充電用コネクタ
【課題】氷結によって解除操作に支障を来すことを回避する。
【解決手段】本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタ50と嵌合される充電用コネクタ10であって、車両側コネクタ50と嵌合可能なコネクタ嵌合部13が設けられたコネクタ本体11と、車両側コネクタ50に設けられたロック突部52と係止することにより、車両側コネクタ50とコネクタ嵌合部13を嵌合状態に保持するロック部22と、ロック部22とロック突部52との係止状態を解除可能な解除操作部23と、コネクタ本体11における解除操作部23と対応する位置に開設された解除孔16とを備え、解除操作部23は、解除孔16からコネクタ本体11の外部に突出する形態をなしており、解除操作部23において解除孔16の周縁と対向する位置には、凹部27が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【解決手段】本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタ50と嵌合される充電用コネクタ10であって、車両側コネクタ50と嵌合可能なコネクタ嵌合部13が設けられたコネクタ本体11と、車両側コネクタ50に設けられたロック突部52と係止することにより、車両側コネクタ50とコネクタ嵌合部13を嵌合状態に保持するロック部22と、ロック部22とロック突部52との係止状態を解除可能な解除操作部23と、コネクタ本体11における解除操作部23と対応する位置に開設された解除孔16とを備え、解除操作部23は、解除孔16からコネクタ本体11の外部に突出する形態をなしており、解除操作部23において解除孔16の周縁と対向する位置には、凹部27が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部を有し、このコネクタ嵌合部は、ケース体の前端開口部に設けられている。また、ケース体の内部には、前後方向に延びる形態をなすレバーが収容されており、レバー軸の前端側にロック部が設けられ、同後端側に解除操作部が設けられている。解除操作部は、ケース体に開設された解除孔からケース体の外部に突出する形態をなしている。
【0003】
充電するに際しては、充電用コネクタを車両側コネクタに嵌合し、この車両側コネクタに設けられたロック受け部とロック部を係止させることにより、両コネクタが嵌合状態に保持され、充電が行われる。また、充電完了後は、解除操作部を押し込んで、ロック部とロック受け部の係止状態を解除することにより、充電用コネクタを車両側コネクタから離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充電用コネクタは屋外で使用されることを前提としているため、解除孔の周縁と解除操作部の側面部との間に形成されたわずかな隙間に水が浸入すると、表面張力が作用することで水が隙間に滞留してしまう。そして、隙間に水が入り込んだ状態で氷結すると、氷結した氷の上に水滴が付着してさらに氷結することになる。こうして氷結を繰り返すことによって氷が積み重なり、レバーとケース体が強固に凍り付いた状態となって、解除操作に支障を来すおそれがある。かといって、氷を除去するには氷を砕いたり溶かしたりする必要があるため、氷を除去することは容易ではない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタであって、車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部が設けられたケース体と、車両側コネクタに設けられたロック受け部と係止することにより、車両側コネクタとコネクタ嵌合部を嵌合状態に保持するロック部と、ロック部とロック受け部との係止状態を解除可能な解除操作部と、ケース体における解除操作部と対応する位置に開設された解除孔とを備え、解除操作部は、解除孔からケース体の外部に突出する形態をなしており、解除操作部において解除孔の周縁と対向する位置には、凹部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、凹部から解除孔の周縁までの距離が、凹部を設けない場合よりも長くなるため、凹部に水が浸入しても表面張力が作用しにくく、水が凹部を通って下方に流れ落ちやすくなる。したがって、凹部に水が溜まることはなく、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
解除孔の周縁部には、解除操作部の側面部に対して傾斜面で連なる誘い込み部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、水が解除操作部の側面部から傾斜面を通って誘い込み部に流れやすくなる。したがって、凹部が設けられていない部分においても、水が解除操作部の側面部と解除孔の周縁との間に浸入することを回避できる。
【0010】
ケース体の内部に収容され、上面に解除操作部が突出して設けられたレバー軸を備え、レバー軸の上面における解除操作部の周囲に、下り勾配をなす排水部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、水が凹部を通ってレバー軸の上面に落ちてきた場合でも、この水を排水部によってレバー軸の下方に排水することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における充電用コネクタを斜め前方から見た斜視図
【図2】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの側面図
【図3】図2におけるA部を拡大して示した部分拡大図
【図4】図2におけるケース体の内部構造を示した図
【図5】解除操作部を押し込んだ状態を示す充電用コネクタの側面図
【図6】図6におけるケース体の内部構造を示した図
【図7】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの正面図
【図8】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの背面図
【図9】図2におけるB−B線断面図
【図10】図2におけるC−C線断面図
【図11】図2におけるD−D線断面図
【図12】図2におけるE−E線断面図
【図13】図5におけるF−F線断面図
【図14】実施形態におけるレバーを斜め後方から見た斜視図
【図15】レバーの平面図
【図16】レバーの側面図
【図17】レバーの底面図
【図18】レバーの正面図
【図19】図17におけるG−G線断面図
【図20】図16におけるH−H線断面図
【図21】図16におけるI−I線断面図
【図22】図16におけるJ−J線断面図
