光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機
【課題】例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制し、大きな作製トレランスが得られるようにする。
【解決手段】光デバイス1を、光信号を分岐する第1カプラ2と、光信号を干渉させる第2カプラ3と、第1カプラ2と第2カプラ3とを接続する第1導波路4と、第1カプラ2と第2カプラ3とを接続する第2導波路5とを備え、第1導波路4が、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域6を備え、第2導波路5が、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域7を備えるものとする。
【解決手段】光デバイス1を、光信号を分岐する第1カプラ2と、光信号を干渉させる第2カプラ3と、第1カプラ2と第2カプラ3とを接続する第1導波路4と、第1カプラ2と第2カプラ3とを接続する第2導波路5とを備え、第1導波路4が、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域6を備え、第2導波路5が、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域7を備えるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、例えば、光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスやマッハツェンダ型光変調器などのように、位相差を有する光信号の干渉を利用する光デバイスが用いられる。
例えば、任意の分岐比が得られる光分岐デバイスとして、図22,図23に示すように、2つの2:2光カプラ105,106の間に設けられた2本の導波路100,101の一方又は両方に、分岐された光信号に位相差を与える位相シフタ領域を設けた光分岐デバイスがある。
【0003】
例えば図22に示すように、2本の導波路100,101のそれぞれに、導波路幅を狭くした位相シフタ領域102,103を設け、これらの位相シフタ領域102,103の導波路形状が互いに異なるようにした光分岐デバイスがある。このような光分岐デバイスでは、一方の位相シフタ領域102における導波路幅の狭い直線導波路の長さを調整するか、又は、他方の位相シフタ領域103におけるテーパ状導波路のテーパ角を調整することによって、任意の分岐比を得ることができる。
【0004】
また、例えば図23に示すように、2本の導波路100,101のうち、一方の導波路101の一部に幅テーパ形状を有する位相シフタ領域104を設けた光分岐デバイスもある。このような光分岐デバイスでは、位相シフタ領域104における幅テーパ形状を有する導波路の長さやテーパ角を調整することによって、任意の分岐比を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144963号公報
【特許文献2】特開2005−249973号公報
【特許文献3】特開2005−300679号公報
【特許文献4】特開平07−281041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような光デバイスは、分岐された光信号に位相差を与える位相シフタ領域を備える。このような光デバイスでは、例えば作製プロセスなどにおいて、位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまうと、所望の特性が得られず、特性が劣化してしまう。また、大きな作製トレランスを得るのは難しい。
そこで、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制し、大きな作製トレランスが得られるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本光デバイスは、光信号を分岐する第1カプラと、光信号を干渉させる第2カプラと、第1カプラと第2カプラとを接続する第1導波路と、第1カプラと第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを要件とする。
【0008】
また、本光ハイブリッド回路は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、第1出力チャネル又は第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの一方又は一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの他方又は一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを要件とする。
【0009】
さらに、本光受信機は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、第1出力チャネル又は第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの一方又は一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの他方又は一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、多モード干渉カプラから出力される第1光信号又は第2光信号、及び、2:2光カプラから出力される第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態にかかる光デバイスの構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる光デバイスに備えられる幅狭テーパ導波路型位相シフタの構成を示す模式図である。
【図3】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図4】第1実施形態にかかる光デバイスに備えられる幅広テーパ導波路型位相シフタの構成を示す模式図である。
【図5】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図6】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタ及び幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量|Δφ|との関係を示す図である。
【図7】(A)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタ及び幅狭テーパ導波路型位相シフタを形成する際に局所的にエッチングが進んでテーパ形状が変化してしまうことを説明するための図である。(B)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタ及び幅狭テーパ導波路型位相シフタを形成する際に局所的にエッチングが進まずにテーパ形状が変化してしまうことを説明するための図である。
【図8】(A)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタにおいて、位相シフタ長を50μmとし、入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。(B)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタにおいて、位相シフタ長を100μmとし、入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図9】第1実施形態にかかる光デバイスの具体的構成例を示す模式的断面図である。
【図10】第1実施形態にかかる光デバイスの位相変化量Δφを45度に設定した場合の所望のΔWTPからのズレ量δWTPと光デバイスの2つの出力チャネルから出力される光の透過率(Transmittance)との関係を示す図である。
【図11】第1実施形態にかかる光デバイスの変形例の構成を示す模式図である。
【図12】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図13】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図14】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図15】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図16】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ及び幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の所望の変化量ΔWTPからのズレ量δWTPと、直交位相関係にある出力信号のクロストークとの関係を示す図である。
【図17】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の変形例の構成を示す模式図である。
【図18】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の他の変形例の構成を示す模式図である。
【図19】第3実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図20】第4実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図21】第5実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図22】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【図23】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【図24】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により、本実施形態にかかる光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる光デバイスについて、図1〜図10を参照しながら説明する。
本実施形態の光デバイスは、例えば光通信システムにおいて用いられる光デバイスであって、位相差を有する光信号の干渉を利用する光デバイスである。なお、本光デバイスは、光信号を干渉させる回路を有するものであるため、光干渉回路ともいう。
【0013】
本実施形態では、本発明を適用した光デバイスとして、光通信システムにおいて様々な光信号処理を行なうために光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスを例に挙げて説明する。なお、本光分岐デバイスは、マッハツェンダ干渉計を構成しているため、マッハツェンダ型光デバイス、あるいは、マッハツェンダ型光回路ともいう。また、光干渉回路ともいう。
【0014】
本実施形態では、図1に示すように、光分岐デバイス1は、入力側光カプラ2と、出力側光カプラ3と、これらの光カプラ2,3を接続する2本の光導波路4,5とを備え、半導体導波路構造を有する光半導体素子によって構成されている。なお、入力側光カプラ2を第1カプラといい、出力側光カプラ3を第2カプラという。また、2本の光導波路4,5を、それぞれ、第1導波路4、第2導波路5という。
【0015】
ここでは、入力側光カプラ2は、光信号を分岐する光カプラであり、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラである。具体的には、入力側光カプラ2は、2:2多モード干渉(MMI:Multimode Interference)カプラである。なお、入力側光カプラ2は、MMIカプラでなくても良く、例えば二モード干渉カプラであっても良い。
【0016】
出力側光カプラ3は、光信号を干渉させる光カプラであり、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラである。具体的には、2:2多モード干渉(MMI:Multimode Interference)カプラである。なお、出力側光カプラは、MMIカプラでなくても良く、例えば二モード干渉カプラであっても良い。
第1導波路4及び第2導波路5は、入力側光カプラ2で分岐された光信号を、それぞれ独立に伝搬させ、出力側光カプラ3へ導くために用いられるものであり、後述の位相シフタ領域6,7を除いて、その積層構造、幅、長さ等が同一になっている一対の導波路である。
【0017】
本実施形態では、第1導波路4の一部が、位相シフタとして機能する第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の一部が、位相シフタとして機能する第2位相シフタ領域7になっている。
そして、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、第1導波路4及び第2導波路5のそれぞれを伝搬する光信号に所望の位相差が与えられるようになっている。この場合、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、光信号の位相をシフトさせ、所望の位相差に調整する機能を有することになる。このような機能を有する第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、光干渉回路としての光分岐デバイス1において、光路長を変化させ、所望の光路長差に調整することで、光信号を所望の比率で分岐させる役割を果たす。
【0018】
特に、本実施形態では、光信号に位相差を与える第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、以下のように、その導波路形状が異なる。
まず、第1位相シフタ領域6は、図2に示すように、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に狭くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ型導波路になっている。これを幅狭テーパ導波路型位相シフタ6という。このような第1位相シフタ領域6は、位相が遅れる方向へ光信号の位相をシフトさせる。なお、第1位相シフタ領域6は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。このため、第1導波路4は、その端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域6を備えることになる。本実施形態では、第1位相シフタ領域6は、長さ方向中心位置で最も導波路幅が狭くなっており、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっている。
【0019】
ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅をWとしている。なお、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wは、第1導波路4の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6以外の部分の導波路幅と同一である。
また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端又は出力端の導波路幅と長さ方向中間位置の導波路幅との差、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化量を、ΔWTPとしている。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化率は|ΔWTP|/Wで表すことができる。なお、|ΔWTP|/Wはテーパ形状の角度に関わるパラメータである。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ方向中間位置の導波路幅は、W−ΔWTPとなる。
【0020】
また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端又は出力端から長さ方向中間位置までの長さ、即ち、テーパ長を、LTPとしている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端から出力端までの長さ、即ち、位相シフタ長を、LPSとしている。
ここで、図3は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
【0021】
なお、位相変化量Δφは様々な導波路パラメータに依存する。ここでは、Wを2.0μmに設定している。また、LPSは、LTPの2倍に設定している。また、LPSを、50μm、100μm、200μmに設定し、ΔWTPを0μm〜0.8μmの範囲で変化させた場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφをプロットしている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6では、光信号の位相は遅れることになるため、Δφは負の値となる。
【0022】
図3に示すように、LPSを50μm、100μm、200μmに設定した場合において、いずれの場合も、|ΔWTP|/Wの値が大きくなるにしたがって、即ち、|ΔWTP|の値が大きくなるにしたがって、Δφの値が大きくなっていくことがわかる。つまり、テーパ角が大きくなるにしたがって、位相変化量が大きくなっていくことがわかる。
また、図3に示すように、LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、非線形的になることがわかる。なお、LPSが50μmの場合、Δφが90度以上の領域では、Δφが90度よりも小さい領域と比較して、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が相対的に急峻になっている。しかしながら、Δφが90度以上の領域でも、LPSが100μm、200μmの場合と比べて、依然としてΔφの変化は緩やかになっている。
【0023】
したがって、第1位相シフタ領域6の長さ、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ(位相シフタ長)は、約50μm以下にするのが好ましい。
次に、第2位相シフタ領域7は、図4に示すように、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に広くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ型導波路になっている。これを幅広テーパ導波路型位相シフタ7という。このような第2位相シフタ領域7は、位相が進む方向へ光信号の位相をシフトさせる。なお、第2位相シフタ領域7は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。このため、第2導波路5は、その端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域7を備えることになる。本実施形態では、第2位相シフタ領域7は、長さ方向中心位置で最も導波路幅が広くなっており、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっている。
【0024】
ここでは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端及び出力端の導波路幅をWとしている。なお、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端及び出力端の導波路幅Wは、第2導波路5の幅広テーパ導波路型位相シフタ7以外の部分の導波路幅と同一である。
また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端又は出力端の導波路幅と長さ方向中間位置の導波路幅との差、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化量を、ΔWTPとしている。この場合、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化率は|ΔWTP|/Wで表すことができる。なお、|ΔWTP|/Wはテーパ形状の角度に関わるパラメータである。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の長さ方向中間位置の導波路幅は、W+ΔWTPとなる。
【0025】
また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端又は出力端から長さ方向中間位置までの長さ、即ち、テーパ長を、LTPとしている。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端から出力端までの長さ、即ち、位相シフタ長を、LPSとしている。
ここで、図5は、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
【0026】
なお、位相変化量Δφは様々な導波路パラメータに依存する。ここでは、Wを2.0μmに設定している。また、LPSは、LTPの2倍に設定している。また、LPSを、50μm、100μmに設定し、ΔWTPを0μm〜1.0μmの範囲で変化させた場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφをプロットしている。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7では、光信号の位相は進むことになるため、Δφは正の値となる。
【0027】
図5に示すように、LPSを50μm、100μmに設定した場合において、いずれの場合も、|ΔWTP|/Wの値が大きくなるにしたがって、即ち、|ΔWTP|の値が大きくなるにしたがって、Δφの値が大きくなっていくことがわかる。つまり、テーパ角が大きくなるにしたがって、位相変化量が大きくなっていくことがわかる。
また、図5に示すように、LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、非線形的になる。特に、Δφが90度よりも小さい領域では、LPSが50μmの場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が相対的に緩やかになっている。
【0028】
したがって、第2位相シフタ領域7の長さ、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の長さ(位相シフタ長)は、約50μm以下にするのが好ましい。
上述のように、本実施形態では、第1位相シフタ領域6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタになっているのに対し、第2位相シフタ領域7は、幅広テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、第1位相シフタ領域6では、光信号の位相が遅れるようになっているのに対し、第2位相シフタ領域7では、光信号の位相が進むようになっている。このように、第1位相シフタ領域6では位相変化量Δφの符号が負であり、第2位相シフタ領域7では位相変化量Δφの符号が正であり、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで位相変化量Δφの符号が逆になっている。
【0029】
特に、本実施形態では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とで、テーパ角が同一又は略同一になっている。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とが平行又は略平行になっており、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とが平行又は略平行になっている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とは、テーパ形状のくびれの位置が長さ方向で一致するようにしている。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の最も幅が狭い部分の位置と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の最も幅が広い部分の位置とが長さ方向で一致するようにしている。
【0030】
ここで、図6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7における導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量|Δφ|との関係を示している。
ここでは、W、LTP、LPSは、それぞれ、2.0μm、25.0μm、50.0μmに設定している。また、2種類の位相シフタ6,7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を比較するために、Δφは絶対値でプロットしている。
【0031】
図6に示すように、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化に対して、同じか、又は、小さくなっている。つまり、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化よりも緩やかになっている。これは、LTP、LPSに依存せずに得られる傾向である。
【0032】
ところで、本光分岐デバイス1は、半導体材料を用いて形成されるため、図2に示すような幅狭テーパ導波路型位相シフタ6や図4に示すような幅広テーパ導波路型位相シフタ7を作製するのに、ドライエッチング技術が用いられる。ドライエッチングでは、原理上、反応ガスによらず、エッチングされる領域の形状や面積に依存してエッチングが進行する。このため、図1に示すように、位相シフタ6,7を含む光導波路4,5及び光カプラ2,3に囲まれた領域は、局所的にエッチングの進み具合が異なってしまう。これにより、幅広テーパ導波路型位相シフタ7及び幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のそれぞれにおいて、ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wが変化してしまい、この結果、Δφも変化してしまうことになる。なお、ここではドライエッチングの場合を例に挙げて説明しているが、例えばウェットエッチングなどの他の方法でも同様である。
