説明

光学的キャラクタリゼーション法およびシステム

試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置(100)。前記装置は、流体(106)をある充填方向にて満たすよう適合させた、少なくとも一つの測定容器(104)を備えた基板(102)を含み得る。従って、前記装置(100)は、少なくとも一つの測定容器(104)内の流体(106)に照射するための照射ビーム(108)を受けるよう適合させている。前記少なくとも一つの測定容器(104)は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度が変化するよう適合させている。前記測定容器の特性は、流体を満たす間の複数の時点において、流体中の照射ビームの光路長の情報を提供するよう適合させている。更に、対応する光学的キャラクタリゼーション装置を説明する。本発明は、対応する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の光学的キャラクタリゼーションの分野に関する。より特には、本発明は、光学的キャラクタリゼーションシステムに適した構成要素、ならびに光学的キャラクタリゼーションシステムおよび方法であって、例えば、流体における生物学的、生化学的、および/または化学分析の光学的検出等のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的キャラクタリゼーション(または特性評価もしくは特性解析)技術は、例えば材料キャラクタリゼーション、医学的応用、分子診断学、化学的キャラクタリゼーション等において、物質のキャラクタリゼーションを行うために頻繁に用いられる。後者は通常、試料の光吸収測定および/または蛍光測定に基づいて、少量の液体サンプル中の分子、細胞、または小粒子のキャラクタリゼーションをおこなうために使用してよい。得られる光信号は通常、試料の物理的特性の他に、液体試料中の照射ビームの光路長にも依存する。後者の情報は通常、例えば液体試料中の粒子濃度を正確に測定するために必要とされる。現在の多数の応用において、キャラクタリゼーションを行うのに通常使用可能な流体材料の量は限られている。
【0003】
少量の流体の光学的特性を明らかにするための一つの手法が国際特許出願WO 01/14855に記載されている。液体試料を、光ファイバーを含む二つの可動部の間に表面張力によって保持し、試料流体に光を照射してそのルミネセンス応答を収集することによって、光学的特性を測定することが可能である。その技術は通常、試料と読み取りユニットとの間が直接接触していることを必要とし、このことは、先の測定に起因する汚染が測定を妨げ得ることを意味している。更に、試料流体の周りに適切な収容構造が無いので、開放されている(または自由な)空気−液体面が大きく、従って、液体試料の蒸発が短時間のスケールで起こり得る。
【0004】
例えば1mmのオーダーまたはそれより小さい径の小型の容器を、少量の液体試料を入れるのに使用し得ることが知られている。しかし、小型の容器を液体で満たすこと、およびそれを制御することは、小型の容器内の流体に圧力を導入することが必要とされるので、困難である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する優れた装置、ならびに流体の光学的特性を明らかにするための優れた一連の装置および方法を提供することである。本発明の各々の態様の好都合な点は、少量の流体(例えば滴または小滴(1μlに至る体積の流体、更に1nlに至る体積の流体等))を研究し得ることである。光学的キャラクタリゼーションを行うダイナミック・レンジが大きいこと、即ち、広範囲の吸収係数の流体を測定し得ることも、本発明の各々の態様の好都合な点である。本発明の各々の態様の好都合な点は、光学的キャラクタリゼーションを、照射または検出ユニットを汚染することなく行い得ることである。本発明の各々の態様の更に好都合な点は、動的測定(即ち測定容器を満たしている(または注入している)間の測定)を行うことである。なぜなら、それによってキャラクタリゼーションするべき流体の種々の吸収係数に関してコピーする自動化された方法がもたらされるからである。装置、一連の装置、および方法を、様々な種類の光学的キャラクタリゼーション(例えば光度測定、分光光度測定、蛍光測定、または蛍光分光測定等)に使用し得ることもまた、本発明の各々の態様の好都合な点である。測定容積への、またはその測定容積の所定の部分への入口が小さい(例えば、入口を最小化して、流体表面の小さい面積のみを空気にさらし、従って蒸発を制限する)ことも好都合な点である。
【0006】
上述の目的は、本発明の方法および装置によって達成される。
【0007】
本発明は、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、前記装置は、流体をある充填(または注入)方向にてある充填(または注入)速度で満たす(または注入する)ようになっている、少なくとも一つの測定容器を備えた基板を含み、前記装置は、少なくとも一つの測定容器内の流体に照射するための照射ビームを、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って受けるようになっており、前記少なくとも一つの測定容器は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度が、充填速度の関数として変化するようになっており、前記測定容器は、流体を満たす間の複数の時点において、流体中の照射ビームの光路長の情報を提供するようになっている。流体中の照射ビームの光路長の変化速度が、充填速度の関数として変化するようになっていることには、流体中の照射ビームの光路長の変化速度が、測定容器に加えられた試料流体の量の関数として変化するようになっていることが含まれてよい。前記少なくとも一つの測定容器は、一定の充填圧または一定の充填体積流量で、流体中の照射ビームの光路長の変化速度を変化させるようになっていてよい。充填速度は予め決められていてよく、例えば、変数であるが予め決められている。充填速度は固定されていてよい。装置は、光学的キャラクタリゼーションシステムで使用するよう適合させられていてよく、前記システムにおいて、光学的キャラクタリゼーションは測定容器に流体を満たしている間に行う。従って、装置は動的な光学的キャラクタリゼーションを行うようになっていてよく、そこで検出される光信号は測定の間、即ち測定中の種々のサンプリング時点の間に変化する。
【0008】
測定容器は副容器を含んでよく、それによって、測定容器が照射経路に沿って照射されるようになっていてよく、副容器が、前記測定容器における前記照射経路に沿って、(例えば副受器の空間的位置に関して)後に位置してよい。測定容器は、底部から頂部へ向けて満たす充填方向を有するように、および頂部から底部へ照射されるようになっていてよい。別法として、または付加的に、測定容器は、底部から頂部へ向けて充填される充填方向を有するように、および底部から頂部へ照射されるようになっていてよい。
【0009】
装置は、少なくとも一つの測定容器内の流体を光軸に沿って照射するための照射ビームを受けるようになっていてよく、前記光軸は、前記充填方向に実質的に沿う方向である。光軸が前記充填方向に実質的に沿う方向であることは通常、光軸が測定容器の種々の断面を横断することを意味してよく、前記種々の断面は、測定容器の充填方向に垂直な断面である。光軸は、測定容器の充填方向と平行であってよい。光軸が前記充填方向に実質的に沿う方向であることは、光軸が、測定容器の、種々の親水性を有する壁と実質的に平行であることを意味し得る。本発明の各々の態様の好都合な点は、光学的キャラクタリゼーションに必要な流体の量を制限してよいことである。そのような装置を含む光学的検出システムは、測定容器が一部のみ満たされている場合でもなお、使用可能であろう。
【0010】
測定容器は、照射ビームと少なくとも一つの測定容器内の流体との間の相互作用によって発生する光学的検出信号の挙動に、少なくとも一つの変化を、充填の関数(例えば充填速度の関数)として引き起こすようになっていてよい。
【0011】
少なくとも一つの変化を、光学的検出信号の挙動に、充填の関数(例えば充填速度の関数)として引き起こすようになっている測定容器には、光学的検出信号の変化の速度に少なくとも一つの変化を、充填の関数、例えば充填速度の関数として引き起こすようになっている測定容器が含まれてよい。
【0012】
測定容器の形状は、充填方向に対して垂直な断面における変化を含んでよい。従って、装置は、光学的キャラクタリゼーションシステムに使用されるようになっていてよく、そのシステムにおいて、測定容器に流体を満たしている間に光学的キャラクタリゼーションを行う。従って、装置は、動的な光学的キャラクタリゼーションを行うようになっていてよく、検出される光信号は測定の間、即ち測定の種々のサンプリング時点の間に変化する。本発明の態様の好都合な点は、測定容器に流体を満たしている間に光学的キャラクタリゼーションを行ってよいことであり、このことによって、広いダイナミック・レンジにおいて吸収特性を有する流体の光学的測定を行うことが可能となる。
【0013】
測定容器の形状は、充填方向と垂直な断面において少なくとも一箇所で不連続性を有してよい。本発明の各々の態様の好都合な点は、良好な精度を得ることが可能であることである。
【0014】
充填方向に沿う断面の平均径は、充填方向に関して単調変化してよい。充填方向に関して単調変化するということは、充填方向の範囲内の一連の断面の平均径が常に増加し、または常に減少し、サイズの振動が不可能であることを意味する。
【0015】
充填方向に沿う断面の平均径は、最初に流体を満たす測定容器の底部側において最大であってよい。測定容器の底部側は流入チャンネルと接続してよい。本発明の個々の態様の好都合な点は、吸収係数の大きい、または励起率の高い試料流体の光学的特性を明らかにすることが可能であることである。
【0016】
測定容器は、充填方向と垂直で、前記測定容器を貫通する照射ビームの光路を横断する複数の断面、および、充填方向と垂直で、照射ビームの光路を横断しない少なくとも一つの中間の断面を含んでよい。中間の断面が存在することは、充填方向に関して第一断面と第二断面との間に断面が位置し、第一および第二断面が照射ビームの光路を横断していることを意味している。
【0017】
測定容器は、測定容器壁を含んでよく、測定容器壁は測定容器の異なる部分において異なる親水性を有してよい。測定容器壁は、照射ビームの光軸に関して異なる位置にある、測定容器の異なる部分において、異なる特性を有してよい。
【0018】
測定容器は、少なくとも一種の溶解可能な物質であって、流体との接触により溶解する際に、流体中の照射ビームの光路長の情報を提供するようになっている物質を含んでよい。
【0019】
測定容器は、測定容器側壁を含んでよく、測定容器は、測定容器側壁において、充填方向に関して測定容器の頂部と底部との間に位置する、少なくとも一種の溶解可能な物質を含んでよい。
【0020】
測定容器は副容器を含んでよく、それによって、測定容器が照射経路に沿って照射されるようになっていてよく、副容器を、前記測定容器内の前記照射経路に沿って(例えば副容器の空間的位置に関して)後に設置してよく、少なくとも一種の溶解可能な物質の少なくとも一種が、前記副容器の、充填方向に関して頂部または底部に位置してよい。
【0021】
溶解可能な物質は、流体との接触により溶解する場合に流体の吸収係数を変化させるようになっていてよい。
【0022】
測定容器は、測定室の、充填方向に関して頂部または底部に、少なくとも一種の溶解可能な物質を含んでよい。
【0023】
溶解可能な物質は、光学的に測定可能な試料との反応を提供してよい。測定可能な材料には色素が含まれてよい。
【0024】
溶解可能な物質を溶解可能なコーティングとして提供してよい。
【0025】
少なくとも一種の溶解可能な物質は、測定容器の充填方向に沿って、測定容器側壁の少なくとも一部を覆ってよい。後者は、流体の吸収係数の増加をもたらしてよい。
【0026】
少なくとも一種の溶解可能な物質は、複数の溶解可能な物質であってよく、各々が、流体中の照射ビームの光路長に関する異なる情報を示す。複数の溶解可能な物質は、測定容器壁において、測定容器の充填方向に沿って異なる位置に存在してよい。
【0027】
本発明はまた、流体特性を明らかにするための光学的キャラクタリゼーション装置に関し、光学的キャラクタリゼーション装置は、照射ユニット、検出ユニット、少なくとも一つの測定容器を備えた基板を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置、および、少なくとも一つの測定容器に流体をある充填方向にて満たすための流体供給手段を含み、前記光学的キャラクタリゼーション装置は、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器内の流体を照射するようになっており、前記検出ユニットは、前記少なくとも一つの測定容器を満たしている間に複数の時点において、流体からの光学的検出信号を検出するために制御されている。光学的検出信号は、例えば照射ビームの透過光、照射ビームの反射光、照射ビームに応答する蛍光信号のいずれであってもよい。
【0028】
光学的キャラクタリゼーションを補助する装置は、上述のような補助装置であってよい。
【0029】
測定容器は、所定の測定容器特性を有してよく、光学的キャラクタリゼーション装置は更に、前記光学的検出信号から、前記試料流体中の照射ビームの光路長に関する情報を、測定容器特性を考慮して測定するための評価手段を含む。測定容器特性は、測定容器の形状または測定容器壁の特性(例えば親水性等)であってよい。
【0030】
評価手段は、光学的検出信号の挙動の少なくとも一つの変化を、充填の関数(例えば充填速度の関数)として測定するようになっていてよい。
【0031】
評価手段は、光学的検出信号の変化の速度における少なくとも一つの不連続性を、充填の関数(例えば充填速度の関数)として測定するようになっていてよい。
【0032】
