説明

停電時対応型標識装置

【課題】停電時においても、交差点の地点名標識板を夜間に点灯表示して、交差点の存在自体をドライバに良好に認識させ、交通事故の防止に役立てることができる停電時対応型標識装置を提供する。
【解決手段】交差点の上方に設置され、交差点の地点の名称を示す地点名が付された地点名標識板1と、地点名標識板1を夜間に点灯表示する照明器具13が設けられる。蓄電体9が設けられ、蓄電体9は照明器具13のLED14に電力を供給する。昼夜検出器7が昼夜の別を検出して昼間信号または夜間信号を出力し、昼夜検出器7から夜間信号が出力されているとき、照明器具13は点灯し地点名標識板1を照明表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交差点に設置され、その交差点の地点名を表示する地点名標識板を点灯表示し、停電時においても対応可能とした停電時対応型標識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点には、通常、その地点の名称や交差点名を示す地点名が付され、地点名を反射シートに記した地点名標識板が、交差点の上方のドライバの見やすい位置に、掲げられている。しかし、従来の地点名標識板は、自発光しない或いは照明されない状態で、設置されるので、夜間、照明のない交差点では、自動車のドライバにとって、見づらい標識板となっている。また、地点名標識板は、通常、交差点の上方に設置されているため、夜間、自動車の前照灯の光が届きにくく、ドライバには見にくいのが実情である。
【0003】
一方、交差点に設置される一時停止用の標識板として、従来、発光体を備え、夜間には発光表示される発光標識板が、下記特許文献1などで提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−59943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、夜間、一時停止標識のない通常の交差点では、反射式或いは内照式などの一時停止用標識は設置されないため、道路照明のない交差点では、地点名標識板に照明光が当らず、或いは地点名標識板が自発光しない状態で設置されるのみである。
【0006】
このため、夜間、交差点を走行する自動車のドライバ或いは通行者に対し地点名標識板を設置して、行き先の目印や案内を行なったとしても、その誘目性や認知性が低く、ドライバ等の注意が道路上方に向けられて、前方不注意となりやすい。さらに、夜間、反射式或いは内照式などの一時停止用標識或いは信号機や道路照明のない交差点では、特にドライバ或いは通行者が交差点であることを認知しにくく、夜間交差点での交通事故に繋がりやすいという課題があった。
【0007】
また、仮に交差点を照らす照明設備があったとしても、この種の照明設備は交差点中心の路面を照明するため、街路灯と区別がつきにくく、自動車のドライバは交差点に気づかない場合が多い。
【0008】
さらに、信号機が設置された交差点であっても、災害時などに停電があった場合、信号機が消えるため、夜間、このような交差点を通過する自動車のドライバには、信号機付きの交差点であっても、停電時には交差点を認識しにくく、夜間の交通事故に繋がりやすいという課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題に鑑みなされたもので、停電時においても、交差点の地点名標識板を夜間に点灯表示して、交差点の存在自体をドライバに良好に認識させ、交通事故の防止に役立てることができる停電時対応型標識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る停電時対応型標識装置は、交差点の上方に設置され、該交差点の地点の名称を示す地点名が付された地点名標識板と、該地点名標識板を夜間に光を照射して点灯表示する点灯表示手段と、電力を蓄電する蓄電体を有し該点灯表示手段に電力を供給する電源手段と、昼夜の別を検出して昼間信号または夜間信号を出力する昼夜検出手段と、該昼夜検出手段から夜間信号が出力されているとき、該電源手段から供給される電力を用いて該点灯表示手段を点灯させるように制御する制御手段と、を備え、
該地点名標識板は、金属板の表面に地点名を付した文字シートを貼着して形成され、該点灯表示手段は、該地点名標識板の上方に照明器具を設置し、該照明器具から照射した照明光により該地点名標識板を照明することを特徴とする。
【0011】
