説明

優れた加工性、耐熱性、及び耐食性を有するプレコート鋼板用樹脂組成物、並びにこれを用いて製造されたプレコート鋼板

本発明は、向上した加工性、耐熱性、及び優れた耐食性を有するプレコート鋼板用樹脂組成物、並びにこれを用いて製造されたプレコート鋼板に関するものである。より具体的には、主剤樹脂100重量部を基準として、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネート及びメラミン樹脂からなる硬化剤10〜40重量部と、有機化された層状ナノクレイ0.1〜10重量部とを含むプレコート鋼板用樹脂組成物、並びに前記組成物を用いるプレコート鋼板の製造方法に関するものであり、これにより得られたプレコート鋼板は、優れた加工性、耐熱性、及び耐食性を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレコート鋼板用樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて製造された、加工性、耐熱性、及び耐食性に優れたプレコート鋼板に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼社で製造された冷延鋼板は自動車車体及び部品用素材に多く使用されているが、自動車部品社では冷延鋼板を所望の部品形状に加工した後にクロメート塗装処理を施して自動車部品を製造してきた。ところが、クロメート塗装に関する環境規制により代替物のクロムフリー溶液を使用するようになり、高価なクロムフリー溶液を用いた塗装はコスト上昇を招いた。
【0003】
亜鉛又は亜鉛系合金メッキ鋼板上に樹脂をコーティングした様々な鋼板製品が既に開発されているが、既存の様々な樹脂が塗布された鋼板は、部品の深絞り加工時、鋼板と樹脂との密着力を確保することが難しく、深絞り加工後、耐食性を確保することが難しい。
【0004】
従って、予め塗装が施されており、加工性、耐熱性、及び耐食性に優れた、いわゆるプレコート鋼板の開発が求められている。
【0005】
プレコート鋼板の物性は、前処理層と樹脂層の界面の物性に大きく影響されるが、鋼板の上部層である前記樹脂層は、水や酸素などの腐食因子の鋼板への浸透を防止して耐食性を向上させる役割を果たす。耐食性が確保されないと、安全が最優先される自動車用部品の腐食を引き起こし、誤作動及び事故の危険性が大きくなるため、耐食性の確保は重要である。
【0006】
さらに、プレコート鋼板は、部品製造時に加工が施されるため、成形後も樹脂が剥離する現象が発生しないように加工性に優れていなければならない。これは、樹脂が剥離すると、前述のような腐食因子の鋼板への浸透が容易になり、これにより腐食が促進され、耐食性の確保が不可能になるからである。これに加えて、美観上よくない製品が作られるからである。つまり、樹脂層と前処理層との密着力は加工性の面でも非常に重要である。
【0007】
一方、ナノクレイを含む組成物に関する先行技術として、特許文献1には、クレイを用いた腐食防止用コーティング剤組成物に関するものが開示されているが、本発明の構成とは異なり、エチレンアクリル酸共重合体及び2つ以上のアミン基を有する硬化剤を主成分とする腐食防止用コーティング剤を組成とする。また、そのコーティング剤を鋼板にコーティングする方法について言及されておらず、本発明の目的である加工性についても記述されておらず、そのコーティング剤を鋼板に使用する上で困難があった。
【0008】
また、特許文献2には、エポキシ樹脂、アミン系官能基を有する硬化剤5〜80重量部、及び超音波により分散した有機粘土を含む組成物を用いて腐食防止効果を奏する技術が開示されているが、本発明とは異なり、硬化剤としてアミン系化合物を使用し、前記組成物を鋼板の表面コーティングに適用することについては何ら記載されていない。
【0009】
さらに、特許文献3には、導電性の向上を目的とする、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ワックス、高分子−クレイナノ複合体、及び金属粉末から構成されるプレシールド鋼板用樹脂組成物が開示されているが、本発明とは異なり、前記組成物は、優れた溶接性を提供することを目的とし、また硬化剤としてメラミンを単独で使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】大韓民国特許出願公開第2005−0117333号明細書(特許出願第2004−0042622号)