【図23】図16におけるK−K線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図23の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は全体としてピストル形状をなしており、図1に示すように、略前半部分を構成するコネクタ本体11と、このコネクタ本体11の後端部から斜め下方に延びるグリップ12とを備えて構成されている。コネクタ本体11とグリップ12は、いずれも合成樹脂製とされており、一体に成形されている。コネクタ本体11の前端部には、円筒状をなして前方に突出するコネクタ嵌合部13が設けられている。また、コネクタ本体11の内部には、図4に示すように、レバー20の主体部をなすレバー軸21が収容されている。なお、本発明の「ケース体」は、コネクタ本体11とグリップ12とに対応している。
【0014】
コネクタ嵌合部13は、コネクタ本体11とは別部材として形成されており、図示しない係止手段によってコネクタ本体11の前端部に固定されている。コネクタ嵌合部13の内部には、円筒状をなす複数の端子収容部14が設けられている。これらの端子収容部14は、コネクタ嵌合部13の奥壁から前方に突出して設けられている。端子収容部14の内部には、端子金具(図示せず)を収容するキャビティが形成されている。
【0015】
コネクタ嵌合部13の後方には、複数の電線Wが延出されている。これらの電線Wは、コネクタ本体11の内部を通ってグリップ12の内部に引き出され、グリップ12の内部で外部被覆に覆われて一本の電線W1に集約されている。電線W1は、グリップ12の内部において電線把持リングなどによって固定されており、さらにグリップ12の後端部でブッシュ40によって固定されている。
【0016】
ブッシュ40は、グリップ12の後端開口部の内周面と電線W1の外周面とに密着しているため、グリップ12の後端からグリップ12の内部に水が浸入することを規制している。なお、コネクタ本体11およびグリップ12の下面側には、複数の水抜き孔15が形成されているため、コネクタ本体11およびグリップ12の内部に水が浸入した場合でも、これらの水抜き孔15から外部に水を逃がすことができるようになっている。
【0017】
レバー20は、図14に示すように、前後方向に延びるレバー軸21を有しており、レバー軸21の前端部にロック部22が設けられている一方、レバー軸21の後端部に解除操作部23が設けられている。レバー軸21の前後方向におけるほぼ中央部には、コネクタ本体11の内部に軸支されるレバー回動中心部24が設けられており、このレバー回動中心部24を中心としてレバー軸21の前後両端部がシーソー状に傾動可能とされている。
【0018】
レバー軸21は、図16に示すように、レバー回動中心部24から前方に向けて水平姿勢で延出された後、やや斜め上方に延出され、再び水平姿勢となって延出されている一方、レバー回動中心部24から後方に向けて斜め下方に延出されている。このため、ロック部22は、解除操作部23よりも相対的に上方に配置されている。
【0019】
コネクタ本体11においてレバー20と対応する位置は、図7および図8に示すように、上方に膨出して形成されており、この膨出部の前端部は、保護壁11Aとされている。この保護壁11Aは、前方に張り出す形態で設けられている。レバー軸21の前端側は、ロック部22のみを露出させて保護壁11Aに覆われた状態とされる。これにより、充電用コネクタ10を誤って落下させた場合に、レバー軸21が破損することを規制できる。
【0020】
ロック部22は、レバー軸21の前端部における水平部分から上方に突出するヘッド部22Aと、同水平部分から下方に突出する係止部22Bとを備えて構成されている。係止部22Bは、下方に向かうほど後方に迫り出す形態をなす、いわゆるオーバーハング状に形成されている。これに伴って、係止部22Bと係止するロック突部52についても、図4に示すように、いわゆるオーバーハング状に形成されている。このため、係止部22Bとロック突部52が係止した状態で両コネクタ10,50を離脱させる方向に引っ張っても係止部22Bとロック突部52の係止状態が解除されることはない。なお、ロック突部52は、金属平板によって表面が覆われた状態で補強されている。
【0021】
ヘッド部22Aは、図18に示すように、上方に向かうほど幅広となるように形成されている。これは、充電用コネクタ10を誤って落下させてしまい、ヘッド部22Aが地面に直撃した場合であっても、その衝撃に耐えられる程度の強度を確保するためである。
【0022】
また、ヘッド部22Aの後面22Cは、図16に示すように、上方に向かうほど後方に迫り出す形態、すなわちオーバーハング状に形成されている。ロック部22は、図2に示すように、コネクタ本体11の前端開口(保護壁11A)から前方に露出されている。また、両コネクタ10,50が嵌合した状態では、コネクタ本体11の前端上部(保護壁11Aの前端)は、ヘッド部22Aの後面22Cに対してほぼ平行に配置され、コネクタ本体11の上面は、ヘッド部22Aの上面に対してほぼ面一に配置されている。
【0023】
ところで、車両側コネクタ50は、図7および図8を見ればわかるように、やや上向き姿勢で車体に取り付けられており、これに伴って車両側コネクタ50に嵌合される充電用コネクタ10はやや下向き姿勢となる。このため、ヘッド部22Aの後面22Cは、充電用コネクタ10を車両側コネクタ50に嵌合させた状態では、ほぼ鉛直方向に延びる垂直姿勢となる。換言すると、ヘッド部22Aの後面22Cは、両コネクタ10,50の嵌合方向に直交する面に対して上端側を車両側コネクタ50から離れる方向に変位させた姿勢とされている。
【0024】
嵌合状態においてヘッド部22Aの後面22Cがほぼ鉛直方向に延びる垂直姿勢となっているため、例えばヘッド部22Aに積もった雪が溶けて水となり、この水がヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aとの間に浸入した場合でも、水がヘッド部22Aの後面22Cに溜まることはなく、ヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aとの間が氷結し、ロック部22が解除不能となる事態を回避できる。
【0025】
解除操作部23は、図1および図2に示すように、コネクタ本体11の上面後部に開設された解除孔16から上方に突出する形態で露出されている。解除操作部23は、図16に示すように、レバー軸21の後端部において上方に突出する形態をなしている。解除操作部23は、斜め下方に延びる押圧面23Aを有している。解除操作部23の幅方向両側には、押圧面23Aの幅方向両側縁から下方に延びる一対の側面部23Bが設けられている。また、解除操作部23の後部には、押圧面23Aの後縁から下方に延びる後面部23Cが設けられている。なお、解除操作部23の下面部には、図17および図19に示すように、コイルばね60の上端が収容されるばね受け部25が設けられている。
