説明

光増幅装置

【課題】PDGが小さい光増幅器をえる。
【解決手段】入射光の入力及び出射光の出力を行う入出力部と、入出力部から入力された入射光の偏光成分を分岐して、第1の偏光を有する第1偏光モード光、及び、第1の偏光と異なる第2の偏光を有する第2偏光モード光を出力する偏光分離部と、第1偏光モード光が入力され、第1の偏光を第2の偏光に変換して、第1偏光変換光を出力する偏光変換部と、導波路の一方の端部に入力された第1偏光変換光が増幅されて他方の端部から出力され、他方の端部に入力された第2偏光モード光が増幅されて一方の端部から出力される、光増幅部と、を備え、光増幅部に入力される光の、単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下である半導体光増幅器を用いることにより、PDG0.5dB以下の光増幅装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入力光をTE偏光とTM偏光とに分岐して、TE偏光をTE偏光のまま、そして、TM偏光をTE偏光に変換してから、SOA(半導体光増幅器 Semiconductor Optical Amplifier)に入力する偏波ダイバーシティ回路を用いる光増幅装置が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
非特許文献1 K. Morito and S. Tanaka, "Record High Saturation Power (+22 dBm) and Low Noise Figure (5.7dB) Polarization-Insensitive SOA Module", IEEE PH OTONICS TECHNOLOGY LETTERS, 17, 6, 1298-1300, (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
SOAにおける光の利得は、TE偏光とTM偏光とで異なる。偏波ダイバーシティ回路を用いる光増幅装置においては、TM偏光はTE偏光に変換されてからSOAに入力される。これにより、偏光方向に起因する光利得の差を小さくすることができる。しかしSOAにおける利得は、SOAに入力される光の強度にも依存することがある。そのため、偏波ダイバーシティ回路において、TM偏光からTE偏光に変換されてSOAに入力される光の強度と、分岐されてからTE偏光のままでSOAに入力される光の強度とに差があると、両者の利得に差が生じる。
【0004】
偏光方向によって異なる利得は、PDG(偏波依存利得 Polarization Dependent Gain)と呼ばれる。光増幅装置に入力される信号光の偏波方向がランダムに変化すると、PDGに起因して、光増幅装置から出力される光の強度が変動するので、信号のエラーの原因となる。したがって、信号のエラーを低減するために、PDGを小さくすることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様においては、入射光の入力及び出射光の出力を行う入出力部と、入出力部から入力された入射光の偏光成分を分岐して、第1の偏光を有する第1偏光モード光、及び、第1の偏光と異なる第2の偏光を有する第2偏光モード光を出力する偏光分離部と、第1偏光モード光が入力され、第1の偏光を第2の偏光に変換して、第1偏光変換光を出力する偏光変換部と、導波路の一方の端部に入力された第1偏光変換光が増幅されて他方の端部から出力され、他方の端部に入力された第2偏光モード光が増幅されて一方の端部から出力される、光増幅部と、を備え、光増幅部に入力される光の、単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下である光増幅装置を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光増幅装置の模式的な上視図である。
【図2】SOAおよびEDFAをブースターアンプに用いた時の誤り率特性である。
【図3】第1の実施形態に係る光増幅装置の傾斜導波路の模式的な拡大図である。
【図4】第1の実施形態に係る光増幅装置の石英系光導波路の模式的な断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る光増幅装置のUターン導波路の模式的な断面図である。
【図6】第1の実施形態の係る光増幅装置が有する、第1の実施形態に係るSOAの模式的な断面図である。
【図7】第1の実施形態に係るSOAにおける閉じ込め係数と利得の非線形性の関係を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係るSOAにおけるメサ幅と利得の非線形性の関係を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係るSOAの長さと利得の非線形性の関係を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るSOAの模式的な断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るSOAの模式的な上視図である。
【図12】第3の実施形態に係るSOAの利得クランプ導波路における模式的な断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係るSOAの光導波路における模式的な断面図である。
【図14】第4の実施形態に係るSOAの利得クランプ導波路における模式的な断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態に係るSOAの模式的な上視図である。
【図16】本発明の第6の実施形態に係るSOAの模式的な上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光増幅装置100の模式的な上視図である。光増幅装置100は、サーキュレータ102、PLC−PBSチップ110(石英系平面光波回路−偏波ビームスプリッタチップ)及びSOA−COS140(半導体光増幅器−チップ・オン・サブマウント)を備える。PLC−PBSチップ110が有する導波路と、SOA−COS140が有する導波路とは、互いに結合されている。光増幅装置100は、SOA−PLCハイブリッド集積型偏波ダイバーシティ回路である。
