説明

光学フィルム、その製造方法、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】重合性不飽和結合を多く有する分子を含み、有機溶剤を使用した塗布液を塗布して、膜厚が均一で良好な面状を有し、点欠陥がない塗膜が形成された光学フィルム及び該フィルムの製造方法、並びに、それを用いた反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置を提供する。
【解決手段】連続搬送される長尺状支持体に一層以上の膜を形成して光学フィルムを製造する方法であり、その内の一層以上を、重合性不飽和結合を有する化合物を含む塗布液をダイコート法により該塗布層の乾操膜厚が200nm以下になるように塗布し、かつ該塗布前に行われる塗布液の濾過用のフィルターの99.9%捕捉効率が1.0μm未満のフィルターである光学フィルムの製造方法、該方法で形成された光学フィルム、並びに、それを用いた反射防止フィルム、偏光板、画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及びその製造方法、該光学フィルムからなる反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、並びに該反射防止フィルム及び偏光板の少なくともいずれかを備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信関連機器・AV機器などの高性能化と普及に伴い、光学薄膜を使用した光学部品の需要が急拡大しており、光学薄膜を高い生産性で作成するニーズが高まっている。光学薄膜は可視光波長の1/4〜1倍の程度の光学膜厚(光学膜厚nd=物理膜厚×屈折率)であり、光学薄膜を単層あるいは多層積層することで様々な機能を持たせることが出来る。光学薄膜を用いた主な製品としては、バンドパスフィルター、ダイクロイックミラー、ダイクロイックフィルター、コールドミラー・フィルター、ビームスプリッター、反射防止膜、近赤外線カットフィルター、レーザーミラー、NDフィルター等が挙げられる。
光学薄膜としては、金属酸化物の透明薄膜を積層させた多層膜が従来から普通に用いられている。複数の透明薄膜を用いるのは、可視域でなるべく広い波長領域での光の反射を防止するためである。金属酸化物の透明薄膜は、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により形成されている。金属酸化物の透明薄膜は、光学薄膜として優れた光学的性質を有しているが、蒸着法やスパッタ法による製膜方法は、生産性が低く大量生産に適していない。
【0003】
蒸着法に代えて、塗布により光学薄膜を形成する方法が提案されている。特許文献1(特公昭60-59250号公報)は、微細空孔と微粒子状無機物とを有する反射防止層を開示している。反射防止層は、塗布により形成される。微細空孔は、層の塗布後に活性化ガス処理を行ない、ガスが層から離脱することによって形成される。特許文献2(特開昭59-50401号公報)は、支持体、高屈折率層および低屈折率層の順に積層した反射防止フィルムを開示している。同公報は、支持体と高屈折率層の間に中屈折率層を設けた反射防止フィルムも開示している。各塗布層は、ポリマーまたは無機微粒子を溶剤に溶解あるいは分散した塗布液の塗布により形成されている。
塗布では長尺支持体上に連続的に光学薄膜を形成する事が可能なため、より生産性高く光学薄膜を作成することが出来る。また、塗布のスピードを上げることで更に生産性を上げることが出来る。
塗布により光学薄膜を作成する際には、塗布の後に溶剤を取り除く乾燥工程及び塗膜を支持体上に固定する硬化工程が必要となる。硬化工程としては予め塗布液中に熱硬化性及び光硬化性の少なくともいずれかの素材を入れておき、加熱及び光照射の少なくともいずれかの手段で硬化させる工程が一般的である。生産性を上げるため高速で塗布する場合には、熱硬化は長い熱硬化工程が必要になるため、光照射や電子線ビーム照射による架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
【0004】
薄膜の塗布適性が高い塗布方式の一例として、グラビア塗布方式が挙げられる。グラビア塗布方式は凹凸の彫刻加工が施されたグラビアロール表面の余剰塗布液をドクターブレードを用いて掻き落とした後、グラビアロールの凹部に残った塗布液をフィルムに転写するというものである。
特許文献3(特開2003−322703号公報)では反射防止フィルムをマイクログラビア塗布方式で塗布し、80〜90nmの乾膜の塗設を行っている。
しかしながら、先述したグラビアコート法を用いて重合性不飽和結合を多く有する分子を含む塗布液を塗布すると、塗布後の面状が白っぽくなり、光学顕微鏡で観察すると直径1〜5μm程度の点欠陥が全面に発生する場合がある。この点欠陥の発生により、塗膜の品質は著しく低下してしまう。また、グラビア塗布方式を始めとする後計量塗布方式は長時間塗布する際の膜厚安定性が比較的低い欠点がある。特に有機溶剤を溶剤とする塗布液を塗布する際には塗布液の濃縮化に伴う膜厚変化が大きくなる問題が発生することがある。
【0005】
一方、ダイコート法は前計量塗布方式のため押し出された塗布液の量がそのまま塗り付けられ、かつ液が解放されている面積が極めて少ないため、長時間塗布する際の膜厚の変化が小さいという特徴を有する。また、ダイコート法を用いることにより塗布後の面状が前面にわたって白っぽくなる現象は抑制できるが、欠陥を完全になくすことができなかった。
従来塗布により製造される光学薄膜の製造においては、塗布前に塗布液の濾過が行われており、特許文献4(特開2003−121606号公報)では細孔径3μm程度のフィルターを用いて濾過が行われている。また、特許文献5(特開2004−45462号公報)では1μmのフィルターを用いて濾過が行われている。しかしながら、このような従来用いられていた細孔径のフィルターによる濾過では上記で示されるような点欠陥を完全に取り除くことが出来なかった。
【特許文献1】特公昭60-59250号公報
【特許文献2】特開昭59-50401号公報
【特許文献3】特開2003−322703号公報
【特許文献4】特開2003−121606号公報
【特許文献5】特開2004−45462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、支持体上に重合性不飽和結合を多く有する分子を含み、溶剤として主として有機溶剤を使用した塗布液を塗布して、膜厚が均一で、良好な面状を有し、点欠陥がない塗膜が形成された光学フィルムを提供することを目的とする。
さらに、本発明は、上記光学フィルムからなる反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、該反射防止フィルムまたは該偏光板を具備した画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、塗布方式としてダイコート法を用い、かつ一定の捕捉効率を満たしたフィルターを選択することで、重合性不飽和結合を多く有する分子を含む塗布液を点欠陥の発生無く、塗布することができることを見出した。
