説明

光半導体モジュール

【課題】部品固着に使用する半田の種類数を低減し、かつ、伝送線路および光半導体素子間の接続線の長さを短縮した光半導体モジュールを提供する。
【解決手段】光半導体素子101を備えた光学アッセンブリが固着された第1基盤100と、伝送線路が固着されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が非接触に配置可能な空隙210が設けられた第2基盤201とを備える。そして、第2基盤に固着された伝送線路には、高周波電源の電力を供給するコネクタと電気的接続した終端抵抗204が固着され、光学アッセンブリが固着された第1基盤の面の上方に、第2基盤が配置されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が第2基盤に設けられた空隙に非接触に配置され、この光半導体素子と第2基盤に固着された伝送線路とが接続線で電気的接続されたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電源から供給される電力によって作動する光半導体素子と光ファイバとを光学的に結合した光半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における光半導体モジュールは、例えば特許文献1に開示されるように、光半導体素子および光導波路を高周波回路基板上に実装し、これに光ファイバなどの光結合手段を調芯して固定しパッケージに収納する構造や、半導体素子および光導波路を高周波回路基板上に実装したものをパッケージに組み込んで、このパッケージに対して光ファイバなどの光結合手段を調芯して固定する構成となっていた。
【0003】
また、例えば特許文献2に開示されるように、電気光学効果を用いた光変調器においては、光導波路、進行波電極、設置電極が設けられた光学基盤を、電気信号を供給するための電気コネクタが設けられた金属筐体に固定する構成が採用されていた。
【0004】
また、特許文献3には、光素子チップ(光半導体素子)その他の光学部品を収容する第1の筐体(容器)と電気部品を収容する第2の筐体(容器)とからなる光半導体素子モジュールが開示されている。
【特許文献1】特開2003−114345号公報
【特許文献2】特開平10−239647号公報
【特許文献3】特公平05−069406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
まず、従来のような光半導体モジュールの構成においては、光学基板や光半導体素子などからなる光学アッセンブリや伝送線路や終端抵抗などからなる電気回路部における各部材・部品(以下、単に「部品」という。)を、順次、固着材で固着して組み立てることになる。固着材としては、電気伝導特性の良好な半田〔solder〕が用いられる場合が多い。
【0006】
特に、高周波対応の光半導体モジュールにおいては、高周波特性をできるだけ損なわないようにするため、種々複数の部品が用いられており、これらを順次半田で固着する場合には、既に固着している部品に用いた半田が溶融することによる部品の位置ずれを防止する観点から、融点の異なる半田を順次使用する。即ち、既に固着している部品に用いた半田の融点よりも低い融点の半田を選択して次の部品を半田付けする。従って、部品点数が増加するにつれて、部品固着に使用する半田の種類数が増加する。半田に関しては、環境への配慮から鉛フリー化(無鉛化)が要請されており、使用可能な半田の種類は制限されつつある。従って、部品固着に使用する半田の種類が多いことは好ましくないという問題があった。
【0007】
また、従来技術における光半導体モジュールにおいては、電気回路部および光学アッセンブリは、それぞれ別々に同一の基盤上に順次積層されるため、電気回路部と光学アッセンブリ上に設けられた電極との距離が長くなっていた。このため、これらを接続するボンディングワイヤ長が長くなり、光半導体モジュールの高周波特性が劣化するという問題もあった。
【0008】
このことを、従来の光半導体モジュールの一例を図9、図10に示して具体的に説明する。まず、従来の光半導体モジュールの一例である光半導体モジュール(M)の構成から概説する。ここでは、便宜上、光半導体素子は、電気吸収型の光変調器とする。
【0009】
従来の光半導体モジュール(M)は、金属の筐体(900)の側面に高周波電源(図示しない)の電力を光半導体モジュール(M)に供給するコネクタ(901)が接続される。また、光半導体モジュール(M)内部に光を導入する光ファイバ(902)、光半導体モジュール(M)内部で変調を受けた信号光を光半導体モジュール(M)外部に導出する光ファイバ(902)が筐体(900)の側面から突出し、この突出部分において、光ファイバ(902)はゴムブッシュ(903)によって支持される。なお、図9では、光半導体モジュール(M)内部に光を導入する光ファイバおよび光半導体モジュール(M)外部へ変調された信号光を導出する光ファイバの区別を示さず、ともに同じ符号(902)を当てている。
