説明

充電制御装置

【課題】車載充電器等の経時変化および充電中のバッテリー等の状態変化に起因する劣化や充電時間の増加を抑えることができる充電制御装置を提供する。
【解決手段】出力電流、出力電力および出力電圧の少なくともいずれか一つの目標値を設定する目標値設定部13aと、目標値に従って充電が行われるように車載充電器2を制御する充電器制御手段11と、バッテリーの特性値の時間変化を予測した予測値を設定する予測値設定部13bと、予測値と車載充電器2、バッテリーユニット3、車両制御ユニット4等で測定したバッテリー特性値の実測値との偏差を算出する偏差算出部13cと、偏差が小さくなるように目標値を補正するための補正値を設定する補正値設定部13dと、補正値を記録する記録手段12と、を備え、充電前に記録手段12に記録されている補正値を反映させた目標値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電制御装置に関し、特に電気自動車等の電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器の制御状態を切り替える充電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、充電制御装置は、充電を開始してからバッテリーの電圧が所定の電圧値になるまで、またはバッテリーの充電量が所定の値になるまでは定電流制御による充電が行われ、所定の電圧値(充電量)を超えてからは車載充電器の出力電圧を徐々に増加させるとともに出力電流を徐々に低下させる定電力制御による充電が行われ、その後、充電が終了するまでは出力電流を徐々に低下させる定電圧制御による充電が行われるように車載充電器の制御状態を切り替えている。
【0003】
上記のように車載充電器の制御状態を切り替える充電制御装置としては、入力電流が所定値を超えないように車載充電器を制御するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−240001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の充電制御装置では、入力電流に基づいて車載充電器を制御しているので、例えば、充電中にバッテリーの温度が過度に上昇したり、出力電流が急激に変動したりしても、すぐに出力電流を増減させることができなかった。
【0006】
さらに、長期間の使用で車載充電器やその周辺部材が劣化することが分かっていても、劣化による出力電流等の増減量が分からないため、充電を行うたびに出力電流等を一から調整するしかなかった。
これらの理由により、上記特許文献1に記載の充電制御装置では、バッテリーが劣化したり、充電時間が増加したりしてしまうという問題が生じていた。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、車載充電器等の経時変化および充電中のバッテリー等の状態変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を防ぐことができる充電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電制御装置は、電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器の充電状態を制御する充電制御装置であって、
車載充電器が出力する出力電流、出力電力および出力電圧の少なくともいずれか一つの目標値を設定する目標値設定部と、目標値に従って充電が行われるように車載充電器を制御する充電器制御手段と、バッテリーの特性値の時間変化を予測した予測値を設定する予測値設定部と、予測値と車載充電器、バッテリーユニット、車両制御ユニット等で測定した特性値の実測値との偏差を算出する偏差算出部と、偏差が小さくなるように目標値を補正するための補正値を設定する補正値設定部と、少なくともバッテリーの充電終了時における補正値を記録する記録手段と、を備え、
車載充電器によるバッテリーの充電前に、記録手段に記録されている補正値を反映させた目標値を設定することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、記録手段に補正値が記録されている場合、目標値設定部によりこの補正値を反映させた目標値が設定されるので、経時変化により車載充電器等が劣化して出力電流等が増減したとしても、増減した分を考慮した出力電流等を車載充電器に出力させることができる。これにより、車載充電器等の経時変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を防ぐことができる。