光学的キャラクタリゼーション装置は、測定容器内の試料の前記照射に関する照射特性をモニタリングするための光学的制御手段を含んでよい。光学的制御手段は、試料からの前記光学的検出信号の一部を分割する手段、および前記光学的検出信号の前記分割された部分を検出するための検出器を含んでよい。検出器は、前記測定容器内の前記試料中の照射ビームの状態をモニタリングするようになっていてよい。検出器は、検出器要素のマトリックスを含む二次元検出器であってよい。
【0033】
光学的制御手段は、水平方向のずれを少なくとも部分的に校正するために、前記測定容器、前記検出ユニット、または前記照射ユニットのいずれの位置をも制御するようになっていてよい。
【0034】
光学的制御手段は、前記検出ユニットにおいて試料からの前記光学的検出信号の集束を校正するために、集束手段の位置を制御するようになっていてよい。
【0035】
本発明の各々の態様の好都合な点は、水平方向のずれの少なくとも部分的な校正を行ってよいことである。集束手段の位置を制御することは、測定すべき試料流体の表面のシフトに起因する、前記光学的検出信号の焦点のシフトを校正するようになっている。本発明の個々の態様の好都合な点は、試料流体のレンズ効果の少なくとも部分的な校正をもたらしてよいことである。レンズ効果を発生させる、異なる形状の試料流体表面に、校正を適用してよい。
【0036】
光学的制御手段は、光学的キャラクタリゼーション装置にフィードバック信号を与えてよい。フィードバック信号は、位置の制御、または照射源、検出ユニット、測定容器を含む基板、もしくは集束システムのいずれの操作も可能にする。
【0037】
検出ユニットは、少なくとも二つの応答信号を検出するようになっていてよく、第一の光学的応答信号は、キャラクタリゼーションすべき物質中の照射ビームの既知の経路長に対応しており、第二の光学的応答信号は、キャラクタリゼーションすべき物質中の照射ビームの未知の経路長に対応しており、照射ビームの既知の経路長は、照射ビームの未知の経路長よりも実質的に長く、光学的キャラクタリゼーション装置は、前記少なくとも二つの光学的応答信号および照射ビームの前記既知の経路長に基づいて、照射ビームの未知の経路長を導出するための処理手段を更に含む。
【0038】
本発明はまた、試料流体の光学的キャラクタリゼーション方法に関し、その方法は、試料流体で満たされるようになっている測定容器を照射すること、および前記測定容器に試料流体をある充填方向にて充填すること、ならびに、前記照射および充填の間に、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器内の流体を照射することによって、前記試料流体からの光学的検出信号を、複数の時点において検出することを含む。
【0039】
この方法は、前記測定容器の形状を考慮して前記試料流体の特性を導出することを更に含んでよい。満たしている間の複数の時点とは、測定容器における種々の流体高さを意味してよい。
【0040】
前記の前記測定容器の形状を考慮して前記試料流体の特性を導出することは、光学的検出信号の挙動における変化を測定容器の充填の関数(例えば充填速度の関数)として導出することを含んでよい。
【0041】
前記の光学的検出信号の挙動における変化を充填の関数として導出することは、光学的検出信号の変化の速度における変化を、測定容器の充填の関数(例えば充填速度の関数)として導出することを含んでよい。
【0042】
この方法は、前記測定容器内の照射経路に沿って後に位置する、前記測定容器の副容器を、後に満たすことを更に含んでよい。
【0043】
この方法は、試料からの光学的検出信号を、副容器を満たす度毎に検出することを含んでよい。
【0044】
この方法は、試料流体中の照射ビームの既知の経路長に対応する第一の光学的検出信号、および試料流体中の照射ビームの未知の経路長に対応する第二の光学的検出信号を含む、少なくとも二つの光学的検出信号を検出すること、ならびに、二つの光学的検出信号および試料流体中の照射ビームの既知の経路長に基づいて、照射ビームの未知の経路長を得ることを更に含んでよい。
【0045】
この方法は、前記照射および充填の間に、溶解可能な物質を溶解させて流体中の照射ビームの光路長に影響を及ぼすことを更に含んでよい。
【0046】
本発明はまた、光学的キャラクタリゼーション装置に使用するための制御装置に関し、光学的キャラクタリゼーション装置は、照射ユニット、検出ユニット、少なくとも一つの測定容器を備えた基板を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置、および少なくとも一つの測定容器に流体をある充填方向で満たすための流体供給手段を含み、前記検出ユニットは、前記少なくとも一つの測定容器を充填している間に複数の時点において、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って少なくとも一つの測定容器中の流体を照射することによって、流体からの光学的検出信号を検出するために制御されており、制御装置は、少なくとも一つの測定容器を充填すること、および検出ユニットによる検出を同時に行わせるようになっている。
【0047】
本発明はまた、計算装置において実行する場合に、光学的キャラクタリゼーションのための方法を行うよう適合させたコンピューター・プログラム製品に関し、その方法は、試料流体を充填するようになっている測定容器を照射すること、および前記測定容器に試料流体をある充填方向にて充填すること、ならびに、前記照射および充填の間に、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器内の流体を照射することによって、前記試料流体からの光学的検出信号を、複数の時点において検出することを含む。
【0048】
本発明は更に、そのようなコンピューター・プログラム製品を記憶する機械読み取り可能データ記憶装置、および/または、ローカルもしくは広域エリアの電気通信網を通じた、そのようなコンピューター・プログラム製品の伝送に関する。
【0049】
本発明の態様の好都合な点は、これらが自動試験システム(高処理能力(またはハイ・スループット)システム等)に対応可能であることである。
【0050】
本発明はまた、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、前記装置は、流体を充填するようになっている少なくとも一つの測定容器を備えた基板を含み、前記装置は、少なくとも一種の溶解可能な物質を含み、前記溶解可能な物質は、測定容器を満たすことに関する情報を提供するようになっている。前記少なくとも一種の溶解可能な物質を測定容器内に提供してよい。別法として、前記少なくとも一種の溶解可能な物質は、例えば装置の別の部分(例としては流入チャンネル、または測定容器の二つの副容器の間の中間チャンネル)に提供してよい。前記少なくとも一種の溶解可能な物質は、例えば適切な位置において、流体中の照射ビームの光路長の情報を提供するようになっている。後者は、例えば溶解可能な物質が流体と接触する時に行ってよい。測定容器は、流体を、ある充填方向に充填するようになっていてよく、装置は、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器内の流体を照射するための照射ビームを受け取るようになっていてよい。前記少なくとも一種の溶解可能な物質は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度が、充填速度の関数として変化するようになっていてよい。その結果、流体中の照射ビームの光路長は、幾何学的距離と屈折率の積として定義してよく、または、屈折率の変化する媒体においては、局所的な屈折率の光路に沿う積分として定義されてよく、以下のように表される。ここで、dsは経路に沿う長さ要素である。
【数1】

【0051】
測定容器は、少なくとも一種の溶解可能な物質を、充填方向に関して測定室の頂部または底部に含んでよい。
【0052】
測定容器は測定容器側壁を含んでよく、測定容器は、充填方向に対して測定容器の頂部と底部との間の側壁に存在する、少なくとも一種の溶解可能な物質を含んでよい。
【0053】
溶解可能な物質は、流体との接触により溶解する場合に流体の吸収係数を変化させるようになっていてよい。
【0054】
溶解可能な物質は、試料との光学的に測定可能な反応を提供してよい。溶解可能な物質には、色素が含まれてよい。
【0055】
溶解可能な物質は、溶解可能なコーティングとして提供してよい。
【0056】
前記少なくとも一種の溶解可能な物質は、測定容器の充填方向に沿って、測定容器側壁の少なくとも一部を覆ってよい。後者は、流体の吸収係数の増加を提供してよい。
【0057】
前記少なくとも一種の溶解可能な物質は、各々が流体中の照射ビームの光路長に関する異なる情報を表す、複数の溶解可能な物質であってよい。複数の溶解可能な物質は、測定容器の充填方向に沿って、測定容器における異なる位置に存在してよい。
【0058】
本発明はまた、試料流体の光学的特性を明らかにするための(または光学的特性解析のための)、対応する方法に関し、その方法は、試料流体を充填するようになっている測定容器を照射すること、および、前記測定容器に試料流体を充填することを含み、その方法は、測定容器を充填することに関する情報を提供するための溶解可能な物質を装置内で溶解させることを含む。溶解は、装置を充填している間に行ってよい。溶解可能な物質の溶解は、流体中の照射ビームの光路長に影響を与えるためのものであってよい。
【0059】
本発明の別の要旨の目的は、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する優れた装置、ならびに流体の光学的特性を明らかにするするための優れた一連の装置および方法を提供することである。本発明の態様の利点は、システムおよび方法を、正確な光学的キャラクタリゼーションを行うために提供することである。システムおよび方法を提供し、それによって、測定容器に試料流体を満たしている間でさえ正確な光学的キャラクタリゼーションを行い得ることも、本発明の態様の利点である。
【0060】
これらの別の目的および利点は、液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置によって達成され、その装置は、前記液体試料を充填するようになっている少なくとも一つの測定容器を備えた基板、および、ガスを収集するようになっている少なくとも一つのガス収集キャビティを含んでおり、前記測定容器は、前記測定容器内の前記液体試料を、前記液体試料の前記光学的キャラクタリゼーションのための光路に沿って照射するようになっており、少なくとも一つのガス収集キャビティは、前記光路の外側に位置する。本発明の各々の態様において、測定する液体試料中の気泡の実質的減少を得られ得ることが、好都合である。
【0061】
少なくとも一つのガス収集キャビティは、少なくとも一つの測定容器と直接接触してよい。少なくとも一つの測定容器と直接接触しているガス収集キャビティは通常、ガス収集キャビティと測定容器との間に相互接続チャンネルがないこと、または、換言すると、そこでガス収集キャビティの容積が測定容器の容積と隣接していることを意味し得る。
【0062】
測定容器は液体流入容器であってよい。液体流入容器は通常、液体を供給するための流入チャンネルおよび液体を取り出すための流出チャンネルを有する閉じた容器であってよい。
【0063】
少なくとも一つのガス収集キャビティは環状キャビティであってよい。環状キャビティは、基板材料の中心部を囲むいずれのタイプのキャビティ(例えばドーナツ型のキャビティ等)であってもよい。
【0064】
少なくとも一つのガス収集キャビティのうちの一つは、測定容器の、測定容器に試料液体を満たすときに試料液体の上に位置する側に存在してよい。
【0065】
少なくとも一つのキャビティのうちの一つは、測定容器の、測定容器に試料液体を満たすときに試料液体の実質的に下に位置する側に存在してよい。後者は、例えば測定容器を頂部から満たす場合、および測定容器を速く満たす場合、好都合だろう。
【0066】
少なくとも一つのキャビティは、充填方向と垂直な断面を有してよく、その断面積は、測定容器の残りの部分における、充填方向と垂直な断面の断面積と実質的に異なる。
【0067】
基板は更に、液体試料を少なくとも一つの測定容器に供給する流入チャンネルを含んでよく、装置は、流入チャンネルと接続する過圧放出手段を含んでいる。過圧放出手段は、流入チャンネルに直接接続してよい。それは過圧放出チャンネルであってよい。
【0068】
流入チャンネルと過圧放出手段との間の接続は、一旦測定容器に試料流体を満たすと、空気を測定容器中に引き込むことを防止するようになっている直径を有してよい。
【0069】
装置は、少なくとも一つの測定容器と接続する流出容器を含んでよく、そこにおいて、過圧放出手段は、測定容器を満たすときに試料流体が測定容器から流出容器に流れることを実質的に防止するようになっている流れ抵抗を有する。測定容器への充填は、過圧を与えることによって行ってよい。
【0070】
本発明はまた、光学的キャラクタリゼーションシステムであって、照射ユニット、検出ユニット、および液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置を含むシステムに関し、その補助装置は、前記液体試料を充填するようになっている少なくとも一つの測定容器を備えた基板、およびガスを収集するようになっているガス収集キャビティを含み、前記測定容器は、前記測定容器内の前記液体試料を、前記液体試料の前記光学的キャラクタリゼーションのための光路に沿って照射するようになっており、少なくとも一つのガス収集キャビティは、前記光路の外側に位置する。
【0071】
本発明はまた、試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、装置は、少なくとも一つの測定容器備えた基板を含み、前記測定容器は、前記測定容器内の前記液体試料を、前記液体試料の光学的キャラクタリゼーションのため光路に沿って照射するようになっており、装置は更に、少なくとも一つの測定容器に液体試料を供給するための流入チャンネル、および流入チャンネルと接続する過圧放出手段を含む。過圧放出手段は、流入チャンネルと直接接続してよい。それは過圧放出チャンネルであってよい。過圧放出手段は、流入チャンネルが空になった後に空気が測定容器中に引き込まれることを防止するようになっていてよい。過圧放出手段は、試料液体が、過圧放出手段を通るよりも、測定容器に引き込まれるように、しかし、ガスが、測定容器を通るよりも、過圧放出手段を通ってより容易に抜けるようになっていてよい。