即ち、本発明によれば、以下の構成の光学フィルム、該フィルムの製造方法、偏光板、及び画像表示装置が提供され、本発明の目的は達成された。
1.連続搬送される長尺状支持体に一層以上の膜を形成して光学フィルムを製造する方法であって、その内の少なくとも一層を、重合性不飽和結合を有する化合物を含む塗布液をダイコート法により該塗布層の乾膜の膜厚が200nm以下になるように塗布して形成し、かつ該塗布前に行われる塗布液の濾過に使用するフィルターとして99.9%捕捉効率が1.0μm未満のフィルターを用いることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
2.光学フィルムを光学顕微鏡で観察した際の、直径1.0μm以上に観察される点欠陥の個数が0.1mm2辺り10個以下であることを特徴とする上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
3.連続搬送される長尺状支持体に一層以上の膜を形成して光学フィルムとする際に、光学フィルムのある一点における塗膜の膜厚と、この点から500m連続的に上記長尺状支持体上に塗布された点における塗膜の膜厚の差が±5%の範囲にあることを特徴とする上記1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
4.上記1から3のいずれかに記載の製造方法によって得られる光学フィルム。
5.上記1から3のいずれかに記載の製造方法によって得られる光学フィルムからなる反射防止フィルム。
6.偏光膜の少なくとも一方に上記5に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする偏光板。
7.上記5に記載の反射防止フィルムまたは上記6記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【0008】
上記1の光学フィルムの製造方法は、点欠陥を発生させずに光学薄膜を形成するための方法を示している。ダイコート法を使用することにより、グラビアコート法で発生していたような点欠陥が発生しない。また、光学薄膜の領域に於いては、従来から問題となっている点欠陥は顕著に表れるため、本発明では光学薄膜を塗布法で作成する際に特に有用である。更に塗布事前に行われる濾過に使用するフィルターの99.9%捕捉効率を示す粒子径を1.0μm未満とすることで、塗布液中に予め含まれている同種の点欠陥の原因物質を取り除いて良好な面状を達成することが可能となる。
上記2では、上記1で示された製造方法により点欠陥が減少し、良好な面状の塗膜が得られるが、良好な面状物性(直径1.0μm以上に観察される点欠陥の個数が少ない)の塗膜自体を発明として捉えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学フィルムは、支持体上に重合性不飽和結合を多く有する分子を含み、溶剤として主として有機溶剤を使用した塗布液をダイコート法で塗布して、膜厚が均一であるので、良好な面状を有し、点欠陥が少ない塗膜が形成されている。
さらに、本発明は、上記光学フィルムからなる反射防止フィルム、該反射防止フィルムを用いた偏光板、該反射防止フィルムまたは該偏光板を具備した画像表示装置が提供される。特に該画像表示装置は、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保され、かつ点欠陥が激減した表示品位の非常に高い表示装置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「数値A」〜「数値B」という記載は、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「数値A以上数値B以下」の意味を表す。「(メタ)アクリロイル」の記載は、「アクリロイルまたはメタクリロイル、あるいは両者」の意味を表す。「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」も同様である。また、水素原子が水素原子以外の原子で置換されている場合も、該水素原子以外の原子も便宜上置換基として取り扱う。
【0011】
[ダイコーターの構成]
図1は本発明を実施するスロットダイを用いたコーターの断面図である。コーター10はバックアップロール11に支持されて連続走行するウェブ12に対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブ12上に塗膜14bを形成する。
【0012】
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、例えば図1に示すような略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0013】
スロット16は、ポケット15からウェブ12への塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0014】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部であり、スロット16に対してウェブ12の進行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
光学薄膜のような薄層の塗布を行う際には、特開2003−200097号公報、特開2003−211052号公報、特開2003−236434号公報に記載されているダイコーターの構成とすることが好ましい。また、バックアップロールの構成については特開2003−251260号公報で示されるように、前記バックアップロールの回転による振れ幅を10μm未満とすることが望ましい。
本発明においては、このようなダイコーターを用いて塗布液を塗布して支持体上に各層を形成するが、そのうちの少なくとも一層は、塗布液が重合性不飽和基を有する化合物を含有し、形成される乾膜の膜厚は200nm以下、好ましくは110nm以下となるように塗布される。膜厚が200nmを越えると、光学薄膜としての役割を果たさなくなり、好ましくない。
また、光学フィルムのある一点における塗膜の膜厚と、この点から500m連続的に上記長尺状支持体上に塗布された点における塗膜の膜厚の差が±5%の範囲にあることが好ましい。これは、塗膜の膜厚が均一であることを意味する。
【0015】
[重合性不飽和結合を持つ化合物]
重合性不飽和結合を持つ化合物としては、モノマーでもポリマーでもよいが、例えばモノマーの場合、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼン及びその誘導体(例:1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが含まれる。
【0016】
