説明

光モジュールおよびモジュール付きケーブル

【課題】外力に対する耐久性に優れ、かつ小型化および低コスト化を実現できる光モジュールの提供。
【解決手段】光ファイバ2と抗張力体3とを有する光ファイバケーブル4の端部に組み立てられる光モジュール1。光ファイバ2が接続される光電変換部9が設けられた回路基板8と、回路基板8に固定される金属製の接続筒体15と、抗張力体3を接続筒体15の外面との間に挟み込んで固定するカシメリング16とを備えている。光ファイバ2は接続筒体15を挿通して光電変換部9を介して回路基板8に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信技術、光伝送技術、光情報記録技術に用いられる光モジュールおよびこれを用いたモジュール付きケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
機器間の光伝送を行うには、例えば電気信号と光信号とを変換する光モジュールを各機器に設け、この光モジュールに光コネクタを介して光ファイバケーブルを接続し、この光ファイバケーブルにより光信号の送受信を行う方式を用いることができる。
この方式では、光モジュールに着脱される光コネクタに汚れや異物が付着すると信号の劣化が起こるという問題があるため、光モジュールと光ファイバケーブルとを一体化したモジュール付きケーブルが提案されている。
電線を有する光電複合ケーブルを使用し、機器への電力供給等を可能としたものもある。
【0003】
モジュール付きケーブルに用いられる光ファイバケーブルとしては、ケーブルに加えられる引張力等の外力に対する強度を高めるため、抗張力体を内蔵したものがある(例えば、特許文献1参照)。このモジュール付きケーブルでは、抗張力体は光モジュールに固定される。
光モジュールに対する抗張力体の固定構造としては、光モジュールのハウジングにカシメ固定する構造などがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−325783号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JISガイドブック電気IIオプトエレクトロニクスC5983
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、デジタル家電等の機器における情報伝送量の増大および小型化に伴い、小型であり、かつ多種類の信号を伝送できる光モジュールが要望されている。
また、大量・多種のデータ伝送を行う場合や、多数のピンが用いられていた電気コネクタを光化した場合などには、光ファイバの本数が多く必要となることがある。
しかしながら、上述の光モジュールは、ケーブル等に加えられた外力を負担し得る強度の高いハウジングが必要となることなどから、小型化への対応が難しかった。
また、抗張力体の固定等のための構造などが複雑であることから、光ファイバの本数が多い場合に適切とはいえなかった。また、内部構造が複雑であるため低コスト化も困難であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、外力に対する耐久性に優れ、かつ小型化および低コスト化を実現できる光モジュールおよびモジュール付きケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、光ファイバと前記光ファイバに沿う抗張力体とを有する光ファイバケーブルの端部に組み立てられる光モジュールであって、前記光ファイバケーブルから引き出された光ファイバが光結合部を介して接続される光電変換部が設けられた回路基板と、前記回路基板に固定される金属製の接続筒体と、前記光ファイバケーブルから引き出された前記抗張力体を前記接続筒体の外面との間に挟み込んで固定するカシメリングとを備え、前記光ファイバが前記接続筒体を挿通して前記回路基板に接続されている光モジュールである。
本発明の請求項2にかかる発明は、請求項1において、前記接続筒体に、嵌合凸部が形成され、前記回路基板に、前記嵌合凸部が嵌合可能な被嵌合部が形成され、前記接続筒体は、前記嵌合凸部を前記被嵌合部に嵌合させた状態で前記回路基板に固定される光モジュールである。
本発明の請求項3にかかる発明は、請求項1または2において、前記嵌合凸部の長さ方向中間位置に、係止段部が形成され、前記係止段部は、前記被嵌合部の寸法が所定値より大きい場合に前記被嵌合部に係止し、前記被嵌合部の寸法が所定値以下である場合に前記前記被嵌合部に係止しないように形成されている光モジュールである。
