。
【0115】
ANCOVAを用いてベースラインと比較した場合の24週時のPANSS陰性(LS平均差1.8、p=0.018)、PANSS総合(LS平均差2.8、p=0.035)、およびPANSS合計(LS平均差6.0、p=0.009)スコアでは、プラセボ群と比較してNAC治療群において有意により大きな改善が認められた(表3)。しかし、ベースラインから8週までの変化を比較した場合には、PANSS基準に差は認められず(表3)、臨床的有益性はNACへの曝露の持続期間に依存することが示唆された。本発明者らはPANSS尺度のMMRM解析も実施したが、全来院にわたってNACとプラセボとの間に有意差は検出されなかった。しかし、PANSS尺度の個々の項目のMMRM解析から、全来院にわたるPANSS陰性項目3および6でのNACの有意な(p<0.05)有益性が明らかになるとともに(PANSS総合項目16ではp=0.0509)、特定の来院時のPANSS尺度のいくつかの項目:2週時のPANSS陽性項目6、4週時のPANSS総合項目16、8週時のPANSS陰性項目3、16週時のPANSS陰性項目3および7ならびにPANSS総合項目16、20週時のPANSS陽性項目7、PANSS陰性項目3および7、ならびにPANSS総合項目11、ならびに24週時のPANSS陽性項目2、PANSS陰性項目3、およびPANSS陰性項目6における有意な(p<0.05)改善も明らかになった。PANSS項目においてNAC治療がプラセボよりも有意に良好である機会は、治験が進行するにつれて頻度が明確に増加した(治療の最初の7回の来院で6例、および最後の2回の来院で7例)。対照的に、プラセボ治療は、8週時のPANSS総合項目12という1つの機会でのみNACよりも有意に良好であった(データは示さず)。この下位解析での注意は、第一種過誤率が誇張される可能性があるという点であるが、試験の探索的性質を考えると、PANSSで達成されたシグナルを徹底的に評価することが重要であると本発明者らは考える。
【0116】
GAF尺度またはSOFASで測定して、機能に群間の差は認められなかった(図4)。しかし、NAC治療群ではGAF尺度でのベースラインからエンドポイントまでの有意な群内改善が認められるが(+4.5ポイントの平均全体変化)、このような改善はプラセボ群では認められない(+1.9ポイントの平均全体変化、表3)ことがANCOVAから明らかになった。これはMMRM解析によっても確認され、NAC群の全来院にわたる平均改善は有意であったが(+3.1ポイント、p=0.0026)、プラセボ群のベースラインからの全体平均変化(+1.5ポイント)は有意ではなかった。
【0117】
事後解析により、結果のベースライン予測因子:治療(クロザピン対他の抗精神病薬)、性別、年齢、疾患期間、共存症、および入院回数に関して、NAC群とプラセボ群との間に差がないことが明らかとなった。
【0118】
CGI-S、PANSS陰性、PANSS総合、およびPANSS合計評価尺度において、NAC治療の24週間後の有益性の効果量(Cohenのd)を算出したところ、0.43〜0.57という中程度の改善が明らかになった(図4)。
【0119】
機能の全体的評定尺度(GAF)または社会的・職業的機能評定尺度(SOFAS)のスコアにおいて、NAC群とプラセボ群との間に差は認められなかった(図4)。
【0120】
中止後測定
治療期エンドポイント(24週)時のCGI-SにおけるNACの治療有益性は、休薬(28週、中止後来院)に際して失われた(平均差[95% CI]:-0.10 [-0.23、0.44]、p=0.54;表4、図1)。しかし、CGI-I尺度において、ベースラインを参照した場合に臨床的に改善した患者の割合は、NAC群では28週時に有意に高いままであった(図2)。同様に、PANSS陽性、PANSS総合、PANSS合計、およびBASのスコアで24週時に認められたNAC群の有意な改善も、治療中止後には明白でなかった(表4)。加えて、24週時のGAFスコアにおけるNAC群内の有意な改善も、中止後に失われた(表4)。
【0121】
異常運動への効果
SASおよびAIMSスコアでは、すべての来院にわたり、プラセボ群とNAC群との間に有意差は検出されなかった。ベースラインから24週LOCFエンドポイントまでの変化から、NAC群がプラセボ群と比較してBAS尺度でのアカシジアを治療時間の成果として改善し(図3)、治療群間の差は24週時に有意性に達した(p=0.022)ことが示された。BASにおいてNAC治療の24週間後の有益性の効果量(Cohenのd統計値)を算出したところ、0.44という低度〜中程度の改善が明らかになった(図4)。
【0122】
有害作用および安全性