更に、二以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わり又はそれに加えて、架橋性基を導入してもよい。架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有する化合物を使用する場合には、塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
また、他の例には、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等も挙げられる。
【0017】
その他の重合性不飽和結合を持つ化合物の例としては、架橋性のフッ素高分子化合物があり、パーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)等の他、含フッ素モノマー成分と架橋性基付与のためのモノマー成分を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
【0018】
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0019】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0020】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0021】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0022】
本発明で特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
【0023】
本発明に用いられる共重合体の好ましい形態として下記一般式1のものが挙げられる。
【0024】
一般式1
【化1】

【0025】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*−(CH22−O−**, *−(CH22−NH−**,*−(CH24−O−**,*−(CH26−O−**,*−(CH22−O−(CH22−O−**,*−CONH−(CH23−O−**,*−CH2CH(OH)CH2−O−**,*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0026】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0027】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0028】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0029】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0030】
本発明に用いられる共重合体の特に好ましい形態として一般式2が挙げられる。
【0031】
一般式2
【化2】

【0032】
一般式2においてX、x、yは一般式1と同じ意味を表し、好ましい範囲も同じである。
nは2≦n≦10の整数を表し、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表し、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。例としては、前記一般式1におけるAの例として説明したものが当てはまる。
z1およびz2は、それぞれの繰返し単位のmol%を表し、0≦z1≦65、0≦z2≦65を満たす値を表す。それぞれ0≦z1≦30、0≦z2≦10であることが好ましく、0≦z1≦10、0≦z2≦5であることが特に好ましい。
【0033】
一般式1又は2で表される共重合体は、例えば、ヘキサフルオロプロピレン成分とヒドロキシアルキルビニルエーテル成分とを含んでなる共重合体に前記のいずれかの手法により(メタ)アクリロイル基を導入することにより合成できる。
【0034】
本発明で有用な共重合体の好ましい例として、特開2004−45462号公報の[0043]〜[0047]に記載されたものが挙げられる。また、それらの共重合体の合成法も該公報に詳しく記載されている。
【0035】
上記の重合性不飽和結合を持つ化合物を用いて塗布液を調整する際には、膜硬度の観点から固形分全体の10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
[重合開始剤]
次に、前記重合性不飽和結合を持つ化合物と組み合わせて用いられる重合開始剤について詳述する。
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤などが挙げられる。
本発明の重合開始剤(L)は、光照射および熱照射の少なくともいずれかの手段により、ラジカルを発生する化合物が好ましい。本発明において用いられる光重合開始剤(L)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、取り扱いを白灯下で実施することができる。また、近赤外線領域に極大吸収波長を持つ化合物を用いることもできる。
【0037】
まず、ラジカルを発生する化合物(L1)について詳述する。
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(L1)は、光照射および熱照射の少なくともいずれかの手段によりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独または2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、従来公知の有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤等の熱ラジカル重合開始剤、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0038】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林 等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特開昭63−298339号、M.P.Hutt"Jurnal of Heterocyclic Chemistry"1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
【0039】
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0040】