【0010】
上記目標値設定部は、バッテリーの充電中に補正値が設定された場合、補正値を反映させた目標値を改めて設定することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、バッテリーの充電中に補正値が設定されると、目標値設定部によりこの補正値に基づいて目標値が補正されるので、出力電流等をこの補正値に応じて増減させることができる。これにより、充電中のバッテリー等の状態変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を防ぐことができる。
【0012】
上記目標値設定部は、車載充電器による定電流制御、定電力制御、定電圧制御の制御状態毎に目標値を設定し、上記記録手段は、制御状態毎に設定された補正値を1つずつ記録するように構成してもよい。
また、上記目標値設定部は、出力電流の積算電流値が所定値増加する毎に目標値を設定し、上記記録手段は、出力電流の積算電流値が所定値増加する毎に設定された複数の目標値に対応して設定された複数の補正値を記録するように構成してもよい。
さらに、上記目標値設定部は、バッテリーの充電量が所定値増加する毎に目標値を設定し、上記記録手段は、バッテリーの充電量が所定値増加する毎に設定された複数の目標値に対応して設定された複数の補正値を記録するように構成してもよい。
【0013】
これらの構成によれば、目標値設定部により車載充電器の制御状態毎や、出力電流の積算電流値が所定値増加する毎に目標値が設定されるので、車載充電器等の経時変化および充電中のバッテリー等の状態変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加をより確実に防ぐことができる。
【0014】
上記偏差算出部は、出力電流の積算電流値が所定値増える毎に偏差を算出し、上記補正値設定部は、算出された偏差があらかじめ設定された閾値以上となることが一定回数続いた場合に、閾値以上となった偏差の全部または一部に基づいて補正値を設定するように構成してもよい。
【0015】
この構成によれば、補正値設定部により、偏差があらかじめ設定された閾値以上となることが一定回数続いた場合に補正値が設定されるので、ノイズ等の影響で偏差が偶然閾値以上となり、補正値が誤って設定されてしまうのを防ぐことができる。
【0016】
複数回の充電が行われた後に新たな充電が行われる場合、上記目標値設定部は、複数回の充電により記録された補正値の全部または一部の相加平均値または相重平均値を反映させた目標値を設定することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、複数回の充電により記録された補正値を平均化した目標値が設定されるので、経時変化により増減した出力電流等をより正確に反映させた目標値を設定することができる。
【0018】
なお、本明細書における「バッテリーの特性値」とは、充電が進むにつれて変化していくバッテリーに関する値であって、例えば、バッテリーの温度、電圧、充電量を含むものとする。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、少なくとも充電が1回終わるたびに記録手段に補正値が記録され、次回の充電開始時に、この補正値を反映させた目標値が目標値設定部により設定される。
このため、経時変化により車載充電器やその周辺部材が劣化して車載充電器の出力電流等が増減したとしても、増減した分を考慮した出力電流等を車載充電器に出力させることができる。
さらに、バッテリーの充電中であっても、補正値設定部により目標値の補正値が設定されると、この補正値に基づいて目標値設定部により目標値が補正されるので、出力電流等をこの補正値に応じて増減させることができる。
【0020】
したがって、本発明によれば、車載充電器等の経時変化および充電中のバッテリー等の状態変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を防ぐことができる充電制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る充電制御装置を用いた充電システムの構成を示すブロック図である。
【図2】バッテリーの特性値に関するマップを示す図である。
【図3】補正値と偏差との関係を説明するための図である。
【図4】目標値を設定するためのステップを示すフローチャートである。
【図5】充電履歴情報に含まれる補正値の一例を示す図である。