【0026】
コネクタ本体11においてばね受け部25と上下方向に対向する位置には、図4に示すように、コイルばね60の下端を支持するばね装着部17が設けられている。コイルばね60は、ばね受け部25とばね装着部17との間で蓄勢状態で装着されており、このコイルばね60がレバー軸21の後端部を上方へ押し上げることで、常にはロック部22が図4に示す係止位置に付勢されている。一方、解除操作部23が下方に押し込まれると、相対的にロック部31が押し上げられて図6に示す解除位置に変位するようになっている。
【0027】
係止位置にあるレバー20は、図4に示すように、コネクタ本体11の内部におけるコネクタ嵌合部13の上側に設けられた衝撃吸収パッド61に接触している。このため、解除位置にて解除操作部23を離すと、コイルばね60のバネ力によってロック部22が解除位置から係止位置へ移動するものの、レバー軸21が衝撃吸収パッド61に衝突した際にその衝撃が吸収され、係止位置にてロック部22の移動が停止される。
【0028】
さて、本実施形態の充電用コネクタ10は、屋外で使用されることを前提としており、充電用コネクタ10を車両側コネクタ50に嵌合させて充電をしている際に、充電用コネクタ10に雨水が降りかかったり、あるいは、充電用コネクタ10に直接雪が積もったりする場合がある。この場合、特に寒冷地においては、ロック部22や解除操作部23に付着した水が氷結してしまい、解除操作に支障を来すおそれがある。
【0029】
例えばロック部22においては、ヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aの前面との間を通ってレバー軸21の上面に水が落ちてくることが考えられる。ここで、レバー軸21の上面に氷が付着すると、この氷が保護壁11Aの内壁と干渉しやすくなるため、ロック部22が係止位置から解除位置へ移動できなくなることになる。
【0030】
そこで、本実施形態では図16および図20に示すように、レバー軸21の上面における前端側(ロック部22側の端部)に導水部26を設けており、この導水部26に落ちてきた水をレバー軸21の下方にそのまま流し落とすようにしている。導水部26は、一対のテーパ面26Aによって構成されている。両テーパ面26Aは、導水部26の幅方向中央に配置された頂点部26Bから斜め下方に延びる下り勾配をなしており、左右対称に配置されている。
【0031】
一方、解除操作部23においては、例えば側面部23Bとこれに対向する解除孔16の周縁との間に水が浸入し、表面張力が作用して、側面部23Bと解除孔16の周縁との間に水が溜まることが考えられる。そして、側面部23Bと解除孔16の周縁との間に溜まった水が氷結すると、解除操作部23を押し込むことができなくなってしまう。この現象は、側面部23Bのみならず、後面部23Cおよび前面部23Dにおいても同様に起こり得る。
【0032】
そこで、解除操作部23の側面部23Bには、図14および図16に示すように、複数の凹部27が形成されている。凹部27は、解除孔16の周縁と対向する位置に設けられている。ここで、凹部27の上縁27Aは、ロック部22が係止位置にあるときに、解除孔16の周縁よりも上方となるように設定されている。凹部27から解除孔16の周縁までの距離は、側面部23Bから解除孔16の周縁までの距離よりも長くなるため、表面張力が作用しにくくなる。このため、水が凹部27を通って下方に流れやすくなり、凹部27で水が氷結し、解除操作に支障を来すおそれがない。同様にして、後面部23Cにも凹部27が形成されている。
【0033】
側面部23Bの凹部27は、前後方向に並んで一対配置されている。凹部27の周縁は、側面部23Bとほぼ直交する段差面として構成されている。このうち凹部27の前縁と後縁は、いずれも上下方向に延びる形態でかつ平行に配置されている。また、凹部27の上縁27Aは、解除操作部23の押圧面23Aにほぼ平行をなして後面部23Cへ向かって斜め下方に延びる形態とされている。一方、後面部23Cには凹部27が一つだけ設けられ、この凹部27の周縁も、後面部23Cとほぼ直交する段差面として構成されている。
【0034】
図19、図21、および図22に示すように、凹部27の上縁27Aは、段差面として構成されているため、仮に凹部27と解除孔16の周縁との間にわずかに氷が形成された場合でも、この氷をせん断によって破壊することができる。つまり、解除操作部23を押し込むと、図11および図13に示すように、凹部27の上縁27Aが解除孔16の内部に進入するため、凹部27の上縁27Aと解除孔16の周縁がせん断刃として作用することになる。これにより、仮に凹部27に氷が形成された場合であっても、この氷を凹部27の上縁27Aで容易に破断することができる。
【0035】
なお、解除操作部23の前面部23Dには、凹部27が形成されていない。この理由は、図16に示すように、レバー軸21と解除操作部23の前面部23Dが互いに対向してアンダーカット状に配置されており、解除操作部23の前面部23Dに凹部27を形成するのにスライド型が必要となり、金型構造が複雑となって金型費用が高くなるためである。したがって、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間に浸入した水は、そのままレバー軸21の上面に落としてやる必要がある。このため、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間隔は、表面張力が作用しにくい程度に設定されている。
【0036】
しかしながら、レバー軸21の上面に落ちた水がそのまま氷結すると、やはりレバー軸21の上面に形成された氷とコネクタ本体11の内壁が干渉することにより、解除操作に支障を来してしまう。そこで、レバー軸21の上面における解除操作部23の周囲には、排水部28が設けられている。この排水部28は、導水部26と同様の構成であって、一対のテーパ面28Aを備えている。両テーパ面28Aは、図23に示すように、排水部28の幅方向中央に配置された頂点部28Bから斜め下方に延びる下り勾配をなしており、左右対称に配置されている。これにより、図12に示すように、排水部28上に流れ落ちた水をレバー軸21の下方に排水することができる。
【0037】
これらに加えて、解除孔16の周縁部には、図4などに示すように、解除操作部23の側面部23Bに対して傾斜面18Aで連なる誘い込み部18が設けられている。本実施形態における傾斜面18Aは、その傾斜角度が急となる急斜面として構成されている。誘い込み部18は、解除孔16の周縁部の全周に亘って設けられている。解除操作部23の側面部23Bなどに水が付着した場合、この水が傾斜面18Aによって誘い込み部18側に誘い込まれやすくなる。したがって、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に水が浸入することを極力減らすことができるようになっている。