【0010】
サーキュレータ102は、入射光の入力及び出射光の出力を行う。光増幅装置100に入力INから入力された入射光は、サーキュレータ102によって、入力ポート112に伝播される。入射光は非偏光の光である。また、出力ポート114からサーキュレータ102に伝播された出射光は、サーキュレータ102によって、出力OUTから出力される。
【0011】
PLC−PBSチップ110は、MZI124(マッハツェンダー干渉計回路)、石英系光導波路126、石英系光導波路127、スリット130、半波長板132、石英系光導波路144、石英系光導波路145、及び、傾斜導波路146を有する。MZI124は、入力ポート112、出力ポート114、カプラ116、一対のヒーター122、TM出力ポート118、及び、TE出力ポート120を有する。
【0012】
一対のヒーター122は、MZI124の2本のアームのそれぞれに配置され、カプラ116を介して、入力ポート112及び出力ポート114に結合される。また、ヒーター122は、入力ポート112及び出力ポート114の反対側で、カプラ116を介して、TM出力ポート118及びTE出力ポート120に結合される。
【0013】
TM出力ポート118に結合された石英系光導波路126は、半波長板132を介して、石英系光導波路144に結合される。半波長板132は、スリット130に形成され、石英系光導波路126と石英系光導波路144との間に設けられる。半波長板132によって、TM偏光がTE偏光に変換される。石英系光導波路144は、傾斜導波路146に結合される。TE出力ポート120に結合された石英系光導波路127は、スリット130を介して、石英系光導波路145に結合される。石英系光導波路145は、傾斜導波路146に結合される。石英系光導波路144、石英系光導波路145及び傾斜導波路146は、埋込メサ構造を有する。
【0014】
MZI124は、2本のアームの間にΔΦの位相差を有する。MZI124において複屈折が起こり、TE偏光の光及びTM偏光の光の、それぞれのΔΦは、互いに異なる。TE偏光の該位相差をΔΦTE、TM偏光の該位相差をΔΦTMとすると、|ΔΦTE−ΔΦTM|=(2π/λ)B・Lで表される。ここで、λは波長、BはMZI中の複屈折率、LはMZI124のアーム長である。|ΔΦTE−ΔΦTM|=(2n+1)π(n:整数)であるとき、サーキュレータ102からMZI124に入力された非偏光の入射光は、MZI124において偏光成分が分岐される。これにより、MZI124において、TE偏光の光と、TE偏光と直交する偏光であるTM偏光の光に分割される。TE偏光の光はTE出力ポート120へ出力され、TM偏光の光は他方のTM出力ポート118へ出力される。TM出力ポート118から出力されたTM偏光の光は、半波長板132によってTE偏光の光に変換される。
【0015】
SOA−COS140は、シリコンベンチ142及びSOAチップ148を有する。SOAチップ148は、シリコンベンチ142上に実装される。シリコンベンチ142への実装は、例えばハンダ実装である。SOAチップ148は、半導体光導波路150、2つのSOA154、及び、Uターン導波路152を有する。傾斜導波路146は、石英系光導波路144と半導体光導波路150との間に、石英系光導波路144に対して傾斜して形成される。
【0016】
半導体光導波路150のSOA154側の一部は、石英系光導波路144に平行に形成される。半導体光導波路150の傾斜導波路146側の一部は、半導体光導波路150の他の部分に対して傾斜して形成される。半導体光導波路150の一方の端部はSOA154に結合される。2つのSOA154の、半導体光導波路150に結合された端部とは反対の端部は、それぞれ、円弧形状を有するUターン導波路152に結合される。すなわち、2つのSOA154は、半導体のUターン導波路152を介して結合される。Uターン導波路152は、導波路サイドの半導体コアがエッチングされたハイメサ構造を有する。
【0017】
Uターン導波路152が円弧形状を有するUターン部を形成するので、半導体光導波路150のSOA154と反対側の端部は、SOAチップ148の同一の辺に形成される。これにより、SOA−COS140のサイズを小さくすることができる。Uターン導波路152はハイメサ構造を有するので光の閉じ込めが強く、例えばUターン導波路152の曲率半径を、例えば、125μmとしても、曲げによる光損失を抑制することができる。これにより、光増幅特性および雑音特性の両方を良好にすることができる。
【0018】
石英系光導波路126から出力され、半波長板132によって変換されたTE偏光の光は、SOA−COS140の導波路の、半波長板132側の端部に入力される。すなわち、半波長板132によってTE偏光に変換された光は、石英系光導波路144及び傾斜導波路146を介して、半波長板132側の半導体光導波路150に入力される。半波長板132側の石英系光導波路144に入力されたTE偏光の光は、2つのSOA154で増幅されて、SOA−COS140の導波路の、入力された端部とは反対の他方の端部から出力される。
【0019】
半波長板132が設けられていない側の石英系光導波路127から出力されたTE偏光の光は、SOA−COS140の導波路の半波長板132が設けられていない側の端部に入力される。すなわち、石英系光導波路127から出力された光は、石英系光導波路145に入力される。石英系光導波路145に入力されたTE偏光の光は、2つのSOA154で増幅されて、SOA−COS140の導波路の、入力された端部とは反対の一方の端部から出力される。以上のようにSOA−COS140は、導波路の両端から光が入力され、光が入力された端部とは反対の両端から増幅された光が出力される双方向入力型である。
【0020】