全体として、生命徴候、体重、および臨床的生化学値を含むいずれの安全性パラメータにおいても、NACの有意な作用は認められなかった。有害事象は、44の身体項目のチェックリストを用いて、治験の間中、参加者の報告に基づいて記録した。NAC治療群で眼の炎症が有意に低かったことを除けば(p=0.034)、報告された事象は、プラセボ群と比較してNAC群において有意により多く起こるということはなかった。
【0123】
ベースラインについて共変させたところ、8週および24週時の群間の体重変化に有意差がないことが明らかになった。プラセボ群の8週時の平均体重増加は1.748 kg(SE 0.575)、n=46であり、NAC群では1.372 kg(SE 0.517)、n=43であった。プラセボの24週時の平均体重増加は1.159 kg(SE 0.874)、n=27であり、NAC群では0.394 kg(SE 0.932)、n=33であった。治験経過中に記録された重篤な有害事象は3例あり、それらはいずれも一次抗精神病薬に対する非アドヒアランスでの入院であり、すべてプラセボ群で起こった。
【0124】
考察
本試験の結果から、2 g/日の経口NACによる慢性統合失調症の補助的治療が、PANSSおよびCGI-Sスコアで測定される臨床重症度を軽減し、CGI-Iスコアで測定される総体症状の全体的基準を改善し(図2)、この場合の臨床的効果量は開始クロザピン治療(Pickar D. and Bartko J., 2003)に匹敵する(図4)ことが示される。いずれの治験群も標準的抗精神病薬で薬物治療したが、12週、16週、および24週時には、プラセボの参加者よりも約25%多くの、補助的NACを服用している参加者が、CGI-1における臨床改善を示した(図2)。PANSSでは、有意な治療-治験担当医師相互作用が認められた。これについて調節したところ、PANSS陰性、合計、および総合の結果は、有意にNAC群に有利であった。文献では、治験担当医師-治療相互作用を調節することが推奨されており、そのため、相互作用という項目をモデルに置いた。
【0125】
アカシジアに関してエンドポイント時にNACが有意に中程度に有益であることも、BASにおいて明らかであった(図3)。非定形抗精神病薬薬物治療、特にクロザピンが試験コホートにおける主要な維持薬物治療であることを考えると、AIMSおよびSASに対する効果の欠如は、これらの基準において基礎スコアが非常に低いことを反映しているのかもしれない。
【0126】
NAC群とプラセボ群との差の最大点では、プラセボ治療対象と比較して2倍超のNAC治療対象における(p=0.007)ベースラインからの臨床改善が、評価者によって検出された(CGI-Sを使用)。NAC治療効果の可能性をさらに支持するものとして、検出された有意な有益性のいくつかは、4週間の休薬後に消失した(図1、表2)。
【0127】
CGI尺度における改善が、より厳密なMMRM解析によって検出されたのに対し、PANSS陰性、合計、および総合尺度における改善は、離脱者に対する治療効果を十分に明らかにしないANCOVA LOCFを用いて認められた。しかし、生存分析から、NAC群とプラセボ群との間で、臨床医主導または患者主導の理由による離脱率に有意差がないことが判明した。加えて、試験からの離脱の大部分は観察されたデータによって説明することができ、患者3名のみが追跡不明であり、かつ中止率は群間で同様であるため、離脱者の臨床データは無作為に欠落し、したがってMMRM解析が有効である可能性が支持される。
【0128】
MMRM解析によって、CGI尺度における改善がPANSS下位尺度における有意な改善を伴うことも判明し、観察された臨床改善が精神病疾患の回復によって駆動されるらしいことが示唆される。同様に、後の来院で有意な改善がより頻繁になったことが、8つのPANSS下位項目のMMRMによって同定された。
【0129】
まとめると、これらの知見から、NAC治療が統合失調症症状を改善することが示される。この種の最初の無作為化臨床試験として、本試験は、一次結果に関して検定し得ることなく臨床パラメータを探索したが、それにもかかわらず、いくつかの結果において、実際の臨床的有益性を示唆する有意な改善を明らかにした。PANSS結果はANCOVAでは有意性に達したものの、より厳密なMMRM解析では有意性に達せず、これは検定力不足による可能性がある。
【0130】
アカシジアに関してエンドポイント時にNACが有意に中程度に有益であることも、BASにおいて明らかであった(図3)。非定形抗精神病薬が主要な維持薬物治療であるため、AIMSおよびSASに対する効果の欠如は、これらの基準において基礎スコアが低いことを反映しているのかもしれない。これらの結果から、錐体外路症状(EPS)の神経保護治療としてのNACのさらなる検討が支持される。