【0038】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、両コネクタ10,50を嵌合させると、ロック部22がロック突部52に乗り上げた状態となり、レバー20が傾動する。ここからさらに両コネクタ10,50を嵌合させると、図4に示すように、両コネクタ10,50が嵌合状態に至る。これと同時に、ロック部22がロック突部52を乗り越えてレバー20が弾性的に復帰するとともに、ロック部22とロック突部52が嵌合方向に係止する。こうして、両コネクタ10,50が嵌合状態にロックされる。両コネクタ10,50を嵌合させた状態でバッテリに充電を行い、充電が完了すると、グリップ12を手で握って、親指で解除操作部23の押圧面23Aを押圧する。
【0039】
ここで、ロック部22からコネクタ本体11の内部に水が浸入した場合、水は導水部26上に落ちるものの、この水は両テーパ面26Aによってレバー軸21の下方に流れ落ちる。また、解除操作部23に水が付着した場合、この水は、誘い込み部18の傾斜面18Aによって誘い込み部18側に誘い込まれてコネクタ本体11の外周面を伝って下方に流れ落ちるから、解除孔16からコネクタ本体11の内部に浸入することが規制される。
【0040】
また、解除操作部23に付着した水は、凹部27に浸入する場合もある。この場合、水は、凹部27の下縁部27Bを伝って下方に流れ落ちるから、コネクタ本体11の内部に浸入し、水抜き孔15からコネクタ本体11の外部に排水される。仮に、凹部27で氷が形成された場合であっても、解除操作部23を押し込むことで氷が凹部27の上縁27Aと解除孔16の周縁との間でせん断により破断される。
【0041】
さらに、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間からコネクタ本体11の内部に浸入した水は排水部28上に落ちるものの、この水は両テーパ面28Aによってレバー軸21の下方に流れ落ちる。したがって、解除操作部23が解除孔16の周縁に氷結して解除操作ができなくなることを回避できる。
【0042】
以上のように本実施形態によると、レバー軸21の上面におけるロック部22側の端部に導水部26を設けたから、レバー軸21の上面に氷が形成されてこの氷が保護壁11Aの内壁と干渉することを回避できる。また、導水部26として一対のテーパ面26Aを備えた構成としたから、両テーパ面26Aによって水をレバー軸21の下方に流れ落ちやすくできる。したがって、ロック部22の氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0043】
また、解除操作部23の両側面部23Bと後面部23Cとに凹部27を設けたから、水が凹部27を通って下方に流れ落ちやすくなる。すなわち、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に水が溜まりにくくなる。また、解除操作部23に付着した水は、傾斜面18Aを通って誘い込み部18に誘い込まれるため、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に浸入しにくくなる。さらに、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間に浸入した水は、排水部28に落ち込むものの、この水は両テーパ面28Aによって下方に流れ落ちる。したがって、解除操作部23の氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では導水部26がテーパ面26Aによって構成されたものを例示しているものの、本発明によると、導水部を円弧面によって構成してもよい。
(2)上記実施形態では導水部26が一対のテーパ面26Aによって構成されているものの、本発明によると、導水部を一つのテーパ面によって構成してもよいし、導水部を三つ以上のテーパ面によって構成してもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では解除操作部23の側面部23Bと後面部23Cの双方に凹部27が設けられているものの、本発明によると、側面部23Bと後面部23Cのいずれか一方のみに凹部27を設けてもよい。また、上記実施形態における側面部23Bには、同側面部23Bをほぼ2つの領域に分割するようにして2つの凹部27が設けられているものの、本発明によると、側面部23Bのほぼ全域に亘って1つの凹部を設けてもよいし、側面部23Bをほぼ3つの領域に分割するようにして3つの凹部を設けてもよい。この場合、各凹部を区画する隔壁の幅はできるだけ狭くすることが望ましい。
(4)上記実施形態では解除孔16の周縁部の全周に亘って誘い込み部18が設けられているものの、本発明によると、解除孔16の周縁部のうち凹部27と対向しない部分のみに誘い込み部を設けてもよい。
【0046】
(5)上記実施形態では傾斜面18Aによって誘い込み部18を構成しているものの、本発明によると、水の濡れ性が高い表面処理を施すことによって誘い込み部を構成してもよい。
(6)上記実施形態では解除操作部23の前面部23Dに凹部を設けていないものの、本発明によると、前面部23Dがアンダーカット形状でなく、スライド型を用いなくても凹部を形成できる場合には、前面部23Dに凹部を設けてもよく、この場合には、排水部28を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…充電用コネクタ
11…コネクタ本体(ケース体)
12…グリップ(ケース体)
13…コネクタ嵌合部
16…解除孔
18…誘い込み部
18A…傾斜面
20…レバー
21…レバー軸
22…ロック部
23…解除操作部
26…導水部
26A…テーパ面
26B…頂点部
28…排水部
28A…テーパ面
28B…頂点部
50…車両側コネクタ
52…ロック突部(ロック受け部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の充電用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部を有し、このコネクタ嵌合部は、ケース体の前端開口部に設けられている。また、ケース体の内部には、前後方向に延びる形態をなすレバーが収容されており、レバー軸の前端側にロック部が設けられ、同後端側に解除操作部が設けられている。解除操作部は、ケース体に開設された解除孔からケース体の外部に突出する形態をなしている。
【0003】