SOA−COS140は、SOA−COS140に入力される光の強度の範囲内において、入力される光の単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下である。ここで、SOA−COS140に入力される光の強度の範囲は、例えば、−30dBm以上0dBm以下である。また、入力される光の単位強度当たりの利得の変化は、入力される光の強度が1dBm上昇したときの、利得の上昇値(dB)で表される。すなわち、入力される光の単位強度当たりの利得の変化は、入力される光の強度(dBm)を横軸にとり、利得(dB)を縦軸にとったときの、グラフの傾きが単位強度当たりの利得の変化に当たる。また、入力される光の単位強度当たりの利得の変化は、利得(dB)を入力される光の強度(dBm)の関数で表す式の微分値に相当する。光増幅装置100のPDGは、近似的に、PDG(dB)=ΔG(dB/dBm)×3(dBm)と表される。ここで、ΔGは、単位強度当たりの利得の変化の絶対値(dB/dBm)である。
【0021】
ここで、偏波ダイバーシティ回路において、利得が最大になるのは、TM出力ポート118における光の強度と、TE出力ポート120における光の強度が等しいときである。この時の出力光は、Pout(dBm)={Pin(dBm)−3}+{ΔG×3+G(dB)}+3(dB)と表現できる。ここでPoutおよびPinは、それぞれ、出力光および入力光について、TEモードの光の強度とTMモードの光の強度とを足し合わせたトータルの強度である。Gは入力Pinにおける利得である。上記の式の右辺第1項目である、{Pin(dBm)−3}は、TE及びTMの各ポートに入力される光強度を示している。入力光は、TE及びTMポートに等分配されるので、{Pin(dBm)−3}となる。上記の式の右辺第2項目である、{ΔG×3+G(dB)}は、TE及びTM各ポートで得られる利得を表している。上記の式の右辺第3項目である3dBは、サーキュレータ102の出力ポートでTEポートとTMポートが合波されて2倍になることに対応し、上記の式は、3(dB)を足した式となっている。一方、利得が最小になるは、入射光がTM出力ポート118及びTE出力ポート120の一方にのみ光が出力されるときである。このときの光出力は、Pout(dBm)=Pin(dBm)+G(dB)と表現できる。偏波ダイバーシティ回路において、利得が最大になるときの式から、利得が最小になるときの式を差し引いて、PDGを得ると、ΔG×3(dB)となり、上記のPDG(dB)=ΔG(dB/dBm)×3(dBm)と同一となる。利得の非線形性が大きいSOA−COS140においては、上記のような、利得が最大の場合と最小の場合の差がPDGとなる。したがって、偏波ダイバーシティにおけるPDGは、上記のように近似される。すなわち、SOA−COS140に入力される光の強度の範囲内において、単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下であれば、PDGは0.5dB以下となる。
【0022】
光増幅装置100に対する入射光の偏波方向がランダムに変化すると、PDGによって利得が変化するので、光増幅装置100からの出射光の強度が変化して、エラーの原因となる。PDGが0.5dB以下であれば他の実用的な光増幅器と同等となり、光通信用途に許容される水準となる。図2にPDG0.5dBを有するSOA(半導体光増幅器)を入力信号の増幅用光アンプ(ブースターアンプ)に用いた際の誤り特性を示す。図2には、すでに実用的なシステムに用いられているEDFA(エルビウム添加光ファイバ増幅器)を同様の用途として用いた時の誤り率も示している。SOAとEDFAへの入力強度は、−2dBmであり、出力は11dBmに設定している。光アンプの後に可変減衰器を挿入することにより、光検出器の受信強度を変化させて誤り率を測定した。図2より、SOAのPDGが0.5dB以下であれば、EDFAと同様の特性が実現できていることがわかる。すなわち、PDGが0.5dB以下であれば、伝送光ファイバを介さないBack−to−Backの誤り率特性において、誤り率が10−9以下となるので、データ信号を正確に送ることができる。誤り率が10−9以下であれば、電気信号に変換後、誤り訂正符号を用いることにより、エラー信号を訂正できる。第1の実施形態に係る、SOA−PLCハイブリッド集積型偏波ダイバーシティ回路である光増幅装置100は、入力される光の単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下であるSOA−COS140を有するので、PDGが0.5dB以下となり、他の実用的な光増幅器を用いたときと同等の特性が得られる。
【0023】
ここで、SOA−COS140の導波路の一方の端部から一方のSOA154までの導波路の光路長と、SOA−COS140の導波路の他方の端部から他方のSOA154までの導波路の光路長とは、等しい。すなわち、半波長板132が設けられている側の半導体光導波路150の長さと、半波長板132が設けられていない側の半導体光導波路150の長さとが等しい。ここで、導波路の長さとは、導波路の光路方向の長さをいう。これにより、半波長板132が設けられている側の半導体光導波路150からSOA154に入力される光の強度と、半波長板132が設けられていない側の半導体光導波路150からSOA154に入力される光の強度との差が小さくなる。ここで、SOA154における利得は、入力される光の強度によって異なることがある。光増幅装置100においては、2つのSOA154に双方向から入力される光の強度の差が小さいので、双方向からSOA154に入力される光の利得の差が小さくなる。したがって、利得の変動を抑えて、信号のエラーを少なくすることができる。
【0024】
さらに、半波長板132が設けられている側の石英系光導波路144、傾斜導波路146及び半導体光導波路150の長さの和と、半波長板132が設けられていない側の石英系光導波路145、傾斜導波路146及び半導体光導波路150の長さの和が等しくてもよい。これにより、石英系光導波路144に入力されて、石英系光導波路144側のSOA154に入力されるTE偏光の光と、石英系光導波路145に入力されて、石英系光導波路145側のSOA154に入力されるTE偏光の光との、強度の差がさらに小さくなる。したがって、双方向からSOA154に入力される光の利得の差がさらに小さくなり、利得の変動を抑えて、信号のエラーを少なくすることができる。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係る光増幅装置100の傾斜導波路146の模式的な拡大図である。図3には、石英系光導波路144の傾斜導波路146側の一部、及び、半導体光導波路150の傾斜導波路146側の一部も示した。
