説明

傾斜投写光学系及びそれを用いた投写型映像表示装置

【課題】超短投写距離の傾斜投写光学系を含み平面ミラーを備えた構成も実現できる投写型映像表示装置で傾斜投写による台形歪みが無くフォーカス性能が良好な小型でコンパクトなセットを提供する。
【解決手段】投写型映像表示装置であって、複数のレンズで構成された傾斜投写光学系を備え、投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、このレンズと投写面の間に光軸に対して所定の角度を持って光路折り返し平面ミラーを配置し、この平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像を映像表示面方向に得られるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像表示素子の表示画面での映像を投写面であるスクリーンやボードに拡大表示する投写型映像表示装置とその投写光学系に係わり、特に表示画面に映し出された映像を投写面に対して斜め方向から投写する投写型映像表示装置とその光学系及び光学系を構成するプラスチック製の成形レンズの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型あるいは透過型の液晶パネルや微小ミラーを複数個配列した構造の映像表示素子の表示画面を投写面であるスクリーンやボード等に拡大表示する投写型映像表示装置においては、投写面で十分な大きさの拡大像が得られるようにすることは勿論であるが、プレゼンターの影が投写面に映らない事やプレゼンターの目に直接拡大映像光が入らないように、投写型映像表示装置と投写面の距離を短縮した所謂短投写型の投写光学系が市場に出現し始めている。この投写光学系は投写面に対して斜め方向から拡大映像光が入射するように構成されている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、かかる斜め投写に曲面ミラーを用いた傾斜投写光学系で光学的な調整を行う手段についても知られている(例えば特許文献2)。一方、光路折り返しミラーを投写型映像表示装置と投写面の間に設け背面投写型とすることで見かけ上の投写距離を短縮した投写型映像表示装置も知られている。(例えば特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−250296号 公報
【特許文献2】特開2002−350774号 公報
【特許文献3】特開2006−259252号号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術、特に、上記特許文献1に開示されている投写面に対して斜め方向から拡大映像光が入射する傾斜投写光学系では、投写光学系と投写面との間に曲面ミラーを配置して構成し、共軸投写光学系で曲面ミラーと該共軸投写光学系の間に中間像を結像させこの中間像を曲面ミラーの拡大作用により投写面であるスクリーン上に拡大投写する構成である。
【0006】
このため、上記特許文献1に記載の技術では、スクリーン上の拡大像の倍率を変倍したりするためには曲面ミラーの位置を前記共軸投写光学系の光軸に沿って平行移動させなければならず曲面ミラーが前記光軸に対して傾かないように高精度移動調整機構が必要となるがこの移動調整機構については開示されていない。
【0007】
また上記特許文献2には自由曲面ミラーの移動による調整方法が開示されているだけで、傾斜投写光学系特有の投写面であるスクリーンへの斜め投写に伴う投写映像の台形歪み及びスクリーン上下方向の投写距離の差により生じる収差についての具体的な補正について考慮されておらず、投写光学系とスクリーンとの間に配置した負のパワーを有する自由曲面ミラーの製造方法については記載すら無い。
【0008】
一方、上記特許文献3にはプロジェクタ本体の投写レンズから投写される投写光を反射するミラーを回転可能とするためのミラー機構部を有し、このミラー機構部はミラーに対しプロジェクタ本体からの投写光の投写角度が所定の角度となるように固定部にプロジェクタ本体を固定するものでプロジェクタ本体内部に設置された投写レンズをシフトすることなくリア投写を行うことができるばかりでなく、フロント投写(スクリーンに直接投写)する場合には前記ミラー機構部にプロジェクタ本体を収納する構成としミラーへプロジェクタ本体を収納した場合にコンパクトなサイズになるように考案されている。
【0009】
上記特許文献3に記載のプロジェクタにおいては、リア投写時のミラーとプロジェクタ本体の位置関係が固定されており、リア投写におけるスクリーン上の拡大像の倍率を変倍方法や拡大映像の位置を調整する技術手段については考慮されていない。
【0010】
本発明はかかる課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、投写面へ斜め投写する傾斜投写光学系及びそれを用いた投写型映像表示装置であって、斜め投写に伴う台形歪みや収差をコンパクトな構成で補正すると伴に投写光を平面ミラーで折り返して投写面に投写する場合投写型映像表示装置の設置性を大幅に向上した投写型映像表示装置を提供することにある。
【0011】
さらに、本発明の傾斜投写光学系はプラスチックレンズを含む複数のレンズで構成されこのプラスチックレンズは非球面形状とすることで自由曲面形状と比較して成形金型の加工時間を低減し、かつ光路折り返しミラーも平面ミラーとすることで開発コストを大幅に低減した投写型映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明による投写光学系は映像表示面に表示された映像を投写面であるスクリーン等に斜めに拡大投写する所謂傾斜投写光学系で、複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、映像光束が通過する映像垂直方向の有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置し、その形状は光軸に対して軸非対称とすることで超広角化により発生する収差や斜め投写によって発生する歪みを補正することが可能となる。
【0013】
また本発明の傾斜投写光学系は、上述の理由により光軸に対して拡大映像が映し出される画面垂直方向の位置を高かく(シフト量が大きい)することが可能となるので投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し用に小型の平面ミラーを配置することができる。
【0014】