【特許文献2】大韓民国特許出願公開第2007−0050709号明細書(特許出願第2005−0108255号)
【特許文献3】大韓民国特許出願公開第2005−63979号明細書(特許出願第2003−0095238号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、優れた加工性、耐熱性、及び耐食性を有するプレコート鋼板用樹脂組成物、並びに前記樹脂組成物を用いて製造されたプレコート鋼板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第1実現例として、エピクロロヒドリンとビスフェノールAから製造されたエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、又はこれらの混合物である有機溶媒に分散可能な主剤樹脂100重量部を基準として、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートとメラミン樹脂を重量比2:1〜3:1で含む硬化剤10〜40重量部と、有機化された層状ナノクレイ0.1〜10重量部とを含むプレコート鋼板用樹脂組成物を提供する。
【0013】
本発明は、第2実現例として、前記エポキシ樹脂は、数平均分子量が2,500〜10,000のエポキシ樹脂であり、前記フェノキシ樹脂は、数平均分子量が2,500〜50,000のフェノキシ樹脂である、プレコート鋼板用樹脂組成物を提供する。
【0014】
本発明は、第3実現例として、前記有機溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、及びアミンからなる群から選択される1種以上である、プレコート鋼板用樹脂組成物を提供する。
【0015】
本発明は、第4実現例として、前記有機化された層状ナノクレイは、炭素数14〜20のアミン系クレイ、末端が水酸基(OH−)、ベンジル基(benzyl−)、又はメチル基(methyl−)で置換されたタローアンモニウムクレイ(tallow ammonium clay)、末端がアミン基で置換されたポリオキシメチレンクレイ、又はこれらの混合物から選択されるものである、プレコート鋼板用樹脂組成物を提供する。
【0016】
本発明は、第5実現例として、前記主剤樹脂の含量を基準として、シリカ20〜40重量部と、ワックス5〜30重量部とをさらに含むプレコート鋼板用樹脂組成物を提供する。
【0017】
本発明は、第6実現例として、前記樹脂組成物で形成された樹脂被膜を含むプレコート鋼板を提供する。
【0018】
本発明は、第7実現例として、前記樹脂被膜は、1〜15μmの乾燥被膜厚さを有するものである、プレコート鋼板を提供する。
【0019】
本発明は、第8実現例として、前記樹脂被膜は、クロムフリー被膜、物理もしくは化学蒸着されたSiOx層、又はリン酸塩処理層のいずれか1つの表面処理層上に形成されたものである、プレコート鋼板を提供する。
【発明の効果】
【0020】
クロムフリー被膜処理、物理もしくは化学蒸着されたSiOx層処理、又はリン酸塩処理のいずれか1つが施された亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系合金メッキ鋼板、ステンレス、冷延鋼板のいずれか1つの鋼板に、本発明の樹脂組成物を本発明の処理条件で付着量100〜2,000mg/mとなるように被覆することにより、優れた耐熱性、耐食性、加工性、印刷性を示す自動車部品用であって塗装が省略された鋼板としての使用に適している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
プレコート鋼板に要求される加工性、耐熱性、耐食性などの物性を確保するためには、前処理層と樹脂層との密着力の確保が求められる。そこで、本発明は、主剤樹脂として、極性基であるエピクロロヒドリンとビスフェノールAから合成した有機溶媒に分散したエポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂から選択される1種以上からなる樹脂を使用した。これは、エポキシ及びフェノキシの極性基は、鋼板表面の酸化層と反応を起こして密着力を確保できるからである。