【0033】
ここで、図7(A),(B)は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7において、作製プロセスなどに起因して、ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wが変化し、所望のΔWTPからズレ量δWTPだけずれた場合の一例を示している。なお、図7(A),(B)では、所望のΔWTPを有する導波路幅を持つ幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を形成するためのマスク形状を実線で示し、ズレ量δWTPだけずれた導波路幅に形成された幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を点線で示している。
【0034】
局所的にエッチングが進んでしまう場合、図7(A)に示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅は、両方とも、マスク6X,7Xよりも狭くなる。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のΔWTPはδWTPだけ増大し、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のΔWTPはδWTPだけ減少する。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも遅れることになる。
【0035】
一方、局所的にエッチングが進まない場合、図7(B)に示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅は、両方とも、マスク6X,7Xよりも広くなる。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のΔWTPはδWTPだけ減少し、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のΔWTPはδWTPだけ増大する。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも進むことになる。
【0036】
このため、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを組み合わせて用いると、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作することになる。
したがって、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれても、即ち、テーパ形状が変化しても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって得られる相対的な位相差が、所望の位相差からずれるのを抑えることができる。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφと幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφとの総和が、本光分岐デバイス1における位相変化量Δφとなるが、この本光分岐デバイス1における位相変化量Δφが、所望の位相変化量からずれるのを抑えることができる。
【0037】
このように、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれて伝搬定数が変化しても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作するため、作製プロセスなどに起因する光分岐デバイス1の特性劣化を抑制することができる。
なお、このような効果は、図6に示す特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を示す特性と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を示す特性とが一致すると顕著になる。
【0038】
例えば、図6に示すように、位相変化量|Δφ|が22.5度以下の領域では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化とは、ほぼ一致している。つまり、LPSを50μmに設定した場合、位相変化量|Δφ|が22.5度以下になるようにするときは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の|ΔWTP|は、ほぼ同一にすることができる。この場合、図7(A),(B)中、実線で示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とでテーパ角はほぼ同一になる。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とがほぼ平行になり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とがほぼ平行になる。
【0039】
ここで、作製プロセスなどにおいて、所望の|ΔWTP|/W、即ち、所望の|ΔWTP|からずれて、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が、図7(A)に示すように、両方とも狭くなるか、図7(B)に示すように、両方とも広くなる場合がある。この場合、所望の|ΔWTP|からのズレ量δWTPはほぼ同一になる。
【0040】
そして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が両方とも狭くなると、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも遅れることになる。
逆に、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が両方とも広くなると、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも進むことになる。
【0041】
したがって、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって得られる相対的な位相差は、所望の位相差となる。つまり、本光分岐デバイス1における位相変化量Δφは、所望の位相変化量となる。
このように、作製プロセスなどにおいて位相シフタのテーパ角や導波路幅がずれても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作することで、所望の位相差が得られ、光分岐デバイス1の特性変化が緩和される。このため、大きな作製トレランスが得られることになる。
【0042】
次に、図8(A),(B)は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
なお、図8(A)は、位相シフタ長LPSを50μmとした場合(LPS=50μm)における特性を示しており、図8(B)は、位相シフタ長LPSを100μmとした場合(LPS=100μm)における特性を示している。また、図8(A),(B)では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wを、1.9μmにした場合の特性を実線Aで示しており、2.0μmにした場合の特性を実線Bで示しており、2.1μmにした場合の特性を実線Cで示している。
【0043】
図8に示すように、位相シフタ長LPSと関係なく、導波路幅Wが狭まると、|ΔWTP|/Wに対するΔφが相対的に増大する一方、導波路幅Wが広がると、|ΔWTP|/Wに対するΔφが相対的に減少する傾向がある。
但し、図8(A)に示すように、LPSを50μmに設定した場合、本光分岐デバイス1の位相変化量が45度以下になるようにするときは、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きいことが分かる。つまり、位相シフタ長LPSが50μmであって、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφを22.5度以下にする場合、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きいことが分かる。
【0044】
なお、ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における特性を示して説明しているが、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における特性も同様の傾向を示す。つまり、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における特性は多少異なるが、LPSを50μmに設定した場合、本光分岐デバイス1の位相変化量Δφが45度以下になるようにするときは、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きい。
【0045】
このように、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7の長さ、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7及び幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ(位相シフタ長)は、約50μmにするのが好ましい。
次に、本光分岐デバイス1を構成する光半導体素子の具体的な構成例について、図9を参照しながら説明する。
【0046】
本光分岐デバイス1は、図9に示すように、InP基板8上に、GaInAsPコア層9(バンドギャップ波長λg=1.3μm)、InPクラッド層10を備え、ハイメサ導波路構造11を有する光半導体素子である。
ここでは、入力側光カプラ2や出力側光カプラ3に接続される各光導波路(チャネル)の導波路幅Wは2.0μmとし、単一モード条件を満たすようにしている。また、本光分岐デバイス1は、光信号を例えば82:18で非対称に分岐する光分岐デバイスである。
【0047】
このように、光半導体素子として構成される光分岐デバイス1は、以下のようにして作製される。
まず、図9に示すように、n型InP基板8上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、アンドープGaInAsPコア層9、アンドープInPクラッド層10を順にエピタキシャル成長させる。
【0048】
ここでは、アンドープGaInAsPコア層9は、発光波長1.30μm,層厚0.3μmである。また、アンドープInPクラッド層10は、層厚2.0μmである。なお、基板8はアンドープInP基板であっても良い。また、クラッド層10はp型ドープInPクラッド層であっても良い。
次に、上述のようにしてエピタキシャル成長を行なったウェハの表面上に、例えばSiO2膜を例えば蒸着装置などによって成膜し、例えば光露光プロセスによって、光分岐デバイスを形成するための導波路パターンをパターニングする。ここでは、導波路パターンは、幅テーパ形状を有する位相シフタのパターンを含む。この導波路パターンは光露光装置のフォトマスクによって規定される。なお、光分岐デバイス1を光合分岐器素子ともいう。
【0049】
次いで、このようにしてパターニングされたSiO2膜をマスクとして、例えば誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(ICP−RIE;Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)などの方法でドライエッチングを行なう。これにより、例えば高さ3.0μm程度のハイメサ導波路ストライプ構造11を形成する。
このような作製プロセスを経て、本光分岐デバイス1が完成する。
【0050】
次に、図10は、本光分岐デバイス1の位相変化量Δφを45度に設定した場合の所望のΔWTPからのズレ量δWTPと光分岐デバイス1の2つの出力チャネルから出力される光の透過率(Transmittance)との関係を示している。
なお、図10では、本光分岐デバイス1の特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用し、各位相シフタ6,7の位相変化量Δφを22.5度に設定した光分岐デバイス1の特性を実線Aで示している。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた光分岐デバイスの特性を実線Bで示している。さらに、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを設けた光分岐デバイスの特性を破線Cで示している。また、ここでは、光分岐デバイスの位相変化量Δφが45度になるように、位相シフタの導波路幅の変化量ΔWTPを適正化した後、作製プロセスなどにおいて生じたズレ量をδWTPとして定義している。
【0051】
図10に示すように、δWTP=0μmの場合、どの光分岐デバイスにおいても、光分岐デバイスの分岐比は所定値(ここでは82:18)になっている。
一方、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布すると、光分岐デバイスの分岐比は、位相シフタに大きく依存することが分かる。
例えば、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた光分岐デバイスの場合、図10中、実線Bで示すように、δWTPに対して分岐比が線形的に変化し、その変化率は±6%にも及ぶ。これは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφ、即ち、光分岐デバイスの位相変化量Δφが変化したことに起因する(図3参照)。
【0052】
また、例えば、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを設けた光分岐デバイスの場合、図10中、破線Cで示すように、δWTPに対する分岐比の変化が多少小さくなるものの、依然として、δWTPに対する分岐比の変化率は±3.5%に及んでいる。これは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφ、即ち、光分岐デバイスの位相変化量Δφが変化したことに起因する(図5参照)。
【0053】
これに対し、本光分岐デバイス1の場合、図10中、実線Aで示すように、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布したとしても、光分岐デバイス1の分岐比はほぼ一定に保たれ、その変化率は±1.8%以下に抑えることができる。
このように、本光分岐デバイス1によれば、所望のΔWTPからズレ量δWTPだけずれ、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφのそれぞれが変化したとしても、δWTPに対する分岐比の変化を抑えることができる。これは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφのそれぞれの変化は相補的に生じるため、これらの総和である光分岐デバイス1の位相変化量Δφはそれほど大きく変化しないことに起因する。
【0054】
なお、ここでは、光分岐デバイスの位相変化量Δφを45度に設定した場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、他の位相変化量に設定した場合であっても、同様に特性向上の効果が得られる。この場合、位相変化量Δφが90度以上の場合よりも、90度以下の場合の方が、顕著に特性が向上する。但し、位相変化量Δφが90度以上の場合であっても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する構成以外の構成と比べれば、特性が向上することになる。
【0055】
したがって、本実施形態にかかる光デバイス1によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、光分岐デバイス1の素子特性を向上させることもできる。
【0056】
つまり、図2に示すような幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを用いる場合、位相変化量Δφを増大させるにつれて、位相シフタ6の導波路幅を狭くしなければならず、位相シフタ6の導波路幅の変化量ΔWTPを大きくしなければならない。この場合、カットオフ付近になることもあり得るため、過剰損失が発生するおそれがある。
一方、図4に示すような幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを用いる場合、位相変化量Δφを増大させるにつれて、位相シフタ7の導波路幅を広くしなければならず、位相シフタ7の導波路幅の変化量ΔWTPを大きくしなければならない。この場合、高次モードが励振することもあり得るため、素子特性が劣化してしまうおそれがある。
【0057】
これらの場合と比較して、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する場合には、各位相シフタ6,7の導波路幅の変化量ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wの値を半分程度に設定すれば良い。このため、過剰損失が発生するのを抑制することができ、また、高次モードが励振して素子特性が劣化してしまうのを抑制することができる。
【0058】
なお、図22に示したような構成、即ち、両方のアームの導波路幅を狭くする構成では、位相差を与えるために位相シフタの長さを長くしなくてはならない。このような構成と比較して、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する構成では、位相シフタ6,7の長さを短くすることができる。
また、光分岐デバイス1において、任意の光分岐比を得るためには、図24に示すように、2つの2:2光カプラ105,106の間に設けられた2本の導波路100,101のうち、一方の導波路100上に電極107を設けて位相シフタ領域とし、この電極107を介して電流注入又は電圧印加によって、分岐された光に位相差を与えることも考えられる。しかしながら、電流注入又は電圧印加が必要であるため、電力を消費することになる。これに対し、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用すれば、電力を消費することなく、分岐された光に所望の位相差を与えることができる。
【0059】
また、上述の実施形態では、第1導波路4の一部が第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の一部が第2位相シフタ領域7になっているが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、第1導波路4の全体が第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の全体が第2位相シフタ領域7になっていても良い。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。
【0060】
また、上述の実施形態では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路になっているが、これに限られるものではない。つまり、第1位相シフタ領域6は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタであれば良い。また、第2位相シフタ領域7は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタであれば良い。
【0061】
例えば、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図12に示すようなパラボリックテーパ形状や楕円関数型テーパ形状などの他のテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていても良い。この場合、第1位相シフタ領域6は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて曲線状に狭くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて曲線状に広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ型導波路となる。また、第2位相シフタ領域7は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に広くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ型導波路となる。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。この場合も上述の実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0062】
また、上述の実施形態では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっているが、これに限られるものではない。例えば、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図13に示すように、長さ方向中心位置に対して非対称な導波路構造になっていても良い。つまり、テーパ長が位相シフタ長の1/2になっていなくても良く、テーパ形状のくびれの位置、即ち、導波路幅が最も狭くなっている部分の位置又は導波路幅が最も広くなっている部分の位置が、長さ方向中心位置に対してずれていても良い。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。但し、テーパ形状のくびれの位置は、テーパ形状が断熱的に変化する範囲内とする。つまり、導波路幅が急激に広くなって高次モードが立たないように、導波路幅が十分に緩やかに変化するようにする。この場合も上述の実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0063】
また、上述の実施形態では、本発明を、光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスに適用した場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、上述の実施形態では、光信号を異なる比率(例えば82:18)で非対称に分岐する光分岐デバイスを例に挙げて説明しているが、光信号を同一の比率で対称に分岐する光分岐デバイスに本発明を適用することもできる。
【0064】
また、例えば光分岐機能を有しないマッハツェンダ型光デバイスなどにも本発明を適用することができる。例えば、図14に示すようなマッハツェンダ型光変調器1Aに本発明を適用することができる。この場合、上述の実施形態の構成において、入力側光カプラ(第1カプラ)を、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ2Aとし、出力側光カプラ(第2カプラ)を、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に1つのチャネルを有する2:1光カプラ3Aとすれば良い。
【0065】
また、本発明は位相差を有する光の干渉を利用する光デバイスに適用することができるため、マッハツェンダ干渉計以外の干渉計を構成する光デバイス、即ち、マッハツェンダ型光回路以外の光干渉回路にも本発明を適用することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図15,16を参照しながら説明する。
【0066】
本実施形態では、本発明を適用した光デバイスとして、光ハイブリッド回路を例に挙げて説明する。
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、光伝送システム(光通信システム)において四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)信号の位相変調情報を識別(復調)するために用いられる90度ハイブリッド回路(以下、90度ハイブリッドともいう)である。
【0067】
本実施形態では、図15に示すように、光ハイブリッド回路12は、前段の多モード干渉(MMI)カプラ13と、後段の光カプラ14とを備え、これらが従属接続されている。この光ハイブリッド回路12は、MMIカプラ13と光カプラ14とを備え、半導体導波路構造を有する光半導体素子によって構成されている。なお、前段の多モード干渉カプラ13を第1カプラといい、後段の光カプラ14を第2カプラという。
【0068】
ここでは、前段のMMIカプラ13は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4MMIカプラである。
具体的には、対モード干渉(PI:Paired Interference)に基づく2:4MMIカプラである。つまり、2つの入力チャネルの中心はMMI幅の上側から1/3及び2/3に位置し、MMI領域において(3s−1)次の高次モード(sは1以上の自然数)が励振されない2:4MMIカプラである。このため、素子長を短くすることができる。
【0069】
なお、ここでは、PIに基づく2:4MMIカプラを用いているが、これに限られるものではなく、一対の入力チャネルが幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられており、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラを用いれば良い。例えば、一般モード干渉(GI:General Interference)に基づく2:4MMIカプラを用いても良い。つまり、2つの入力チャネルの中心は、MMI領域の中心対称性を崩さない範囲内で、MMI幅の1/3及び2/3の位置を除いた領域に位置し、MMI幅に応じた全てのモードが励振する2:4MMIカプラを用いても良い。
