説明

光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた光半導体装置

【課題】良好な透明性はもちろん、半田リフロー時の耐クラック性に優れ、かつ温度サイクル信頼性にも優れた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(C)成分を含有する光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。そして、上記(A)成分および(B)成分の混合割合〔(A):(B)〕が、重量比で、(A):(B)=70:30〜95:5に設定されている。(A)脂環及びエステル基を含有する多価フェノールをグリシジル化した特定のエポキシ樹脂。(B)エポキシ樹脂(A)以外のエポキシ樹脂〔ただし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよびビフェニル型エポキシ樹脂を除く〕。(C)硬化剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光半導体素子の封止に用いられる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いて光半導体素子を封止してなる光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、受光素子および発光素子等の光半導体素子の封止材料としては、透明性、耐湿性および耐熱性に優れていなければならないという観点より、エポキシ樹脂組成物が用いられている。このエポキシ樹脂組成物を、光半導体素子を設置した成形金型中にて、例えば、トランスファー成形し、光半導体素子をパッケージにして光半導体装置化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、この光半導体パッケージにおいても、光半導体以外の半導体パッケージと同様に、小型・軽量化や実装生産性の向上を目的として、従来のピン挿入実装方式に代わり、表面実装方式が急速に普及してきている。このような表面実装型パッケージとしては、例えば、2方向フラットパッケージ(スモールアウトラインパッケージ:SOP)や、4方向フラットパッケージ(クワッドフラットパッケージ:QFP)、SON(スモールアウトラインノンリード)があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−93277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記表面実装方式ではピン挿入実装方式と異なり、実装時にパッケージ全体が最大で260℃の高温環境下にさらされる。その際、光半導体デバイス製造後の保管中に吸湿した水分が急激に気化膨張し、大きな応力が発生する。その応力が、パッケージの強度を超えた場合にパッケージにクラックが発生する。その防止対策として、光半導体メーカーでは、光半導体デバイスを出荷の際に防湿梱包したり、実装現場では、実装工程前に光半導体デバイスをオーブンで加熱乾燥する等の工程を加えている。しかし、上記防湿梱包によるコストアップや梱包開封による作業性の悪化、また上記加熱乾燥にかかるコストが大きな負担となっている。この水蒸気による封止樹脂のクラックの問題を解決するための一般的な手法としては、フィラー等の高強度構造物をその封止樹脂中に多く含有させる方法があるが、光半導体用途では、透明性の観点から上記フィラー等の高強度構造物を多く含有させるという手法を用いることは難しい。また、脂肪族基、フェニル基の含有量を増やし、樹脂自身の吸水率を低くすることで耐半田性の効果を上げる手法も考えられるが、この手法でも、エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)が高く、半田リフロー時の弾性率が高くなるため、リフローをかけた際の気化膨張による応力を緩和することができず、クラックが発生する。そして、半田リフロー時の弾性率を低下させる手法としては、エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を下げる方法が考えられるが、この方法では、温度サイクル信頼性が著しく低下し、製品の信頼性という点において満足させることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、良好な透明性はもちろん、半田リフロー時の耐クラック性に優れ、かつ温度サイクル試験信頼性にも優れた光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物およびそれを用いた、高い信頼性を備えた光半導体装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、下記の(A)〜(C)成分を含有する光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(A)成分および(B)成分の混合割合〔(A):(B)〕が、重量比で、(A):(B)=70:30〜95:5に設定されている光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の構造式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】

(B)上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂〔ただし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよび下記の一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂を除く〕。
【化2】

(C)硬化剤。
【0008】
そして、本発明は、上記光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子をトランスファー成形して封止してなる光半導体装置を第2の要旨とする。
【0009】
本発明者らは、半田リフロー時の耐クラック性に優れる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を得るべく一連の研究を重ねた。その結果、上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂〔(A)成分〕と、それ以外のエポキシ樹脂〔(B)成分〕を特定の割合で組み合わせると、半田リフロー温度(ゴム状領域)での高温の弾性率が従来のエポキシ樹脂に比べて低くなり、リフローをかけた際の気化膨張による発生応力の緩和を可能とし、クラックの発生が抑制されて耐半田リフロー性に優れることはもちろん、ガラス転移温度が高くなり、温度サイクル試験信頼性に関しても向上が図られるようになることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0010】
このように、本発明は、上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂〔(A)成分〕と、それ以外のエポキシ樹脂〔(B)成分〕を特定の混合割合で含有してなる光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物である。このため、半田リフロー時の耐クラック性に優れるとともに、ガラス転移温度が高いことから温度サイクル試験信頼性にも優れたものである。したがって、本発明の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物は、有用な封止材料となり、信頼性の高い光半導体装置を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】表面実装型光半導体装置の一例であるSOP−8を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0013】
本発明の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」という)は、特定の構造式で表されるエポキシ樹脂(A成分)と、上記A成分以外のエポキシ樹脂(B成分)と、硬化剤(C成分)を用いて得られるものであり、通常、粉末状、もしくはこの粉末を打錠したタブレット状になっている。
【0014】
上記特定の構造式で表されるエポキシ樹脂(A成分)は、下記の構造式(1)で表されるエポキシ樹脂である。
【0015】
【化3】

