説明

光モジュールの製造方法

【課題】光素子とカバーガラスとの距離の精度を高めることのできる光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】パッケージ10内にVCSEL20を有する光モジュール1の製造方法において、パッケージ10は、開口部11と、開口部11が覆われた状態で内部に注入可能な第1注入口12A及び第2注入口12Bとを有し、パッケージ10の内部にVCSEL20を設置する設置工程と、VCSEL20が設置されたパッケージ10の開口部11にカバーガラス40を覆設する覆設工程と、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、一方の注入口から内部に樹脂30を注入する注入工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば受光及び発光のうち少なくとも一方を行う受発光部を有する光素子を内部に含む光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の光モジュールの製造方法では、パッケージの内部に光素子を設置し、光素子が設置されたパッケージの内部を樹脂で充填し、カバーガラスを被せた後、熱などで樹脂を硬化させているが、樹脂を充填する際に樹脂内に空気が混入し、硬化させた樹脂内に気泡が発生してしまうという問題があった。樹脂内に気泡が発生すると、樹脂と気泡との屈折率の差により、光モジュールの性能が低下するおそれがあった。
【0003】
この問題を解決するため、セラミック基板上にCCDチップを載置するとともに、CCDチップを取り囲むように樹脂封止枠を配置し、樹脂封止枠内において、透明樹脂を樹脂封止枠の所定レベルまで充填するとともに、減圧下に脱泡を行って仮硬化させ、次いで仮硬化した樹脂表面に透明樹脂を補充してカバーガラスを載置し、樹脂を硬化させることにより、樹脂から気泡の除去を円滑に達成するようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−241974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の光モジュールの製造方法では、樹脂封止枠の内部を樹脂で充填しているので、硬化後における樹脂の高さを制御することが難しかった。そのため、カバーガラスとパッケージとの隙間に樹脂が入り込み、パッケージに対してカバーガラスが浮いてしまうことがあり、光素子とカバーガラスとの距離の精度が低いという問題があった。光素子とカバーガラスとの距離の精度が低いと、例えば光素子から発光した光をカバーガラス上部に設けられた導波路を介して外部の機器と光結合する場合に、光素子からの光が樹脂により広がって導波路に入射されるので、当初設計した光路長(光学的距離)と異なるため、光結合の効率が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は前述の問題に鑑みてなされたものであり、光素子とカバーガラスとの距離の精度を高めることのできる光モジュールの製造方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光モジュールの製造方法は、前記課題を解決するために、パッケージ内に光素子を有する光モジュールの製造方法において、前記パッケージは、開口部と、該開口部が覆われた状態で内部に樹脂を注入可能な第1及び第2の注入口とを有し、前記パッケージの内部に前記光素子を設置する設置工程と、前記光素子が設置された前記パッケージの前記開口部にカバーガラスを覆設する覆設工程と、前記カバーガラスが覆設された前記パッケージにおける前記第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に前記樹脂を注入する注入工程とを備える。
【0007】
かかる構成によれば、開口部にカバーガラスが覆設され、カバーガラスが覆設されたパッケージにおける第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に樹脂が注入されるので、従来のように内部を樹脂で充填した後にカバーガラスを覆設するよりも、開口部に覆設されたカバーガラスとパッケージとの隙間を小さくすることができるとともに、他方の注入口が空気穴の役割を果たして空気が抜けやすくなり、一方の注入口から注入された樹脂内に空気が混入する割合を低減することができる。これにより、注入された樹脂がカバーガラスとパッケージとの隙間に入り込むのを防止することができ、光素子とカバーガラスとの距離の精度を高めることができるとともに、硬化させた樹脂内に気泡が発生するのを防止することができる。
【0008】
好ましくは、前記第1及び第2の注入口は、前記パッケージの中心に関して略対称な位置に設けられている。
【0009】
かかる構成によれば、第1及び第2の注入口が、パッケージの中心に関して略対称な位置に設けられているので、他方の注入口から空気が更に抜けやすくなるので、一方の注入口から注入された樹脂内に空気が混入する割合を更に低減することができる。これにより、硬化させた樹脂内に気泡が発生するのを更に防止することができる。