【0023】
前記エピクロロヒドリンとビスフェノールAから合成した有機溶媒に分散したエポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂から選択される1種以上からなる主剤樹脂としては、数平均分子量が2,500〜10,000のエポキシ樹脂、又は数平均分子量が2,500〜50,000のフェノキシ樹脂を使用することができる。エポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂の数平均分子量が2,500未満の場合は、架橋密度が非常に高いため加工性に不利であり、加工後に耐食性が劣る。一方、フェノキシ樹脂は、エポキシ樹脂に比べて高価であり、高分子量でエポキシ樹脂より優れた溶液安定性と物性を示すため、数平均分子量が25,000以上の場合がより好ましい。エポキシ樹脂の数平均分子量が10,000を超えるか、又はフェノキシ樹脂の数平均分子量が50,000を超える場合は、塗膜の緻密性が低下して耐食性が劣ることはもちろん、組成物の粘度が上昇して均一な被覆が難しくなり、生産作業性が低下し、生産設備の清掃費用が増加して製造コストが上昇するため、前記分子量範囲を有することが好ましい。
【0024】
前記主剤樹脂は、有機溶媒に分散していることが好ましい。前記有機溶媒としては、アルコール、ケトン、エーテル、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、又はアミンが挙げられる。前記主剤樹脂であるエポキシ樹脂又はフェノキシ樹脂は、分子量が大きくなるほど疎水性も増大し、疎水性の前記主剤樹脂を溶解させるためには、反応基がある前記有機溶媒を使用することが好ましい。
【0025】
本発明の組成物では、硬化剤として、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートとメラミン樹脂を混合して使用することが好ましい。エンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートとメラミン樹脂を混合して使用することにより、優れた加工性、耐熱性、及び耐食性を達成することができる。
【0026】
ここで、前記硬化剤は、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートとメラミンを重量比で2:1〜3:1の割合で混合することが好ましい。メラミンの含量が前記範囲より少ない場合は、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートの含量が相対的に増加して、軟性が過剰となって硬度などの物性が低下し、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートの含量が前記範囲より少ない場合は、軟性が不足して加工時に樹脂被膜が剥離する問題が発生するため、優れた加工性を発揮することができない。従って、硬化剤を前記範囲内で混合して使用することにより、優れた加工性、耐熱性、溶液安定性、及び耐食性を有する表面処理組成物を得ることができる。
【0027】
前記硬化剤は、前記主剤樹脂100重量部を基準として、10〜40重量部の含量で含むことが好ましい。前記硬化剤の含量が10重量部未満であれば、塗膜の硬化反応が不十分になることで所望の物性を確保することが困難になり、40重量部を超えれば、追加添加による硬化反応増大効果が得られないだけでなく、多量投入された硬化剤はむしろ溶液安定性と樹脂被膜の物性を低下させる恐れがあるため、前記範囲内の硬化剤を含むことが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物は、加工性、耐熱性、及び耐食性を増加させるために、有機化された層状ナノクレイを含む。前記有機化された層状ナノクレイを含む場合、軟性が増加して加工時に樹脂被膜が剥離しないため、燃料フィルタなどの複雑な形状を有する自動車部品の深絞り加工時にも優れた加工性を発揮し、前記深絞り加工後も樹脂と鋼板との優れた密着力を維持できるため、所望の耐食性を維持することができる。
【0029】