本発明の請求項4にかかる発明は、請求項1〜3のうちいずれか1項において、前記接続筒体の内部に、この内部を区画する隔壁が形成され、前記隔壁は、回路基板の一方の面側の配線と他方の面側の配線とを区画することができるように形成されている光モジュールである。
本発明の請求項5にかかる発明は、請求項1〜4のうちいずれか1項において、前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバに沿う電線を備えた光電気複合ケーブルであり、前記電線が、前記回路基板に接続されている光モジュールである。
本発明の請求項6にかかる発明は、請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の光モジュールが、前記光ファイバケーブルの少なくとも一端に組み立てられたモジュール付きケーブルである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光ファイバケーブルに対する引張り力や曲げ力などの外力は、抗張力体、接続筒体およびカシメリングを介して回路基板に伝えられるため、この外力が光ファイバに及ぶことはなく、光ファイバ、光結合部等の破損、変形等を防止できる。
また、抗張力体を固定する構造が簡略であるため、光モジュールの小型化を図ることができる。
また、カシメリングは接続筒体に固定されるため、カシメ固定に対応できる機械的強度をハウジングに与える必要はなく、設計の自由度が高められ、小型化、低価格化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の例に係る光モジュールを示す一部断面図である。
【図2】光モジュールの要部を示す斜視図である。
【図3】光モジュールの要部を示す側面図である。
【図4】モジュール付きケーブルの要部を示す概略構成図である。
【図5】接続筒体を示す図であって、(a)は前面図、(b)は側断面図、(c)は下面図である。
【図6】光モジュールの組み立て手順を示す説明図である。
【図7】光モジュールの要部を示す断面図である。
【図8】接続筒体の他の例を示す斜視図である。
【図9】前図に示す接続筒体の要部を示す側断面図である。
【図10】接続筒体の設置状態を示す側断面図である。
【図11】接続筒体の他の設置状態を示す側断面図である。
【図12】接続筒体のさらに他の設置状態を示す側断面図である。
【図13】接続筒体の他の例を示す斜視図である。
【図14】接続筒体の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図15】接続筒体の他の例を示す一部断面斜視図である。
【図16】接続筒体の他の例を示す断面図である。
【図17】本発明の第2の例に係る光モジュールを示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図1〜図4は、本発明の第1の例にかかる光モジュールである光電変換モジュール1を用いたモジュール付きケーブルを示すものである。
図1および図4に示すように、このモジュール付きケーブルは、光ファイバ2(光伝送路)と抗張力体3とを備えた光ファイバケーブル4の端部に、光電変換モジュール1(光モジュール)が組み立てられている。
【0011】
図1に示すように、光電変換モジュール1は、回路基板8と、回路基板8に固定される金属製の接続筒体15と、抗張力体3を接続筒体15の外面との間に挟み込んで固定するカシメリング16と、回路基板8に接続された電気コネクタ5(コネクタ部)とを備えている。
回路基板8と、接続筒体15と、カシメリング16は、光ファイバケーブル4から引き出された光ファイバ2および抗張力体3の先端部とともにハウジング11に収容されている。
電気コネクタ5は、ハウジング11の先端部にハウジング11から突出して設けられており、他の機器に接続可能に構成されている。
以下の説明において、図1における左方を前方といい、右方を後方ということがある。前後方向は光ファイバケーブル4の端部における長さ方向に一致し、この方向は光電変換モジュール1の長さ方向でもある。
【0012】
回路基板8には、例えは、ガラスエポキシ基板、セラミック基板など、一般的な各種絶縁基板を使用することができる。回路基板8の面8a、8bには、所定の回路配線が形成されている。
【0013】
抗張力体3は、光ファイバ2に沿って設けられており、その端部は光電変換モジュール1のハウジング11内に導入されている。
抗張力体3としては、アラミド繊維が好適に用いられるが、ガラス繊維、炭素繊維なども使用できる。
【0014】