【0131】
実施例2:双極性障害におけるN-アセチルシステイン:二重盲検無作為化プラセボ対照試験
双極性障害における酸化的ストレスの証拠が存在する。グルタチオンは重要な内因性フリーラジカルスカベンジャーであり、N-アセチルシステイン(NAC)は耐用性良好で経口投与可能なグルタチオン前駆体である。
【0132】
方法
試験デザイン
同意した個体を、単純な無作為化により(Beller et al., 2002)、二重盲検様式で、通常の治療に加えたNACまたはプラセボによる治療に割り当てた。一次療法の性質および用量をモニターした。無作為化計画を作成する人は、参加者との面接のいずれの局面にも関与しなかった。治験担当医師、臨床医、および統計学者は、データ解析が完了するまで治療割り当てを知らなかった。本試験は、オーストラリア臨床試験登録システムに登録された(プロトコール#12605000362695)。参加者は、広告、参加者の個人的な精神科医、およびデータベーススクリーニングを通して採用した。参加者は全員、書面によるインフォームド・コンセントを提出した。治験設定は、参加施設の公立および私立外来精神科診療所でなされた。本治験は、参加する各研究および倫理委員会(Barwon Health、Southwest Area Mental Health Service、Bendigo Health、いずれもオーストラリア、ビクトリア州)により承認され、優良臨床試験ガイドラインに準拠して行われた。
【0133】
本発明者らの知る限りでは、これは双極性障害に関するNACの初めての臨床試験である。したがって、一次情報に関する本発明者らの探索的試験を促進するデータはこれまで存在しなかった。本試験は、向精神薬の治験において0.5〜0.8という中程度の効果量を検出するためのものであった(Cohen, 1988)。
【0134】
NACはZambon、イタリアから購入した。精度はHPLCで判定して99.8%であった。NACおよびプラセボカプセル剤の封入は、DFC Thompson、オーストラリア、シドニーが行った。ボトルは薬局が密封、分配し、治験担当医師がボトルの内容物を見ることがないように薬局に返却された。参加者との面接は個別に行われ、参加者には経験を比較する機会はなかった。アドヒアランスに関する薬のカウントは薬局が行い、カプセル剤の監査は独立した人が確認した。
【0135】
用量原理
無作為に割り付けた参加者全員に、NAC(500 mg)カプセル剤2個を1日に2回(1日2 g)、または対応するプラセボを投与した。12週間〜12カ月間継続する経口NACの公表された臨床試験における上限投与量範囲であり、かつ耐用性およびいくらかの有効性の証拠が報告されている1日量を選択した(Adair et al., 2001;Van Schooten et al., 2002;Behr et al., 2002;Demedts et al., 2005)。
【0136】
対象および除外基準
個体は、先の6カ月間に実証される疾患エピソード(うつ、躁、または混合)を少なくとも1つ伴って、双極性障害(I型またはII型)のDSM-IV基準を満たす必要があり、かつ無作為化の前に少なくとも1カ月間、安定した治療を受けている必要があった。参加者は、試験に同意し、試験手順に遵守し、かつ必要である場合には有効な避妊法を使用することが必要とされた。
【0137】
除外基準には、喘息、気管支痙攣、または呼吸不全、近年の胃腸潰瘍をはじめとする臨床的に関連する全身的医学的障害が分かっているかまたはその疑いがある個体、および妊娠中または授乳中の個体を含めた。NAC 500 mg/日、セレン200μg/日、またはビタミンE 500 IU/日よりも多く服用している個体も除外し、NACまたは調製物のいずれかの成分によるアナフィラキシー歴のある個体も除外した。インフォームド・コンセントの要件または治療プロトコールを遵守できないことも除外基準とした。
【0138】
参加者が連続7日間の治験薬物治療を終了するか、有効な避妊法を終了するか、または妊娠した場合に、治験からの離脱が起こった。既存の薬物治療に対する用量変化、または薬剤の追加もしくは除去は許容し、参加者は試験を継続することができた。参加者が同意を撤回したか、または試験薬に関連した重篤な有害事象を発症した場合に、参加者は試験から離脱し、離脱は患者の要望または治験担当医師の裁量によって起こり得た。
【0139】
参加者の評価
参加者は、ベースライン時に構造化臨床面接(MINI-plus)により評価し、身体検査も実施した。臨床状態は、MADRS、BDRS、YMRS、双極性障害に関するCGI-改善度および重症度尺度(CGI-I-BP、CGI-S-BP)、GAF、SOFAS、SLICE/LIFE、LIFE RIFT、およびQ-LES-Qを用いて評価した。