この発明の停電時対応型標識装置によれば、夜間、交差点の地点名標識板が点灯表示されるので、信号機がなく照明のない交差点であっても、暗い交差点を通過する自動車のドライバは、点灯表示された地点名標識板を容易に視認することができ、地点名標識板の点灯表示によって、ドライバには交差点の存在が確実に認識され、事故防止に寄与することができる。
【0012】
また、点灯表示手段に電力を供給する電源手段に蓄電体を設けているので、災害時や計画停電時などに商用電源が停電して、信号機が消えている場合でも、点灯表示手段を点灯させて、地点名標識板を点灯表示することができ、停電時でも、交差点の存在をドライバや歩行者に確実に認識させることができる。
【0013】
このため、例えば、夜間の災害時などに、被災者が徒歩で暗い道を歩いて帰る際、交差点で点灯表示された地点名標識板を見れば、どこを歩いているのかが直ぐに分かり、安心して帰宅することができる。また、簡単な構造の地点名標識板に照明器具を取り付けるのみで簡便に構成することができ、既存の地点名標識板にも簡単に適用することができる。
【0014】
ここで、上記照明器具は、傘部の内側に棒状のLEDユニットを配置して形成され、該LEDユニットには、複数のLEDが間隔をおいて長手方向に沿って配設され、該LEDユニットが前記地点名標識板の表面に光を照射して、該地点名標識板を照明することができる。これによれば、少ない消費電力で輝度の高い光を地点名標識板に照射して照明することができ、停電時、小形化の蓄電体でも長時間にわたり照明を行なうことができる。
【0015】
また、上記電源手段には、太陽電池を設け、昼間に太陽電池で発生した起電力を蓄電体に蓄電し、夜間には蓄電体からの電力を用いて点灯表示手段を点灯させることができる。これによれば、商用電源を使用せずに、標識装置を簡便に設置することができ、災害時や計画停電時に商用電源が停電して、信号機が消えている場合でも、長期間にわたり、点灯表示手段を点灯させて地点名標識板を点灯表示することができ、ドライバには交差点の存在を確実に認識させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の停電時対応型標識装置によれば、停電時においても、交差点の地点名標識板を夜間に点灯表示して、交差点の存在自体をドライバに良好に認識させ、交通事故の防止に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を示し、信号機に取り付けた状態の停電時対応型標識装置の正面図である。
【図2】地点名標識板の正面図である。
【図3】同地点名標識板の平面図である。
【図4】同地点名標識板の背面図である。
【図5】同地点名標識板の部分断面付きの拡大右側面図である。
【図6】停電時対応型標識装置の電気回路のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は信号機22の支柱20に取り付けた状態の停電時対応型標識装置の正面図を示している。この停電時対応型標識装置は、地点名を付した地点名標識板1を、外照式により照明して表示する標識装置であり、交差点の上方に設置され、交差点の地点の名称を示す地点名が付された地点名標識板1と、地点名標識板1を夜間に点灯表示する点灯表示手段としての照明器具13と、照明器具13のLED14に電力を供給する電源手段としての蓄電体9及び太陽電池8と、昼夜の別を検出して昼間信号または夜間信号を出力する昼夜検出器7と、昼夜検出器7から夜間信号が出力されているとき、蓄電体9から供給される電力を用いて照明器具13のLED14を点灯させるように制御する制御手段としてのコントローラ6と、を備えて構成される。
【0019】
地点名標識板1は、矩形のアルミニウム板等からなる金属板10の表面に、地点名を付した文字シート17を貼着して構成される。地点名の文字シート17は、例えば着色された反射シートを白色の下地反射シート上に貼着して形成され、金属板10の前面に貼着される。なお、文字シート17は着色した下地反射シートと白色の文字形反射シートとすることもできる。
【0020】
図3,4に示すように、金属板10の背面には複数のリブ19が間隔をおいて鉛直方向に並行に溶接される。複数のリブ19は補強用及び取付用に固定され、後述の2台の照明器具13は取付ブラケット18を介してこのリブ19に固定される。また、図1のように、地点名標識板1を支柱20のビーム21に取り付ける際には、リブ19と専用の固定金具を用いて支柱20のビーム21に対し金属板10が取り付けられる。
【0021】
