説明

偏向した湿潤面を備えた流体取扱装置

異方性の湿潤面を備えた流体取扱装置であり、基板を含み、基板の上には非常に多くの非対称で実質的には均一形状の凹凸が備わっている。各凹凸には、基板に対して第1の凹凸立ち上がり角度と第2の凹凸立ち上がり角度とがある。凹凸群は、第1の凹凸立ち上がり角度と第2の凹凸立ち上がり角度との非対称により引き起こされる1より大きい又は1未満の所望の維持力比(f/f)を呈する構造を持ち、次の公式に従う。
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に流体取扱装置に関し、より具体的には流体取扱装置の濡れ面に関する。(関連出願)
本出願は、2005年9月16日提出の、米国特許出願第11/229,478号、米国特許出願第11/228,866号、米国特許出願第11/229,080号の利益を主張し、上記の出願全てがこれによって完全に参照により本願に組み込まれる。ただし、上記の各特許出願を仮出願に変更する申請書が提出されているが、この変更は、上記の出願に対する優先権の主張には影響がないよう意図されている。
【背景技術】
【0002】
多くの工業プロセスには、液体と固体表面との相互作用が伴う。多くの場合、特定の結果を達成するよう、相互作用の仕方、特に表面の濡れの程度を制御する又はこれに影響を与えることが望まれる。例えば、表面の濡れをより激しくすべく洗浄プロセスで用いる液体に界面活性剤を添加することがある。逆に、表面の濡れを減らして衣類製品の乾燥を早める為に、衣類に液体をはじくコーティング剤を添加することもある。
【0003】
表面の濡れに影響を及ぼす原理及び特性を分析し理解する努力が数十年間に亘りなされてきた。液体による濡れに耐性を示す表面である液体「忌避性(phobic)」の表面には特に関心が高まっている。このような表面は疎水性を指すことがあり、液体は具体的には水であり、一般に水や他のあらゆる液体に対し相対的に疎液性である。水又は他の液体の小滴が、表面に対して非常に高い静止接触角(約120度より大きい)を呈示する程に表面が濡れに抵抗する場合に、表面が呈示している液体の飛沫を保持する傾向が著しく低いと、又は、完全に液体に沈んでいる際に表面に液体‐気体‐固体の界面があると、この表面を一般に超疎水性又は超疎液性の表面と呼ぶことがある。この応用に関しては、超疎水性の表面と超疎液性の表面の両方を一般に指す為に、超忌避性という用語を用いる。
【0004】
排水性を有する表面は、商業的応用及び工業的応用においてさまざまな理由で特に興味深い。液体を表面で乾燥させる必要のあるプロセスのほとんど全てで、加熱も長い乾燥時間も要することなく表面が液体をはじけば、効率が非常に高くなる。多くの場合、応用には、流体が重力の影響の為にキャビティや低い場所などに保持されないように、乾燥に望ましい向きがある。
【0005】
なおまた、従来の表面とは対照的に超忌避性の表面では液体と表面との摩擦は劇的に小さくなる。この結果、無数の巨視的な水力学的応用及び流体力学的応用で、特にマイクロ流体の応用で、特定の方向の表面の摩擦を小さくし流れを増大させるには、偏向している湿潤面が極めて望ましい。特定のマイクロ流体の応用では、流体が一方向に反対方向より容易に導管を流れることが望ましい場合がある。他の状況では、流体が装置の特定の部分に保持される又は流体の流量を減らすことが望ましい場合がある。
【0006】
現在、表面粗さが表面の濡れの程度に重大な影響を及ぼすことは周知である。ある状況下では、粗さによる液体の表面への付着が、それに対応する平滑面に対する付着よりも強力になる可能性があることが一般に観察されてきた。しかし、別の状況では、粗さによる液体の粗い面への付着が平滑面への付着よりも弱いことがある。状況次第で、表面粗さによって、表面は偏向している濡れを実際に示す。
【0007】
これまでに、表面に意図的な粗さを採り入れて超忌避性の表面を生成することに努力がなされてきた。粗面は一般に、非常に多くのマイクロスケールからナノスケールの突出部
又はキャビティ、本明細書では「凹凸」と呼ぶものを備えた基板部材の形をとる。
【0008】
表面の濡れ特性が、特定の流体取扱製品と比べて重大な影響を持つことがある。例えば、燃料電池の流体管理及び湿潤作用が最近の研究のほとんどの主題であった。燃料電池の設計の懸案は、電池の中の水を管理することである。燃料電池は反応生成物として水を生成する。ある条件下で、水は電池内で非常に速く放出される。この水は、一般に電池の陰極側で生成され、溜まってしまうと、電池への燃料の流れを制限するか阻止する。このような条件は、当該分野では「カソードフラッディング」として既知である。加えて、電池と周囲環境との温度差が大きい場合があり、その結果、動作中に空気が電池に入ったり出たりする時に水蒸気の凝結が引き起こされかねない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般的に、バイポーラプレートの表面には排出チャネル群が設けられ、水を、チャネル群を通らせ収集区域へと方向づけて電池から排出するようになっている。加えて、バイポーラプレートは、多くの場合、相対的に表面エネルギーの低い材料から作られているので、水はバイポーラプレートから更に簡単にはける。しかし、どの対策も、燃料電池におけるカソードフラッディングの問題及び水の管理の問題の解消に全く成果をあげていない。中でも特に、燃料電池にPTFEなどの表面エネルギーの低い材料を用いている場合でも、水滴が、望んだようにはけず、電池の中のバイポーラのプレートや他の表面にくっつく恐れがある。当該産業で求められているものは、電池内の排水の改善を容易にする構成要素を備えた燃料電池である。
【0010】