さらに、この傾斜投写光学系を備えた投写型映像表示装置をコンパクトにするために投写面に最も近い位置に配置された前述のレンズの画面垂直方向有効領域上端が、平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端に対して上部に配置し、この平面ミラーが傾斜投写光学系を最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有するとともにこの仰角を可変可能とする回転調整機構を設けることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明による傾斜投写光学系は超広角化しても画像の品位が維持できるので、この傾斜投写光学系を備えた投写型映像表示装置においては投写面と投写型映像表示装置の距離が短くても拡大率の大きな映像を得ることが可能となるとともに、前述の平面ミラーを、前記最多数のレンズにより共有される光軸に沿って移動可能とする平面ミラー移動機構を設けることを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明の傾斜投写光学系を構成する投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、その形状はレンズ有効面の中心軸に対して軸非対称な形状を有し、かつ前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状であることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の投写型映像表示装置は、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、その傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、投写型映像表示装置を形成する筐体の投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅の範囲に収納されたことを特徴とする投写ものである。
【0018】
上記目的を達成するために本発明の投写型映像表示装置は、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、その傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、投写面(スクリーン等)に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し用の平面ミラーを配置しこの平面ミラーは前述した最多数のレンズにより共有された光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を設けることで平面ミラーを前述した最多数のレンズにより共有された光軸に対して所定の角度を持って配置した第一の状態においてはこの平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像が映像表示面方向に得られる構成とし他方前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納した第二の状態においては前述した複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を延長した方向に拡大映像が得られるように構成したことを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明の投写型映像表示装置においては前述した平面ミラーの回転角を検知する手段を有し、検出した回転角に応じて投影映像の画面歪みを自動的に補正する映像補正機能を有することを特徴する。
【0020】
また前述した光路折り返し平面ミラーは同じく前述した最多数のレンズにより共有された光軸に垂直な軸に対して所定の角度θ1を持って配置した場合にはこの平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示面方向に拡大映像が得られるように構成し、前記投写型映像表示装置は該拡大映像と略垂直な基準平面に対してθ2傾けて配置してよりなり前記θ1とθ2はが所定の下記の関係式を満足する事を特徴とする。
【0021】
1.5≦θ2/θ1≦2.0
【0022】
一方、本発明の傾斜投写光学系を構成する複数レンズの内で投写面に最も近い位置に配置されたレンズはプラスチック製で光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置されこのプラスチックレンズは投写光学系を構成する最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状とすることで成形金型加工を行うのに前記最多数のレンズにより共有された光軸に対称となるように複数個の成形金型を配置して切削加工することが可能となるという特徴を持つ。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、投写面へ斜めに投写する傾斜投写光学系及びそれを用いた投写型映像表示装置であって、斜め投写に伴う台形歪みや収差をコンパクトな構成で補正すると伴に小型の平面ミラーを投写型映像表示装置に収納可能な構造とし、投写光を平面ミラーで折り返して投写面に投写する場合には平面ミラーの角度を調整することで投写映像の位置を可変可能としさらに平面ミラーを光軸方向に移動させること投写映像の倍率を変倍することで投写型映像表示装置の設置性を大幅に向上させることが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズを、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置し前記光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状とすることで成形金型の加工時間を大幅に低減し、かつ光路折り返しミラーも平面ミラーとすることで開発コストを大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図2】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図3】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図4】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図5】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図6】本発明の傾斜投写光学系と光路折り返しミラーを備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す正面図
【図7】本発明の傾斜投写光学系を備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す側面図
【図8】本発明の傾斜投写光学系を備えた投写型映像表示装置の一実施形態を示す正面図
【図9】本発明の傾斜投写光学系のレンズ構成を示す投写レンズの断面図
【図10】本発明の傾斜投写光学系のレンズ構成と光線追跡結果を表す断面図
【図11】本発明の傾斜投写光学系のレンズ構成と光線追跡結果を表す断面図
【図12】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図25(a)(b)に示すレンズデータ)のレンズ構成を示す投写レンズの断面図
【図13】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図26(a)(b)に示すレンズデータ)のレンズ構成を示す投写レンズの断面図
【図14】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図27(a)(b)に示すレンズデータ)のレンズ構成を示す投写レンズの断面図
【図15】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図25(a)(b)に示すレンズデータ)のレンズ構成と光線追跡結果を表す断面図
【図16】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図25(a)(b)に示すレンズデータ)による投写像のスポット形状を表す図