上記カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号明細書の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号明細書の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0041】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0042】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0043】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、および、Kunz,Martin"Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。例えば、前記特開2002−116539号明細書の段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物が挙げられる。
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0044】
上記スルホン化合物としては、特開平5−239015号に記載の化合物等、上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書に記載の一般式(II)および一般式(III)で示される化合物等が挙げられる。
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。 添加量としては、ラジカル重合性モノマーの全量に対し0.1〜30質量%、好ましくは0.5〜25質量%、特に好ましくは1〜20質量%で添加することができる。この範囲において高い重合性となる。
【0045】
本発明の組成物は、重合性不飽和結合を含む化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%の割合で含有する。
本発明の組成物には、紫外線照射により重合反応を行なう場合には、従来公知の紫外線分光増感剤、化学増感剤を併用してもよい。例えばミヒラーズケトン、アミノ酸(グリシンなど)、有機アミン(ブチルアミン、ジブチルアミンなど)等が挙げられる。
【0046】
また、近赤外線照射により重合反応を行なう場合には、近赤外線分光増感剤を併用することが好ましい。
併用する近赤外線分光増感剤は、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、かつ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。近赤外線分光増感剤は、近赤外線吸収顔料および近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料および染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
市販の染料および文献(例えば、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0047】
[硬化]
本発明において、反射防止フィルム各層の硬化方法については、塗布組成物を塗布と同時、または塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
反射防止フィルムの各層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度、耐薬品性に優れた最外層を得ることができる。
好ましくは、酸素濃度が5体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が1体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下、最も好ましくは0.1体積%以下である。
【0048】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0049】
光照射の光源は、紫外線光域或いは近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
近赤外光光源を用いる場合、紫外線光源と組み合わせて用いても良いし、或は塗布面側と反対の基材面側より光照射しても良い。塗膜層内の深さ方向での膜硬化が表面近傍と遅滞無く進行し均一な硬化状態の硬化膜が得られる。
照射する紫外線の照射強度は、0.1〜1000mW/cm2程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は10〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内および層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0050】
[濾過]
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過される。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には99.9%捕捉効率を示す粒子径が1.0μm未満のフィルターが用いられ、さらには99.9%捕捉効率を示す粒子径を0.75μm未満であるフィルターを用いることが好ましい。ろ過圧力は1.5MPa以下、より好ましくは1MPa 以下、更には0.2MPa以下で濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、テフロン(商品名)等が挙げられる。中でもテフロン(商品名)製のフィルターは細孔径の均一性が高く、好ましい。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
また、捕捉効率の測定方法はISO/TC131SC6に準拠した値を示している。
【0051】
[反射防止フィルム]
図2は、本発明の製造方法によって作成された反射防止フィルムの一例である。透明支持体(1)、ハードコート層(2)、中屈折率層(3)、高屈折率層(4)、そして低屈折率層(5)の順序の層構成を有する。このような5層構成の反射防止フィルムは、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層のそれぞれの層の光学膜厚、すなわち屈折率と膜厚の積が設計波長λに対してnλ/4前後、またはその倍数であることが好ましいことが特開昭59−50401号公報に記載されている。しかしながら、本発明の低反射率且つ反射光の色味が低減された反射率特性を実現するためには、特に設計波長λ(=400nm〜680nm)に対して、中屈折率層が下式(I)を、高屈折率層が下式(II)を、低屈折率層が下式(III)をそれぞれ満足する必要がある。設計波長は400nm〜600nmであることが望ましく、450nm〜550nmであることがより望ましく、475nm〜525nmであることが最も望ましい。
【0052】
式(I) :lλ/4×0.80<n1d1<lλ/4×1.00
式(II) :mλ/4×0.75<n2d2<mλ/4×0.95
式(III):nλ/4×0.95<n3d3<nλ/4×1.05