もう1つの例については、マイクロ流体デバイスの設計における重要な要素は、デバイスの顕微鏡的なチャネルでの流体と表面との接触により課された流体運動に対する抵抗である。流体がある方向にもう一つの方向よりも容易に流れることができるよう、マイクロフイディックデバイス内の流体の流れを制御することが望ましいと思われる。概して、反応物質が1つ以上の流入口でミルコ流体デバイスに流れ込み、生成物が1つ以上の流出口から流れ出す。逆方向への流れによって、反応物質が汚染されたり他の問題が起きたりすることがある。当該産業で求められているものは、流体の流れに対し予測可能なレベルの異方性の抵抗又は偏向している抵抗を持つ流体フローチャネルを備えたマイクロ流体デバイスである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある実施形態では、本発明が含む流体取扱装置は、耐久性のある一般に疎液性又は超忌避性の表面を有しており、この表面は異方性の湿潤性を備えている。即ち、流体は、流体が流れる方向に依存して表面上の流れに対し変化する抵抗を実際に示す。異方性の湿潤面には一般に、非常に多くの突出した非対称の規則的な形状のマイクロスケール又はナノスケールの凹凸を備えた基板部がある。この応用に関しては、流体取扱装置には、パイプ、管類、継手、弁、流量計、タンク、ポンプ、燃料電池の濡れる構成要素、マイクロ流体デバイス及び構成要素に加え、流体を取り扱ったり、移送したり、収容したり、運搬したりする為に用いる他の装置又は構成要素を含む。流体取扱装置には、ピペット、ビュレット、フラスコ、ビーカー、管類、ノズル、継手に加え、研究所又は製造処理環境で流体を測定及び転送するのに用いられる他の装置が含まれる。
【0012】
凹凸を、基板材料そのものの中又は上に形成してもよいし、基板の表面に配置された材料の1層以上の層に形成してもよい。凹凸は、規則的な形状又は不規則形状の3次元固体又は3次元キャビティのどれでもよいし、凹凸を規則的な幾何学的パターンのどれに配置してもよいし、無作為に配置してもよい。
【0013】
本発明に係るマイクロスケールの凹凸を、既知の成形法及びスタンピング法を用い、プロセスで用いる型やスタンプの工具などをテクスチャ加工することにより形成してよい。プロセスには、射出成形、テクスチャ加工済みのカレンダーロールによる押し出し、圧縮成形工具、マイクロスケールの凹凸の形成に適している他の既知の工具又は方法などがある。
【0014】
スケールの小さい凹凸を、フォトリソグラフィを用いて形成してもよいし、ナノマシニング、マイクロスタンピング、マイクロコンタクトプリンティング、自己集合性金属コロイド単分子膜、原子間力顕微鏡ナノマシニング、ゾル‐ゲル成形、自己組織化単分子膜向けのパターニング、化学エッチング、ゾル‐ゲルスタンピング、コロイド状のインクによるプリンティングを用いて形成してもよいし、平行なカーボンナノチューブの層の基板への配置によって形成してもよい。
【0015】
非対称の凹凸を生成することによって、表面に対する流体の保持性を偏向させることができる。このアプローチを、平面のみならず、管や谷などの曲面にも適用できる。偏向している流体の保持を従来の湿潤面並びに超忌避性の表面に組み込むことができる。非対称のフィーチャはランダムに設計してもよいし周期的に設計してもよい。周期的な凹凸は2次元で変動することがあり、例えば、縞、畝、谷、溝などの構造を持つ。周期的な凹凸は3次元で変動することがあり、例えば、柱、角錐、円錐、穴などである。凹凸のサイズ、形状、間隔、角度を、所望の異方性の湿潤作用を達成するように作ることができる。
【0016】
一般に、異方性の湿潤性は、表面の飛沫や、管、谷、チャネル内のスラグで効果的である。異方性の湿潤性を有する表面を用いて、確実に小滴又は液体のスラグを表面から完全に排出させたり、交互に、注入又は排出のプロセスの終わりに滴る危険が小さくなるよう飛沫又はスラグを保持するのを確実に助けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本出願の目的の為、流体取扱装置には、パイプ、管類、継手、弁、流量計、タンク、ポンプ、燃料電池の濡れる構成要素、マイクロ流体デバイス及び構成要素に加え、流体を取り扱ったり、移送したり、収容したり、運搬したりする為に用いる他の装置又は構成要素が含まれる。流体取扱装置には、ピペット、ビュレット、フラスコ、ビーカー、管類、ノズル、継手に加え、研究所又は製造処理環境で流体を測定する又は転送するのに用いられる熱又は質量の交換器などの他の装置が含まれ、熱又は質量の交換器には、フィルタ、熱交換器、それらの構成要素などがあるが制限はない。用語「流体接触面(fluid contact surface)」は、流体と接触しうる流体取扱部品のあらゆる表面やその一部を広く指す。用語「流体取扱システム」は、流体に関し相互に接続された配列の流体取扱部品の全てを指す。
【0018】
本発明に係る流体取扱部品の種々の実施形態を図1〜図12に示す。図1及び図2では、1本の管20には、一般に本体22が含まれ、本体22は流体の移送の為のボア24を画成する。ボア24が一列に並ぶよう基板層26が配置されている。基板層26に異方性の湿潤流体接触面28が形成されており、ボア24を流れる流体に接触するように内側を向いている。基板層26を、本体22に、同時係属中の米国特許出願第10/304,459号に開示されているようなフィルムインサート成形により張りつけてもよい。この出願は、一般に本発明の所有者により所有されており、これによって本明細書に参照により完全に組み込まれる。図1及び図2の実施形態では基板層26は独立したものとして描写されているが、しごく当然のことながら、他の実施形態では、本体22は、本体22の内側向きの面に異方性の湿潤流体接触面28を直接形成した基板となる場合がある。更に、異方性の湿潤流体接触面が管20の全長に亘っていたり、流れの条件が臨界的な位置なら所望のどの位置にも選択的に位置付けられたりすることも分かるであろう。
【0019】
図3に、流体取扱部品の別の実施形態である、90度に湾曲した継手30の形の流体取扱部品を示し、継手30は2本のパイプ32を接続している。湾曲した継手30には一般に本体部34があり、本体部34は内表面36のすぐ上に異方性の湿潤流体接触面28を備えている。各パイプ32の内表面38も異方性の湿潤接触面28である場合がある。もちろん、しごく当然のことながら、異方性の湿潤流体接触面28を、あらゆる形状又はあらゆるサイズの、パイプ、管類、継手、チャネルに設けてよい。例えば、本明細書では図3に90度に湾曲した継手を示したが、他の継手、例えば、スイープエルボ、T字管、Y字管、更にはサニタリー継手、マニホールドなどにも、本発明に係る異方性の湿潤流体接触面を設けてよい。