【0072】
流入チャンネルと過圧放出手段との間の接続は、ガスが空の流入容器から測定容器内へ自然に流れることを防止するようになっている直径、形状、または壁特性を有してよい。
【0073】
基板は、少なくとも一つの測定容器と接続する流出容器を含んでよく、前記測定容器において、過圧放出手段は、測定容器を満たすときに試料流体が測定容器から流出容器へ流れるのを実質的に防止するようになっている流れ抵抗を有してよい。測定容器を満たすことは、過圧を与えることによって行われてよい。
【0074】
本発明はまた、試料流体をキャラクタリゼーションするための光学的キャラクタリゼーションシステムに関し、システムは、照射ユニット、検出ユニット、および液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する上述の装置を含む。
【0075】
別の要旨において、本発明は試料の特性を明らかにするための光学的キャラクタリゼーション装置に関し、装置は、測定容器内の試料を照射するための照射ユニット、試料からの光学的検出信号を検出するための検出ユニット、および測定容器内の試料の照射の照射特性をモニタリングするための光学的制御手段を含む。
【0076】
本要旨の態様の好都合な点は、試料の正確な光学的キャラクタリゼーションを可能にする方法およびシステムを提供することである。
【0077】
光学的制御手段は、試料からの前記光学的検出信号の一部を分割するための手段、および前記光学的検出信号の前記分割部分を検出するための検出器を含んでよい。
【0078】
検出器は、前記測定容器内の前記試料における照射ビームの状態をモニタリングするようになっていてよい。検出器は、検出器要素のマトリックスまたは位置敏感型検出器表面を含む二次元検出器であってよい。
【0079】
光学的制御手段は、水平方向のずれを少なくとも部分的に校正するために、前記測定容器、前記検出ユニット、または前記照射ユニットのいずれの位置も制御するようになっていてよい。
【0080】
光学的制御手段は、集束手段の位置を制御して前記検出ユニットにおける試料からの前記光学的検出信号の集束を校正するようになっていてよい。本発明の各々の態様の好都合な点は、水平方向のずれの少なくとも部分的な校正を行ってよいということである。
【0081】
光学的制御手段は、集束および/または調節エラーに関する情報を提供するようになっていてよく、情報は、光学的キャラクタリゼーションシステムの読み取り信号の良好な解釈を可能にするようになっている。
【0082】
光学的制御手段は、集束および/または調節エラーに関する情報を、光学的キャラクタリゼーションシステムの評価手段に提供して、光学的キャラクタリゼーションシステムの読み取り信号を校正するようになっていてよい。
【0083】
集束手段の位置の制御は、測定すべき試料流体の表面のシフトに起因する前記光学的検出信号の焦点のシフトを校正するようになっていてよい。本発明の各々の態様の好都合な点は、例えば表面張力に起因する、試料流体の自由な表面のレンズ効果を少なくとも部分的に校正することを提供し得ることである。校正は、レンズ効果を生じさせる試料流体表面の種々の形状に適合させられてよく、または、流体試料の基板材料との接触角の種々の値に適合させられてよい。
【0084】
光学的制御手段は、照射源、検出ユニット、測定容器を含む基板、または集束システムのいずれかの位置または操作を制御するためのフィードバック信号を提供してよい。
【0085】
別の要旨において、本発明はまた、材料の光学的特性を明らかにするための方法に関し、この方法は、試料流体中の照射ビームの既知の経路長に対応する第一の光学的検出信号、および試料流体中の照射ビームの未知の経路長に対応する第二の光学的検出信号を含む、少なくとも二つの光学的検出信号を検出すること、ならびに、二つの光学的検出信号および試料流体中の照射ビームの既知の経路長に基づいて、照射ビームの未知の経路長を得ることを含む。
【0086】
別の要旨において、本発明はまた、物質の光学的特性を明らかにするための光学的キャラクタリゼーション装置に関し、装置は、キャラクタリゼーションする物質を照射するための照射ビームを発生させる照射ユニット、および、照射したキャラクタリゼーションする材料からの光学的応答信号を検出する検出ユニットを含み、そこにおいて検出ユニットは、少なくとも二つの光学的応答信号を検出するようになっており、第一の光学的応答信号は、キャラクタリゼーションする材料中の照射ビームの既知の経路長に対応しており、第二の光学的応答信号は、キャラクタリゼーションする材料中の照射ビームの未知の経路長に対応しており、照射ビームの既知の経路長が照射ビームの未知の経路長より実質的に長い場合に、光学的キャラクタリゼーション装置は更に、前記少なくとも二つの光学的応答信号および照射ビームの前記既知の経路長に基づいて照射ビームの未知の経路長を得る処理手段を含む。
【0087】
本発明の各々の、および好ましい要旨は、添付の独立および従属請求項において提示される。従属請求項の特徴は、請求項において明確に記載されているようにだけでなく、必要に応じて、独立請求項の特徴、および他の従属請求項の特徴と組み合わせてよい。
【0088】
この分野における装置の改良、変化および発展が常になされてきたにもかかわらず、本概念は実質的に新しい、新規の改良を表していると考えられ、この改良には従来の慣例からの脱却が含まれ、より効果的、安定かつ信頼性のあるこの種の装置の提供をもたらす。
【0089】
本発明の教示事項により、流体を光学的にキャラクタリゼーションするための改良された方法および一連の装置の設計が可能となる。本発明の上述の、および他の特性、特徴および利点は、添付の図面と共に以下の詳細な説明から明確となり、図面は例として本発明の原理を説明する。この説明は例示の目的のためのみに与えられ、本発明の範囲を制限するものでない。以下に引用する参照図は添付の図面について言及するものである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1は、本発明の第一の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置の概略図である。
【0091】
図2a〜図2eは、本発明の第一の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する複数の例示的な装置の垂直断面を示す。
【0092】
図3a〜図3cおよび図4a〜図4eは、本発明の第一の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する複数の例示的な装置の、種々の外形の上面図を示す。
【0093】
図5aは、本発明の第一の要旨の第一の態様による、階段状の測定容器壁を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する例示的な装置の垂直断面を示す。
【0094】
図5bは、定常流を用いて図5aに記載の装置を用いた場合の、光学的検出信号を時間の関数として示す。
【0095】
図5cおよび図5eは、本発明の第一の要旨の第二の態様による、蛇行形状の測定容器を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する例示的な装置の垂直断面を示す。
【0096】
図5dは、階段状の流速を使用し、図5cに記載の装置を使用した場合の光学的検出信号を、時間の関数として示す。
【0097】
図6aは、本発明の第一の要旨の第三の態様による、適合させた測定容器表面特性を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する例示的な装置の垂直断面を示す。
【0098】
図6bは、定常流を使用し、図6aに記載の装置を使用した場合の光学的検出信号を時間の関数として示す。
【0099】
図7は、本発明の第二の要旨による、光学的キャラクタリゼーション装置の標準的およびオプションの構成要素の概略図を示す。
【0100】
図8は、本発明の第四の要旨による、光学的制御手段を備えた光学的キャラクタリゼーション装置の概略図を示す。
【0101】
図9および図10は、本発明の第四の要旨の種々の態様による、光学的制御手段を備えた光学的キャラクタリゼーション装置の概略図を示す。
【0102】
図11は、本発明の第三の要旨による方法を行うための計算方法を示す。
【0103】
図12a〜図13bは、本発明の第五の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置の断面を示す。
【0104】
図14aおよび図14bは、本発明の第六の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置の断面を示す。
【0105】
図15は、本発明の第五および第六の要旨の態様による、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置の写真画像を示す。
【0106】
図16aおよび図16bは、本発明の第七の態様による方法およびシステムにおいて使用する場合における、種々の経路長にわたって物質と相互作用する照射ビームの、種々の透過スペクトルを図示する。
【0107】
図17a〜図17cは、本発明の態様による、例示的な微小流体スライドの透視上面図、上面図、および底面図を各々示す。
【0108】
図18a〜図18gは、本発明の態様による、例示的な微小流体構造(の一部)を示す。
【0109】
図19a〜図19dは、本発明の態様による微小流体構造(の一部)の種々の例の断面を図示する。
【0110】
図20a〜図22cは、本発明の態様による、金型成形微小流体構造を製造するのに使用できる金型、および得られる金型成形微小流体構造を示す。
【0111】
図23a〜図23dは、本発明の第四の態様による例示的な微小流体構造を示す。
【0112】
種々の図において、同一の参照符号は同一または類似の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0113】
本発明は、各々の態様に関して、およびいくつかの図に関して説明するが、本発明はそれに限定されず、請求項によってのみ限定される。記載された図面は、単に概略であり、限定的でない。図面において、構成要素のサイズは誇張されているものもあり、例示目的のためのスケールで描いてない。大きさおよび相対的な大きさは、本発明の実施の実際の縮図とは一致していない。
【0114】
更に、本記載および特許請求の範囲における「第一」および「第二」ならびにそれと同様の語は、類似の要素を識別するために使用し、一連しておこった順番または時系列を示すためには必要でない。そのように使用する語が適当な状況において相互に変換可能であること、およびここで記載された発明の態様が、ここで記載または図示された以外の他の順序で実施可能であることを、理解するべきである。
【0115】
特許請求の範囲において使用する「含む」の語を、その後に列挙する手段に限定されるものとして解釈するべきでなく、その語が他の要素または工程を除外しないことに注意するべきである。従って、その語は、言及された場合、示された特徴、数、工程または要素の存在を示すものとして解釈するべきであるが、一つまたはそれより多くの別の特徴、数、工程もしくは要素、またはそれらの集合の存在または追加を除外しない。従って、「手段AおよびBを含む装置」の表現の範囲は、要素AおよびBのみから成る装置に限定するべきでない。それは、本発明に関しては、単に装置の関連する要素がAおよびBであることを意味する。
【0116】
以下の語は、単に本発明の理解を助けるためだけに提供する。これらの定義を、当業者が理解する範囲より狭い範囲を有すると解釈するべきでない。
【0117】
「照射」および「光学的」の語は、少なくともUV、可視光、または赤外照射を意味するが、本発明はそれに限定されず、他のタイプの電磁照射も使用し得る。ここでの「透過(または透明)」の語は、照射または光学的検出信号が実質的に物体を透過することを意味する。
【0118】
「親水性」および「疎水性」の語は、物質が水をベースとする流体を引き付け、はじく程度を各々意味する。それにもかかわらず、本発明はそれに限定されず、「親水性」および「疎水性」を使用する箇所では、「親液性」および「疎液性」(物質が通常よりも流体を引き付け、はじく程度を各々示している)も各々使用してよい。
【0119】
試料流体からの「光学的応答」または「光学的検出信号」は、試料流体との相互作用の後の、照射ビームの透過または反射された一部であってよく、例えば、試料流体またはその中の個々の被分析物による吸収に起因する、強度およびまたはスペクトル挙動の変化を観察することを可能にする。別法として、または付加的に、試料流体からの「光学的応答」または「光学的検出信号」の語は、試料流体またはその中の個々の(必要に応じてラベリングされた)被分析物の、照射ビームによる試料流体の照射に対する応答としての、ルミネセンス応答(例えば蛍光応答等)であってもよい。被分析物のラベリングは、それらの被分析物に標識(例えば放射性標識または蛍光標識)を与えることによって、所定の被分析物を検出するために行ってよいが、本発明はそれに限定されない。そのような標識は直接または間接的に被分析物に付ける。
【0120】
試料流体の光学的キャラクタリゼーションには、試料流体自体の光学的キャラクタリゼーション、または試料流体中に存在する特定の被分析物(例えばタンパク質、抗体、核酸(例えばDNR、RNA)、ペプチド、オリゴ糖または多糖または砂糖、小分子、ホルモン、薬物、代謝産物、細胞または細胞画分、組織画分、特定の化学成分等)のキャラクタリゼーションが含まれてよい。後者は、オリジナルの試料流体において検出してよく、または、試料流体は既に処理(ろ過、緩衝液への溶解、化学的または生化学的修飾、希釈等)されていてよい。試料流体は例えば生物学的流体、環境流体、研究用流体、固体試料物質を含む流体等であってよい。
【0121】