【図17】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図26(a)(b)に示すレンズデータ)による投写像のスポット形状を表す図
【図18】本発明の傾斜投写光学系の一実施例(図27(a)(b)に示すレンズデータ)による投写像のスポット形状を表す図
【図19】投写型映像表示装置の照明光学系の一実施例を示した構成図。
【図20】プラスチックレンズ成形金型のレンズ面形状加工機を模式的に示した構成図
【図21】プラスチックレンズ成形金型のレンズ面形状加工機による加工法を模式的に示した構成図
【図22】本発明のプラスチックレンズ成形金型レンズ面形状加工方法の一実施例を模式的に示した図
【図23】本発明のプラスチックレンズ成形金型レンズ面形状加工方法の他実施例を模式的に示した図
【図24】本発明の一実施例のプラスチックレンズ外形形状を示す図
【図25(a)】本発明の第一の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータ
【図25(b)】本発明の第一の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち非球面系に関するデータ
【図26(a)】本発明の第二の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータ
【図26(b)】本発明の第二の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち非球面系に関するデータ
【図27(a)】本発明の第三の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータ
【図27(b)】本発明の第三の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズのとり得るレンズデータのうち非球面系に関するデータ
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明による最良の形態について、添付の図を用いながら詳細に説明する。なお、以下の各図において、共通な機能を有する要素には同一符号を付して示し、一度説明したものについては、その重複する説明を省略する。
【0027】
図1から図3は、本発明の一実施例としての投写型映像表示装置を模式的に示した側面図であって、特に、平面ミラー(図示せず)を固定枠2に固定し映像光束3を折り返して映像表示面(図示せず)方向の投写面に斜め方向から投写する傾斜投写光学系(図示せず)を備えており、前述した傾斜投写光学系、照明光学系、回路部品等の主要部品(図示せず)は下部筐体9と上部筐体1a内部に収められている。
【0028】
同図において4は平面ミラー回転・固定機構、5はミラー固定枠の角度調整が可能な回転機構であり必要によっては平面ミラーの仰角が検知できる検知手段を備え、6及び7は平面ミラー移動部を固定する固定部、8は平面ミラー移動機構、R1は拡大映像光束の画面垂直方向上限光、R2は拡大映像光束の画面垂直方向下限光である。
【0029】
尚、本願発明の映像表示装置に備えた傾斜投写光学系を実現するレンズ構成の具体例については後ほど詳細に述べる。
【0030】
本願発明の投写型映像表示装置は、図2に示すように平面ミラー(図示せず)を固定枠2に固定し映像光束3を折り返して映像表示面(図示せず)方向の投写面に斜め方向から投写できるので映像投写表示装置から投写面までの見かけの投写距離を大幅に低減できるばかりか、移動機構8により平面ミラーを投写型映像表示装置の筐体に対して移動させ固定部6、固定部7により所定の位置に固定することで筐体を移動させることなく投写面までの投写距離を変更できこの結果、投写面上の映像の拡大率を容易に変更可能となるだけでなく図3及び図4に示すように平面ミラー回転・固定機構4又はミラー固定枠の回転機構5により所定の仰角から角度調整が可能で、投写面上の映像の表示位置を任意に可動できる。
【0031】
この時、平面ミラー回転・固定機構4、ミラー固定枠の回転機構5のいずれか一方もしくは両方に所定の仰角に対しての平面ミラー回転角が検知できる回転角検知手段(例えばロータリーエンコーダー等)を備え映像回路の画面垂直方向のキーストン補正を得られた回転角に合わせて自動補正することで更に使い勝手が向上する。
【0032】
また本願発明の投写型映像表示装置は、図2に示すように平面ミラー(図示せず)を固定枠2に固定し映像光束3を折り返して映像表示面(図示せず)方向の投写面に斜め方向から投写する場合に平面ミラーの有効面積を小さくするため、映像投写表示装置と平面ミラーの間隔を短くしかつ傾斜投写光学系のシフト量(投写レンズ光軸と拡大映像垂直方向下端が重なればシフト量10:0、拡大映像垂直方向の幅を10とした場合光軸より拡大映像垂直方向下端が上にあればマイナス量として定義する)がマイナスになるように(即ち光軸より上に位置するように)設計している。
【0033】
本願発明の映像表示装置では映像投写表示装置と平面ミラーの間隔を更に短くするために、図4に示すように平面ミラーは回転・固定機構4又はミラー固定枠の回転機構5により所定の仰角からθ1だけ傾けこれに対応して映像投写表示装置を投写面に垂直な面に対してθ2だけ傾ける事で投写面に歪みの少ない拡大像を得ることが可能となるが、実際に本願発明の映像投写表示装置を試作し実験により映像処理による垂直キーストン歪み補正と画質低下の関係を調べた。
【0034】
その結果、θ2とθ1の比率(θ2/θ1)は1.5以下の場合は投写面の画面垂直方向上部の映像が下部の映像に比べて拡大率が大きくなりすぎ映像回路で垂直キーストン補正を行っても画質が低下し反対にこのθ2とθ1の比率(θ2/θ1)が2.5以上の場合は投写面の画面垂直方向下部の映像が上部の映像に比べて拡大率が大きくなりすぎ映像回路で垂直キーストン補正を行っても画質低下が大きく、θ2とθ1の比率(θ2/θ1)を2.0近傍に設定すると最も画質低下を軽減できることを見出した。
【0035】
図5及び図6は本発明の映像投写表示装置において光路折り返し用の平面ミラー(図示せず)をセット筐体上部に収納した場合の形態を模式的に示した図をで、図5は側面図、図6は正面図である。
【0036】
本願発明の映像投写表示装置は図5に示すように光路折り返し用の平面ミラー(図示せず)を固定する固定枠2に固定し、平面ミラー回転・固定機構4及びミラー固定枠の回転機構5及び移動機構8、固定部6、固定部7によりセット筐体上部の所定の位置に収納可能とし、ミラー収納時には光路を折り返すことなく傾斜投写光学系を構成する最多数のレンズにより共有される光軸に沿った方向に拡大投写することが可能となる。
【0037】
図6は本願発明の映像投写表示装置において光路折り返し用の平面ミラー(図示せず)をセット筐体上部に収納した場合の形態を模式的に示したセット正面図で、傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズのうち投写面に最も近い位置に配置されたレンズ(図6ではL17として表示)は映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは台形形状とし不要光を遮蔽し光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置することで前記投写型映像表示装置を形成する筐体の投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅に収めることでデザイン性を大幅に向上できる。