【0020】
加えて、異方性の湿潤流体接触面28を、更に複雑な他の流体取扱部品、例えば図5に示した2位置弁40などにも設けてよい。2位置弁40には一般に弁本体42と弁棒44とがある。弁本体42には一般に、連続しているフローチャネル50に接続された入口46及び出口48がある。弁棒44には、ハンドル52と、ロッド54と、シール面56とがある。異方性の湿潤流体接触面28を、入口46や、出口48や、フローチャネル50や、これらのあらゆる所望の部分を含む2位置弁40の濡れ面全体に、排出を促進する向きで形成してよい。異方性の湿潤流体接触面28を弁棒44の濡れる部分に形成してもよい。
【0021】
図4に流体取扱部品の別の代替の実施形態を示す。図4では、3位置弁60には弁本体62があり、弁本体62には、入口64と、第1の出口66と、第2の出口68とがある。3位置弁60には更に、中心ボア72の中に弁棒70がある。第1の出口66及び第2の出口68は、かかりのついた端部73を有した構成になっており、この端部73は流体回路の残りの部分との相互接続を容易にする。ここでも、異方性の湿潤流体接触面28を、弁本体62及び弁棒70の濡れ面全体に亘って形成してもよいし、選択的にこれらの任意の部分に形成してもよい。
【0022】
異方性の湿潤流体接触面28をどんな構成の弁にも張りつけられることが明らかである。この構成には、入口及び出口と、オスコネクタやメスコネクタやねじ切り型のコネクタやサニタリー用コネクタなどのさまざまな弁の接続とが、幾つあってもよい。加えて、本発明に係る異方性の湿潤流体接触面を、ボール弁やゲート弁やダイアフラム弁などで用いる多種多様な弁棒に選択的に張りつけて、排出を容易にする、そうでない場合には流体運動を偏らせたり方向づけたりしてよい。
【0023】
図6及び図7に示すとおり、流体取扱部品は流量計アセンブリ74の形の場合がある。流量計アセンブリ74には一般に、入口76と、出口78と、サイトチューブ80と、浮き82とがある。図示の実施形態では、異方性の湿潤流体接触面28が流量計アセンブリ74の全ての濡れ面に形成されている。図7に示した代替の実施形態では、サイトチューブ80には内側基板層84があり、基板層84の内側表面86には異方性の湿潤流体接触面28が備わっている。当然のことながら、異方性の湿潤流体接触面28を、流量データを送信するセンサ群を持つ流量計などを含むどんなタイプの流体モニタリング装置に張りつけてもよい。このような実施形態では、異方性の湿潤流体接触面28を、パドルホイールや、タービンや、磁石や、産業界において通常用いられる他の流体検知装置などを利用して、センサ上に形成してよい。
【0024】
要するに、当然のことながら、異方性の湿潤流体接触面28を、このような特性が望まれる流体取扱部品のどれにでも張りつけられる。流体取扱部品の他の例には、ポンプやノズルや堰などの流体移動装置と、シリンダなどの水力学的な要素とがある。これもしごく当然のことながら、本発明の異方性の湿潤流体接触面28は、マイクロ流体取扱部品に張
りつけられるので、有利である。
【0025】
この応用に関しては、用語「マイクロ流体取扱部品」は、流体との接触、流体の取り扱い、移送、収容、処理、運搬等を行う為に用いられる他の装置又は構成要素を広く指し、ここで、流体は顕微鏡的次元の1つ以上の流体フローチャネルを流れる。この応用に関しては、「顕微鏡的」は、500μm以下の次元を意味する。
【0026】
図8には、本発明に係るマイクロ流体デバイス88を大幅に拡大した分解組立図が描写されている。デバイス88には一般に本体90があり、本体90の中に長方形のフローチャネル92が画成されている。本体90には一般に主要部94とカバー部96とがある。フローチャネル92は、主要部94の内側向きの各面98による3面とカバー部96の内側向きの面100による第4の面とで画成されている。各面98と面100とが一緒になって、図8及び図9に示すとおり、チャネル壁102を画成する。
【0027】
本発明に係る、チャネル壁102の全て又は任意の所望の部分に、異方性の湿潤流体接触面28を設けてよい。長方形のフローチャネルを備えた2つの部分から成る構成を図8に示したが、もちろんしごく当然のことながら、マイクロ流体デバイス88を、事実上フローチャネルの他の形状又は構成を備えた他の構成で形成してよく、例えば、円筒形や多角形や不規則形状などの形状のフローチャネルを内部に形成した一体化された本体などでよい。
【0028】
図10にマイクロ流体デバイス88の代替の実施形態の断面を描写する。この実施形態では、本体104が一体化されて形成されている。本体104内部に円筒形のフローチャネル106が画成され、円筒形のフローチャネル106には、フローチャネル106の内側を向いている異方性の湿潤流体接触面28を呈するチャネル壁108がある。
【0029】
やはり当然のことながら、本発明には燃料電池内の流体管理における特定の応用がある。この応用に関しては、用語「燃料電池」は、あらゆるタイプのあらゆる電気化学燃料電池デバイス又は装置を意味し、これには、固体高分子形燃料電池(PEMFC)、アルカリ形燃料電池(AFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)などが含まれるがこれに限定されるものではない。用語「燃料電池スタック装置」は、燃料電池の機能に関するあらゆる独立した構成要素に加え、少なくとも1つの燃料電池及びそのあらゆる構成要素を含む装置を指す。独立した構成要素には、エンクロージャ、絶縁体、マニホールド、配管、電気部品などが含まれるがこれに限定されるものではない。
【0030】
図11の略断面図に本発明に係る燃料電池スタック装置110の実施形態の一部を描写する。燃料電池スタック装置110には一般に複数の膜電極接合体112があり、膜電極接合体112は各バイポーラプレート114により分離されている。装置110を各エンドプレート116がそれぞれの端部で収容している。各膜電極接合体112には一般に、陽極の膜構造118と、陰極の膜構造120と、電解質122とがある。
【0031】