図5に示すように、接続筒体15は、真鍮、ステンレス鋼などの金属からなる筒体であり、略円筒状の筒体基部17と、その一端から筒体基部17の軸方向に沿って延出する略半円筒形の固定部18とを有する。
固定部18の両側縁部18a、18bには、それぞれ嵌合凸部19が形成されている。嵌合凸部19は、接続筒体15を回路基板8に位置決め、固定するものであって、側縁部18a、18bから固定部18の接線方向に直線状に延出している。
嵌合凸部19は、略半筒状の固定部18の接線方向に延出しているため、回路基板8に固定された状態では回路基板8に対しほぼ垂直な方向となる。
【0015】
嵌合凸部19は、各側縁部18a、18bにそれぞれ1または複数形成することができる。図示例では、一方の側縁部18aに2つの嵌合凸部19a、19aが形成され、他方の側縁部18bに2つの嵌合凸部19b、19bが形成されている。
嵌合凸部19a、19aは、前後方向(接続筒体15の軸方向)に間隔をおいて形成されている。同様に、嵌合凸部19b、19bも、前後方向に間隔をおいて形成されている。
一方の側縁部18aに形成された嵌合凸部19aと、他方の側縁部18bに形成された嵌合凸部19bは、前後方向(接続筒体15の軸方向)の位置を違えて形成するのが好ましい。これによって、回路基板8に対して接続筒体15を固定する際に、設置位置の誤りを認識しやすくし、組み立て時の誤操作を防止できる。
【0016】
固定部18の前端縁には、光ファイバ2が通過可能な通過切欠き18cが形成されている。通過切欠き18cは、光ファイバ2が通過可能な凹部であればその形状は限定されない。図示例の通過切欠き18cは固定部18の前端縁に形成された略V字状である。
このため、光ファイバ2を回路基板8からこの基板8の厚さ方向(図示例では上方)に離れた位置に配線することが必要となる場合でも、固定部18により光ファイバ2に過度の曲げが加えられることはなく、光学的特性に悪影響が及ぶのを防止できる。
筒体基部17には、カシメリング16が装着される部分の外面に凹凸部17aを形成することによって、抗張力体3の固定強度を高めることができる(図5(c)を参照)。図示例の凹凸部17aは網目状の溝部である。
【0017】
図6に示すように、回路基板8には、被嵌合部である嵌合穴8cが形成されている。
嵌合穴8cは、接続筒体15の嵌合凸部19a、19bの数および位置に即して形成されている。図示例では、合計4本の嵌合凸部19に即して4つの嵌合穴8cが形成されている。
本発明では、被嵌合部は、嵌合穴に限らず、嵌合凸部が嵌合可能な凹部であってもよい。
【0018】
カシメリング16は、接続筒体15の外径よりやや大きい内径を有する筒体であり、アルミニウム合金などの金属からなる。
カシメリング16は、接続筒体15の外面との間に抗張力体3を挟んだ状態で少なくとも一部を縮径方向に変形させて、抗張力体3を挟み込んで固定することができる。
【0019】
図1に示すように、回路基板8の一方の面8aには、光ファイバ2が接続される受発光素子9(光電変換部)と、制御用半導体10とが設けられている。
光ファイバ2としては、例えば石英系光ファイバ、プラスチック光ファイバ(POF)などの光ファイバが挙げられる。
光ファイバ2は、回路基板8の一方の面8aに沿って配線され、受発光素子9に接続されている。
【0020】
図7に示すように、受発光素子9は、光信号を出射または入射させる部分として受発光部9aを有する。図示例の受発光部9aは、受発光素子9の上面9cに設けられている。
受発光素子9が受光素子である場合は、受発光部9aは受光部である。受発光素子9が発光素子である場合は、受発光部9aは発光部である。
発光素子としては、発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)、面発光レーザ(VCSEL)等が挙げられる。受光素子としては、フォトダイオード(PD)等が挙げられる。
【0021】
受発光素子9は、回路基板8の一方の面8aに形成された光電変換部電極6に対して電気的に接続されている。
図示例では、受発光素子9は、上面9c(表面)に接続された配線14を介して1つの光電変換部電極6と電気的に接続されている。受発光素子9の下面9d(裏面)は、導電性接着剤(図示せず)により他の光電変換部電極6に電気的に接続されている。
配線14としては、例えば、金(Au)ワイヤ、アルミニウム(Al)ワイヤ、銅(Cu)ワイヤなどを使用できる。
【0022】
受発光素子9は、その光軸9bが光ファイバ2の光軸2b(特に端部2a付近における光軸2b)に所定の角度θ(例えば0<θ<180°)で交差するように配置されている。受発光素子9および光ファイバ2は、これらの光軸9b,2bが互いに垂直(または略垂直)に配置されることが好ましい。