【0038】
尚本願発明の一実施例として図5及び図6に示すように光路折り返し用の平面ミラーを収納しても或いは開放状態としても拡大映像が得られる映像投写表示装置の構造について説明したが、本願発明の傾斜投写光学系を備えていれば前述の光路折り返し用の平面ミラーを筐体に収納した状態で使用不可能な映像投写表示装置としても本願発明に抵触することは言うまでもない。
【0039】
本願発明の他の実施例としての映像投写表示装置は、図7に示すように光路折り返し用の平面ミラーを備えておらず傾斜投写光学系を構成する最多数のレンズにより共有される光軸に沿った方向に拡大投写する構成を成す。
【0040】
図8は図7に示した本発明の他の実施例としての映像投写表示装置の形態を模式的に示したセット正面図で、傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズのうち投写面に最も近い位置に配置されたレンズ(図8ではL17として表示)は映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは台形形状として不要光を遮蔽し光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され前記投写型映像表示装置を形成する筐体の投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅に収めさらに前述のL17の外形中心が筐体の投写面に対向する面の中心線より上に位置することで外観上のバランスが良好となりデザイン性を大幅に向上できる。
【0041】
次に、添付の図9〜18を参照しながら、上記投写型映像表示装置において採用される、特に、投写型映像表示装置の投写距離を極力短縮するため、傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズのうち投写面に最も近い位置に配置されたレンズは映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは台形形状として不要光を遮蔽し光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置することで短距離から斜めに拡大して投写する短距離投写の傾斜投写光学系について説明する。
【0042】
<短距離投写の傾斜投写光学系>
まず、添付の図9は、上記投写光学系の基本的な構成を示す断面図であり、当該光学系の構成をXYZ直交座標系におけるYZ断面で示している。ここで、投写光学系の説明の都合上、映像表示面である液晶パネル122とクロスプリズム111を右側に、投写面を左側にとして表示する。本実施例は図27(a)(b)に示したレンズデータに対応したもので、最も投写面に近い位置に配置されたレンズL17はプラスチックの非球面レンズ形状であり映像光束が通過するレンズの有効領域が傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズにより共有される光軸11を含まない位置に配置することで画面周辺において結像する光束をL17のレンズ形状単独で制御可能となり傾斜投写によって発生する台形歪みや超広角化に伴う収差(特に高次のコマ収差や非点収差)の補正を実現している。またL17のレンズ形状は映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは映像光束が通過する領域に合わせた台形形状とすることで結像性能を低下させる不要光を遮蔽する効果もある。さらに、前述のL17の外形形状を光軸11に対称な円形状としないことで小型化が可能となりこの結果、本実施例の傾斜投写光学系を投写型映像表示装置の筐体内に収納した場合でもL17の外形を投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅内に収めることが可能となると同時に前述のL17の外形中心が筐体の投写面に対向する面の中心線より上に位置することで外観上のバランスが良好となりデザイン性を大幅に向上できる。
【0043】
尚、図9においてはL17のみレンズ形状を映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは映像光束が通過する領域に合わせた台形形状(同図では断面形状を図示)とするとして示したが、本発明の傾斜投写光学系を実現するレンズ構成においては、図15に示すようにL14、L15などのレンズについても映像光束が通過しない領域が存在するのでこの領域を除いてレンズ外形形状を決定すれば光軸に対称な従来のレンズ外形形状に対して小型化が可能となり、この光学系を備えた投写型映像表示装置の小型・軽量化には有効となる。
【0044】
一方、L3とL11もプラスチック製の非球面レンズであるがそれぞれのレンズが、映像光束が通過するレンズの有効領域が傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズにより共有される光軸11を含んだ位置に配置されているため光軸11に対して対称な非球面形状としている。本実施例の傾斜投写光学系を実現するための投写レンズはガラス14枚、プラスチック3枚の17枚構成で4部品(B1、B2、B3、B4)構成のレンズ鏡筒により保持固定される。なお、投写距離を変更して拡大率を変化させた場合は前述した鏡筒B3に対する鏡筒B4の相対位置を変化させることでフォーカス調整が可能となる。
【0045】
図10から図15に示した実施例では、XYZ直交座標系の原点は、照明光束を映像信号により変調することで映像を表示する液晶パネル122の表示画面の中央とし、Z軸は映像表示用液晶パネル122(図示せず)の法線と平行であるものとする。Y軸は映像表示用液晶パネル122(図示せず)の表示画面の短辺と平行であり、映像表示用液晶パネル122(図示せず)の縦(上下)方向と等しいものとする。X軸は、映像表示用液晶パネル122(図示せず)の表示画面の長辺と平行であり、映像表示用液晶パネル122の横(左右)方向と等しいものとする。また、添付の図10は投写型映像表示装置を構成する傾斜投写光学系の実施例としての投写レンズの斜視図であり、図10は投写レンズに光路の折り曲げ用の平面ミラーを省略して示した断面図である。
【0046】
本発明の第一の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズの断面図を図12に示し、この時のとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータを図25(a)に非球面系に関するデータを図25(b)に示す。また第二の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズの断面図を図13に示し、この時のとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータを図26(a)に非球面系に関するデータを図26(b)に示す。同様に第三の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズの断面図を図14に示し、この時のとり得るレンズデータのうち球面系に関するデータを図27(a)に非球面系に関するデータを図27(b)に示す。
【0047】