【0140】
これらの尺度評価は、最初の4週間は2週間ごとに、そして全部で24週間となるその後は4週間ごとに、または患者が最終予定来院よりも前に離脱した場合には試験終了日に繰り返した。治験エンドポイント(24週)または中途での中止のいずれかである治験完了後は、追跡来院を4週間(±2週間)行い、治療中止に際した臨床状態の任意の変化を判定した。
【0141】
気分症状に関する任意の介入までの期間もさらなる結果基準とした。これは、いずれも臨床医による新たな気分エピソードの評価に応じた、新たな薬物治療の開始、緊急医療連絡、心理療法、入院、もしくは電気痙攣療法(ECT)の開始、または使用中の薬剤の中止もしくは用量調整と定義した。アドヒアランスは、返却された臨床試験材料の薬のカウントを用いてモニターした。有害事象は表にした。重篤な有害事象はすべての研究および倫理委員会、ならびにまたオーストラリア保健省薬品・医薬品行政局に報告した。
【0142】
無作為化は来院1の時点で行った。治験エンドポイントは、治療期に所与の基準に関して参加者で得られた最後のベースライン後値として定義した。プロトコールを完了した参加者の場合、これは来院8(24週)の評価に対応した。少なくとも1回のベースライン後評価が得られた無作為化参加者は全員、解析に含めた。
【0143】
統計解析
解析は、クリーンでありかつロックされたデータベースに対してWindows用のSASバージョン8.2(SAS Institute、ノースカロライナ州、キャリー)を用いて、治療の割り当てを知らない外部コンサルタント統計学者が行った。解析はすべて、医薬品規制調和国際会議E9統計的原則(International Conference on harmonisation: guidelines on statistical principles for clinical trials (ICH-E9) 1997)に従って行い、少なくとも1回のベースライン後所見が得られた無作為化患者全員(治療企図集団)に基づく。
【0144】
有効性解析では、全試験期間にわたって測定された結果のそれぞれの平均治療群差を評価し、これには尤度に基づく混合効果モデル反復測定アプローチ(MMRM)を使用した。MMRMモデルには、治療、治験担当医師、来院、および治療-来院相互作用の固定カテゴリー効果、ならびにベースラインスコアおよびベースラインスコア-来院相互作用の連続固定共変量を含めた。MMRMは、各時点の利用可能な全データを含む(Mallinckrodt et al., 2004)。加えて、カプラン・マイヤー推定値およびログランク検定を用いて、気分エピソードまでの期間を評価した。
【0145】
二分データの解析の結果は、必要に応じて95%信頼区間およびフィッシャーの正確なp値と共に比率として提示する。
【0146】
MMRMを用いて、エンドポイント時の効果量を算出した。Cohenのガイドラインを適用すると(Cohen, 1988)、0.2〜0.4という効果量は小さな効果とみなされ、0.5〜0.7は中程度の効果とみなされ、≧0.8は大きな効果とみなされる。他のすべての二次基準(生活の質および機能)について、上記の解析を記載の通り使用した。
【0147】
治療効果の試験はすべて、0.05の両側アルファレベルを用いて行い、95%信頼区間を提示した。本報告における有意という用語は、統計的有意性(P≦0.05)を示す。
【0148】
結果
試験集団
治験への参加のため、183名の人をスクリーニングした。これらのうち108名は資格がなく、75名は資格があり登録され、そのうち37名が無作為にプラセボ群に割り付けられ、38名が無作為に治療(NAC)群に割り付けられた。参加者48名が全24週の治験期間を完了し、58名(早期に終了した個体を含む)が中止後来院を完了した(表5)。本治験における未完了の最も多い理由は、参加者による同意の撤回であった。NAC群では参加者の31/38(81.58%)が双極I型障害と診断され、プラセボ群では参加者の30/37(81.08%)が双極I型障害と診断された。NAC群では参加者の7/38(18.42%)が双極II型障害と診断され、プラセボ群では参加者の7/37(18.92%)が双極II型障害と診断された。この点で、NAC群とプラセボ群との間に有意差はなかった。この2群は、ベースラインの人口統計基準および臨床基準においても一致した(表6)。標本の平均年齢は45.6歳であり、女性は45名で男性は30名であった。平均疾患期間は10.25年であり、参加者の報告によると、疾患経過中の入院は平均して2.35回(中央値1回)であった。群間に、併存する精神医学的診断の差は認められなかった。
【0149】
(表5)

【0150】
