説明

光学分析系、血液分析系、及び主成分の振幅を決定する方法

光学分析系(20)は、光信号の主成分の振幅を決定するように、配置される。その光学分析系(20)は、スペクトルの重み付けの関数によってその光信号を重み付けするための多変量光学素子(5,6)及びその重み付けされた光信号を検出するための検出器(7,8)を含む。その光信号は、その主成分及びそのスペクトルの重み付けの関数を設計するとき占められなかったさらなる成分を含む。従って、その検出された重み付けされた光信号は、その主成分の振幅に関係する部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含む。その光学分析系(20)は、その検出された重み付けされた光信号を変調するための変調器素子(13)をさらに含む。その変調された検出された重み付けされた光信号とその検出された重み付けされた光信号との間の差は、その主成分の振幅に関係すると共に、このように、正確な方式でその主成分の振幅を決定することを許容する。血液分析系(40)は、このような光学分析系(20)を含む。主成分の振幅を決定する方法は、その光学分析系(20)を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号の主成分の振幅を決定するための光学分析系に関し、その光学分析系は、スペクトルの重み付けの関数によってその光信号を重み付けするための多変量光学素子、及びその重み付けされた光信号を検出するための検出器を含む。
【0002】
本発明は、さらに、このような光学分析系を含む血液分析系に関する。
【0003】
本発明は、さらに、光信号の主成分の振幅を決定する方法に関し、その方法は、スペクトルの重み付けの関数を有する多変量光学素子によってその光信号を重み付けするステップ、及び検出器によってその重み付けされた光信号を検出するステップを含む。
【背景技術】
【0004】
特許文献1は、冒頭の段落に記載された光学分析系の実施形態を開示する。
【0005】
その知られた光学分析系は、例えば、試料にどの化合物がどの濃度で含まれるかを分析することに適した分光学的な分析系の一部である。その試料と相互作用する光が、それら化合物及びそれらの濃度についての情報を持ち去ることは、周知である。それら基礎をなす物理的な過程が、例えばレーザー、ランプ又は発光ダイオードのような光源の光が、この情報を伝える光信号を発生させるために、その試料へ方向付けられる、光波分光学的な技術において、活用される。
【0006】
例えば、光は、その試料によって吸収されてもよい。あるいは、又は、加えて、知られた波長の光は、その試料と相互作用してもよく、それによって、例えば、ラマン(Raman)散乱の過程により、異なる波長で光を発生させる。そして、透過した及び/又は発生した光は、スペクトルともまた呼ばれることもある光信号を構成する。その波長の関数としてのその光信号の相対的な強度は、その試料に含まれた化合物及びそれらの濃度を示す。
【0007】
その試料に含まれた化合物を識別するために、及び、それらの濃度を決定するために、その光信号は、分析される必要がある。その知られた光学分析系においては、その光信号は、光学フィルターを含む専用のハードウェアによって分析される。この光学フィルターは、その波長に依存する透過率を有する、即ち、それは、その波長依存性の透過率によって与えられるスペクトルの重み付けの関数によって、その光信号を重み付けするように、設計される。そのスペクトルの重み付けの関数は、その重み付けられた光信号の、即ち、そのフィルターを透過した光の、合計の強度が、特定の化合物の濃度に正比例するように、選ばれる。このような光学フィルターは、多変量光学素子ともまた呼ばれる。都合のよいことには、この強度は、例えばフォトダイオードのような検出器によって、検出されることもある。あらゆる化合物について、特徴的なスペクトルの重み付けの関数を備えた専用の光学フィルターが、使用される。その光学フィルターは、例えば、所望の重み付けの関数を構成する透過率を有する干渉フィルターであってもよい。
【0008】
この分析スキームの成功した実施については、それら関心のある化合物に対応するスペクトルの重み付けの関数を知ることは、本質的である。そのスペクトルの重み付けの関数は、知られた濃度のN個の純粋な化合物のN個のスペクトルを含む組みの主成分分析を行うことによって、得られることもあり、ここで、Nは、整数である。各々のスペクトルは、M個の異なる波長における対応する光信号の強度を含むが、ここで、Mは、同様に整数である。典型的には、Mは、Nよりもはるかに大きい。対応するM個の波長におけるM個の強度を含む各々のスペクトルは、M次元のベクトルを構成するが、そのM個の成分は、これらの強度である。これらのベクトルは、主成分分析の核心にある共にこの技術において良く理解される特異値分解(SVD)として知られるような線形代数的な処理にかけられる。
【0009】
そのSVDの結果として、nがN+1よりも小さい正の整数である、N個の固有ベクトルzの組みが、得られる。固有ベクトルzは、元来のN個のスペクトルの線形結合であると共にしばしば主成分ベクトル又は回帰ベクトルと呼ばれる。これは、SVDについて真実であるが、しかしながら、一般的には、その回帰ベクトルは、それら元来のスペクトルの線形結合である必要はないことに留意すること。典型的には、それら主成分ベクトルは、相互に直交すると共に|z|=1で規格化されたベクトルとして決定される。それら主成分zを使用して、未知の濃度の化合物を含む試料の光信号は、適切なスカラーの乗数が掛けられたそれら規格化された主成分ベクトルの組み合わせ
+x+…+x
によって、記述されることもある。nがN+1よりも小さい正の整数である、それらスカラーの乗数xは、与えられた光信号における主成分ベクトルzの振幅と考えられることもある。各々の乗数xを、M次元の波長空間におけるベクトルとしてその光信号を取り扱うこと、及び、主成分ベクトルzとこのベクトルの直積を計算することによって、決定することができる。その結果は、その規格化された固有ベクトルzの方向における光信号の振幅xを生じる。それら振幅xは、それらN個の化合物の濃度に対応する。
【0010】
その知られた光学分析系において、その光信号を表すベクトルとその主成分ベクトルとの間の直積の計算は、その光学フィルターによって、その光学分析系のハードウェアにおいて実施される。その光学フィルターは、それが、その主成分ベクトルの成分に従って光信号を重み付けする、即ち、その主成分ベクトルが、そのスペクトルの重み付けの関数を構成するような、透過率を有する。そのフィルター処理された光信号は、その主成分ベクトルの振幅に、このように、その対応する化合物の濃度に、比例する振幅を備えた信号を発生させる検出器によって、検出されることもある。
【0011】
物理的な意味において、各々の主成分ベクトルは、その光信号内の波長の範囲においてある形状を備えた構築された“スペクトル”である。現実のスペクトルとは対照的に、主成分ベクトルは、第一のスペクトルの範囲における正の部分及び第二のスペクトルの範囲における負の部分を含むこともある。この場合には、その主成分ベクトルは、第一のスペクトルの範囲に対応する波長についての正の成分及び第二のスペクトルの範囲に対応する波長についての負の成分を有する。
【0012】