【0023】
受発光素子9は、光結合部13を介して光ファイバ2に接続されている。
光結合部13は、伝送される光に対して透明な樹脂からなる。光結合部13を構成する樹脂は、受発光素子9の受発光部9aの少なくとも一部および光ファイバ2の端部2aの少なくとも一部にそれぞれ密着している。
ここでいう透明樹脂とは、受発光素子9と光ファイバ2との間を伝送する光を透過させることが可能なものを指し、必ずしも可視光下で無色透明な色調のものに限定されるものではない。
透明樹脂としては、例えば、UV硬化性樹脂や熱硬化性樹脂などを用いることができる。透明樹脂の具体例としては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
光ファイバ2は、光結合部13および受発光素子9を介して回路基板8に接続される。
【0024】
図1および図7に示すように、制御用半導体10は、回路基板8の回路配線を経て入力された電気信号に、必要に応じてレベル調整や各種変換などを施すことができる。制御用半導体10は回路基板8の一方の面8aに設けてもよいし、他方の面8bに設けてもよい。
また、制御用半導体10が成す機能が回路基板8以外に備わっている場合には、制御用半導体10を回路基板8に設けず省略してもよい。
【0025】
受発光素子9が発光素子である場合には、電気コネクタ5から入力された電気信号は、回路基板8の回路配線を経て制御用半導体10に入力され、必要に応じてレベル調整等が施された後、回路配線を経て光電変換部電極6から受発光素子9に入力される。
受発光素子9では、電気信号が光信号に変換され、受発光部9aから発せられた光信号が光結合部13に入射し、界面(外面13a)で反射されて光ファイバ2に入射する。
【0026】
受発光素子9が受光素子の場合には、光ファイバ2から光結合部13に入射した光は、界面(外面13a)で反射されて受発光素子9の受発光部9aに入射する。
受発光素子9では光信号が電気信号に変換され、この電気信号は光電変換部電極6に入力され、回路基板8の回路配線を経て制御用半導体10に入力され、制御用半導体10において必要に応じてレベル調整等が施された後、回路配線を経て電気コネクタ5に送られる。
【0027】
次に、光ファイバケーブル4の端部に、光電変換モジュール1を組み立てる方法について説明する。
図6に示すように、接続筒体15の嵌合凸部19を嵌合穴8cに挿入する。図示例では、嵌合凸部19は一方の面8aから嵌合穴8cに挿入される。嵌合凸部19はその基端部まで嵌合穴8cに挿入することができる。
嵌合凸部19は、他方の面8bにおいて半田付け等により回路基板8に固定されるのが好ましい。
【0028】
光ファイバケーブル4の端部から引き出した抗張力体3を接続筒体15の外面とカシメリング16との間に配置し、カシメリング16を縮径方向に変形させて、抗張力体3を挟み込んで固定する。
これによって、光ファイバケーブル4は、接続筒体15およびカシメリング16を介して回路基板8に接続される。
【0029】
光ファイバケーブル4の端部から引き出された光ファイバ2は、接続筒体15に挿通し、回路基板8の一方の面8a側の光結合部13を介して受発光素子9に接続される。
なお、図1に示す例では、光ファイバ2は回路基板8の一方の面8a側のみに接続されているが、一部の光ファイバ2を他方の面8b側に接続することもできる(図3参照)。
【0030】
光電変換モジュール1は、回路基板8に固定される接続筒体15と、抗張力体3を接続筒体15との間に挟み込むカシメリング16とを備えているので、光ファイバケーブル4に対する引張り力や曲げ力などの外力は、抗張力体3、接続筒体15およびカシメリング16を介して回路基板8に伝えられる。
このため、この外力が光ファイバ2に及ぶことはなく、光ファイバ2の破損や光結合部13の破損、変形等を防止できる。
【0031】
また、抗張力体3を固定する構造が簡略であるため、光電変換モジュール1の小型化を図ることができる。
また、カシメリング16は接続筒体15に固定されるため、カシメリングをハウジングに固定する構造のものとは異なり、カシメ固定に対応できる機械的強度をハウジング11に与える必要はなくなる。このため、設計の自由度が高められ、小型化、低価格化を実現できる。
【0032】
図8および図9は、接続筒体15の他の例を示すもので、この接続筒体15では、嵌合凸部20が、基端側から先端側にかけて、第1部分21と、第1部分21より幅が狭い第2部分22と、第2部分22より幅が狭い第3部分23とからなる。