前記有機化された層状ナノクレイは、前記主剤樹脂100重量部を基準として、0.1〜10重量部の範囲で含むことが好ましい。前記有機化された層状ナノクレイの含量が0.1重量部未満であれば、加工性及び耐食性の向上効果が得られず、10重量部を超えれば、ナノクレイの凝集現象によりむしろ延伸効果が低下して加工後に樹脂密着力が低下し、これにより、加工後に耐食性が低下するため、好ましくない。
【0030】
また、前記有機化された層状ナノクレイは、無機物であって、有機物である高分子樹脂に添加することが、耐熱性の向上に有利である。前記有機化された層状ナノクレイは、炭素数14〜20のアミン系クレイ、末端が水酸基(OH−)、ベンジル基(benzyl−)、又はメチル基(methyl−)で置換されたタローアンモニウムクレイ(tallow ammonium clay)、及び末端がアミン基で置換されたポリオキシメチレンクレイからなる群から選択してもよい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、耐食性を向上させるために、選択的にシリカを添加してもよく、前記シリカとしては、コロイド状のシリカを添加することが、溶液分散性に有利である。ここで、前記シリカの含量は、前記主剤樹脂100重量部を基準として、20〜40重量部添加することが好ましく、20重量部未満であれば、所望の耐食性の向上効果が得られず、40重量部を超えれば、シリカが部分的に凝集して密着力が低下するという問題がある。
【0032】
さらに、本発明の樹脂組成物は、鋼板の潤滑性を向上させるために、選択的にワックスを添加してもよい。前記ワックスとしては、ポリオレフィン系、カルナバ系、テフロン(登録商標)系、及びシリコン系など、様々な種類のワックスを使用してもよいが、少量投入しても優れた効果を発揮するテフロン(登録商標)系ワックスを使用することがより好ましい。前記テフロン(登録商標)系ワックスは、前記エポキシ樹脂に対して5〜30重量部添加される。含量が5重量部未満であれば、潤滑性能の向上が不足し、深絞り加工時に樹脂被膜の損傷を十分に防止するさらなる効果を発揮できず、30重量部を超えれば、印刷性の確保が困難であるため、好ましくない。
【0033】
本発明の樹脂組成物が被覆される鋼板としては、特に限定されないが、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系合金メッキ鋼板、ステンレス、冷延鋼板などが挙げられる。
【0034】
以下、前記樹脂組成物を用いたプレコート樹脂被覆鋼板の製造方法について詳細に説明する。
【0035】
本発明の方法は、鋼板上に付着量100〜2,000mg/mで表面処理層を形成する段階と、本発明の樹脂組成物を乾燥被膜厚さ1〜15μmで塗布し、焼き付け、冷却する段階とを含む。
【0036】
前記表面処理層は、本発明の属する技術分野で通常行われる表面処理法であれば特に限定されないが、具体的には、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛系合金メッキ鋼板、ステンレス、冷延鋼板などの鋼板上に、クロムフリー被膜処理、物理もしくは化学蒸着されたSiOx層処理、又はリン酸塩処理などを施して形成してもよい。これにより形成された表面処理層の付着量は、乾燥被膜に対して100〜2,000mg/mであってもよい。
【0037】
前記表面処理された鋼板上に、前記本発明の樹脂組成物を乾燥被膜厚さが1.0〜15.0μmとなるように塗布する。乾燥被膜厚さが1.0μm未満であれば、耐食性などの物性が低下し、15.0μmを超えれば、加工後に樹脂の一部が脱落してモールドに吸着することで加工性が悪くなり、生産コストが上昇するという問題がある。
【0038】
前記樹脂組成物が塗布された鋼板を160〜260℃の温度範囲で焼き付ける。ここで、焼付温度が160℃未満であれば、樹脂の硬化反応が不十分であるため塗膜の物性が低下し、260℃を超えれば、素地鋼板の材質上の変化とともに硬化反応が進まなくなって熱量のみ消費し、むしろ過硬化して加工時に塗膜の剥離を促進させるため、好ましくない。
【0039】
焼き付け後、水冷又は空冷などの通常の方法で冷却することにより、プレコート鋼板が製造される。
【0040】
本発明による方法で製造されたプレコート樹脂被覆鋼板は、加工性、耐熱性、及び耐食性に優れたものであり、加工後に塗装過程を必要としないため、耐食性及び耐熱性が要求されるオイルフィルタ、燃料フィルタ、モータカバーなどの自動車部品に使用することができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