【0016】
上記式(1)において、繰り返し数nは、正数であるが、より好ましくはnは1〜2である。そして、エポキシ当量は、400〜1300であることが好ましく、より好ましくは400〜800である。また、軟化点は50〜130℃であることが好ましく、より好ましくは70〜110℃である。
【0017】
上記A成分とともに用いられる、A成分以外のエポキシ樹脂(B成分)は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよび下記の一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂を除くものであればよい。
【0018】
【化4】

【0019】
そして、A成分以外のエポキシ樹脂(B成分)としては、例えば、トリグリシジルイソシアヌレート、下記の一般式(2)で表される脂環式エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併用してもよい。
【0020】
【化5】

【0021】
さらに、このようなA成分以外のエポキシ樹脂(B成分)としては、エポキシ当量80〜250のものを用いることが好ましい。また、軟化点が40〜125℃のものを用いることが好ましい。
【0022】
上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂(A成分)およびA成分以外のエポキシ樹脂(B成分)の混合割合〔(A成分):(B成分)〕は、重量比で、(A成分):(B成分)=70:30〜95:5に設定する必要がある。より好ましくは(A成分):(B成分)=75:25〜90:10である。すなわち、混合割合が上記範囲を外れA成分の割合が少な過ぎると、半田リフロー時の弾性率が上がり、応力を緩和することができず、耐半田リフロー特性時にてクラックが発生するという問題が生じる。また、混合割合が上記範囲を外れA成分の割合が多過ぎると、ガラス転移温度(Tg)が下がり耐半田リフロー性は向上するが、温度サイクル試験において、ワイヤーの断線が発生し、光半導体装置自体の信頼性が低下する。さらに、耐熱性が低下し、半田リフロー時の変色が激しく、光学特性に対して影響が及ぶこととなるからである。
【0023】
上記A成分およびB成分とともに用いられる上記硬化剤(C成分)は、上記A成分およびB成分に対する硬化剤として作用するものであって、エポキシ樹脂用硬化剤として従来公知のものが用いられるが、エポキシ樹脂組成物の硬化体が変色しにくいという点から、特に、酸無水物系硬化剤を用いることが好ましい。
【0024】
上記酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の無色ないし淡黄色の酸無水物があげられる。これらは単独で使用してもあるいは2種以上併用してもよい。そして、上記酸無水物系硬化剤の中でも、短波長領域の吸収がより低いという点から、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸を用いることが好ましい。
【0025】
さらに、上記酸無水物系硬化剤以外に、上記酸無水物系硬化剤をグリコール類でエステル化したもの、または、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類等の硬化剤を単独で使用してもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。
【0026】
上記エポキシ樹脂成分(A成分+B成分)と硬化剤(C成分)との配合割合は、例えば、硬化剤(C成分)として酸無水物系硬化剤を用いる場合、上記エポキシ樹脂成分(A成分+B成分)中のエポキシ基1当量に対して、酸無水物系硬化剤における酸無水物当量を、0.5〜1.5当量となるように設定することが好ましい。特に好ましくは0.7〜1.2当量である。すなわち、上記配合割合において、酸無水物当量が上記下限値未満では、得られるエポキシ樹脂組成物の硬化後の色相が悪くなる傾向がみられ、逆に、上記上限値を超えると、耐湿性が低下する傾向がみられるからである。
【0027】
なお、硬化剤(C成分)として、酸無水物系硬化剤以外に前記のヘキサヒドロフタル酸等のカルボン酸類等の硬化剤を単独で使用あるいは2種以上併用する場合においても、その配合割合は、上記酸無水物系硬化剤を使用した配合割合(当量比)に準ずる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要により、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤としては、例えば、三級アミン類、イミダゾール類、四級アンモニウム塩および有機金属塩類、リン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、上記硬化促進剤の中でも、リン系化合物、三級アミン類を用いることが好ましい。さらに好ましくは、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノネン−5、DBUのオクチル酸塩、N,N−ジメチルベンジルアミン、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミンがあげられる。これらを用いることにより、半田リフロー温度での耐熱変色性が生起しにくいという効果が得られる。
【0029】