測定容器の底部側について言及している箇所においては、装置が使用中の位置にある場合に、測定容器の、試料流体が重量によって引き寄せられる側について言及している。
【0122】
通常、試料流体は試料液体であってよい。
【0123】
第一の要旨において、本発明は、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関する。そのような装置は、基板、および測定する流体が満たされるようになっている測定容器を含んでよい。従って、そのような装置は、試料流体(例えば液体試料)を保持するための構造を含んでよく、そのために、試料流体の保持をもたらす、チャンネルと測定容器との組み合わせを含んでよい。本発明の第一の要旨の態様による装置は、試料流体において光学的測定を行うことを可能にし得、そこで、試料を通る照射ビームの光路長を調節しまたは変化させ得る。変化は、連続的変化(例えば、連続的に測定容器を満たしている間に試料流体を照射してその応答を検出することによる)であってよい。従って、装置は光学的キャラクタリゼーションシステムに使用してよく、そこで少なくとも一つの測定容器に流体を満たす間に光学的測定を行う。本発明の第一の要旨の態様によると、装置は、少なくとも一つの測定容器内の流体を照射するための照射ビームを受けるようになっている。照射は、測定容器への充填と実質的に同じ方向で、または反対の方向で照射してよい。更に、少なくとも一つの測定容器は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度が変化するようになっており、測定容器は、流体を満たしている間に複数の時間において流体中の照射ビームの光路長の情報を提供するようになっている。流体中の照射ビームの光路長の変化速度が変化するようになっている測定容器は通常、複数の方法で得ることができる。測定容器の形状は、例えば、測定容器の充填方向に対して垂直な断面の変化を含んでよい。別法としてまたは付加的に、測定容器の異なる部分は、異なる親水性/疎水性を有してよく、その結果、測定容器の異なる部分において、充填に対して異なる抵抗が発生し、その結果、異なる充填速度となる。これらの例は、別の態様において更に詳細に論ずるが、本発明はこれらの例によって限定されない。測定する流体試料(例えば液体試料)は、流体の吸収/励起特性を得るのに必要な感度および測定容器の大きさに応じて、1μlまで減少させた、1ナノリットルまで減少させた、またはそれよりも更に少ない体積の少量の試料にすることが可能である。例えば、たった0.007mmの設置面積の測定容器を使用し、最大カラム高さ0.1mmで測定を行い得る場合、1ナノリットルよりも少量であることが必要とされる。測定容器高さは通常、0.1mm〜2mmであってよいが、本発明はそれに限定されない。オプションとして、少なくとも一つの測定容器は、1mmのオーダーまで減少させた直径、または0.1mmのオーダーまで減少させた直径、または更に小さいオーダーに至る直径を有してよく、従って、ナノリットルまたはそれより小さい試料体積の特性を測定することが可能となり、従って、存在する必要のある液体の量に関して、例えば標準的なキュベットを使用する場合よりも、厳格でない要求が課されるようになる。
【0124】
例として、本発明の第一の要旨による、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置を、例示のために図1に示すが、本発明はそれに限定されない。例示的な装置100の、種々の標準的またはオプションの構成要素を、以下に更に詳細に論ずる。
【0125】
装置100は、基板102、および基板における少なくとも一つの測定容器104を含んでよい。従って、装置100は、充填可能な複数の微小流体測定容器104の特定のアレンジメント(または配置)を含んでよい。基板102および少なくとも一つの測定容器104は、例えば、二つまたはそれより多くの微小構造プレートを結合することによって実現し、その微小構造プレートの少なくとも光路が通る部分は光学的に透明である。後者は、材料が、光学的キャラクタリゼーションに用いる照射ビームの波長に対して透過性があることを意味する。基板102はそれに対応して、適切な材料(例えばポリマー、金属材料、またはガラス材料)のいずれからも作製し得、場合により、透過性のある材料と透過性のない材料を組み合わせたものから作製し得る。装置は、互いに対して位置決めしてよい異なる複数のプレートから作製し得、それらは、例えば接着剤を用いて例えば材料を結合することによって、または例えば可動リングを用いることによって密閉してリークを防止してよい。流入容器に外圧が加えられる場合、通常、材料も、例えばチューブ、例えばゴムリングを用いて密封してよく、そのような流入容器に設けられるコネクターで終わってよい。例えば少なくとも一つの反応容器を作製するための、装置100の構造化は、例えば金型成形、エンボス加工、エッチング、アブレーション加工、フライス加工、またはドリル加工により、実施してよい。いくつかの態様において、少なくとも一つの測定容器104、ならびに/または、それに先立つおよび/もしくはそれからの微小流体チャンネルの表面は、はだかの(または剥き出しの)材料特性とは異なる、所定の親水または疎水挙動を有するようになっていてよい。これは、例えば基板に用いる材料の選択、測定容器壁の化学処理またはプラズマ照射(例えばOプラズマ照射)等の、いずれの適切な方法によっても達成し得る。
【0126】
基板102における少なくとも一つの測定容器104は、試料流体106を充填するようになっていてよい。充填は、例として図1の矢印fで示す充填方向で行い得る。その結果、充填方向は、測定容器内の試料流体の上面、またはその上面の平均平面に対して実質的に垂直な方向である。好ましくは、少なくとも一つの測定容器104は照射ビーム108を受けるように適合させられ、前記少なくとも一つの測定容器104内の試料流体106の少なくとも一部を照射する。本発明による態様において、測定容器は流体中の照射ビームの光路長の変化速度を変化させるようになっている。測定容器は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度を変化させるように、流体の流入圧が一定となるように、または流入体積流量が一定となるように、適合させられてよいが、本発明はそれに限定されない。測定容器に起因しない、測定容器内の流入圧または流入体積流量の変化は、測定結果を得るために考慮に入れてよい。測定容器は、複数の方法で改変させ得る。
【0127】
第一の例示的方法において、測定容器の形状は、試料流体106を充填している間に複数の時点において、試料流体106中の照射ビームの光路長の情報を提供するようになっていてよい。測定容器104は、充填方向に対して垂直な断面の変化を含む測定容器形状を有する。好ましい態様において、断面のこの変化は、充填方向に対して垂直な断面の少なくとも一つの不連続性を含んでよい。後者は、測定の精度の向上を可能にする。その結果、測定容器の形状は、その形状が、試料流体106を測定容器に満たしている間に、光学的検出信号の挙動に、充填の関数として影響を与えるようになっていてよい。前記挙動に影響を与えることには、光学的検出信号の変化の速度に、充填の関数として影響を与えることが含まれる。好ましくは、装置は試料流体106の少なくとも一部が、充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って照射する照射ビームを受けるようになっていてよい。充填方向に実質的に沿う方向であることは、光軸が、測定容器104の種々の断面を横切っており、前記種々の断面が測定容器104における充填方向に対して垂直であることを意味し得る。測定容器の少なくとも一つは、例えば階段状壁、蛇行形状等を有してよい。種々の測定容器の形状のいくつかを、図2a、2b、2c、および2dにおいて例として断面図で示すが、本発明はそれに限定されない。図2aおよび図2bにおいて、充填方向に沿って断面の不連続性が起こらない二つの態様を示すが、それに対して図2cおよび図2dにおいて、充填方向に沿って断面の不連続性が起こっている二つの態様を示す。測定容器40の底部を最大の直径にすることが有益である。この事は、試料流体の高さ、およびそれに対応する光路長が、充填の初めにおいて最も低速で増加することを意味する。試料高さがより低速で上昇することによって、強い吸収または高い励起力を有する液体試料について、測定結果がより適切になり得る。通常、測定可能な吸収量は、使用する検出システムの検出限界、および照射ビームが通り抜ける必要のある試料液体の高さによって決まる。充填速度が遅いと、流体の高さがより一定であり続ける、またはより一定でなくあり続ける時間が実質的により長く、その結果、測定容器を満たしている間の測定によって流体高さにおいてなされる相対誤差が減少する。更に、測定容器の直径が大きいほどメニスカスの影響がより小さくなり、そのことも原因となって、流体高さにおいてなされる相対誤差が減少する。
【0128】
第2の例示的な方法において、測定容器壁の特性は、測定容器の異なる部分が試料流体に異なる相互作用を与えるようになっていてよく、従ってその結果、異なる充填速度または所定の流速の影響をもたらす。後者は通常、測定容器表面の異なる部分に対して異なる親水性/疎水性を選択することによって得てよい。例として、異なる特性を有する測定容器壁を有する例示的な測定容器を、図2eに概略的に図示する。異なる親水性挙動(従って異なる疎水性挙動)を有する表面142、144が提供される。例えば毛細管現象によって注入する条件の下で、または測定容器における流体の充填のために流入圧を利用する場合において、流体は通常、測定容器104の表面142を有する部分を通る場合と、測定容器104の表面144を有する部分を通る場合とでは異なる速度で上昇するだろう。このような異なる表面特性を生じさせることは、例えば、異なる部分において、測定容器壁を構成するのに異なる材料を選択することによって、または、測定容器壁の表面を異なる部分において異なる方法(例えばある部分を酸素プラズマ処理に付し、別の部分は処理しないことによる)で処理することによって行う。通常、酸素プラズマ処理に付した表面は、より親水性になり得る。後者の結果、通常、測定容器壁表面と試料流体との間に異なる接触角が存在することになる。
【0129】
従って、測定容器は通常、例えば形状または親水性またはそれらの組み合わせによって、満たしている間に流体の充填速度が変化可能であるようになっている。
【0130】
好ましくは、測定容器104を満たすことが可能であるために、流入容器110および流出容器112、ならびに少なくとも一つの測定容器へ、または少なくとも一つの測定容器から試料流体を導くためのチャンネル114、116を提供してよい。別法として、流入容器110および流出容器112を回避してよく、流体の充填は測定容器において直接行ってよい。好ましくは、少なくとも一つの測定容器104は、底部から、流入マイクロ流体チャンネル114を通って満たす。流入容器110、少なくとも一つの測定容器104および流出容器112の位置は、外部の条件によって選択し得る。後者を図3aおよび図3bに上面図で図示する。更に、一つまたはそれより多くのオプションの試験構造を、試料流体の存在をチェックするために、または流速を測定するために提供してよい。好ましくは、複数の試験構造が使用され、それにより試験構造間の位置および距離によって、試料流体に関する適切な情報を得ることが可能となり得る。流体経路において試験構造118が組み込まれている装置を図3cに上面図で示す。
【0131】
第一の要旨による各々の態様において、本発明は、上述のように光学的検出を補助する装置100を含み、そこで、複数の構造(これらは測定容器、ならびに試料流体のための、測定容器の流入および流出を含む)が装置内に組み込まれている。複数の構造は、例えば種々の形状の構造の混合物、一定の形状および一定のサイズを有する複数の構造、または一定の形状を有するが異なるサイズを有する複数の構造であってよい。構造は、一次元または二次元配列で組織し得る。所定の規格(例えばSociety for Biomolecular Screening(生体分子スクリーニング学会)規格等)に従うピッチで流入容器を(もし存在するなら)設けることが有益だろう。更に、一つの流入容器110を複数の測定容器104に接続してよい。図4a、図4b、図4cに種々の構造の上面図を示し、図4dおよび図4eに、多数の例示的構造が組み込まれた装置の上面図を示す。図4aは、共通の流入容器110、二つの並列している測定容器104、および共通の流出容器112を備える構造を図示する。図4bは、類似の構造であるが二つの流出容器112を備える構造を図示する。図4cは、混合容器120と接続している複数の流入容器110を備える構造を図示しており、前記混合容器は、一つまたはそれより多くの測定容器104および流出容器112へ導かれ得る。図4dおよび図4eは、装置100における複数の構造の種々の配列を提供する。図4dにおいて、測定容器104のピッチp測定容器は、流入容器110のピッチp流入と同じである。従ってピッチp測定容器は、隣接する流入容器と接続している測定容器間の距離(即ち、同一の流入容器と接続している測定容器間の距離でない)として定義する。図4eにおいて、測定容器104のピッチは流入容器110のピッチの半分である。
【0132】
上述の、またはそれらの混合物の、一つまたは複数の構造を備える装置100は、使い捨て可能であってよく、または、使い捨て可能でなくてよい。そのような装置は、使い捨て可能または使い捨て可能でない運搬器上に統合してもよい。試料流体は、柔軟性のある接続部を介して装置内に入り、装置はそのような柔軟性のある接続部を収容するようになっている。使い捨て可能な、および使い捨て可能でない装置または運搬器は、再使用可能な読み取り装置によって読み取る(出力する)ようになっていてよく、および/または再使用可能な照射源によって照射するようになっていてよい。試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置、または運搬器は、位置合わせ機能(例えば、測定容器の位置を定めるための基準)を備えていてよい。オプションとして、固有の識別基準(例えばバーコード)も備えていてよい。
【0133】