【0010】
光半導体モジュール(M)の内部には、筐体(900)の底面に、電気回路部の伝送線路、例えばマイクロストリップライン(905)および光学アッセンブリが固着されている。マイクロストリップライン(905)は、筐体(900)の底面に半田によって固着される。また、コネクタ(901)の芯線(904)は、光半導体モジュール(M)内部に突出して、マイクロストリップライン(905)に半田によって固着される。
【0011】
光学アッセンブリは、例えばペルチェ素子(906)、基板(907)、サーミスタ(908)、光半導体素子(909)から構成される。ペルチェ素子(906)は、基板(907)や光半導体素子(909)に対する冷却機能を果たす。なお、ペルチェ素子(906)に対する電力供給手段については公知なので説明・図示を省略する。サーミスタ(908)は、過熱検知やペルチェ素子(906)の冷却機能による温度補償を適切に実現する機能を有する。基板(907)は、高周波特性に優れた材質のものが好ましく、例えば金属の基板が用いられる。
【0012】
光学アッセンブリは、筐体(900)の底面に、まずペルチェ素子(906)が半田によって固着され、次いでペルチェ素子(906)の筐体(900)と固着された面とは反対側の面に、基板(907)およびサーミスタ(908)が半田によって固着され、さらに、基板(907)のペルチェ素子(906)と固着された面とは反対側の面に光半導体素子(909)が半田によって固着された構造となっている。
【0013】
光半導体素子(909)とマイクロストリップライン(905)とは、接続線であるボンディングワイヤ(910)によって電気的に接続される。また、筐体(900)の底面〔但し、マイクロストリップライン(905)が固着された面と同面である。〕には、終端抵抗(911)が半田によって固着されており、光半導体素子(909)と終端抵抗(911)とは、ボンディングワイヤ(910)によって電気的に接続される。
【0014】
このような構成によって、高周波電源(図示しない)から供給された電力が、芯線(904)、マイクロストリップライン(905)、ボンディングワイヤ(910)を介して、光半導体素子(909)に供給されることとなり、光半導体素子(909)を通過する光(一方の光ファイバから導入される。)が変調される。この変調を受けた信号光は、光半導体素子(909)に対して適切に位置決めして調芯された他方の光ファイバ(902)を通って光半導体モジュール(M)外部に導出される。なお、光半導体素子(909)に対する光ファイバ(902)の位置決め(調芯)は、例えば、基板(907)に溝を設け、光ファイバ(902)を固着載置することによる。
【0015】
次に、既述の問題点を、上記光半導体モジュール(M)を例にして具体的に説明する。
まず、一般的には光半導体モジュールは、温度管理の観点から冷却機能を有することが好ましく、また、コストなどの観点からペルチェ素子(906)などの冷却手段を設ける。そうすると、光学アッセンブリと電気回路部であるマイクロストリップライン(905)が、それぞれ別々に同一の基盤である筐体(900)の底面に固着されることから、ペルチェ素子(906)、基板(907)、サーミスタ(908)、光半導体素子(909)が積層された光学アッセンブリとマイクロストリップライン(905)との高低差が大となり、結果として、光半導体素子(909)とマイクロストリップライン(905)とを電気的に接続するボンディングワイヤ(910)の長さが長くなる。
【0016】
このような問題に対しては、マイクロストリップライン(905)の高さを適宜調節して、光学アッセンブリとマイクロストリップライン(905)との高低差を解消することも考えられるが、マイクロストリップライン(905)は、高周波特性を損なわないようにその材質・形状が決定されるから、根本的な解決方法とはなりえない。
【0017】
次に、光学アッセンブリのペルチェ素子(906)およびマイクロストリップライン(905)は、それぞれ金属の筐体(900)の底面に半田によって固着されるところ、ボンディングワイヤ(910)の長さをできるだけ短縮する観点から、光学アッセンブリとマイクロストリップライン(905)とは近接して固着される。そのため、これらのいずれか一方が既に固着されている場合には、他方の半田付けの際に、熱伝導で前記一方の半田が溶融しないように、融点の異なる(低い)半田を選択使用しなければならず、結果として、半田の種類数が増えてしまう。