【0070】
後段の光カプラ14は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、2つの入力チャネルのそれぞれから対角線上に位置する2つの出力チャネルへ向けて伝播する光の位相を90度遅らせる機能を有する2:2光カプラである。
具体的には、2:2MMIカプラである。ここでは、2:2MMIカプラは、2:4MMIカプラの出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)に接続されている。なお、2:2MMIカプラは、PIに基づくものであっても良いし、GIに基づくものであっても良い。
【0071】
このため、本光ハイブリッド回路12は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネル(Ch−1,Ch−2,Ch3,Ch−4)を有することになる。
この光ハイブリッド回路12の入力側の一のチャネル、即ち、2:4MMIカプラ13の入力側の一のチャネルには、QPSK信号光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路12の入力側の一のチャネルは、QPSK信号光を入力するための入力チャネルである。また、光ハイブリッド回路12の入力側の他のチャネル、即ち、2:4MMIカプラ13の入力側の他のチャネルには、局部発振(LO:local oscillator)光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路12の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するための入力チャネルである。
【0072】
そして、2:4MMIカプラ13によって、QPSK信号光が同相(In-phase)関係にある一対の第1光信号及び同相(In-phase)関係にある一対の第2光信号に変換される。つまり、QPSK信号光が、直交位相成分(Q成分)を含まず、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号、及び、直交位相成分(Q成分)を含まず、同相成分(I成分)のみを含む一対の第2光信号に変換される。
【0073】
なお、図15中、S−L,S+L,S+jL,S−jLは、信号光(S)の位相を基準にして、LO光(L)の位相が相対的にどのような関係になっているかを示している。ここでは、S−LとS+Lとは180度ずれた位相関係になっていることを示しており、S+jL,S−jLは、それぞれ、S+L,S−Lに対して90度ずれた位相関係になっていることを示している。
【0074】
ここでは、一対の第1光信号は、2:4MMIカプラ13の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)、即ち、光ハイブリッド回路12の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(Ch−1,Ch−2)から出力される。また、一対の第2光信号は、2:4MMIカプラ13の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)から出力され、2:2MMIカプラ14の入力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルに入力される。
【0075】
次いで、図15に示すように、2:2MMIカプラ14によって、一対の第2光信号が直交位相(Quadrature)関係にある一対の第3光信号に変換される。つまり、同相成分(I成分)のみを含む一対の第2光信号が、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第3光信号に変換される。
そして、一対の第3光信号は、2:2MMIカプラ14の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル、即ち、光ハイブリッド回路12の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(Ch3,Ch−4)から出力される。
【0076】
このような本光ハイブリッド回路12では、図15に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とが出力されることになる。
このように、光ハイブリッド回路12の4つの出力チャネル(Ch−1,Ch−2,Ch3,Ch−4)のそれぞれから出力される信号光の出力強度比が、QPSK信号光の位相(0,π,−π/2,+π/2)に応じて異なるものとなる。
【0077】
上述のように、2:4MMIカプラ13によって、QPSK信号光を同相関係にある第1光信号及び同相関係にある第2光信号に変換した後、2:2MMIカプラ14によって、第2光信号を直交位相関係にある第3光信号に変換するようにしているのは、以下の理由による。
2:4MMIカプラ13にQPSK信号光及びLO光を入力すると、2:4MMIカプラ13の2つのチャネルから同相関係にある一対の第1光信号が出力され、他の2つのチャネルから同相関係にある一対の第2光信号が出力される。
【0078】
QPSK信号光とLO光との相対位相差Δψが0、πの場合、4つの出力成分間の強度比(出力強度比)は、それぞれ、0:2:2:0、2:0:0:2となる。つまり、相対位相差Δψが0、πの場合、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。
しかし、相対位相差Δψが−π/2、+π/2のいずれの場合も出力強度比が1:1:1:1となる。つまり、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合、同じ分岐比を有する出力形態になってしまう。
【0079】
このため、180度ハイブリッドとしては機能するものの、90度ハイブリッドとしては機能しない。例えばPIに基づく2:4MMIカプラのように、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラ13を用いる場合、90度ハイブリッドとして動作させることは原理的に不可能である。
そこで、上述のように、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラ13に、2:2MMIカプラ14を従属接続することによって、非対称性を有する構造を形成し、90度ハイブリッドとして機能しうるようにしている。
【0080】
つまり、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルに2:2MMIカプラ14を従属接続することによって、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルからの出力成分のみが2:2MMIカプラ14を伝搬する際に結合作用とともに新たな位相変化を受けるようにしている。ここでは、2:2MMIカプラ14を設けることによって、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合にも、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られるようにしている。なお、2:2MMIカプラ14は、GIあるいはPIに基づくものであれば同様の特性を得ることができる。
【0081】
これにより、本光ハイブリッド回路12は、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とを出力することになる。
ところで、2:4MMIカプラ13に2:2MMIカプラ14を従属接続するだけでは、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合に、3番目及び4番目の出力チャネルの出力成分において、特性が劣化することが考えられる。これは、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルにおける出力信号と2:2MMIカプラ14との間に位相整合がとれていないことに起因するものである。
【0082】
特性の劣化が生じないようにして、確実に90度ハイブリッド動作が得られるようにするためには、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルにおける出力信号と2:2MMIカプラ14との間に位相整合をとることが必要不可欠である。
具体的には、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第2光信号)の位相を調整し、2:2MMIカプラ14に入力される一対の第2光信号の位相差Δθがπ/2+p*π(pは整数)になれば解消する。
【0083】
そこで、本実施形態では、2:2MMIカプラ14に接続される2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルのそれぞれに、直交位相成分の特性劣化が生じないように位相を調整しうる第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7を接続している。つまり、2:4MMIカプラ13と2:2MMIカプラ14とを接続する第1光導波路4及び第2光導波路5のそれぞれに、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7を設けている。
【0084】
そして、2:2MMIカプラ14の入力側の2つのチャネルに入力される光の位相差Δθがπ/2+p*π(pは整数)になるように、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルのそれぞれから出力される光(一対の第2光信号)の位相を調整するようにしている。
本実施形態では、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルから出力される一対の第2光信号の位相差Δθは、おおよそπ/4+p*π(pは整数)になる。
【0085】
このため、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、2:4MMIカプラ13から出力される一対の第2光信号にπ/4+p*π(pは整数)に相当する位相差を与え、2:2MMIカプラ14に入力される一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせるようになっている。
ここで、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、上述の第1実施形態やその変形例の第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7と同様に構成されている。
【0086】
具体的には、第1位相シフタ領域6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、2:4MMIカプラ13の出力ポートと2:2MMIカプラ14の入力ポートの間の第1光導波路4の幅が、出力ポートから長さ方向の中間位置へ向けて狭くなり、中間位置から入力ポートへ向けて広くなるようにして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成している。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6によって、2:4MMIカプラ13の3番目の出力チャネルから出力された光の位相が22.5度遅れ、ポート2:2MMIカプラ14の入力側の1番目のチャネルに入力される光の位相が45度遅れるようにしている。
【0087】
一方、第2位相シフタ領域7は、幅広テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、2:4MMIカプラ13の出力ポートと2:2MMIカプラ14の入力ポートの間の第2光導波路5の幅が、出力ポートから長さ方向の中間位置へ向けて広くなり、中間位置から入力ポートへ向けて狭くなるようにして、幅広テーパ導波路型位相シフタ7を形成している。ここでは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、2:4MMIカプラ13の4番目の出力チャネルから出力された光の位相が22.5度進み、2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルに入力される光の位相が45度進むようにしている。
【0088】
このように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφと幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφとの総和が45度になるようにしている。これにより、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルから出力され、45度の位相差を有する一対の第2光信号は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、その位相差が90度にされる。このようにして、2:2MMIカプラ14の入力側の1番目のチャネルに入力される光と、2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルに入力される光との間の位相差が90度になるようにしている。
【0089】
これにより、本光ハイブリッド回路12は、図15に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とを出力することになり、確実に90度ハイブリッド動作が得られることになる。つまり、本光ハイブリッド回路12によって、QPSK信号光が、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号と、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第3光信号に変換され、確実に90度ハイブリッド動作が得られることになる。
【0090】
ここでは、同相関係にある一対の第1光信号、即ち、同相成分のみを含む一対の第1光信号は、位相が180度ずれた一対の光信号である。また、直交位相関係にある一対の第3光信号、即ち、直交位相成分のみを含む一対の第3光信号は、一対の第1光信号に対して位相が90度ずれた一対の光信号である。なお、一対の第3光信号は、位相が180度ずれた一対の光信号である。
【0091】
これにより、相対位相差Δψが0、πの場合、光ハイブリッド回路12の出力強度比は、それぞれ、0:2:1:1、2:0:1:1となる。また、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合、光ハイブリッド回路12の出力強度比は、それぞれ、1:1:2:0、1:1:0:2となる。
このように、本光ハイブリッド回路12では、QPSK信号光の位相状態に対して、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。また、本光ハイブリッド回路12では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7が設けられているため、Quadrature成分における過剰損失及びクロストークを著しく減少させることができる。したがって、本光ハイブリッド回路12は確実に90度ハイブリッドとして機能する。
【0092】
ところで、上述の第1実施形態で説明したように、作製プロセスなどにおいて、位相シフタのパラメータが所定値からずれると、直交位相成分の特性劣化が生じることになる。
通常、エラーを伴わない光信号処理を行なうためには、出力信号におけるクロストークレベルを20dB以下に抑えるのが好ましい。
ここで、図16は、本実施形態にかかる90度ハイブリッド12に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の所望の変化量ΔWTPからのズレ量δWTPと、直交位相関係にある出力信号のクロストークとの関係を示している。
【0093】
なお、図16中、実線Aは、本実施形態の90度ハイブリッドの特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を設けた90度ハイブリッド12の特性を示している。また、図16中、実線Bは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが50μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。また、図16中、実線Cは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが100μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。また、図16中、実線Dは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが200μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。
【0094】
図16中、実線B,C,Dで示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた場合であっても、位相シフタ長LPSによってクロストークの特性が異なり、位相シフタ長LPSが短くなるほど、δWTPに対するクロストークの許容範囲が広くなることが分かる。これは、位相シフタ長LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、その変化率が減少することに起因する(図3参照)。ここでは、位相シフタ長LPSが50μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を設ける場合のみ、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布すれば、直交位相信号のクロストークを辛うじて20dB以下に抑えることができることが分かる。
【0095】
これに対し、本実施形態の90度ハイブリッド12では、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布した場合、直交位相信号のクロストークを35dB以下に抑えることができ、大幅に特性を改善することができる。このため、QPSK変調信号における高効率な復調動作が可能になる。
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路12によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【0096】
また、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
なお、上述の実施形態では、前段のMMIカプラ13として、2:4MMIカプラを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。前段のMMIカプラ13は、四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換するMMIカプラであれば良い。
【0097】
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:4MMIカプラ13に代えて、図17に示すように、入力側に4つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する4:4MMIカプラ13Aを用いても良い。そして、4:4MMIカプラ13Aの入力側の4つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネル(一対の入力チャネル)に光を入力するようにすることで、上述の実施形態の場合と同様に90度ハイブリッド動作が得られる。
【0098】
この場合、4:4MMIカプラ13Aは、GIに基づくものであり、MMI領域の中心軸対称性を崩さない範囲内で、入力チャネル及び出力チャネルを自由に位置させることができる。つまり、入力側の上から1番目及び2番目のチャネルと入力側の3番目及び4番目のチャネルとは、中心軸対称性があれば、その位置はどこでも良い。また、出力側の上から1番目及び2番目のチャネルと出力側の3番目及び4番目のチャネルとは、中心軸対称性があれば、その位置はどこでも良い。但し、チャネル位置によって分岐特性に多少影響はある。
【0099】
また、上述の実施形態では、後段の光カプラ14として、2:2MMIカプラを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。後段の光カプラ14は、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する光カプラであれば良い。
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:2MMIカプラ14に代えて、方向性結合器(3dBカプラ;例えば2:2方向性結合器)を用いても良い。また、例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:2MMIカプラ14に代えて、二モード干渉カプラ(例えば2:2二モード干渉カプラ)を用いても良い。これらの場合も上述の実施形態のものと同様の効果が得られる。また、ここでは、上述の実施形態の変形例として説明しているが、これらの変形例を、前段のMMIカプラとして4:4MMIカプラ13Aを用いる変形例に適用することもできる。
【0100】
また、上述の実施形態では、光カプラ14によって、同相関係にある一対の第2光信号を直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、図18に示すように、光カプラ14によって、同相関係にある一対の第1光信号を直交位相関係にある一対の第3光信号に変換するようにしても良い。
【0101】
この場合、光カプラ14は、図18に示すように、前段のMMIカプラ13の出力側の隣接する一対の第1出力チャネルに接続することになる。つまり、2:2MMIカプラ14を、2:4MMIカプラ13の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)に接続することになる。なお、2:4MMIカプラ13と2:2MMIカプラ14とを接続する1番目のチャネルを第2光導波路といい、2番目のチャネルを第1光導波路という。
【0102】
また、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図18に示すように、前段のMMIカプラ13の光カプラ14が接続された一対の第1出力チャネルのそれぞれに接続すれば良い。例えば、図18に示すように、2:4MMIカプラ13の出力側の1番目のチャネルと2:2MMIカプラの入力側の1番目のチャネルとの間の第2光導波路に第2位相シフタ領域7を設けるとともに、2:4MMIカプラ13の出力側の2番目のチャネルと2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルとの間の第1光導波路に第1位相シフタ領域6を設ければ良い。なお、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、上述の実施形態の場合と同様に構成すれば良い。これにより、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、2:2MMIカプラ14に入力する2つの信号成分間にπ/4に相当する位相ズレ(位相変化量)を与えることができ、上述の実施形態のものと同様に大幅な特性改善効果が得られる。
【0103】
このように構成した場合、上述の実施形態のものに対して、90度ハイブリッドの出力信号におけるIn-phaseとQuadratureの位置関係が入れ替わることになる。そして、相対位相差Δψが0の場合、πの場合、−π/2の場合、+π/2の場合のそれぞれの場合において、出力強度比は1:1:0:2、1:1:2:0、2:0:1:1、0:2:1:1となる。
[第3実施形態]
第3実施形態にかかる光受信機、光送受信機について、図19を参照しながら説明する。
【0104】
本実施形態にかかる光受信機は、図19に示すように、上述の第2実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12[QPSK信号用90度ハイブリッド;図15、図17、図18参照]を含むコヒーレント光受信機20である。このコヒーレント光受信機20は、90度ハイブリッド12によって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0105】
このため、本光受信機20は、図19に示すように、上述の第2実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12と、フォトダイオード(光電変換部)21A,21Bと、トランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans-impedance amplifier)27A,27Bと、AD変換回路(AD変換部)22A,22Bと、デジタル演算回路(デジタル演算部)23とを備える。
【0106】
ここで、光ハイブリッド回路12は、QPSK信号光を同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換するMMIカプラ13(13A)と、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する光カプラ14とを備える[図15、図17、図18参照]。
ここでは、MMIカプラは2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)である。また、光カプラは2:2MMIカプラ14である。そして、光ハイブリッド回路12は光半導体素子によって構成される。
【0107】
本実施形態では、図19に示すように、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の一のチャネルにQPSK信号光が入力され、2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルにLO光が入力されるようになっている。つまり、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の一のチャネルは、QPSK信号光を入力するためのチャネルである。また、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するためのチャネルである。
