光偏向器および光スイッチ
【課題】可動ミラーの傾斜に伴う可動ミラーの変形の発生が防止された光偏向器を提供する。
【解決手段】光偏向器100は、可動ミラー110と、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜可能に支持する一対のヒンジ120と、ヒンジ120をそれぞれ支持する一対の固定部130とを有している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130は、第一の軸181に直交する第二の軸182に沿って整列している。光偏向器100はさらに、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜させる駆動素子たとえば一対の駆動電極160を有している。光偏向器100はさらに、可動ミラー110の傾斜により可動ミラー110に生じる変形を緩衝する緩衝部140を有している。
【解決手段】光偏向器100は、可動ミラー110と、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜可能に支持する一対のヒンジ120と、ヒンジ120をそれぞれ支持する一対の固定部130とを有している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130は、第一の軸181に直交する第二の軸182に沿って整列している。光偏向器100はさらに、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜させる駆動素子たとえば一対の駆動電極160を有している。光偏向器100はさらに、可動ミラー110の傾斜により可動ミラー110に生じる変形を緩衝する緩衝部140を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,432,629号明細書は光偏向器を開示している。この光偏向器は、可動ミラーと、可動ミラーを傾斜可能に支持する一対のヒンジと、一対のヒンジにそれぞれ接続された一対の駆動板と、一対の駆動板の端部を支持する固定部と、一対の駆動板にそれぞれ対向して配置された一対の駆動電極とを有している。
【0003】
この光偏向器では、駆動板と一対の駆動電極の一方の間に電圧を印加して両者間に静電引力を発生させ、これにより両者が互いに引き付けられる結果として可動ミラーが傾斜される。これにより、可動ミラーによって反射される光ビームが偏向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,432,629号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の光偏向器において、可動ミラーが傾斜すると、一対の固定部の間に存在する要素すなわち可動ミラーとヒンジと駆動板の全長が、可動ミラーが傾斜していないときよりも大きくなる。このため、可動ミラーが張力を受けて、可動ミラーに変形が発生する。この可動ミラーの変形は、可動ミラーの傾斜が大きくなるにつれて大きくなる。このような可動ミラーの変形の発生は、光偏向器の光学特性の低下を引き起こす。
【0006】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、可動ミラーの傾斜に伴う可動ミラーの変形の発生が防止された光偏向器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光偏向器は、可動ミラーと、前記可動ミラーを第一の軸まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部と、前記弾性部をそれぞれ支持する一対の固定部と、前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる駆動素子と、前記可動ミラーの傾斜により前記可動ミラーに生じる変形を緩衝する少なくとも一つの緩衝部とを有している。前記可動ミラーと前記弾性部と前記固定部は前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って整列しており、前記緩衝部は前記固定部の間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動ミラーの傾斜に伴う可動ミラーの変形の発生が防止された光偏向器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施形態に係る光偏向器を示している。
【図2】図1のヒンジとその周辺部を拡大して示している。
【図3】第一実施形態の変形例を示している。
【図4】第一実施形態の変形例を示している。
【図5】第一実施形態の変形例を示している。
【図6】第一実施形態の変形例を示している。
【図7】第一実施形態の変形例を示している。
【図8】第一実施形態の変形例を示している。
【図9】第一実施形態の変形例を示している。
【図10】第二実施形態に係る光偏向器を示している。
【図11】第三実施形態に係る光偏向器を示している。
【図12】第四実施形態に係る波長選択スイッチを示している。
【図13】図12の波長選択スイッチ中の光偏向器アレイを示している。
【図14】第五実施形態に係る光スイッチを示している。
【図15】図14の光スイッチ中の光偏向器アレイを示している。
【図16】第一実施形態の光偏向器に対する比較例の光偏向器を示している。
【図17】図16の光偏向器の可動ミラーが傾斜していない状態と傾斜した状態を模式的に示している。
【図18】可動ミラーに発生する鞍型の変形を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図1は、第一実施形態に係る光偏向器を示している。図1に示されるように、光偏向器100は、可動ミラー110と、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ120と、ヒンジ120をそれぞれ支持する一対の固定部130とを有している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130は、第一の軸181に直交する第二の軸182に沿って整列している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体は、MEMS技術を用いてシリコンなどの単結晶基板から作製され得る。可動ミラー110の典型的な厚みは5〜30μm程度である。可動ミラー110は、光を反射するための反射膜が表面に設けられている。反射膜は、通常、金などの高反射率の金属薄膜で構成されている。
【0012】
光偏向器100はさらに、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、一対の駆動電極160を有し得る。駆動電極160は基板170に設けられている。駆動電極160と可動ミラー110が対向するように、可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体が基板170に固定されている。一対の駆動電極160は、第二の軸182に沿って離間しており、第一の軸181を間に挟んで配置されている。
【0013】
光偏向器100は、可動ミラー110と駆動電極160の間に発生する静電引力を利用して可動ミラー110を傾斜させる静電駆動型である。可動ミラー110にはヒンジ120と固定部130を介して光偏向器100の外部に設けられた電極パッド(図示せず)から安定電位が供給され得る。また駆動電極160には配線(図示せず)を介して光偏向器100の外部に設けられた電極パッド(図示せず)から可動ミラー110に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。光偏向器100は、一般的に、可動ミラー110と駆動電極160の間に10〜250V程度の電位差を発生させることにより駆動される。
【0014】
光偏向器100はさらに、可動ミラー110の傾斜により可動ミラー110に生じる変形を緩衝する緩衝部140を有している。緩衝部140は、たとえば、可動ミラー110とヒンジ120の間に設けられている。緩衝部140は、ヒンジ120よりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。
【0015】
図2に詳しく示されるように、ヒンジ120は、ミアンダ(蛇行)タイプであり、複数のねじり梁121と複数の連結部122を有している。ねじり梁121は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。各連結部122は、それぞれ、隣接する二つのねじり梁121の一端を互いに連結している。すなわち、ねじり梁121は、最も外側の二つを除いて、連結部122を介して一端が隣接するねじり梁121の端部に連結され、他端が隣接する別のねじり梁121の端部に連結されている。ヒンジ120はさらに、最も外側の二つねじり梁121の端部から第二の軸182に沿って延びている連結部123,124を有している。連結部123,124はいずれも、第一の軸181に沿ったヒンジ120の中央に位置している。連結部123は固定部130に接続され、連結部124は緩衝部140に接続されている。
【0016】
緩衝部140は、ねじり梁121のいずれよりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。たとえば、緩衝部140は、第二の軸182に沿って弾性変形可能な梁141を有し、梁141は、ねじり梁121のいずれよりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。このため、たとえば、梁141の幅は、ねじり梁121のいずれの幅よりも狭い。ここで、幅は、第二の軸182に沿った寸法を意味している。
【0017】
梁141の両端は、連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。連結部142は、それぞれ、第一の軸181に沿った可動ミラー110の端に位置している。梁141の中央は、ヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0018】