【0018】
なお、上記特許文献3において開示された光半導体素子モジュールの構成には、特許文献3における「半導体レーザチップ1およびホトダイオード12は第1の容器8の側壁6に設けられた各電極リード14等にボンデイング線15を介して電気的に接続されている」との記載およびその第1図から明らかなとおり、ボンディングワイヤ長が著しく長くなり、高周波作動の光半導体モジュールとしては好適なものではなかった。
【0019】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記問題点に鑑み、部品固着に使用する半田の種類数を低減し、かつ、伝送線路および光半導体素子間の接続線の長さを短縮した光半導体モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明は、次のような構成とする。即ち、高周波電源からの電力を供給するコネクタが接続され、この電力を伝送する伝送線路と、伝送線路と光半導体素子とを電気的接続する接続線と、光半導体素子に光を導入或いは導出する光ファイバとを備えた光半導体モジュールであって、光半導体素子を備えた光学アッセンブリが固着された第1基盤と、伝送線路が固着されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が非接触に配置可能な空隙が設けられた第2基盤とを備え、第2基盤に固着された伝送線路には、コネクタと電気的接続した導電性部材が固着され、光学アッセンブリが固着された第1基盤の面の上方に、第2基盤が配置されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が第2基盤に設けられた空隙に非接触に配置され、この光半導体素子と第2基盤に固着された伝送線路とが接続線で電気的接続されたものとする。
このような構成とすることによって、少なくとも伝送線路と光学アッセンブリとが異なる基盤上に固着されるから、これら一方が既に半田で固着されている場合に他方を半田で固着する際、一方を固着するために使用した半田が溶融する虞がない。また、第2基盤の空隙には第1基盤に固着された光学アッセンブリの光半導体素子を配置するから、伝送線路と光半導体素子との高低差を低減し、あるいは、およそ同一の高さ位置に設定することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、少なくとも伝送線路と光学アッセンブリとが異なる基盤上に固着されるから、それぞれを固着するに際して相互に与える熱伝導などの影響を考慮する必要がないので、それぞれの固着において同一種類の半田を使用することができ、光半導体モジュール製作に要する半田の種類数を低減できる。また、伝送線路と光半導体素子との高低差を低減し、あるいは、およそ同一の高さ位置に設定することができるので、従来に比して、伝送線路と光半導体素子とを接続する接続線の長さを短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面に示した実施例に基づいて説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。実施形態は、本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更可能なものである。また、各図においては、説明および図示の明瞭を図るため、一部図示を省略している部品がある。また、断面図においては、図示の明瞭を図るため、切断面を示していない部品がある。
【0023】
本実施形態の光半導体モジュール(A)は、特徴的には、光学アッセンブリを設けた第1基盤(100)および電気回路部を設けた第2基盤(201)から構成される。
【0024】
まず、第1基盤(100)について図1および図3を参照して説明する。
第1基盤(100)は、平板形状に形成され、その材質は導電性および適度の強度を有する適宜の金属である。第1基盤(100)には、光学アッセンブリ(101c)が固着される。具体的には光学アッセンブリ(101c)は、光半導体素子(101)および光学ベース(101g)から構成される。ここでは、便宜上、光半導体素子は、電気吸収型の光変調器とするが、要は、電気信号が光信号に作用する、或いは、電気エネルギーが光に変換される半導体素子であればよい。
【0025】