【0010】
好ましくは、前記設置工程は、前記光素子が設置された前記パッケージの内部に前記樹脂を所定の高さまで注入する所定高注入工程と、前記注入された前記樹脂を硬化させる工程とを更に含み、前記注入工程は、前記樹脂を前記開口面の高さまで注入する。
【0011】
かかる構成によれば、光素子が設置されたパッケージの内部に樹脂が所定の高さまで注入され、カバーガラスが覆設されたパッケージにおける第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に樹脂が開口面の高さまで注入されるので、最初に注入された樹脂を硬化させ、カバーガラスを開口部に覆設した後に、2回目に注入された樹脂を硬化させることができる。これにより、2回目に注入する樹脂の使用量を削減して硬化収縮量を低減することができ、硬化収縮によって樹脂に発生する気泡及びカバーガラスに加わる応力を低減することができる。
【0012】
好ましくは、前記所定高注入工程は、前記パッケージを加熱する工程と、前記加熱された前記パッケージに前記樹脂を前記所定の高さまで注入する工程とを含む。
【0013】
かかる構成によれば、光素子が設置されたパッケージが加熱され、加熱されたパッケージにおける第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に樹脂が所定の高さまで注入されるので、注入された樹脂をパッケージの余熱で硬化させ、硬化により樹脂の粘度を高め、低粘度の樹脂を用いる場合でも樹脂の広がりを抑制することができる。これにより、注入された樹脂がカバーガラスとパッケージとの隙間に入り込むのを更に防止することができる。
【0014】
好ましくは、前記光素子は、受光及び発光のうち少なくとも一方を行う受発光部を有し、前記設置工程は、前記受発光部を前記開口部に向けて前記光素子を設置し、前記所定高注入工程は、前記樹脂を前記受発光部が位置する高さ以下まで注入する。
【0015】
かかる構成によれば、受発光部を開口部に向けて光素子が設置され、光素子が設置されたパッケージの内部に受発光部が位置する高さ以下まで樹脂が注入されるので、最初に注入した樹脂に空気が混入し、硬化させた樹脂に気泡が発生する場合でも、当初設計した光路長(光学的距離)を形成する受発光部と開口面との間には影響がない。これにより、2回目に注入する樹脂の使用量を削減して硬化収縮量を低減することができ、硬化収縮によって受発光部と開口面との間の樹脂に発生する気泡を低減することができる。
【0016】
好ましくは、前記注入工程は、前記カバーガラスが覆設された前記パッケージに所定熱量を付与する工程と、前記所定熱量が付与された前記パッケージに前記樹脂を注入する工程とを含む。
【0017】
かかる構成によれば、カバーガラスが覆設されたパッケージに所定熱量が付与され、所定熱量が付与されたパッケージにおける前記第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に所定量の樹脂が注入されるので、注入された樹脂をパッケージの余熱で硬化させ、硬化により樹脂の粘度を高め、低粘度の樹脂を用いる場合でも樹脂の広がりが抑制され、従来のようにパッケージの内部を充填することなく、所定量の樹脂で光素子を封止することができる。これにより、注入された樹脂がカバーガラスとパッケージとの隙間に入り込むのを更に防止することができるとともに、樹脂の注入を1回で済ますことができ、光モジュールの製造効率を高めることができる。
【0018】
好ましくは、前記注入工程は、前記パッケージの内部に設置された前記光素子に近い方の注入口から前記樹脂を注入する。
【0019】
かかる構成によれば、パッケージの内部に設置された光素子に近い方の注入口から内部に所定量の樹脂が注入されるので、所定量の樹脂で光素子を確実に封止することができる。これにより、注入する樹脂の使用量を削減して硬化収縮量を更に低減することができ、硬化収縮によって受発光部と開口面との間の樹脂に発生する気泡を更に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
最初に図1乃至図12を用いて本発明の第1実施形態について説明する。
【0021】
まず、図1乃至図5を用いて光モジュールの構成を説明する。図1は、第1実施形態における光モジュールの構成を説明する概略上面図である。図1に示すように、光学モジュール1は、カバーガラス40の上部に設けられる光ファイバなどの導波路(図示せず)を介して他の光学モジュールと光結合するためのものである。光学モジュール1は、パッケージ10と、後述するVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)20及び樹脂30と、カバーガラス40とを含んで構成されている。
【0022】