図16は、第一実施形態の光偏向器に対する比較例の光偏向器を示している。図16において、図1に示した部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材を示している。図1と図16を比較してわかるように、この比較例の光偏向器100’は、光偏向器100から緩衝部140を省いた構成をしている。
【0019】
光偏向器100’において、一対の駆動電極160の一方と可動ミラー110の間に電位差が与えられると、それらの間に静電引力が発生して両者が互いに引き付けられることにより、可動ミラー110が第一の軸181まわりに傾斜される。
【0020】
図17は、光偏向器100’において、可動ミラー110が傾斜していない状態(A)と、可動ミラー110が傾斜した状態(B)を模式的に示している。可動ミラー110が傾斜した状態では、一対の固定部130の間に存在する要素すなわち可動ミラー110とヒンジ120の全長が、可動ミラー110が傾斜していない状態と比較して長くなる。このため、固定部130の間の可動ミラー110とヒンジ120が張力を受ける。その結果、図18に示されるように、可動ミラー110が鞍型に変形する。その変形量は非常に小さく、一般的な光偏向器利用では無視され得るレベルである。しかしながら光スイッチでは光偏向器のミラーの平面度に対する要求が厳しく、可動ミラーに生じる変形によって光スイッチの性能が著しく低下する。すなわち、この変形は光スイッチ特有の課題と言える。可動ミラー110の変形は、可動ミラー110の傾斜が大きくなるにつれて大きくなる。また、可動ミラー110の変形の形状は、ヒンジ120との連結部の部位や個数などによって凹または凸にも変わりうることが分かっている。このような可動ミラー110の変形は、光偏向器100’を使用した光学装置の光学的性能を低下させる。
【0021】
これに対して第一実施形態の光偏向器100では、可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体が緩衝部140を有している。緩衝部140は、ヒンジ120に比べて第二の軸182に沿って容易に変形するので、可動ミラー110の傾斜に伴って可動ミラー110とヒンジ120が受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー110が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー110の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器100を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0022】
<第一実施形態の変形例>
本実施形態は、さまざまに変形されてよく、たとえば次の様な変形例も考えられる。
【0023】
図3は、第一実施形態の変形例を示している。第一実施形態では、可動ミラー110とヒンジ120の間に緩衝部140が設けられているが、図3の変形例では、可動ミラー110とヒンジ120の間の緩衝部140に加えて、ヒンジ120と固定部130の間にも緩衝部140が設けられている。言い換えれば、第二の軸182に沿ったヒンジ120の両側に緩衝部140が設けられている。
【0024】
また図示はしないが、第一実施形態の別の変形例として、図3の変形例から、可動ミラー110とヒンジ120の間の緩衝部140を省いた構成も可能である。
【0025】
さらに、第一実施形態のまた別の変形例として、図1の光偏向器100から、一対の緩衝部140の一方を省いた構成も可能である。つまり、光偏向器100は、一対の固定部130の間に少なくとも一つの緩衝部140を有していればよい。
【0026】
図4は、第一実施形態の変形例を示している。図4の変形例では、緩衝部140の梁141の一端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されており、梁141の別の一端はヒンジ120の連結部124に接続されている。連結部142は、第一の軸181に沿った可動ミラー110の中央に位置し、連結部124は、第一の軸181に沿ったヒンジ120の端に位置している。
【0027】
図5は、第一実施形態の変形例を示している。図5の変形例では、緩衝部140の梁141の一端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されており、梁141の別の一端はヒンジ120の連結部124に接続されている。連結部142は、第一の軸181に沿った可動ミラー110の端に位置し、連結部124は、第一の軸181に沿ったヒンジ120の端に位置している。
【0028】
図6は、第一実施形態の変形例を示している。図6の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な一対の梁141を有している。一対の梁141は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。一対の梁141の両端は、それぞれ、一対の連結部144を介して互いに接続されている。一方の梁141の中央は、連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。他方の梁141の中央は、ヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0029】
図7は、第一実施形態の変形例を示している。図7の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な複数の梁141を有している。複数の梁141は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。最も外側の二つを除いて、各梁141の両端は連結部144を介して別の梁141の両端に接続され、各梁141の中央は別の連結部145を介してまた別の梁141の中央に接続されている。可動ミラー110に最も近い梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。またヒンジ120に最も近い梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0030】
図8は、第一実施形態の変形例を示している。図8の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な梁141を有している。梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。また梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。梁141の厚みはヒンジ120の厚みと異なっており、梁141の厚みはヒンジ120の厚みよりも大きい。ここで、厚みは、第一の軸181と第二の軸182の両方に垂直な軸に沿った寸法を意味している。
【0031】
図9は、第一実施形態の変形例を示している。図9の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な梁141を有している。梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。また梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。梁141の厚みはヒンジ120の厚みと異なっており、梁141の厚みはヒンジ120の厚みよりも小さい。
【0032】
図4〜図9の変形例はいずれも、図3の変形例におけるヒンジ120と固定部130の間の緩衝部140に対して、可動ミラー110を固定部130に読み換えて適用されてもよい。
【0033】
<第二実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図10は、第二実施形態に係る光偏向器を示している。図10に示されるように、光偏向器200は、可動ミラー210と、可動ミラー210を第一の軸281まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ220A,220Bと、ヒンジ220A,220Bをそれぞれ支持する一対の固定部230A,230Bとを有している。光偏向器200はさらに、ヒンジ220Aと固定部230Aの間に設けられた駆動板290を有している。固定部230Aは、駆動板290を介してヒンジ220Aを支持している。
【0034】
光偏向器200はさらに、可動ミラー210を第一の軸281まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、駆動電極260を有し得る。駆動電極260は、駆動板290に対向するように基板270に設けられている。駆動板290には固定部230Aを介して安定電位が供給され得る。また駆動電極260には配線(図示せず)を介して駆動板290に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。
【0035】
光偏向器200はさらに、可動ミラー210の傾斜により可動ミラー210に生じる変形を緩衝する緩衝部240を有している。緩衝部240は、たとえば、可動ミラー210とヒンジ220A,220Bの間に設けられている。緩衝部240は、ヒンジ220A,220Bよりも第二の軸282に平行な方向の剛性が低い。
【0036】
ヒンジ220A,220Bは、第一実施形態のヒンジ120と同様に構成され得る。また緩衝部240は、第一実施形態の緩衝部140と同様に構成され得る。つまり、緩衝部240は、第一実施形態の緩衝部140の各種変形例が適用されてもよい。
【0037】
光偏向器200は、駆動電極260と駆動板290の間に電位差を発生させることにより駆動される。つまり、駆動電極260と駆動板290の間に静電引力を発生させて、第一の軸281と第二の軸282の両方に垂直な軸に沿って駆動板290の一部を移動させることによって、たとえば、第二の軸282に沿って駆動板290をたわませることによって、可動ミラー210が第一の軸281まわりに傾斜される。
【0038】