光学ベース(101g)は、少なくとも光半導体素子(101)を載置する基板(102)を備えており、必要に応じて(一般的には必須とされる場合が多い。)、ペルチェ素子(104)などの冷却手段、サーミスタ(103)などの検温制御手段などを備える。本実施形態では、光学ベース(101g)はペルチェ素子(104)、サーミスタ(103)も備えるとする。なお、ペルチェ素子(104)およびサーミスタ(103)の作動方法などについては従来公知の技術によって達成されるので、説明を略する。また、基板(102)は、高周波特性に優れた材質のものが好ましく、例えばセラミクスなどの誘電体、シリコンなどの半導体、または金属などの基板を用いる。
【0026】
第1基盤(100)における光学アッセンブリ(101c)の固着は、次のとおりである。
まず、第1基盤(100)上に、ペルチェ素子(104)が半田によって固着される。次いでペルチェ素子(104)の第1基盤(100)と固着された面とは反対側の面に、基板(102)およびサーミスタ(103)が半田によって固着され、さらに、基板(102)のペルチェ素子(104)と固着された面とは反対側の面に光半導体素子(101)が半田によって固着される。つまり、光学アッセンブリ(101c)は、ペルチェ素子(104)、基板(102)、光半導体素子(101)が順次積層された構成となって、第1基盤(100)上に半田付け固着されている。
【0027】
第1基盤(100)の形状は、本実施形態では図1(a)に示すとおり、概ね六角形の形状となっているが、これは、後述する第2基盤(201)を備えるフレームブロック(B)の形状に略一致させているためである。このような概ね六角形の形状とする理由は後述するが、必ずフレームブロック(B)の形状に略一致させる趣旨ではなく適宜に変更可能である。
【0028】
次に、第2基盤(201)について図2および図4を参照して説明する。
まず、第2基盤(201)の説明をする前に、第2基盤(201)を備えるフレームブロック(B)について説明する。フレームブロック(B)は、上部および下部が開口した筐体の如く、側壁部(200)および側壁部(205)で形成され、その材質は、導電性および適度の強度を有する適宜の金属である。
【0029】
フレームブロック(B)は、本実施形態では図2(a)に示すとおり、概ね六角形の形状としている。側壁部(205)には貫通孔(211)が形成されている。また、側壁部(200)の適切な高さ中間位置には、側壁部(200)に対して略直角に、材質を金属とした平板形状の第2基盤(201)が備わる。側壁部(200)と第2基盤(201)とは、同じ金属として一体形成してもよいし、あるいは、別々の部品として、接着剤や半田によって固着するとしてもよい。なお、第2基盤(201)は、側壁部(200)および/または側壁部(205)と電気的に接続されており、電気導通が確保されているとする。また、側壁部(200)には、図2においては図示省略のコネクタ(300)の芯線(202)が挿通される貫通孔(212)が設けられている。このコネクタ(300)は、高周波電源(図示しない)の電力を光半導体モジュール(A)に供給する。なお、ここで芯線(202)は、コネクタ(300)と電気的に導通可能なものの典型例として例示したに過ぎず、要はコネクタ(300)と導通した導電性部材であれば何でもよい。
【0030】
第2基盤(201)には、第1基盤(100)に固着された光学アッセンブリ(101c)の少なくとも光半導体素子(101)が非接触で配置可能な空隙が設けられる。この空隙は、貫通孔として設けても、あるいは、スリットとして設けてもよい。本実施形態では、空隙をスリット(210)として設けている。
【0031】
第2基盤(201)には、電気回路部が固着される。具体的には、電気回路部は終端抵抗(204)および伝送線路などから構成され、伝送線路は例えばマイクロストリップライン(203)とする。マイクロストリップライン(203)は、光半導体モジュール(A)の高周波特性に基づいて適切な形状・材質のものとされ、第2基盤(201)に半田によって固着される。また、マイクロストリップライン(203)の一方端部は、貫通孔(212)の付近まで延伸しており、貫通孔(212)を挿通したコネクタ(300)の芯線(202)が半田によって固着される。終端抵抗(204)は、第2基盤(201)に半田によって固着される。
【0032】
光半導体モジュール(A)は、第1基盤(100)、フレームブロック(B)、光ファイバ(302)、ゴムブッシュ(301)、コネクタ(300)、蓋(図示しない)から構成される。具体的には、次のとおりである。
【0033】
第1基盤(100)は、フレームブロック(B)と結合される(図5参照。)。即ち、第1基盤(100)に対して、第1基盤(100)の、光ファイバ(302)の端部を固着載置した光学アッセンブリ(101c)が固着された面の方から、フレームブロック(B)を覆い被せるようにして、両者を結合させる。結合部分は、側壁部(200)および側壁部(205)の端縁部と第1基盤(100)の光学アッセンブリ(101c)が固着された面の周縁部である。この結合部分は、例えば、レーザ溶接、スポット溶接、あるいは接着剤や半田で固着し、隙間を設けないようにする。なお、第1基盤(100)は、側壁部(200)および/または側壁部(205)と電気的に接続されており、電気導通が確保されているとする。