【図6】バッテリーの温度と温度係数の関係を示す図である。
【図7】図4に示すフローで設定された目標値を補正しながら充電を行うためのステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明に係る充電制御装置の好ましい実施形態について説明する。
【0023】
[充電制御装置の構成]
図1に示すように、本発明に係る充電制御装置1は、車載充電器2と、バッテリーおよびバッテリー制御ユニット(EV−BCU)からなるバッテリーユニット3とともに電動車内の充電システム10を構成している。また、充電制御装置1、車載充電器2、バッテリーユニット3、および車両制御ユニット(EV−ECU)4は、CAN通信ラインを介して相互に通信可能に接続されている。
【0024】
バッテリーは、給電ステーション等に設置されている設置型充電器(不図示)によって充電されるか、電動車内の車載充電器2によって充電される。車載充電器2は、家庭用電源5から供給される低電圧(例えば、AC100V)の交流電力を、高電圧(例えば、DC400V)の直流電力に変換してバッテリーに供給する。
【0025】
また、車載充電器2は、バッテリーの電圧または充電量(SOC)が所定値になるまで定電流制御による充電を行い、所定値を超えると出力電圧を徐々に増加させるとともに出力電流を徐々に低下させる定電力制御による充電を行い、その後、充電終了まで出力電流を徐々に低下させる定電圧制御による充電を行う。
定電流制御から定電力制御への制御状態の切り替え、および定電力制御から定電圧制御への制御状態の切り替えは、充電制御装置1の制御下で行われる。
【0026】
充電制御装置1は、充電器制御手段11と、記録手段12と、処理部13とを備え、処理部13は、目標値設定部13aと、予測値設定部13bと、偏差算出部13cと、補正値設定部13dと、を備えている。
【0027】
充電制御装置1では、少なくとも充電終了後に、後述する補正値を含む充電履歴情報が記録手段12に記録され、次回の充電開始時に、記録された充電履歴情報に含まれる補正値を反映させた目標値が目標値設定部13aにより設定される。
また、充電システム10では、目標値設定部13aにより設定された目標値に従って車載充電器2が充電を行うが、充電中に補正値設定部13dにより補正値が設定されると、この補正値に基づき、目標値設定部13aにより目標値が補正され、補正後の目標値に従って車載充電器2が充電を行う。
【0028】
目標値は、車載充電器2に出力させる出力電流、出力電力および出力電圧の少なくともいずれか一つの値であり、充電開始時に目標値設定部13aにより設定される。
この目標値は、例えば、車載充電器2による定電流制御、定電力制御、定電圧制御の制御状態毎に各1つ設定されてもよく、出力電流の積算電流値が所定値増加する毎、またはバッテリーのSOCが所定値増加する毎に複数設定されてもよい。
目標値設定部13aにより目標値が設定されると、この目標値に従って充電が行われるように充電器制御手段11により車載充電器2が制御される。
【0029】
充電開始時の目標値は、車両制御ユニット4からの指令と、あらかじめ記録手段12に記録されているバッテリーの特性値に関するテーブルや図2に示すようなマップに基づいて設定される。
この目標値は、充電履歴情報に含まれる補正値(図5参照)や、バッテリーの温度またはバッテリー付近の温度に基づく温度係数(図6参照)が反映されるように設定される。
【0030】
また、充電開始時の目標値は、充電開始後に補正値設定部13dにより補正値が設定されると、目標値設定部13aにより補正され、充電中に変化していく。
【0031】
補正値は、バッテリーの特性値の時間変化を予測した予測値と車載充電器2、バッテリーユニット3、車両制御ユニット4等で測定した実測値との偏差が小さくなるように目標値を補正するためのものであり、充電開始時および充電中に補正値設定部13dにより設定される。
予測値は、あらかじめ記録手段12に記録されているバッテリーの電圧、SOC、温度等の特性値に関するテーブルに基づいて予測値設定部13bにより設定され、予測値と実測値との偏差は、出力電流の積算電流値が所定値増加したり、SOCが所定値増加したり、所定時間経過したりするタイミングで偏差算出部13cにより算出される。
【0032】
具体的には、充電中に設定される補正値は、偏差があらかじめ設定された閾値以上となった場合や、偏差があらかじめ設定された閾値以上となることが一定回数続いた場合に、閾値以上となった偏差の全部または一部に基づいて設定される。