上記硬化促進剤の配合量は、前記エポキシ樹脂成分(A成分+B成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.05〜7.0部の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0部である。すなわち、硬化促進剤の配合量が少な過ぎると、充分な硬化促進効果が得られない傾向がみられ、逆に、多過ぎると、エポキシ樹脂組成物の硬化体に変色がみられる傾向があるからである。
【0030】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、前記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂(A成分)、A成分以外のエポキシ樹脂(B成分)、硬化剤(C成分)および硬化促進剤以外に、エポキシ樹脂組成物の硬化体の透明性を損なわない範囲であれば必要に応じて、従来から用いられている劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、離型剤、染料、顔料等の従来公知の各種添加剤を適宜配合することができる。
【0031】
上記劣化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等の従来公知のものがあげられる。
【0032】
上記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類、アルコール類等の、従来から公知の変性剤があげられる。
【0033】
上記シランカップリング剤としては、例えば、シラン系、チタネート系等の、従来から公知のシランカップリング剤があげられる。
【0034】
上記脱泡剤としては、例えば、シリコーン系等の、従来から公知の脱泡剤があげられる。
【0035】
上記離型剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸およびその金属塩、ポリエチレン系、ポリエチレン−ポリオキシエチレン系、カルナバワックス等の従来公知のものがあげられる。そして、上記離型剤の中でも、ポリエチレン−ポリオキシエチレン系が、エポキシ樹脂組成物の硬化体の透明性が良好となるため、好ましく用いられる。
【0036】
なお、光分散性が必要な場合には、上記成分以外にさらに充填剤を配合してもよい。この充填剤としては、例えば、石英ガラス粉末、タルク、シリカ粉末、アルミナ粉末、炭酸カルシウム等の無機質充填剤等があげられる。
【0037】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、上記A成分、B成分およびC成分、さらに必要に応じて、硬化促進剤、劣化防止剤、変性剤、シランカップリング剤、脱泡剤、離型剤、染料、顔料、充填剤等の従来公知の各種添加剤を所定の割合で配合する。そして、これらを常法に準じてドライブレンド法または溶融ブレンド法を適宜採用して混合、混練する。ついで、得られた混練物を冷却したのち粉砕し、さらに必要に応じて打錠することにより、本発明のエポキシ樹脂組成物を製造することができる。
【0038】
このような、エポキシ樹脂組成物を用いた光半導体素子の封止は、トランスファーモールド等の公知のモールド方法により行うことができる。
【0039】
なお、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化体は、厚み1mmにおいて、分光光度計の測定により、波長600nmの光透過率が70%以上のものが好ましく、特に好ましくは80%以上である。ただし、上記充填剤、染料、あるいは顔料を用いた場合の光透過率に関してはこの限りではない。
【0040】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化体におけるガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であることが好ましく、より好ましくは、110〜150℃の範囲である。さらに、上記ガラス転移温度(Tg)より50℃高い温度での貯蔵弾性率が2〜14MPaであることが好ましく、より好ましくは3〜14MPaである。このような特性を有することにより本発明のエポキシ樹脂組成物は、耐半田リフロー性および温度サイクル試験信頼性に優れたものとなる。なお、上記ガラス転移温度(Tg)は、例えば、エポキシ樹脂組成物硬化体を用い、示差走査熱量計(DSC)により測定し、ガラス転移温度の前後に現れる2つの屈曲点の中間点をガラス転移温度(Tg)に決定する。また、上記貯蔵弾性率は、例えば、エポキシ樹脂組成物硬化体を用い、1Hz,30〜270℃の温度範囲を10℃/分の測定条件にて、RHEOMETRIC SCIENTIFIC社製のRSA−IIにより測定することができる。
【実施例】
【0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0042】
まず、実施例および比較例に先立って下記に示す各成分を準備した。
【0043】
〔エポキシ樹脂a〕
前記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂〔式(1)中、n=1であり、エポキシ当量540:東都化成社製、ZX−1718−3〕
〔エポキシ樹脂b〕
トリグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量100、軟化点115℃)
〔エポキシ樹脂c〕
下記の構造式(c)で表されるエポキシ樹脂〔2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、ダイセル化学工業社製、EHPE−3150)
【化6】