それぞれのレンズデータにおいて、図10及び図11に示した投写距離L0、L1と映像表示位置の光軸からのシフト量S1及び映像の垂直方向サイズDvを纏めると次のようになる。
【0048】
L0(mm) Dv(mm) S1(mm)
60“ 投写時 実施例1 650.1 747.1 186.8
60“ 投写時 実施例2 651.3 747.1 186.8
60“ 投写時 実施例3 650.0 747.1 186.8
80“ 投写時 実施例1 885.6 996.1 249.0
80“ 投写時 実施例2 885.6 996.1 249.0
80“ 投写時 実施例3 882.4 996.1 249.0
100“投写時 実施例1 1011.7 1245.0 331.3
100“投写時 実施例2 1011.9 1245.0 331.3
100“投写時 実施例3 1011.8 1245.0 331.3
本発明で得られる傾斜投写光学系を実現する投写レンズは上記のように映像の垂直方向サイズDvに対してシフト量S1を20%以上とすることが可能となる。また投写画面寸法D(mm)と投写距離L0(mm)の比D/L0は一般的な投写型映像表示装置の場合、60インチ投写で画面寸法1524(mm)と投写距離1800(mm)でありこの比D/L0は0.85となる。更に短いものでも投写距離1000(mm)程度でありこの比D/L0は1.52となるが、本発明の傾斜投写光学系では、上述したようにD/Lが2.0以上でも実現可能となり、実施例では2.34が実現できている。
【0049】
一方、本発明によれば図11に示すように光路折り返し用平面ミラーを備えた投写型映像表示装置をも実現できる。試作の結果、最も投写面に近い位置に配置されたレンズと平面ミラーの間隔が約150mmとなるので図11に示すL1は上記L0に対して150mm程度短縮される。また、セット奥行き350mmとすれば平面ミラーで光を折り返した場合には本発明の投写型映像表示装置から投写面までの距離は前記L0に対して500mm短縮され、少ない設置スペースで大画面が得られることやプレゼンターが投写型映像表示装置の映像光を直接見ることが無くなる等大きなメリットとなる。
【0050】
続いて本発明の実施例としての傾斜投写光学系を実現する投写レンズの収差補正のメカニズムとレンズデータの具体的な読み方について図12に示す構成の実施例1の投写レンズについて図25(a)(b)に示すレンズデータを用いて説明する。全体としては3群構成のレンズで投写面(スクリーン)側から順にL16からL12が第3群を構成し、L16からL13が全て凹レンズとしてテレセントリックな構成とし同時に倍率色収差を低減するためにL12をアッベ数の小さい硝材を用いた凸レンズを配置している。さらに、L16を図16に示すように傾斜投写光学系を構成する複数枚のレンズにより共有される光軸11を含まない位置に配置することで、画面周辺において結像する光束をL16のレンズ形状単独で制御することが可能な強い非球面形状として、傾斜投写によって発生する台形歪みや超広角化に伴う収差(特に高次のコマ収差や非点収差)の補正を実現している。この時、L16のレンズ外形形状は前述した理由により光軸に対称な円形状とする必要が無く、映像表示面有効領域の縦横比(アスペクト比)とほぼ等しい長方形もしくは映像光束が通過する領域に合わせた台形形状とすることが出来る。このため、結像性能を低下させる不要光を遮蔽する効果もある。さらに、前述のL16の外形形状を光軸11に対称な円形状としないことで小型化が可能となりこの結果、本実施例の傾斜投写光学系を投写型映像表示装置の筐体内に収納した場合でもL16の外形を投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅内に収めることが可能となると同時に前述のL16の外形中心が筐体の投写面に対向する面の中心線より上に位置することで外観上のバランスが良好となりデザイン性を大幅に向上できる。
【0051】
また、L11からL9が第2群を構成し、L11が弱い負の屈折力を有する強い非球面形状を有するレンズで光軸から離れた場所を通過し光軸に略平行な光束により発生する球面収差や低次のコマ収差を補正し、L10及びL9は正の屈折力を有するガラスレンズ投写レンズの屈折力の一部を分担しかつL9が投写面(スクリーン)側に凸のメニスカス形状としてコマ収差と非点収差の発生を押えている。
【0052】
最後に、L8からL1が第1群を構成し、L8とL7のダブレットレンズとL6からL4のトリプレットレンズに負の屈折力を持たせる事でより強いテレセントリック性を持たせている。さらに、L3を強い非球面形状を有するレンズとして光軸から離れた場所を通過し光軸に斜めな光束により発生する輪帯コマ収差を補正することで、投写レンズ全体として傾斜投写しても歪みを抑えかつ良好なフォーカス性能を実現した。図13及び図14に示した本発明のその他の実施例の投写レンズは図12のL15をそれぞれL15とL16に分割し収差補正能力を向上したもので図12の非球面レンズL16が図13及び図14ではL17に置換されただけで得られる効果や投写光学系の構成は同じである。
【0053】
次に、以上述べた傾斜投写光学系について、図25(a)(b)、図26(a)(b)、図27(a)(b)を用いて、その具体的な数値を例示しながら説明する。まず、図12は図25(a)(b)に示した、数値例に基づく本実施の形態に係わる投写光学系の構成を示しており、前述したXYZ直交座標において、図12はYZ断面での構成を示している。本発明の映像投射装置には図1から図6に示したように光路折り曲げミラー(図示せず)を配置した構成も実現可能であるが、説明の都合上、図7及び図8に示す光路折り曲げミラーが無いことを念頭に説明する。図12の投写光学系の構成図はZ軸方向に展開して示しており、このことは図13から図15でも同様である。
【0054】
上記図12の光軸11より下側に示した映像表示面(実施例としては液晶パネルとした)P0から射出した光は、複数のレンズを含む投写レンズのうち、まず、回転対称形状の面のみを有するレンズのみで構成される第1群及び第2群を通過する。そして、レンズ外形中心に対しては回転非対称な非球面レンズL16を含む第3群を通過し投写面に拡大投写される。
【0055】
ここで、投写レンズの第1群及び第2群は、全て回転対称な形状の屈折面を持つ複数のレンズで構成されており、各屈折面のうち4つの面は回転対称な非球面であり、他は球面である。ここに用いられた回転対称な非球面は、各面ごとのローカルな円筒座標系を用いて、図25(b)の式(1)で表される。ここで、rは光軸からの距離であり、Zはレンズ面形状のサグ量を表している。また、cは頂点での曲率、kは円錐定数、AからJはrのべき乗の項の係数である。
【0056】
また、図25(a)には各面の曲率半径を記載している。図25(a)の中で面の左側に曲率の中心がある場合は正の値で、逆の場合は負の値で表わしている。また図25(a)において面間距離は、そのレンズ面の頂点から次のレンズ面の頂点までの距離を示す。あるレンズ面に対して、次のレンズ面が図25(a)の中で左側に位置するときには面間距離は正の値、右側に位置する場合は負の値で表している。さらに、図25(a)において面番号(9)、面番号(10)、面番号(23)、面番号(24)、面番号(33)、面番号(34)は光軸に回転対称な非球面であり、図25(a)では表中面の番号の横に非球面と記載して分かり易く示している。
【0057】
これら6つ面の非球面の係数を以下の図25(b)に示している。
【0058】