例えば、図3に示すように、バッテリーの電圧の予測値と実測値から補正値が設定される条件として、閾値を±0.5V、一定回数を5回に設定すると、偏差算出部13cにより算出された偏差が0.5V以上となる回数が5回続いた場合(判定3〜7)に、これらの5つの偏差のうち、直近の2つ(判定6、7)の偏差の比と、記録手段12に記録されている補正値(記録されていない場合はデフォルト値)に基づいて新たな補正値が設定される。
図3の場合、記録手段12に記録されている補正値が3.8、直近の2つ(判定6、7)の偏差の比が1.125となるため、これらを乗算した新たな補正値は、3.8×1.125=4.275となる。
【0033】
補正値は、バッテリーの充電終了時および車載充電器2の制御状態の切り替え時や、バッテリーのSOCがあらかじめ設定された値(例えば、80%)に達した時に、充電履歴情報として記録手段12に記録される。
【0034】
また、複数回の充電が行われた後に新たな充電が行われる場合、目標値に反映される補正値は、記録手段12に記録されている補正値の全部または直近の一部の補正値の相加平均(または相乗平均)をとることにより算出される(図5参照)。
相乗平均の場合は、直近の補正値ほど重みが大きくなるように設定される。
なお、記録手段12に補正値が記録されていない場合(例えば、初回の充電の場合)、補正値が設定されないか、あるいは、デフォルト値が補正値として設定される。
【0035】
上記のように、本発明に係る充電制御装置1では、少なくとも充電が1回終わるたびに記録手段12に補正値が記録され、次回の充電開始時に、この補正値を反映させた目標値が目標値設定部13aにより設定される。
このため、経時変化により車載充電器2やその周辺部材が劣化して車載充電器2の出力電流等が増減したとしても、増減した分を考慮した出力電流等を車載充電器2に出力させることができる。これにより、車載充電器2等の経時変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を抑えることができる。
【0036】
さらに、本発明に係る充電制御装置1では、バッテリーの充電中に、補正値設定部13dにより目標値の補正値が設定され、目標値設定部13aによりこの補正値に基づいて目標値が補正されるため、出力電流等をこの補正値に応じて増減させることができる。これにより、充電中のバッテリー等の状態変化に起因するバッテリーの劣化や充電時間の増加を抑えることができる。
【0037】
[充電制御フロー]
次に、本発明に係る充電制御装置1の充電制御フローの具体的な一例について説明する。なお、このフローにおいて、目標値は出力電流の値が設定されるものとし、補正値はバッテリーの電圧の予測値と実測値との偏差に基づいて算出されるものとする。
【0038】
充電制御フローには、図4に示すように、目標値を設定するためのステップ(S1〜S5)と、図7に示すように、設定された目標値を補正しながら充電を行うためのステップ(S6〜S18)とが含まれている。
【0039】
目標値を設定するためのステップ(S1〜S5)では、まず、車両制御ユニット(EV−ECU)4からの指令とあらかじめ記録手段12に記録されているマップ(図2参照)とに基づいて、出力電流の暫定目標値(目標値A)が設定される(S1)。図2に示すマップによれば、バッテリーの容量とSOCから目標値Aとなる出力電流の値を求めることができる。
【0040】
目標値Aが設定されると、記録手段12に充電履歴情報が記録されているかどうかの確認が行われる(S2)。記録手段12に充電履歴情報が記録されていることが確認されると(ステップS2でYES)、充電履歴情報に含まれている直近5回分の補正値の読み出しが行われる(S3)。
図5に示すように、直近5回分の補正値は、新しいもの(n−1)から順に3.0%、4.0%、3.0%、6.0%、9.0%となっているため、これらの相加平均から算出された5.0%が補正値として設定される(S4)。
勿論、履歴にある、補正値の相乗平均から補正値を設定してもよい。
補正値が設定されると、この補正値に基づいて目標値Aが補正され、新たな目標値(目標値B=目標値A×1.05)が設定される(S5)。
【0041】
一方、記録手段12に充電履歴情報が記録されているかどうかの確認で(S2)、充電履歴情報が記録されていないことが確認されるか、または充電履歴情報の数、すなわち過去の充電回数が補正値の計算に必要な数(5回)に満たない場合は(ステップS2でNO)、目標値Aがそのまま目標値Bとして設定される(S5)。
【0042】
なお、目標値Bは、図6に示すテーブルから求められる温度係数を乗算することによって、さらに補正される。例えば、バッテリーの温度が50℃の場合は、目標値Aにさらに温度係数1.2を乗算したものが目標値Bとなる。図6に示す温度と温度係数との関係は、バッテリーの特性値や車載充電器2の仕様等により決定される。