【0034】
このとき、電気回路部が固着された第2基盤(201)は、光学アッセンブリ(101c)が固着された第1基盤(100)の面の向かいに位置することになる(図7、図8参照。)。
【0035】
また、コネクタ(300)は、側壁部と電気的に導通可能に側壁部(200)に装着され、その芯線(202)は、貫通孔(212)を挿通している。なお、この貫通孔(212)とこれを挿通する芯線(202)との間には、高周波特性を勘案して適切な隙間(隙間は中空、もしくは誘電体で満たされている。)を設けるようにする。
【0036】
上記の結合によって、スリット(210)に光半導体素子(101)が非接触で配置されることになる(図5、図8参照。)。つまり、第2基盤(201)は、フレームブロック(B)において、上記結合によってスリット(210)に光半導体素子(101)が非接触で配置されるように、側壁部(200)の高さ中間位置に備えられている。光半導体素子(101)とマイクロストリップライン(203)の端部〔芯線(202)が固着された端部とは反対側の端部であり、スリット(210)の周辺縁部(210a)まで延伸している。〕とは、接続線であるボンディングワイヤ(400)によって結線され、電気的導通が確保される。また、光半導体素子(101)と終端抵抗(204)とは、ボンディングワイヤ(400)によって結線され、電気的導通が確保される。このため、高周波電源(図示しない)から供給された電力が、コネクタ(300)の芯線(202)、マイクロストリップライン(203)、ボンディングワイヤ(400)を介して、光半導体素子(101)に供給されることとなり、光半導体素子(101)で一方の光ファイバ(302)から導入された光が変調される。この変調を受けた信号光は、光半導体素子(101)を介して前記一方の光ファイバ(302)とは反対側に設けられた他方の光ファイバ(302)を通って光半導体モジュール(A)外部に導出される。
【0037】
次に、光ファイバ(302)の設置構成について説明する。側壁部(205)の貫通孔(211)には、光ファイバ被覆材(302a)で被覆された光ファイバ(302)が挿通され、さらに、この貫通孔(211)にゴムブッシュ(301)が密着して嵌挿される(図6、図7参照。)。このようにして、光ファイバ(302)は貫通孔(211)の部分でゴムブッシュ(301)によって不動支持される。なお、光ファイバ(302)の入出射端部(302b)は、光半導体素子(101)に入出射する光が結合する位置に最適に調整されて固定される。具体例としては、光学ベース(101g)の基板(102)上に、光半導体素子(101)の光射出部位に対する光ファイバ(302)の位置決めが最適になるように溝(例えばV字形状の溝)が設けられており、この溝に光ファイバ(302)の入出射端部(302b)が接着剤などで固着載置される。なお、入出射端部(302b)にはレンズ(図示しない)を設ける。このため、一方の光ファイバ(302)で入射された光はレンズで集光されて光半導体素子(101)に導入し、光半導体素子(101)によって変調された信号光は、レンズで集光されて他方の光ファイバ(302)に結合することとなる。このように、光半導体素子(101)と光半導体モジュール(A)の外部の光学系とが、光ファイバ(302)によって接続される。
【0038】
さらに、第1基盤(100)が結合されたフレームブロック(B)に、適宜の不活性ガスを注入して、フレームブロック(B)の第1基盤(100)が結合されたのとは反対側の開口部分を、材質を金属とする蓋(図示しない)によって被覆封止する。
以上のようにして、本実施形態の光半導体モジュール(A)は気密的に構成されるのである。
【0039】
本実施形態の光半導体モジュール(A)は、以上のような構成をとるため、まず、部品間の固着に使用する半田の種類数を抑えることが可能になる。このことを、図8を参照して説明する。