その主成分の振幅が、例えば、その光信号が、その主成分分析において正しく占められないさらなる成分を含むとき、相対的に不正確に決定されることもあることは、その知られた光学分析系の不都合である。このような場合には、そのスペクトルの重み付けの関数は、相対的に不正確に決定されることもあり、その主成分の振幅の相対的に不正確な決定に帰着する。その重み付けの関数によって重み付けされた主成分に加えて、その多変量光学素子は、少なくとも部分的に、そのさらなる成分を透過させることもある。結果として、その検出された重み付けされた光信号は、その主成分の振幅に関係する部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含むこともあり、そのさらなる部分が、その不正確さを引き起こす。このような場合には、そのさらなる成分を同様に考慮に入れて、その主成分分析を繰り返すことが、一般的な習慣である。しかしながら、このアプローチは、相対的に時間及び金銭を消費するものである。それは、その新たな調節されたスペクトルの重み付けの関数を有する新たな専用の光学フィルターを要求する。このアプローチは、そのさらなる成分を識別することができないか又はそれが時間内に安定ではない状況においては、非現実的であることもある。
【特許文献1】米国特許第6,198,531号明細書(B1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、その光信号が、その主成分分析に正しく占められないさらなる成分を含むとき、拡張された主成分分析の必要無しに、その主成分の振幅を相対的に正確に決定することができる、冒頭の段落に記載された種類の光学分析系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に従って、その目的は、その光学分析系が、その検出された重み付けされた光信号を変調するための変調器素子を、その変調された検出された重み付けされた光信号とその変調されてない検出された重み付けされた光信号との間の差が、その主成分の振幅に関係するように、さらに含むということで、実現される。この場合においては、その主成分の振幅は、少なくとも近似的に、この差から決定されることもある。そして、そのさらなる成分は、少なくとも部分的に占められると共に取り除かれるが、そのことは、付加的な拡張された主成分分析を要求することなく、改善された確度に至る。
【0015】
その検出された重み付けされた光信号は、その主成分が、減少させられると共にそのさらなる成分が、主として検出されるように、変調されることもある。そして、その主成分の振幅が、近似的に、変調されてない検出された重み付けされた光信号マイナスその変調された検出された重み付けされた光信号から誘導されることもある。あるいは、その検出された重み付けされた光信号は、さらなる成分が、減少させられると共にその主成分が、主として検出されるように、変調されることもある。そして、その主成分の振幅が、近似的に、その変調された検出された重み付けされた光信号マイナス変調されてない検出された重み付けされた光信号から誘導されることもある。
【0016】
その変調の深さが、より大きければ大きいほど、即ち、そのそれぞれの成分が、他の成分と比較して、より有効に減少させられるほど、その主成分の振幅が、より正確に、決定されることもある。その変調の深さは、例えば75%又は90%のような、50%以上であってもよい。付加的な較正が、その変調による変化をその主成分の振幅に定量的に相関させるために、要求されることもある。このような較正は、拡張された主成分分析よりも単純なものである。その較正は、ある知られた濃度の関心のある分析物を備えた試料を使用して、されることもある。
【0017】
その光学分析系は、その変調された検出された重み付けされた光信号とその検出された重み付けされた光信号との間の差から、その主成分の振幅を決定するための信号処理装置さらに含むこともある。
【0018】
本発明に従って、その光信号は、人間の目に可視である波長を有する光信号に制限されない。その光信号は、紫外(UV)スペクトルにおける及び/又は赤外(IR)スペクトルにおけるスペクトルの成分を含むこともある。ここで、そのIRスペクトルの範囲は、近赤外(NIR)及び1THzより上の周波数を有する遠赤外(FIR)、並びに同様のもののような全ての中間の波長を含むこともある。
【0019】
本発明に従って、その主成分は、純粋な主成分に限定されない。ここで、純粋な主成分は、ある一定の化合物についての数学的に正確な固有ベクトルを指す。また、主成分は、知られた濃度の数個の化合物の混合物に対応することもある。
【0020】
そのさらなる成分は、少なくとも部分的に、その光学分析系によって検出された背景の光によるものであることもある。その背景の光は、その光学分析系の光学的な構成部品からの光の散乱によって、及び/又は、その光学分析系の外側の源を起源とする光によって、引き起こされることもある。その背景の光は、その主成分分析において適切にそれを占めることが可能ではないように、時間内に変化していることもある。
【0021】
その主成分は、分析物の電子状態の、振動の、及び/又は、振電的な遷移に関係することもある。そのさらなる成分は、その分析物以外の物質の電子状態の、振動の、及び/又は、振電的な遷移に関係することもある。その主成分は、分析物のラマンスペクトルに関係することもある。そのさらなる成分は、その分析物を担う物質の及び/又はその分析物それ自体の蛍光スペクトルに、又は、人間の皮膚の組織若しくは光学素子のような、その検出の容積とその検出器との間における物質の蛍光スペクトルに、関係することもある。
【0022】
その多変量光学素子は、透過における及び/又は反射におけるスペクトルの重み付けの関数によって、その光信号を重み付けすることもある。
【0023】
そのスペクトルの重み付けの関数は、その主成分分析による以外の方式で、例えば、いずれの数学的な直交化の手順、いずれの多変量解析の方法、例えば、部分最小自乗(PLS)、汎用性のアルゴリズム、又は、ニューラル・ネットワークによっても、得られることもある。
【0024】
その変調器素子は、その多変量の光学フィルターによって重み付けする前に及び/又は後に、その光信号を変調することもある。
【0025】
その変調器素子は、ある周波数及びある位相を備えたその検出された重み付けされた光信号を変調することができることもあると共に、その信号処理装置は、その変調された検出された重み付けされた光信号とその周波数及びその位相を有するその検出された重み付けされた光信号との間の差から、その主成分の振幅を決定することができることもある。このような位相に敏感な検出スキームは、それが、異なる周波数及び/又は位相を有する雑音を減少させるので、相対的に高い信号対雑音比に帰着する。
【0026】
その光学分析システムは、ある濃度を有する物質を含む試料を照明するための光を提供するための、及びそれによって、その主成分を発生させるための、光源をさらに含むこともある。そして、その主成分の振幅は、その物質の濃度に関係することもある。その関係は、その振幅とその濃度との間の線形の関係であることもある。このような光学分析系は、分光学的な分析系であることもある。
【0027】
その変調器素子は、その光源によって提供された光の性質を変調するために、配置されることもある。その主成分の振幅に関係するその検出された重み付けされた光信号の部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するその検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、その光の性質に依存することもある。このような具合に、その検出された重み付けされた光信号のこれらの二つの部分は、その光源によって提供された光の性質を変調することによって、都合の良い方式で、分離されることもある。