【0026】
傾斜導波路146の中心軸204は、SOAチップ148とPLC−PBSチップ110との接合面208に垂直な直線に対して、所定の角度(θ1)を有する。石英系光導波路144の中心軸202は、接合面208に垂直な直線に平行に形成され、傾斜導波路146の中心軸204は、石英系光導波路144の中心軸202に対して所定の角度(θ1)を有する。これにより、石英系光導波路144に入力された光は、接合面208に斜めに入射する。
【0027】
半導体光導波路150は、幅広部218、SSC216(スポットサイズ変換器)、曲げ部214、及び、幅狭部212を有する。半導体光導波路150の幅広部218及びSSC216における中心軸206は、接合面208に垂直な直線に対して、所定の角度(θ2)を有する。
【0028】
傾斜導波路146における屈折率をnとし、半導体光導波路150における屈折率をnとすると、スネルの法則より、nsinθ1=nsinθ2という関係を満たすように、θ1、θ2が決定される。接合面208上には反射防止コート210がコーティングされる。θ1は5°〜9°が好ましく、θ2は12°〜17°が好ましい。
【0029】
半導体光導波路150は、幅狭部212における幅を保ったまま、曲げ部214において曲げられる。半導体光導波路150の図示されていない部分は、幅狭部212における半導体光導波路150と同じ幅を有する。ここで、導波路の幅とは、光路方向に垂直で、導波路が形成されている基板の表面に平行な面内の幅をいう。
【0030】
SSC216は、テーパー状の形状を有する光導波路(幅広フレアー型SSC)である。これにより、石英系光導波路144のモードフィールドと、半導体光導波路150のモードフィールドとをマッチさせる。半導体光導波路150は、SSC216で幅が広がり、幅広部218においては、傾斜導波路146と同じ幅を有する。
【0031】
第1の実施形態に係る光増幅装置100では、SSC216は、SOAチップ148に形成されているが、PLC−PBSチップ110に形成されてもよい。SSC216によって、導波路の結合部における結合ロスを低減し、高い結合効率を得ることができる。
【0032】
以上、石英系光導波路144に結合された傾斜導波路146及び半導体光導波路150の説明を行ったが、石英系光導波路145に結合された傾斜導波路146及び半導体光導波路150も同様である。
【0033】
図4は、第1の実施形態に係る光増幅装置100の石英系光導波路144及び石英系光導波路145の模式的な断面図である。すなわち、図1のIV−IVにおける模式的な断面図である。PLCプラットフォーム302上に、下部クラッド層304が形成される。下部クラッド層304上の一部にコア層306が形成される。コア層306は、石英系の材料で形成されて、石英系光導波路144及び石英系光導波路145となる。
【0034】
コア層306上、及び、下部クラッド層304上のコア層306が形成されていない領域上に上部クラッド層308が形成される。すなわち、石英系光導波路145及び傾斜導波路146は、埋込メサ構造を有する。下部クラッド層304及び上部クラッド層308は、コア層306より屈折率の低い石英系の材料で形成される。下部クラッド層304及び上部クラッド層308は、同じ材料で形成されてもよい。傾斜導波路146は、石英系光導波路144及び石英系光導波路145と、同様の断面構造を有してよい。
【0035】
図5は、第1の実施形態に係る光増幅装置100のUターン導波路152の模式的な断面図である。すなわち、図1のV−Vにおける模式的な断面図である。シリコンベンチ142上に半導体基板310が設けられる。半導体基板310は、化合物半導体で形成される。半導体基板310上の一部に下部クラッド層312が形成される。下部クラッド層312上にコア層314が形成される。コア層314上に上部クラッド層316が形成される。コア層314は化合物半導体で形成される。下部クラッド層312及び上部クラッド層316は、コア層314より屈折率が小さい化合物半導体で形成される。すなわち、Uターン導波路152はハイメサ構造を有する。一例として、半導体基板310がInPで形成され、コア層314がInGaAsPで形成され、下部クラッド層312及び上部クラッド層316がInPで形成される。
【0036】
光導波路に設ける折り返し部の曲率半径は、コアとクラッドの比屈折率の差が大きいほど小さくすることができる。そして、Uターン導波路152は、ハイメサ構造を有するので、コア層314と、その両側の空気との比屈折率の差が、例えば30〜40%以上と大きくなる。そこで、Uターン導波路152を上面から見たときの曲率半径を、例えば、125μmと小さくできる。すなわち、石英系PLCチップ上でUターン型の光導波路の折り返し構造を形成する場合に比べて、SOA−COS140においてハイメサ構造を有するUターン導波路152による折り返し構造を形成する方がSOA−COS140のサイズを小さくすることができる。したがって、光増幅装置100のサイズを小さくすることができる。
【0037】
図6は、第1の実施形態の係る光増幅装置100が有する、第1の実施形態に係るSOA154の、導波路方向に垂直な方向の模式的な断面図である。SOA154は、シリコンベンチ142上に搭載された半導体基板310に形成される。SOA154は、半導体基板310、下部クラッド層312、活性層318、埋込層320、電流阻止層322、上部クラッド層316、コンタクト層324、保護層328、p側電極326及びn側電極332を備える。
【0038】
半導体基板310の裏面にn側電極332が形成され、シリコンベンチ142上にn側電極332が接する。半導体基板310は、化合物半導体で形成される。半導体基板310上に下部クラッド層312が形成される。下部クラッド層312上の一部に活性層318が形成される。活性層318は、ウェル層とバリア層とを交互に積層した、多重量子井戸構造を有する。例えば、活性層318は、5層のウェル層を有し、ウェル層の厚さが3.9nmであり、バリア厚の厚さが10nmの多重量子井戸構造である。一例として、活性層318は、GaInAsPで形成される。