充電するに際しては、充電用コネクタを車両側コネクタに嵌合し、この車両側コネクタに設けられたロック受け部とロック部を係止させることにより、両コネクタが嵌合状態に保持され、充電が行われる。また、充電完了後は、解除操作部を押し込んで、ロック部とロック受け部の係止状態を解除することにより、充電用コネクタを車両側コネクタから離脱させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−123521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、充電用コネクタは屋外で使用されることを前提としているため、解除孔の周縁と解除操作部の側面部との間に形成されたわずかな隙間に水が浸入すると、表面張力が作用することで水が隙間に滞留してしまう。そして、隙間に水が入り込んだ状態で氷結すると、氷結した氷の上に水滴が付着してさらに氷結することになる。こうして氷結を繰り返すことによって氷が積み重なり、レバーとケース体が強固に凍り付いた状態となって、解除操作に支障を来すおそれがある。かといって、氷を除去するには氷を砕いたり溶かしたりする必要があるため、氷を除去することは容易ではない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタであって、車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部が設けられたケース体と、車両側コネクタに設けられたロック受け部と係止することにより、車両側コネクタとコネクタ嵌合部を嵌合状態に保持するロック部と、ロック部とロック受け部との係止状態を解除可能な解除操作部と、ケース体における解除操作部と対応する位置に開設された解除孔とを備え、解除操作部は、解除孔からケース体の外部に突出する形態をなしており、解除操作部において解除孔の周縁と対向する位置には、凹部が設けられている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、凹部から解除孔の周縁までの距離が、凹部を設けない場合よりも長くなるため、凹部に水が浸入しても表面張力が作用しにくく、水が凹部を通って下方に流れ落ちやすくなる。したがって、凹部に水が溜まることはなく、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
解除孔の周縁部には、解除操作部の側面部に対して傾斜面で連なる誘い込み部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、水が解除操作部の側面部から傾斜面を通って誘い込み部に流れやすくなる。したがって、凹部が設けられていない部分においても、水が解除操作部の側面部と解除孔の周縁との間に浸入することを回避できる。
【0010】
ケース体の内部に収容され、上面に解除操作部が突出して設けられたレバー軸を備え、レバー軸の上面における解除操作部の周囲に、下り勾配をなす排水部が設けられている構成としてもよい。
このような構成によると、水が凹部を通ってレバー軸の上面に落ちてきた場合でも、この水を排水部によってレバー軸の下方に排水することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態における充電用コネクタを斜め前方から見た斜視図
【図2】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの側面図
【図3】図2におけるA部を拡大して示した部分拡大図
【図4】図2におけるケース体の内部構造を示した図
【図5】解除操作部を押し込んだ状態を示す充電用コネクタの側面図
【図6】図6におけるケース体の内部構造を示した図
【図7】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの正面図
【図8】車両側コネクタと嵌合した状態を示す充電用コネクタの背面図
【図9】図2におけるB−B線断面図
【図10】図2におけるC−C線断面図
【図11】図2におけるD−D線断面図
【図12】図2におけるE−E線断面図
【図13】図5におけるF−F線断面図
【図14】実施形態におけるレバーを斜め後方から見た斜視図
【図15】レバーの平面図
【図16】レバーの側面図
【図17】レバーの底面図
【図18】レバーの正面図
【図19】図17におけるG−G線断面図
【図20】図16におけるH−H線断面図
【図21】図16におけるI−I線断面図
【図22】図16におけるJ−J線断面図
【図23】図16におけるK−K線断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図23の図面を参照しながら説明する。本実施形態における充電用コネクタ10は全体としてピストル形状をなしており、図1に示すように、略前半部分を構成するコネクタ本体11と、このコネクタ本体11の後端部から斜め下方に延びるグリップ12とを備えて構成されている。コネクタ本体11とグリップ12は、いずれも合成樹脂製とされており、一体に成形されている。コネクタ本体11の前端部には、円筒状をなして前方に突出するコネクタ嵌合部13が設けられている。また、コネクタ本体11の内部には、図4に示すように、レバー20の主体部をなすレバー軸21が収容されている。なお、本発明の「ケース体」は、コネクタ本体11とグリップ12とに対応している。
【0014】
コネクタ嵌合部13は、コネクタ本体11とは別部材として形成されており、図示しない係止手段によってコネクタ本体11の前端部に固定されている。コネクタ嵌合部13の内部には、円筒状をなす複数の端子収容部14が設けられている。これらの端子収容部14は、コネクタ嵌合部13の奥壁から前方に突出して設けられている。端子収容部14の内部には、端子金具(図示せず)を収容するキャビティが形成されている。
【0015】
コネクタ嵌合部13の後方には、複数の電線Wが延出されている。これらの電線Wは、コネクタ本体11の内部を通ってグリップ12の内部に引き出され、グリップ12の内部で外部被覆に覆われて一本の電線W1に集約されている。電線W1は、グリップ12の内部において電線把持リングなどによって固定されており、さらにグリップ12の後端部でブッシュ40によって固定されている。
【0016】
ブッシュ40は、グリップ12の後端開口部の内周面と電線W1の外周面とに密着しているため、グリップ12の後端からグリップ12の内部に水が浸入することを規制している。なお、コネクタ本体11およびグリップ12の下面側には、複数の水抜き孔15が形成されているため、コネクタ本体11およびグリップ12の内部に水が浸入した場合でも、これらの水抜き孔15から外部に水を逃がすことができるようになっている。
【0017】