既述のとおり、光学アッセンブリ(101c)および電気回路部はそれぞれ、各別の部品である第1基盤(100)、第2基盤(201)に固着される。従って、例えば、光半導体モジュール(A)の製造過程において、光学アッセンブリ(101c)のペルチェ素子(104)を第1基盤(100)に固着するために用いる半田と、マイクロストリップライン(203)を第2基盤(201)に固着するために用いる半田とを同一のものとすることが可能になる。つまり、これらを各別に固着しなければならない場合でも、熱伝導による半田の溶融の虞が無いので、同一種類の半田を使用することができる。本実施形態では、各基盤に固着する部品は、光学アッセンブリ、マイクロストリップライン、終端抵抗などとしたが、その他の部品を各基盤に固着する場合においても、各基盤ごとに種々の部品を固着するに際して基盤相互に与える熱伝導などの影響を考慮する必要がないので、これら部品の固着に要する半田も適宜に同一種類のものを使用することができ、さらになる半田種類数の低減を図ることも可能である。
換言して説明すれば、従来、同一の基盤に固着せしめた部品の数に応じて半田の種類を用意することとなっていたが、本発明よれば、これら部品を2つの基盤に振り分け、それぞれの基盤で各部品を固着せしめるから、一方の基盤において要した半田の種類数の限度で他方の基盤において部品の半田付けが可能となる。
このように、各部品間の固着において、同一種類の半田を使用できる箇所が存在することとなるから、使用する半田の種類数を抑えることが可能になる。
【0040】
次に、本実施形態の光半導体モジュール(A)は、以上のような構成をとるため、ボンディングワイヤ(400)の長さを可能な限り短縮することができる。即ち、上記説明並びに図7、図8を参照して明らかなとおり、光学アッセンブリ(101c)が固着された第1基盤(100)の面の向かいに、電気回路部が固着された第2基盤(201)が位置する2階建構造であるから、側壁部(200)の備える第2基盤(201)の位置を最適に設定することで、スリット(210)から非接触で配置される光半導体素子(101)の位置〔ここでの位置とは、光半導体モジュール(A)内部における高さ方向の位置である。〕を、電気回路部、即ちマイクロストリップライン(203)の位置と略同一にすることが可能になる。従って、従来的な光半導体モジュール(M)に比して、光半導体素子(101)とマイクロストリップライン(203)との高低差をおよそ生じないこととすることができるので、ボンディングワイヤ(400)の長さを短縮することが可能になる。
【0041】
また、図8に示すように、第2基盤(201)のスリット(210)の周辺縁部(210a)を光学ベース(101g)の上方に延出させるようにすることで、第2基盤(201)に固着されるマイクロストリップライン(203)〔既述のとおり、この端部は、スリット(210)の周辺縁部(210a)まで延伸している。〕を可能な限り光半導体素子(101)に近接せしめることも可能であり、より一層、ボンディングワイヤ(400)の長さを必要最小限に短縮することができる。
【0042】
本実施形態の光半導体モジュールは、図9、図10に示す上面四辺形をなす従来の光半導体モジュールと異なり、概ね六角形状としている。これは次の理由による。即ち、光学アッセンブリ(101c)が、光半導体モジュール(A)のおよそ中心部分に位置する構成となるから、ボンディングワイヤ(400)の長さをできる限り短縮するためには、マイクロストリップライン(203)の端部(ボンディングワイヤ(400)が結線される端部である。)を光半導体素子(101)に対向近接せしめる必要がある。そうすると、マイクロストリップライン(203)は、光半導体素子(101)を略中心として放射状に第2基盤(201)上に固着されることになる(図2などを参照。)。そこで、フレームブロック(B)の側壁部(200)を概ね六角形状にすると、側壁部(200)に装着されるコネクタ(300)の芯線(202)は、貫通孔(212)を挿通して直線的にマイクロストリップライン(203)に半田付け固着されることになる。つまり、芯線(202)とマイクロストリップライン(203)との半田付け固着面積が十分に確保され、この固着部分において相応の機械的強度を得ることができる。
【0043】
また、芯線(202)とマイクロストリップライン(203)とを直線的に固着可能であるから、上面四辺形をなす従来の光半導体モジュールのように、この固着部分が屈曲する場合に比して、入力される電力の高周波特性を劣化せしめないという効果も得ることできる。
【0044】
このように、芯線(202)とマイクロストリップライン(203)とを直線的に固着可能である点に利点が見出されるから、このような直線的固着構成をとるならば、フレームブロック(B)の側壁部(200)を概ね六角形状に限定する必要はない。即ち、フレームブロック(B)の側壁部(200)の形状は、マイクロストリップライン(203)の数や、第2基盤(201)上でのマイクロストリップライン(203)の配置のされ方に応じて、適宜に変更するのがよい。
【0045】