装置は充填停止構造を更に含んでよく、測定容器は泡低減手段(例えばリング構造)を備えるようになっており、本明細で更に説明するように、測定容器104を満たしている間に泡の低減を達成してよい。
【0134】
例として、第一の要旨を、本発明のいくつかの態様の詳細な説明として更に説明するが、本発明はそれに限定されない。本発明の他の態様が、本発明の真の精神または技術的教示から逸脱することなく、当業者の知識によって形成され、本発明が添付の特許請求の範囲の用語のみによって限定されることは明らかである。
【0135】
第一の要旨による第一の態様において、本発明は上述のように、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、前記装置は上述と同様の利点を含み、そこで測定容器は、充填方向に対して垂直な方向に種々の断面が存在するような、および、流体試料との相互作用が大きいプローブ・ビーム経路が存在するような測定容器形状を含む。後者は、各々の断面が、流体をキャラクタリゼーションするために使用する照射ビームの光路を横切るようになっている測定容器形状によって得る。照射ビームとの重なりが大きいと、試料流体と相互作用する可能性が高いことにより検出水準が向上するので、例えば、検出する被分析物の量が少ない試料流体に適している。そのような構造の一例を図5aに示し、一定の充填速度において得られる光学的検出信号を図5bに示す。充填段階の間の連続的充填または段階的充填のためには、充填速度の変化は、小さい変化は信号の処理の間に除去することが可能で得られる結果に実質的に影響しないが、好ましくないということに注意すべきである。それにもかかわらず、システムは、充填速度が変化する光学的キャラクタリゼーションシステムにおいても使用してよい。充填速度の変化は、所定の充填速度でよく、即ち、充填速度は変化してよいが、それによって充填速度の変化が知られている、または各々の時間において測定可能である。光学的検出信号の変化の速度を充填の関数として考慮することによって、および、その中の変化を見ることによって、実際の充填速度の影響を除去する。充填速度の通常の小さな変化は、壁に少しの(例えば望まない)不規則性が存在するため、存在してよい。便宜上、以下の例においては、一定の充填速度に関して説明する。図5aに示す例示的な装置100は、測定容器104、(場合により底部側において)流入チャンネル114、および頂部側において流出チャンネル116を含む。流入チャンネルは、測定容器内の異なる位置にあってもよい。装置100は、照射経路を、垂直に位置する容器の中心軸と平行にさせるように、照射源と一列に並ばせるようになり得る。換言すると、重力、および壁によって流体にかかる力を考慮すると、充填方向は、満たしている間の測定容器内の平均の流体表面と垂直であることが可能である。充填方向は図5aにおいて矢印fで表される。照射ビームは充填方向fと平行であってよい。本態様においては、充填方向と照射ビームの方向は測定容器において垂直でないので、容器は、充填方向、従って照射ビームに沿って変化する断面を有する。断面の変化は連続的変化または別個の(disrete)変化のどちらかであってよく、後者は不連続な(discontinuous)変化とも言える。そのような不連続変化は例えば、図5aに示すような階段状の変化であってよい。
【0136】
測定容器を一定の流れで満たす場合、測定容器における流体の充填速度、即ち試料流体の上端の液面が上昇する速度、従って試料流体中の照射ビームの光路長が増加する速度は、測定容器104の、充填方向fと垂直な断面の変化とともに変化する。充填中の、照射ビーム108に対する試料流体の光学的応答の変化を測定することにより、流体カラム高さhOPLについての情報、換言すると試料流体106中の照射ビームの光路長のhOPLの情報を提供する。なぜなら、経路長は、光学的検出信号の挙動の、充填の関数としての変化に由来し得るからである。後者は図5bに図示し、その図において時間の関数としての、測定した光学的検出信号を示し、それは、測定容器104内の試料流体106の体積の関数としての、測定した光学的検出信号と一致する。なぜなら、一定の流れであると考えられるからである。示した結果は照射ビームの透過結果であり、試料流体106中の被分析物による吸光度を示す。tにおいて、測定容器104を満たし始め、試料流体106中の照射ビーム108の光路長が増加するので、透過率は減少し始める。tおよびtにおいて、それらの時点で断面が変化するので、この光学的検出信号が時間とともに変化する速度はtとtとで変化する。これらの結果から、tおよびtの時点における光学的検出信号の光路長を、測定容器形状から知り、それに対応する情報を、充填中の光学的検出信号の測定を介して提供する。この情報は、例えば、信号の処理に使用してよく、例えば中間の測定の光路長の内挿等を可能にする。測定容器104を満たしている間の測定により、満たしている間の光路長の変化を得ることが可能となる。光学的検出信号の不連続性(これは測定容器の形状によっておこる)は測定容器104内の液体高さを指し示しており、それによって光路長の計算が可能となる。試料流体は、連続的または段階的に測定容器104に充填してよい。測定容器104に段階的に充填する場合、液体の高さは光学的測定の間において一定であってよく、それによってより高い精度がもたらされ得る。光学的測定の間に、液体の高さの変化が実質的に構造の断面の変化よりも小さいことが少なくとも好ましい。測定速度は、例えば光学的測定に使用する読み取り装置の種類に依存してよい。
【0137】
第一の要旨による第二の態様において、本発明は上述のように、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、測定容器は、充填方向に対して垂直な方向における少なくとも一つの測定容器断面が照射経路を横切らないような、測定容器形状を含む。換言すると、充填方向に対して垂直な方向における、中間の測定容器断面が存在してよく、その中間の測定容器断面は照射ビームの光路内にない。そのような構造の例を図5cおよび図5eに図示し、図5cに記載されているような測定容器形状の、段階的に満たされた測定容器104に関する、得られる光学的検出信号を図5dに示す。便宜上、以下の例は一定の充填速度に関して説明する。装置100は、複数の副容器130a、130b、および複数の相互接続チャンネル132a、132b・・・を含む少なくとも一つの測定容器104を含む。副容器130a、130bは、測定容器104を照射するときに照射ビームの光路がこれらの副容器130a、130bを通過するように、測定容器内で互いに重なるように位置する。副容器130a、130bは異なる高さを有してよい。副容器130a、130bが存在するために、および、それらの間にある、測定容器104を照射するときに照射ビームの光路に存在しない互接続チャンネル132a、132bが存在するために、測定容器は、充填方向に対して垂直な、測定容器104を照射する照射ビームの光路に存在しない中間の断面が存在するように成形する。流入チャンネル114も、測定容器104を照射する照射ビームの光路の外側であってよく、それにより、相互接続チャンネル132aが必要でなくなり、相互接続チャンネル132bのみが残る。光学的検出は、測定容器104を満たしている間に(例えば連続的に満たしている間または副容器130a、130b各々を満たした後に)行うことが可能である。段階的な充填は、例えば、測定副容器130a、130b、・・・の間の相互接続チャンネル132a、132b、・・・の所定のサイズを選択することによって、および入口における圧力を制御することによって達成し得る。入口側で与えられた圧力において、第一副容器と第二副容器を接続する相互接続チャンネルの直径は、第二副容器に流体が流入するのを防止するために十分小さく設計することが可能である。そこで、充填の制御は、入口サイズにおいて圧力を段階的に制御することによって実現する。通常、孔が小さいほど、流体圧力が大きいことが必要とされるので、例えば第一相互接続チャンネルは、第二接続チャンネルより大きいものを選択してよい。このような場合において、充填の制御は、入口圧を段階的に増加させることによって達成してよい。相互接続チャンネル132a、132bのサイズの他に、他の特性(例えば相互接続チャンネルの壁の親水性/疎水性等)は、副容器への充填を制御するために制御することが可能である。より一般的には、流入する流れに関する、相互接続チャンネルの流体の抵抗特性は、入口サイズにおける圧力を制御することによって副容器の充填の制御を積極的に制御し得るように選択する。
【0138】
段階的に満たされた測定容器104に関して、図5cに示す測定容器104の形状を使用して得られる通常の光学的検出結果の略図を図5dに図示する。t、t、t、およびtの表示は、測定容器104への充填を行っている間の時(または瞬間)を示し、それぞれの時の間において、試料流体の高さに変化がなく、従って光路長に変化がないので、光学的検出信号は一定である。例として、吸収実験の結果を示すが、本発明はそれによって限定されない。tに先だっては、流入チャンネル114内に流体は存在せず、照射ビームの全ての強度が検出される。基板102による吸収減損および装置100の外側の他の減損は、充填後のフレネル(Fresnel)反射の変化と同様に無視するが、実際にはこれらを考慮に入れることが可能である(例えば空の装置100についてレファレンス測定を行うことによる)。tにおいて流入チャンネル114は満たされ、tとtの間において、試料流体の表面は相互接続チャンネル132a内に位置する。後者は、tとtとの間において一定の光学的検出信号をもたらし、それによって、光学的検出信号に対応する光路長を測定容器104の形状より(即ち流入チャンネル114によって)提供する(即ち規定し得る)。tにおいて副容器130aが満たされ、tとtとの間において、試料流体表面は相互接続チャンネル132b内に位置し、その結果、tとtとの間において一定の光学的検出信号をもたらし、光学的検出信号に対応する光路長を、測定容器104の形状により(即ち流入チャンネル114および副容器130aにより)重ねて提供する。tにおいて副容器130bが満たされ、tの後では測定容器104が完全に満たされているので試料流体表面は一定である。その結果、光学的検出信号は、異なる副容器130a、130b、および流入チャンネル114における吸収に依存し、測定容器104の形状(即ち流入チャンネル114および副容器130a)は、光学的検出信号に対応する光路長を重ねて提供する。大きい吸収係数または高い励起率による光学的キャラクタリゼーションを可能にするために、最小の高さを有する容器を最初に満たしてよい。副容器130aと130bとの間の物質は、試料流体/装置接触面の間のフレネル反射が最小となるように選択してよい。複数の通常の用途において、本発明を限定することなく、試料流体106は添加剤を含む水であってよく、その屈折率は1.33に近い。従って、接触面の材料に適した候補は、例えばテフロン(登録商標)である。
【0139】
相互接続チャンネル132a、132bを満たしている間に、光学的測定を行い得る。充填時間を制御するために、相互接続チャンネル132a、132bの形状および長さ、ならびに流入容器110(図5cに図示せず)において加える圧力を最適化し、光学的測定を十分な時間をかけて行うことを可能にする。複数の容器と接続している相互接続チャンネル132a、132bの流れ抵抗は、大きくてよく、その結果、副容器130aへの充填と130bへの充填との間に遅延が生じる。別法として、相互接続チャンネル132a、132bは、図5eに示すように比較的長くてよい。
【0140】
第一の要旨による第三の態様において、本発明は、上述のように、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、前記装置は上述のものと同じ利点を含み、前記装置において、測定容器表面の異なる部分が、試料流体と相互作用するための異なる特性を有する。通常これらの特性は、表面の親水性/疎水性である。一例を図6aに示す。本態様による装置を用いる場合、充填圧力または流入体積流量の、測定容器が原因でない変化は、それらの変化が知られている限りにおいては適用してよく、その結果、得られる結果を解釈するためにそれらの変化を考慮に入れることが可能となる。説明を簡単にするために、一定の充填圧力に関して例を説明するが、本発明はそれに限定されない。装置100は少なくとも一つの測定容器104を含み、測定容器のある部分(副容器130aと呼ぶ)において第一の特性を備える第一表面142を有し、測定容器の別の部分(副容器130bと呼ぶ)において第二の特性を備える第二表面144を有する。従って副容器130a、130bは、互いに重なり合って位置しているように見え、その結果、照射ビームの光路がこれらの副容器130a、130bを通り、その場合、測定容器104が照射される。副容器130a、130bは、異なる高さを有してよい。第一および第二の壁の特性は通常、異なる親水性/疎水性挙動を含む。副容器130a、130bにおいて異なる壁の特性を有するので、光路長の変化速度は、図6bで示すように変化してよく、その変化は、充填中の測定容器104を通過するときの、照射ビームの透過スペクトルを示す。tにおいて、測定容器104を満たし始めて、試料流体中の照射ビーム108の光路長が増加するので、透過率は減少し始める。tにおいて、この光学的検出信号が時間とともに変化する速度は、壁の特性が異なり、従って充填圧力に対する壁の抵抗が変化して充填速度が変化するので、変化する。tにおいて、透過結果は、容器104が完全に満たされていることに対応しているので、もはや変化しない。これらの透過結果から、tの時点における光学的検出信号に対する光路長は、測定容器の異なる特性を備えた表面の位置からわかり、関連する情報を、満たしている間の光学的検出信号測定によって得る。この情報は、例えば信号の処理に使用してよく、それにより、例えば中間の測定のための光路長の内挿等を可能にする。測定容器104を満たしている間の測定により、満たしている間に経路長が変化することが可能となる。光学的検出信号の不連続性(これは測定容器の表面特性を示す)は、測定容器104内の液体の高さを示しており、それによって光路長の計算が可能となる。
【0141】