主剤として、下記表1に記載されたような数平均分子量(Mn)を有するメトキシプロパノールに分散した株式会社汎宇社製のエポキシ樹脂とフェノキシ樹脂を使用し、硬化剤として、Bayerのdesmodur BL3272 MPAのポリイソシアネート及びcymel325のメラミン樹脂を混合して使用するか、又はメラミン樹脂を単独で使用し、そして、有機化された層状ナノクレイとして、Southern Clay Products社のClosite 30Bを使用した。配合含量は下記表1に示す通りであり、特に断らない限り、本実施例で各成分の含量単位は重量部を示す。発明例1〜25及び比較例1〜14の樹脂組成物を製造した後、耐食性、耐熱性、溶液安定性、及び加工性を評価した。
【0043】
下記表1に記載された発明例1〜25及び比較例1〜14の組成で樹脂組成物を製造し、前記樹脂組成物を常温で放置し、30日経過後に前記樹脂組成物内にゲルが形成されたか否かを観察して、溶液安定性を評価した。
□:ゲルが形成された場合
○:部分的に固まる現象が発生した場合
◎:ゲルが形成されていない場合
【0044】
耐食性、耐熱性、及び加工性を評価するために鋼板に適用して試片を製造し、試片に形成された樹脂コーティングを評価した。
【0045】
厚さ1.2mmの鋼板に40g/mのメッキ付着量で亜鉛合金メッキを施し、500〜1,000mg/mの付着量でクロムフリー処理を施して形成した亜鉛合金電気メッキ鋼板上に、下記表1に記載されたような発明例1〜21及び比較例1〜19の樹脂組成物をそれぞれ8.0μmの乾燥被膜厚さとなるようにバーコータを用いて塗布し、230℃の鋼板温度で焼き付けた後に水冷することにより、樹脂被覆鋼板試片を製造した。
【0046】
加工性は、樹脂被覆鋼板を直径120mmに切断し、P340洗浄油を塗布してブランクホールド力(BHF)0.5tonで高さ80mmに加工した後、透明スコッチテープ(3M社製)を用いて深絞り加工された樹脂被覆鋼板の剥離度を測定した。評価基準は次の通りである。
◎:テープ面積に対して5%以下の剥離
○:テープ面積に対して5〜15%の剥離
□:テープ面積に対して15〜30%の剥離
△:テープ面積に対して30%以上の剥離
×:加工時に鋼板が切れる
【0047】
耐食性は、前記加工された試片に35℃、5%の塩水を塩水噴霧試験機(Salt Spray Tester;SST)により噴霧した後、経過時間による白錆及び赤錆発生時間を測定して腐食状態を調べた。評価基準は次の通りである。
◎:500時間以上で赤錆発生
○:300〜500時間の範囲内で赤錆発生
□:100〜300時間の範囲内で赤錆発生、200時間以内で白錆発生
△:100〜300時間の範囲内で赤錆発生、100時間以内で白錆発生
×:100時間未満で赤錆発生、72時間以内で白錆発生
【0048】
耐熱性は、色差を測定した後に170℃のオーブンに入れて1時間後の色差変化で測定した。評価基準は次の通りである。
◎:色差(処理前の色差に対して)0.1〜0.3
○:色差(処理前の色差に対して)0.3〜0.6
□:色差(処理前の色差に対して)0.6〜1.0
△:色差(処理前の色差に対して)1.0〜1.5
×:色差(処理前の色差に対して)1.5以上
【0049】
【表1】

【0050】
主剤樹脂の含量は100重量部であり、発明例20及び21で、エポキシ樹脂の数平均分子量(Mn)は6,000であり、フェノキシ樹脂の数平均分子量は30,000である。
【0051】
実施例2
実施例1の結果に基づき、メトキシプロパノールに分散した株式会社汎宇社製の分子量6,000のエポキシ主剤樹脂100重量部に、硬化剤として、エンドキャップされたブロック化ポリイソシアネート(Bayerのdesmodur BL3272 MPA)とメラミン樹脂が2:1で混合された硬化剤25重量部(Bayerのdesmodur BL3272 MPA)、及び有機化された層状ナノクレイ(Southern Clay Products、30B)3重量部を混合した後、ワックス(Shamrock、フルオロスリップ421)及びシリカ(日産ケミカルスノーテックス、ST−PS−M)を下記表2に記載されたように追加したことを除いては、実施例1と同様の方法で実施し、前記ワックス及びシリカの含量変化による樹脂組成物の物性変化を測定した。
【0052】