パッケージ10は、光学モジュール1の本体部分を構成し、開口部11、第1注入口12A及び第2注入口12Bを有する筐体である。開口部11は、パッケージ10の上面を開口し、カバーガラス40で覆われている。第1注入口12A及び第2注入口12Bのそれぞれは、開口部11が覆われた状態でパッケージ10の内部に樹脂を注入可能とするためのものあり、例えばパッケージ10の外縁上に設けられる。なお、注入口の数は2つに限定されず、パッケージ10の強度との関係で3つ以上であってもよい。また、樹脂が注入されない方の注入口は、「注入口」に該当しないという疑義が生じるが、「注入口」は単なる称呼上の問題であって、樹脂が注入されるものに限定されない。本願では、樹脂が注入されない注入口であっても、樹脂を注入可能という意味で「注入口」というものとする。
【0023】
図2は図1に示したパッケージの変形例を説明する概略上面図である。第1注入口12A及び第2注入口12Bが設けられる位置は図1に示したものに限定されず、図2に示すように、パッケージ10の外縁の対角位置に設けるようにしてもよい。
【0024】
図3は図1に示したA−A線矢視方向断面図である。図3に示すように、パッケージ10は、VCSEL20が載置される回路基板13及び開口部11の外縁をなす枠14を含む。なお、枠14の高さは、回路基板13上に載置されたVCSEL20の高さよりも高く設定される。また、パッケージ10及びVCSEL20は、ワイヤボンディングなどの方法によってワイヤ2で電気接続される。なお、図ではワイヤ2を1つだけ示したが、これに限定されず、複数のワイヤ2で電気接続するようにしてもよい。
【0025】
VCSEL20はパッケージ10の内部に含まれる面発光型の発光素子であり、発光部21を有する。本実施形態では、光素子としてVCSEL20を用いるようにしたが、これに限定されず、VCSEL20に代えて受光部を有する受光素子、例えばフォトダイオードなどを用いるようにしてもよいし、VCSEL20とともにフォトダイオードを用いるようにしてもよい。
【0026】
樹脂30はシリコーンなどの光透過性を有する樹脂であり、パッケージ10の内部に充填される。なお、通常、樹脂30は硬化収縮するとVCSEL20及びカバーガラス40に応力が加わるので、VCSEL20及びカバーガラス40を破損させたり性能を低下させたりするおそれがある。よって、樹脂30はゲル状の柔らかいものを用いることが好ましい。
【0027】
図4は図1に示したB−B線矢視方向断面図である。図4に示すように、カバーガラス40は、パッケージ10の開口部11を覆うように設けられ、開口部11以上の大きさを有する。なお、回路基板13上に載置されたVCSEL20とパッケージ10の開口面との距離、すなわちVCSEL20とカバーガラス40との距離は、あらかじめ設計された距離になるように、設定される。
【0028】
図5は図4に示した光モジュールの変形例を説明する断面図である。本実施形態では、カバーガラス40を枠14上に載置するようにしたが、これに限定されず、図5に示すように、パッケージ10がカバーガラス40と略同一の大きさを有する封止枠15を備え、カバーガラス40を封止枠15に嵌めて接着剤などで固定し、開口部11を覆うように設けてもよい。
【0029】
次に、図6乃至図12を用いて光モジュールの製造方法について説明する。図6乃至図8は、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における設置工程を説明する側断面図である。
【0030】
(設置工程)
図6に示すように、VCSEL20は発光部21をパッケージ10の開口部11に向けてパッケージ10の内部の回路基板13上に載置され、VCSEL20が有する電極(図示せず)とパッケージ10の回路基板13が有する端子(図示せず)とをワイヤ2で電気接続し、パッケージ10の内部にVCSEL20を設置する。
【0031】
次に、図7に示すように、VCSEL20が設置されたパッケージ10の内部に、樹脂30を所定の高さまで注入する。ここで、パッケージ10の内部に注入された樹脂30は、表面張力などによりパッケージ10から溢れたりはみ出たりするので、樹脂30を例えば発光部21が位置する高さ以下まで注入するのが好ましい。これにより、注入した樹脂30に空気が混入し、硬化させた樹脂30に気泡が発生する場合でも、当初設計した光路長(光学的距離)を形成する発光部21と開口面との間には影響がない。
【0032】
次に、図8に示すように、例えば150℃に設定されたオーブンにパッケージ10を入れて30分程度加熱し、パッケージ10の内部に注入された樹脂30を硬化させる。なお、硬化させた樹脂30は、完全に硬化させた状態でもよいし、所定粘度を有する半硬化の状態であってもよい。本実施形態では、オーブンによって加熱して樹脂30を硬化させるようにしたが、これに限定されず、ヒータなどで加熱して樹脂30を硬化させるようにしてもよい。また、パッケージ10を加熱する方向も図に示した方向に限定されない。
【0033】
図9は、図7に示した設置工程の変形例を説明する側断面図である。VCSEL20が設置されたパッケージ10に樹脂30を注入する前に、図9に示すように、例えば120〜150℃に設定されたオーブンにパッケージ10を入れて数分程度加熱する。なお、前述の場合と同様に、加熱方法及び加熱方向は限定されない。
【0034】