本発明の第四の態様において、本発明は、上述のように流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、上述した利点と同じ利点を含むが、流体中の照射ビームの光路長の情報の提供は、光路長に影響を及ぼす溶解可能な物質を用いることによって行われる。本態様によると、流体106と接触することによって溶解するときに照射ビームの光路長の情報を提供するようになっている測定容器内に、少なくとも一種の溶解可能な物質を与える。溶解可能な物質は、充填方向に関して測定容器の頂部および底部、または、充填方向について測定容器の頂部と底部との間の測定容器側壁に供給してよい。溶解可能な物質は、流体と接触することによって溶解すると流体の吸収係数を変化させるようになっていてよい。溶解可能な物質は、光学的に測定可能な、試料との反応を提供してよい。溶解可能な物質には、色素が含まれてよい。測定可能な材料は、溶解可能なコーティングとして提供してよい。溶解可能な物質は、測定容器の局所的な限られた範囲に用いて良く、または、測定容器の充填方向に沿って、測定容器の側壁の少なくともかなりの部分を覆ってよい。後者は流体の吸収係数の増加を提供する。いくつかの態様において、少なくとも一種の溶解可能な物質は、複数の溶解可能であって、各々が流体中の照射ビームの光路長の異なる情報を示す物質であってよい。複数の溶解可能な物質は、測定容器の充填方向に沿って、測定容器の異なる位置に存在してよい。例として、本態様の種々の例を図23a〜図23dに図示する。図23aおよび図23bは、測定容器104の上方部分を溶解可能な物質1202(この例においてこれは赤色色素等の色素である)で覆っている、例示的態様を示す。満たしている間、流体の高さが溶解可能な物質に達するとすぐに、流体の色が変化して、その結果、流体106中の照射ビーム108の光路長が変化する。後者は光学的に検出可能である。溶解可能な物質は、好ましくは容易に溶解して、光学的影響が速やかに得られる。材料の位置に関する情報に基づいて、光路長についての情報を得ることが可能である。溶解可能な物質の量をよく知っている場合、溶解可能な物質を用いている部分の端に流体が達しているところの流体の高さに関する情報だけでなく、他の流体の高さに関する情報も、吸収の変化と溶解した材料の量との相関に基づいて得られるだろう。図23bにおいて、溶解可能な物質を有しない第一表面142を備えた測定部分の一部分を副容器130aと呼び、溶解可能な物質を有する第二表面144を備えた測定容器の別の部分を副容器130bと呼ぶ。従って、副容器130a、130bは、互いに重なり合うように位置しているように見え、照射ビームの光路は、それらの副容器130a、130bを、測定容器104を照射しているところで通り過ぎる。副容器130a、130bは異なる高さを有してよい。例として、図23bに示す装置の流入チャンネルは、図23aに示す装置のそれとは異なる位置にあるが、本発明はそれに限定されない。図23cにおいて、充填方向に沿って異なる位置にて、溶解可能な物質1202を測定容器壁に用いる例示的な態様を示す。使用する溶解可能な物質1202は、同じ材料であってよく、その結果、同じ波長領域において吸収の違いをもたらし、または、異なる材料であってよく、その結果、異なる波長領域において吸収の違いをもたらす。図23dにおいて、異なる副容器130a、130bが存在し、次の副容器130bへの充填が、色素が溶解して吸収が変化することによって示される例を示す。この例における溶解可能な物質1202は、最も高いところにある副容器130bの底部に用いて、この副容器に充填されるとすぐに吸収への影響がおこる。本態様はこれらの例に限定されず、光学的に測定可能な影響を与える溶解可能な物質は異なる位置、異なるパターン(または模様)等で提供することが可能であることに注意しなければならない。
【0142】
種々の態様において、測定容器の形状または表面特性のどちらかを調整しているが、本要旨は、測定容器形状と測定容器表面特性の両方を、試料流体中の光路長の変化速度を変化させるように調整する態様にも関する。後者は、例えば一定の充填圧力、一定の体積流量で評価してよいが、本発明はそれに限定されない。充填圧力または体積流量の変化は、それらが知られている限りにおいては本態様による装置を用いて適用してよく、その結果、得られる結果を解釈するために、それらの変化を考慮に入れることが可能となる。
【0143】
第二の要旨において、本発明は、流体の光学的キャラクタリゼーションを行うための光学的キャラクタリゼーション装置に関する。光学的キャラクタリゼーション装置は、照射ユニットおよび検出ユニットを含み得、光学的キャラクタリゼーションを補助する、基板および少なくとも一つの満たすべき所定の測定容器形状を含む測定容器を使用するようになり得る。光学的キャラクタリゼーション装置は、少なくとも一つの測定容器への充填を制御する流体供給手段を更に含み得、前記装置において、検出ユニットは、測定容器を満たしている間に複数の時点において試料流体からの光学的検出信号を検出するようになっている。このような光学的キャラクタリゼーション装置は、透過型および反射型で用いてよい。本発明の第2の要旨による例示的な光学的キャラクタリゼーション装置を図7に示し、光学的キャラクタリゼーション装置200の標準およびオプションの構成要素を示し、以下により詳細に論ずる。
【0144】
光学的キャラクタリゼーション装置200は照射ユニット202を含み得る。そのような照射ユニット202は、照射源204およびビーム形成システム206を含んでよい。照射源は照射ビームを提供するようになり得る。照射ビームは、例えば光ビームであってよい。照射源204は、照射ビームを供給するのに適するいずれの照射源(例えば、レーザー・ビームまたは複数のレーザー・ビーム、白色光源、フィルターを通した白色光源、単一のLEDまたは複数のLED、キセノンランプ、パルスキセノンランプ、重水素ランプ(重水素放電管)等)であってもよい。照射ユニット202は、一つもしくは一列の光プローブ・ビーム、または二次元配列の光プローブ照射・ビームを含んでよい。照射ビームは、試料流体と相互作用するおよび/または試料流体を励起させるのに適した、いずれの波長をも含んでよく、または複数の前記波長を含んでよい。分光測定のために、例えば、波長の範囲が照射ビームにおいて存在してよい。照射ビームは、ビーム形成システム206を用いて測定容器内に映してよく、前記ビーム形成システムは倍率Mを有してよい。ビーム形成システムは、光学的構成要素を含む。ビーム形成システムおよび読み取りユニットを設計して、最大のスループット(または処理能力)効率を備えた構造を含む試料流体において最小のビーム直径を得ることが有益である。測定容器におけるスポットの直径はd光源で与えられる。測定容器におけるスポットの開口数はNA光源/Mで与えられる。測定容器におけるスポットからLの距離において、空の測定容器の直径は、M*d光源+2*L*tan(NA光源/M)で与えられる。流体において、ビームの開口数は通常、スネルの法則から導出され得るように、より小さいことに注目すべきである。距離Lは、測定受器の高さの半分で与えられる。光源の開口数NA光源が小さいので、この直径は、M*d光源+2*L*NA光源/M)で与えられる。この直径により、倍率の最小値M=sqrt(2*L*NA光源/d光源))が達成される。測定容器内の最小のスポットの直径は、sqrt(2*L*NA光源*d光源))であり、測定容器内のスポットのNAは、sqrt(d光源*NA光源/(2*L))である。容器の頂部および底部側におけるスポットの直径は、2*sqrt(2*L*NA光源*d光源))であり、これは、容器高さに位置するスポットにおける直径のちょうど二倍である。
【0145】
検出ユニット208は、試料流体からの光学的検出信号を検出するようになっていてよい。後者は、例えば透過した照射ビーム、反射した照射ビーム、照射ビームに応答する蛍光信号等のいずれであってもよい。検出ユニット208(これは読み取りユニットとも呼ぶ)は分光計(これによりスペクトル測定が可能となる)、または強度検出器(これにより光の強度測定が可能となる)、および/または、偏光測定を可能にする検出器であり得る。このような分光計は、プリズムまたは回折格子等の光分割手段、および、入射光の異なる波長を検出するための少なくとも一つの検出器要素を含み得る。強度検出器は、例えば光検出器(例えばフォトダイオードまたはピクセル検出器等)であってよい。オプションとして、光学フィルターも照射経路に設けてよい。検出ユニット208は、測定容器104を満たしている間に複数の時点において、試料流体からの光学的検出信号を検出するよう適合させられ得る。検出ユニット208は、一つもしくは一列の光検出器要素、または光検出器要素の二次元配列を含んでよい。
【0146】
光学的キャラクタリゼーション装置200は、試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100を更に含む。後者は、試料流体を内に含み得る装置であって、基材102、および、満たされるようになっており、照射ビームによって照射されるようになっている少なくとも一つの測定容器104を含む装置であってよい。試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100は、本発明による第一の態様において記載された装置100であってよい。別法として、試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100は、例えば充填方向に対して垂直な方向における断面のサイズまたは形状に関して、または測定容器特性に関して、測定容器104に与える要件がより少ない装置であってよい。試料流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100または複数のそれらの装置は、透過性であり得る、または測定容器に光学的にアクセスするための孔を含み得る、可動の運搬器に設置してよい。測定容器104の直径(例えば平均直径)は、光源(ランプ、ファイバー(光ファイバー)等)のパラメーターの関数として、および測定容器104に要求される高さの関数として選択してよい。検出ユニット208は、測定容器104においてビームの特性に適合させるように設計してもよい。使用するサイズの通常の例を表1に与える。単色光およびコヒーレント光によって、より小さい直径が達成される。
【表1】

【0147】
少なくとも一つの測定容器104への充填を制御するための流体供給手段210は、測定容器104に流入する試料流体の圧力を制御することによって測定容器への充填を制御するように適合させられてよい。流入圧力を制御すること、従って流体供給速度を間接的に制御すること、即ち流入する体積流量を制御することが有益である。いくつかの例において、光学的測定の間に、液体試料を実質的に一定の高さに保持し、各光学的測定との間に流体試料を加速させる、即ち段階的充填を得るために充填を制御する。流体供給手段210は、ポンプによる手段であってよい。また、一定圧力を供給してよく、それによって満たしている間に光学的測定を行ってよい。流体供給手段210は、測定容器104に流入する試料の圧力を制御するためのポンプおよびバルブ構造を含んでよい。流体供給手段210は、管を用いて(例えば可とう性のある管を用いて)、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100に直接または間接的に接続してよい。流体供給手段210は、例えば、可塑性のある管で可動部分と接続してよく、そこで、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100は、流出穴を有する可動部分に設置してよく、前記流出穴は光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100の流入容器110に適合している。可動部分と、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100との間のリーク(例えば空気のリーク)を防ぐために密閉を与える。別法として、流体供給手段210は、流入容器および流体供給チャンネルをベースとしてよく、前記流体供給チャンネルは、流体が重力ならびに/またはチャンネルおよび容器の親水性もしくは疎水性によって流体を供給するように、形状および/または位置および/または特性について調整される。
【0148】
光学的キャラクタリゼーション装置200は、オプションとして、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100、または、一つまたはそれより多くの光学的キャラクタリゼーションを補助するそのような装置100を含む運搬器の位置を制御するための、位置制御装置212も含んでよい。位置制御装置212は、これらの要素を、照射ユニット202および/または検出ユニット208に関して所望の位置にもってくるようになっていてよい。別法として、またはそれと組み合わせることで、位置制御装置212によって、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100に関して、検出ユニット208および/または照射ユニット202を動かすことが可能となってよい。
【0149】
光学的キャラクタリゼーションシステムの種々の構成要素は、再使用可能な光学的キャラクタリゼーション装置の一部であってよく、または、使い捨て可能なもしくは固定された、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100の一部であってよい。
【0150】
光学的検出システムは更に、オプションとして、試料の水平方向の位置または焦点位置を校正するためのフィードバックシステム(図7に図示せず)を含んでよく、以下により詳細に説明する。
【0151】
光学的検出システム200は更に、流体供給手段210、検出ユニット208、および場合により照射ユニット202を同期させるための制御装置220も含んでよい。照射ビームまたはそこで得られるルミネセンス応答の検出は、満たしている間に行われ得、従って、同期化が必要とされる。充填を制御して所定の測定容器特性の情報を考慮しながら光学的キャラクタリゼーションを行うことによって、試料の光学的キャラクタリゼーションを行ってよく、照射ビームと相互作用した試料流体の量を規定することが可能であるので、定量的結果を得てよい。後者は、試料流体中の照射ビームの光路長に関する情報に基づいて規定される。