レバー20は、図14に示すように、前後方向に延びるレバー軸21を有しており、レバー軸21の前端部にロック部22が設けられている一方、レバー軸21の後端部に解除操作部23が設けられている。レバー軸21の前後方向におけるほぼ中央部には、コネクタ本体11の内部に軸支されるレバー回動中心部24が設けられており、このレバー回動中心部24を中心としてレバー軸21の前後両端部がシーソー状に傾動可能とされている。
【0018】
レバー軸21は、図16に示すように、レバー回動中心部24から前方に向けて水平姿勢で延出された後、やや斜め上方に延出され、再び水平姿勢となって延出されている一方、レバー回動中心部24から後方に向けて斜め下方に延出されている。このため、ロック部22は、解除操作部23よりも相対的に上方に配置されている。
【0019】
コネクタ本体11においてレバー20と対応する位置は、図7および図8に示すように、上方に膨出して形成されており、この膨出部の前端部は、保護壁11Aとされている。この保護壁11Aは、前方に張り出す形態で設けられている。レバー軸21の前端側は、ロック部22のみを露出させて保護壁11Aに覆われた状態とされる。これにより、充電用コネクタ10を誤って落下させた場合に、レバー軸21が破損することを規制できる。
【0020】
ロック部22は、レバー軸21の前端部における水平部分から上方に突出するヘッド部22Aと、同水平部分から下方に突出する係止部22Bとを備えて構成されている。係止部22Bは、下方に向かうほど後方に迫り出す形態をなす、いわゆるオーバーハング状に形成されている。これに伴って、係止部22Bと係止するロック突部52についても、図4に示すように、いわゆるオーバーハング状に形成されている。このため、係止部22Bとロック突部52が係止した状態で両コネクタ10,50を離脱させる方向に引っ張っても係止部22Bとロック突部52の係止状態が解除されることはない。なお、ロック突部52は、金属平板によって表面が覆われた状態で補強されている。
【0021】
ヘッド部22Aは、図18に示すように、上方に向かうほど幅広となるように形成されている。これは、充電用コネクタ10を誤って落下させてしまい、ヘッド部22Aが地面に直撃した場合であっても、その衝撃に耐えられる程度の強度を確保するためである。
【0022】
また、ヘッド部22Aの後面22Cは、図16に示すように、上方に向かうほど後方に迫り出す形態、すなわちオーバーハング状に形成されている。ロック部22は、図2に示すように、コネクタ本体11の前端開口(保護壁11A)から前方に露出されている。また、両コネクタ10,50が嵌合した状態では、コネクタ本体11の前端上部(保護壁11Aの前端)は、ヘッド部22Aの後面22Cに対してほぼ平行に配置され、コネクタ本体11の上面は、ヘッド部22Aの上面に対してほぼ面一に配置されている。
【0023】
ところで、車両側コネクタ50は、図7および図8を見ればわかるように、やや上向き姿勢で車体に取り付けられており、これに伴って車両側コネクタ50に嵌合される充電用コネクタ10はやや下向き姿勢となる。このため、ヘッド部22Aの後面22Cは、充電用コネクタ10を車両側コネクタ50に嵌合させた状態では、ほぼ鉛直方向に延びる垂直姿勢となる。換言すると、ヘッド部22Aの後面22Cは、両コネクタ10,50の嵌合方向に直交する面に対して上端側を車両側コネクタ50から離れる方向に変位させた姿勢とされている。
【0024】
嵌合状態においてヘッド部22Aの後面22Cがほぼ鉛直方向に延びる垂直姿勢となっているため、例えばヘッド部22Aに積もった雪が溶けて水となり、この水がヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aとの間に浸入した場合でも、水がヘッド部22Aの後面22Cに溜まることはなく、ヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aとの間が氷結し、ロック部22が解除不能となる事態を回避できる。
【0025】
解除操作部23は、図1および図2に示すように、コネクタ本体11の上面後部に開設された解除孔16から上方に突出する形態で露出されている。解除操作部23は、図16に示すように、レバー軸21の後端部において上方に突出する形態をなしている。解除操作部23は、斜め下方に延びる押圧面23Aを有している。解除操作部23の幅方向両側には、押圧面23Aの幅方向両側縁から下方に延びる一対の側面部23Bが設けられている。また、解除操作部23の後部には、押圧面23Aの後縁から下方に延びる後面部23Cが設けられている。なお、解除操作部23の下面部には、図17および図19に示すように、コイルばね60の上端が収容されるばね受け部25が設けられている。
【0026】
コネクタ本体11においてばね受け部25と上下方向に対向する位置には、図4に示すように、コイルばね60の下端を支持するばね装着部17が設けられている。コイルばね60は、ばね受け部25とばね装着部17との間で蓄勢状態で装着されており、このコイルばね60がレバー軸21の後端部を上方へ押し上げることで、常にはロック部22が図4に示す係止位置に付勢されている。一方、解除操作部23が下方に押し込まれると、相対的にロック部31が押し上げられて図6に示す解除位置に変位するようになっている。
【0027】
係止位置にあるレバー20は、図4に示すように、コネクタ本体11の内部におけるコネクタ嵌合部13の上側に設けられた衝撃吸収パッド61に接触している。このため、解除位置にて解除操作部23を離すと、コイルばね60のバネ力によってロック部22が解除位置から係止位置へ移動するものの、レバー軸21が衝撃吸収パッド61に衝突した際にその衝撃が吸収され、係止位置にてロック部22の移動が停止される。
【0028】
さて、本実施形態の充電用コネクタ10は、屋外で使用されることを前提としており、充電用コネクタ10を車両側コネクタ50に嵌合させて充電をしている際に、充電用コネクタ10に雨水が降りかかったり、あるいは、充電用コネクタ10に直接雪が積もったりする場合がある。この場合、特に寒冷地においては、ロック部22や解除操作部23に付着した水が氷結してしまい、解除操作に支障を来すおそれがある。
【0029】
例えばロック部22においては、ヘッド部22Aの後面22Cと保護壁11Aの前面との間を通ってレバー軸21の上面に水が落ちてくることが考えられる。ここで、レバー軸21の上面に氷が付着すると、この氷が保護壁11Aの内壁と干渉しやすくなるため、ロック部22が係止位置から解除位置へ移動できなくなることになる。
【0030】
そこで、本実施形態では図16および図20に示すように、レバー軸21の上面における前端側(ロック部22側の端部)に導水部26を設けており、この導水部26に落ちてきた水をレバー軸21の下方にそのまま流し落とすようにしている。導水部26は、一対のテーパ面26Aによって構成されている。両テーパ面26Aは、導水部26の幅方向中央に配置された頂点部26Bから斜め下方に延びる下り勾配をなしており、左右対称に配置されている。