【0028】
その光源によって変調される光の性質は、その光の強度を含むこともある。この変調スキームは、その主成分及びそのさらなる成分が、その光の強度に対する異なる依存性を有するときに、適用されることもある。例えば、その主成分は、例えば、線形の吸収及び/又は自発的なラマン散乱による、その強度に対する線形の依存性を有することもあると共に、そのさらなる成分は、その強度から独立であることもあると共に、例えば、背景の光によるものであることもある。この場合には、その検出された重み付けされた光信号の部分は、その光の強度を単純にゼロまで減少させることによって、決定されることもある。あるいは、その強度は、ある一定の百分率だけ、例えば、50%だけ、減少させられることもあると共に、その検出された重み付けされた光信号における変化は、この例においてはその検出された重み付けされた光信号における変化の二倍に等しい、主成分の振幅を計算するために、使用されることもある。
【0029】
あるいは、その主成分は、例えば、二光子吸収、誘導ラマン散乱、及び/又は、ハイパーラマン散乱のような非線形の光学的過程によることもあると共に、そのさらなる成分は、例えば、線形の吸収及び/又は自発的なラマン散乱による、その強度に対する線形の依存性を有することもある、又は、それは、その強度から独立であることもあると共に例えば背景の光によることもある。この場合には、その強度は、ある一定の百分率だけ、例えば、90%だけ、減少させられることもある。その主成分の非線形な依存性のために、この成分は、そのさらなる成分よりもはるかに多く減少させられる。よって、その減少した強度では、その検出された重み付けされた光信号は、近似的に、そのさらなる成分に起因すると考えられることもある。そのさらなる成分が、その強度に線形に比例するとき、その光の100%でのそのさらなる成分は、例えば、その信号処理装置によって、この例では90%減少の信号にこの例では九の因子を乗じることによって、計算されると共にその検出された重み付けされた光信号から差し引かれることもある。
【0030】
さらに別の代替の実施形態において、その主成分は、例えば、線形の吸収及び/又は自発的なラマン散乱による、その強度に対する線形の依存性を有することもあると共に、そのさらなる成分は、例えば、二光子吸収、誘導ラマン散乱、及び/又は、ハイパーラマン散乱のような、非線形の光学的な過程によることもある。
【0031】
変調されるその光の性質は、その光の偏光状態を含むこともある。その光の偏光状態は、例えば、偏光軸に沿って直線偏光したものであることもあるか、又は、それは、円偏光したものであることもある。この変調スキームは、その主成分及びそのさらなる成分が、その光の偏光状態に対する異なる依存性を有するとき、適用されることもある。その主成分が、その光の偏光状態に依存するのに対して、そのさらなる成分は、その光の偏光状態に独立であることもある。この場合には、その検出された重み付けされた光信号における変化は、その主成分に直接関係付けられると共にそのさらなる成分が無いものである。そのさらなる成分の例は、背景の光、偏光解消されたラマン散乱信号、及び/又は、偏光解消された蛍光信号であることもある。その主成分の例は、偏光したラマン散乱信号及び/又は偏光した蛍光信号であることもある。その主成分の他の例は、吸収分光法、偏光分光法、旋光分析法における変更した透過させられた光であることもある。
【0032】
その用語“偏光解消した”は、その光によって発生させられた光信号の偏光が、その光の偏光状態に独立であることを示す。その用語“偏光した”は、その光によって発生させられた光信号の偏光が、式
【0033】
【数1】

によって記載されるように、その光の偏光状態に依存することを示す。ここで、我々は、その偏光を表現するために、ジョーンズ(Jones)行列を使用する。E、a、b、c、及びdは、楕円偏光した光を表現するための複素数である。a及びbは、異なることもある、及び/又は、c及びdは、異なることもある。
【0034】
その光の代わりに、その変調器素子は、その光信号の性質を変調するために、配置されることもある、即ち、その光信号は、その試料が存在するとすれば、その試料とのその光の相互作用の後に、その変調器素子へ送られる。その主成分の振幅に関係するその検出された重み付けられた光信号の部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するその検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、その光信号の性質に依存することもある。その光信号の性質は、その光信号の偏光状態を含むこともある。
【0035】
変調される光の性質は、その光のスペクトル帯域幅を含むこともある。その光の帯域幅は、相対的に広い帯域幅から相対的に小さい帯域幅まで変動させられることもある、又は、逆もまた同じである。この変調スキームは、その主成分及びそのさらなる成分が、その光の帯域幅に対する異なる依存性を有するとき、適用されることもある。例えば、そのさらなる成分は、その光の帯域幅に独立であることもある。これは、例えば、そのさらなる成分が、その光に独立である場合である。そのさらなる成分は、その背景の光に依存することもある。あるいは、又は、加えて、そのさらなる成分は、その光に依存することもあるが、ある一定の限界内で、その帯域幅に独立であることもある。例えば、そのさらなる成分は、広いスペクトルを有することもある蛍光によることもあり、そのスペクトルは、その蛍光を誘発する光の帯域幅にむしろ鈍感である。その主成分は、帯域幅を有することもあるラマン散乱信号を含むこともあり、その帯域幅は、主として、そのラマン信号を誘発するその光の帯域幅によって決定されることもある。
【0036】
変調されるその光の性質は、その光の波長を含むこともある。その光の波長は、相対的に短い波長から相対的に長い波長まで変動させられることもある、又は、逆もまた同じである。この変調スキームは、その主成分及びそのさらなる成分が、その光の波長に対する異なる依存性を有するとき、適用されることもある。例えば、そのさらなる成分は、その光の波長に独立であることもある。これは、例えば、そのさらなる成分が、その光に独立である場合である。そのさらなる成分は、その背景の光に依存することもある。あるいは、又は加えて、そのさらなる成分は、その光に依存することもあるが、ある一定の限界内で、その波長に独立であることもある。例えば、そのさらなる成分は、広いスペクトルを有することもある蛍光によることもあり、そのスペクトルは、その蛍光を誘発する光の波長にむしろ鈍感である。その主成分は、ラマン散乱信号を含むこともある。そのラマン散乱信号は、ピークを備えたスペクトルを有することもあるが、それらピークの位置は、そのラマン信号を誘発するその光の波長に依存する。その波長の変調のおかげで、これらのピークは、シフトする。その重み付けの関数は、その変調された光信号のラマンのピークが、遮断されると共に検出されないのに対して、その変調されてない光信号のラマンのピークが、その多変量光学素子によって重み付けされると共に検出されるような、構造を有することもある。
【0037】