(表6)患者特性

*データは平均値および標準偏差として示す。
**中央値を示す。
本表中の項目のいずれについても、NAC群とプラセボ群を任意に比較する上で統計的有意差はなかった。
【0151】
有効性結果
治療完了(24週)時には、治験で使用した大部分の症状基準において、症状が有意に軽減されていた(表7)。これらには、MADRS(LS平均差[95% CI]:-8.05[-13.16、-2.95]、p=0.002)(表7;図5A)およびBRDS(LS平均差[95% CI]:-6.01[-10.96、-1.34]、p=0.012)(表7;図5B)が含まれた。MADRS結果は、20週の来院時にも有意であった(LS平均差[95% CI]:-5.57[-10.61、-0.53]、p=0.031)。CGI-S-BPによって測定される、プラセボを上回るNACの有意な利点が認められた(LS平均差[95% CI]:-0.71[-1.33、-0.09]、p=0.026)(図5C、表7)。CGIDのスコアでは、有意でない傾向が認められた(図5D)。躁のスコアでは、YMRSで明白な、NAC治療に有利な有意でない傾向が認められた(LS平均差[95% CI]:-1.56[-3.31、-0.18]、p=0.079)(表7;図5E)。しかし、ベースライン躁スコアは低かった(NAC平均ベースライン[95% CI]:4.08[2.72、5.44]、プラセボ平均ベースラインスコア[95% CI]:4.03[2.52、5.53])。
【0152】
(表7)ベースライン、24週時の結果基準、および治療中止後(休薬、28週)の変化

略語:LS平均、最小二乗平均;CI、信頼区間;LCL 下側信頼レベル;UCL 上側信頼レベル。
CGI-Iではベースラインスコアを測定しない。その後の測定値はすべて、ベースライン状態を参照したものである。平均値(CI)はその時点でのスコアを指す
*治療群間で、エンドポイント時のLS平均、CI、およびp値はMMRMによる
集団:すべて無作為化患者
【0153】
平均したMADRSスコアは、NAC治療群ではプラセボ群と比較して、すべての来院にわたって有意に減少していた(LS平均差[95% CI]:-3.08[-5.99、-0.17]、p=0.039)。ベースラインと比較した20週および24週時の、全MADRSスコアの50%減少と定義される応答は、プラセボ群では参加者の21%および18%であるのに対して、NAC群では参加者の46%および51%に認められた(それぞれp=0.036およびp=0.001)。
【0154】
生活の質および機能結果
これらの症状変化は、24週時のQ-LES-Q(LS平均差[95% CI]:7.37[2.09、12.65]、p=0.006;図5F)、ならびにエンドポイント時のRIFT(LS平均差[95% CI]:-2.95[-4.79、-1.12]、p=0.002;図5G)およびSLICE/LIFE(LS平均差[95% CI]:-3.97[-6.96、-0.98]、p=0.009;図5H)を含む生活の質の基準に反映された(表7)。8週、20週、および24週(LS平均差[95% CI]:6.45[0.64、12.26]、p=0.030;図5I)時のGAF、ならびに8週(LS平均差[95% CI]:6.41[1.18、11.63]、p=0.017)および24週(LS平均差[95% CI]:6.66[0.86、12.47]、p=0.025;図5J)時のSOFASに有意な改善が認められ、機能基準の変化においてもNAC治療群に同様の利点があった(表7)。
【0155】
カプラン・マイヤー分析から、気分エピソードまでの期間に関して2群間に有意差がないことが明らかになった(ログランク検定:p=0.968)。すべての評価尺度において、24週間後のNAC治療の有益性の効果量(Cohenのd)を算出したところ、中程度から大きな効果と一致する改善が示された(図6)。
【0156】
中止後測定
治験エンドポイントである24週時に認められたNACの治療有益性は、治験に含めた尺度のいずれにおいても、中止後来院時には明白でなかった。このことから、エンドポイント時にNAC群で認められた改善は、NACの中止によって逆戻りしたことが示唆される(図5)。
【0157】
有害作用
有害事象は、44の身体項目のチェックリストを用いて、治験の間中、参加者の報告に基づいて記録した。NAC群の15%超で報告された有害事象には、精力の変化(NAC 21%、プラセボ27%)、頭痛(NAC 18%、プラセボ8%)、胸焼け(NAC 16%、プラセボ8%)、および関節痛の増加(NAC 16%、プラセボ8%)が含まれた。報告された事象は、プラセボ群と比較してNAC群において有意により多く起こるということはなかった。治験中に重篤な有害事象(SAE)が7例報告された。いずれも入院であったが、オートバイ事故の犠牲者を除くすべてが精神状態の悪化によるものであった。報告された7例のSAEのうち、3例がNAC群で起こり、4例がプラセボ群で起こった。