【0043】
続いて、図7に示すように、設定された目標値を補正しながら充電を行うためのステップ(S6〜S18)では、まず、あらかじめ記録手段12に記録されているバッテリーの電圧の時間変化の予測値(プロファイル)が予測値設定部13bにより設定される(S6)。
予測値設定部13bは、バッテリーの特性情報(SOC、電圧、温度等)をテーブルとして所持しておき、該テーブルを参照することで、時間変化(理論値に基づく経時変化)を予測する。
【0044】
予測値が設定されると、充電器制御手段11の制御下で目標値Bに従ってバッテリーの充電が開始される(S7)。バッテリーの充電が開始されると、充電器制御手段11により充電を継続させるか終了させるかの判断が行われる(S8)。
バッテリーのSOCが所定値(例えば、98%)より大きくなった場合や、定電圧制御時におけるバッテリーの出力電流が所定値よりも小さくなった場合には、充電を終了させる判断が行われる。
【0045】
充電器制御手段11により充電を継続させる判断が行われると、偏差算出部13cにより出力電流の積算電流値が所定値増加するタイミングで、図3に示すようにバッテリーの電圧の時間変化を予測した予測値と車載充電器2、バッテリーユニット3、車両制御ユニット4等で測定した実測値との偏差が算出される(S9)。
算出された偏差は、記録手段12に記録され(S10)、充電終了時に消去される。
【0046】
偏差が記録されると、補正値設定部13dにより新たな補正値の設定が必要かどうかの判断が行われる(S11)。この判断は、バッテリーの電圧の時間変化を予測した予測値と実測値との偏差が、所定の条件を満たしたかどうかによって行われる。
具体的には、図3に示すように、偏差算出部13cにより算出された偏差が0.5V以上となる回数が5回続いた場合(判定3〜7)に新たな補正値の設定が必要であるとの判断が行われ、補正値設定部13dにより直近の2つ(判定6、7)の偏差の比1.125と、記録手段12に記録されている補正値3.8とが乗算されて新たな補正値4.275が設定される(S12)。
【0047】
新たな補正値が設定されると(S12)、この新たな補正値(4.275)に基づいて目標値Bに替えて、新たな目標値(目標値C=A×1.04275(=目標値B×1.01125))が設定される(S13)。なお、新たな補正値が設定されなかった場合(ステップS11でNO)と新たな目標値が設定された場合(S13)のいずれの場合であっても、補正値が記録手段12に記録され(S14、S15)、充電終了時にのみ補正値を記録する場合はS14、S15は省略される。
【0048】
目標値Cが設定された場合は(S13)、目標値Cに基づいて再びバッテリーの電圧の予測値が設定され(S6)、新たな補正値が設定されなかった場合は(ステップS11でNO)、目標値Bのまま充電が継続される。
【0049】
そして、充電が継続されて定電圧制御時におけるバッテリーの出力電流が所定値よりも小さくなるか、バッテリーのSOCが所定値より大きくなると、充電を終了させる判断が行われ(S8でNO)、充電器制御手段11により充電が終了され(S16)、充電終了時に設定されている補正値が記録手段12に記録される(S17)。記録された補正値は、次回の充電時に設定される目標値(目標値B)に反映される。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0051】
例えば、新たな補正値が設定される場合(S12)、新たな補正値は、偏差の比と記録手段12に記録されている最新の補正値(記録されていない場合はデフォルト値)に基づいて算出されるが、偏差の比に替えて、最小2乗法等により算出された偏差の傾きや、偏差の差に基づいて新たな補正値が算出されるようにしてもよい。
【0052】
さらに、バッテリーの特性値の時間変化を予測した予測値と実測値との偏差が所定の条件を満たした場合(S11)に、新たな補正値が設定されるが(S12)、この新たな補正値が設定されるための条件は、車載充電器2の制御状態毎やSOCの範囲毎に、変更されるようにしてもよい。
【0053】
車載充電器2の制御状態毎に条件を変更する場合、定電流制御時は高速な充電を行うために出力電流の目標値を増やす補正値のみが設定されるようにし、定電力制御時はバッテリーの過度な温度上昇を抑えるために新たな補正値が設定されないか、あるいは出力電流の目標値を減少させる補正値のみが設定されるようにしてもよい。
【0054】