その多変量光学素子は、調節可能である重み付けの関数を有することもある。その変調器素子は、その主成分の振幅に関係するその検出された重み付けされた光信号の部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するその検出された重み付けされた光信号のさらなる部分が、異なる方式で、その変調された重み付けの関数に依存するように、その多変量光学素子の重み付けの関数を変調するように、配置されることもある。例えば、その多変量光学素子は、例えば、その主成分のラマン波長に対応する、相対的に狭いスペクトル帯域を備えたスペクトルの重み付けの関数を有することもある。その多変量光学素子のスペクトルの重み付けの関数は、その相対的に狭いスペクトル帯域が、波長へシフトさせられるように、変調されることもあるが、ここで、その主成分のラマン波長は、もはや検出されない。そのさらなる成分は、そのスペクトル帯域がシフトさせられる範囲にわたって近似的に一定である蛍光スペクトルを含むこともある。このような具合に、その重み付けの関数におけるスペクトル帯域が、シフトさせられるとき、その蛍光の強度は、少なくとも近似的に決定されることもある。そして、そのスペクトル帯域が、シフトさせられないとき、その蛍光の強度は、その重み付けされた検出された光信号から差し引かれることもある。
【0038】
その多変量光学素子は、その光信号をスペクトルで分散させるための回折格子又はプリズムのような分散性素子、並びに、スペクトルで分散させられた光信号のスペクトルの成分を受信するための及びその検出器へそのスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた光信号を分配するための調節可能な区域を備えた重み付け素子を含むこともある。その変調器素子は、それら調節可能な区域を変調することができることもある。あるいは、又は、加えて、その変調器素子は、その分散性素子を変調することもある。その重み付け素子は、液晶セルの配列を含むこともある。それらセルの各々は、調節可能な区域を構成することもある。その液晶セルは、偏光に敏感な透過フィルターを構成することもある。その透過は、例えば、そのセルにわたって電圧を印加することによって、液晶分子を配向させることによって、調節されることもある。
【0039】
本発明に従った光学分析系は、血液を含む試料を分析するように配置された血液分析系の一部であることもある。その試料は、生体内での血液である、即ち、人間若しくは動物にまだ含有されることもある、又は、試験管内での血液、即ち、人間若しくは動物から抽出された血液であることもある。その分析物は、例えば、ブドウ糖、乳酸塩及び乳酸エステル、グリコヘモグロビン(HbA1c)、ヘモグロビン、ヘマトクリット、コレステロール(合計、HDL、LDL)、トリグリセリド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、重炭酸塩、及び、その他の多数のもの、から選択された一つ以上の素子を含むこともある。その主成分は、一つ以上の素子のラマンスペクトルを含むこともある。そのさらなる素子は、それら一つ以上の素子が溶解させられる又は含有される媒体の蛍光スペクトルを含むこともある。その媒体は、水、人間又は動物の皮膚の組織、その光路における光学素子、及び/又は、液浸媒体を含むこともある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明に従った、光学分析系、血液分析系、及び、光信号を分析する方法のこれらの及び他の態様は、図面を参照して、さらに解明されると共に記載される。
【0041】
図は、一定の縮尺で描かれてない。一般的に、同一の構成要素は、同じ符号によって、表示される。
【0042】
図1に示した実施形態において、光信号の主成分の振幅を決定するための光学分析系20は、ある濃度を有する物質を含むと共にそれによってその主成分を発生させる試料2を照明するための光を提供するための光源1を含む。その主成分の振幅は、その物質の濃度に関係する。光源1は、気体レーザー、色素レーザー及び/又は半導体又はダイオードレーザーのような固体レーザーのようなレーザーである。
【0043】
光学分析系20は、血液分析系40の一部である。試料2は、血管を備えた皮膚を含む。その物質は、以下に続く分析物:ブドウ糖、乳酸塩及び乳酸エステル、コレステロール、オキシヘモグロビン、及び/又は、デオキシヘモグロビン、グリコヘモグロビン(HbA1c)、ヘマトクリット、コレステロール(合計、HDL、LDL)、トリグリセリド、尿素、アルブミン、クレアチニン、酸素化、pH、重炭酸塩、及び、その他の多数のもの、の一つ以上であることもある。これらの物質の濃度は、光波分光学を使用して、非観血的な方式で、決定されるものである。この目的のために、光源1によって提供された光は、その光源によって提供された光を、その皮膚におけるそれら血管へ向かって、反射させる、二色性ミラー3へ送られる。その光は、対物12を使用して、その血管上に集束させられることもある。その光は、国際公開第02/057759号パンフレットに記載されたような結像及び分析系を使用することによって、その血管内に集束させられることもある。
【0044】
その血管における血液と光源1によって提供された光の相互作用によって、光信号は、ラマン散乱及び蛍光により、発生させられる。このように発生させた光信号は、対物12によって収集されると共に二色性ミラー3へ送られることもある。その光信号は、光源1によって提供された光とは異なる波長を有する。その二色性ミラーは、それが、その光信号の少なくとも一部分を透過させるように、構築される。
【0045】
このような具合に発生させた光信号のスペクトルは、図2Aに示される。そのスペクトルは、相対的に広い蛍光の背景FBG及び相対的に狭いラマン帯域RBを含む。図2Aのx軸は、光源1による励起の785nmに関する波長の偏移を波数で表示し、図2Aのy軸は、その強度を任意単位で表示する。そのx軸は、ゼロの強度に対応する。そのラマン帯域の波長及び強度、即ち、その位置及びその高さは、水に80ミリモルの濃度で溶解させた分析物のブドウ糖についての図2Bの例に示すような分析物のタイプを示す。図2Bの実線は、ブドウ糖及び水の両方のスペクトルを示すと共に、図2Bの破線は、水中におけるブドウ糖のスペクトルとブドウ糖無しの水のスペクトルとの間の差を示す。これらの帯域を備えたスペクトルの振幅は、その分析物の濃度を示す。
【0046】
血液は、各々が図2Bのものと同じくらい複雑であることもある、ある一定のスペクトルを有する、多数の化合物を含むので、その光信号のスペクトルの分析物は、相対的に複雑なものである。本発明に従った光学分析系20において、その光信号は、図3及び5に概略的に示された重み付けの関数によってその光信号を重み付ける多変量光学素子5、6によって、分析される。図3の重み付けの関数は、血液中のブドウ糖について設計される。それは、正の部分P及び負の部分Nを含む。その正の部分P及びその負の部分Nは、各々、この例においては、一つを超えるスペクトル帯域を含む。ビームスプリッター4は、多変量光学素子5へその光信号の一部を透過させるが、その多変量光学素子は、その重み付けの関数の正の部分に従って、それを重み付けする。多変量光学素子5によって重み付けされたこの光信号は、フォトダイオードである検出器7によって検出される。あるいは、その重み付けされた光信号の強度に依存して電気信号を提供することに適切ないずれの他の検出器も、使用されることもある。ビームスプリッター4は、多変量光学素子6へその光信号の一部を反射させるが、その多変量光学素子は、その重み付けの関数の負の部分に従って、それを重み付けする。多変量光学素子6によって重み付けされたこの光信号は、検出器7と同一であることもある検出器8によって検出される。計算用素子19は、正の及び負の信号の間の差を計算するように、配置される。この差は、その光信号の主成分の振幅に比例する。その主成分の振幅は、その物質、即ち、その分析物の濃度に関係する。その振幅とその濃度との間の関係は、線形の依存性であってもよい。