【0039】
下部クラッド層312上に、活性層318が形成されていない領域では、下部クラッド層312が厚さ方向に一部除去される。すなわち、下部クラッド層312は、活性層318の下の領域で、活性層318が形成されていない領域より、厚い。活性層318が形成されていない領域で、下部クラッド層312上に埋込層320が形成される。埋込層320上に電流阻止層322が形成される。例えば、埋込層320はp−InPで形成される。電流阻止層322は、例えば、n−InPで形成される。活性層318及び電流阻止層322上に上部クラッド層316が形成される。電流阻止層322の上面は、活性層318の上面より上側に突出する。すなわち、活性層318上の上部クラッド層316は、電流阻止層322上の活性層318より厚い。
【0040】
上部クラッド層316上であって、活性層318の上方にコンタクト層324が形成される。コンタクト層324上及び上部クラッド層316上に保護層328が形成される。コンタクト層324上の一部で保護層328が除去されて、p側電極326が形成される。p側電極326は、保護層328の開口部から、保護層328上まで形成される。すなわち、p側電極326の幅は、活性層318の幅より広くてよい。ここで幅とは、活性層318における光路の方向、及び、活性層318の厚さ方向に垂直な方向の長さをいう。p側電極326及びn側電極332から注入されたホールおよび電子のキャリアによって反転分布が形成され、活性層318において、光が増幅される。
【0041】
図7は、第1の実施形態に係るSOA154における閉じ込め係数(Γ)と利得の非線形性の関係を示す図である。閉じ込め係数(Γ)は、活性層318に閉じ込められた光の、SOA154における光に対する比をいう。図7に示した結果は、SOA154のメサ幅が2μmであり、SOA長が1000μmであり、p側電極326及びn側電極332から注入される電流が200mAであるときの結果である。ここで、メサ幅とは、光路長方向、及び、注入される電流の方向に垂直な方向の活性層318の幅をいう。また、SOA長とは、SOA154において、活性層318、p側電極326、及び、n側電極332の、いずれもが形成されている領域の、光路長方向に平行な方向の長さをいう。すなわち、SOA154において、SOA長の範囲で、光が増幅される。
【0042】
図7の上側のグラフは、閉じ込め係数(Γ)を1%から5%まで変化させたときの、SOA154に入力される光の強度と、利得の関係を示す。横軸は、SOA154に入力される光の強度(dBm)であり、縦軸は利得(dB)である。入力される光の強度が0dBより小さい領域では、利得の入力される光の強度に対する依存性が小さく、入力される光の強度が−10dB以下では、入力される光の強度に利得が依存しない。入力される光の強度が大きくなるにつれて、利得が入力される光の強度に依存する。また、入力される光の強度が大きくなると利得が小さくなる。
【0043】
図7の下側のグラフは、入力される光の強度が0dBのときの、閉じ込め係数(Γ)と利得の非線形性の関係を示す。0dBは、長距離光通信におけるブースタアンプ、およびプリアンプに入力する最大パワーである。横軸は、閉じ込め係数(Γ)であり、縦軸は利得の非線形性(dB/dBm)である。ここで利得の非線形性とは、入力される光の単位強度当たりの利得の変化量をいう。すなわち、利得の非線形性は、横軸に入力される光の強度、縦軸に利得をとったときの、グラフの傾きの値である。閉じ込め係数が小さいほど、利得の非線形性の絶対値が小さくなる。
【0044】
利得の非線形性は、閉じ込め係数(Γ)に対して線形的に減少する傾向にある。閉じ込め係数1.5%以下で、SOA154の利得の非線形性は0.13dB/dBm以下となる。また、閉じ込め係数1.6%以下で、SOA154の利得の非線形性は0.15dB/dBm以下となる。したがって、光増幅装置100のPDGが0.5dB以下となるので、光通信で許容される値となる。
【0045】
図8は、第1の実施形態に係るSOA154におけるメサ幅と利得の非線形性の関係を示す図である。図8に示した結果は、SOA154のSOA長が1000μmであり、閉じ込め係数(Γ)が2.5%であり、p側電極326及びn側電極332から注入される電流が200mAであるときの結果である。
【0046】
図8の上側のグラフは、メサ幅を2μmから8μmまで変化させたときの、SOA154に入力される光の強度と、利得の関係を示す。横軸は、SOA154に入力される光の強度(dBm)であり、縦軸は利得(dB)である。結果の傾向は、図7の上側のグラフと同様である。図8の下側のグラフは、入力される光の強度が0dBのときの、メサ幅と利得の非線形性の関係を示す。横軸は、メサ幅であり、縦軸は利得の非線形性(dB/dBm)である。メサ幅が広くなると、利得の非線形性が低減される。ただし、メサ幅が2.5μmより大きくなると、マルチモードとなる。したがって、長距離の光通信用アンプとしては、SOA154のメサ幅が2.5μm以下であることが好ましい。
【0047】
図9は、第1の実施形態に係るSOA154の長さと利得の非線形性の関係を示す図である。すなわち、SOA154のSOA長を変化させたときの、SOA154に入力される光の強度を変化させたときの利得及び利得の非線形性を示した。図9に示した結果は、SOA154の閉じ込め係数(Γ)が2.5%であり、メサ幅が2μmであり、p側電極326及びn側電極332から注入される電流が200mAであるときの結果である。
【0048】
図9の上側のグラフは、SOA長を500μmから1000μmまで変化させたときの、SOA154に入力される光の強度と、利得の関係を示す。横軸は、SOA154に入力される光の強度(dBm)であり、縦軸は利得(dB)である。結果の傾向は、図7及び図8の上側のグラフと同様である。図9の下側のグラフは、入力される光の強度が0dBのときの、SOA長と利得の非線形性の関係を示す。横軸は、SOA長であり、縦軸は利得の非線形性(dB/dBm)である。SOA長が長くなると、利得の非線形性が大きくなる。
【0049】