光偏向器200は、駆動電極260に対向する駆動板290を固定部230Aとヒンジ220Aの間に有しており、この駆動板290が駆動電極260に引き付けられることによって、可動ミラー210が第一の軸281まわりに傾斜される。このため、静電引力が可動ミラー210に直接加わらない。この構成は、応用例として、幅の狭い可動ミラーアレイが要求される波長選択スイッチに適している。
【0039】
光偏向器200では、可動ミラー210とヒンジ220A,220Bと固定部230A,230Bと駆動板290からなる構造体が緩衝部240を有している。緩衝部240は、ヒンジ220A,220Bに比べて第二の軸に沿って容易に変形し、可動ミラー210の傾斜に伴って可動ミラー210とヒンジ220A,220Bが受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー210が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー210の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器200を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0040】
<第二実施形態の変形例>
本実施形態も、さまざまに変形されてもよい。緩衝部240には、第一実施形態の図4〜図9の各変形例が適用されてもよい。また、第一実施形態の図3の変形例と同様に、ヒンジ220Bと固定部230Bの間にも緩衝部240が追加で設けられてもよい。このヒンジ220Bと固定部230Bの間の緩衝部240は、可動ミラー210とヒンジ220Bの間の緩衝部240に代えて設けられてもよい。さらに、ヒンジ220Aと駆動板290の間や駆動板290と固定部230Aの間にも緩衝部240が追加で、または可動ミラー210とヒンジ220Aの間の緩衝部240に代えて設けられてもよい。つまり、光偏向器200は、一対の固定部230A,230Bの間に少なくとも一つの緩衝部240を有していればよい。
【0041】
<第三実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図11は、第三実施形態に係る光偏向器を示している。図11に示されるように、光偏向器300は、可動ミラー310と、可動ミラー310を第一の軸381まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ320と、ヒンジ320をそれぞれ支持する一対の固定部330とを有している。光偏向器300はさらに、ヒンジ320と固定部330の間にそれぞれ設けられた一対の駆動板390を有している。固定部330は、それぞれ、駆動板390を介してヒンジ320を支持している。
【0042】
光偏向器300はさらに、可動ミラー310を第一の軸381まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、一対の駆動電極360を有し得る。駆動電極360は、駆動板390に対向するように基板370に設けられている。一対の駆動電極360は、第二の軸382に沿って離間しており、第一の軸381を間に挟んで配置されている。駆動板390には固定部330を介して安定電位が供給され得る。また駆動電極360には配線(図示せず)を介して駆動板390に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。
【0043】
光偏向器300はさらに、可動ミラー310の傾斜により可動ミラー310に生じる変形を緩衝する緩衝部340を有している。緩衝部340は、たとえば、可動ミラー310と各ヒンジ320の間に設けられている。緩衝部340は、ヒンジ320よりも第二の軸382に平行な方向の剛性が低い。
【0044】
ヒンジ320は、第一実施形態のヒンジ120と同様に構成され得る。また緩衝部340は、第一実施形態の緩衝部140と同様に構成され得る。つまり、緩衝部340は、第一実施形態の緩衝部140の各種変形例が適用されてよい。
【0045】
光偏向器300は、駆動電極360と駆動板390の間に電位差を発生させることにより駆動される。つまり、駆動電極360と駆動板390の間に静電引力を発生させて、第一の軸381と第二の軸382の両方に垂直な軸に沿って駆動板390の一部を移動させることによって、たとえば、第二の軸382に沿って駆動板390をたわませることによって、可動ミラー310が第一の軸381まわりに傾斜される。
【0046】
光偏向器300は、一対の駆動電極360にそれぞれ対向する一対の駆動板390を固定部330とヒンジ320の間に有しており、一対の駆動板390の一方だけが駆動電極360に引き付けられることによって、または、一対の駆動板390の両方が異なる程度で駆動電極360に引き付けられることによって、可動ミラー310が第一の軸381まわりに傾斜される。このため、静電引力が可動ミラー310に直接加わらない。この構成は、応用例として、幅の狭い可動ミラーアレイが要求される波長選択スイッチに適している。
【0047】
光偏向器300では、可動ミラー310とヒンジ320と固定部330と駆動板390からなる構造体が緩衝部340を有している。緩衝部340は、ヒンジ320に比べて第二の軸382に沿って容易に変形し、可動ミラー310の傾斜に伴って可動ミラー310とヒンジ320が受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー310が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー310の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器300を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0048】
<第三実施形態の変形例>
本実施形態も、さまざまに変形されてもよい。緩衝部340には、第一実施形態の図4〜図9の各変形例が適用されてもよい。また、ヒンジ320と駆動板390の間や駆動板390と固定部330の間にも緩衝部340が追加で、または可動ミラー310とヒンジ320の間の緩衝部340に代えて設けられてもよい。つまり、光偏向器300は、一対の固定部330の間に少なくとも一つの緩衝部340を有していればよい。
【0049】
<第四実施形態>
本実施形態は波長選択スイッチに関する。図12は、第四実施形態に係る波長選択スイッチを示し、図13は、図12の波長選択スイッチ中の光偏向器アレイを示している。図12に示されるように、波長選択スイッチ400は、入出力ポート410と、コリメータ420と、分散素子430と、集光素子440と、光偏向器アレイ450とを有している。
【0050】
たとえば、波長選択スイッチ400は1入力複数出力の波長選択スイッチであり、入出力ポート410は一つの入力ポート410aと複数の出力ポート410bとを有している。入力ポート410aは、波長多重された光が入力されるポートであり、出力ポート410bは、波長分割された光が出力されるポートである。ここで、波長多重された光は、複数の波長成分を含む光を意味し、波長分割された光は、複数の波長成分のうちいくつかの波長成分が選択された光を意味している。入力ポート410aと出力ポート410bは一列に整列されている。入力ポート410aと出力ポート410bはこれに限らないが、たとえばファイバーアレイで構成され得る。図12には五つの出力ポート410bが描かれているが、これは単なる例示であって、この個数に何ら限定されるものではない。
【0051】
コリメータ420は、一つの入力用コリメータ420aと複数の出力用コリメータ420bとを有している。入力用コリメータ420aは、入力ポート410aの端面に対向して配置されており、入力ポート410aから射出される光を平行光に変える機能を有する。出力用コリメータ420bは、出力ポート410bの端面に対向して配置されており、これに入射する光を集光して出力ポート410bに入射させる機能を有している。
【0052】
分散素子430は、入力ポート410aから射出される光ビームを波長成分にしたがって分散させて互いに波長成分が異なる複数の光ビームを生成する機能を有している。すなわち、分散素子430は、入射してくる複数の波長成分を含む光ビームを、波長帯域の異なる複数の光ビームに分割するとともに、それらを波長帯域に応じて異なる方向に偏向する機能を有している。つまり、分散素子430は分波する機能を有している。分散方向は、入力ポート410aと出力ポート410bの整列方向に直交している。分散素子430はまた、これとは反対に、分波された際の偏向角に等しい入射角をもって入射してくる複数の光ビームを一つの方向に偏向する機能を有している。つまり、分散素子430は合波する機能を有している。分散素子430は、これに限らないが、たとえば回折格子で構成され得る。
【0053】
集光素子440は、分散素子430によって生成された複数の光ビームを互いに平行に偏向するとともに各光ビームを集光する機能を有している。集光素子440はまた、複数の光ビームを、入出力ポート410の整列方向に偏向する機能も有している。集光素子440は、これに限らないが、たとえば凸レンズで構成され得る。
【0054】
光偏向器アレイ450は、図13に示されるように、複数の光偏向器100を有している。複数の光偏向器100は、各光偏向器100の可動ミラーの傾斜動作の軸すなわち第一実施形態中の第一の軸181に沿って並べられている。複数の光偏向器100は、集光素子440によって互いに平行に偏向された複数の光ビームをそれぞれ偏向する機能を有している。各光偏向器100は、これに入射する光ビームを入出力ポート410の整列方向に偏向することによって、複数の出力ポート410bのいずれか一つに選択的に結合させる機能を有している。
【0055】
波長選択スイッチ400において、入力ポート410aから射出された波長多重された光は、入力用コリメータ420aを通過して平行光ビームとなって分散素子430に入射し、分散素子430によって波長帯域の異なる複数の光ビームに分割されるとともに波長帯域に応じた方向に偏向される。複数の光ビームは、集光素子440によって互いに平行に偏向され、それぞれ、光偏向器アレイ450の光偏向器100に入射する。
【0056】