【0047】
その主成分は、正の成分のみ又は負の成分のみを含むとき、一つの検出器を備えた一つの多変量光学素子のみが、使用されることもある。
【0048】
多変量光学素子5、6は、所望の重み付けの関数を有するいずれの知られた素子であってもよい。多変量光学素子の例は、米国特許第6,198,531号明細書B1に記載される。
【0049】
その光信号は、その主成分に加えて、その重み付けの関数を構築するとき占められないさらなる成分を含むこともある。そのさらなる成分は、少なくとも部分的に、検出器7及び/又は8の暗電流による、例えば二色性ミラー3及び/又は対物12のような光学素子から散乱することによって光源1によって誘発されることもある、及び/又は、光源1以外の光の源によって誘発されることもある、背景の光によることもある。そのさらなる成分は、少なくとも部分的に、それら分析物以外の物質であることもある物質の蛍光によることもある。生体内での血液分析について、これらの物質は、ヘモグロビン、人間の皮膚の組織の液浸媒体、光学素子、及び/又は、衛生カバーを含むこともある。
【0050】
そのさらなる成分が、その重み付けの関数の構築において占められないので、検出器7、8によって検出された、重み付けられた光信号は、その主成分の振幅に関係する部分に加えて、そのさらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含むこともある。言い換えれば、検出器7、8は、その主成分の振幅に加えてそのさらなる成分の振幅に依存する重み付けされた光信号から電気信号を発生させる。
【0051】
さらなる成分の存在は、その光信号のスペクトル、即ち、波長λの関数としての任意単位における強度Iを示す、図4に概略的に描かれる。図4の概略的なスペクトルにおいて、図5に示されたスペクトルの重み付けの関数を設計するとき考慮に入れられた化合物A、B及びCによる寄与がある。本発明は、この数の化合物に限定されない。本発明に従って、考慮に入れられた化合物の数は、一よりも大きい又は一に等しいいずれの正の整数であってもよい。さらに、さらなる成分Fともまた呼ばれる、破線によって示された背景による寄与がある。そのさらなる成分は、そのスペクトルの重み付けの関数を設計するとき、占められなかった。
【0052】
図5において、その重み付けの関数の正の部分P及び負の部分Nは、各々、一つのスペクトル帯域のみを含む。しかしながら、本発明は、ここで説明の単純さのためにのみ選ばれるこのような相対的に単純な重み付けの関数に限定されない。代わりに、そのスペクトルの重み付けの関数は、一つ、二つ、又はより多くのスペクトル帯域を備えた正の部分を含むこともある。そのスペクトルの重み付けの関数は、図3に示されるような一つ、二つ、又はより多くのスペクトル帯域を備えた負の部分をさらに含むこともある。
【0053】
化合物A、B及びCに対応するスペクトル線の強度は、その試料におけるこれらの化合物の濃度に関係する。しばしば、その濃度は、それらスペクトル線の強度に線形に比例する。図4のスペクトルから、化合物Aに対応するスペクトル線の強度を決定することが、そのスペクトル線が、化合物Bに対応するスペクトル線の一つと重なり合うので、困難であることは、明らかである。あるいは、スペクトル線は、部分的に重なり合うこともあるか、又は、それらを、その多変量光学素子によって、それが十分なスペクトルの確度を有さないので、分離することができないほど、相互に近いが分離されることもある。
【0054】
その背景の欠如において、図5に示された化合物Bに対応する主成分についてのスペクトルの重み付けの関数SWFでその光信号を重み付けすることによって、この困難性に対処することもある。そのスペクトルの重み付けの関数は、その波長の関数としてのその多変量光学素子の相対的な透過又は反射を表すこともある。それは、正の部分P及び負の部分Nを含む。さらなる成分Fがないとき、図6Cに示されるような、正の部分Pによって重み付けされた、検出された光信号、及び、負の部分Nによって重み付けされた、検出された光信号が、得られる。正の部分Pによって重み付けされた検出された光信号と負の部分Nによって重み付けされた検出された光信号との間の差は、化合物Bの濃度に正比例する。
【0055】
さらなる成分Fが、存在するとき、正の部分P及び負の部分Nによって重み付けされた光信号は、図6Aに示されるように、検出される。その負の部分及びその正の部分の両方について、その検出された重み付けされた光信号は、この例の化合物A及びBにおいては、そのスペクトルの重み付けの関数を設計するときに占められた化合物に関係する部分を含む。それら対応する主成分の振幅に関係するこの部分に加えて、その検出された重み付けされた光信号は、さらなる成分Fによるさらなる部分を含む。そのさらなる成分の振幅に関係するこのさらなる部分は、その正の部分における強度FPと異なる負の部分における強度FNを有する。結果として、その正の部分とその負の部分との間の差は、そのさらなる成分の振幅に関係する項を含むと共にその主成分の振幅は、不正確に決定される。また、類似の不正確さは、全体のスペクトルの重み付けの関数が同じ符号を有するとき、即ち、別個の正の及び負の部分が無いとき、生じることもある。
【0056】
この不正確さを少なくとも部分的に克服するために、光学分析系20は、その変調された検出された重み付けされた光信号とその検出された重み付けされた光信号との間の差が、その主成分の振幅に関係するように、その検出された重み付けされた光信号を変調するための変調器素子13をさらに含む。
【0057】
図1の実施形態においては、変調器素子13は、光源1によって提供された光の性質を変調することができる。その主成分の振幅に関係する検出された重み付けされた光信号の部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係する検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、その光の性質に依存する。この依存性の実施形態を、下に与えることにする。
【0058】
その変調の深さは、100%であることもある、即ち、その検出された重み付けされた光信号においては、そ(れら)の主成分に又はそのさらなる部分に関係する部分のいずれかが、その変調の間に欠如したものである。そ(れら)の主成分に関係する部分のいずれかの検出された重み付けされた光信号が、変調の間に欠如したものであるとき、その変調された重み付けされた光信号は、図6Bに示されたスペクトルを有する。その変調された検出された重み付けされた光信号とその主成分の振幅に関係する検出された重み付けされた光信号との間の差は、図6Cに示される。それは、そのさらなる成分が無いと共に化合物Bに対応する主成分の振幅に比例する。あるいは、その変調の深さは、100%よりも小さいこともある、例えば、図7A〜7Dを参照して下に記載された実施形態を参照のこと。
【0059】
光学分析系20は、その変調された検出された重み付けされた光信号とその検出された重み付けされた光信号との間の差からその主成分の振幅を決定するための信号処理装置9をさらに含むこともある。
【0060】