【0031】
一方、解除操作部23においては、例えば側面部23Bとこれに対向する解除孔16の周縁との間に水が浸入し、表面張力が作用して、側面部23Bと解除孔16の周縁との間に水が溜まることが考えられる。そして、側面部23Bと解除孔16の周縁との間に溜まった水が氷結すると、解除操作部23を押し込むことができなくなってしまう。この現象は、側面部23Bのみならず、後面部23Cおよび前面部23Dにおいても同様に起こり得る。
【0032】
そこで、解除操作部23の側面部23Bには、図14および図16に示すように、複数の凹部27が形成されている。凹部27は、解除孔16の周縁と対向する位置に設けられている。ここで、凹部27の上縁27Aは、ロック部22が係止位置にあるときに、解除孔16の周縁よりも上方となるように設定されている。凹部27から解除孔16の周縁までの距離は、側面部23Bから解除孔16の周縁までの距離よりも長くなるため、表面張力が作用しにくくなる。このため、水が凹部27を通って下方に流れやすくなり、凹部27で水が氷結し、解除操作に支障を来すおそれがない。同様にして、後面部23Cにも凹部27が形成されている。
【0033】
側面部23Bの凹部27は、前後方向に並んで一対配置されている。凹部27の周縁は、側面部23Bとほぼ直交する段差面として構成されている。このうち凹部27の前縁と後縁は、いずれも上下方向に延びる形態でかつ平行に配置されている。また、凹部27の上縁27Aは、解除操作部23の押圧面23Aにほぼ平行をなして後面部23Cへ向かって斜め下方に延びる形態とされている。一方、後面部23Cには凹部27が一つだけ設けられ、この凹部27の周縁も、後面部23Cとほぼ直交する段差面として構成されている。
【0034】
図19、図21、および図22に示すように、凹部27の上縁27Aは、段差面として構成されているため、仮に凹部27と解除孔16の周縁との間にわずかに氷が形成された場合でも、この氷をせん断によって破壊することができる。つまり、解除操作部23を押し込むと、図11および図13に示すように、凹部27の上縁27Aが解除孔16の内部に進入するため、凹部27の上縁27Aと解除孔16の周縁がせん断刃として作用することになる。これにより、仮に凹部27に氷が形成された場合であっても、この氷を凹部27の上縁27Aで容易に破断することができる。
【0035】
なお、解除操作部23の前面部23Dには、凹部27が形成されていない。この理由は、図16に示すように、レバー軸21と解除操作部23の前面部23Dが互いに対向してアンダーカット状に配置されており、解除操作部23の前面部23Dに凹部27を形成するのにスライド型が必要となり、金型構造が複雑となって金型費用が高くなるためである。したがって、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間に浸入した水は、そのままレバー軸21の上面に落としてやる必要がある。このため、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間隔は、表面張力が作用しにくい程度に設定されている。
【0036】
しかしながら、レバー軸21の上面に落ちた水がそのまま氷結すると、やはりレバー軸21の上面に形成された氷とコネクタ本体11の内壁が干渉することにより、解除操作に支障を来してしまう。そこで、レバー軸21の上面における解除操作部23の周囲には、排水部28が設けられている。この排水部28は、導水部26と同様の構成であって、一対のテーパ面28Aを備えている。両テーパ面28Aは、図23に示すように、排水部28の幅方向中央に配置された頂点部28Bから斜め下方に延びる下り勾配をなしており、左右対称に配置されている。これにより、図12に示すように、排水部28上に流れ落ちた水をレバー軸21の下方に排水することができる。
【0037】
これらに加えて、解除孔16の周縁部には、図4などに示すように、解除操作部23の側面部23Bに対して傾斜面18Aで連なる誘い込み部18が設けられている。本実施形態における傾斜面18Aは、その傾斜角度が急となる急斜面として構成されている。誘い込み部18は、解除孔16の周縁部の全周に亘って設けられている。解除操作部23の側面部23Bなどに水が付着した場合、この水が傾斜面18Aによって誘い込み部18側に誘い込まれやすくなる。したがって、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に水が浸入することを極力減らすことができるようになっている。
【0038】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、両コネクタ10,50を嵌合させると、ロック部22がロック突部52に乗り上げた状態となり、レバー20が傾動する。ここからさらに両コネクタ10,50を嵌合させると、図4に示すように、両コネクタ10,50が嵌合状態に至る。これと同時に、ロック部22がロック突部52を乗り越えてレバー20が弾性的に復帰するとともに、ロック部22とロック突部52が嵌合方向に係止する。こうして、両コネクタ10,50が嵌合状態にロックされる。両コネクタ10,50を嵌合させた状態でバッテリに充電を行い、充電が完了すると、グリップ12を手で握って、親指で解除操作部23の押圧面23Aを押圧する。
【0039】
ここで、ロック部22からコネクタ本体11の内部に水が浸入した場合、水は導水部26上に落ちるものの、この水は両テーパ面26Aによってレバー軸21の下方に流れ落ちる。また、解除操作部23に水が付着した場合、この水は、誘い込み部18の傾斜面18Aによって誘い込み部18側に誘い込まれてコネクタ本体11の外周面を伝って下方に流れ落ちるから、解除孔16からコネクタ本体11の内部に浸入することが規制される。
【0040】
また、解除操作部23に付着した水は、凹部27に浸入する場合もある。この場合、水は、凹部27の下縁部27Bを伝って下方に流れ落ちるから、コネクタ本体11の内部に浸入し、水抜き孔15からコネクタ本体11の外部に排水される。仮に、凹部27で氷が形成された場合であっても、解除操作部23を押し込むことで氷が凹部27の上縁27Aと解除孔16の周縁との間でせん断により破断される。
【0041】
さらに、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間からコネクタ本体11の内部に浸入した水は排水部28上に落ちるものの、この水は両テーパ面28Aによってレバー軸21の下方に流れ落ちる。したがって、解除操作部23が解除孔16の周縁に氷結して解除操作ができなくなることを回避できる。
【0042】