式中、lは1であり、n1は中屈折率層の屈折率であり、そして、d1は中屈折率層の層厚(nm)であり、mは2であり、n2は高屈折率層の屈折率であり、そして、d2は高屈折率層の層厚(nm)であり、nは1であり、n3は低屈折率層の屈折率であり、そして、d3は低屈折率層の層厚(nm)である。さらに、例えばトリアセチルセルロース(屈折率:1.49)からなるような屈折率が1.45〜1.55の透明支持体に対しては、n1は1.60〜1.65、n2は1.85〜1.95、n3は1.35〜1.45の屈折率であることが好ましく、例えばポリエチレンテレフタレート(屈折率:1.66)からなるような屈折率が1.55〜1.65の透明支持体に対しては、 n1は1.65〜1.75、n2は1.85〜2.05、n3は1.35〜1.45の屈折率であることが好ましい。上記のような屈折率を有する中屈折率層や高屈折率層の素材が選択できない場合には、設定屈折率よりも高い屈折率を有する層と低い屈折率を有する層を複数層組み合わせた等価膜の原理を用いて、実質的に設定屈折率の中屈折率層あるいは高屈折率層と光学的に等価な層を形成できることは公知であり、本発明の反射率特性を実現するためにも用いることができる。本発明の「実質的に3層」とは、このような等価膜を用いた4層、5層の屈折率の異なる項からなる反射防止層も含むものである。
また、支持体(1)の上に、あるいは支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、屈折率層として低屈折率層(5)を積層すると反射防止フィルムとして好適に用いることができる(図3、図4)。図5、6に更に、支持体(1)上、あるいは支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層して反射防止フィルムとした例を示したが、好適に用いることができる。ハードコート層は防眩性を有していても良い。防眩性は図7に示されるようなマット粒子の分散によるものでも、図8に示されるようなエンボス加工などの方法による表面の賦形によって形成されても良い。図3から図8に該反射防止フィルムの構成の例を示す。
【0053】
[偏光板]
本発明の反射防止フィルムを偏光子の表面保護フィルムの片側として用いる場合には、透明支持体の反射防止層が形成される面とは反対側の面をアルカリによって鹸化処理することが必要である。アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つから選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱し、その後水洗および中和の少なくともいずれかの処理をして、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0054】
偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルム(以下、PVAと記載する)が好ましく用いられる。PVAは通常、ポリ酢酸ビニルをケン化したものであるが、変性PVAも用いることができる。PVAを染色して偏光膜が得られる。染色を行う例としては、ヨウ素−ヨウ化カリウム水溶液にPVAフィルムを浸漬させる方法、ヨウ素あるいは染料溶液の塗布あるいは噴霧など任意の手段で行うことができる。PVAを延伸して偏光膜を製造する過程では、PVAを架橋させる添加物、例えばホウ酸類を用いることが好ましい。偏光板の透過率は、波長550nmの光において、30乃至50%の範囲にあることが好ましく、35乃至50%の範囲にあることがさらに好ましい。偏光度は、波長550nmの光において、90乃至100%の範囲にあることが好ましく、95乃至100%の範囲にあることがさらに好ましく、99乃至100%の範囲にあることが最も好ましい。
【0055】
[画像表示装置]
本発明の反射防止フィルムは、偏光子の表面保護フィルムの片側として用いた場合、 ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。また、透過型または半透過型の液晶表示装置に用いる場合には、市販の輝度向上フィルム(偏光選択層を有する偏光分離フィルム、例えば住友3M(株)製のD−BEFなど)と併せて用いることにより、さらに視認性の高い表示装置を得ることができる。また、透過型、反射型、および半透過型の液晶表示装置において液晶セルの全面に空気を介してアクリル板等の前面板を配する場合には、液晶セル表面側の偏光板だけでなく、前面板の内側及び外側の少なくともいずれかに粘着剤等を介して貼り付けることは、界面の反射を低減することができるため好ましい。また、λ/4板と組み合わせることで、反射型または半透過型のLCDや、有機ELディスプレイ用表面保護板として用いることができる。さらに、PET、PEN等の透明支持体上に本発明の反射防止層を形成して、PDA、携帯電話の表面保護板、タッチパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用できる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例をもって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(ハードコート層用塗布液(HCL−1)の調製)
下記成分をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、日本化薬(株)製)
749.0質量部
質量平均分子量15000のポリ(グリシジルメタクリレート)
271.0質量部
メチルエチルケトン 729.0質量部
シクロヘキサノン 501.0質量部
光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製) 50.0質量部
なお、これら成分を攪拌後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
【0057】
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129C、石原産業(株)製、TiO2:Co34:Al23:ZrO2=90.5:3.0:4.0:0.5質量比)を使用した。
この粒子257.2質量部に、下記分散剤41.2質量部、およびシクロヘキサノン701.6質量部を添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0058】
分散剤
【化3】

【0059】
(中屈折率層用塗布液(ML−1)の調製)
上記の二酸化チタン分散液59.60質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)40.70質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)2.19質量部、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.71質量部、メチルエチルケトン280.00質量部およびシクロヘキサノン1050.00質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.8μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液(ML−1)を調製した。