【表2】

【0053】
上記表2に記載されたように、樹脂組成物にシリカ20〜40重量部及びワックス5〜30重量部を添加した場合、上記表1による耐食性、耐熱性、及び加工性の物性がさらに向上したことを確認できる。
【0054】
実施例3
実施例2の発明例28による組成物で樹脂コーティング層を形成する場合、焼付温度及び乾燥塗膜厚さの変化によるコーティング層の物性を評価した。
【0055】
実施例1と同様の方法で厚さ1.2mmの鋼板に片面40g/mのメッキ付着量で亜鉛メッキを施し、500〜1,000mg/mの付着量でクロムフリー処理を施した亜鉛合金電気メッキ鋼板である素地鋼板上に、下記表3に示すような焼付温度及び乾燥塗膜厚さで樹脂コーティングした後、各比較材及び発明材の耐熱性、加工性、及び耐食性を評価した。
【0056】
【表3】

【0057】
上記表3から分かるように、焼付温度160℃未満ではもちろん、260℃を超えた場合も、耐食性、耐熱性、及び加工性が不十分であった。また、被膜厚さが1μm未満であるか又は15μmを超えた場合は、耐食性、耐熱性、及び加工性が劣ることが分かる。
【0058】
従って、本発明の組成物を鋼板に被覆する際、160℃〜260℃の焼付温度で1μm〜15μmの被膜厚さで塗布することが最も好ましいことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロロヒドリンとビスフェノールAから合成されたエポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、又はこれらの混合物である有機溶媒に分散可能な主剤樹脂100重量部を基準として、末端がエンドキャップされたブロック化ポリイソシアネートとメラミン樹脂を重量比2:1〜3:1で含む硬化剤10〜40重量部と、有機化された層状ナノクレイ0.1〜10重量部とを含む、プレコート鋼板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、数平均分子量が2,500〜10,000のエポキシ樹脂であり、前記フェノキシ樹脂は、数平均分子量が2,500〜50,000のフェノキシ樹脂である、請求項1に記載のプレコート鋼板用樹脂組成物。
【請求項3】
前記有機溶媒は、アルコール、ケトン、エーテル、芳香族化合物、脂肪族炭化水素、及びアミンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のプレコート鋼板用樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機化された層状ナノクレイは、炭素数14〜20のアミン系クレイ、末端が水酸基(OH−)、ベンジル基(benzyl−)、又はメチル基(methyl−)で置換されたタローアンモニウムクレイ(tallow ammonium clay)、末端がアミン基で置換されたポリオキシメチレンクレイ、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載のプレコート鋼板用樹脂組成物。
【請求項5】
前記主剤樹脂の含量を基準として、シリカ20〜40重量部と、ワックス5〜30重量部とをさらに含む、請求項1に記載のプレコート鋼板用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂被膜を含む、プレコート鋼板。
【請求項7】
前記樹脂被膜は、1〜15μmの乾燥被膜厚さを有するものである、請求項6に記載のプレコート鋼板。
【請求項8】
前記樹脂被膜は、クロムフリー被膜、物理もしくは化学蒸着されたSiOx層、又はリン酸塩処理層である表面処理層上に形成されたものである、請求項6に記載のプレコート鋼板。


【公表番号】特表2011−523431(P2011−523431A)
【公表日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−509417(P2011−509417)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002569
【国際公開番号】WO2009/139590
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(592000691)ポスコ (130)
【Fターム(参考)】