利得の非線形性は、SOA長に対して減少する傾向にある。SOA長が550μm以下で、SOA154の利得の非線形性は0.13dB/dBm以下となる。また、SOA長が600μm以下で、SOA154の利得の非線形性は0.16dB/dBm以下となる。したがって、光増幅装置100のPDGが0.5dB以下となるので、光通信で許容される値となる。
【0050】
以上の結果から、SOA154の光閉じ込め係数をΓとし、SOA長をLとすると、Γ×L<1500%μmであることが好ましい。これにより、SOA154の利得の非線形性は0.16dB/dBm以下となり、光増幅装置100のPDGが0.5dB以下となるので、光通信で許容される値となる。
【0051】
図10は、本発明の第2の実施形態に係るSOA154の模式的な断面図である。光増幅装置100のSOA154は、図6に示した第1の実施形態に係るSOA154に限定されず、図10に断面図を示した第2の実施形態に係るSOA154を用いてもよい。図10において、図6と同一の符号を付した要素は、図6において説明した要素と同一の機能および構成を有してよい。第2の実施形態に係るSOA154は、下部クラッド層312、活性層318、上部クラッド層316、埋込層320、及び、電流阻止層322の形状、並びに、反射膜330を有すること以外は、第1の実施形態に係るSOA154と、同様である。
【0052】
SOA154は、シリコンベンチ142上に搭載された半導体基板310に形成される。SOA154は、半導体基板310、下部クラッド層312、活性層318、埋込層320、電流阻止層322、上部クラッド層316、コンタクト層324、保護層328、反射膜330、p側電極326及びn側電極332を備える。
【0053】
下部クラッド層312の上側の一部、活性層318、及び、上部クラッド層316の下側の一部は、テーパー形状を有する。また、活性層318が形成されていない領域の下部クラッド層312の上面、活性層318の側面、及び、活性層318上であって電流阻止層322に挟まれた領域に形成された上部クラッド層316の側面は、下に凸の曲面を有する。
【0054】
埋込層320は、活性層318が形成されていない領域の下部クラッド層312の上面、活性層318の側面、及び、活性層318上であって電流阻止層322に挟まれた領域に形成された上部クラッド層316の側面に接して形成される。また、電流阻止層322の厚さは、SOA154の光路の中心に近いほど薄い。電流阻止層322は埋込層320上に形成されるしたがって、埋込層320と電流阻止層322との界面は、下に凸の曲面を有する。電流阻止層322の上面は、半導体基板310の上面に平行である。
【0055】
下部クラッド層312、埋込層320、電流阻止層322、上部クラッド層316、及び保護層328の両端には、光を反射する反射膜330が形成される。p側電極326及びn側電極332からキャリアが注入されて、活性層318から放出された光が、反射膜330で反射される。これにより、SOA154の光路の方向と垂直な方向で、半導体基板310の表面に平行な方向に共振する。したがって、SOA154における利得は一定となる。すなわち、SOA154において、利得クランプされる。SOA154における利得が、SOA154に入力される光の強度に依存せず一定となるので、利得の非線形性が小さくなる。これによって、光増幅装置100のPDGが小さくなる。
【0056】
図11は、本発明の第3の実施形態に係るSOA154の模式的な上視図である。SOA154は、光導波路352、利得クランプ導波路354、回折格子356、及び、反射防止膜350を有する。利得クランプ導波路354の両側に、回折格子356が形成される。ここで、利得クランプ導波路354の両側とは、光路と垂直で、シリコンベンチ142の表面と平行な方向における両側をいう。利得クランプ導波路354の光路方向の両端には、光導波路352が結合される。光導波路352の、利得クランプ導波路354とは反対側の端部には反射防止膜350が形成される。すなわち、SOA154の光路方向の両端に反射防止膜350が形成される。反射防止膜350により、SOA154の両端における光の反射が抑えられる。SOA154のVI−VIにおける断面は、図6と同じ構造を有する。
【0057】
利得クランプ導波路354で発した光は、回折格子356で反射される。これにより、SOA154の光路の方向と垂直な方向で、シリコンベンチ142の表面に平行な方向に共振する。したがって、SOA154における利得は一定となる。すなわち、SOA154において、利得クランプされる。SOA154における利得が、SOA154に入力される光の強度に依存せず一定となるので、利得の非線形性が小さくなる。これによって、光増幅装置100のPDGが小さくなる。
【0058】
図12は、第3の実施形態に係るSOA154の利得クランプ導波路354における模式的な断面図である。すなわち、図12は、図11のXII−XIIにおける模式的な断面図である。図12において、図6と同一の符号を付した要素は、図6において説明した要素と同一の機能および構成を有してよい。SOA154は、シリコンベンチ142上に搭載された半導体基板310に形成される。SOA154は、利得クランプ導波路354における断面において、半導体基板310、下部クラッド層312、活性層318、上部クラッド層316、埋込層320、電流阻止層322、コンタクト層324、p側電極326、保護層328、及び、n側電極332を有する。
【0059】
半導体基板310上に下部クラッド層312が形成される。下部クラッド層312上に活性層318が形成される。活性層318の、光路となる中央の領域を挟んだ両側の一部で、活性層318が除去される。活性層318が除去された領域で下部クラッド層312が厚さ方向に一部除去される。すなわち、活性層318が除去された領域の下側は、他の領域に比べて、下部クラッド層312が薄い。活性層318が除去された領域に、埋込層320が形成される。埋込層320上に電流阻止層322が形成される。
【0060】