その変調器素子13は、その検出された重み付けされた光信号を周期的に変調することができることもあり、その変調は、ある周波数及びある位相を有する。その信号処理装置は、その変調された検出された重み付けされた光信号とその周波数及びその位相を有する検出された重み付けされた光信号との間の差から、その主成分の振幅を決定することができることもある。この目的のために、変調器素子13による変調は、制御ユニット11によって、制御されることもあると共に、信号処理装置9によって提供された信号は、当技術において周知であるロックイン検出器10によって、処理されることもある。
【0061】
変調器素子13によって変調される光の性質は、光源1によって提供された光の強度であることもある。この変調は、自動化されたシャッターによって、チョッパーによって、又は、光源1に提供された電流若しくは電圧のような電気的なパラメーターを変調することによって、されることもある。これは、例えば、そのさらなる成分が、検出器7、8の暗電流によって及び/又は光源1以外の光源を起源とする光によって引き起こされるとき、有用である。
【0062】
あるいは、又は、加えて、変調器素子13によって変調される光の性質は、光源1によって提供された光の偏光状態を含むこともある。変調器素子13は、ポッケルス(Pockels)セルであることもある。この変調スキームは、そのさらなる成分が、偏光してないラマン散乱及び/又は偏光してない蛍光のような偏光してない光によるのに対して、その主成分が、例えば、偏光ラマン散乱又は蛍光により、少なくとも部分的に偏光させられるとき、好都合なものであることもある。その多変量光学素子は、直線又は円偏光した光のような予め定義された偏光状態を有する光信号の部分を透過させる又は反射させる偏光子を含むこともある。光源1によって提供された光は、変調されることもある直線又は円偏光した光のような偏光状態を有することもある。光源1によって提供された光の偏光状態を変調するとき、そのさらなる成分に関係する検出された重み付けされた光信号のさらなる部分が、変調されないのに対して、その少なくとも偏光した主成分に関係する検出された重み付けされた光信号の部分は、変調される。これは、これらの二つの部分を識別するために、使用されることもある。あるいは、その主成分は、偏光してないものであると共にそのさらなる成分は、偏光したものであることもある。
【0063】
実施形態においては、変調器素子13によって変調される光の性質は、その光のスペクトル帯域幅を含む。ダイオードレーザーが、使用されるとき、そのレーザーを多モード領域に設定するためのダイオードの電流が、例えば、相対的に広帯域の光学的なフィードバックを使用することによって、使用されることもある。しばしば、例えば、図4に示されるような光信号のスペクトルは、相対的に狭いピークを含む。そのピークの幅Wは、対応する化合物に特有の緩和過程によって、及び、その光信号を発生させる光のスペクトル帯域幅によって、決定されることもある。そのピークのスペクトルの形状は、これらの項を記述する二つの関数の畳み込みであることもある。その光信号を発生させる光の帯域幅が、その変調の間に拡張されるとき、それらピークは、より大きい幅Wを得ることもある。それら主成分に対応するピークが、例えば、図4に示されるような、さらなる成分に対応するピークよりも小さいとき、ここで、そのさらなる成分に対応するピークが、それが、ピークというよりもむしろスペクトルで変動する背景と呼ばれることもあるほど広いものであるが、後者が、近似的に変化させられないものであるのに対して、前者は、その変調によって変化させられることもある。これは、その光のスペクトル帯域幅が変調されるとき、その光信号のスペクトルを示す図7Bに描かれる。図7Aは、その光のスペクトル帯域幅が、変調されないとき、その光信号のスペクトルである。それは、図4のスペクトルと同一である。図7Cにおいて、図5に示されたスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光信号は、示される。それは、主として、さらなる成分Fからなる。図5に示されたスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調されてない検出された光信号のスペクトルは、図6Aに示される。
【0064】
図4に示された変調されてない検出された光信号と図7Cに示された変調された検出された光信号との間の差は、図7Dに示される。この差は、それら正確な主成分を描く図6Cに示されたものに近似的に等しいが、同一ではない。それら小さい差は、化合物A、B、及びCに関係する小さい部分が、図7Cに示されるような変調の間に検出されるという事実から、生じる。変調の間におけるスペクトル帯域幅が、より広ければ広いほど、この差は、より小さいものであると共にその変調の深さは、より大きいものである。
【0065】
その帯域幅それ自体を変調する代わりに、その光の波長は、変調されることもあると共に、その変調された信号は、図9を参照して下に記載することにするもののように、統合されることもある。
【0066】
実施形態において、変調器素子13によって変調される光の性質は、その光の波長を含む。しばしば、例えば、図4に示されるような光信号のスペクトルは、各々が例えば図4に示したλ及びλのような中心の波長を有する相対的に狭いピークを含む。そのピークが、ラマン散乱によるとき、そのピークの中心の波長は、そのラマン散乱信号を発生させる光の波長の逆及びその伴った振動の波長の逆の差に比例する。そのラマン散乱信号を発生させる光の波長が、その変調の間に変化させられるとき、それら対応するピークのスペクトルの位置は、同様に変化させられる。そのさらなる成分が、その波長の調節範囲内におけるその光信号を発生させる光の波長に依存しないとき、それは、変化させられない。これは、例えば、そのさらなる成分が蛍光によると共にその蛍光の収率がその調節範囲にわたって近似的に一定である場合であることもある。あるいは、又は、加えて、そのさらなる成分は、光源1以外の光源を起源とする光によることもある。
【0067】
図8において、その光信号のスペクトルは、その光信号を誘発する光が、その変調の間に、より長い波長に調整される例について、示される。その変調されてないスペクトルは、図4におけるのと同じである。化合物A、B及びCに対応するピークの位置が、同様に、より長い波長までシフトさせられるのに対して、さらなる成分Fが、変化してないものであることは、図4及び8から明らかである。図5に示されたスペクトルの重み付けの関数を有する、それぞれ、正の及び負の多変量光学素子5及び6を通過するスペクトルの部分は、破線によって示される。図5に示されたスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光信号のスペクトルは、図6Bに示されたものと同一である。図5に示されたスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調されてない検出された光信号のスペクトルは、図6Aに示される。その変調されてない検出された光信号と変調された検出された光信号との間の差は、図6Cに示されたものと同一である。その波長における変化が、図5においてVとして示されたスペクトルの重み付けの関数の幅よりも小さいとき、その変調の深さは、100%よりも少ないと共に付加的な較正は、要求されることもある。
【0068】