光偏向器100に入射した光ビームは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜にしたがって入出力ポート410の整列方向に偏向される。その後、光ビームは、集光素子440によって偏向されて分波時の偏向角に等しい入射角で分散素子430に入射し、分散素子430によって偏向され、出力用コリメータ420bを通って出力ポート410bに結合する。光ビームが結合する出力ポート410bは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜を調整することによって切り替えられる。
【0057】
波長選択スイッチでは、一般に、可動ミラーの傾斜角が小さい光偏向器によって結合された出力ポートと、可動ミラーの傾斜角が大きい光偏向器によって結合された出力ポートとでは、出力光特性の間に差が生じる。具体的には、可動ミラーの傾斜角が大きい光偏向器を介して結合されたポートの出力光においては、挿入損失の増加や透過帯域の低下やクロストークの増加といった光学特性の劣化が大きい。これは、前述したように、可動ミラーの傾斜角の増大に伴って可動ミラーの変形が増大することに起因している。
【0058】
これに対して、本実施形態の波長選択スイッチ400は、複数の光偏向器100を並べて構成されており、各光偏向器100は、前述したように、可動ミラー110の変形が小さく抑えられるので、前述の光学特性の劣化が抑制され、出力ポート間での光特性のばらつきが低減される。
【0059】
本実施形態の波長選択スイッチ400は、複数の第一実施形態の光偏向器100を並べて構成されているが、光偏向器100に代えて第二実施形態の光偏向器200や第三実施形態の光偏向器300を適用して構成されてもよい。また、1入力複数出力の波長選択スイッチについて述べたが、複数入力1出力の波長選択スイッチであってもよい。
【0060】
<第五実施形態>
本実施形態は光スイッチに関する。図14は、第五実施形態に係る光スイッチを示し、図15は、図14の光スイッチ中の光偏向器アレイを示している。図14に示されるように、光スイッチ500は、複数の入出力ポート510と、複数のコリメータ520と、光偏向器アレイ530とを有している。
【0061】
複数の入出力ポート510は一列に整列されている。複数の入出力ポート510はこれに限らないが、たとえばファイバーアレイで構成され得る。
【0062】
複数のコリメータ520は、それぞれ、複数の入出力ポート510の端面に対向して配置されており、入出力ポート510から射出される光を平行光に変えるとともに、これに入射する平行光を集光して入出力ポート510に入射させる機能を有している。
【0063】
光偏向器アレイ530は、図15に示されるように、複数の光偏向器100を有している。複数の光偏向器100は、各光偏向器100の可動ミラーの傾斜動作の軸に垂直な軸すなわち第一実施形態中の第二の軸182に沿って並べられている。複数の光偏向器100は、それぞれ、入出力ポート510から射出される複数の光ビームを入出力ポート510の整列方向に偏向する機能を有している。各光偏向器100は、これに入射する光ビームを入出力ポート510の整列方向に偏向することによって、複数の入出力ポート510のいずれか一つに選択的に結合させる機能を有している。
【0064】
光スイッチ500において、入出力ポート510のひとつから射出された光は、コリメータ520を通過して平行光ビームとなって、光偏向器アレイ530中の対応するひとつの光偏向器100に入射する。光偏向器100に入射した光ビームは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜にしたがって入出力ポート510の整列方向に偏向される。光偏向器100によって偏向された光ビームは、コリメータ520を通って入出力ポート510のひとつに結合する。光ビームが結合する入出力ポート510は、光偏向器100の可動ミラーの傾斜を調整することによって切り替えられる。
【0065】
波長選択スイッチと同様、光スイッチにおいても、一般に、光偏向器の可動ミラーの傾斜角の大きさの違いに依存して、ポート間の出力光特性にばらつきが生じる。これは、前述したように、可動ミラーの傾斜角の増大に伴って可動ミラーの変形が増大することに起因している。
【0066】
本実施形態の光スイッチ500は複数の光偏向器100を並べて構成されており、各光偏向器100は可動ミラー110の変形が小さく抑えられるので、ポート間の出力光特性のばらつきが低減される。
【0067】
本実施形態の光スイッチ500は、複数の第一実施形態の光偏向器100を並べて構成されているが、光偏向器100に代えて第二実施形態の光偏向器200や第三実施形態の光偏向器300を適用して構成されてもよい。
【0068】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0069】
100,100’…光偏向器、110…可動ミラー、120…ヒンジ、121…ねじり梁、122,123,124…連結部、130…固定部、140…緩衝部、141…梁、142,144,145…連結部、160…駆動電極、170…基板、181…第一の軸、182…第二の軸、200…光偏向器、210…可動ミラー、220A,220B…ヒンジ、230A,230B…固定部、240…緩衝部、260…駆動電極、270…基板、281…第一の軸、282…第二の軸、290…駆動板、300…光偏向器、310…可動ミラー、320…ヒンジ、330…固定部、340…緩衝部、360…駆動電極、370…基板、381…第一の軸、382…第二の軸、390…駆動板、400…波長選択スイッチ、410…入出力ポート、410a…入力ポート、410b…出力ポート、420…コリメータ、420a…入力用コリメータ、420b…出力用コリメータ、430…分散素子、440…集光素子、450…光偏向器アレイ、500…光スイッチ、510…入出力ポート、520…コリメータ、530…光偏向器アレイ。
【技術分野】
【0001】
本発明は光偏向器に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7,432,629号明細書は光偏向器を開示している。この光偏向器は、可動ミラーと、可動ミラーを傾斜可能に支持する一対のヒンジと、一対のヒンジにそれぞれ接続された一対の駆動板と、一対の駆動板の端部を支持する固定部と、一対の駆動板にそれぞれ対向して配置された一対の駆動電極とを有している。
【0003】
この光偏向器では、駆動板と一対の駆動電極の一方の間に電圧を印加して両者間に静電引力を発生させ、これにより両者が互いに引き付けられる結果として可動ミラーが傾斜される。これにより、可動ミラーによって反射される光ビームが偏向される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,432,629号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の光偏向器において、可動ミラーが傾斜すると、一対の固定部の間に存在する要素すなわち可動ミラーとヒンジと駆動板の全長が、可動ミラーが傾斜していないときよりも大きくなる。このため、可動ミラーが張力を受けて、可動ミラーに変形が発生する。この可動ミラーの変形は、可動ミラーの傾斜が大きくなるにつれて大きくなる。このような可動ミラーの変形の発生は、光偏向器の光学特性の低下を引き起こす。
【0006】
本発明は、このような実状を考慮して成されたものであり、その目的は、可動ミラーの傾斜に伴う可動ミラーの変形の発生が防止された光偏向器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光偏向器は、可動ミラーと、前記可動ミラーを第一の軸まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部と、前記弾性部をそれぞれ支持する一対の固定部と、前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる駆動素子と、前記可動ミラーの傾斜により前記可動ミラーに生じる変形を緩衝する少なくとも一つの緩衝部とを有している。前記可動ミラーと前記弾性部と前記固定部は前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って整列しており、前記緩衝部は前記固定部の間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、可動ミラーの傾斜に伴う可動ミラーの変形の発生が防止された光偏向器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第一実施形態に係る光偏向器を示している。
【図2】図1のヒンジとその周辺部を拡大して示している。
【図3】第一実施形態の変形例を示している。
【図4】第一実施形態の変形例を示している。
【図5】第一実施形態の変形例を示している。
【図6】第一実施形態の変形例を示している。
【図7】第一実施形態の変形例を示している。
【図8】第一実施形態の変形例を示している。
【図9】第一実施形態の変形例を示している。
【図10】第二実施形態に係る光偏向器を示している。
【図11】第三実施形態に係る光偏向器を示している。
【図12】第四実施形態に係る波長選択スイッチを示している。
【図13】図12の波長選択スイッチ中の光偏向器アレイを示している。
【図14】第五実施形態に係る光スイッチを示している。
【図15】図14の光スイッチ中の光偏向器アレイを示している。
【図16】第一実施形態の光偏向器に対する比較例の光偏向器を示している。
【図17】図16の光偏向器の可動ミラーが傾斜していない状態と傾斜した状態を模式的に示している。