バイポーラプレート群114及びエンドプレート群116は一般的に、電気的に導電性の、金属又は炭素充填ポリマーなどの耐食性かつ耐熱性の材料から作られている。バイポーラプレート群114の各表面124とエンドプレート群116の内側向きの各面126とが、一般的に、燃料及び酸化剤を膜電極接合体112に運搬するチャネル群128を画成し、反応の生成物である水を排出させる。電池から熱を取り除く為に、バイポーラプレート群114及びエンドプレート群116の各熱伝達部130が表面積を付加する場合がある。
【0032】
本発明に従い、バイポーラプレート群114又はエンドプレート群116の外面の全て又は任意の所望の部分が異方性の湿潤面28である場合がある。図12に示すとおり、例えば、チャネル群128の排水を改善する為に、異方性の湿潤面28をチャネル群128の内側向きの面132に設けてよい。異方性の湿潤面28上では反応過程中に放出された水滴が所望の方向により流れやすくなるので、水は重力によってチャネル群128から排出される。
【0033】
図11に示すとおり、熱伝達部130や外面134などのバイポーラプレート群114又はエンドプレート群116の他の部分にも、これらの面に集まる又は凝結する水の排出を改善する為に異方性の湿潤面28を設けてよい。燃料電池スタックアセンブリの他の構成要素、例えば、燃料及び酸化剤のマニホールド及び配管(図示せず)、ベント(図示せず)、エンクロージャの表面(図示せず)などには、これらの構成要素上に、周囲環境と電池内の高温との間での湿ったガスの運動によって凝結する恐れのある水を排出する為に、異方性の湿潤面28を設けてよい。しごく当然のことながら、本発明に係る異方性の湿潤面28を、燃料電池スタック装置の排水特性を改善する為、燃料電池スタック装置のどの部品の所望の部分のどこにでも設けてよい。
【0034】
次に、異方性の湿潤流体接触面の構造の理解について考えると、例示を目的とした図13A〜図13Cの縦方向の断面図に円筒形の毛細管群136が描写されており、それぞれ、液体スラグ140を収容するフローチャネル138を画成している。図13Aは、相対的に滑らかな壁面142を持つ細管136のフローチャネル138を描写している。図13Bは、一般に対称ののこぎりの歯のフィーチャ144群を壁145に備えたフローチャネル138を描写しており、のこぎりの歯のフィーチャ144のサイズははっきりさせるべく大幅に誇張されている。図13Cは、非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群146を壁147に備えたフローチャネル138を描写しており、本発明の実施形態に係る異方性の湿潤面28が形成されており、非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群146のサイズもやはり、はっきりさせるべく大幅に誇張されている。
【0035】
図13Aの滑らかな管136では、スラグ140の運動に抵抗する左への保持力−fと、運動に抵抗する右への保持力fとが等しい。同様に、図13Bの対称のフィーチャ群144を備えた管でも、スラグ140の運動に抵抗する左への保持力−fと、運動に抵抗する右への保持力fとが等しい。しかし、図13Cに示した非対称のフィーチャ群146を備えた管については、流体の流れは一般に、フィーチャ群146により形成されたピークや谷を横切っており、スラグ140の運動に抵抗する左への保持力fが、運動に抵抗する右への保持力fよりかなり少ない。以下で更に詳しく論じるとおり、保持力のこの差異は、表面フィーチャのジオメトリにより決定される。本明細書に記載した所定の関係に従って非対称の表面フィーチャを配置することにより、保持力の差異によって異方性の湿潤流体接触面が生ずる。
【0036】
当然のことながら、図13A〜図13Cの各液体スラグ140は、外力の影響がない場合、慣性及び摩擦を克服する為に印加されるエネルギーがないので、各管136内で静止した状態を保つ傾向がある。図14の半径Rの毛細管136内に流体‐液体の界面である148及び150を示すが、外力Fがスラグ140に印加されたら、スラグ140は148及び150の両界面と共に歪み、印加された力の方向にそれる。この外力Fは、例えば、管の勾配や管の端部152に印加された流体圧力などから生じる場合がある。前縁接触線154及び後縁接触線156にある毛細管力が、スラグ140を留めておく傾向があり、印加された外力Fが臨界値即ちFを超えるまで、運動を抑制する。このしきい値に達してFが保持力fに等しくなったら、スラグ140の歪んだ界面である148及び150が、前縁接触線154で、前進接触角即ちθを呈示し、後縁接触線156で後退値即ちθを呈示する。外力Fが更に増大してF>fとなったら、スラグ140は外力
Fに促される方向に動き始める。
【0037】
保持力の大きさ即ちfは、半径Rの円筒形の毛細管内の初期移動に抵抗するものであり、流体‐液体間の界面張力即ちγと、前進接触角と、後退接触角とにより決定され、以下のとおりである。
【0038】
=kγR(cos θ−cos θ) (1)
ここで、k=2p …(2) である。
表面が清潔で滑らかであり欠陥がない場合、保持力を、固有の接触角、即ちθa,0及びθr,0に関して以下のように表すことができる。
【0039】
=kγR(cos θr,0−cos θa,0) (3)
表面粗さによって一般に保持力が平滑面の保持力よりも増大する。この増大は、接触角と表面の凹凸やフィーチャとの幾何学的な相互作用による接触角の変化から生じる。図15A及び図15Bに示すように、スラグ140の接触線と基板表面158上の表面の凹凸又は表面のフィーチャ146とが相互に作用しているものと考える。基板表面158からのフィーチャ146の立ち上がり角度をωと示す。図15(A)は、フィーチャ146の上を前進している接触線162を描写しており、見掛けの前進接触角はθである。液体がフィーチャ146の面164に呈示するのが、その真の前進接触角値、即ちθa,0である。基板表面158に対する見掛けの前進接触角θと真の前進角θa,0との差異は、フィーチャからの立ち上がり角度ωに依存する。フィーチャ146との相互作用によって、θは以下のように増大する。
【0040】
θ=θa, 0+ω (4)