図10は、図8に示した設置工程の変形例を説明する側断面図である。図10に示すように、加熱されたパッケージ10の内部に、時間を置かず、すぐに樹脂30を所定の高さまで注入する。これにより、注入された樹脂30をパッケージ10の余熱で硬化させ、硬化により樹脂30の粘度を高め、低粘度の樹脂30を用いる場合でも樹脂30の広がりを抑制することができる。
【0035】
本実施形態では、パッケージ10を加熱した後に、樹脂30を注入するようにしたが、これに限定されず、樹脂30を注入する前に予熱を与えつつ、パッケージ10を加熱しながら樹脂30を注入するようにしてもよい。
【0036】
(覆設工程)
図11は、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における覆設工程を説明する側断面図である。図11に示すように、パッケージ10の枠14上にカバーガラス40を載置して接着剤などで固定し、設置工程においてVCSEL20が設置されたパッケージ10の開口部11に、カバーガラス40を覆うように設ける。
【0037】
(注入工程)
図12は、第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における注入工程を説明する側断面図である。図12に示すように、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10の一方の注入口、例えば第1注入口12Aから、先端がニードル状のディスペンサ50によって内部に樹脂30を開口面の高さまで注入する。このように、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、第1注入口12Aから内部に樹脂30が注入されるので、従来のように内部を樹脂で充填した後にカバーガラスを覆設するよりも、開口部11に覆設されたカバーガラス40とパッケージ10との隙間を小さくすることができるとともに、第2注入口12Bが空気穴の役割を果たして空気が抜けやすくなり、第1注入口12Aから注入された樹脂30内に空気が混入する割合を低減することができる。また、最初に注入された樹脂30を硬化させ、カバーガラス40を開口部11に覆設した後に、2回目に注入された樹脂30を硬化させることができる。
【0038】
なお、図1及び図2に示したように、第1注入口12A及び第2注入口12Bは、パッケージ10の中心に関して略対称な位置に設けられることが好ましい。これにより、第2注入口12Bから空気が更に抜けやすくなるので、第1注入口12Aから注入された樹脂内に空気が混入する割合を更に低減することができる。
【0039】
樹脂30を開口面の高さまで注入した後、パッケージ10を加熱するなどにより、2回目に注入した樹脂30を硬化させ、図3に示したような光モジュール1を製造することができる。
【0040】
本実施形態では、樹脂30の注入及び硬化を2回ずつ行うようにしたが、これに限定されず、3回以上の複数回ずつ行うようにしてもよい。また、設置工程において、カバーガラス40を覆設する前に所定の高さまで樹脂30を注入するようにしたが、これに限定されず、カバーガラス40を覆設した後に、注入工程において、第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、一方の注入口から内部に所定の高さまで樹脂30を注入し、最初の樹脂30を硬化させた後、開口面の高さまで樹脂30を注入するようにしてもよい。
【0041】
このように、本実施形態によれば、開口部11にカバーガラス40が覆設され、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、第1注入口12Aから内部に樹脂30が注入されるので、従来のように内部を樹脂で充填した後にカバーガラスを覆設するよりも、開口部11に覆設されたカバーガラス40とパッケージ10との隙間を小さくすることができるとともに、第2注入口12Bが空気穴の役割を果たして空気が抜けやすくなり、第1注入口12Aから注入された樹脂30内に空気が混入する割合を低減することができる。これにより、注入された樹脂30がカバーガラス40とパッケージ10との隙間に入り込むのを防止することができ、VCSEL20とカバーガラス40との距離の精度を高めることができるとともに、硬化させた樹脂30内に気泡が発生するのを防止することができる。
【0042】
また、第1注入口12A及び第2注入口12Bが、パッケージ10の中心に関して略対称な位置に設けられているので、第2注入口12Bから空気が更に抜けやすくなるので、第1注入口12Aから注入された樹脂内に空気が混入する割合を更に低減することができる。これにより、硬化させた樹脂内に気泡が発生するのを更に防止することができる。
【0043】
また、VCSE20が設置されたパッケージ10の内部に樹脂30が所定の高さまで注入され、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、第1注入口12Aから内部に樹脂30が開口面の高さまで注入されるので、最初に注入された樹脂30を硬化させ、カバーガラス40を開口部11に覆設した後に、2回目に注入された樹脂30を硬化させることができる。これにより、2回目に注入する樹脂30の使用量を削減して硬化収縮量を低減することができ、硬化収縮によって樹脂40に発生する気泡及びカバーガラス40に加わる応力を低減することができる。