上記の図25(b)の表から、本実施の形態では、コーニック係数kが0となっていることがわかる。斜め入射による台形歪は、斜め入射の方向に極端に大きく発生し、これと垂直な方向に歪量は小さい。従って、斜め入射の方向とこれに垂直な方向とでは、大幅に異なる機能が必要であり、回転対称で全方向に機能する上記コーニック係数kを利用しないことにより、非対称な収差を良好に補正することができる。
【0059】
なお、上記図25(a)及び図25(b)の表中に示した数値は、映像表示面である液晶パネルの画面上に16×9のアスペクト比で対角0.59インチの範囲の光変調された光学像(調光像)を投写面であるスクリーンに対角60インチ、80インチ、100インチに拡大投写した場合に取り得る値を記載しておりそれずれのサイズの拡大像で最適フォーカス性能を得るためにレンズ間隔(30)と(34)の値が図25(b)の下表の面間隔の値となるようにL15及びL16を光軸に平行に移動させると良い。
【0060】
図26(a)(b)及び、図27(a)(b)に記載したレンズデータも同様なフォーマットで記載している。
【0061】
本数値実施例1の図25(a)(b)に記載したレンズデータで80インチに拡大投写した投写像のスポット形状を図16に、本数値実施例2の図26(a)(b)に記載したレンズデータで80インチに拡大投写した投写像のスポット形状を図17に、更に本数値実施例3の図27(a)(b)に記載のレンズデータで80インチに拡大投写した投写像のスポット形状を図18に示す。図16では、映像表示面である液晶パネルの表示画面上、X,Y座標の値で、(0,3.67)、(−6.53,3.67)、(−3.92,2.20)、(0.0,0.0)、(0,0)、(−6.53、0.0)、(−3.92、−2.20)、(0、−3.67)(−5.53,−3.67)(−5.22,−3.67)(−5.22,3.67)の10点から射出した光束のスポットダイアグラムを、その下から順に示しており、そのスケールの単位は5mmである。また、各スポットダイアグラムの横方向は、映像表示面である液晶パネル上でのX方向であり、縦方向は映像表示面である液晶パネル上でのY方向である。図17及び図18に示したスポットダイアグラムも映像表示面である液晶パネルの表示画面上、X,Y座標で同様の値の点から光束により得られたもので良好な性能を維持していることが分かる。
【0062】
以上、本発明の投写型映像表示装置を実現する傾斜投写光学系の実施例について詳細に述べた。なお、上記の例では、投写レンズから出射された光線は光路折り返し用の平面ミラーで折り返されて映像表示面である液晶パネルに向かうようにも構成されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、投写レンズの配置位置によっては、上記した折り返し用の平面ミラーを省略してもよいことは言うまでもない。
【0063】
次に、本発明の投写型映像表示装置に用いる照明光学系の実施例を図19を用いて説明する。図19において、光源101は、ランプ98と、リフレクタ99とからなる。このランプ98は、高圧水銀ランプの白色ランプである。また、リフレクタ99は、ランプ98を背後側から覆うように配置された、例えば、回転放物面形状の反射面を有するものであり、円形又は多角形の出射開口を有している。そして、このランプ98から射出された光は、回転放物面形状の反射面を有するリフレクタ99によって反射され、光軸115に略平行となり、光源101から略平行の光束が射出される。光源101から射出された光は、マルチレンズ方式のインテグレータに入射する。
【0064】
上述したように、マルチレンズ方式インテグレータ103は、第1のマルチレンズ素子103aと第2のマルチレンズ素子103bとから構成されている。なお、第1のマルチレンズ103aのレンズセル形状は、光軸115方向から見て液晶パネル112a、112b、112cとほぼ相似な矩形形状を有しており、複数のレンズセルがマトリックス状に配設されて形成されたものであり、光源から入射した光を複数のレンズセルで複数の光に分割し、もって、効率よく第2のマルチレンズ素子103bと偏光変換素子104を通過するように導く。すなわち、第1のマルチレンズ素子103aは、ランプ98と第2のマルチレンズ素子103bの各レンズセルとが光学的に共役な関係になるように設計されている。
【0065】
第2のマルチレンズ素子103bのレンズセル形状は、第1のマルチレンズ素子103aと同様に、光軸115方向から見て矩形形状であり、かつ、複数のレンズセルがマトリクス状に配設された構成を有しており、当該レンズ素子を構成するレンズセルは、それぞれ、対応する第1のマルチレンズ素子121のレンズセル形状を、重畳レンズ108a,108b,108cと共に液晶パネル122a,122b,122c上に投影(写像)する。そして、この過程で、偏光変換素子104の働きによって、第2のマルチレンズ素子103bからの光は所定の偏光方向に揃えられる。同時に、第1のマルチレンズ素子103aの各レンズセルによる投影像は、それぞれ、重畳レンズ108a,108b,108cの働きにより重畳され、もって、それぞれに対応した液晶パネル112a、112b、112c上の光量分布が一様となる。
【0066】
本発明の傾斜投写光学系を構成する複数レンズの内で投写面に最も近い位置に配置されたレンズはプラスチック製で光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置されこのプラスチックレンズは投写光学系を構成する最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状とする。成形金型の加工は図20に示すように多軸加工機を使用し図21(a)に示すようにワークである金型を回転させバイトで切削し所望のレンズ形状に対応した金型形状を得る方式と同図(b)に示したようにワークを固定しバイトを回転させてながら必要な金型形状を加工する方式があるが、(a)に比べ(b)の方式で鏡面を得ようとすると切削時間は約10〜20倍必要となる。(b)の方式は回転非対称な自由曲面の加工に優位であり(a)の方式は回転対称な非球面形状の加工を短時間で行うのに適している。
【0067】
本発明の傾斜投写光学系を構成する複数レンズの内で投写面に最も近い位置に配置されたレンズはプラスチック製で光束が通過する映像垂直方向有効領域が前述した複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置されこのプラスチックレンズは投写光学系を構成する最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状とすることで成形金型加工を行うのに前述した図20(a)に示すように多軸加工機でワークである金型を回転させバイトで切削し所望のレンズ形状に対応した金型形状を得る方式が採用でき短い加工時間で金型加工が可能となり開発コストを抑えることが可能となる。
【0068】
この時、例えば図20(a)で示した多軸加工機のC軸を回転軸として金型を加工する場合には本願発明によれば複数個同時に加工することが可能となり、例えば2個同時に加工する場合には図22に示すように回転軸に対称に2つの金型(ワーク)を配置すると加工時の切削バランスが良く高精度に所望の金型形状を得ることが可能となる。更に図23には4つの金型を同時に加工する場合の最適な配置を示しているが、奇数個同時の場合でも回転角(360度)を同時加工する金型数量で除した角度ずらして配置することで同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0069】