その変調された波長は、図9における破点線によって示されるもののような変調の間における固定された値を有することもある。あるいは、その変調された波長は、図9における実線及び破線によって例として示されるような時間内に変動させることもある。その検出された重み付けされた光信号は、変調時間Δtにわたって統合されることもある。これは、その変調された帯域幅が図9に示されたΔλである帯域幅の変調の場合に得られるものと同一である検出された信号に帰着する。この変調スキームは、多変量光学素子を有さないが、例えば、その光信号を分散させるための分散性素子のようなスペクトルを得るための他の手段及び例えばその分散させられた光信号を検出するためのCCDカメラのような検出器アレイを使用することもある、光学分析系に有用であることもある。その分散させられた光信号は、近似の背景を得るために、その変調の間に統合させられることもある。この背景は、その統合された変調されてない分散させられた光信号から差し引かれることもある。それぞれの統合は、時間周期にわたる統合であると共に積分器のような電子機器において実施されることもある。その差は、信号処理装置によって計算されることもある。
【0069】
光学分析系20の実施形態において、変調器素子13は、その光信号の性質を直接変調するように、配置される、即ち、それは、その光信号を発生させる光を変調せずに、の光信号それ自体を変調する。そして、図1の例において、その変調器素子は、例えば、二色性ミラー3の後方におけるような、その試料の下流に位置させられる。変調器素子13によって変調される光信号の性質は、その光信号の偏光状態を含むこともある。これは、上に記載された光信号を発生させる光の偏光状態の変調に類似である。光源1は、偏光した光を提供することもあると共にそれによって発生させた光信号は、偏光した主成分及び偏光してないさらなる成分を有することもある。その多変量光学素子5、6は、偏光依存性の透過及び/又は反射を有することもある。変調器素子13は、試料2の下流に、しかし、その多変量光学素子5、6の上流に、配置されることもある。それは、その光信号の偏光を変調することもある。その結果は、その主成分の振幅に関係する検出された重み付けされた光信号の部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係する検出された重み付けされた光信号のさらなる部分が、異なる方式で、その光信号の性質に依存することである。この差から、その主成分の振幅が、決定されることもある。
【0070】
光学分析系20は、例えば図10に示された多変量光学素子5、6を含むこともあるが、ここで、その多変量光学素子5、6の重み付けの関数は、調節可能であると共にその変調器素子は、その多変量光学素子5、6の重み付けの関数を変調するように、配置される。その多変量光学素子5、6は、その光信号をスペクトルで分散させるための回折格子又はプリズムのような分散性素子30並びにそのスペクトルで分散させた光信号のスペクトルの成分を受信するための並びにその検出器7、8へスペクトルの重み付けの関数によって重み付けられた光信号を分配させるための調節可能な区域32a及び32bを備えた重み付けの関数31を含むこともある。図10の例において、その重み付け素子31は、二つの交差した偏光子の間に挟まれる液晶素子32の配列である。それら偏光子は、それら液晶素子に、例えば、それら液晶を閉じこめる基板に、統合されることもある。それら液晶素子は、各々の列について当技術において周知なようにその列のセルへ印加された電圧Vによって制御される、異方性屈折率を有することもある。その電圧に依存して、そのセルに入射する光の偏光状態は、変化させられることもある。その偏光状態の変化により、その光信号のそれぞれの部分は、少なくとも部分的に透過させられると共に検出器7、8に送られることもある。このような具合に、その重み付けの関数は、実現されることもある。
【0071】
図10の例において、その多変量光学素子5、6は、その重み付け素子31にそのスペクトルで分散させられた光信号を集束させるためのレンズである集束部材33及びその重み付けられた光信号を再度コリメートするための又はそれを検出器7、8に集束させるためのさらなる集束部材34を含む。
【0072】
その変調素子13は、調節可能な区域32を変調することができることもある。その変調器素子13は、それら液晶セルへ印加された電圧を制御する電圧の変化を誘発することもある。このような具合に、その主成分の振幅に関係する検出された重み付けられた光信号の部分及びさらなる成分のさらなる振幅に関係する検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、その変調された重み付けされた関数に依存する。
【0073】
液晶素子の配列の代わりに、組み合わせでそのスペクトルの重み付けの関数を実現する、透過フィルター又は空間的に変動する透過率を備えた光学密度フィルターは、使用されることもある。この素子は、そのスペクトルの重み付けの関数が有効に変調されるように、数学的に取り除かれることもある。
【0074】
要約すれば、光学分析系20は、光信号の主成分の振幅を決定するために、配置される。光学分析系20は、スペクトルの重み付けの関数によってその光信号を重み付けするための多変量光学素子5、6及びその重み付けられた光信号を検出するための検出器7、8を含む。その光信号は、その主成分及びそのスペクトルの重み付けの関数を設計するとき占められなかったさらなる成分を含む。従って、その検出された重み付けされた光信号は、その主成分の振幅に関係する部分及びそのさらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含む。光学分析系20は、その検出された重み付けされた光信号を変調するための変調器素子13をさらに含む。その変調された検出された重み付けされた光信号とその検出された重み付けされた光信号との間の差は、その主成分の振幅に関係すると共にこのように正確な方式でその主成分の振幅を決定することを可能にする。血液分析系40は、このような光学分析系20を含む。主成分の振幅を決定する方法は、光学分析系20を使用する。
【0075】
上述した実施形態が、本発明を限定するというよりもむしろ説明すること、及び、当業者が、添付した特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、多数の代替の実施形態を設計することができると思われることは、留意されるべきである。特許請求の範囲において、括弧の間に置かれたいずれの符号も、特許請求の範囲を限定するようなものと解釈されるものではない。単語“を含む”は、特許請求の範囲に挙げられたもの以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素に先立つ単語“ある”は、複数のこのような要素の存在を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、光学分析系の実施形態の概略図である。
【図2A】図2Aは、皮膚における血液から発生させられた光信号のスペクトルである。
【図2B】図2Bは、溶液における一つの分析物を含む試料から発生させられた光信号のスペクトルである。
【図3】図3は、多変量光学素子において実施されたスペクトルの重み付けの関数である。
【図4】図4は、主成分及びさらなる成分を含む光信号の概略のスペクトルである。
【図5】図5は、図4の主成分の一つに対応するスペクトルの重み付けの関数の概略図である。
【図6A】図6Aは、図5A及び5Bに示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調されてない検出された光信号の概略のスペクトルである。