図15(B)は、同一のフィーチャ146から退却する接触線166を描写しており、見掛けの後退接触角はθである。液体がフィーチャ146の面164に呈示するのが、その真の後退値、即ちθr,0である。前進の場合と対照的に、フィーチャとの相互作用によって、θは以下のように減少する。
【0041】
θ=θr, 0−ω (5)
例示の為に、毛細管136の内表面のフィーチャ群144、146が、図16A及び図16Bに示すのこぎり歯又は爪車のパターンの形をとり、これらの管の粗さが放射状に対称である(フィーチャ群が、断面形状のばらつきなく周囲全体に広がっている)、と仮定する。図16(A)に描かれているように立ち上がり角度ωの対称なフィーチャ群144については、保持力である−fとfとが等しく、濡れは等方性である。fを推定する数式は、式(1)と式(4)と式(5)との組み合わせから得られる。
【0042】
=kγR[cos (θr, 0−ω)−cos (θa, 0+ω)] (6)
毛細管136の内表面に図16(B)に示した非対称のフィーチャ群146がある場合、保持力の差の大きさΔf、即ちfとfとの差異は、ω及びωに関して以下のように表される。
【0043】
Δf=f−f=kγR[cos (θr, 0−ω)−cos (θa, 0+ω)−cos (θr, 0−ω)+cos (θa, 0+ω)] (7)
幾何学上の制限の為、θr,0−ω≧0°かつθa,0+ω≦180°でなくてはならない。多くの三角関数を適用して項を分離しこれらの数式を単純にできる。保持力fの一般の形態は以下のようになる。
【0044】
/kγR=2sin [1/2 (θr, 0+θa, 0)]sin (ω+1/2 Δθ0 ) (8)
この式を、固有ヒステリシスΔθに関して以下のように組み立てることができる。
Δθ=θa, 0−θr, 0 (9)
更に、立ち上がり角度ωは、清潔な平滑面でi=0の場合、ω=0であり、対称なのこぎりの歯のフィーチャ群を備えた表面でi=1の場合、ω>0であり、非対称のフィーチャ群を備えた表面でi=2又は3の場合、ω≠ωである。保持力の差Δfを、粗さが非対称である管を記述する式(7)から、以下のように書き換えることができる。
【0045】
Δf=f−f=2kγRsin [1/2 (θr, 0+θa, 0)]sin [(ω+1/2 Δθ0 )−(ω+1/2 Δθ0 )] (10)
式(8)を用いて保持力を比として表すことができる。例えば、対称なのこぎりの歯のフィーチャ群を備えた毛細管の保持力の、これに対応する対照的に平滑面を備えた管の保持力に対する比は、以下のようになる。
【0046】
/f=sin (ω+1/2 Δθ0 )/sin (1/2 Δθ0 ) (11)
別の例では、非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群を備えた管の中の保持力の比を、以下のように表すことができ、このとき保持力は互いに正反対を向いている。
【0047】
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ) (12)
当然のことながら、維持力比としても知られている、このf/fは、1を超える又は1未満であり、表面は異方性の湿潤作用を呈示し、異方性の湿潤面28を形成する。維持力比が1に近づくと濡れの異方性の程度が小さくなる。1のとき、濡れは等方性である。
【0048】
更に、異方性の湿潤流体接触面28には、多種多様な形状の非対称のフィーチャが含まれ、多種多様なパターンで配置されることも分かるであろう。例えば、図16Cに示すとおり、異方性の湿潤流体接触面28を連続したのこぎり歯の畝170により基板172上に形成することができる。別の例では、図16D及び図16Eに示すとおり、角錐台174又は円錐台176のアスパーティ(asperties)をある程度規則的なパターンで基板172上に配置することができる。凹凸は事実上、逆向きで互いに相違する立ち上がり角度を呈示する他の非対称の形状でもよい。この形状には、不規則形状の3次元固体又は3次元キャビティのほとんど全てが含まれる。
【0049】
以上の各例から、当業者には当然のことながら、どんなタイプの表面の保持力についても、他のタイプの表面と比べて関係を表すことができる。例えば、図17は、対称なのこぎりの歯のフィーチャ群を備えた毛細管の保持力の、これに対応する滑らかな管の保持力に対する比を、液体/固体の組み合わせについて、レベルの異なる固有ヒステリシスΔθで描写する。たとえ管の表面が滑らかで清潔でも、保持力は存在する。即ち、常に|f|>0である。ωが増大し管の表面が粗くなるにつれ、相対的な保持力は増大する。ωの値が小さくなると、f/fの増大は直線的になる。数学的に説明すると、ω+1/2Δθ<<1の場合、式(11)は以下のように低減する。
【0050】
/f≒2ω/Δθ+1 (13)
図17及び式(13)から当然のことながら、システムの固有ヒスターシス(hystersis)が大きいと、表面の粗さが保持力に及ぼす影響は小さい。例えば、図17を用いて、直径の等しい2本の毛細管、即ち、内表面の滑らかな毛細管と、のこぎりの歯のフィーチャ群を備えた毛細管とを、ω=10°で比較すると、液体及び構築の材料は固有ヒステリシスΔθ=10°を示す場合、保持力比は、Δθ=30°の場合(f/f=1.63)よりずっと大きくなる(f/f=2.97)。
【0051】
別の例では、図18が、非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群を備えた管の保持力比f/fをωに対し、種々の値のωについてグラフ化して描写している。システムの
固有ヒステリシスをΔθ=10°と仮定する。爪車のような構造を備えた管では、ω=45°、ω=90°、f/f=1.30である。ωとωとの差異が大きいと、2つの相対する方向への保持力の相違が大きくなる。つまり、ω=10°及びω=90°の場合、f/f=3.85である。浅い立ち上がり角度を用いて強度の偏向を作ることもできると予期される。ω=1°及びω=10°の場合、f/f=2.48である。代案として、ω=1°及びω=90°の場合、f/f>9である。
【0052】