【0152】
光学的キャラクタリゼーション装置200は、流体中の照射ビームの光路長の情報を、検出した光学的検出信号から規定するための評価手段222を更に含んでよく、従って、測定容器特性(形状または壁特性等)を考慮に入れてよい。そのような評価ユニット222は、処理手段109(例えばマイクロプロセッサ等)ならびに/または、得られたおよび/または処理した評価情報を蓄積するための記憶要素を含んでよい。更に、通常の入力/出力手段が存在してよい。評価ユニット222は、評価ステップを実行するための、適切なソフトウェアまたは専用ハードウェア処理手段を用いて制御してよい。後者は、例えば、光学的検出信号の変化の速度における、充填の関数としての少なくとも一つの変化を規定することを含んでよい。好ましくは、光学的検出信号の変化の速度における、充填の関数としての変化は、光学的検出信号の変化の速度において、充填の関数(例えば、測定容器に加える試料流体の量の関数)として不連続であってよい。後者は、一定の断面を有する測定容器の、一定の所定の流れに基づいて光路長を規定することを別法として含み、その結果、充填速度が一定となる。従って、容器内の液体試料高さは、ポンプ速度に線形依存する。しかし、容器の直径が不確定であることによって、容器内の液体高さが不確定となり、従って、この解法がより好ましくないものとなる。評価ユニット222は、本発明の第三の要旨に従う方法において説明するように、試料流体の特性を導出するようになっていてよい。
【0153】
第三の要旨において、本発明は、試料流体の光学的キャラクタリゼーションを行う方法に関する。試料流体の光学的キャラクタリゼーションを行う方法は、試料流体を充填している間に測定容器を照射するように、従って、広い濃度範囲において被分析物濃度を有する試料流体の光学的キャラクタリゼーションを可能にするようになっている。方法は、試料流体を充填するようになっている測定容器を照射すること、および試料流体を測定容器に充填することを含み得る。後者は、ポンプまたは他のいずれかの適切な方法を用いて流入容器に圧力を加えることによって行われてよい。充填は、好ましくは測定容器の底部側、または底部側付近の流入チャンネルを用いて行う。測定容器の底部側とは、使用するために装置を設置しているときに、測定容器の、試料流体が重力により通常保持される側である。
【0154】
方法は、照射および満たしている間に、複数の時点において試料流体からの光学的検出信号を検出することを更に含む。満たしている間の種々の時点において、測定容器内の試料流体の流体高さが異なってよい。その結果、光学的検出信号の検出は、例えば実質的に連続的な検出、一定間隔での検出、または測定容器への充填の充填プロセスにおける所定の時点における測定であってよい。光学的検出信号の検出は、試料流体からの照射光の強度および/または分光組成を含んでよい。従って、試料流体からの照射光は、測定容器に最初に導入するように調節した照射ビームを含んでよく、または、測定容器に最初に導入する照射ビームに対する応答としてのルミネセンス応答であってよい。
【0155】
方法は、試料流体の特性を光学的検出信号に基づいて導出することを更に含んでよく、従って、測定容器特性を考慮に入れてよい。後者は、測定容器形状または測定容器壁特性であってよい。試料流体の特性を光学的検出信号に基づいて導出することは、所定のアルゴリズムに基づいて、ニューラル・ネットワークを用いて、または他の適切な方法によって行ってよい。試料流体の特性を光学的検出信号に基づいて導出することは、試料流体中の照射ビームの照射経路長の導出を含んでよい。後者は、被分析物の濃度を測定するのに好都合だろう。
【0156】
本発明の各々の態様に用いてよい、例示的アルゴリズムまたはその一部は、例えば、光学的検出信号を、測定部分に加える試料流体の量の関数として評価することを含んでよく、光学的検出信号の挙動の、試料流体の量の関数としての変化を検出してよい。光学的検出信号の、充填の関数としての挙動は、流体の高さが例えば断面の変化に達する時点(特に断面が不連続である時点)において、または前記液体の高さが例えば異なる親水性を有する測定容器の壁部分に達する時点において変化するだろう。従って、後者は、測定容器内の流体の高さに関する情報、従って、測定容器内の試料流体中の照射ビームの光路長に関する、情報を提供してよい。そのような変化は、例えば、光学的検出信号の変化の速度の、充填の関数(即ち、測定範囲に加える試料流体の量)としての変化、または光学的検出信号の変化の速度の変化であってよい。換言すると、そのような変化は、光学的検出信号の、測定容器に加える試料流体の関数としての、一次導関数または二次導関数であってよい。他の測定も使用してよい。態様において使用してよい別法の例示的アルゴリズムであって、その後副容器が満たされるアルゴリズムは、満たされる複数の副容器の関数として光学的検出信号を評価することを含み、各々の使用する副容器内の通常の照射経路長を考慮に入れる。後者は、例えば、後に測定容器の副容器を満たす態様において行ってよく、従って、副容器は、測定容器の照射経路に沿って後に位置し、試料からの光学的検出信号の検出を、副容器を満たす度毎に行う。別法のアルゴリズムおよび測定も使用してよい。
【0157】
特性の導出は、定性的に、および好ましくは定量的にも、試料流体中の被分析物を測定することを含む。被分析物の同定を行ってよい。所定の被分析物の存在または濃度を測定してよい。後者は、例えば、光学的検出信号で生じる、透過、反射、吸収または蛍光強度および/またはスペクトルに基づいてよい。更に、試料の特性の導出は、以前の測定、文献値、または検索表から得ることのできるレファレンス測定に基づいてよい。
【0158】
方法は、前記照射および満たしている間に、溶解可能な物質の溶解、従って、流体中の照射ビームの光路長に影響を与えることを更に含んでよい。後者は、第一の態様の第四の態様において説明したように、マイクロ流体装置を用いて行ってよい。
【0159】
方法は、自動化された、または自動的な方法で行ってよい。この方法は、本発明の第二の要旨において説明したような光学的キャラクタリゼーション装置を用いて適切に行ってよいが、本発明はそれに限定されない。
【0160】
第四の要旨において、本発明は試料の光学的キャラクタリゼーションのためのシステム、およびそれに対応する、試料の光学的キャラクタリゼーションを行う方法に関する。システムは、測定容器内の試料を照射するための照射ユニット、試料からの光学的検出信号を検出するための検出ユニット、および測定容器内の試料の照射の照射特性をモニタリングするための光学的制御システムを含む。光学的制御システムを使用することにより、(例えば試料によって持ち込まれた)光学的ずれまたは影響、ランプの不安定性、または種々の構成要素の互いに対するドリフトを校正することが可能となる。本発明の第四の要旨よる、光学的キャラクタリゼーション装置300の全体図を、図8に概略図で示す。この図は、照射ユニット202、検出ユニット208、少なくとも一つの測定容器を備える基板を含む装置100、および光学的制御システム302を示す。いくつかの例示的態様を図9および図10に示す。照射ユニット202および検出ユニット208は、いずれの適切な照射ユニット202および検出ユニット208であってもよい。照射ユニット202は、試料の光学的キャラクタリゼーション(例えば、透過率、吸収、反射または蛍光測定)に適した照射源204を含んでよい。照射ビームは、本発明の第2の態様の光学的キャラクタリゼーション装置の照射ユニットに関して説明したのと同じ特徴を含んでよく、同じ利点を有してよいが、本発明はそれに限定されない。検出ユニット208は、試料流体からの光学的検出信号を検出するようになっていてよい。後者は、例えば透過した照射ビーム、反射した照射ビーム、または照射ビームに応答する蛍光信号のいずれであってもよい。検出ユニット208(読み取りユニットとも呼ぶ)は、例えば分光計(これはスペクトル測定を可能にする)、または強度検出器(これは光強度測定を可能にする)であり得る。検出ユニット208は、実質的に連続的に測定するように、もしくは第2の要旨において説明したように注入の間だけ測定するように、または単に、試料の光学的キャラクタリゼーションのための、満たされた、または一部満たされた測定容器を測定するようになっていてよい。検出ユニット208は、本発明の第2の要旨の光学的キャラクタリゼーション装置の検出ユニットに関して説明したのと同じ特徴を有してよく、同じ利点を有してよいが、本発明はそれに限定されない。
【0161】
検出装置300は、試料を保持するための測定容器を備えた基板を更に含み得る。換言すると、検出装置300は、試料を照射すること、および試料からの光学的検出信号を検出することを可能にする試料保持器を含み得る。後者は、調節された照射ビーム、または、照射ビームの応答としての光学的検出信号であってよい。測定容器は、固体試料または液体試料に適していてよい。それは標準的な測定容器であってよく、または、第一の要旨による装置および/または第2の要旨による装置に関して説明したように、試料中の照射ビームの光路長に関する情報を提供するようになっていてよい。
【0162】
本態様による検出装置は、測定容器内の試料の照射源の照射特性をモニタリングするための光学的制御システム302を含む。後者は、測定容器内の試料の照射源の照射特性の検出、校正、または最適化を可能にする。これらの照射特性は、測定容器を通過した後のビームの位置および/または伝搬方向、集束距離、水平方向のずれ等を含んでよい。照射特性のモニタリングは、光学的検出信号の検出部分によって行ってよい。後者は、例えば、光学的検出信号を、測定容器を通った後に分割して、検出ユニットによって検出すべき光学的検出信号、および、光学的制御システム302の一部である追加の検出器306によって検出すべき光学的制御信号とすることによって得てよい。このような分割は、例えば、ビーム・スプリッター(またはビーム分割器)304によって行ってよい。別法として、または付加的に、分割は、例えば回転鏡または分割器によって行ってもよく、これらは、光学的検出信号を一定間隔で追加の検出器306へと偏向させて光学的制御信号を発生させる。追加の検出器306は、光学的検出信号ビームの特性を評価するための、いずれの適切な検出器であってもよい。それは、例えば単一の構成要素、一列の検出器、または二次元検出器であってよく、これらは、焦点、一方向のずれ、または二方向のずれに関する情報を提供するように適合させられている。検出器は、光学的検出信号ビームおよびそれに対応する照射ビームの位置または形状を検出するようになっていてよい。二次元配列検出器は、照射ビームのずれの程度および方向に関する情報を提供してよい。照射源の照射特性のモニタリングには、照射源の照射特性を参照値と比較すること、レファレンス測定を用いること、先に測定した結果と比較すること、検索表と比較すること等が含まれてよい。得られた情報は、例えば測定結果におけるエラーを校正するために、検出ユニットからのデータに後処理を行うために使用してよい。換言すると、得られた情報は、ソフトウェアベースの(またはソフトウェアに基づく)読み取り信号の校正を行うのに使用してよい。そのような、ソフトウェアベースの校正信号は、得られた読み取り信号の後処理に基づいていてよく、または、エラーを直接考慮にいれて測定信号を処理すること(即ち処理の間に校正を行うこと)に基づいていてよい。本システムおよび方法は、自動的または自動化された方法で用いてよい/行ってよい。モニタリングおよび/または後処理は、所定のアルゴリズムを用いて行ってよい。別法として、得られた情報を、光学的キャラクタリゼーション装置へフィードバックを与えるために用いてよく、それによって、その特定の構成要素または位置を適合させてよい。従って前記得られた情報は、フィードバックシステムまたはその一部であってよい。
【0163】
ある態様において、光学的検出装置300の種々の工程要素の間のずれ(それにより、プローブ・ビームと検出ユニット208との間のずれ(水平方向のずれによって部分的に重なり合うこと等)が生じる)によっておこる測定エラーに対して、補正を行う。従って、水平方向のずれ(水平方向のビームのずれ等)の検出だけでなく、例えば、センサー表面への照射ビームの斜めの入射または流体試料のメニスカスの形状の検出も、使用し得る。そのような校正を行うためのシステムを例として図9に示す。
【0164】
別の態様において、測定容器内の試料の照射源の照射特性をモニタリングするための光学的制御システムは、検出ユニット208における照射ビームの焦点を合わせるようになっていてよい。特に、試料流体を検出する場合、試料流体の表面は、光学的検出信号ビームに追加のレンズ効果をもたらし得、これは焦点ぼけを引き起こす。後者は、特に、測定容器への充填の間に測定を行う場合であり、その結果、測定中に試料流体の表面がシフトし、従って、レンズ効果がシフトする。光学的制御システム302は集束システム308を制御してよく、前記集束システムは、検出ユニット208における光学的検出信号のための光学的要素(例えばレンズまたは鏡)を含み、その結果、ビームの焦点合わせ位置の変化を、集束システムを制御することによって校正し、従って検出ユニット208における光学的検出信号ビームの焦点を少なくとも部分的に再調整する。別法として、光学的キャラクタリゼーションシステム300における集束を制御するために、光学的制御システム302は、試料の垂直および水平位置、照射ユニット202の垂直および水平位置、および/または検出ユニット208の垂直および水平位置も制御してよい。このような方法で、ずれの補正を行ってよい。後者を図10に示す。
【0165】
他の構成要素は、本発明の第二の要旨による光学的キャラクタリゼーション装置において説明したように、光学的キャラクタリゼーション装置300内に存在してよい。そのような追加の構成要素は、例えば流体供給手段210、位置制御器212、同期化手段220等であってよい。
【0166】