【0158】
考察
本試験の結果から、2 g/日の経口NACで双極性障害を補助的に治療すると、うつ症状が顕著に軽減し、6カ月間にわたって機能および生活の質の基準が改善することが示唆される。躁症状への有意な効果は認められなかったが、NACの効果の傾向は認められた。これは、このコホートにおいて、躁のベースライン症状が非常に低かったことに関連していた可能性がある。記録された臨床的有益性が、治療期が終了する頃にのみ強く現れたことは注目に値する。ベースライン時に一定の極性条件がなかったため、症状基準の多くは差異が大きかった。本試験では、カプラン・マイヤー法で測定して、気分エピソードまでの残存期間に及ぼす全体的な効果は認められず、このことは、作用の発現が数カ月間の治療後にのみ明白になることと一致し得る。生存分析を用いる今後の試験では、そのような生存分析が意味をもつ前に観察された作用発現の時系列と適合する積極的治療の導入期間で充実させたデザインを採用することができる。質を高めることをしなかった自然的標本を用いて、大部分の結果基準で有意差が現れたことは、NACの治療有益性が強いことを示す。コホートの自然的な多施設外来患者に基づく性質により、本治験の一般化可能性が増す。
【0159】
事後解析では、リチウムまたは他の気分安定薬を服用している個体間に結果の差は認められなかったが、下位群の標本サイズは小さかった。他の薬剤によって起こり得る累積的有益性のさらなる探索が当然必要であり、単独療法の治験も必要である。双極性障害には高いレベルで共存症が認められる。これらの結果は、未同定の精神病理によって影響を受けていた可能性も考えられる。さらに、この適応症に対するNACの最適な投与計画を決定するために、用量設定試験が必要である。
【0160】
本発明者らが観察した治療有益性の正確な機構はまだ確認されていない。NACが脳のグルタチオンレベルを高め、双極性障害で撹乱されている酸化的不均衡を回復させると仮定される。しかし、磁気共鳴分光法で達成され得る(Do et al., 2000)、脳内グルタチオンレベルの直接測定を行わなかったため、脳グルタチオンの状態は不明である。
【0161】
長期的に、双極性障害の負担の大部分はうつ極にある。維持期におけるうつの管理は、臨床上の厄介な問題である。抗うつ薬をはじめとする現在利用可能な療法は(Sachs et al., 2007)、有効性が限られている(Belmaker, 2007)。うつ症状に対するNACの有益な効果は、本疾患のプロファイルを考えると特に重要である。
【0162】
NACは比較的安価であって店頭で入手でき、主要な精神疾患の無作為化対照試験2例で、6カ月間にわたる2 g/日の安全性および有益性を示し、臨床診療への展開を容易にする。本発明者らが観察した有益性は、酸化生物学における撹乱が双極性障害の一因となっているかもしれないこと、ならびにNAC補給によるグルタチオンの増大によって、特にうつの臨床症状が軽減し、また6カ月にわたるこの状態において機能および生活の質が改善することを示すものである。
【0163】
実施例3:ラットにおけるグルタチオンに及ぼすN-アセチルシステインアミド(NACA)の効果
材料および方法
動物
本試験では、9週齢、平均体重390 gの雄のSprague-Dawleyラットを使用した。動物は、水および食料を自由に摂取させながら、12時間の明暗サイクルで維持した。室温を22℃に維持して、ケージにつき2匹の動物を収容した。
【0164】
薬剤投与
特記する場合を除き、薬理作用のある薬剤はすべて、1 ml/kgの量で腹腔内注射(i.p.)により投与した。薬剤はすべて、希釈剤として生理食塩水を用いて調製した。75 mg/kgのシクロヘキセン-1-オン(CHX)を投与して、脳のGSH欠損を実施した。動物をケージに90分間戻してから、N-アセチルシステイン(NAC)またはN-アセチルシステインアミド(NACAまたは「AD4」)を投与した。NACAまたはNAC処置の1時間後に、断頭により動物を屠殺した。
【0165】
組織調製
前頭皮質、線条体、および肝臓試料を氷上で直ちに切除し、秤量し、SSA緩衝液(100 mMリン酸水素二ナトリウム、100 mMリン酸二水素ナトリウム、および1 mM EDTA、pH 7.5中の5%スルホサリチル酸、5 mL/g湿組織)中で超音波処理した。続いて試料を遠心分離し(22×103 g、10分、4℃)、ホモジネートを採取し、解析するまで-80℃で凍結しておいた。
【0166】
グルタチオン測定