【0060】
(高屈折率層用塗布液(HL−1)の調製)
上記の二酸化チタン分散液A430.6質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)36.6質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3.1質量部、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.0質量部、メチルエチルケトン535.0質量部、およびシクロヘキサノン493.7質量部を添加して攪拌した。99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.8μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液(HL−1)を調製した。
【0061】
(低屈折率層用塗布液(LL−1)の調製)
特開2004−45462号公報に記載の共重合体P−3をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液152.3質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)1.1質量部、光ラジカル発生剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)1.8質量部、メチルエチルケトン816質量部、およびシクロヘキサノン28.9質量部を添加して攪拌した。99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−1)を調製した。
【0062】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン119質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)101質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0063】
(低屈折率層用塗布液(LL−2)の調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)12.9g、シリカゾルMEK−ST−L(MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.32g、ゾル液a0.6gおよびメチルエチルケトン4.9g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.45μmのPTFE製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液LL−2を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.43であった。
【0064】
(中空シリカ分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(イソプロピルアルコールシリカゾル、触媒化成工業(株)製CS60−IPA、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20%、シリカ粒子の屈折率1.31)499質量部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製、KBM−5103)31質量部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(商品名:ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)1.5質量部加え混合した後に、イオン交換水を9質量部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8質量部を添加し、中空シリカ分散液を得た。得られた中空シリカ分散液の固形分濃度は18質量%、溶剤乾燥後の屈折率は1.31であった。
【0065】
(低屈折率層用塗布液LL−3の調製)
DPHA(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製) 1.5g
特開2004−45462号公報に記載の共重合体P−3 5.7g
中空シリカ分散液 19.9g
RMS−033(シリコーン系化合物、Gelest社製) 0.7g
イルガキュア907 0.2g
ゾル液a 6.2g
MEK(メチルエチルケトン) 315.8g
上記成分を攪拌の後、99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.45μmのPTFE製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液LL−3を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.43であった。
【0066】
(低屈折率層用塗布液LL−4の調製)
DPHA 3.5g
中空シリカ分散液 20.1g
RMS−033 0.7g
イルガキュア907 0.2g
ゾル液a 8.1g
MEK 275.9g
上記成分を攪拌の後、99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.45μmのPTFE製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液LL−4を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.41であった。
【0067】
(低屈折率層用塗布液LL−5の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物(KAYARAD PET−30(商品名)、日本化薬(株)製) 90.1g
中空シリカ分散液 19.9g
オクタフルオロペンチルメタクリレート 10.0g
上記成分を攪拌の後、99.9%捕捉効率を示す粒子径が0.45μmのPTFE製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液LL−5を調製した。この塗布液により形成される層の屈折率は、1.48であった。
【0068】
(ダイコーターの構成)
スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェブ12の隙間を、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェブ12との隙間GL を50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェブ12との隙間GS 、及びバックプレート40aとウェブ12との隙間GB はともに200μmとした。