【図18】可動ミラーに発生する鞍型の変形を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<第一実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図1は、第一実施形態に係る光偏向器を示している。図1に示されるように、光偏向器100は、可動ミラー110と、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ120と、ヒンジ120をそれぞれ支持する一対の固定部130とを有している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130は、第一の軸181に直交する第二の軸182に沿って整列している。可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体は、MEMS技術を用いてシリコンなどの単結晶基板から作製され得る。可動ミラー110の典型的な厚みは5〜30μm程度である。可動ミラー110は、光を反射するための反射膜が表面に設けられている。反射膜は、通常、金などの高反射率の金属薄膜で構成されている。
【0012】
光偏向器100はさらに、可動ミラー110を第一の軸181まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、一対の駆動電極160を有し得る。駆動電極160は基板170に設けられている。駆動電極160と可動ミラー110が対向するように、可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体が基板170に固定されている。一対の駆動電極160は、第二の軸182に沿って離間しており、第一の軸181を間に挟んで配置されている。
【0013】
光偏向器100は、可動ミラー110と駆動電極160の間に発生する静電引力を利用して可動ミラー110を傾斜させる静電駆動型である。可動ミラー110にはヒンジ120と固定部130を介して光偏向器100の外部に設けられた電極パッド(図示せず)から安定電位が供給され得る。また駆動電極160には配線(図示せず)を介して光偏向器100の外部に設けられた電極パッド(図示せず)から可動ミラー110に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。光偏向器100は、一般的に、可動ミラー110と駆動電極160の間に10〜250V程度の電位差を発生させることにより駆動される。
【0014】
光偏向器100はさらに、可動ミラー110の傾斜により可動ミラー110に生じる変形を緩衝する緩衝部140を有している。緩衝部140は、たとえば、可動ミラー110とヒンジ120の間に設けられている。緩衝部140は、ヒンジ120よりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。
【0015】
図2に詳しく示されるように、ヒンジ120は、ミアンダ(蛇行)タイプであり、複数のねじり梁121と複数の連結部122を有している。ねじり梁121は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。各連結部122は、それぞれ、隣接する二つのねじり梁121の一端を互いに連結している。すなわち、ねじり梁121は、最も外側の二つを除いて、連結部122を介して一端が隣接するねじり梁121の端部に連結され、他端が隣接する別のねじり梁121の端部に連結されている。ヒンジ120はさらに、最も外側の二つねじり梁121の端部から第二の軸182に沿って延びている連結部123,124を有している。連結部123,124はいずれも、第一の軸181に沿ったヒンジ120の中央に位置している。連結部123は固定部130に接続され、連結部124は緩衝部140に接続されている。
【0016】
緩衝部140は、ねじり梁121のいずれよりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。たとえば、緩衝部140は、第二の軸182に沿って弾性変形可能な梁141を有し、梁141は、ねじり梁121のいずれよりも第二の軸182に平行な方向の剛性が低い。このため、たとえば、梁141の幅は、ねじり梁121のいずれの幅よりも狭い。ここで、幅は、第二の軸182に沿った寸法を意味している。
【0017】
梁141の両端は、連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。連結部142は、それぞれ、第一の軸181に沿った可動ミラー110の端に位置している。梁141の中央は、ヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0018】
図16は、第一実施形態の光偏向器に対する比較例の光偏向器を示している。図16において、図1に示した部材と同一の参照符号が付された部材は同様の部材を示している。図1と図16を比較してわかるように、この比較例の光偏向器100’は、光偏向器100から緩衝部140を省いた構成をしている。
【0019】
光偏向器100’において、一対の駆動電極160の一方と可動ミラー110の間に電位差が与えられると、それらの間に静電引力が発生して両者が互いに引き付けられることにより、可動ミラー110が第一の軸181まわりに傾斜される。
【0020】
図17は、光偏向器100’において、可動ミラー110が傾斜していない状態(A)と、可動ミラー110が傾斜した状態(B)を模式的に示している。可動ミラー110が傾斜した状態では、一対の固定部130の間に存在する要素すなわち可動ミラー110とヒンジ120の全長が、可動ミラー110が傾斜していない状態と比較して長くなる。このため、固定部130の間の可動ミラー110とヒンジ120が張力を受ける。その結果、図18に示されるように、可動ミラー110が鞍型に変形する。その変形量は非常に小さく、一般的な光偏向器利用では無視され得るレベルである。しかしながら光スイッチでは光偏向器のミラーの平面度に対する要求が厳しく、可動ミラーに生じる変形によって光スイッチの性能が著しく低下する。すなわち、この変形は光スイッチ特有の課題と言える。可動ミラー110の変形は、可動ミラー110の傾斜が大きくなるにつれて大きくなる。また、可動ミラー110の変形の形状は、ヒンジ120との連結部の部位や個数などによって凹または凸にも変わりうることが分かっている。このような可動ミラー110の変形は、光偏向器100’を使用した光学装置の光学的性能を低下させる。
【0021】
これに対して第一実施形態の光偏向器100では、可動ミラー110とヒンジ120と固定部130からなる構造体が緩衝部140を有している。緩衝部140は、ヒンジ120に比べて第二の軸182に沿って容易に変形するので、可動ミラー110の傾斜に伴って可動ミラー110とヒンジ120が受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー110が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー110の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器100を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0022】
<第一実施形態の変形例>
本実施形態は、さまざまに変形されてよく、たとえば次の様な変形例も考えられる。
【0023】
図3は、第一実施形態の変形例を示している。第一実施形態では、可動ミラー110とヒンジ120の間に緩衝部140が設けられているが、図3の変形例では、可動ミラー110とヒンジ120の間の緩衝部140に加えて、ヒンジ120と固定部130の間にも緩衝部140が設けられている。言い換えれば、第二の軸182に沿ったヒンジ120の両側に緩衝部140が設けられている。
【0024】
また図示はしないが、第一実施形態の別の変形例として、図3の変形例から、可動ミラー110とヒンジ120の間の緩衝部140を省いた構成も可能である。
【0025】
さらに、第一実施形態のまた別の変形例として、図1の光偏向器100から、一対の緩衝部140の一方を省いた構成も可能である。つまり、光偏向器100は、一対の固定部130の間に少なくとも一つの緩衝部140を有していればよい。
【0026】
図4は、第一実施形態の変形例を示している。図4の変形例では、緩衝部140の梁141の一端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されており、梁141の別の一端はヒンジ120の連結部124に接続されている。連結部142は、第一の軸181に沿った可動ミラー110の中央に位置し、連結部124は、第一の軸181に沿ったヒンジ120の端に位置している。
【0027】
図5は、第一実施形態の変形例を示している。図5の変形例では、緩衝部140の梁141の一端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されており、梁141の別の一端はヒンジ120の連結部124に接続されている。連結部142は、第一の軸181に沿った可動ミラー110の端に位置し、連結部124は、第一の軸181に沿ったヒンジ120の端に位置している。
【0028】
図6は、第一実施形態の変形例を示している。図6の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な一対の梁141を有している。一対の梁141は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。一対の梁141の両端は、それぞれ、一対の連結部144を介して互いに接続されている。一方の梁141の中央は、連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。他方の梁141の中央は、ヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0029】
図7は、第一実施形態の変形例を示している。図7の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な複数の梁141を有している。複数の梁141は、第一の軸181に沿って互いに平行に延びており、第二の軸182に沿って互いに離間している。最も外側の二つを除いて、各梁141の両端は連結部144を介して別の梁141の両端に接続され、各梁141の中央は別の連結部145を介してまた別の梁141の中央に接続されている。可動ミラー110に最も近い梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。またヒンジ120に最も近い梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。