以上述べた本発明の傾斜投写光学系において投写面に最も近い位置に配置されたレンズの外形形状は、例えば図24に示したような長方形形状となるこの時、レンズ有効面の外形形状を基にした中心軸に対しては軸非対称なレンズ面形状となるが上述した傾斜投写光学系を構成する最多面のレンズにより共有された光軸に対しては対称な非球面形状となっている。
【符号の説明】
【0070】
1a…投写型映像表示装置の上部筐体1、2…平面ミラー固定枠、3…映像光束、4…固定部、5…平面ミラー回転機構、6…固定部1、7…固定部2、8…平面ミラー移動機構、9…投写型映像表示装置の下部筐体、11…光軸、R1…上限光、R2…下限光、θ1…ミラーの仰角、θ2…投写型映像表示装置の仰角、1b…投写型映像表示装置の上部筐体2、L17…プラスチックレンズ、L1…レンズ、L2…レンズ、L3…レンズ、L4…レンズ、L5…レンズ、L6…レンズ、L7…レンズ、L8…レンズ、L9…レンズ、L10…レンズ、L11…レンズ、L12…レンズ、L13…レンズ、L14…レンズ、L15…レンズ、L16…レンズ、98…管球、99…リフレクタ、101…光源、102…紫外線カットフィルタ、103…マルチレンズ方式インテグレータ、103a…第1のマルチレンズ素子、103b…第2のマルチレンズ素子、104…偏光変換素子、115…光軸、116a,116b,116c,116d…ミラー、117a,117b…ダイクロイックミラー、108a,108b,108c…重畳レンズ、105,109,110…フィールドレンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系において、
該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、かつ該光軸に対して軸非対称な形状を有し
前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと前記投写面までの間隔をLとし、投写画面の対角寸法をDとした場合に下記の関係式を満足することを特徴とする傾斜投写光学系。
2.0<D/L
【請求項2】
前記請求項1に記載の傾斜投写光学系において、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し平面ミラーが配置され、該投写面に最も近い位置に配置されたレンズの画面垂直方向有効領域上端が、該平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端より上部に位置し、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有することを特徴とする請求項1に記載の傾斜投写光学系。
【請求項3】
前記請求項2に記載の傾斜投写光学系において、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有するとともに該仰角を可変可能とする回転調整機構を設けたことを特徴とする請求項2に記載の傾斜投写光学系。
【請求項4】
前記請求項2及び請求項3に記載の傾斜投写光学系において、前記平面ミラーを、前記最多数のレンズにより共有される光軸に沿って移動可能とする平面ミラー移動機構を設けたことを特徴とする傾斜投写光学系。
【請求項5】
映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系で、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置し、かつその形状はレンズ有効面の中心軸に対して軸非対称な形状を有したレンズにより構成され、
前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズは前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状であることを特徴とした傾斜投写光学系。
【請求項6】
前記請求項5に記載の傾斜投写光学系において、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返しの平面ミラーが配置され、該投写面に最も近い位置に配置されたレンズの画面垂直方向有効領域上端が、該平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端より上部に位置し、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有することを特徴とする請求項5に記載の傾斜投写光学系。
【請求項7】
前記請求項6に記載の傾斜投写光学系において、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有するとともに該仰角を可変可能とする回転調整機構を設けたことを特徴とする請求項6に記載の傾斜投写光学系。
【請求項8】
前記請求項6及び請求項7に記載の傾斜投写光学系において、前記平面ミラーを、前記最多数のレンズにより共有される光軸に沿って移動可能とする平面ミラー移動機構を設けたことを特徴とする傾斜投写光学系。
【請求項9】
投写型映像表示装置であって、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、前記投写型映像表示装置を形成する筐体の投写面に対向する面の画面垂直方向最大幅に収納されたことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項10】
投写型映像表示装置であって、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し平面ミラーを配置し、
前記平面ミラーは前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して所定の角度を持って配置した場合には前記平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示面方向に拡大映像が得られるように構成したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項11】
投写型映像表示装置であって、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し平面ミラーを配置し、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を設け、
前記平面ミラーを前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して所定の角度を持って配置した第一の状態においては前記平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示面方向に得られる構成をなし、他方前記平面ミラーを投写型映像表示装置に収納した第二の状態においては、前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を延長した方向に拡大映像が得られるように構成したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項12】