【0044】
〔硬化剤〕
ヘキサヒドロ無水フタル酸
〔硬化促進剤〕
N,N−ジメチルベンジルアミン
〔シランカップリング剤〕
γ−メルカプトトリメトキシシラン
【0045】
〔実施例1〜4、比較例1〜5〕
後記の表1および表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、80〜130℃に加熱したミキシングロールに3分間かけて溶融混練を行い、熟成した後、室温(25℃)まで冷却して粉砕することにより目的とする粉末状のエポキシ樹脂組成物を得た。
【0046】
このようにして得られた実施例および比較例のエポキシ樹脂組成物を用い、後記に示す方法にしたがって各種特性評価を行った。その結果を上記の表1および表2に併せて示す。
【0047】
〔ガラス転移温度(Tg)〕
上記のようにして作製した各エポキシ樹脂組成物を用いて、専用金型で成形する(硬化条件:150℃×4分間成形)ことにより、硬化物試験片(大きさ:直径50mm×厚み1mm)を作製した。これを、150℃で3時間加熱することにより完全に硬化を終了させた。ついで、この硬化を完全に終了させた試験片を用い、示差走査熱量計(DSC:セイコーインスツル社製、DSC−6220)にて測定し、ガラス転移温度の前後に現れる2つの屈曲点の中間点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0048】
〔貯蔵弾性率〕
上記のようにして作製した各エポキシ樹脂組成物を用いて、専用金型で成形する(硬化条件:150℃×4分間成形)ことにより、硬化物試験片(大きさ:幅5mm×長さ35mm×厚み1mm)を作製した。これを、150℃で3時間加熱することにより完全に硬化を終了させた。ついで、この硬化を完全に終了させた試験片を用い、RHEOMETRIC SCIENTIFIC社製のRSA−IIにより、1Hz,30〜270℃の温度範囲を10℃/分の測定条件にて貯蔵弾性率を測定した。すなわち、この貯蔵弾性率は、上記測定したガラス転移温度(Tg)より50℃高い温度での測定値となる。
【0049】
〔耐半田リフロー性〕
上記エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子(SiNフォトダイオード:1 .5mm×1.5mm×厚み0.37mm)をトランスファー成形(150℃×4分間成形、150℃×3時間後硬化)でモールドすることにより表面実装型光半導体装置を得た。この表面実装型光半導体装置は、図1に示すように、8ピンのスモールアウトラインパッケージ(SOP−8:4.9mm×3.9mm×厚み1.5mm)1で、リードフレーム2として、42アロイ合金素体の表面全面に銀メッキ層(厚み0.2μm)を形成したものを用いた。また、ワイヤー径は25μmである。
【0050】
このようにして得られた光半導体装置10個を、30℃/60%RHの条件で、192時間吸湿させ、実際のリフロー炉(トップピ−ク260℃×10秒)に3回通した。その後、顕微鏡により目視にてリードフレームと素子との樹脂界面の剥離、クラックの有無を観察し、それが生じている光半導体装置の個数を数えた。
【0051】
〔温度サイクル試験〕
上記耐半田リフロー性にて評価した光半導体装置を用い、これを100℃〜−40℃を1サイクルとして300サイクルの温度サイクル試験にかけ、ワイヤーの断線および導通をチェックした。なお、上記耐半田リフロー性評価において、剥離およびクラックの発生した光半導体装置に関しては、温度サイクル試験に供しなかった。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
上記結果から、全ての実施例品は、ガラス転移温度(Tg)は、110℃以上であり、貯蔵弾性率は低く抑えられていた。そして、耐半田リフロー性および温度サイクル試験において良好な結果が得られた。
【0055】
これに対し、2種類のエポキシ樹脂の混合割合が特定の範囲を外れ、エポキシ樹脂aの混合比率が少ない比較例1〜2品は、耐半田リフロー性試験において、剥離およびクラックが発生した。また、2種類のエポキシ樹脂の混合割合が特定の範囲を外れ、エポキシ樹脂aの混合比率が多過ぎる比較例4〜5品は、貯蔵弾性率が低く抑えられていたが、温度サイクル試験においてワイヤーの断線および導通不良が発生した。同様に、エポキシ樹脂成分としてエポキシ樹脂aのみを用いた比較例3品は、ガラス転移温度(Tg)は、100℃と低く、貯蔵弾性率は低く抑えられたが、温度サイクル試験においてワイヤーの断線や導通不良が発生した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)成分を含有する光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物であって、上記(A)成分および(B)成分の混合割合〔(A):(B)〕が、重量比で、(A):(B)=70:30〜95:5に設定されていることを特徴とする光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
(A)下記の構造式(1)で表されるエポキシ樹脂。
【化1】

(B)上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂〔ただし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3′,4′−エポキシシクロヘキセンカルボキシレートおよび下記の一般式(3)で表されるビフェニル型エポキシ樹脂を除く〕。
【化2】

(C)硬化剤。
【請求項2】
上記構造式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(B)が、トリグリシジルイソシアヌレートおよび下記の一般式(2)で表される脂環式エポキシ樹脂の少なくとも一方である請求項1記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【化3】

【請求項3】
上記光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物のガラス転移温度が、110℃以上である請求項1または2記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の光半導体素子封止用エポキシ樹脂組成物を用いて光半導体素子をトランスファー成形して封止してなる光半導体装置。


【図1】
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【公開番号】特開2010−53338(P2010−53338A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122041(P2009−122041)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】