地点名標識板1の上部には、2台の照明器具13が、地点名標識板1の表面に付された地点名を、その上部前方から光を照射して照明するために、取付ブラケット18により取り付けられる。なお、照明器具13は地点名標識板1の右または左の側部前方に取り付け、側部前方から照明することもできる。照明器具13は、図5に示すように、傘部16の内側に棒状のLEDユニット15を取り付けて構成され、LEDユニット15には、例えば9個の白色のLED14(図6)が30mmのピッチで長手方向に沿って配設され、地点名標識板1の表面に上部前方から白色の光を照射して、地点名標識板1の地点名を照明するように構成される。
【0022】
棒状のLEDユニット15と傘部16を備えた照明器具13は、図5に示すように、L形の取付ブラケット18により取り付けられ、取付ブラケット18の背面部を固定ボルト18aによりリブ19に固定し、地点名標識板1の上部に取り付けられる。照明器具13の傘部16は照射範囲調整部を介して両側のフレーム部に支持され、照射範囲調整部は傘部16とLEDユニット15の取付角度を調整可能に取り付けるように構成される。照明器具13の傘部16及びLEDユニット15は、照射範囲調整部によってその取り付け角度を調整し、光の照射方向を斜め下方の表示面に向けて、地点名標識板1の地点名を明るく照明するように調整することができる。
【0023】
照明器具13のLED14を点灯駆動する制御手段は、図6に示すように、蓄電体9の充放電を制御するコントローラ6を主要部として構成され、太陽電池8で発生した電力を蓄電する蓄電体9、及び昼夜の別を検出して昼間信号または夜間信号を出力する昼夜検出器7を備えている。
【0024】
コントローラ6は、充放電制御回路、LED駆動回路などから構成され、夜間、昼夜検出器7から夜間信号が出力されているとき、蓄電体9に蓄電された電力を照明器具13に供給し、LED14を点灯表駆動し、昼間に昼夜検出器7から昼間信号が出力されているとき、LED14を消灯する一方、太陽電池8で発生した起電力を、充放電制御回路を通して蓄電体9に蓄電するようになっている。なお、昼夜検出器7は太陽電池8の出力電圧に基づき昼間信号または夜間信号を発生させるように構成することができ、太陽電池8の出力電圧が予め設定した設定電圧以上の場合、昼間信号を出力し、設定電圧未満の場合、夜間信号を出力する。
【0025】
図1に示すように、太陽電池8は、信号機22の支柱20の上部に取り付けられ、コントローラ6及び蓄電体9は支柱20の下部に取り付けられる制御箱23内に配設される。蓄電体9には、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池、鉛電池などの二次電池(容量約12V,約44Ah)を使用することができる。また、太陽電池8として、例えば約530mm×450mmの大きさの太陽電池パネルを使用した場合、約16.4V、1.57Aの電力を発生することができ、そこで発生した起電力を蓄電体9の蓄電した場合、約7日間にわたり昼間の充電なしに、夜間、地点名標識板1を点灯表示することができる。
【0026】
なお、図6に示すように、太陽電池8を使用しない場合、太陽電池8に代えて商用電源Sからの電力をコントローラ6に導入するように構成することもでき、この場合、商用電源Sの交流を、電圧12Vの直流に変換してコントローラ6に供給し、コントローラ6は、商用電源Sの電力を用いて蓄電体9の充電を行い、夜間、商用電源Sの電力を用いてLED14を点灯駆動することとなる。
【0027】
このため、仮に商用電源Sを使用していたときに災害などで停電となった場合、蓄電体9の電力を放電させてLED14を点灯駆動することになるが、LED14の電力消費量は少なく、約7日間は、夜間、照明器具13のLED14を点灯することができる。
【0028】
上記構成の停電時対応型標識装置は、図1に示すように、交差点の近傍に設置された信号機22の支柱20に取り付けられる。地点名標識板1を取り付ける場合、信号機22の支柱20の上部に取り付けたビーム21の一部に、専用の固定金具を用いて取り付けられる。なお、信号機のない交差点では、交差点の近傍に、専用の支柱が設置され、その支柱のビームに地点名標識板1が取り付けられることとなる。また、既設の標識板に地点名標識板1を直接取り付けることもできる。
【0029】
図1に示すように、太陽電池8は支柱20の上部に取り付けられ、コントローラ6や蓄電体9を内蔵した制御箱23は支柱20の下部に取り付けられる。商用電源Sを使用しない場合、基本的には、商用電源に接続する必要がないため、既存の交差点に、非常に簡便に、また、信号機の点灯回路に影響を与えることなく、停電時対応型標識装置を設置することができる。
【0030】
コントローラ6は、昼間に、昼夜検出器7から昼間信号が出力されているとき、LED14を消灯する一方、太陽電池8で発生した起電力を、充放電制御回路を通して蓄電体9に蓄電する。
【0031】