更にもう一つの例では、図19が、非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群を備えた表面の保持力比f/f対立ち上がり角度ωの変動を、レベルの異なる固有ヒステリシスΔθについて描写している。この例では、ω=90°である。対称なフィーチャ群のように、保持力比はΔθの増大により小さくなる。例として、ω=10°及びω=90°の非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群を備えた毛細管では、固有ヒステリシスがΔθ=10°の場合、保持力比はf/f=3.85である。Δθが30°に増大した場合、f/fは2.29に下がる。
【0053】
上記の関係を実際に用いて、表面の保持力の絶対値を測ってもよい。例えば、内側表面が滑らかで半径がR=1mmのPTFEの水平管の中の水のスラグが、前進接触角θa,0=108°及び固有ヒステリシスΔθ=10°を呈示する。図13Aに示したフィーチャ群のない管の中では、スラグの移動を妨げる保持力がf=77μNになる。従って、水のスラグの初期移動はどの方向へ向かうにも外力>77μNを必要とする。界面張力の低い流体‐液体の組み合わせを使うと、保持力は小さくなる。
【0054】
図13Cに示すとおりPTFE管の内表面にω=10°及びω=90°の非対称ののこぎりの歯のフィーチャ群を導入することにより、Δf=672μNとなる。もちろん、どちらの方向にスラグを動かす外力も滑らかな管の値より大きくてf=228μN及びf=900μNであることに留意することが重要である。図13(C)では、右に向かう保持力fのほうが小さいので、スラグはたやすく左に動く。管が十分に小さく作られている場合、運動を起動する圧力差は相対的に大きい。前述のPTFE管(θa,0=108°、Δθ=10°、ω=10°、ω=90°)については、管の直径を20μmに縮小した場合、水のスラグを一方向に動かすときと他の方向に動かすときとの圧力差は約20kPaである。よって、このタイプの構築は、マイクロ流体デバイスの弁やゲートなどで有用である。
【0055】
フィーチャのサイズは、静的なスラグについては比較的些細なことと予期される。小さいフィーチャ群が引き起こす偏向した湿潤作用は大きいフィーチャ群と同一となるはずである。しかし、スラグが動き始めると、小さいフィーチャ群は大きいフィーチャ群より有利となる。小さいフィーチャ群は流れを混乱させる可能性が低い。表面フィーチャ群は大きすぎると、乱流を増大させる恐れがあり、その結果、流体抵抗が増大する。よって、異方性の湿潤流体接触面28が流体の流れを受ける本発明の一部の実施形態では、異方性の湿潤流体接触面28を形成する凹凸の平均サイズは一般に500μm未満であり、他の実施形態では一般に10μm未満であり、更に他の実施形態では100nm未満である。
【0056】
ここでの分析は断面が円形の毛細管に照準をあてているが、非円形の管及び付着滴にも適用される。式(1)はプレファクタkのみ異なる。更に、当業者には当然のことながら、流れの開始の際には、液体の粘度や慣性や垂直の移動から生じる力などの、付加的な力を考える必要がある。
【0057】
図20は、外力Fの影響を受けている静止した付着滴180の側面図である。外力は滴180の形状を歪ませ、これによって形状を前方に「傾ける(lean)」。図示のように、滴180が臨界状態に達し、保持力と外力とが等しく、f=Fである。この臨
界構成では、前縁での滴の接触角が前進値θを呈示し、後縁では後退値θを呈示する。Fがわずかでも増大すると、滴180は動き始める。細管の液体スラグに関連する保持力を記述する一般式は、付着滴に関連する保持力も以下のように記述する。
【0058】
=kγR(cos θr −cos θa ) (1)
この場合は、2Rは滴の幅であり、プレファクタkは接触線の形状に依存する。付着滴の接触線が円形の場合は、以下のようになる。
【0059】
k≒1.5 (22)
滴が外力の為に伸びると、kは増大する。
直径の小さい毛細管中の液体スラグの運動を起動するには、接触線で作動する界面張力に関連する保持力を克服する為に最小の外力を印加する必要がある。保持力の大きさは流体‐液体間の界面張力及び表面粗さと共に増大する。表面粗さが対称なフィーチャ群から成る場合、初期移動に対する抵抗の増大が、細管の軸に沿う両方向で等しく働き、濡れは等方性となる。フィーチャ群が非対称の場合、保持力は一方向で少なく、濡れは異方性となる。表面フィーチャ群の非対称が大きいと、2つの相対する方向への保持力の相違が大きくなる。表面フィーチャ群の適切な設計によって、保持力の差Δfを5倍よりも大きくできる。固有の接触角ヒステリシスが最小になる液体‐固体の組み合わせによって、大幅に調整がなされると予想される。
【0060】
一般に、流体取扱装置を作る為の基板材料は、非対称のマイクロスケール又はナノスケールの凹凸群を適切に形成できる一般に疎液性又は超忌避性の材料である。凹凸群を基板材料そのものに直接形成してもよいし、基板材料に蒸着した他の材料の1層以上にフォトリソグラフィ又は多様な好適な方法のいずれかによって形成してもよい。本発明に係るマイクロスケールの凹凸を、既知の成形法及びスタンピング法を用い、プロセスで用いる型やスタンプの工具などをテクスチャ加工することにより形成してよい。プロセスには、射出成形、テクスチャ加工済みのカレンダーロールによる押し出し、圧縮成形工具に加え、マイクロスケールの凹凸の形成に適している他の既知の工具又は方法などがある。
【0061】
所望の形状と間隔のスケールの小さい凹凸の形成に適した他の方法には、米国特許出願公開第2002/00334879号に開示されているようなナノマシニングや、米国特許第5,725,788号に開示されているようなマイクロスタンピングや、米国特許第5,900,160号に開示されているようなマイクロコンタクトプリンティングや、米国特許第5,609,907号に開示されているような自己組織化金属コロイド単分子膜や、米国特許第6,444,254号に開示されているようなマイクロスタンピングや、米国特許第5,252,835号に開示されているような原子間力顕微鏡ナノマシニングや、米国特許第6,403,388号に開示されているようなナノマシニングや、米国特許第6,530,554号に開示されているようなゾル‐ゲル成形や、米国特許第6,518,168号に開示されているような自己組織化単分子膜向けの表面パターニングや、米国特許第6,541,389号に開示されているような化学エッチングや、米国特許出願公開第2003/0047822号に開示されているようなゾル‐ゲルスタンピングなどがあり、上記の出願及び特許すべてがこれによって完全に参照により本願に組み込まれる。