【0030】
図8は、第一実施形態の変形例を示している。図8の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な梁141を有している。梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。また梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。梁141の厚みはヒンジ120の厚みと異なっており、梁141の厚みはヒンジ120の厚みよりも大きい。ここで、厚みは、第一の軸181と第二の軸182の両方に垂直な軸に沿った寸法を意味している。
【0031】
図9は、第一実施形態の変形例を示している。図9の変形例では、緩衝部140は、第二の軸182に沿って変形可能な梁141を有している。梁141の両端は連結部142を介して可動ミラー110に接続されている。また梁141の中央はヒンジ120の連結部124に接続されている。梁141の厚みはヒンジ120の厚みと異なっており、梁141の厚みはヒンジ120の厚みよりも小さい。
【0032】
図4〜図9の変形例はいずれも、図3の変形例におけるヒンジ120と固定部130の間の緩衝部140に対して、可動ミラー110を固定部130に読み換えて適用されてもよい。
【0033】
<第二実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図10は、第二実施形態に係る光偏向器を示している。図10に示されるように、光偏向器200は、可動ミラー210と、可動ミラー210を第一の軸281まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ220A,220Bと、ヒンジ220A,220Bをそれぞれ支持する一対の固定部230A,230Bとを有している。光偏向器200はさらに、ヒンジ220Aと固定部230Aの間に設けられた駆動板290を有している。固定部230Aは、駆動板290を介してヒンジ220Aを支持している。
【0034】
光偏向器200はさらに、可動ミラー210を第一の軸281まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、駆動電極260を有し得る。駆動電極260は、駆動板290に対向するように基板270に設けられている。駆動板290には固定部230Aを介して安定電位が供給され得る。また駆動電極260には配線(図示せず)を介して駆動板290に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。
【0035】
光偏向器200はさらに、可動ミラー210の傾斜により可動ミラー210に生じる変形を緩衝する緩衝部240を有している。緩衝部240は、たとえば、可動ミラー210とヒンジ220A,220Bの間に設けられている。緩衝部240は、ヒンジ220A,220Bよりも第二の軸282に平行な方向の剛性が低い。
【0036】
ヒンジ220A,220Bは、第一実施形態のヒンジ120と同様に構成され得る。また緩衝部240は、第一実施形態の緩衝部140と同様に構成され得る。つまり、緩衝部240は、第一実施形態の緩衝部140の各種変形例が適用されてもよい。
【0037】
光偏向器200は、駆動電極260と駆動板290の間に電位差を発生させることにより駆動される。つまり、駆動電極260と駆動板290の間に静電引力を発生させて、第一の軸281と第二の軸282の両方に垂直な軸に沿って駆動板290の一部を移動させることによって、たとえば、第二の軸282に沿って駆動板290をたわませることによって、可動ミラー210が第一の軸281まわりに傾斜される。
【0038】
光偏向器200は、駆動電極260に対向する駆動板290を固定部230Aとヒンジ220Aの間に有しており、この駆動板290が駆動電極260に引き付けられることによって、可動ミラー210が第一の軸281まわりに傾斜される。このため、静電引力が可動ミラー210に直接加わらない。この構成は、応用例として、幅の狭い可動ミラーアレイが要求される波長選択スイッチに適している。
【0039】
光偏向器200では、可動ミラー210とヒンジ220A,220Bと固定部230A,230Bと駆動板290からなる構造体が緩衝部240を有している。緩衝部240は、ヒンジ220A,220Bに比べて第二の軸に沿って容易に変形し、可動ミラー210の傾斜に伴って可動ミラー210とヒンジ220A,220Bが受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー210が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー210の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器200を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0040】
<第二実施形態の変形例>
本実施形態も、さまざまに変形されてもよい。緩衝部240には、第一実施形態の図4〜図9の各変形例が適用されてもよい。また、第一実施形態の図3の変形例と同様に、ヒンジ220Bと固定部230Bの間にも緩衝部240が追加で設けられてもよい。このヒンジ220Bと固定部230Bの間の緩衝部240は、可動ミラー210とヒンジ220Bの間の緩衝部240に代えて設けられてもよい。さらに、ヒンジ220Aと駆動板290の間や駆動板290と固定部230Aの間にも緩衝部240が追加で、または可動ミラー210とヒンジ220Aの間の緩衝部240に代えて設けられてもよい。つまり、光偏向器200は、一対の固定部230A,230Bの間に少なくとも一つの緩衝部240を有していればよい。
【0041】
<第三実施形態>
本実施形態は光偏向器に関する。図11は、第三実施形態に係る光偏向器を示している。図11に示されるように、光偏向器300は、可動ミラー310と、可動ミラー310を第一の軸381まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部であるヒンジ320と、ヒンジ320をそれぞれ支持する一対の固定部330とを有している。光偏向器300はさらに、ヒンジ320と固定部330の間にそれぞれ設けられた一対の駆動板390を有している。固定部330は、それぞれ、駆動板390を介してヒンジ320を支持している。
【0042】
光偏向器300はさらに、可動ミラー310を第一の軸381まわりに傾斜させる駆動素子を有している。駆動素子は、たとえば、一対の駆動電極360を有し得る。駆動電極360は、駆動板390に対向するように基板370に設けられている。一対の駆動電極360は、第二の軸382に沿って離間しており、第一の軸381を間に挟んで配置されている。駆動板390には固定部330を介して安定電位が供給され得る。また駆動電極360には配線(図示せず)を介して駆動板390に対してある電位差を持つ電位が供給され得る。
【0043】
光偏向器300はさらに、可動ミラー310の傾斜により可動ミラー310に生じる変形を緩衝する緩衝部340を有している。緩衝部340は、たとえば、可動ミラー310と各ヒンジ320の間に設けられている。緩衝部340は、ヒンジ320よりも第二の軸382に平行な方向の剛性が低い。
【0044】
ヒンジ320は、第一実施形態のヒンジ120と同様に構成され得る。また緩衝部340は、第一実施形態の緩衝部140と同様に構成され得る。つまり、緩衝部340は、第一実施形態の緩衝部140の各種変形例が適用されてよい。
【0045】
光偏向器300は、駆動電極360と駆動板390の間に電位差を発生させることにより駆動される。つまり、駆動電極360と駆動板390の間に静電引力を発生させて、第一の軸381と第二の軸382の両方に垂直な軸に沿って駆動板390の一部を移動させることによって、たとえば、第二の軸382に沿って駆動板390をたわませることによって、可動ミラー310が第一の軸381まわりに傾斜される。
【0046】
光偏向器300は、一対の駆動電極360にそれぞれ対向する一対の駆動板390を固定部330とヒンジ320の間に有しており、一対の駆動板390の一方だけが駆動電極360に引き付けられることによって、または、一対の駆動板390の両方が異なる程度で駆動電極360に引き付けられることによって、可動ミラー310が第一の軸381まわりに傾斜される。このため、静電引力が可動ミラー310に直接加わらない。この構成は、応用例として、幅の狭い可動ミラーアレイが要求される波長選択スイッチに適している。
【0047】
光偏向器300では、可動ミラー310とヒンジ320と固定部330と駆動板390からなる構造体が緩衝部340を有している。緩衝部340は、ヒンジ320に比べて第二の軸382に沿って容易に変形し、可動ミラー310の傾斜に伴って可動ミラー310とヒンジ320が受ける張力を積極的に吸収する。その結果、可動ミラー310が受ける張力が大幅に軽減され、可動ミラー310の変形が小さく抑えられる。これにより、光偏向器300を使用した光学装置の光学的性能の低下が抑えられる。
【0048】
<第三実施形態の変形例>
本実施形態も、さまざまに変形されてもよい。緩衝部340には、第一実施形態の図4〜図9の各変形例が適用されてもよい。また、ヒンジ320と駆動板390の間や駆動板390と固定部330の間にも緩衝部340が追加で、または可動ミラー310とヒンジ320の間の緩衝部340に代えて設けられてもよい。つまり、光偏向器300は、一対の固定部330の間に少なくとも一つの緩衝部340を有していればよい。
【0049】
<第四実施形態>
本実施形態は波長選択スイッチに関する。図12は、第四実施形態に係る波長選択スイッチを示し、図13は、図12の波長選択スイッチ中の光偏向器アレイを示している。図12に示されるように、波長選択スイッチ400は、入出力ポート410と、コリメータ420と、分散素子430と、集光素子440と、光偏向器アレイ450とを有している。
【0050】