【0108】
このため、本光受信機20は、さらに、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルにLO光を入力するための局部発振光発生部(LO光源)24を備える。
そして、光ハイブリッド回路12にQPSK信号光(QPSK信号パルス)とこれに時間的に同期したLO光が入力されると、信号光の位相状態、即ち、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δψに応じて、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。ここでは、相対位相差Δψが0、π、−π/2、+π/2の場合に、光ハイブリッド回路1の出力強度比は、それぞれ、0:2:1:1、2:0:1:1、1:1:2:0、1:1:0:2となる。
【0109】
フォトダイオード21A,21Bは、光ハイブリッド回路12の多モード干渉カプラ13(13A)及び光カプラ14のそれぞれから出力される一対の光信号をアナログ電気信号(アナログ電流信号)に光電変換するフォトダイオードである。
ここでは、光電変換及び信号復調のために、光ハイブリッド回路12の後段にバランスドフォトダイオード(BPD)21A,21Bが設けられている。ここで、BPD21A,21Bは、2つのフォトダイオード(PD)を備え、一方のPDのみに光信号が入力された場合は「1」に相当する電流が流れ、他方のPDのみに光信号が入力された場合は「−1」に相当する電流が流れ、両方のPDに同時に光信号が入力された場合は電流が流れない。このため、相対位相差Δψに応じて、異なる出力強度比の光信号が、光ハイブリッド回路1から2つのBPD21A,21Bへ入力されると、2つのBPD21A,21Bから異なるパターンの電気信号が出力されることになる。つまり、2つのBPD21A,21Bによって、QPSK信号光における位相情報が識別され、それぞれ異なるパターンの電気信号に変換されることになる。
【0110】
具体的には、光ハイブリッド回路12の出力側の1番目及び2番目のチャネルに第1BPD21Aが接続されており、光ハイブリッド回路12の出力側の3番目及び4番目のチャネルに第2BPD21Bが接続されている。つまり、同相関係にある一対の第1光信号が出力される1番目及び2番目のチャネル(隣接する一対の第1出力チャネル)に第1BPD21Aが接続されている。また、同相関係にある一対の第2光信号(第1光信号に対しては直交位相関係にある)が出力される3番目及び4番目のチャネル(隣接する一対の第2出力チャネル)に第2BPD21Bが接続されている。この場合、それぞれのBPDへの入力状態も異なる。
【0111】
トランスインピーダンスアンプ27A,27Bは、フォトダイオード21A,21BとAD変換回路22A,22Bとの間に設けられている。つまり、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bは、フォトダイオード21A,21B及びAD変換回路22A,22Bに接続されている。そして、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bによって、フォトダイオード21A,21Bから出力されるアナログ電流信号がアナログ電圧信号(アナログ電気信号)に変換されるようになっている。
【0112】
AD変換回路22A,22Bは、フォトダイオード21A,21Bから出力され、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bによって変換されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路である。つまり、AD変換回路22A,22Bは、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するようになっている。
【0113】
デジタル演算回路23は、AD変換回路22A,22Bから出力されるデジタル電気信号を用いて、受信信号光の情報を推定するための演算処理を実行するデジタル演算回路(デジタル信号処理回路)である。
なお、光ハイブリッド回路12の詳細については、上述の第2実施形態及びその変形例と同様であるから、ここではその説明を省略する。
【0114】
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて光ハイブリッド回路12の位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、光ハイブリッド回路12の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
【0115】
なお、上述の実施形態及び変形例では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
また、上述の実施形態及び変形例では、光ハイブリッド回路12が、MMIカプラ13(13A)と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されているが、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13(13A)と光カプラ14とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13(13A)と、光カプラ14と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図20を参照しながら説明する。
【0116】
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、上述の第2実施形態のものがQPSK信号光及びLO光が時間的に同期させて入力されるようになっているのに対し、差分四位相偏移変調(DQPSK)信号が入力されるようになっている点で異なる。
つまり、本光ハイブリッド回路は、光伝送システムにおいてDQPSK信号の位相変調情報を識別するために用いられる90度ハイブリッド回路(以下、90度ハイブリッドともいう)である。
【0117】
このため、図20に示すように、本光ハイブリッド回路12Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路12の構成に加え、光遅延回路25と、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ26とを備える。つまり、本光ハイブリッド回路12Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の前段(前端部)に光遅延回路25を介して1:2光カプラ26が従属接続された構造になっている。なお、上述の第2実施形態と同様に、光ハイブリッド回路12は、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されている。また、図20では、上述の第2実施形態(図15参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0118】
ここで、光遅延回路25は、上述の第2実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の入力側の一のチャネルに接続されている。
1:2光カプラ26は、光遅延回路25及び2:4MMIカプラ13の入力側の他のチャネルに接続されている。ここでは、1:2光カプラ26は1:2MMIカプラである。
具体的には、2:4MMIカプラ13の一の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の一の出力チャネルとを接続する一の光導波路の長さを、2:4MMIカプラ13の他の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の他の出力チャネルとを接続する他の光導波路の長さよりも長くしている。
【0119】
つまり、2:4MMIカプラ13の2つの入力ポートと1:2MMIカプラ26の2つの出力ポートとを接続する2つの光導波路(アーム)の長さ(光路長)に差が設けられている。
ここでは、一の光導波路の長さを長くして、DQPSK信号パルスの1ビットの遅延に相当する光路長差を設けている。このため、上述の第2実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の一の入力チャネルに接続された一の光導波路が光遅延回路25である。
【0120】
そして、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルに、DQPSK信号光が入力されるようになっている。このため、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルは、DQPSK信号光を入力するための入力チャネルである。DQPSK信号光パルスは、1:2MMIカプラ26を経由して2つの経路に分けられ、一方のDQPSK信号光は光遅延回路25によって1ビット遅延された後、2つのDQPSK信号光が時間的に同期して2:4MMIカプラ13に入力されることになる。この場合、2:4MMIカプラ13の2つの入力チャネルのそれぞれに入力されるDQPSK信号光の相対位相差は、上述の第2実施形態において説明した4種類の相対位相差Δψのいずれかになる。このため、上述の第2実施形態と同様の2:4MMIカプラ以降の回路構成によって、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。したがって、本光ハイブリッド回路12Aも、上述の第2実施形態の場合と同様に、90度ハイブリッドとして機能する。
【0121】
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態と同様であるから、ここではその説明を省略する。ここで、上述の第2実施形態のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、QPSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのDQPSK信号光に読み替えて適用すれば良い。
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路によれば、上述の第2実施形態の場合と同様に、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【0122】
また、上述の第2実施形態の場合と同様に、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
なお、上述の実施形態では、2:4MMIカプラ13の前段に設けられる1:2光カプラ26として1:2MMIカプラを用いているが、これに限られるものではない。例えば、1:2MMIカプラの代わりに、Y分岐カプラ、2:2方向性結合器などを用いることもでき、この場合も上述の実施形態の場合と同様に90度ハイブリッド動作を得ることができる。
【0123】
また、上述の実施形態では、上述の第2実施形態と同様に、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子を含むものとして構成されているが、これに限られるものではない。例えば、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを備える光半導体素子によって構成されていても良い。
【0124】
また、上述の第2実施形態の変形例(図17、図18参照)は、本実施形態のものにも同様に適用することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態にかかる光受信機、光送受信機について、図21を参照しながら説明する。
【0125】
本実施形態にかかる光受信機は、図21に示すように、上述の第4実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12A(DQPSK信号用90度ハイブリッド;図20参照)を含むコヒーレント光受信機20Aである。このコヒーレント光受信機20Aは、90度ハイブリッド12Aによって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0126】
このため、本光受信機20Aは、図21に示すように、上述の第4実施形態及び変形例の光ハイブリッド回路12Aと、フォトダイオード(光電変換部)21A,21Bと、トランスインピーダンスアンプ(TIA)27A,27Bと、AD変換回路(AD変換部)22A,22Bと、デジタル演算回路(デジタル演算部)23とを備える。
なお、光ハイブリッド回路12Aの詳細については、上述の第4実施形態及びその変形例(図20参照)と同様であるから、ここではその説明を省略する。また、フォトダイオード21A,21B、トランスインピーダンスアンプ27A,27B、AD変換回路22A,22B、デジタル演算回路23の構成及び光受信方法については、上述の第3実施形態及びその変形例(図19参照)と同様であるから、ここではその説明を省略する。但し、本光受信機20Aには局部発振光発生部は存在しない。ここで、上述の第3実施形態及びその変形例のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、QPSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのDQPSK信号光に読み替えて適用すれば良い。なお、図21は、上述の第3実施形態(図19参照)及び第4実施形態(図20参照)のものと同一のものには同一の符号を付している。
【0127】
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて光ハイブリッド回路12Aの位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、光ハイブリッド回路12Aの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
【0128】
なお、上述の実施形態では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の第3実施形態の変形例と同様に、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されることになるが(第4実施形態参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13と、光カプラ14と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
【0129】
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子によって構成されることになるが(第4実施形態の変形例参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0130】
以下、上述の各実施形態及びその変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
光信号を分岐する第1カプラと、
光信号を干渉させる第2カプラと、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第1導波路と、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、
前記第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする光デバイス。
【0131】
(付記2)
前記第1位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路になっており、
前記第2位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路になっていることを特徴とする、付記1に記載の光デバイス。
【0132】
(付記3)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、直線テーパ形状、パラボリックテーパ形状、楕円関数型テーパ形状のいずれかのテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていることを特徴とする、付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記4)
前記第1導波路の全体が、前記第1位相シフタ領域であり、
前記第2導波路の全体が、前記第2位相シフタ領域であることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0133】
(付記5)
前記第1導波路の一部が、前記第1位相シフタ領域であり、
前記第2導波路の一部が、前記第2位相シフタ領域であることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記6)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造を有することを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0134】
(付記7)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さ方向中心位置に対して非対称な導波路構造を有することを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記8)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さが50μm以下であることを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0135】
(付記9)
前記第1カプラ及び前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラであることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記10)
前記第1カプラは、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラであり、
前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に1つのチャネルを有する2:1光カプラであることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0136】
(付記11)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする、光ハイブリッド回路。
【0137】
(付記12)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、前記一対の第1光信号間の位相差又は前記一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせる領域であることを特徴とする、付記11に記載の光ハイブリッド回路。
(付記13)
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記11又は12に記載の光ハイブリッド回路。
【0138】
(付記14)
前記2:4多モード干渉カプラは、対モード干渉に基づく2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記13に記載の光ハイブリッド回路。
(付記15)
前記多モード干渉カプラは、入力側に4つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する4:4多モード干渉カプラであり、前記入力側の4つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネルが光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11又は12に記載の光ハイブリッド回路。
【0139】
(付記16)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11〜15のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0140】
(付記17)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11〜15のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0141】
(付記18)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号又は前記第2光信号、及び、前記2:2光カプラから出力される前記第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【0142】
(付記19)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに局部発振光を入力するための局部発振光発生部を備えることを特徴とする、付記18に記載の光受信機。
【0143】
(付記20)
前記光ハイブリッド回路が、
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを含み、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記18に記載の光受信機。
【符号の説明】
【0144】
1 光分岐デバイス(光デバイス)
1A マッハツェンダ型光変調器(光デバイス)
2 入力側光カプラ(2:2MMIカプラ)
2A 1:2光カプラ(入力側光カプラ)
3 出力側光カプラ(2:2MMIカプラ)
3A 2:1光カプラ(出力側光カプラ)
4 第1導波路
5 第2導波路
6 第1位相シフタ領域(幅狭テーパ導波路型位相シフタ)
7 第2位相シフタ領域(幅広テーパ導波路型位相シフタ)
6X,7X マスク
8 InP基板
9 GaInAsPコア層
10 InPクラッド層
11 ハイメサ導波路構造
12,12A 光ハイブリッド回路(光デバイス)
13,13A MMIカプラ(2:4MMIカプラ)
14 光カプラ(2:2MMIカプラ)
20,20A コヒーレント光受信機
21A,21B フォトダイオード(光電変換部;BPD)
22A,22B AD変換回路(AD変換部)
23 デジタル演算回路(デジタル演算部)
24 局部発振光発生部(LO光源)
25 光遅延回路
26 1:2光カプラ
27A,27B トランスインピーダンスアンプ(TIA)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムでは、例えば、光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスやマッハツェンダ型光変調器などのように、位相差を有する光信号の干渉を利用する光デバイスが用いられる。
例えば、任意の分岐比が得られる光分岐デバイスとして、図22,図23に示すように、2つの2:2光カプラ105,106の間に設けられた2本の導波路100,101の一方又は両方に、分岐された光信号に位相差を与える位相シフタ領域を設けた光分岐デバイスがある。
【0003】
例えば図22に示すように、2本の導波路100,101のそれぞれに、導波路幅を狭くした位相シフタ領域102,103を設け、これらの位相シフタ領域102,103の導波路形状が互いに異なるようにした光分岐デバイスがある。このような光分岐デバイスでは、一方の位相シフタ領域102における導波路幅の狭い直線導波路の長さを調整するか、又は、他方の位相シフタ領域103におけるテーパ状導波路のテーパ角を調整することによって、任意の分岐比を得ることができる。
【0004】
また、例えば図23に示すように、2本の導波路100,101のうち、一方の導波路101の一部に幅テーパ形状を有する位相シフタ領域104を設けた光分岐デバイスもある。このような光分岐デバイスでは、位相シフタ領域104における幅テーパ形状を有する導波路の長さやテーパ角を調整することによって、任意の分岐比を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−144963号公報
【特許文献2】特開2005−249973号公報
【特許文献3】特開2005−300679号公報
【特許文献4】特開平07−281041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような光デバイスは、分岐された光信号に位相差を与える位相シフタ領域を備える。このような光デバイスでは、例えば作製プロセスなどにおいて、位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまうと、所望の特性が得られず、特性が劣化してしまう。また、大きな作製トレランスを得るのは難しい。
そこで、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制し、大きな作製トレランスが得られるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本光デバイスは、光信号を分岐する第1カプラと、光信号を干渉させる第2カプラと、第1カプラと第2カプラとを接続する第1導波路と、第1カプラと第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを要件とする。
【0008】
また、本光ハイブリッド回路は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、第1出力チャネル又は第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの一方又は一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの他方又は一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを要件とする。