以上のように本実施形態によると、レバー軸21の上面におけるロック部22側の端部に導水部26を設けたから、レバー軸21の上面に氷が形成されてこの氷が保護壁11Aの内壁と干渉することを回避できる。また、導水部26として一対のテーパ面26Aを備えた構成としたから、両テーパ面26Aによって水をレバー軸21の下方に流れ落ちやすくできる。したがって、ロック部22の氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0043】
また、解除操作部23の両側面部23Bと後面部23Cとに凹部27を設けたから、水が凹部27を通って下方に流れ落ちやすくなる。すなわち、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に水が溜まりにくくなる。また、解除操作部23に付着した水は、傾斜面18Aを通って誘い込み部18に誘い込まれるため、解除操作部23と解除孔16の周縁との間に浸入しにくくなる。さらに、解除操作部23の前面部23Dと解除孔16の周縁との間に浸入した水は、排水部28に落ち込むものの、この水は両テーパ面28Aによって下方に流れ落ちる。したがって、解除操作部23の氷結によって解除操作に支障を来すことを回避できる。
【0044】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では導水部26がテーパ面26Aによって構成されたものを例示しているものの、本発明によると、導水部を円弧面によって構成してもよい。
(2)上記実施形態では導水部26が一対のテーパ面26Aによって構成されているものの、本発明によると、導水部を一つのテーパ面によって構成してもよいし、導水部を三つ以上のテーパ面によって構成してもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では解除操作部23の側面部23Bと後面部23Cの双方に凹部27が設けられているものの、本発明によると、側面部23Bと後面部23Cのいずれか一方のみに凹部27を設けてもよい。また、上記実施形態における側面部23Bには、同側面部23Bをほぼ2つの領域に分割するようにして2つの凹部27が設けられているものの、本発明によると、側面部23Bのほぼ全域に亘って1つの凹部を設けてもよいし、側面部23Bをほぼ3つの領域に分割するようにして3つの凹部を設けてもよい。この場合、各凹部を区画する隔壁の幅はできるだけ狭くすることが望ましい。
(4)上記実施形態では解除孔16の周縁部の全周に亘って誘い込み部18が設けられているものの、本発明によると、解除孔16の周縁部のうち凹部27と対向しない部分のみに誘い込み部を設けてもよい。
【0046】
(5)上記実施形態では傾斜面18Aによって誘い込み部18を構成しているものの、本発明によると、水の濡れ性が高い表面処理を施すことによって誘い込み部を構成してもよい。
(6)上記実施形態では解除操作部23の前面部23Dに凹部を設けていないものの、本発明によると、前面部23Dがアンダーカット形状でなく、スライド型を用いなくても凹部を形成できる場合には、前面部23Dに凹部を設けてもよく、この場合には、排水部28を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…充電用コネクタ
11…コネクタ本体(ケース体)
12…グリップ(ケース体)
13…コネクタ嵌合部
16…解除孔
18…誘い込み部
18A…傾斜面
20…レバー
21…レバー軸
22…ロック部
23…解除操作部
26…導水部
26A…テーパ面
26B…頂点部
28…排水部
28A…テーパ面
28B…頂点部
50…車両側コネクタ
52…ロック突部(ロック受け部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタであって、
前記車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部が設けられたケース体と、
前記車両側コネクタに設けられたロック受け部と係止することにより、前記車両側コネクタと前記コネクタ嵌合部を嵌合状態に保持するロック部と、
前記ロック部と前記ロック受け部との係止状態を解除可能な解除操作部と、
前記ケース体における前記解除操作部と対応する位置に開設された解除孔とを備え、
前記解除操作部は、前記解除孔から前記ケース体の外部に突出する形態をなしており、前記解除操作部において前記解除孔の周縁と対向する位置には、凹部が設けられていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項2】
前記解除孔の周縁部には、前記解除操作部の側面部に対して傾斜面で連なる誘い込み部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の充電用コネクタ。
【請求項3】
前記ケース体の内部に収容され、上面に前記解除操作部が突出して設けられたレバー軸を備え、
前記レバー軸の上面における前記解除操作部の周囲に、下り勾配をなす排水部が設けられていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項1】
車両におけるバッテリに充電する際に、そのバッテリに接続された車両側コネクタと嵌合される充電用コネクタであって、
前記車両側コネクタと嵌合可能なコネクタ嵌合部が設けられたケース体と、
前記車両側コネクタに設けられたロック受け部と係止することにより、前記車両側コネクタと前記コネクタ嵌合部を嵌合状態に保持するロック部と、
前記ロック部と前記ロック受け部との係止状態を解除可能な解除操作部と、
前記ケース体における前記解除操作部と対応する位置に開設された解除孔とを備え、
前記解除操作部は、前記解除孔から前記ケース体の外部に突出する形態をなしており、前記解除操作部において前記解除孔の周縁と対向する位置には、凹部が設けられていることを特徴とする充電用コネクタ。
【請求項2】
前記解除孔の周縁部には、前記解除操作部の側面部に対して傾斜面で連なる誘い込み部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の充電用コネクタ。
【請求項3】
前記ケース体の内部に収容され、上面に前記解除操作部が突出して設けられたレバー軸を備え、
前記レバー軸の上面における前記解除操作部の周囲に、下り勾配をなす排水部が設けられていることを特徴とする充電用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−9387(P2012−9387A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146479(P2010−146479)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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