一方、SOCの範囲毎に条件を変更する場合、一定距離の走行が可能なSOC(例えば、80%)の範囲では上記実施形態と同様の条件とし、その範囲を超えると、バッテリーの温度上昇を抑え、負荷を減らすために、新たな補正値が設定されないように変更してもよい。
【0055】
また、記録手段12に充電履歴情報が記録されていると、充電開始時に充電履歴情報に含まれている補正値を反映させた目標値が設定されるが(S5)、補正値を反映させるかどうかの判断をユーザが任意に選択できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 充電制御装置
2 車載充電器
3 バッテリーユニット
4 車両制御ユニット
5 家庭用電源
10 充電システム
11 充電器制御手段
12 記録手段
13 処理部
13a 目標値設定部
13b 予測値設定部
13c 偏差算出部
13d 補正値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車に搭載されたバッテリーを充電する車載充電器の充電状態を制御する充電制御装置であって、
前記車載充電器が出力する出力電流、出力電力および出力電圧の少なくともいずれか一つの目標値を設定する目標値設定部と、
前記目標値に従って充電が行われるように前記車載充電器を制御する充電器制御手段と、
前記バッテリーの特性値の時間変化を予測した予測値を設定する予測値設定部と、
前記予測値と前記バッテリー特性値の実測値との偏差を算出する偏差算出部と、
前記偏差が小さくなるように前記目標値を補正するための補正値を設定する補正値設定部と、
少なくとも前記バッテリーの充電終了時における前記補正値を記録する記録手段と、を備え、
前記車載充電器による前記バッテリーの充電前に、前記記録手段に記録されている前記補正値を反映させた前記目標値を設定することを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
前記目標値設定部は、前記バッテリーの充電中に前記補正値が設定された場合、前記補正値を反映させた目標値を改めて設定することを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記目標値設定部は、前記車載充電器による定電流制御、定電力制御、定電圧制御の制御状態毎に前記目標値を設定し、
前記記録手段は、前記制御状態毎に設定された前記補正値を1つずつ記録することを特徴とする請求項1または2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記目標値設定部は、前記出力電流の積算電流値が所定値増加する毎に前記目標値を設定し、
前記記録手段は、前記出力電流の積算電流値が所定値増加する毎に設定された複数の前記目標値に対応して設定された複数の前記補正値を記録することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記目標値設定部は、前記バッテリーの充電量が所定値増加する毎に前記目標値を設定し、
前記記録手段は、前記バッテリーの充電量が所定値増加する毎に設定された複数の前記目標値に対応して設定された複数の前記補正値を記録することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項6】
前記偏差算出部は、前記出力電流の積算電流値が所定値増える毎に前記偏差を算出し、
前記補正値設定部は、算出された前記偏差があらかじめ設定された閾値以上となることが一定回数続いた場合に、前記閾値以上となった前記偏差の全部または一部に基づいて前記補正値を設定することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の充電制御装置。
【請求項7】
複数回の充電が行われた後に新たな充電が行われる場合、
前記目標値設定部は、
前記複数回の充電により記録された前記補正値の全部または一部の相加平均値または相乗平均値を反映させた前記目標値を設定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の充電制御装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−55051(P2012−55051A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194290(P2010−194290)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)
【Fターム(参考)】