【0009】
さらに、本光受信機は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、第1出力チャネル又は第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの一方又は一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、2:2光カプラが接続された一対の第1出力チャネルの他方又は一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、多モード干渉カプラから出力される第1光信号又は第2光信号、及び、2:2光カプラから出力される第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
したがって、本光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態にかかる光デバイスの構成を示す模式図である。
【図2】第1実施形態にかかる光デバイスに備えられる幅狭テーパ導波路型位相シフタの構成を示す模式図である。
【図3】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図4】第1実施形態にかかる光デバイスに備えられる幅広テーパ導波路型位相シフタの構成を示す模式図である。
【図5】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図6】第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタ及び幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量|Δφ|との関係を示す図である。
【図7】(A)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタ及び幅狭テーパ導波路型位相シフタを形成する際に局所的にエッチングが進んでテーパ形状が変化してしまうことを説明するための図である。(B)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅広テーパ導波路型位相シフタ及び幅狭テーパ導波路型位相シフタを形成する際に局所的にエッチングが進まずにテーパ形状が変化してしまうことを説明するための図である。
【図8】(A)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタにおいて、位相シフタ長を50μmとし、入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。(B)は、第1実施形態にかかる光デバイスにおける幅狭テーパ導波路型位相シフタにおいて、位相シフタ長を100μmとし、入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示す図である。
【図9】第1実施形態にかかる光デバイスの具体的構成例を示す模式的断面図である。
【図10】第1実施形態にかかる光デバイスの位相変化量Δφを45度に設定した場合の所望のΔWTPからのズレ量δWTPと光デバイスの2つの出力チャネルから出力される光の透過率(Transmittance)との関係を示す図である。
【図11】第1実施形態にかかる光デバイスの変形例の構成を示す模式図である。
【図12】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図13】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図14】第1実施形態にかかる光デバイスの他の変形例の構成を示す模式図である。
【図15】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図16】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ及び幅広テーパ導波路型位相シフタの導波路幅の所望の変化量ΔWTPからのズレ量δWTPと、直交位相関係にある出力信号のクロストークとの関係を示す図である。
【図17】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の変形例の構成を示す模式図である。
【図18】第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路の他の変形例の構成を示す模式図である。
【図19】第3実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図20】第4実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図21】第5実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図22】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【図23】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【図24】従来の光分岐デバイスの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面により、本実施形態にかかる光デバイス、光ハイブリッド回路、光受信機について説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態にかかる光デバイスについて、図1〜図10を参照しながら説明する。
本実施形態の光デバイスは、例えば光通信システムにおいて用いられる光デバイスであって、位相差を有する光信号の干渉を利用する光デバイスである。なお、本光デバイスは、光信号を干渉させる回路を有するものであるため、光干渉回路ともいう。
【0013】
本実施形態では、本発明を適用した光デバイスとして、光通信システムにおいて様々な光信号処理を行なうために光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスを例に挙げて説明する。なお、本光分岐デバイスは、マッハツェンダ干渉計を構成しているため、マッハツェンダ型光デバイス、あるいは、マッハツェンダ型光回路ともいう。また、光干渉回路ともいう。
【0014】
本実施形態では、図1に示すように、光分岐デバイス1は、入力側光カプラ2と、出力側光カプラ3と、これらの光カプラ2,3を接続する2本の光導波路4,5とを備え、半導体導波路構造を有する光半導体素子によって構成されている。なお、入力側光カプラ2を第1カプラといい、出力側光カプラ3を第2カプラという。また、2本の光導波路4,5を、それぞれ、第1導波路4、第2導波路5という。
【0015】
ここでは、入力側光カプラ2は、光信号を分岐する光カプラであり、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラである。具体的には、入力側光カプラ2は、2:2多モード干渉(MMI:Multimode Interference)カプラである。なお、入力側光カプラ2は、MMIカプラでなくても良く、例えば二モード干渉カプラであっても良い。
【0016】
出力側光カプラ3は、光信号を干渉させる光カプラであり、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラである。具体的には、2:2多モード干渉(MMI:Multimode Interference)カプラである。なお、出力側光カプラは、MMIカプラでなくても良く、例えば二モード干渉カプラであっても良い。
第1導波路4及び第2導波路5は、入力側光カプラ2で分岐された光信号を、それぞれ独立に伝搬させ、出力側光カプラ3へ導くために用いられるものであり、後述の位相シフタ領域6,7を除いて、その積層構造、幅、長さ等が同一になっている一対の導波路である。
【0017】
本実施形態では、第1導波路4の一部が、位相シフタとして機能する第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の一部が、位相シフタとして機能する第2位相シフタ領域7になっている。
そして、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、第1導波路4及び第2導波路5のそれぞれを伝搬する光信号に所望の位相差が与えられるようになっている。この場合、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、光信号の位相をシフトさせ、所望の位相差に調整する機能を有することになる。このような機能を有する第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、光干渉回路としての光分岐デバイス1において、光路長を変化させ、所望の光路長差に調整することで、光信号を所望の比率で分岐させる役割を果たす。
【0018】
特に、本実施形態では、光信号に位相差を与える第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、以下のように、その導波路形状が異なる。
まず、第1位相シフタ領域6は、図2に示すように、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に狭くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ型導波路になっている。これを幅狭テーパ導波路型位相シフタ6という。このような第1位相シフタ領域6は、位相が遅れる方向へ光信号の位相をシフトさせる。なお、第1位相シフタ領域6は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。このため、第1導波路4は、その端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域6を備えることになる。本実施形態では、第1位相シフタ領域6は、長さ方向中心位置で最も導波路幅が狭くなっており、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっている。
【0019】
ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅をWとしている。なお、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wは、第1導波路4の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6以外の部分の導波路幅と同一である。
また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端又は出力端の導波路幅と長さ方向中間位置の導波路幅との差、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化量を、ΔWTPとしている。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化率は|ΔWTP|/Wで表すことができる。なお、|ΔWTP|/Wはテーパ形状の角度に関わるパラメータである。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ方向中間位置の導波路幅は、W−ΔWTPとなる。
【0020】
また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端又は出力端から長さ方向中間位置までの長さ、即ち、テーパ長を、LTPとしている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端から出力端までの長さ、即ち、位相シフタ長を、LPSとしている。
ここで、図3は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
【0021】
なお、位相変化量Δφは様々な導波路パラメータに依存する。ここでは、Wを2.0μmに設定している。また、LPSは、LTPの2倍に設定している。また、LPSを、50μm、100μm、200μmに設定し、ΔWTPを0μm〜0.8μmの範囲で変化させた場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφをプロットしている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6では、光信号の位相は遅れることになるため、Δφは負の値となる。
【0022】
図3に示すように、LPSを50μm、100μm、200μmに設定した場合において、いずれの場合も、|ΔWTP|/Wの値が大きくなるにしたがって、即ち、|ΔWTP|の値が大きくなるにしたがって、Δφの値が大きくなっていくことがわかる。つまり、テーパ角が大きくなるにしたがって、位相変化量が大きくなっていくことがわかる。
また、図3に示すように、LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、非線形的になることがわかる。なお、LPSが50μmの場合、Δφが90度以上の領域では、Δφが90度よりも小さい領域と比較して、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が相対的に急峻になっている。しかしながら、Δφが90度以上の領域でも、LPSが100μm、200μmの場合と比べて、依然としてΔφの変化は緩やかになっている。
【0023】
したがって、第1位相シフタ領域6の長さ、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ(位相シフタ長)は、約50μm以下にするのが好ましい。
次に、第2位相シフタ領域7は、図4に示すように、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に広くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ型導波路になっている。これを幅広テーパ導波路型位相シフタ7という。このような第2位相シフタ領域7は、位相が進む方向へ光信号の位相をシフトさせる。なお、第2位相シフタ領域7は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。このため、第2導波路5は、その端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域7を備えることになる。本実施形態では、第2位相シフタ領域7は、長さ方向中心位置で最も導波路幅が広くなっており、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっている。
【0024】
ここでは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端及び出力端の導波路幅をWとしている。なお、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端及び出力端の導波路幅Wは、第2導波路5の幅広テーパ導波路型位相シフタ7以外の部分の導波路幅と同一である。
また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端又は出力端の導波路幅と長さ方向中間位置の導波路幅との差、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化量を、ΔWTPとしている。この場合、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化率は|ΔWTP|/Wで表すことができる。なお、|ΔWTP|/Wはテーパ形状の角度に関わるパラメータである。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の長さ方向中間位置の導波路幅は、W+ΔWTPとなる。
【0025】
また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端又は出力端から長さ方向中間位置までの長さ、即ち、テーパ長を、LTPとしている。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の入力端から出力端までの長さ、即ち、位相シフタ長を、LPSとしている。
ここで、図5は、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
【0026】
なお、位相変化量Δφは様々な導波路パラメータに依存する。ここでは、Wを2.0μmに設定している。また、LPSは、LTPの2倍に設定している。また、LPSを、50μm、100μmに設定し、ΔWTPを0μm〜1.0μmの範囲で変化させた場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφをプロットしている。また、幅広テーパ導波路型位相シフタ7では、光信号の位相は進むことになるため、Δφは正の値となる。
【0027】
図5に示すように、LPSを50μm、100μmに設定した場合において、いずれの場合も、|ΔWTP|/Wの値が大きくなるにしたがって、即ち、|ΔWTP|の値が大きくなるにしたがって、Δφの値が大きくなっていくことがわかる。つまり、テーパ角が大きくなるにしたがって、位相変化量が大きくなっていくことがわかる。
また、図5に示すように、LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、非線形的になる。特に、Δφが90度よりも小さい領域では、LPSが50μmの場合の|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が相対的に緩やかになっている。
【0028】
したがって、第2位相シフタ領域7の長さ、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の長さ(位相シフタ長)は、約50μm以下にするのが好ましい。
上述のように、本実施形態では、第1位相シフタ領域6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタになっているのに対し、第2位相シフタ領域7は、幅広テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、第1位相シフタ領域6では、光信号の位相が遅れるようになっているのに対し、第2位相シフタ領域7では、光信号の位相が進むようになっている。このように、第1位相シフタ領域6では位相変化量Δφの符号が負であり、第2位相シフタ領域7では位相変化量Δφの符号が正であり、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで位相変化量Δφの符号が逆になっている。
【0029】
特に、本実施形態では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とで、テーパ角が同一又は略同一になっている。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とが平行又は略平行になっており、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とが平行又は略平行になっている。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とは、テーパ形状のくびれの位置が長さ方向で一致するようにしている。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の最も幅が狭い部分の位置と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7の最も幅が広い部分の位置とが長さ方向で一致するようにしている。
【0030】
ここで、図6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7における導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量|Δφ|との関係を示している。
ここでは、W、LTP、LPSは、それぞれ、2.0μm、25.0μm、50.0μmに設定している。また、2種類の位相シフタ6,7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を比較するために、Δφは絶対値でプロットしている。
【0031】
図6に示すように、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化に対して、同じか、又は、小さくなっている。つまり、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対する|Δφ|の変化よりも緩やかになっている。これは、LTP、LPSに依存せずに得られる傾向である。
【0032】
ところで、本光分岐デバイス1は、半導体材料を用いて形成されるため、図2に示すような幅狭テーパ導波路型位相シフタ6や図4に示すような幅広テーパ導波路型位相シフタ7を作製するのに、ドライエッチング技術が用いられる。ドライエッチングでは、原理上、反応ガスによらず、エッチングされる領域の形状や面積に依存してエッチングが進行する。このため、図1に示すように、位相シフタ6,7を含む光導波路4,5及び光カプラ2,3に囲まれた領域は、局所的にエッチングの進み具合が異なってしまう。これにより、幅広テーパ導波路型位相シフタ7及び幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のそれぞれにおいて、ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wが変化してしまい、この結果、Δφも変化してしまうことになる。なお、ここではドライエッチングの場合を例に挙げて説明しているが、例えばウェットエッチングなどの他の方法でも同様である。
【0033】
ここで、図7(A),(B)は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7において、作製プロセスなどに起因して、ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wが変化し、所望のΔWTPからズレ量δWTPだけずれた場合の一例を示している。なお、図7(A),(B)では、所望のΔWTPを有する導波路幅を持つ幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を形成するためのマスク形状を実線で示し、ズレ量δWTPだけずれた導波路幅に形成された幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を点線で示している。
【0034】
局所的にエッチングが進んでしまう場合、図7(A)に示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅は、両方とも、マスク6X,7Xよりも狭くなる。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のΔWTPはδWTPだけ増大し、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のΔWTPはδWTPだけ減少する。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも遅れることになる。
【0035】
一方、局所的にエッチングが進まない場合、図7(B)に示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅は、両方とも、マスク6X,7Xよりも広くなる。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のΔWTPはδWTPだけ減少し、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のΔWTPはδWTPだけ増大する。この場合、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも進むことになる。
【0036】
このため、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを組み合わせて用いると、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作することになる。
したがって、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれても、即ち、テーパ形状が変化しても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって得られる相対的な位相差が、所望の位相差からずれるのを抑えることができる。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφと幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφとの総和が、本光分岐デバイス1における位相変化量Δφとなるが、この本光分岐デバイス1における位相変化量Δφが、所望の位相変化量からずれるのを抑えることができる。
【0037】
このように、作製プロセスなどによって所望のΔWTPからずれて伝搬定数が変化しても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作するため、作製プロセスなどに起因する光分岐デバイス1の特性劣化を抑制することができる。
なお、このような効果は、図6に示す特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を示す特性と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化を示す特性とが一致すると顕著になる。
【0038】