たとえば、波長選択スイッチ400は1入力複数出力の波長選択スイッチであり、入出力ポート410は一つの入力ポート410aと複数の出力ポート410bとを有している。入力ポート410aは、波長多重された光が入力されるポートであり、出力ポート410bは、波長分割された光が出力されるポートである。ここで、波長多重された光は、複数の波長成分を含む光を意味し、波長分割された光は、複数の波長成分のうちいくつかの波長成分が選択された光を意味している。入力ポート410aと出力ポート410bは一列に整列されている。入力ポート410aと出力ポート410bはこれに限らないが、たとえばファイバーアレイで構成され得る。図12には五つの出力ポート410bが描かれているが、これは単なる例示であって、この個数に何ら限定されるものではない。
【0051】
コリメータ420は、一つの入力用コリメータ420aと複数の出力用コリメータ420bとを有している。入力用コリメータ420aは、入力ポート410aの端面に対向して配置されており、入力ポート410aから射出される光を平行光に変える機能を有する。出力用コリメータ420bは、出力ポート410bの端面に対向して配置されており、これに入射する光を集光して出力ポート410bに入射させる機能を有している。
【0052】
分散素子430は、入力ポート410aから射出される光ビームを波長成分にしたがって分散させて互いに波長成分が異なる複数の光ビームを生成する機能を有している。すなわち、分散素子430は、入射してくる複数の波長成分を含む光ビームを、波長帯域の異なる複数の光ビームに分割するとともに、それらを波長帯域に応じて異なる方向に偏向する機能を有している。つまり、分散素子430は分波する機能を有している。分散方向は、入力ポート410aと出力ポート410bの整列方向に直交している。分散素子430はまた、これとは反対に、分波された際の偏向角に等しい入射角をもって入射してくる複数の光ビームを一つの方向に偏向する機能を有している。つまり、分散素子430は合波する機能を有している。分散素子430は、これに限らないが、たとえば回折格子で構成され得る。
【0053】
集光素子440は、分散素子430によって生成された複数の光ビームを互いに平行に偏向するとともに各光ビームを集光する機能を有している。集光素子440はまた、複数の光ビームを、入出力ポート410の整列方向に偏向する機能も有している。集光素子440は、これに限らないが、たとえば凸レンズで構成され得る。
【0054】
光偏向器アレイ450は、図13に示されるように、複数の光偏向器100を有している。複数の光偏向器100は、各光偏向器100の可動ミラーの傾斜動作の軸すなわち第一実施形態中の第一の軸181に沿って並べられている。複数の光偏向器100は、集光素子440によって互いに平行に偏向された複数の光ビームをそれぞれ偏向する機能を有している。各光偏向器100は、これに入射する光ビームを入出力ポート410の整列方向に偏向することによって、複数の出力ポート410bのいずれか一つに選択的に結合させる機能を有している。
【0055】
波長選択スイッチ400において、入力ポート410aから射出された波長多重された光は、入力用コリメータ420aを通過して平行光ビームとなって分散素子430に入射し、分散素子430によって波長帯域の異なる複数の光ビームに分割されるとともに波長帯域に応じた方向に偏向される。複数の光ビームは、集光素子440によって互いに平行に偏向され、それぞれ、光偏向器アレイ450の光偏向器100に入射する。
【0056】
光偏向器100に入射した光ビームは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜にしたがって入出力ポート410の整列方向に偏向される。その後、光ビームは、集光素子440によって偏向されて分波時の偏向角に等しい入射角で分散素子430に入射し、分散素子430によって偏向され、出力用コリメータ420bを通って出力ポート410bに結合する。光ビームが結合する出力ポート410bは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜を調整することによって切り替えられる。
【0057】
波長選択スイッチでは、一般に、可動ミラーの傾斜角が小さい光偏向器によって結合された出力ポートと、可動ミラーの傾斜角が大きい光偏向器によって結合された出力ポートとでは、出力光特性の間に差が生じる。具体的には、可動ミラーの傾斜角が大きい光偏向器を介して結合されたポートの出力光においては、挿入損失の増加や透過帯域の低下やクロストークの増加といった光学特性の劣化が大きい。これは、前述したように、可動ミラーの傾斜角の増大に伴って可動ミラーの変形が増大することに起因している。
【0058】
これに対して、本実施形態の波長選択スイッチ400は、複数の光偏向器100を並べて構成されており、各光偏向器100は、前述したように、可動ミラー110の変形が小さく抑えられるので、前述の光学特性の劣化が抑制され、出力ポート間での光特性のばらつきが低減される。
【0059】
本実施形態の波長選択スイッチ400は、複数の第一実施形態の光偏向器100を並べて構成されているが、光偏向器100に代えて第二実施形態の光偏向器200や第三実施形態の光偏向器300を適用して構成されてもよい。また、1入力複数出力の波長選択スイッチについて述べたが、複数入力1出力の波長選択スイッチであってもよい。
【0060】
<第五実施形態>
本実施形態は光スイッチに関する。図14は、第五実施形態に係る光スイッチを示し、図15は、図14の光スイッチ中の光偏向器アレイを示している。図14に示されるように、光スイッチ500は、複数の入出力ポート510と、複数のコリメータ520と、光偏向器アレイ530とを有している。
【0061】
複数の入出力ポート510は一列に整列されている。複数の入出力ポート510はこれに限らないが、たとえばファイバーアレイで構成され得る。
【0062】
複数のコリメータ520は、それぞれ、複数の入出力ポート510の端面に対向して配置されており、入出力ポート510から射出される光を平行光に変えるとともに、これに入射する平行光を集光して入出力ポート510に入射させる機能を有している。
【0063】
光偏向器アレイ530は、図15に示されるように、複数の光偏向器100を有している。複数の光偏向器100は、各光偏向器100の可動ミラーの傾斜動作の軸に垂直な軸すなわち第一実施形態中の第二の軸182に沿って並べられている。複数の光偏向器100は、それぞれ、入出力ポート510から射出される複数の光ビームを入出力ポート510の整列方向に偏向する機能を有している。各光偏向器100は、これに入射する光ビームを入出力ポート510の整列方向に偏向することによって、複数の入出力ポート510のいずれか一つに選択的に結合させる機能を有している。
【0064】
光スイッチ500において、入出力ポート510のひとつから射出された光は、コリメータ520を通過して平行光ビームとなって、光偏向器アレイ530中の対応するひとつの光偏向器100に入射する。光偏向器100に入射した光ビームは、光偏向器100の可動ミラーの傾斜にしたがって入出力ポート510の整列方向に偏向される。光偏向器100によって偏向された光ビームは、コリメータ520を通って入出力ポート510のひとつに結合する。光ビームが結合する入出力ポート510は、光偏向器100の可動ミラーの傾斜を調整することによって切り替えられる。
【0065】
波長選択スイッチと同様、光スイッチにおいても、一般に、光偏向器の可動ミラーの傾斜角の大きさの違いに依存して、ポート間の出力光特性にばらつきが生じる。これは、前述したように、可動ミラーの傾斜角の増大に伴って可動ミラーの変形が増大することに起因している。
【0066】
本実施形態の光スイッチ500は複数の光偏向器100を並べて構成されており、各光偏向器100は可動ミラー110の変形が小さく抑えられるので、ポート間の出力光特性のばらつきが低減される。
【0067】
本実施形態の光スイッチ500は、複数の第一実施形態の光偏向器100を並べて構成されているが、光偏向器100に代えて第二実施形態の光偏向器200や第三実施形態の光偏向器300を適用して構成されてもよい。
【0068】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0069】
100,100’…光偏向器、110…可動ミラー、120…ヒンジ、121…ねじり梁、122,123,124…連結部、130…固定部、140…緩衝部、141…梁、142,144,145…連結部、160…駆動電極、170…基板、181…第一の軸、182…第二の軸、200…光偏向器、210…可動ミラー、220A,220B…ヒンジ、230A,230B…固定部、240…緩衝部、260…駆動電極、270…基板、281…第一の軸、282…第二の軸、290…駆動板、300…光偏向器、310…可動ミラー、320…ヒンジ、330…固定部、340…緩衝部、360…駆動電極、370…基板、381…第一の軸、382…第二の軸、390…駆動板、400…波長選択スイッチ、410…入出力ポート、410a…入力ポート、410b…出力ポート、420…コリメータ、420a…入力用コリメータ、420b…出力用コリメータ、430…分散素子、440…集光素子、450…光偏向器アレイ、500…光スイッチ、510…入出力ポート、520…コリメータ、530…光偏向器アレイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動ミラーと、
前記可動ミラーを第一の軸まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部と、
前記弾性部をそれぞれ支持する一対の固定部と、
前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる駆動素子と、
前記可動ミラーの傾斜により前記可動ミラーに生じる変形を緩衝する少なくとも一つの緩衝部とを有し、
前記可動ミラーと前記弾性部と前記固定部は前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って整列しており、前記緩衝部は前記固定部の間に配置されている、光偏向器。
【請求項2】
一方の弾性部とこれを支持する一方の固定部の間に設けられた駆動板をさらに有し、
前記一方の固定部は前記駆動板を介して前記一方の弾性部を支持し、