埋込層320及び電流阻止層322で挟まれた領域が利得クランプ導波路354となる。活性層318の光路となる中央の領域に対して、埋込層320及び電流阻止層322を挟んだ反対側の領域で、活性層318に、複数のInP埋込層360がInPで形成される。InP埋込層360は、活性層318の上面から深さ方向に、所定の深さまで形成される。また、InP埋込層360は、光路の方向に沿って、所定の間隔で形成される。複数のInP埋込層360が形成された活性層318は回折格子356として働き、光を光路と垂直方向に反射する。ただし、回折格子356は、複素屈折率が周期的に摂動する構成であればよく、InP埋込層360が形成された活性層318に限られない。
【0061】
活性層318の上面より電流阻止層322の上面が上方に突出している。活性層318及び電流阻止層322上に、上部クラッド層316が形成される。上部クラッド層316上にコンタクト層324が形成される。電流阻止層322の上方でコンタクト層324が除去されて、保護層328が形成される。コンタクト層324上に、p側電極326が形成される。p側電極326及びn側電極332からキャリアが注入されて活性層318で発した光は、複数のInP埋込層360を有する回折格子356で反射されて共振するので、利得クランプ導波路354で利得クランプされる。
【0062】
図13は、本発明の第4の実施形態に係るSOA154の光導波路352における模式的な断面図である。第4の実施形態に係るSOA154の上面図は、第3の実施形態に係るSOA154の上面図である図11と同じである。図13は、図11のVI−VIにおける、第4の実施形態に係るSOA154の模式的な断面図である。図13において、図6と同一の符号を付した要素は、図6において説明した要素と同一の機能および構成を有してよい。
【0063】
シリコンベンチ142に搭載された半導体基板310にSOA154が形成される。SOA154は、光導波路352において、半導体基板310、下部クラッド層312、活性層318、上部クラッド層316、コンタクト層324、p側電極326、保護層328、及び、n側電極332を有する。第4の実施形態に係るSOA154の光導波路352における断面は、埋込層320及び電流阻止層322を有さず、上部クラッド層316及び保護層328の形状が異なる点で、図6に示した断面と異なる。
【0064】
上部クラッド層316は、光路に沿った中央部分の両側で、厚さ方向に一部が除去される。上部クラッド層316が厚さ方向に一部除去された領域では、他の領域より上部クラッド層316が薄い。そして、上部クラッド層316が除去された領域で、上部クラッド層316上に保護層328が形成される。保護層328で挟まれた領域で、他の領域より厚い上部クラッド層316上にコンタクト層324が形成される。コンタクト層324上にp側電極326が形成される。保護層328の上面は、コンタクト層324の上面より上方に突出している。p側電極326の幅は、コンタクト層324の幅より広い。
【0065】
図14は、第4の実施形態に係るSOA154の利得クランプ導波路354における模式的な断面図である。すなわち、図14は、図11のXII−XIIにおける、第4の実施形態に係るSOA154の模式的な断面図である。図14において、図12と同一の符号を付した要素は、図6において説明した要素と同一の機能および構成を有してよい。シリコンベンチ142に搭載された半導体基板310にSOA154が形成される。SOA154は、利得クランプ導波路354において、半導体基板310、下部クラッド層312、活性層318、InP埋込層360、上部クラッド層316、コンタクト層324、p側電極326、保護層328、及び、n側電極332を有する。第4の実施形態に係るSOA154の利得クランプ導波路354における断面は、埋込層320及び電流阻止層322を有さず、上部クラッド層316及び保護層328の形状が異なる点で、図12に示した断面と異なる。
【0066】
上部クラッド層316は、光路に沿った中央部分の両側の一部で、他の領域より薄い。そして、上部クラッド層316が他の領域より薄い領域で、上部クラッド層316上に保護層328が形成される。他の領域より上部クラッド層316が厚い領域で、上部クラッド層316上にコンタクト層324が形成される。コンタクト層324上にp側電極326が形成される。保護層328の上面は、コンタクト層324の上面より上方に突出している。p側電極326の幅は、コンタクト層324の幅より広い。p側電極326及びn側電極332から注入されるキャリアは、保護層328によって、活性層318の中央部分に集中する。キャリアが注入されて活性層318で発した光は、複数のInP埋込層360を有する回折格子356で反射されて共振するので、利得クランプ導波路354で利得クランプされる。SOA154における利得が、SOA154に入力される光の強度に依存せず一定となるので、利得の非線形性が小さくなる。これによって、光増幅装置100のPDGが小さくなる。
【0067】
図15は、本発明の第5の実施形態に係るSOA154の模式的な上視図である。SOA154は、p側電極326、活性層318、及び、ブラッグクレーティング362を有する。図15において、図6及び図11と同一の符号を付した要素は、図6及び図11において説明した要素と同一の機能および構成を有してよい。第5の実施形態に係るSOA154は、p側電極326が形成されている領域で、図6に示した断面と同じ構造を有する。活性層318の光路に沿った両端には、ブラッグクレーティング362が形成される。ブラッグクレーティング362は、SOA154の光路に沿った両端に形成されて、SOA154の光路に沿った方向に副屈折率の周期的な摂動を与える。これにより、p側電極326、及び、図15には現れないn側電極からキャリアが注入されて、活性層318で発した光は、ブラッグクレーティング362で反射されて共振するので、SOA154で利得クランプされる。SOA154における利得が、SOA154に入力される光の強度に依存せず一定となるので、利得の非線形性が小さくなる。これによって、光増幅装置100のPDGが小さくなる。
【0068】