所望の凹凸のジオメトリを形成する為に、カーボンナノチューブ構造を使用することもできる。カーボンナノチューブ構造の例は、米国特許出願公開第2002/0098135号及び第2002/0136683号に開示されており、これらもやはりこれによって完全に参照により本願に組み込まれる。更に、好適な凹凸の構造を、コロイド状のインクによるプリンティングという既知の方法を用いて形成してよい。もちろん、当然のことながら、マイクロスケール/ナノスケールの凹凸群を正確に形成できる他の方法を用いてもよい。マイクロスケール又はナノスケールの凹凸群の形成に適したフォトリソグラフィ法が、PCT特許出願公報第02/084340号に開示されており、この出願も、これ
によって完全に参照により本願に組み込まれる。
【0062】
本発明の異方性の湿潤面が無数の応用で有用だということが予期される。例えば、異方性の湿潤面が、配管、管類、継手、弁、他の装置などの、流体取扱システムの濡れる部分に張りつけられている場合、流体の摩擦及び乱流が大幅に低減されるということが予期される。乾燥時間が短くなり乾燥後に表面に残る繰り越しの化学残留物が少なくなることで、臨界的な洗浄プロセスの有効性が改善される。本発明に係る異方性の湿潤面が、表面のバイオフィルムでの有機体の成長に耐性を示すことも予期され、これは、1つには、大幅に改善された表面の指向性の排水性のおかげである。
【0063】
異方性の湿潤面の原理を、同様に超忌避性の表面に適用することもできる。極端な忌避性の湿潤面が、以下の米国特許及び米国特許出願に記載されている。米国特許出願第10/824,340号、米国特許出願第10/837,241号、米国特許出願第10/454,743号、米国特許出願第10/454,740号、米国特許第6,845,788号。上記の出願及び特許は参照により全体が本願に組み込まれる。上記の出願及び特許の開示を本出願と共に利用して、異方性の濡れと超忌避性の特性との両方を実際に示す表面を設計することができる。
【0064】
本発明を、本発明の中心の属性から逸脱することなく他の特定の形態で具体化してもよく、よって、図示の実施形態を、あらゆる点で実例となるものと考えるべきであり、限定的なものと考えるべきではなく、本発明の範囲を示す為に、参照するのは前述の説明ではなく添付の請求項である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る異方性の流体接触面を備えた管類の長さの部分的な縦方向の断面図。
【図2】線2‐2に沿って切断した図1に示した管類の長さの断面図。
【図3】パイプの2つの接合部分を接続している、本発明に係る90度に湾曲した継手の部分的な縦方向の断面図。
【図4】本発明に係る三方弁の構成要素の断面図。
【図5】本発明に係る二方弁の構成要素の断面図。
【図6】本発明に係る直列の流量計の構成要素の断面図。
【図7】本発明に係る直列の流量計のサイトチューブの断面図。
【図8】本発明に係る異方性の湿潤流体接触面を備えたマイクロ流体デバイスの分解組立図。
【図9】図8の面9‐9に沿って切断した図8のデバイスの断面図。
【図10】本発明に係るマイクロ流体デバイスの代替の実施形態の図。
【図11】本発明に係る異方性の流体接触面を備えた燃料電池スタック装置の略断面図。
【図12】本装置の1つのチャネルを描写している、図11の燃料電池スタック装置の拡大部分図。
【図13A】滑らかな壁面を備えた毛細管の断面図。
【図13B】対称の凹凸を有する壁面を備えた毛細管の断面図。
【図13C】非対称の凹凸を有する壁面を備えた毛細管の断面図。
【図14】毛細管中の液体スラグが外力の影響を受けている状態の断面図。
【図15A】表面の凹凸又は表面のフィーチャと相互に作用している液体スラグの接触線が前進している状態の拡大側面図。
【図15B】表面の凹凸又は表面のフィーチャと相互に作用している液体スラグの接触線が後退している状態の拡大側面図。
【図16A】対称で、一般にのこぎり歯形の凹凸を有する毛細管壁の拡大部分断面図。
【図16B】非対称で、一般にのこぎり歯形の凹凸を有する毛細管壁の拡大部分断面図。
【図16C】非対称で、一般にのこぎり歯形の畝の形の凹凸を備えた異方性の流体接触面の拡大部分斜視図。
【図16D】非対称の角錐台の凹凸を備えた異方性の流体接触面の拡大部分斜視図。
【図16E】非対称の円錐台の凹凸を備えた異方性の流体接触面の拡大部分斜視図。
【図17】対応する平滑面に比べ対称なのこぎり歯のフィーチャを備えた表面の保持力の比のグラフ。
【図18】立ち上がり角度に対する非対称なのこぎり歯のフィーチャを備えた表面の保持力の比のグラフ。
【図19】立ち上がり角度に対する非対称なのこぎり歯のフィーチャを備えた表面の保持力の比のグラフ。
【図20】F=fという臨界条件での付着液滴の側面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異方性の湿潤面部を有した流体取扱装置であって、前記異方性の湿潤面部が、 基板を具備し、前記基板の上に非常に多くの非対称で実質的には均一形状のマイクロスケール又はナノスケールの凹凸が備わっており、各凹凸が前記基板に対して第1の凹凸立ち上がり角度と逆向きの第2の凹凸立ち上がり角度とを画成し、前記維持力比(f/f)が次の公式に従い決定されたときに、前記凹凸が1より大きい又は1未満の維持力比(f/f)を呈する構造を持っており、
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ
ωが単位度の前記第1の凹凸立ち上がり角度であり、ωが単位度の前記第2の凹凸立ち上がり角度であり、Δθ=(θa,0−θr,0)であり、ここでθa,0が前記面と接触している流体の単位度の真の前進接触角であり、θr,0が前記面上の前記流体の単位度の真の後退接触角である、
流体取扱装置。
【請求項2】
前記凹凸群が突出部である、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項3】