【0044】
また、VCSEL20が設置されたパッケージ10が加熱され、加熱されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、第1注入口12Aから内部に樹脂30が所定の高さまで注入されるので、注入された樹脂30をパッケージ10の余熱で硬化させ、硬化により樹脂30の粘度を高め、低粘度の樹脂30を用いる場合でも樹脂30の広がりを抑制することができる。これにより、注入された樹脂30がカバーガラス40とパッケージ10との隙間に入り込むのを更に防止することができる。
【0045】
また、発光部21を開口部11に向けてVCSEL20が設置され、VCSEL20が設置されたパッケージ10の内部に発光部21が位置する高さ以下まで樹脂30が注入されるので、最初に注入した樹脂30に空気が混入し、硬化させた樹脂30に気泡が発生する場合でも、当初設計した光路長(光学的距離)を形成する発光部21と開口面との間には影響がない。これにより、2回目に注入する樹脂30の使用量を削減して硬化収縮量を低減することができ、硬化収縮によって発光部21と開口面との間の樹脂に発生する気泡を低減することができる。
【0046】
<第2実施形態>
次に図13乃至図15を用いて本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態と第1実施形態との相違点は、所定熱量が付与されたパッケージの内部に所定量の樹脂を注入するようにしたことである。なお、光モジュールの構成、並びに設置工程及び覆設工程は前述した第1実施形態と略同様であるため、その詳細な説明を省略する。また、図において前述した第1実施形態と同一構成部分は同一符号をもって表し、その説明を省略する。
【0047】
(覆設工程)
図13は、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法における覆設工程を説明する側断面図である。設置工程において、発光部21をパッケージ10の開口部11に向けてパッケージ10の内部にVCSEL20を設置した後、設置工程では樹脂30を注入せず、図13に示すように、VCSEL20が設置されたパッケージ10の開口部11に、カバーガラス40を覆うように設ける。
【0048】
(注入工程)
図14及び図15は、第2実施形態に係る光モジュールの製造方法における注入工程を説明する側断面図である。図14に示すように、例えば120〜150℃に設定されたオーブンにパッケージ10を入れて数分程度加熱し、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10に所定熱量を付与する。なお、第1実施形態の場合と同様に、加熱方法及び加熱方向は限定されない。次に、図15に示すように、所定熱量が付与されたパッケージ10に、時間を置かず、すぐに一方の注入口、例えば第1注入口12Aから、先端がニードル状のディスペンサ50によって内部に所定量の樹脂30を注入する。これにより、注入された樹脂30をパッケージ10の余熱で硬化させ、硬化により樹脂10の粘度を高め、低粘度の樹脂30を用いる場合でも樹脂30の広がりが抑制され、従来のようにパッケージ10の内部を充填することなく、所定量の樹脂30でVCSEL20を封止することができる。
【0049】
なお、パッケージ10に付与される所定熱量及び内部に注入される樹脂30の所定量は、パッケージ10の余熱で硬化させた樹脂30がVCSEL20を封止し、少なくとも発光部21を覆うように定められる。また、第1実施形態と同様に、樹脂30を注入する前に所定熱量を付与しつつ、パッケージ10を加熱しながら樹脂30を注入するようにしてもよい。
【0050】
また、図13に示したように、パッケージ10の内部に設置されたVCSEL20が、パッケージ10の中央から偏った位置に設置される場合、図15に示したようにVCSEL20に近い方の注入口、すなわち第1注入口12Aから、内部に所定量の樹脂30を注入するのが好ましい。これにより、所定量の樹脂30でVCSEL20を確実に封止することができる。
【0051】
このように、本実施形態によれば、カバーガラス40が覆設されたパッケージ10に所定熱量が付与され、所定熱量が付与されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、第1注入口12Aから内部に所定量の樹脂30が注入されるので、注入された樹脂30をパッケージ10の余熱で硬化させ、硬化により樹脂10の粘度を高め、低粘度の樹脂30を用いる場合でも樹脂30の広がりが抑制され、従来のようにパッケージ10の内部を充填することなく、所定量の樹脂30でVCSEL20を封止することができる。これにより、注入された樹脂30がカバーガラス40とパッケージ10との隙間に入り込むのを更に防止することができるとともに、樹脂30の注入を1回で済ますことができ、光モジュール1の製造効率を高めることができる。
【0052】