例えば、図6に示すように、位相変化量|Δφ|が22.5度以下の領域では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化と、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化とは、ほぼ一致している。つまり、LPSを50μmに設定した場合、位相変化量|Δφ|が22.5度以下になるようにするときは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の|ΔWTP|は、ほぼ同一にすることができる。この場合、図7(A),(B)中、実線で示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とでテーパ角はほぼ同一になる。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とがほぼ平行になり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とがほぼ平行になる。
【0039】
ここで、作製プロセスなどにおいて、所望の|ΔWTP|/W、即ち、所望の|ΔWTP|からずれて、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の導波路幅と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が、図7(A)に示すように、両方とも狭くなるか、図7(B)に示すように、両方とも広くなる場合がある。この場合、所望の|ΔWTP|からのズレ量δWTPはほぼ同一になる。
【0040】
そして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が両方とも狭くなると、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも遅れることになる。
逆に、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅が両方とも広くなると、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、いずれも、光信号の位相が所望の位相よりも進むことになる。
【0041】
したがって、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって得られる相対的な位相差は、所望の位相差となる。つまり、本光分岐デバイス1における位相変化量Δφは、所望の位相変化量となる。
このように、作製プロセスなどにおいて位相シフタのテーパ角や導波路幅がずれても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とが相補的に動作することで、所望の位相差が得られ、光分岐デバイス1の特性変化が緩和される。このため、大きな作製トレランスが得られることになる。
【0042】
次に、図8(A),(B)は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wを変化させた場合の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における導波路幅の変化率|ΔWTP|/Wと位相変化量Δφとの関係を示している。
なお、図8(A)は、位相シフタ長LPSを50μmとした場合(LPS=50μm)における特性を示しており、図8(B)は、位相シフタ長LPSを100μmとした場合(LPS=100μm)における特性を示している。また、図8(A),(B)では、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の入力端及び出力端の導波路幅Wを、1.9μmにした場合の特性を実線Aで示しており、2.0μmにした場合の特性を実線Bで示しており、2.1μmにした場合の特性を実線Cで示している。
【0043】
図8に示すように、位相シフタ長LPSと関係なく、導波路幅Wが狭まると、|ΔWTP|/Wに対するΔφが相対的に増大する一方、導波路幅Wが広がると、|ΔWTP|/Wに対するΔφが相対的に減少する傾向がある。
但し、図8(A)に示すように、LPSを50μmに設定した場合、本光分岐デバイス1の位相変化量が45度以下になるようにするときは、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きいことが分かる。つまり、位相シフタ長LPSが50μmであって、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφを22.5度以下にする場合、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きいことが分かる。
【0044】
なお、ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6における特性を示して説明しているが、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における特性も同様の傾向を示す。つまり、幅広テーパ導波路型位相シフタ7における特性は多少異なるが、LPSを50μmに設定した場合、本光分岐デバイス1の位相変化量Δφが45度以下になるようにするときは、各導波路幅Wにおける|ΔWTP|/Wに対するΔφがほとんど同程度であり、作製トレランスが大きい。
【0045】
このように、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7の長さ、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタ7及び幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の長さ(位相シフタ長)は、約50μmにするのが好ましい。
次に、本光分岐デバイス1を構成する光半導体素子の具体的な構成例について、図9を参照しながら説明する。
【0046】
本光分岐デバイス1は、図9に示すように、InP基板8上に、GaInAsPコア層9(バンドギャップ波長λg=1.3μm)、InPクラッド層10を備え、ハイメサ導波路構造11を有する光半導体素子である。
ここでは、入力側光カプラ2や出力側光カプラ3に接続される各光導波路(チャネル)の導波路幅Wは2.0μmとし、単一モード条件を満たすようにしている。また、本光分岐デバイス1は、光信号を例えば82:18で非対称に分岐する光分岐デバイスである。
【0047】
このように、光半導体素子として構成される光分岐デバイス1は、以下のようにして作製される。
まず、図9に示すように、n型InP基板8上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、アンドープGaInAsPコア層9、アンドープInPクラッド層10を順にエピタキシャル成長させる。
【0048】
ここでは、アンドープGaInAsPコア層9は、発光波長1.30μm,層厚0.3μmである。また、アンドープInPクラッド層10は、層厚2.0μmである。なお、基板8はアンドープInP基板であっても良い。また、クラッド層10はp型ドープInPクラッド層であっても良い。
次に、上述のようにしてエピタキシャル成長を行なったウェハの表面上に、例えばSiO2膜を例えば蒸着装置などによって成膜し、例えば光露光プロセスによって、光分岐デバイスを形成するための導波路パターンをパターニングする。ここでは、導波路パターンは、幅テーパ形状を有する位相シフタのパターンを含む。この導波路パターンは光露光装置のフォトマスクによって規定される。なお、光分岐デバイス1を光合分岐器素子ともいう。
【0049】
次いで、このようにしてパターニングされたSiO2膜をマスクとして、例えば誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(ICP−RIE;Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)などの方法でドライエッチングを行なう。これにより、例えば高さ3.0μm程度のハイメサ導波路ストライプ構造11を形成する。
このような作製プロセスを経て、本光分岐デバイス1が完成する。
【0050】
次に、図10は、本光分岐デバイス1の位相変化量Δφを45度に設定した場合の所望のΔWTPからのズレ量δWTPと光分岐デバイス1の2つの出力チャネルから出力される光の透過率(Transmittance)との関係を示している。
なお、図10では、本光分岐デバイス1の特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用し、各位相シフタ6,7の位相変化量Δφを22.5度に設定した光分岐デバイス1の特性を実線Aで示している。また、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた光分岐デバイスの特性を実線Bで示している。さらに、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを設けた光分岐デバイスの特性を破線Cで示している。また、ここでは、光分岐デバイスの位相変化量Δφが45度になるように、位相シフタの導波路幅の変化量ΔWTPを適正化した後、作製プロセスなどにおいて生じたズレ量をδWTPとして定義している。
【0051】
図10に示すように、δWTP=0μmの場合、どの光分岐デバイスにおいても、光分岐デバイスの分岐比は所定値(ここでは82:18)になっている。
一方、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布すると、光分岐デバイスの分岐比は、位相シフタに大きく依存することが分かる。
例えば、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた光分岐デバイスの場合、図10中、実線Bで示すように、δWTPに対して分岐比が線形的に変化し、その変化率は±6%にも及ぶ。これは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφ、即ち、光分岐デバイスの位相変化量Δφが変化したことに起因する(図3参照)。
【0052】
また、例えば、幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを設けた光分岐デバイスの場合、図10中、破線Cで示すように、δWTPに対する分岐比の変化が多少小さくなるものの、依然として、δWTPに対する分岐比の変化率は±3.5%に及んでいる。これは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφ、即ち、光分岐デバイスの位相変化量Δφが変化したことに起因する(図5参照)。
【0053】
これに対し、本光分岐デバイス1の場合、図10中、実線Aで示すように、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布したとしても、光分岐デバイス1の分岐比はほぼ一定に保たれ、その変化率は±1.8%以下に抑えることができる。
このように、本光分岐デバイス1によれば、所望のΔWTPからズレ量δWTPだけずれ、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφのそれぞれが変化したとしても、δWTPに対する分岐比の変化を抑えることができる。これは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφのそれぞれの変化は相補的に生じるため、これらの総和である光分岐デバイス1の位相変化量Δφはそれほど大きく変化しないことに起因する。
【0054】
なお、ここでは、光分岐デバイスの位相変化量Δφを45度に設定した場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、他の位相変化量に設定した場合であっても、同様に特性向上の効果が得られる。この場合、位相変化量Δφが90度以上の場合よりも、90度以下の場合の方が、顕著に特性が向上する。但し、位相変化量Δφが90度以上の場合であっても、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する構成以外の構成と比べれば、特性が向上することになる。
【0055】
したがって、本実施形態にかかる光デバイス1によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、光分岐デバイス1の素子特性を向上させることもできる。
【0056】
つまり、図2に示すような幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを用いる場合、位相変化量Δφを増大させるにつれて、位相シフタ6の導波路幅を狭くしなければならず、位相シフタ6の導波路幅の変化量ΔWTPを大きくしなければならない。この場合、カットオフ付近になることもあり得るため、過剰損失が発生するおそれがある。
一方、図4に示すような幅広テーパ導波路型位相シフタ7のみを用いる場合、位相変化量Δφを増大させるにつれて、位相シフタ7の導波路幅を広くしなければならず、位相シフタ7の導波路幅の変化量ΔWTPを大きくしなければならない。この場合、高次モードが励振することもあり得るため、素子特性が劣化してしまうおそれがある。
【0057】
これらの場合と比較して、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する場合には、各位相シフタ6,7の導波路幅の変化量ΔWTP、即ち、|ΔWTP|/Wの値を半分程度に設定すれば良い。このため、過剰損失が発生するのを抑制することができ、また、高次モードが励振して素子特性が劣化してしまうのを抑制することができる。
【0058】
なお、図22に示したような構成、即ち、両方のアームの導波路幅を狭くする構成では、位相差を与えるために位相シフタの長さを長くしなくてはならない。このような構成と比較して、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用する構成では、位相シフタ6,7の長さを短くすることができる。
また、光分岐デバイス1において、任意の光分岐比を得るためには、図24に示すように、2つの2:2光カプラ105,106の間に設けられた2本の導波路100,101のうち、一方の導波路100上に電極107を設けて位相シフタ領域とし、この電極107を介して電流注入又は電圧印加によって、分岐された光に位相差を与えることも考えられる。しかしながら、電流注入又は電圧印加が必要であるため、電力を消費することになる。これに対し、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用すれば、電力を消費することなく、分岐された光に所望の位相差を与えることができる。
【0059】
また、上述の実施形態では、第1導波路4の一部が第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の一部が第2位相シフタ領域7になっているが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、第1導波路4の全体が第1位相シフタ領域6になっており、第2導波路5の全体が第2位相シフタ領域7になっていても良い。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。
【0060】
また、上述の実施形態では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路になっているが、これに限られるものではない。つまり、第1位相シフタ領域6は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタであれば良い。また、第2位相シフタ領域7は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ導波路型位相シフタであれば良い。
【0061】
例えば、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図12に示すようなパラボリックテーパ形状や楕円関数型テーパ形状などの他のテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていても良い。この場合、第1位相シフタ領域6は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて曲線状に狭くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて曲線状に広くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅狭テーパ型導波路となる。また、第2位相シフタ領域7は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に広くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に狭くなるテーパ形状を有する導波路、即ち、幅広テーパ型導波路となる。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。この場合も上述の実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0062】
また、上述の実施形態では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造になっているが、これに限られるものではない。例えば、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図13に示すように、長さ方向中心位置に対して非対称な導波路構造になっていても良い。つまり、テーパ長が位相シフタ長の1/2になっていなくても良く、テーパ形状のくびれの位置、即ち、導波路幅が最も狭くなっている部分の位置又は導波路幅が最も広くなっている部分の位置が、長さ方向中心位置に対してずれていても良い。この場合も、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ形状のくびれの位置は長さ方向で一致させる。また、第1位相シフタ領域6と第2位相シフタ領域7とで、テーパ角も同一又は略同一にする。つまり、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の外側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の外側の側面とを平行又は略平行にし、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6の内側の側面と幅広テーパ導波路型位相シフタ7の内側の側面とを平行又は略平行にする。但し、テーパ形状のくびれの位置は、テーパ形状が断熱的に変化する範囲内とする。つまり、導波路幅が急激に広くなって高次モードが立たないように、導波路幅が十分に緩やかに変化するようにする。この場合も上述の実施形態の場合と同様の効果が得られる。
【0063】
また、上述の実施形態では、本発明を、光信号を任意の比率で分岐する光分岐デバイスに適用した場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、上述の実施形態では、光信号を異なる比率(例えば82:18)で非対称に分岐する光分岐デバイスを例に挙げて説明しているが、光信号を同一の比率で対称に分岐する光分岐デバイスに本発明を適用することもできる。
【0064】
また、例えば光分岐機能を有しないマッハツェンダ型光デバイスなどにも本発明を適用することができる。例えば、図14に示すようなマッハツェンダ型光変調器1Aに本発明を適用することができる。この場合、上述の実施形態の構成において、入力側光カプラ(第1カプラ)を、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ2Aとし、出力側光カプラ(第2カプラ)を、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に1つのチャネルを有する2:1光カプラ3Aとすれば良い。
【0065】
また、本発明は位相差を有する光の干渉を利用する光デバイスに適用することができるため、マッハツェンダ干渉計以外の干渉計を構成する光デバイス、即ち、マッハツェンダ型光回路以外の光干渉回路にも本発明を適用することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図15,16を参照しながら説明する。
【0066】
本実施形態では、本発明を適用した光デバイスとして、光ハイブリッド回路を例に挙げて説明する。
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、光伝送システム(光通信システム)において四位相偏移変調(QPSK:quadrature phase shift keying)信号の位相変調情報を識別(復調)するために用いられる90度ハイブリッド回路(以下、90度ハイブリッドともいう)である。
【0067】
本実施形態では、図15に示すように、光ハイブリッド回路12は、前段の多モード干渉(MMI)カプラ13と、後段の光カプラ14とを備え、これらが従属接続されている。この光ハイブリッド回路12は、MMIカプラ13と光カプラ14とを備え、半導体導波路構造を有する光半導体素子によって構成されている。なお、前段の多モード干渉カプラ13を第1カプラといい、後段の光カプラ14を第2カプラという。
【0068】
ここでは、前段のMMIカプラ13は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4MMIカプラである。
具体的には、対モード干渉(PI:Paired Interference)に基づく2:4MMIカプラである。つまり、2つの入力チャネルの中心はMMI幅の上側から1/3及び2/3に位置し、MMI領域において(3s−1)次の高次モード(sは1以上の自然数)が励振されない2:4MMIカプラである。このため、素子長を短くすることができる。
【0069】
なお、ここでは、PIに基づく2:4MMIカプラを用いているが、これに限られるものではなく、一対の入力チャネルが幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられており、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラを用いれば良い。例えば、一般モード干渉(GI:General Interference)に基づく2:4MMIカプラを用いても良い。つまり、2つの入力チャネルの中心は、MMI領域の中心対称性を崩さない範囲内で、MMI幅の1/3及び2/3の位置を除いた領域に位置し、MMI幅に応じた全てのモードが励振する2:4MMIカプラを用いても良い。
【0070】
後段の光カプラ14は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、2つの入力チャネルのそれぞれから対角線上に位置する2つの出力チャネルへ向けて伝播する光の位相を90度遅らせる機能を有する2:2光カプラである。
具体的には、2:2MMIカプラである。ここでは、2:2MMIカプラは、2:4MMIカプラの出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)に接続されている。なお、2:2MMIカプラは、PIに基づくものであっても良いし、GIに基づくものであっても良い。
【0071】
このため、本光ハイブリッド回路12は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネル(Ch−1,Ch−2,Ch3,Ch−4)を有することになる。
この光ハイブリッド回路12の入力側の一のチャネル、即ち、2:4MMIカプラ13の入力側の一のチャネルには、QPSK信号光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路12の入力側の一のチャネルは、QPSK信号光を入力するための入力チャネルである。また、光ハイブリッド回路12の入力側の他のチャネル、即ち、2:4MMIカプラ13の入力側の他のチャネルには、局部発振(LO:local oscillator)光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路12の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するための入力チャネルである。
【0072】
そして、2:4MMIカプラ13によって、QPSK信号光が同相(In-phase)関係にある一対の第1光信号及び同相(In-phase)関係にある一対の第2光信号に変換される。つまり、QPSK信号光が、直交位相成分(Q成分)を含まず、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号、及び、直交位相成分(Q成分)を含まず、同相成分(I成分)のみを含む一対の第2光信号に変換される。
【0073】
なお、図15中、S−L,S+L,S+jL,S−jLは、信号光(S)の位相を基準にして、LO光(L)の位相が相対的にどのような関係になっているかを示している。ここでは、S−LとS+Lとは180度ずれた位相関係になっていることを示しており、S+jL,S−jLは、それぞれ、S+L,S−Lに対して90度ずれた位相関係になっていることを示している。
【0074】
ここでは、一対の第1光信号は、2:4MMIカプラ13の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)、即ち、光ハイブリッド回路12の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(Ch−1,Ch−2)から出力される。また、一対の第2光信号は、2:4MMIカプラ13の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)から出力され、2:2MMIカプラ14の入力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルに入力される。
【0075】
次いで、図15に示すように、2:2MMIカプラ14によって、一対の第2光信号が直交位相(Quadrature)関係にある一対の第3光信号に変換される。つまり、同相成分(I成分)のみを含む一対の第2光信号が、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第3光信号に変換される。