前記凹凸群が多面体に形づくられている、請求項2に記載の流体取扱装置。
【請求項4】
前記各凹凸の横断面が一般に正方形である、請求項2に記載の流体取扱装置。
【請求項5】
前記凹凸群の形状が、円筒、楕円柱、円錐、円錐台のどれかである、請求項2に記載の流体取扱装置。
【請求項6】
前記凹凸群が前記基板に形成されたキャビティ群である、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項7】
前記凹凸群が実質的には均一のアレイに位置付けられた、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項8】
前記凹凸群が長方形のアレイに位置付けられた、請求項7に記載の流体取扱装置。
【請求項9】
前記流体取扱装置がマイクロ流体デバイスである、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項10】
前記流体取扱装置が燃料電池の構成要素である、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項11】
流体取扱装置の異方性の湿潤面の方法であって、前記方法が、 表面を呈する流体取扱装置を設ける工程と、 非常に多くの実質的には均一形状のマイクロスケール又はナノスケールの凹凸を前記流体取扱装置の前記面に配置して、前記異方性の湿潤面を形成する工程と、前記各凹凸が前記面に対して第1の凹凸立ち上がり角度と第2の凹凸立ち上がり角度を有し、前記維持力比(f/f)が次の公式に従い決定されたときに、前記凹凸が1より大きい又は1未満の維持力比(f/f)を呈するように前記凹凸群が構造を持ち配置され、
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ
ωが単位度の前記第1の凹凸立ち上がり角度であり、ωが単位度の前記第2の凹凸立ち上がり角度であり、Δθ=(θa,0−θr,0)であり、ここでθa,0が前記面と接触している流体の単位度の真の前進接触角であり、θr,0が前記面上の前記流体の単位度の真の後退接触角である、方法。
【請求項12】
フォトリソグラフィプロセスを用いて前記凹凸群が配置される、請求項11のプロセス。
【請求項13】
前記凹凸群が、ナノマシニング、マイクロスタンピング、マイクロコンタクトプリンティング、自己集合性金属コロイド単分子膜、原子間力顕微鏡ナノマシニング、ゾル‐ゲル成形、自己組織化単分子膜向けのパターニング、化学エッチング、ゾル‐ゲルスタンピング、コロイド状のインクによるプリンティング、及び平行なカーボンナノチューブの層の前記基板への配置、から成るグループから選択されたプロセスを用いて配置される、請求項11のプロセス。
【請求項14】
異方性の湿潤面を具備した流体取扱装置であって、前記異方性の湿潤面の上に、非常に多くの非対称で実質的には均一形状の凹凸が備わっており、前記各凹凸が前記基板に対して第1の凹凸立ち上がり角度と逆向きの第2の凹凸立ち上がり角度とを画成し、前記維持力比(f/f)が次の公式に従い決定されたときに、前記凹凸が1より大きい又は1未満の維持力比(f/f)を呈する構造を持っており、
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ
ωが単位度の前記第1の凹凸立ち上がり角度であり、ωが単位度の前記第2の凹凸立ち上がり角度であり、Δθ=(θa,0−θr,0)であり、ここでθa,0が前記面と接触している流体の単位度の真の前進接触角であり、θr,0が前記面上の前記流体の単位度の真の後退接触角である、
流体取扱装置。
【請求項15】
前記流体取扱装置が管状である、請求項14に記載の流体取扱装置。
【請求項16】
前記流体取扱装置が弁である、請求項14に記載の流体取扱装置。
【請求項17】
前記流体取扱装置がマイクロ流体デバイスである、請求項14に記載の流体取扱装置。
【請求項18】
前記流体取扱装置が燃料電池の構成要素である、請求項1に記載の流体取扱装置。
【請求項19】
流体取扱装置を洗浄する方法であって、前記方法が、 異方性の湿潤面を呈する流体取扱装置を設ける工程と、前記異方性の湿潤面が基板を具備しており、前記基板の上に非常に多くの非対称で実質的には均一形状の凹凸が備わっており、前記各凹凸が前記基板に対して第1の凹凸立ち上がり角度と逆向きの第2の凹凸立ち上がり角度とを画成し、前記維持力比(f/f)が次の公式に従い決定されたときに、前記凹凸が1より大きい又は1未満の維持力比(f/f)を呈する構造を持っており、
/f=sin (ω+1/2 Δθ)/sin (ω+1/2 Δθ
ωが単位度の前記第1の凹凸立ち上がり角度であり、ωが単位度の前記第2の凹凸立ち上がり角度であり、Δθ=(θa,0−θr,0)であり、ここでθa,0が前記異方性の湿潤面と接触している流体の単位度の真の前進接触角であり、θr,0が前記異方性の湿潤面上の前記流体の単位度の真の後退接触角であり、 前記異方性の湿潤面と前記流体を接触させる工程を含む、方法。
【請求項20】
前記異方性の湿潤面上で前記流体を動かす為に前記流体取扱装置又は前記流体に力を与える工程を更に含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図16c】
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【図16d】
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【図16e】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2009−509104(P2009−509104A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531370(P2008−531370)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/036081
【国際公開番号】WO2007/035511
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】