本実施形態では、第1基盤(100)は平板形状とし、フレームブロック(B)は、上部および下部が開口した筐体の如く、側壁部(200)および側壁部(205)で形成して、側壁部(200)の高さ中間位置には、側壁部(200)に対して略直角に、材質を金属とした平板形状の第2基盤(201)が備わるとした。しかし、要は、第1基盤(100)とフレームブロック(B)とが結合した状態において、光学アッセンブリ(101c)が固着された第1基盤(100)の面の向かいに第2基盤(201)が位置する構造(2階建構造)となればよいので、本実施形態の如き部品構成に限定する必要はない。例えば、上部が開口した筐体の如く、第1基盤(100)の周辺縁部に上記の側壁部(200)および側壁部(205)を立設して、これを光学アッセンブリ(101c)を収容する筐体とし、この筐体の側壁部(200)の高さ中間位置に、この筐体とは別部品として構成され、電気回路部が固着された第2基盤(201)を接着剤や半田などで固着せしめる実施形態とすることでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
光スイッチや光変調器などのように、高周波電気信号を光信号に作用させる光半導体モジュールとして用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】光学アッセンブリ(101c)が固着された第1基盤(100)を示す図。(a)平面図。(b)側面図。(c)F−F線断面図。
【図2】第2基盤(201)を備えるフレームブロック(B)を示す図。(a)平面図。(b)側面図。(c)E−E線断面図。
【図3】第1基盤(100)に固着された光学アッセンブリ(101c)の構成および半田付け部を示す図〔図1のJ−J線断面図に相当する。〕。
【図4】第2基盤(201)に固着されたマイクロストリップライン(203)および終端抵抗(204)の半田付け部を示す図〔図2のK−K線断面図に相当する。〕。
【図5】第1基盤(100)およびフレームブロック(B)などが結合して光半導体モジュール(A)が構成されることを説明する図。
【図6】光半導体モジュール(A)を示す図。(a)平面図。(b)側面図。(c)D−D線断面図(光ファイバ被覆材(302a)は省略。)。
【図7】図6(c)の拡大図。
【図8】光半導体素子(101)とマイクロストリップライン(203)との位置関係などを説明する図。
【図9】従来の光半導体モジュール(M)を示す図。(a)平面図。(b)G−G線断面図。
【図10】従来の光半導体モジュール(M)において、光半導体素子(909)とマイクロストリップライン(905)との位置関係などを説明する図。
【符号の説明】
【0048】
A 光半導体モジュール
B フレームブロック
100 第1基盤
101 光半導体素子
101c 光学アッセンブリ
101g 光学ベース
102 基板
104 ペルチェ素子
200 側壁部
201 第2基盤
202 芯線
203 マイクロストリップライン
204 終端抵抗
205 側壁部
210 スリット(空隙)
210a スリットの周辺縁部
300 コネクタ
301 ゴムブッシュ
302 光ファイバ
400 ボンディングワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電源からの電力を供給するコネクタが接続され、この電力を伝送する伝送線路と、伝送線路と光半導体素子とを電気的接続する接続線と、光半導体素子に光を導入或いは導出する光ファイバとを備えた光半導体モジュールであって、
光半導体素子を備えた光学アッセンブリが固着された第1基盤と、
伝送線路が固着されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が非接触に配置可能な空隙が設けられた第2基盤と
を備え、
第2基盤に固着された伝送線路には、コネクタと電気的接続した導電性部材が固着され、
光学アッセンブリが固着された第1基盤の面の上方に、第2基盤が配置されるとともに、少なくとも光学アッセンブリの光半導体素子が第2基盤に設けられた空隙に非接触に配置され、この光半導体素子と第2基盤に固着された伝送線路とが接続線で電気的接続された
ことを特徴とする光半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−187874(P2007−187874A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5877(P2006−5877)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000231073)日本航空電子工業株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】