前記請求項10及び請求項11に記載の投写型映像表示装置であって、前記傾斜投写光学系は前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し平面ミラーを配置し、該投写面に最も近い位置に配置されたレンズの画面垂直方向有効領域上端が、該平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端より上部に位置する構成したことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項13】
前記請求項10及び請求項12に記載の投写型映像表示装置であって、
前記傾斜投写光学系に配設した前記平面ミラーを、前記最多数のレンズにより共有される光軸に沿って移動可能とした移動機構を設けたことを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項14】
前記請求項10及び請求項13に記載の投写型映像表示装置であって、
前記傾斜投写光学系に配設した前記平面ミラーには、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を設け、該平面ミラーの回転角を検知する手段を有するとともに、検出した回転角に応じて投影映像の画面歪みを自動的に補正する映像補正機能を有することを特徴とした投写型映像表示装置。
【請求項15】
投写型映像表示装置において映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置し、かつその形状はレンズ有効面の中心軸に対して軸非対称な形状を有したレンズにより構成され前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズは前記最多面のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状であることを特徴とした傾斜投写光学系を用いた投写型映像表示装置。
【請求項16】
前記請求項15に記載の投写型映像表示装置において、映像表示面に表示された映像を投写面に拡大投写する傾斜投写光学系であって、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し用の平面ミラーが配置され、該投写面に最も近い位置に配置されたレンズの画面垂直方向有効領域上端が、該平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端より上部に位置し、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有することを特徴とする投写型映像表示装置。
【請求項17】
前記請求項15に記載の投写型映像表示装置において、映像表示面に表示された映像を投写面に拡大投写する傾斜投写光学系であって、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し用の平面ミラーが配置され、該投写面に最も近い位置に配置されたレンズの画面垂直方向有効領域上端が、該平面ミラーの画面垂直方向有効領域下端より上部に位置し、前記平面ミラーは、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して所定の仰角を有するとともに該仰角を可変可能とする回転調整機構を設けたことを特徴とする傾斜投写光学系を備えてより成る投写型映像表示装置。
【請求項18】
前記請求項15乃至請求項17に記載の投写型映像表示装置であって、
前記傾斜投写光学系に配設した前記平面ミラーには、前記最多数のレンズにより共有される光軸に対して角度可変可能な回転調整機構を設け、該平面ミラーの回転角を検知する手段を有するとともに、検出した回転角に応じて投影映像の画面歪みを自動的に補正する映像補正機能を有することを特徴とした投写型映像表示装置。
【請求項19】
前記請求項15及び請求項16に記載の傾斜投写光学系において、前記平面ミラーを、前記最多数のレンズにより共有される光軸に沿って移動可能とする平面ミラー移動機構を設けたことを特徴とする傾斜投写光学系を備えてより成る投写光学装置。
【請求項20】
投写型映像表示装置であって、映像表示面に表示された映像を投写面に斜めに拡大して投写する傾斜投写光学系を有し、該傾斜投写光学系は複数のレンズで構成され投写面に最も近い位置に配置されたレンズは、光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、前記投写面に最も近い位置に配置されたレンズと投写面の間に光路折り返し平面ミラーを配置し、
前記平面ミラーは前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して所定の角度θ1を持って配置した場合には前記平面ミラーで折り返された映像光束により得られる拡大映像は前記映像表示面方向に拡大映像が得られるように構成し、前記投写型映像表示装置は該拡大映像と略垂直な基準平面に対してθ2傾けて配置しかつ前記θ1とθ2は下記の関係を満足する事を特徴とする投写型映像表示装置。
1.5≦θ2/θ1≦2.5
【請求項21】
複数のレンズで構成され映像表示面に表示された映像を投写面に拡大して投写する傾斜投写光学系に用いるプラスチックレンズであって、該プラスチックレンズは投写面に最も近い位置に配置され、かつ光束が通過する映像垂直方向有効領域が前記複数レンズの光軸のうちで最多数のレンズにより共有される光軸を含まない位置に配置され、かつ該プラスチックレンズは前記最多数のレンズにより共有された光軸に対して対称な非球面形状の一部分を切り取った形状であり成形金型加工を行なうのに前記最多数のレンズにより共有された光軸に対称となるように複数個の成形金型を配置して切削加工することを特徴とした金型加工方法。
【請求項22】
請求項21に記載の加工法により切削された金型を使用し成形されたプラスチックレンズを少なくと1枚使用した傾斜投写光学系。
【請求項23】
請求項21に記載の加工法により切削された金型を使用し成形されたプラスチックレンズを少なくと1枚使用した傾斜投写光学系を備えてより成る投写光学装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25(a)】
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【図25(b)】
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【図26(a)】
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【図26(b)】
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【図27(a)】
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【図27(b)】
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【公開番号】特開2012−118547(P2012−118547A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−4630(P2012−4630)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2009−2124(P2009−2124)の分割
【原出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】