図16は、本発明の第6の実施形態に係るSOA154の模式的な上視図である。SOA154は、導波路372、カプラ374、アーム376、カプラ378、アーム380、増幅部382、増幅部384、導波路386、制御光用光源388、導波路390、導波路392を有する。アーム376に、光を増幅する増幅部382が形成される。アーム380に、光を増幅する増幅部384が形成される。増幅部382及び増幅部384はSOAである。アーム376及びアーム380は互いに平行に形成され、それぞれの両端にカプラ374及びカプラ378が形成される。アーム376に対して、カプラ374を挟んで反対側には、導波路372が形成される。アーム376に対して、カプラ378と反対側には、導波路390が形成される。導波路390のカプラ378と反対側の端部には、制御光用光源388が形成される。制御光用光源388は例えばDFBレーザである。アーム380に対して、カプラ374を挟んで反対側には、導波路392が形成される。アーム380とカプラ378を挟んで反対側には、導波路386が形成される。
【0069】
制御光用光源388から導波路390及びカプラ378を介して増幅部382及び増幅部384に入力される光量が、制御光用光源388を制御することで制御される。これにより、増幅部382及び増幅部384における利得を制御できる。SOA154に入力される光の強度に応じて、制御光用光源388を制御して、SOA154における利得の非線形性を小さくして、光増幅装置100のPDGを小さくすることができる。
【0070】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0071】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0072】
100 光増幅装置、102 サーキュレータ、110 PLC−PBSチップ、112 入力ポート、114 出力ポート、116 カプラ、118 TM出力ポート、120 TE出力ポート、122 ヒーター、124 MZI、126 石英系光導波路、127 石英系光導波路、130 スリット、132 半波長板、140 SOA−COS、142 シリコンベンチ、144 石英系光導波路、145 石英系光導波路、146 傾斜導波路、148 SOAチップ、150 半導体光導波路、152 Uターン導波路、154 SOA、202 中心軸、204 中心軸、206 中心軸、208 接合面、210 反射防止コート、212 幅狭部、214 曲げ部、216 SSC、218 幅広部、302 PLCプラットフォーム、304 下部クラッド層、306 コア層、308 上部クラッド層、310 半導体基板、312 下部クラッド層、314 コア層、316 上部クラッド層、318 活性層、320 埋込層、322 電流阻止層、324 コンタクト層、326 p側電極、328 保護層、330 反射膜、332 n側電極、350 反射防止膜、352 光導波路、354 利得クランプ導波路、356 回折格子、360 InP埋込層、362 ブラッグクレーティング、372 導波路、374 カプラ、376 アーム、378 カプラ、380 アーム、382 増幅部、384 増幅部、386 導波路、388 制御光用光源、390 導波路、392 導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の入力及び出射光の出力を行う入出力部と、
前記入出力部から入力された前記入射光の偏光成分を分岐して、第1の偏光を有する第1偏光モード光、及び、前記第1の偏光と異なる第2の偏光を有する第2偏光モード光を出力する偏光分離部と、
前記第1偏光モード光が入力され、前記第1の偏光を前記第2の偏光に変換して、第1偏光変換光を出力する偏光変換部と、
導波路の一方の端部に入力された前記第1偏光変換光が増幅されて他方の端部から出力され、前記他方の端部に入力された前記第2偏光モード光が増幅されて前記一方の端部から出力される、光増幅部と、を備え、
前記光増幅部に入力される光の、単位強度当たりの利得の変化の絶対値が、0.16dB/dBm以下である光増幅装置。
【請求項2】
前記光増幅部は、
第1半導体光増幅器と、
前記光増幅部の前記一方の端部と前記第1半導体光増幅との間を接続する第1導波路と、
前記第1半導体光増幅器に直列に接続された第2半導体光増幅器と、
前記光増幅器の前記他方の端部と前記第2半導体光増幅器との間を接続する第2導波路と、を備え、
前記第1導波路と、前記第2導波路との光路長が互いに等しい
請求項1に記載の光増幅装置。
【請求項3】
前記偏光分離部が、石英系平面光波回路で形成され、埋込メサ構造の導波路を有するマッハツェンダー干渉計回路を有し、
前記2つの半導体増幅器の間が、ハイメサ構造の導波路を有するUターン部光導波路で接続されている
請求項2に記載の光増幅装置。
【請求項4】
前記光増幅部は、
前記第1偏光変換光及び前記第2偏光モード光が伝播する活性層と、
前記活性層にキャリアを注入する電極と、を有し、
前記活性層に閉じ込められた光と、前記光増幅部における光との比である閉じ込め係数をΓ%とし、
前記電極の長さをLμmとすると、
Γ×L<1500%μmである
請求項1から3のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項5】
前記光増幅部は、
前記第1偏光変換光及び前記第2偏光モード光が伝播する活性層と、
光を反射する一対の光反射部と、を有し、
前記一対の光反射部で光が反射されて前記活性層で共振する
請求項1から3のいずれか一項に記載の光増幅装置。
【請求項6】
前記一対の光反射部は、前記活性層を挟んで両側に形成され、前記活性層における前記第1偏光変換光及び前記第2偏光モード光が伝播する方向に垂直な方向に光を反射する請求項5に記載の光増幅装置。
【請求項7】
前記一対の光反射部は、前記活性層に接して形成され、前記活性層における前記第1偏光変換光及び前記第2偏光モード光が伝播する方向と平行な方向に光を反射する請求項5に記載の光増幅装置。
【請求項8】
前記第1の偏光がTM偏光であり、
前記第2の偏光がTE偏光である請求項1から7のいずれか一項に記載の光増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−58628(P2013−58628A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196389(P2011−196389)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】