そして、一対の第3光信号は、2:2MMIカプラ14の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル、即ち、光ハイブリッド回路12の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(Ch3,Ch−4)から出力される。
【0076】
このような本光ハイブリッド回路12では、図15に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とが出力されることになる。
このように、光ハイブリッド回路12の4つの出力チャネル(Ch−1,Ch−2,Ch3,Ch−4)のそれぞれから出力される信号光の出力強度比が、QPSK信号光の位相(0,π,−π/2,+π/2)に応じて異なるものとなる。
【0077】
上述のように、2:4MMIカプラ13によって、QPSK信号光を同相関係にある第1光信号及び同相関係にある第2光信号に変換した後、2:2MMIカプラ14によって、第2光信号を直交位相関係にある第3光信号に変換するようにしているのは、以下の理由による。
2:4MMIカプラ13にQPSK信号光及びLO光を入力すると、2:4MMIカプラ13の2つのチャネルから同相関係にある一対の第1光信号が出力され、他の2つのチャネルから同相関係にある一対の第2光信号が出力される。
【0078】
QPSK信号光とLO光との相対位相差Δψが0、πの場合、4つの出力成分間の強度比(出力強度比)は、それぞれ、0:2:2:0、2:0:0:2となる。つまり、相対位相差Δψが0、πの場合、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。
しかし、相対位相差Δψが−π/2、+π/2のいずれの場合も出力強度比が1:1:1:1となる。つまり、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合、同じ分岐比を有する出力形態になってしまう。
【0079】
このため、180度ハイブリッドとしては機能するものの、90度ハイブリッドとしては機能しない。例えばPIに基づく2:4MMIカプラのように、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラ13を用いる場合、90度ハイブリッドとして動作させることは原理的に不可能である。
そこで、上述のように、中心対称性を有する構造を持つ2:4MMIカプラ13に、2:2MMIカプラ14を従属接続することによって、非対称性を有する構造を形成し、90度ハイブリッドとして機能しうるようにしている。
【0080】
つまり、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルに2:2MMIカプラ14を従属接続することによって、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルからの出力成分のみが2:2MMIカプラ14を伝搬する際に結合作用とともに新たな位相変化を受けるようにしている。ここでは、2:2MMIカプラ14を設けることによって、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合にも、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られるようにしている。なお、2:2MMIカプラ14は、GIあるいはPIに基づくものであれば同様の特性を得ることができる。
【0081】
これにより、本光ハイブリッド回路12は、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とを出力することになる。
ところで、2:4MMIカプラ13に2:2MMIカプラ14を従属接続するだけでは、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合に、3番目及び4番目の出力チャネルの出力成分において、特性が劣化することが考えられる。これは、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルにおける出力信号と2:2MMIカプラ14との間に位相整合がとれていないことに起因するものである。
【0082】
特性の劣化が生じないようにして、確実に90度ハイブリッド動作が得られるようにするためには、2:4MMIカプラ13の3番目及び4番目の出力チャネルにおける出力信号と2:2MMIカプラ14との間に位相整合をとることが必要不可欠である。
具体的には、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第2光信号)の位相を調整し、2:2MMIカプラ14に入力される一対の第2光信号の位相差Δθがπ/2+p*π(pは整数)になれば解消する。
【0083】
そこで、本実施形態では、2:2MMIカプラ14に接続される2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルのそれぞれに、直交位相成分の特性劣化が生じないように位相を調整しうる第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7を接続している。つまり、2:4MMIカプラ13と2:2MMIカプラ14とを接続する第1光導波路4及び第2光導波路5のそれぞれに、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7を設けている。
【0084】
そして、2:2MMIカプラ14の入力側の2つのチャネルに入力される光の位相差Δθがπ/2+p*π(pは整数)になるように、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルのそれぞれから出力される光(一対の第2光信号)の位相を調整するようにしている。
本実施形態では、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルから出力される一対の第2光信号の位相差Δθは、おおよそπ/4+p*π(pは整数)になる。
【0085】
このため、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、2:4MMIカプラ13から出力される一対の第2光信号にπ/4+p*π(pは整数)に相当する位相差を与え、2:2MMIカプラ14に入力される一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせるようになっている。
ここで、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、上述の第1実施形態やその変形例の第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7と同様に構成されている。
【0086】
具体的には、第1位相シフタ領域6は、幅狭テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、2:4MMIカプラ13の出力ポートと2:2MMIカプラ14の入力ポートの間の第1光導波路4の幅が、出力ポートから長さ方向の中間位置へ向けて狭くなり、中間位置から入力ポートへ向けて広くなるようにして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成している。ここでは、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6によって、2:4MMIカプラ13の3番目の出力チャネルから出力された光の位相が22.5度遅れ、ポート2:2MMIカプラ14の入力側の1番目のチャネルに入力される光の位相が45度遅れるようにしている。
【0087】
一方、第2位相シフタ領域7は、幅広テーパ導波路型位相シフタになっている。つまり、2:4MMIカプラ13の出力ポートと2:2MMIカプラ14の入力ポートの間の第2光導波路5の幅が、出力ポートから長さ方向の中間位置へ向けて広くなり、中間位置から入力ポートへ向けて狭くなるようにして、幅広テーパ導波路型位相シフタ7を形成している。ここでは、幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、2:4MMIカプラ13の4番目の出力チャネルから出力された光の位相が22.5度進み、2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルに入力される光の位相が45度進むようにしている。
【0088】
このように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6による位相変化量Δφと幅広テーパ導波路型位相シフタ7による位相変化量Δφとの総和が45度になるようにしている。これにより、2:4MMIカプラ13の3番目と4番目の出力チャネルから出力され、45度の位相差を有する一対の第2光信号は、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7によって、その位相差が90度にされる。このようにして、2:2MMIカプラ14の入力側の1番目のチャネルに入力される光と、2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルに入力される光との間の位相差が90度になるようにしている。
【0089】
これにより、本光ハイブリッド回路12は、図15に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(S−L,S+L)と、直交位相関係にある一対の第3光信号(S−jL,S+jL)とを出力することになり、確実に90度ハイブリッド動作が得られることになる。つまり、本光ハイブリッド回路12によって、QPSK信号光が、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号と、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第3光信号に変換され、確実に90度ハイブリッド動作が得られることになる。
【0090】
ここでは、同相関係にある一対の第1光信号、即ち、同相成分のみを含む一対の第1光信号は、位相が180度ずれた一対の光信号である。また、直交位相関係にある一対の第3光信号、即ち、直交位相成分のみを含む一対の第3光信号は、一対の第1光信号に対して位相が90度ずれた一対の光信号である。なお、一対の第3光信号は、位相が180度ずれた一対の光信号である。
【0091】
これにより、相対位相差Δψが0、πの場合、光ハイブリッド回路12の出力強度比は、それぞれ、0:2:1:1、2:0:1:1となる。また、相対位相差Δψが−π/2、+π/2の場合、光ハイブリッド回路12の出力強度比は、それぞれ、1:1:2:0、1:1:0:2となる。
このように、本光ハイブリッド回路12では、QPSK信号光の位相状態に対して、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。また、本光ハイブリッド回路12では、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7が設けられているため、Quadrature成分における過剰損失及びクロストークを著しく減少させることができる。したがって、本光ハイブリッド回路12は確実に90度ハイブリッドとして機能する。
【0092】
ところで、上述の第1実施形態で説明したように、作製プロセスなどにおいて、位相シフタのパラメータが所定値からずれると、直交位相成分の特性劣化が生じることになる。
通常、エラーを伴わない光信号処理を行なうためには、出力信号におけるクロストークレベルを20dB以下に抑えるのが好ましい。
ここで、図16は、本実施形態にかかる90度ハイブリッド12に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7の導波路幅の所望の変化量ΔWTPからのズレ量δWTPと、直交位相関係にある出力信号のクロストークとの関係を示している。
【0093】
なお、図16中、実線Aは、本実施形態の90度ハイブリッドの特性、即ち、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6及び幅広テーパ導波路型位相シフタ7を設けた90度ハイブリッド12の特性を示している。また、図16中、実線Bは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが50μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。また、図16中、実線Cは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが100μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。また、図16中、実線Dは、第1光導波路4及び第2光導波路5のうちの一方のみに、位相シフタ長LPSが200μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を形成した90度ハイブリッドの特性を示している。
【0094】
図16中、実線B,C,Dで示すように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6のみを設けた場合であっても、位相シフタ長LPSによってクロストークの特性が異なり、位相シフタ長LPSが短くなるほど、δWTPに対するクロストークの許容範囲が広くなることが分かる。これは、位相シフタ長LPSが短くなるほど、|ΔWTP|/Wに対するΔφの変化が緩やかになり、その変化率が減少することに起因する(図3参照)。ここでは、位相シフタ長LPSが50μmの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6を設ける場合のみ、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布すれば、直交位相信号のクロストークを辛うじて20dB以下に抑えることができることが分かる。
【0095】
これに対し、本実施形態の90度ハイブリッド12では、δWTPが−0.05〜0.05μmの範囲内で分布した場合、直交位相信号のクロストークを35dB以下に抑えることができ、大幅に特性を改善することができる。このため、QPSK変調信号における高効率な復調動作が可能になる。
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路12によれば、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【0096】
また、本実施形態のように、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
なお、上述の実施形態では、前段のMMIカプラ13として、2:4MMIカプラを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。前段のMMIカプラ13は、四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換するMMIカプラであれば良い。
【0097】
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:4MMIカプラ13に代えて、図17に示すように、入力側に4つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する4:4MMIカプラ13Aを用いても良い。そして、4:4MMIカプラ13Aの入力側の4つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネル(一対の入力チャネル)に光を入力するようにすることで、上述の実施形態の場合と同様に90度ハイブリッド動作が得られる。
【0098】
この場合、4:4MMIカプラ13Aは、GIに基づくものであり、MMI領域の中心軸対称性を崩さない範囲内で、入力チャネル及び出力チャネルを自由に位置させることができる。つまり、入力側の上から1番目及び2番目のチャネルと入力側の3番目及び4番目のチャネルとは、中心軸対称性があれば、その位置はどこでも良い。また、出力側の上から1番目及び2番目のチャネルと出力側の3番目及び4番目のチャネルとは、中心軸対称性があれば、その位置はどこでも良い。但し、チャネル位置によって分岐特性に多少影響はある。
【0099】
また、上述の実施形態では、後段の光カプラ14として、2:2MMIカプラを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。後段の光カプラ14は、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する光カプラであれば良い。
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:2MMIカプラ14に代えて、方向性結合器(3dBカプラ;例えば2:2方向性結合器)を用いても良い。また、例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路12を構成する2:2MMIカプラ14に代えて、二モード干渉カプラ(例えば2:2二モード干渉カプラ)を用いても良い。これらの場合も上述の実施形態のものと同様の効果が得られる。また、ここでは、上述の実施形態の変形例として説明しているが、これらの変形例を、前段のMMIカプラとして4:4MMIカプラ13Aを用いる変形例に適用することもできる。
【0100】
また、上述の実施形態では、光カプラ14によって、同相関係にある一対の第2光信号を直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
例えば、図18に示すように、光カプラ14によって、同相関係にある一対の第1光信号を直交位相関係にある一対の第3光信号に変換するようにしても良い。
【0101】
この場合、光カプラ14は、図18に示すように、前段のMMIカプラ13の出力側の隣接する一対の第1出力チャネルに接続することになる。つまり、2:2MMIカプラ14を、2:4MMIカプラ13の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)に接続することになる。なお、2:4MMIカプラ13と2:2MMIカプラ14とを接続する1番目のチャネルを第2光導波路といい、2番目のチャネルを第1光導波路という。
【0102】
また、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、図18に示すように、前段のMMIカプラ13の光カプラ14が接続された一対の第1出力チャネルのそれぞれに接続すれば良い。例えば、図18に示すように、2:4MMIカプラ13の出力側の1番目のチャネルと2:2MMIカプラの入力側の1番目のチャネルとの間の第2光導波路に第2位相シフタ領域7を設けるとともに、2:4MMIカプラ13の出力側の2番目のチャネルと2:2MMIカプラ14の入力側の2番目のチャネルとの間の第1光導波路に第1位相シフタ領域6を設ければ良い。なお、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7は、上述の実施形態の場合と同様に構成すれば良い。これにより、第1位相シフタ領域6及び第2位相シフタ領域7によって、2:2MMIカプラ14に入力する2つの信号成分間にπ/4に相当する位相ズレ(位相変化量)を与えることができ、上述の実施形態のものと同様に大幅な特性改善効果が得られる。
【0103】
このように構成した場合、上述の実施形態のものに対して、90度ハイブリッドの出力信号におけるIn-phaseとQuadratureの位置関係が入れ替わることになる。そして、相対位相差Δψが0の場合、πの場合、−π/2の場合、+π/2の場合のそれぞれの場合において、出力強度比は1:1:0:2、1:1:2:0、2:0:1:1、0:2:1:1となる。
[第3実施形態]
第3実施形態にかかる光受信機、光送受信機について、図19を参照しながら説明する。
【0104】
本実施形態にかかる光受信機は、図19に示すように、上述の第2実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12[QPSK信号用90度ハイブリッド;図15、図17、図18参照]を含むコヒーレント光受信機20である。このコヒーレント光受信機20は、90度ハイブリッド12によって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0105】
このため、本光受信機20は、図19に示すように、上述の第2実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12と、フォトダイオード(光電変換部)21A,21Bと、トランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans-impedance amplifier)27A,27Bと、AD変換回路(AD変換部)22A,22Bと、デジタル演算回路(デジタル演算部)23とを備える。
【0106】
ここで、光ハイブリッド回路12は、QPSK信号光を同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換するMMIカプラ13(13A)と、第1光信号又は第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する光カプラ14とを備える[図15、図17、図18参照]。
ここでは、MMIカプラは2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)である。また、光カプラは2:2MMIカプラ14である。そして、光ハイブリッド回路12は光半導体素子によって構成される。
【0107】
本実施形態では、図19に示すように、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の一のチャネルにQPSK信号光が入力され、2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルにLO光が入力されるようになっている。つまり、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の一のチャネルは、QPSK信号光を入力するためのチャネルである。また、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するためのチャネルである。
【0108】
このため、本光受信機20は、さらに、光ハイブリッド回路12の2:4MMIカプラ13(又は4:4MMIカプラ13A)の入力側の他のチャネルにLO光を入力するための局部発振光発生部(LO光源)24を備える。
そして、光ハイブリッド回路12にQPSK信号光(QPSK信号パルス)とこれに時間的に同期したLO光が入力されると、信号光の位相状態、即ち、QPSK信号光とLO光との相対位相差Δψに応じて、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。ここでは、相対位相差Δψが0、π、−π/2、+π/2の場合に、光ハイブリッド回路1の出力強度比は、それぞれ、0:2:1:1、2:0:1:1、1:1:2:0、1:1:0:2となる。
【0109】
フォトダイオード21A,21Bは、光ハイブリッド回路12の多モード干渉カプラ13(13A)及び光カプラ14のそれぞれから出力される一対の光信号をアナログ電気信号(アナログ電流信号)に光電変換するフォトダイオードである。
ここでは、光電変換及び信号復調のために、光ハイブリッド回路12の後段にバランスドフォトダイオード(BPD)21A,21Bが設けられている。ここで、BPD21A,21Bは、2つのフォトダイオード(PD)を備え、一方のPDのみに光信号が入力された場合は「1」に相当する電流が流れ、他方のPDのみに光信号が入力された場合は「−1」に相当する電流が流れ、両方のPDに同時に光信号が入力された場合は電流が流れない。このため、相対位相差Δψに応じて、異なる出力強度比の光信号が、光ハイブリッド回路1から2つのBPD21A,21Bへ入力されると、2つのBPD21A,21Bから異なるパターンの電気信号が出力されることになる。つまり、2つのBPD21A,21Bによって、QPSK信号光における位相情報が識別され、それぞれ異なるパターンの電気信号に変換されることになる。
【0110】
具体的には、光ハイブリッド回路12の出力側の1番目及び2番目のチャネルに第1BPD21Aが接続されており、光ハイブリッド回路12の出力側の3番目及び4番目のチャネルに第2BPD21Bが接続されている。つまり、同相関係にある一対の第1光信号が出力される1番目及び2番目のチャネル(隣接する一対の第1出力チャネル)に第1BPD21Aが接続されている。また、同相関係にある一対の第2光信号(第1光信号に対しては直交位相関係にある)が出力される3番目及び4番目のチャネル(隣接する一対の第2出力チャネル)に第2BPD21Bが接続されている。この場合、それぞれのBPDへの入力状態も異なる。
【0111】
トランスインピーダンスアンプ27A,27Bは、フォトダイオード21A,21BとAD変換回路22A,22Bとの間に設けられている。つまり、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bは、フォトダイオード21A,21B及びAD変換回路22A,22Bに接続されている。そして、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bによって、フォトダイオード21A,21Bから出力されるアナログ電流信号がアナログ電圧信号(アナログ電気信号)に変換されるようになっている。
【0112】
AD変換回路22A,22Bは、フォトダイオード21A,21Bから出力され、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bによって変換されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路である。つまり、AD変換回路22A,22Bは、トランスインピーダンスアンプ27A,27Bから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するようになっている。
【0113】