【図6B】図6Bは、図5に示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光信号の概略のスペクトルである。
【図6C】図6Cは、図5A及び5Bに示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調されてない検出された光信号の概略のスペクトルと図5に示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光信号の概略のスペクトルとの間の差である。
【図7A】図7Aは、光源によって提供された光のスペクトルの帯域幅の変調無しの光学的信号の概略のスペクトルである。
【図7B】図7Bは、光源によって提供された光のスペクトルの帯域幅の変調有りの光学的信号の概略のスペクトルである。
【図7C】図7Cは、図5に示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光学的信号の概略のスペクトルである。
【図7D】図7Dは、図5に示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調されてない検出された光学的信号と図5に示すスペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた、変調された検出された光学的信号との間の差の概略のスペクトルである。
【図8】図8は、光源によって提供された光の波長の変調を備えた光信号の概略のスペクトルである。
【図9】図9は、時間の関数としての光源によって提供された光の波長の概略図である。
【図10】図10は、多変量光学素子の概略の図面であり、ここで、その多変量光学素子の重み付けの関数は、調節可能なものであると共に変調器素子は、その多変量光学素子の重み付けの関数を変調するように、配置される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の主成分の振幅を決定する光学分析系であって、
当該光学分析系は、
スペクトルの重み付けの関数によって該光信号を重み付けする多変量光学素子、及び
該重み付けされた光信号を検出する検出器
を含む、光学分析系において、
該光信号は、該主成分及びさらなる成分を含み、
該検出された重み付けされた光信号は、該主成分の振幅に関係する部分及び該さらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含み、
当該光学分析系は、該検出された重み付けされた光信号を変調する変調器素子をさらに含み、
該変調された検出された重み付けされた光信号と該検出された重み付けされた光信号との間の差は、該主成分の振幅に関係する
ことを特徴とする光学分析系。
【請求項2】
前記変調された検出された重み付けされた光信号と前記検出された重み付けされた光信号との間の差から前記主成分の振幅を決定する信号処理装置をさらに含む、請求項1に記載の光学分析系。
【請求項3】
前記変調器素子は、周波数及び位相で前記検出された重み付けされた光信号を変調することができ、
前記信号処理装置は、前記変調された検出された重み付けされた光信号と該周波数及び該位相を有する前記検出された重み付けされた光信号との間の差から前記主成分の振幅を決定することができる、請求項2に記載の光学分析系。
【請求項4】
ある濃度を有する物質を含む試料を照明する光を提供すると共にそれによって前記主成分を発生させる光源をさらに含み、前記主成分の振幅は、前記物質の濃度に関係する、請求項1に記載の光学分析系。
【請求項5】
前記変調器素子は、前記光源によって提供された光の性質を変調するように、配置され、
前記主成分の振幅に関係する前記検出された重み付けされた光信号の部分及び前記さらなる成分のさらなる振幅に関係する前記検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、該光の性質に依存する、請求項4に記載の光学分析系。
【請求項6】
前記光の性質は、前記光の強度を含む、請求項5に記載の光学分析系。
【請求項7】
前記光の性質は、前記光の偏光状態を含む、請求項5に記載の光学分析系。
【請求項8】
前記光の性質は、前記光のスペクトル帯域幅を含む、請求項5に記載の光学分析系。
【請求項9】
前記光の性質は、前記光の波長を含む、請求項5に記載の光学分析系。
【請求項10】
前記変調器素子は、前記光信号の性質を変調するように、配置され、
前記主成分の振幅に関係する前記検出された重み付けされた光信号の部分及び前記さらなる成分のさらなる振幅に関係する前記検出された重み付けされた光信号のさらなる部分は、異なる方式で、前記光信号の性質に依存する、請求項1に記載の光学分析系。
【請求項11】
前記光信号の性質は、前記光信号の偏光状態を含む、請求項10に記載の光学分析系。
【請求項12】
前記多変量光学素子の重み付けの関数は、調節可能であり、且つ、
前記変調器素子は、前記多変量光学素子の重み付けの関数を変調するために、配置され、
前記主成分の振幅に関係する前記検出された重み付けされた光学素子の部分及び前記さらなる成分のさらなる振幅に関係する前記検出された重み付けされた光学素子のさらなる部分は、異なる方式で、前記変調された重み付けの関数に依存する、請求項1に記載の光学分析系。
【請求項13】
前記多変量光学素子は、前記光信号をスペクトルで分散させる分散性素子並びに前記スペクトルで分散させられた光信号のスペクトルの成分を受信する及び前記検出器へ前記スペクトルの重み付けの関数によって重み付けされた前記光信号を分配させる調節可能な区域を備えた重み付け素子を含み、
前記変調器素子は、前記調節可能な区域を変調することができる、請求項12に記載の光学分析系。
【請求項14】
請求項4に記載の光学分析系を含む血液分析系であって、
前記試料は、血液を含む、血液分析系。
【請求項15】
光信号の主成分の振幅を決定する方法であって、
当該方法は、
スペクトルの重み付けの関数を有する多変量光学素子によって該光信号を重み付けするステップ、及び、
検出器によって該重み付けされた光信号を検出するステップ
を含む、方法において、
該光信号は、該主成分及びさらなる成分を含み、
前記検出された重み付けされた光信号は、該主成分の振幅に関係する部分及び該さらなる成分のさらなる振幅に関係するさらなる部分を含み、
当該方法は、変調器素子によって前記検出された重み付けされた光信号を変調するステップをさらに含み、
前記変調された検出された重み付けされた光信号と前記検出された重み付けされた光信号との間の差は、前記主成分の振幅に関係する
ことを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記変調された重み付けされた光信号及び前記変調されてない重み付けされた光信号から前記主成分の振幅を計算するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2007−515653(P2007−515653A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546432(P2006−546432)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052786
【国際公開番号】WO2005/064314
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】