第1部分21は延出方向に略一定幅とされており、第2部分22の形成に伴い、その下端(先端)には係止段部21aが形成されている。同様に、第2部分22も延出方向に略一定幅とされており、第3部分23の形成に伴い、その下端(先端)には係止段部22aが形成されている。第3部分23も略一定幅とされている。
図示例では、第1部分21〜第3部分23は、幅方向中央位置を一致させて形成されているため、係止段部21a、22aは部分21、22の両側縁の下端にそれぞれ形成される。
【0033】
図10〜図12に示すように、嵌合凸部20の構成により、回路基板8に対する接続筒体15の本体部分(筒体基部17、固定部18等)の高さ位置調整が可能となる。
すなわち、図10に示すように、嵌合穴8cの幅寸法が第1の所定値より大きい場合には、嵌合凸部20は嵌合穴8cに基端部まで挿入される。
これに対し、図11に示すように、嵌合穴8cが第2部分22に即した幅寸法を有する場合(嵌合穴8cの幅寸法が第1所定値以下である場合)には、係止段部21aが嵌合穴8cの開口端に係止するため、第1部分21は嵌合穴8cに挿入されない。このため、接続筒体15の本体部分は回路基板8に対し離れた位置に配置される。
図12に示すように、同様に、嵌合穴8cが第3部分23に即した幅寸法を有する場合(嵌合穴8cの幅寸法が第2所定値以下である場合)には、係止段部22aが嵌合穴8cの開口端に係止し、第1部分21および第2部分22は嵌合穴8cに挿入されない。このため、前記本体部分は回路基板8に対しさらに離れた位置に配置される。
【0034】
このように、嵌合穴8cの幅寸法の設定によって、回路基板8に対する接続筒体15の高さ位置を調整できる。
このため、接続筒体15が固定される回路基板8に対し光ファイバ2を相対的に高い位置に配線することが必要となる場合(熱応力の緩和のためサブマウントを用いる場合、複数の回路基板を用いる場合、回路基板8をハウジング11内の低い位置に設置することが必要となる場合など)も、接続筒体15により光ファイバ2に過度の曲げが加えられることはなく、光学的特性に悪影響が及ぶのを防止できる。
【0035】
図8および図9に示す例では、第1部分21〜第3部分23は、幅方向中央位置を一致させて形成されているが、図13に示すように、第2部分22および第3部分23の一方の側縁22b、23bの幅方向位置を第1部分21の一方の側縁21bの幅方向位置に一致させて形成してもよい。
この場合も、上述の接続筒体15の高さ位置調整が可能となる。
【0036】
図14〜図16は、接続筒体15のさらに他の例を示すもので、ここに示す接続筒体15A、15Bでは、筒体基部17に、内部を上下に区画する隔壁25が形成されている。
隔壁25は、回路基板8の一方の面8a側の配線と他方の面8b側の配線とを区画するものであって、接続筒体15A、15Bを回路基板8に固定した状態において回路基板8に沿うように形成するのが好ましい。
【0037】
図14に示す接続筒体15Aの筒体基部17は、半管状の第1部分26と、半管状の第2部分27と、これらの間に設けられた隔壁25とを有する。
隔壁25は、第1部分26の一方の側縁26aと、第2部分27の他方の側縁27bとを連結して設けられており、接続筒体15Aは、全体として断面略S字形の構造を有する。
図15に示す接続筒体15Bの筒体基部17は、主管部分28と、主管部分28の一方の側縁28aからその内部に向けて直径方向に延出する隔壁25とからなり、全体として断面略e字形の構造を有する。
接続筒体15A、15Bは、金属板の折り曲げ加工により形成することができる。
【0038】
図16に示すように、接続筒体15A、15Bでは、隔壁25によって、回路基板8の一方の面8a側の配線と他方の面8b側の配線とを区画することができる。
例えば回路基板8の一方の面8aに接続される光ファイバ2を隔壁25の一方側の空間17bに配置し、他方の面8bに接続される光ファイバ2を他方側の空間17cに配置することによって、混同を防止できる。
後述する光電気複合ケーブルを使用する場合には、電線と光ファイバとを隔壁25によって隔て、電線と光ファイバが絡まることによる伝送損失の低下等を防止できる。
また、隔壁25は、送信用の配線と受信用の配線を区画するために用いることもできるし、配線をチャンネルごとに区画するために用いることもできる。
【0039】
図17は、本発明の第2の例にかかる光モジュールであって、光ファイバ2と、光ファイバ2に沿う電線12とを備えた光電気複合ケーブル4を用いた場合の光電変換モジュール1を示すものである。
電線12としては、例えば銅などからなる金属導体12aの外周に樹脂被覆12bを設けた汎用品を使用できる。