全試料で、総グルタチオンレベル(μmol GSH/グラム組織)を測定した。試料はBaker et al. (1990)に従ってアッセイした。50μLのGSH 0〜320 pmolの還元型グルタチオン標準物質を、試料と同じバックグラウンド緩衝液(SSA緩衝液)で調製し、その後試料と並行して処理した。試料または標準物質50μlを、アッセイ試薬100μLと共に96ウェルマイクロタイタープレートに入れた(ウェル中の最終濃度;0.15 mM DTNB、0.2 mM NADPH、グルタチオン還元酵素1.0 U/mL)。Multiskan MCC/340 MK IIプレートリーダーおよびGenesis V3.05コンピュータソフトウェアを用いて、プレートを414 nmで計2分間アッセイした。化学物質はすべてSigma-Aldrichから購入した。分散解析(ANOVA)を用いて、データの統計的評価を行った。
【0167】
結果
CHX処置により、脳線条体内および肝臓内の総グルタチオンレベルの有意な低下が誘導された。これは、400 mg/kgのNACおよびNACAのいずれによってもレスキューされた。加えて、NACAは、肝臓グルタチオンレベルを対照ベースラインレベルを超えて有意に増加させた(図7および8)。
【0168】
参考文献




【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗精神病薬と、哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物との組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法。
【請求項2】
哺乳動物のグルタチオンレベルを増加させる化合物と併用して抗精神病薬を哺乳動物に投与する段階を含む、抗精神病薬の副作用を軽減する方法。
【請求項3】
抗精神病薬、および、式(I)の化合物および薬学的に許容されるその塩の組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法:

式中、R1は-C(O)C1-4アルキルおよび-C(O)(CH2)2CH[C(O)R5]NHR6より選択され、
R2は-OR7、-NH2、および-NHCH2C(O)R8より選択され、
R3およびR4はHおよび-C1-4アルキルより独立して選択され、
R5は-OH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択され、
R6はHまたはC(O)C1-4アルキルより選択され、
R7はHおよびC1-4アルキルより選択され、かつ
R8はOH、-OC1-4アルキル、およびNH2より選択される。
【請求項4】
R1が、-C(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2H)NHC(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2CH3)NHC(O)CH3、-C(O)(CH2)2CH(CO2CH2CH3)NHC(O)CH3、および-C(O)(CH2)2CH(CONH2)NHC(O)CH3から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
R2が、-OH、-OCH3、-OCH2CH3、-NH2、-NHCH2CO2H、-NHCH2CO2CH3、-NHCH2CO2CH2CH3、および-NHCH2CONH2から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項6】
R3がHまたは-CH3である、請求項3記載の方法。
【請求項7】
R4がHまたは-CH3である、請求項3記載の方法。
【請求項8】
式(I)の化合物が、
N-アセチルシステイン、
N-アセチルシステインアミド、
N-アセチルシステインエチルエステル、
N-アセチルβ,β-ジメチルシステインエーテルエステル(N-アセチルペニシラミンエチルエステル)、
N-アセチルβ,β-システイン(N-アセチルペニシラミン)、
グルタチオンエチルエステル、
N-アセチルグルタチオンエチルエステル、
N-アセチルグルタチオン、
N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシルエチルエステル(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオンエチルエステル)、
N-アセチルα-グルタミルエチルエステルシステイニルグリシン(N-アセチル(β-エチルエステル)グルタチオン)、
γ-グルタミルシステインエチルエステル、
N-アセチルグルタチオンアミド、
N-アセチルβ,β-ジメチルシステインアミド、