デジタル演算回路23は、AD変換回路22A,22Bから出力されるデジタル電気信号を用いて、受信信号光の情報を推定するための演算処理を実行するデジタル演算回路(デジタル信号処理回路)である。
なお、光ハイブリッド回路12の詳細については、上述の第2実施形態及びその変形例と同様であるから、ここではその説明を省略する。
【0114】
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて光ハイブリッド回路12の位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、光ハイブリッド回路12の幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
【0115】
なお、上述の実施形態及び変形例では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
また、上述の実施形態及び変形例では、光ハイブリッド回路12が、MMIカプラ13(13A)と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されているが、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13(13A)と光カプラ14とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13(13A)と、光カプラ14と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図20を参照しながら説明する。
【0116】
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、上述の第2実施形態のものがQPSK信号光及びLO光が時間的に同期させて入力されるようになっているのに対し、差分四位相偏移変調(DQPSK)信号が入力されるようになっている点で異なる。
つまり、本光ハイブリッド回路は、光伝送システムにおいてDQPSK信号の位相変調情報を識別するために用いられる90度ハイブリッド回路(以下、90度ハイブリッドともいう)である。
【0117】
このため、図20に示すように、本光ハイブリッド回路12Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路12の構成に加え、光遅延回路25と、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ26とを備える。つまり、本光ハイブリッド回路12Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の前段(前端部)に光遅延回路25を介して1:2光カプラ26が従属接続された構造になっている。なお、上述の第2実施形態と同様に、光ハイブリッド回路12は、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されている。また、図20では、上述の第2実施形態(図15参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0118】
ここで、光遅延回路25は、上述の第2実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の入力側の一のチャネルに接続されている。
1:2光カプラ26は、光遅延回路25及び2:4MMIカプラ13の入力側の他のチャネルに接続されている。ここでは、1:2光カプラ26は1:2MMIカプラである。
具体的には、2:4MMIカプラ13の一の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の一の出力チャネルとを接続する一の光導波路の長さを、2:4MMIカプラ13の他の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の他の出力チャネルとを接続する他の光導波路の長さよりも長くしている。
【0119】
つまり、2:4MMIカプラ13の2つの入力ポートと1:2MMIカプラ26の2つの出力ポートとを接続する2つの光導波路(アーム)の長さ(光路長)に差が設けられている。
ここでは、一の光導波路の長さを長くして、DQPSK信号パルスの1ビットの遅延に相当する光路長差を設けている。このため、上述の第2実施形態の光ハイブリッド回路12に含まれる2:4MMIカプラ13の一の入力チャネルに接続された一の光導波路が光遅延回路25である。
【0120】
そして、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルに、DQPSK信号光が入力されるようになっている。このため、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルは、DQPSK信号光を入力するための入力チャネルである。DQPSK信号光パルスは、1:2MMIカプラ26を経由して2つの経路に分けられ、一方のDQPSK信号光は光遅延回路25によって1ビット遅延された後、2つのDQPSK信号光が時間的に同期して2:4MMIカプラ13に入力されることになる。この場合、2:4MMIカプラ13の2つの入力チャネルのそれぞれに入力されるDQPSK信号光の相対位相差は、上述の第2実施形態において説明した4種類の相対位相差Δψのいずれかになる。このため、上述の第2実施形態と同様の2:4MMIカプラ以降の回路構成によって、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。したがって、本光ハイブリッド回路12Aも、上述の第2実施形態の場合と同様に、90度ハイブリッドとして機能する。
【0121】
なお、その他の詳細は、上述の第2実施形態と同様であるから、ここではその説明を省略する。ここで、上述の第2実施形態のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、QPSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのDQPSK信号光に読み替えて適用すれば良い。
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路によれば、上述の第2実施形態の場合と同様に、例えば作製プロセスなどにおいて位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
【0122】
また、上述の第2実施形態の場合と同様に、幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
なお、上述の実施形態では、2:4MMIカプラ13の前段に設けられる1:2光カプラ26として1:2MMIカプラを用いているが、これに限られるものではない。例えば、1:2MMIカプラの代わりに、Y分岐カプラ、2:2方向性結合器などを用いることもでき、この場合も上述の実施形態の場合と同様に90度ハイブリッド動作を得ることができる。
【0123】
また、上述の実施形態では、上述の第2実施形態と同様に、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子を含むものとして構成されているが、これに限られるものではない。例えば、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを備える光半導体素子によって構成されていても良い。
【0124】
また、上述の第2実施形態の変形例(図17、図18参照)は、本実施形態のものにも同様に適用することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態にかかる光受信機、光送受信機について、図21を参照しながら説明する。
【0125】
本実施形態にかかる光受信機は、図21に示すように、上述の第4実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路12A(DQPSK信号用90度ハイブリッド;図20参照)を含むコヒーレント光受信機20Aである。このコヒーレント光受信機20Aは、90度ハイブリッド12Aによって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0126】
このため、本光受信機20Aは、図21に示すように、上述の第4実施形態及び変形例の光ハイブリッド回路12Aと、フォトダイオード(光電変換部)21A,21Bと、トランスインピーダンスアンプ(TIA)27A,27Bと、AD変換回路(AD変換部)22A,22Bと、デジタル演算回路(デジタル演算部)23とを備える。
なお、光ハイブリッド回路12Aの詳細については、上述の第4実施形態及びその変形例(図20参照)と同様であるから、ここではその説明を省略する。また、フォトダイオード21A,21B、トランスインピーダンスアンプ27A,27B、AD変換回路22A,22B、デジタル演算回路23の構成及び光受信方法については、上述の第3実施形態及びその変形例(図19参照)と同様であるから、ここではその説明を省略する。但し、本光受信機20Aには局部発振光発生部は存在しない。ここで、上述の第3実施形態及びその変形例のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、QPSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのDQPSK信号光に読み替えて適用すれば良い。なお、図21は、上述の第3実施形態(図19参照)及び第4実施形態(図20参照)のものと同一のものには同一の符号を付している。
【0127】
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、例えば作製プロセスなどにおいて光ハイブリッド回路12Aの位相シフタ領域6,7の導波路の幅や角度などが所望の値からずれてしまった場合であっても、特性が劣化してしまうのを抑制することができ、大きな作製トレランスが得られるという利点がある。
また、本実施形態のように、光ハイブリッド回路12Aの幅狭テーパ導波路型位相シフタ6と幅広テーパ導波路型位相シフタ7とを併用することで、素子特性を向上させることもできる。
【0128】
なお、上述の実施形態では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の第3実施形態の変形例と同様に、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子によって構成されることになるが(第4実施形態参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13と光カプラ14とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13と、光カプラ14と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
【0129】
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路12Aが、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子によって構成されることになるが(第4実施形態の変形例参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ13と、光カプラ14と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26と、フォトダイオード(ここではBPD)21A,21Bとが一体に集積されていても良い。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0130】
以下、上述の各実施形態及びその変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
光信号を分岐する第1カプラと、
光信号を干渉させる第2カプラと、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第1導波路と、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、
前記第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする光デバイス。
【0131】
(付記2)
前記第1位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路になっており、
前記第2位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路になっていることを特徴とする、付記1に記載の光デバイス。
【0132】
(付記3)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、直線テーパ形状、パラボリックテーパ形状、楕円関数型テーパ形状のいずれかのテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていることを特徴とする、付記1又は2に記載の光デバイス。
(付記4)
前記第1導波路の全体が、前記第1位相シフタ領域であり、
前記第2導波路の全体が、前記第2位相シフタ領域であることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0133】
(付記5)
前記第1導波路の一部が、前記第1位相シフタ領域であり、
前記第2導波路の一部が、前記第2位相シフタ領域であることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記6)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さ方向中心位置に対して対称な導波路構造を有することを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0134】
(付記7)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さ方向中心位置に対して非対称な導波路構造を有することを特徴とする、付記1〜5のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記8)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さが50μm以下であることを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0135】
(付記9)
前記第1カプラ及び前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラであることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光デバイス。
(付記10)
前記第1カプラは、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラであり、
前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に1つのチャネルを有する2:1光カプラであることを特徴とする、付記1〜8のいずれか1項に記載の光デバイス。
【0136】
(付記11)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする、光ハイブリッド回路。
【0137】
(付記12)
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、前記一対の第1光信号間の位相差又は前記一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせる領域であることを特徴とする、付記11に記載の光ハイブリッド回路。
(付記13)
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記11又は12に記載の光ハイブリッド回路。
【0138】
(付記14)
前記2:4多モード干渉カプラは、対モード干渉に基づく2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記13に記載の光ハイブリッド回路。
(付記15)
前記多モード干渉カプラは、入力側に4つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する4:4多モード干渉カプラであり、前記入力側の4つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネルが光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11又は12に記載の光ハイブリッド回路。
【0139】
(付記16)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11〜15のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0140】
(付記17)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記11〜15のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0141】
(付記18)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号又は前記第2光信号、及び、前記2:2光カプラから出力される前記第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【0142】
(付記19)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに局部発振光を入力するための局部発振光発生部を備えることを特徴とする、付記18に記載の光受信機。
【0143】
(付記20)
前記光ハイブリッド回路が、
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを含み、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記18に記載の光受信機。
【符号の説明】
【0144】
1 光分岐デバイス(光デバイス)
1A マッハツェンダ型光変調器(光デバイス)
2 入力側光カプラ(2:2MMIカプラ)
2A 1:2光カプラ(入力側光カプラ)
3 出力側光カプラ(2:2MMIカプラ)
3A 2:1光カプラ(出力側光カプラ)
4 第1導波路
5 第2導波路
6 第1位相シフタ領域(幅狭テーパ導波路型位相シフタ)
7 第2位相シフタ領域(幅広テーパ導波路型位相シフタ)
6X,7X マスク
8 InP基板
9 GaInAsPコア層
10 InPクラッド層
11 ハイメサ導波路構造
12,12A 光ハイブリッド回路(光デバイス)
13,13A MMIカプラ(2:4MMIカプラ)
14 光カプラ(2:2MMIカプラ)
20,20A コヒーレント光受信機
21A,21B フォトダイオード(光電変換部;BPD)
22A,22B AD変換回路(AD変換部)
23 デジタル演算回路(デジタル演算部)
24 局部発振光発生部(LO光源)
25 光遅延回路
26 1:2光カプラ
27A,27B トランスインピーダンスアンプ(TIA)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を分岐する第1カプラと、
光信号を干渉させる第2カプラと、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第1導波路と、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、
前記第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路になっており、
前記第2位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路になっていることを特徴とする、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、直線テーパ形状、パラボリックテーパ形状、楕円関数型テーパ形状のいずれかのテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さが50μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第1カプラ及び前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項6】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする、光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、前記一対の第1光信号間の位相差又は前記一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせる領域であることを特徴とする、請求項6に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号又は前記第2光信号、及び、前記2:2光カプラから出力される前記第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【請求項1】
光信号を分岐する第1カプラと、
光信号を干渉させる第2カプラと、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第1導波路と、
前記第1カプラと前記第2カプラとを接続する第2導波路とを備え、
前記第1導波路は、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記第2導波路は、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする光デバイス。
【請求項2】
前記第1位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が狭くなった後、出力端へ向けて幅が広くなるテーパ形状を有する導波路になっており、
前記第2位相シフタ領域は、入力端から長さ方向へ向けて幅が広くなった後、出力端へ向けて幅が狭くなるテーパ形状を有する導波路になっていることを特徴とする、請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、直線テーパ形状、パラボリックテーパ形状、楕円関数型テーパ形状のいずれかのテーパ形状を有する幅テーパ導波路になっていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、長さが50μm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記第1カプラ及び前記第2カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する2:2光カプラであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光デバイス。
【請求項6】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、
前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備えることを特徴とする、光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記第1位相シフタ領域及び前記第2位相シフタ領域は、前記一対の第1光信号間の位相差又は前記一対の第2光信号間の位相差がπ/2+p*π(pは整数)になるように位相をシフトさせる領域であることを特徴とする、請求項6に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に4つのチャネルを有する2:4多モード干渉カプラであることを特徴とする、請求項6又は7に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分四位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項10】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルとを備え、四位相偏移変調信号光又は差分四位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号及び同相関係にある一対の第2光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記第1出力チャネル又は前記第2出力チャネルに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号又は前記第2光信号を、直交位相関係にある一対の第3光信号に変換する2:2光カプラとを備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの一方又は前記一対の第2出力チャネルの一方に、端部よりも幅が狭い部分を有する第1位相シフタ領域を備え、前記2:2光カプラが接続された前記一対の第1出力チャネルの他方又は前記一対の第2出力チャネルの他方に、端部よりも幅が広い部分を有する第2位相シフタ領域を備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号又は前記第2光信号、及び、前記2:2光カプラから出力される前記第3光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプと、
前記トランスインピーダンスアンプから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2011−118055(P2011−118055A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273778(P2009−273778)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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