前記駆動素子は、前記駆動板の少なくとも一部を移動させることによって前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる、請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記弾性部と前記固定部の間にそれぞれ設けられた一対の駆動板をさらに有し、
前記固定部はそれぞれ前記駆動板を介して前記弾性部を支持し、
前記駆動素子は、前記駆動板の少なくとも一部をそれぞれ移動させることによって前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる、請求項1に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記緩衝部は、前記弾性部よりも前記第二の軸に平行な方向の剛性が低い、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の光偏向器。
【請求項5】
前記弾性部は、前記第一の軸に沿って互いに平行に延び、前記第二の軸に沿って互いに離間している複数のねじり梁を有し、前記緩衝部は、前記ねじり梁のいずれよりも前記第二の軸に平行な方向の剛性が低い、請求項4に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って弾性変形可能な梁を有している、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記梁の幅は、前記ねじり梁のいずれの幅よりも狭い、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って変形可能な一対の梁を有し、前記梁の両端は連結部を介して互いに接続されている、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って変形可能な複数の梁を有し、各梁の両端は連結部を介して別の梁の両端に接続され、各梁の中央は別の連結部を介してまた別の梁の中央に接続されている、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項10】
前記梁の両端が前記可動ミラーと前記固定部のいずれかひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項11】
前記梁の中央が前記弾性部のひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項12】
前記梁の一端が前記弾性部のひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項13】
前記梁の中央が前記固定部と前記駆動板のいずれかひとつに接続されている、請求項2または3を引用する請求項6に記載の光偏向器。
【請求項14】
前記梁の一端が前記固定部と前記駆動板のいずれかひとつに接続されている、請求項2または3を引用する請求項6に記載の光偏向器。
【請求項15】
前記緩衝部の厚みが前記弾性部の厚みと異なっている、請求項4に記載の光偏向器。
【請求項16】
そのおのおのが請求項1〜3のいずれか一つに記載の光偏向器からなる複数の光偏向器を有し、前記複数の光偏向器が前記第一の軸に沿って並べられている、光偏向器アレイ。
【請求項17】
そのおのおのが請求項1〜3のいずれか一つに記載の光偏向器からなる複数の光偏向器を有し、前記複数の光偏向器が前記第二の軸に沿って並べられている、光偏向器アレイ。
【請求項18】
複数の光入出力部と、
そのおのおのが前記光入出力部の一つから射出される光ビームを偏向して前記光入出力部の他の一つに結合し得る複数の光偏向器を有している請求項17に記載の光偏向器アレイとを有している、光スイッチ。
【請求項19】
複数の波長成分を含む波長多重された光が入力される光入力部と、
前記光入力部から射出される光ビームを前記波長成分にしたがって分散させて複数の光ビームを生成する分散素子と、
前記複数の光ビームをそれぞれ偏向する複数の光偏向器を有する請求項16に記載の光偏向器アレイと、
前記複数の光ビームを集光するとともに前記複数の光偏向器に方向付ける集光素子と、
前記光偏向器アレイによって偏向された前記複数の光ビームが結合され得る複数の光出力部とを有している、光スイッチ。
【請求項1】
可動ミラーと、
前記可動ミラーを第一の軸まわりに傾斜可能に支持する一対の弾性部と、
前記弾性部をそれぞれ支持する一対の固定部と、
前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる駆動素子と、
前記可動ミラーの傾斜により前記可動ミラーに生じる変形を緩衝する少なくとも一つの緩衝部とを有し、
前記可動ミラーと前記弾性部と前記固定部は前記第一の軸に直交する第二の軸に沿って整列しており、前記緩衝部は前記固定部の間に配置されている、光偏向器。
【請求項2】
一方の弾性部とこれを支持する一方の固定部の間に設けられた駆動板をさらに有し、
前記一方の固定部は前記駆動板を介して前記一方の弾性部を支持し、
前記駆動素子は、前記駆動板の少なくとも一部を移動させることによって前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる、請求項1に記載の光偏向器。
【請求項3】
前記弾性部と前記固定部の間にそれぞれ設けられた一対の駆動板をさらに有し、
前記固定部はそれぞれ前記駆動板を介して前記弾性部を支持し、
前記駆動素子は、前記駆動板の少なくとも一部をそれぞれ移動させることによって前記可動ミラーを前記第一の軸まわりに傾斜させる、請求項1に記載の光偏向器。
【請求項4】
前記緩衝部は、前記弾性部よりも前記第二の軸に平行な方向の剛性が低い、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の光偏向器。
【請求項5】
前記弾性部は、前記第一の軸に沿って互いに平行に延び、前記第二の軸に沿って互いに離間している複数のねじり梁を有し、前記緩衝部は、前記ねじり梁のいずれよりも前記第二の軸に平行な方向の剛性が低い、請求項4に記載の光偏向器。
【請求項6】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って弾性変形可能な梁を有している、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項7】
前記梁の幅は、前記ねじり梁のいずれの幅よりも狭い、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項8】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って変形可能な一対の梁を有し、前記梁の両端は連結部を介して互いに接続されている、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項9】
前記緩衝部は、前記第二の軸に沿って変形可能な複数の梁を有し、各梁の両端は連結部を介して別の梁の両端に接続され、各梁の中央は別の連結部を介してまた別の梁の中央に接続されている、請求項5に記載の光偏向器。
【請求項10】
前記梁の両端が前記可動ミラーと前記固定部のいずれかひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項11】
前記梁の中央が前記弾性部のひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項12】
前記梁の一端が前記弾性部のひとつに接続されている、請求項6に記載の光偏向器。
【請求項13】
前記梁の中央が前記固定部と前記駆動板のいずれかひとつに接続されている、請求項2または3を引用する請求項6に記載の光偏向器。
【請求項14】
前記梁の一端が前記固定部と前記駆動板のいずれかひとつに接続されている、請求項2または3を引用する請求項6に記載の光偏向器。
【請求項15】
前記緩衝部の厚みが前記弾性部の厚みと異なっている、請求項4に記載の光偏向器。
【請求項16】
そのおのおのが請求項1〜3のいずれか一つに記載の光偏向器からなる複数の光偏向器を有し、前記複数の光偏向器が前記第一の軸に沿って並べられている、光偏向器アレイ。
【請求項17】
そのおのおのが請求項1〜3のいずれか一つに記載の光偏向器からなる複数の光偏向器を有し、前記複数の光偏向器が前記第二の軸に沿って並べられている、光偏向器アレイ。
【請求項18】
複数の光入出力部と、
そのおのおのが前記光入出力部の一つから射出される光ビームを偏向して前記光入出力部の他の一つに結合し得る複数の光偏向器を有している請求項17に記載の光偏向器アレイとを有している、光スイッチ。
【請求項19】
複数の波長成分を含む波長多重された光が入力される光入力部と、
前記光入力部から射出される光ビームを前記波長成分にしたがって分散させて複数の光ビームを生成する分散素子と、
前記複数の光ビームをそれぞれ偏向する複数の光偏向器を有する請求項16に記載の光偏向器アレイと、
前記複数の光ビームを集光するとともに前記複数の光偏向器に方向付ける集光素子と、
前記光偏向器アレイによって偏向された前記複数の光ビームが結合され得る複数の光出力部とを有している、光スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図10】
【図11】
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【図13】
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【図15】
【図16】
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【図18】
【公開番号】特開2013−54169(P2013−54169A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191562(P2011−191562)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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