N-アセチルβ-メチルシステインアミド、および
N-アセチルシステイングリシンアミド
から選択される、請求項3記載の方法。
【請求項9】
式(I)の化合物が、N-アセチルシステインおよびN-アセチルシステインアミドから選択される、請求項3記載の方法。
【請求項10】
抗精神病薬と、グルタチオン前駆体、または薬学的に許容されるその塩との組み合わせを哺乳動物に投与する段階を含む、精神障害または神経精神障害を治療する方法。
【請求項11】
精神障害または神経精神障害が統合失調症である、請求項1、3、および10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
精神障害または神経精神障害が大うつ病である、請求項1、3、および10のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
精神障害または神経精神障害が双極性障害である、請求項1、3、および10のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
精神障害または神経精神障害が初回エピソード精神病である、請求項1、3、および10のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物を含む薬学的組成物。
【請求項16】
抗精神病薬およびグルタチオン前駆体を含む薬学的組成物。
【請求項17】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、グルタチオンレベルを増加させる化合物と併用して投与する抗精神病薬の使用。
【請求項18】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、抗精神病薬と併用して投与するグルタチオンレベルを増加させる化合物の使用。
【請求項19】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、抗精神病薬およびグルタチオンレベルを増加させる化合物の使用。
【請求項20】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、抗精神病薬と併用して投与するグルタチオン前駆体の使用。
【請求項21】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、グルタチオン前駆体と併用して投与する抗精神病薬の使用。
【請求項22】
精神障害または神経精神障害を治療するための医用薬剤の製造における、抗精神病薬およびグルタチオン前駆体の使用。
【請求項23】
精神障害または神経精神障害が統合失調症である、請求項17〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項24】
精神障害または神経精神障害が大うつ病である、請求項17〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項25】
精神障害または神経精神障害が双極性障害である、請求項17〜22のいずれか一項記載の使用。
【請求項26】
精神障害または神経精神障害が初回エピソード精神病である、請求項17〜22のいずれか一項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図5F】
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【図5G】
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【図5H】
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【図5I】
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【図5J】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−507572(P2010−507572A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−532650(P2009−532650)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/AU2007/001611
【国際公開番号】WO2008/049157
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(504121759)ザ メンタル ヘルス リサーチ インスティチュート オブ ビクトリア (2)
【Fターム(参考)】