また、所定熱量が付与されたパッケージ10における第1注入口12A及び第2注入口12Bのうち、パッケージ10の内部に設置されたVCSEL20に近い方の第1注入口12Aから内部に所定量の樹脂30が注入されるので、所定量の樹脂30でVCSEL20を確実に封止することができる。これにより、注入する樹脂30の使用量を削減して硬化収縮量を更に低減することができ、硬化収縮によって発光部21と開口面との間の樹脂30に発生する気泡を更に低減することができる。
【0053】
なお、本発明の構成は、前述の各実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1実施形態における光モジュールの構成を説明する概略上面図である。
【図2】図1に示したパッケージの変形例を説明する概略上面図である。
【図3】図1に示したA−A線矢視方向断面図である。
【図4】図1に示したB−B線矢視方向断面図である。
【図5】図4に示した光モジュールの変形例を説明する断面図である。
【図6】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における設置工程を説明する側断面図である。
【図7】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における設置工程を説明する側断面図である。
【図8】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における設置工程を説明する側断面図である。
【図9】図7に示した設置工程の変形例を説明する側断面図である。
【図10】図8に示した設置工程の変形例を説明する側断面図である。
【図11】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における覆設工程を説明する側断面図である。
【図12】第1実施形態に係る光モジュールの製造方法における注入工程を説明する側断面図である。
【図13】第2実施形態に係る光モジュールの製造方法における覆設工程を説明する側断面図である。
【図14】第2実施形態に係る光モジュールの製造方法における注入工程を説明する側断面図である。
【図15】第2実施形態に係る光モジュールの製造方法における注入工程を説明する側断面図である。
【符号の説明】
【0055】
1…光モジュール、10…パッケージ、11…開口部、12A…第1注入口、12B…第2注入口、20…VCSEL、21…発光部、30…樹脂、40…カバーガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ内に光素子を有する光モジュールの製造方法において、
前記パッケージは、開口部と、該開口部が覆われた状態で内部に樹脂を注入可能な第1及び第2の注入口とを有し、
前記パッケージの内部に前記光素子を設置する設置工程と、
前記光素子が設置された前記パッケージの前記開口部にカバーガラスを覆設する覆設工程と、
前記カバーガラスが覆設された前記パッケージにおける前記第1及び第2の注入口のうち、一方の注入口から内部に前記樹脂を注入する注入工程とを備える
ことを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記第1及び第2の注入口は、前記パッケージの中心に関して略対称な位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記設置工程は、前記光素子が設置された前記パッケージの内部に前記樹脂を所定の高さまで注入する所定高注入工程と、前記注入された前記樹脂を硬化させる工程とを更に含み、
前記注入工程は、前記樹脂を前記開口面の高さまで注入する
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記所定高注入工程は、前記パッケージを加熱する工程と、前記加熱された前記パッケージに前記樹脂を前記所定の高さまで注入する工程とを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記光素子は、受光及び発光のうち少なくとも一方を行う受発光部を有し、
前記設置工程は、前記受発光部を前記開口部に向けて前記光素子を設置し、
前記所定高注入工程は、前記樹脂を前記受発光部が位置する高さ以下まで注入する
ことを特徴とする請求項3に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記注入工程は、前記カバーガラスが覆設された前記パッケージに所定熱量を付与する工程と、前記所定熱量が付与された前記パッケージに前記樹脂を注入する工程とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記注入工程は、前記パッケージの内部に設置された前記光素子に近い方の注入口から前記樹脂を注入する
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−10342(P2010−10342A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167076(P2008−167076)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】