【0069】
実施例1
(光学薄膜の作製)
膜厚100μmのPETフィルム(FD−100M、富士写真フイルム(株)製)上に、低屈折率層用塗布液(LL−1)を上記構成を持つダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で1100m連続塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後90℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、光学薄膜(屈折率1.45)を形成した。上記において、塗布、乾燥工程は0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UVまたは熱)硬化−巻き取りの各工程で行った。
塗布開始より100m及び600mの点において、分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、入射角5°における分光反射率を測定して膜厚を測定したところ、それぞれ83nm、85nmとなった。また、同様の測定を200m−700m、300m−800m、400m−900m、500m−1000mの各点に対して行ったところ、膜厚差の平均値は2.4%となった。また、上記の各点を光学顕微鏡で膜表面を観察し、0.1mm2辺りの点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は3個であった。但し、光学顕微鏡で観察した際に2μmに見えるものを点欠陥としてカウントした。結果を表1に示す。
【0070】
実施例2
フィルターの99.9%捕捉効率を示す粒子径を0.9μmにする以外は実施例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は2.8%となった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は7個だった。
【0071】
比較例1
フィルターの99.9%捕捉効率を示す粒子径を1.2μmにする以外は実施例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は2.2%となった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は18個だった。フィルターによる塗布液中の点欠陥原因物質の除去が不十分なために点欠陥が確認され、面状は点欠陥の乱反射により白っぽくなっていた。
【0072】
比較例2
乾膜の膜厚を180nmにする以外は比較例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は1.9%となった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は11個だった。フィルターによる塗布液中の点欠陥原因物質の除去が不十分なために点欠陥が確認される。膜厚が厚いため、比較的小さめの点欠陥原因物質を覆い隠してしまうが、その程度が不十分なため面状は点欠陥の乱反射により白っぽくなっていた。
【0073】
比較例3
乾膜の膜厚を250nmにする以外は実施例3と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は1.7%となった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は7個だった。膜厚が厚くなって点欠陥を覆い隠してしまうため、この光学薄膜の点欠陥の有無を目視により確認しても点欠陥は確認されなかった。但し、該光学薄膜は膜厚が厚いため光学薄膜としての性能を十分に満たしていない。
【0074】
比較例4
塗布方式をダイコート法からグラビアコート法に変更する以外は実施例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は7.2%となった。塗布中の溶剤の蒸発や、経時によるブレードの削れにより膜厚変化が大きかった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は42個だった。この光学薄膜の点欠陥の有無を目視により確認したところ、点欠陥は確認され、面が点欠陥の乱反射により白っぽくなっていた。
【0075】
比較例5
塗布液をLL−1からLL−2に変更する以外は比較例1と同様にして塗布を行った。 結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値は6.9%となった。塗布中の溶剤の蒸発や、経時によるブレードの削れにより膜厚変化が大きかった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値は1個だった。LL−2は重合性不飽和結合を含まないため、この光学薄膜の点欠陥の有無を目視により確認しても点欠陥は確認されなかった。
【0076】
実施例3〜7
塗布液をLL−1からそれぞれLL−3、LL−4、LL−5、ML−1、HL−1に変更する以外は実施例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値はそれぞれ2.1%、2.3%、1.9%、3.3%、2.4%となった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値はそれぞれ3個、5個、2個、5個、3個だった。これらの光学薄膜の点欠陥の有無を目視により確認したところ、いずれも点欠陥は確認されなかった。
【0077】
比較例6〜10
塗布液をLL−1からそれぞれLL−3、LL−4、LL−5、ML−1、HL−1に変更する以外は比較例1と同様にして塗布を行った。結果を表1に示す。実施例1と同様の条件で500m離れた点の膜厚を5組取って膜厚差の平均値を導出したところ、膜厚差の平均値はそれぞれ6.2%、7.3%、5.9%、7.9%、6.1%となった。塗布中の溶剤の蒸発や、経時によるブレードの削れにより膜厚変化が大きかった。また、実施例1と同様の方法で点欠陥の個数をカウントしたところ、平均値はそれぞれ37個、35個、24個、51個、42個だった。これらの光学薄膜の点欠陥の有無を目視により確認したところ、いずれの光学薄膜にも点欠陥が確認された。
【0078】
【表1】

【0079】
実施例8
(反射防止フィルムの作製)