電線12は、回路基板8の他方の面8bに設けられた電線接続用電極7に接続されており、回路基板8の回路配線を介して電気コネクタ5に電気的に接続される。
このため、電気コネクタ5が接続される機器には、電気コネクタ5を通して電力供給や電気信号の送受信が可能である。
また、電線12より制御用半導体10に電力を供給し、動作をさせることも可能である。
【0040】
この例においても、光電気複合ケーブル4に対する引張り力や曲げ力などの外力は、抗張力体3、接続筒体15およびカシメリング16を介して回路基板8に伝えられるため、この外力が光ファイバ2および電線12に及ぶことはなく、光ファイバ2、光結合部13、電線12等の破損、変形等を防止できる。
また、抗張力体3を固定する構造が簡略であるため、光電変換モジュール1の小型化を図ることができる。
また、カシメリング16は接続筒体15に固定されるため、カシメ固定に対応できる機械的強度をハウジング11に与える必要はなく、設計の自由度が高められ、小型化、低価格化を実現できる。
【0041】
なお、本発明は、光モジュールが光ファイバケーブルの一端のみに設けられた構成も可能である。
また、図示例では、接続筒体15に形成された嵌合凸部19が回路基板8の嵌合穴8c(被嵌合部)に嵌合する構成としたが、逆に、回路基板に形成された嵌合凸部が接続筒体の被嵌合部に嵌合する構成も可能である。
【符号の説明】
【0042】
1・・・光電変換モジュール(光モジュール)、2・・・光ファイバ、3・・・抗張力体、4・・・光ファイバケーブル、光電気複合ケーブル、8・・・回路基板、8a・・・一方の面、8b・・・他方の面、8c・・・嵌合穴(被嵌合部)、9・・・受発光素子(光電変換部)、12・・・電線、13・・・光結合部、15、15A、15B・・・接続筒体、16・・・カシメリング、19、20・・・嵌合凸部、21a、22a・・・係止段部、25・・・隔壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと前記光ファイバに沿う抗張力体とを有する光ファイバケーブルの端部に組み立てられる光モジュールであって、
前記光ファイバケーブルから引き出された光ファイバが光結合部を介して接続される光電変換部が設けられた回路基板と、
前記回路基板に固定される金属製の接続筒体と、
前記光ファイバケーブルから引き出された前記抗張力体を前記接続筒体の外面との間に挟み込んで固定するカシメリングとを備え、
前記光ファイバが前記接続筒体を挿通して前記回路基板に接続されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記接続筒体に、嵌合凸部が形成され、
前記回路基板に、前記嵌合凸部が嵌合可能な被嵌合部が形成され、
前記接続筒体は、前記嵌合凸部を前記被嵌合部に嵌合させた状態で前記回路基板に固定されることを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記嵌合凸部の長さ方向中間位置に、係止段部が形成され、
前記係止段部は、前記被嵌合部の寸法が所定値より大きい場合に前記被嵌合部に係止し、前記被嵌合部の寸法が所定値以下である場合に前記前記被嵌合部に係止しないように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記接続筒体の内部に、この内部を区画する隔壁が形成され、
前記隔壁は、回路基板の一方の面側の配線と他方の面側の配線とを区画することができるように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記光ファイバケーブルは、前記光ファイバに沿う電線を備えた光電気複合ケーブルであり、
前記電線が、前記回路基板に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の光モジュール。
【請求項6】
請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の光モジュールが、前記光ファイバケーブルの少なくとも一端に組み立てられたことを特徴とするモジュール付きケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−112898(P2011−112898A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269771(P2009−269771)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】