一方、夜間になって、昼夜検出器7から夜間信号が出力された場合、コントローラ6は、蓄電体9を充電から放電に切り替え、蓄電体9から放電される電力を、照明器具13のLEDユニット15に供給し、LEDユニット15のLED14を点灯駆動する。
【0032】
これにより、照明器具13のLEDユニット15のLED14から照射され配光調整された光が、地点名標識板1の表面に向けて出射され、地点名標識板1が明るく点灯表示される。
【0033】
このため、自動車のドライバは、夜間であっても、交差点の地点名を容易に視認し、その地点を認識することができる。さらに、信号機のない交差点を、夜間に通過する自動車のドライバは、特に、暗い状態の地点名標識板を見落としやすいが、地点名標識板1は照明器具13により照明されて表示されるので、信号機のない交差点であっても、地点名を容易に視認し、その地点を認識することができる。
【0034】
しかも、夜間、信号機のない交差点が地点名標識板1の点灯表示により明るくなるため、交差点の存在が自動車のドライバには容易に認識できるようになり、これにより、夜間の交差点での交通事故の発生を防止することができる。また、夜間の災害時などに、被災者が徒歩で暗い道を歩いて帰る際、交差点で点灯表示された地点名標識板を見れば、どこを歩いているのかが直ぐに分かり、安心して帰宅することができる。
【0035】
なお、上記実施形態では、信号機22のある交差点の支柱20に、地点名標識板1を設置したが、信号機のない交差点に地点名標識板1を設置することもできる。この場合、交差点の近傍に設置された別の標識用の支柱或いは専用に設けた支柱を利用して、地点名標識板1を取り付けることとなる。
【0036】
また、上記実施形態において、停電時対応型標識装置を設置した交差点に、歩行者を検知する人感センサを配設し、歩行者が交差点近傍に近づいた場合、人感センサからの検知信号をコントローラに入力し、地点名標識板1を点滅表示する或いは発光色を変えて点灯表示するように構成することもできる。また、交差点に近づいた自動車を検知する自動車検知センサを交差点近傍に設置し、自動車が交差点近傍に近づいた場合、自動車検知センサからの検知信号をコントローラに入力し、地点名標識板1を点滅表示する或いは発光色を変えて点灯表示するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 地点名標識板
6 コントローラ
7 昼夜検出器
8 太陽電池
9 蓄電体
10 金属板
13 照明器具
14 LED
15 LEDユニット
16 傘部
17 文字シート
18 取付ブラケット
18a 固定ボルト
19 リブ
20 支柱
21 ビーム
22 信号機
23 制御箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点の上方に設置され、該交差点の地点の名称を示す地点名が付された地点名標識板と、
該地点名標識板を夜間に光を照射して点灯表示する点灯表示手段と、
電力を蓄電する蓄電体を有し該点灯表示手段に電力を供給する電源手段と、
昼夜の別を検出して昼間信号または夜間信号を出力する昼夜検出手段と、
該昼夜検出手段から夜間信号が出力されているとき、該電源手段から供給される電力を用いて該点灯表示手段を点灯させるように制御する制御手段と、
を備え、
該地点名標識板は、金属板の表面に地点名を付した文字シートを貼着して形成され、該点灯表示手段は、該地点名標識板の上方に照明器具を設置し、該照明器具から照射した照明光により該地点名標識板を照明することを特徴とする停電時対応型標識装置。
【請求項2】
前記照明器具は、傘部の内側に棒状のLEDユニットを配置して形成され、該LEDユニットには、複数のLEDが間隔をおいて長手方向に沿って配設され、該LEDユニットが前記地点名標識板の表面に光を照射して、該地点名標識板を照明することを特徴とする請求項1記載の停電時対応型標識装置。
【請求項3】
前記電源手段は太陽電池を有し、昼間に該太陽電池で発生した起電力を前記蓄電体に蓄電し、夜間には該蓄電体からの電力を用いて前記点灯表示手段を点灯させることを特徴とする請求項1記載の停電時対応型標識装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−100652(P2013−100652A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243983(P2011−243983)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000159021)株式会社キクテック (42)
【Fターム(参考)】