超音波除塵器で、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士写真フイルム(株)製)の塗布側表面を除電処理した上に、ハードコート層用塗布液(HCL−1)を上記構成を持つダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。HCL−1の塗布では下流側リップランド18bとウェブ12との隙間GLを80μmに変更し、減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後80℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量500mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。上記のハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液(ML−1)を上記構成を持つダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後100℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量550mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率1.63、膜厚64nm)を形成した。
中屈折率層の上に、高屈折率層用塗布液(HL−1)を上記構成を持つダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後100℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度550mW/cm2、照射量550mJ/cm2の紫外線を照射し、高屈折率層(屈折率1.90、膜厚103nm)を形成した。
高屈折率層の上に、低屈折率層用塗布液(LL−1)を上記構成を持つダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。その後90℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層(屈折率1.45、膜厚83nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルムを作製した。
【0080】
上記において、塗布、乾燥工程は0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は1層毎に、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UVまたは熱)硬化−巻き取りの各工程で行った。
【0081】
作成された反射防止フィルムを、2.0mol/l.55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬してフィルムの裏面のトリアセチルセルロース面を鹸化処理し、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TAC−TD80U、富士写真フィルム(株)製)を同条件で鹸化処理したフィルムとでポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作成した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作成した。このようにして作成した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保され、かつ点欠陥の無い表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】スロットダイを用いたコーターの概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法によって作成された反射防止フィルムの一例である。
【図3】支持体(1)上、あるいは支持体(1)上にハードコート層(2)を塗布した上に、高屈折率層(4)、低屈折率層(5)を積層して反射防止フィルムとした例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の反射防止フィルムの他の態様を模式的示す断面図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムの他の態様を模式的示す断面図である。
【図6】本発明の反射防止フィルムの他の態様を模式的示す断面図である。
【図7】マット粒子の分散により防眩性が付与された反射防止フィルムを模式的示す断面図である。
【図8】エンボス加工の方法により防眩性が付与された反射防止フィルムを模式的示す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
10 コーター
11 バックアップロール
12 ウェブ
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a スロット開口部
17 先端リップ
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
(1) 透明支持体
(2) ハードコート層
(3) 中屈折率層
(4) 高屈折率層
(5) 低屈折率層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続搬送される長尺状支持体に一層以上の膜を形成して光学フィルムを製造する方法であって、その内の少なくとも一層を、重合性不飽和結合を有する化合物を含む塗布液をダイコート法により該塗布層の乾膜の膜厚が200nm以下になるように塗布して形成し、かつ該塗布前に行われる塗布液の濾過に使用するフィルターとして99.9%捕捉効率が1.0μm未満のフィルターを用いることを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
光学フィルムを光学顕微鏡で観察した際の、直径1.0μm以上に観察される点欠陥の個数が0.1mm2辺り10個以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
連続搬送される長尺状支持体に一層以上の膜を形成して光学フィルムとする際に、光学フィルムのある一点における塗膜の膜厚と、この点から500m連続的に上記長尺状支持体上に塗布された点における塗膜の膜厚の差が±5%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法によって得られる光学フィルム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の製造方法によって得られる光学フィルムからなる反射防止フィルム。
【請求項6】
偏光膜の少なくとも一方に請求項5に記載の反射防止フィルムが用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項7】
請求項5に記載の反射防止フィルムまたは請求項6記載の偏光板が画像表示面に配置されていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−47532(P2006−47532A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226383(P2004−226383)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】