本発明の第五の態様において、液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置を説明する。装置は通常、前記液体試料を充填するようになっている、少なくとも一つの測定容器、および、ガスを収集するようになっている少なくとも一つのガス収集キャビティを備えた基板を含む。後者により、液体試料を充填している間に測定容器内の液体試料において導入された気泡の少なくとも一部を、光学的ビーム・プローブ領域から減少させる、または除去することが可能となる。このような方法で、測定キャビティを、ビーム・プローブ領域において空気の気泡を包含することなく、完全に液体試料で満たすことが可能となる。従って、このような装置は通常、少量の液体試料を保持するための液体包含構造物であってよく、前記液体収容構造は、チャンネルおよび容器の組み合わせを含む。本発明による態様において、容器は、液体試料中の光路において気泡(バブル)または泡立ち(またはフォームもしくは気泡の固まり)を実質的に含有することなく、または前記含有を減少させて、試料液体を充填し得る。本要旨による態様は、いずれの型のマイクロ流体装置にも適用してよく、前記マイクロ流体装置内の、少量の流入および流出チャンネルのみを有する閉鎖されたキャビティは、満たされなければならない。構造により、流体試料を通る光学的測定が可能となり、前記液体試料において、試料中の光路長は調節または変更し得、即ち、測定容器を満たしている間でさえ、気泡の量が実質的に減少してよく、または気泡が、液体試料中の光学的ビーム・プローブ領域から完全に除去されてもよい。光学的キャラクタリゼーションを補助する装置は、本発明の第一の要旨に起きて説明した装置と同じ特徴を含んでよく、同じ特性を有してよく、かつ、同じ利点を有してよい。例えば、マイクロ流体チャンネルおよび容器の特定の配列を含んでよい。これは、二つまたはそれより多くのマイクロ構造プレートを結合することによって実現してよく、前記マイクロ構造プレートにおいて、少なくとも光路が通過する部分は透明である。マイクロ構造プレートは、いずれの適切な材料(例えばポリマー、金属材料またはガラス材料等)から作製してもよい。構造化(即ちチャンネルおよび容器の作製)は、金型成形、エンボス加工、エッチング、アブレーション加工、フライス加工、またはドリル加工によって行ってよい。チャンネルおよび容器の表面は、はだかの(または剥き出しの)材料特性とは異なる親水性または疎水性挙動を有するように処理してよい。これは、例えば化学的手段またはOプラズマ曝露によって達成し得る。液体包含構造物は、運搬器上に設置してよい。運搬器は、使い捨て可能な、または再使用可能な物であってよい。それは独立型の物であり得、または測定器具(即ち光学的キャラクタリゼーション装置)に統合し得る。いくつかの態様において、運搬器当たり一つの、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置が存在し、別の態様において、光学的キャラクタリゼーションを補助する複数の装置を、配列して集めて、運搬器上で組み合わせてよい。容器は、それらのピッチがSBS規格と両立してよく、または両立しなくてよい。いくつかの用途において、(一つまたは複数の)測定容器の形状は、プローブ・ビームと重なるために最適化してよい。このことにより、必要とされる容器の体積を最小化することが可能となる。
【0167】
いくつかの態様において、測定容器は、液体試料中の光路長における変化を最大にするために、最小の体積が要求されるように設計してよく、その結果、濃度または蛍光信号に関して測定範囲を最大にすることが可能となる。
【0168】
測定容器の形状は、プローブ・ビームとの水平方向の重なりを最大にするために最適化させてよく、または、液滴が可変の高さを有している測定に関して最適化させてよい。測定容器は円筒形であってよい。いくつかの態様において、図12aおよび図12bに示すように、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置は、入力容器110、流入容器110を測定容器104に接続する相互接続チャンネル114、測定容器104、測定容器104を流出容器112に接続する相互接続チャンネル116、および流出容器112を含んでよい。更に、測定容器104は、ガス収集キャビティ402と接触(例えば直接接触)している。例として、ガス収集キャビティ402は、図12aに示すように、測定容器104の頂部に存在し得、または、図12bに示すように、測定容器104の周りの壁に存在し得る。いくつかの態様において、流入容器110および/または流出容器112は必要とされないことがあり、液体の充填は測定容器中に直接行ってよい。他の態様において、一つの流入容器110を複数の測定容器104に接続してよく、または、複数の流入容器110を一つの測定容器104に接続する。流出容器112は、液体試料の再利用を可能とし得る。
【0169】
測定容器104の直径および高さは、1mmのオーダーであってよい。このことにより、数マイクロリットルまたはそれ未満の試料体積の特性を測定することが可能となる。流入容器110および流出容器112は、より大きくてよく、その結果、標準的な器具を用いて試料流体中の液体試料を容易に充填することが可能になる。
【0170】
いくつかの態様において、流入容器内に試料が沈殿し、流入容器に過圧が加わる。流体試料は、ポンプで廃棄物容器へ送り、流体測定構造を通過し、流体の透過率測定を可能にする。他の態様において、液体試料を測定容器へポンプで運ぶのに、外力は必要とされない。流れは、重力、ならびに/または、チャンネルおよび容器の親水性/疎水性によって達成させる。装置は更に、第六の要旨において更に詳細に説明するように、過圧放出手段を含んでよい。
【0171】
第五の要旨による第一の特定の例において、本発明は、上述のように光学的キャラクタリゼーションを補助する装置に関し、前記装置においてガス収集キャビティはリング形状である。リング形状のキャビティは、基板材料の一部分(例えば基板材料の中央部分)をキャビティが囲んでいるようなものであってよい。前記キャビティは、例えばトーラス形状を有してよく、円形または四角形を有してよい。例示的態様の断面を図13aおよび図13bに示す。装置400は、少なくとも一つのガス収集キャビティ402(本例においては一つまたはそれより多くのリング形状のキャビティ)を備えた少なくとも一つの測定容器104を含む。例として、ガス収集キャビティ402は、図13aに示すように測定容器104の頂部に存在してよく、または図13bに示すように測定容器104の周囲の壁に存在してよい。後者により、容器の光路に気泡(例えば空気の気泡)を含む危険無しに、または前記危険を低減させて、容器を満たすことが可能となる。一つまたは複数のガス収集キャビティ402は、容器の頂部および/または底部に追加してよい。充填の間、気泡はこれらのガス収集キャビティ402にトラップされ、液体が測定容器104の残りの部分を満たす。例えばキャビティが頂部から満たされる場合、測定容器の底部のガス収集キャビティ402が好都合である。充填が高速で起こる場合、空気またはガスの気泡は、流体の下にトラップされ得、このような底部にあるガス収集キャビティによる以外は抜け出す方法がない。
【0172】
本要旨による各々の態様の好都合な点は、測定容器内の試料流体中の気泡(例えば空気の気泡)の導入を、光学的ビーム・プローブ領域に存在するものから減少させることが可能であることである。本態様の各々の態様の更に好都合な点は、測定容器を充填することを、容器の親水性または疎水性の性質を考慮に入れて制御し得ることである。測定容器内の試料流体中の照射ビームの光路長を正確に規定し得ることも、各々の態様の好都合な点である。更に、本要旨の各々の態様の好都合な点は、小さい容器を満たすことを制御し得ることである。充填は、圧力および充填時間によって、測定容器、流入チャンネル、および過圧放出チャンネルの特徴および特性と組み合わせて制御してよい。ポンプ速度と比較して容器の体積が小さいので、圧力および/または充填時間の少しの変化は容器の部分的な充填をもたらす。
【0173】
本発明による第六の要旨において、液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置を説明し、前記装置は、液体試料を満たすようになっている少なくとも一つの測定容器、測定容器に試料流体を供給するための、測定容器と接続している流入チャンネル、および流入チャンネルと接続している過圧放出手段を含む。流入容器が空になった後に(即ち液体試料が存在しない場合に)空気またはガスが測定容器内に導入されるので、通常、過圧放出手段によって測定容器への充填を制御することが可能である。従って、過圧放出手段は、流入容器が空になった後に、空気が測定容器内に引き込まれるのを防止するようになっていてよい。過圧放出手段は、試料流体が、過圧放出手段を通るよりもむしろ測定容器へ引き込まれるようになっていてよいが、ガスは、測定容器を通るよりもむしろ過圧放出手段を通るとより容易に抜け出るようになっていてよい。更に、装置は、本発明の第一の要旨または第五の要旨において説明したのと同じ特徴、同じ特性、および同じ利点を含んでよい。前記過圧放出手段は、過圧放出チャンネルまたは過圧放出管であってよい。過圧放出手段は、測定容器を空にすることを制御するように適合させてもよい。従って、過圧放出手段は基本的に、空気が流入チャンネルに入る場合にバルブとしてはたらく。バルブは、液体が通っている限りは閉じているが、空気が通ると開き、液体が完全に測定容器を満たす。これは、液体に対して一定の抵抗を有する過圧放出手段によって達成し、前記過圧放出手段は測定容器よりも大きい。
【0174】
第六の要旨による、ある態様において、本発明は、図14aおよび図14bにおいてより詳細に説明する装置に関する。示された例示的装置500において、測定容器104、流入チャンネル114、および過圧放出手段502を見ることができる。更に、ガス収集キャビティ402を装置500内に示すが、この装置はそのようなガス収集キャビティ402を含む必要はない。例として、ガス収集キャビティ402は、図14aに示すように測定容器104の頂部に存在し得、または、図14bに示すように測定容器104の周りの壁に存在し得る。過圧放出手段502は、流入チャンネル114において小さい孔を導入してよく、それによって、流体が一旦流入チャンネルにおけるその孔を通り過ぎると、従って、空気が流入チャンネルを通ってポンプで充填されると、ポンプによる充填を停止させることが可能となる。図14に示す例示的態様において、第二の所定の圧力レベル(これは通常第一の所定の圧力レベルよりも大きい)を用いて、ポンプによって液体試料を流入チャンネルに測定容器104に向かって充填してよい。過圧放出手段502の直径は、この第二の所定の圧力レベルにおいて流れ抵抗が大きすぎて測定容器104が満たされていない限り試料流体が試料流体過圧解法手段を通って流れることができない直径を選択する。測定容器104に試料をポンプで充填した後に、過圧は小さい孔によって(またはこれを通過して)増大し、試料は、ポンプによって更に流出チャンネルへ送られることなく測定容器に残存する。過圧放出手段の長さは、流れ抵抗が十分小さくて後者が可能となるように設計してよい。第三の、より大きい圧力を流入チャンネルに加えることによって、液体試料を更に廃棄物容器へポンプにより送り得る。
【0175】
別の態様において、本発明は、上述のように液体試料の光学的キャラクタリゼーションを補助する光学的装置に関し、前記光学的キャラクタリゼーションを補助する装置は、過圧放出手段および少なくとも一つのガス収集キャビティ402の両方を含む。通常、そのような態様による装置において、液体を測定容器104に充填した後に、液体をガス収集キャビティ402の中に移動させる。そのようなガス収集キャビティ402は通常、収集したガスを抜くのを可能にするために、チャンネルを介して大気と接続してよい。
このチャンネルが、流体流れに対して、過圧放出手段502よりも大きい抵抗を有する場合、そのチャンネルは、非常に遅い流体でのみ満たされ、過剰量の流体は、むしろ過圧放出手段502へと導かれる。これは、流入容器全体が空である場合にチャンネル内に吹き込まれる空気にも当てはまる。リング状のガス収集キャビティ402および過圧放出手段502を含む、二つの直列する測定容器104を備えた例示的な装置の写真画像を図15に示す。
【0176】
第七の要旨において、本発明は、物質の光学的キャラクタリゼーションのための方法およびシステムに関する。本発明によれば、方法およびシステムは、物質を照射ビームで照射するように、および、キャラクタリゼーションすべき物質から少なくとも二つの光学的応答信号(これは、キャラクタリゼーションすべき物質からの少なくとも二つの光学的検出信号とも呼ぶ)を得るようになっている。その結果、少なくとも二つの光学的検出信号のうちの一つの光学的検出信号は通常、物質中の照射ビームの既知の照射経路長に対応し、既知の照射経路長は、前記少なくとも二つの光学的検出信号のうちの第二の光学的検出信号の未知の照射経路長よりも実質的に長い。更に、本要旨による方法およびシステムは、未知の照射経路長を、少なくとも二つの光学的検出信号および既知の照射経路長に基づいて導出するようになっている。光学的検出システムは、いずれの光学的検出システム(透過率、吸収、反射、または蛍光キャラクタリゼーションシステム等)であってもよい。例として、方法およびシステムを、透過率測定を用いる分光計システムに関連して更に説明するが、そのような方法およびシステムの特徴を、他の形式の光学的キャラクタリゼーションシステムに準用し得ることは、当業者に明らかであろう。
【0177】
システムは制御器によって調節してよく、その制御器は少なくとも二つの工学的検出信号を検出するために検出ユニットを制御する。従って、そのようなシステムは、図7に示すシステムと類似してよいが、少なくとも二つの光学的検出信号を検出するための検出ユニットを制御するための制御器を含む。
【0178】
少なくとも二つの光学的検出信号は、異なる容器における測定において得てよく、または、満たしている間に得てよい。好ましい態様において、少なくとも二つの光学的検出信号は、測定容器を満たしている間に得られ、通常、満たされた測定容器における測定を、キャラクタリゼーションすべき物質の既知の照射経路長に対応するものとして用いてよい。満たしている間に本要旨の方法を行う場合、または満たしている間に本発明による少なくとも二つの光学的検出信号を測定するよう適合させたシステムを用いる場合、キャビティは、満たしている間、異なる時点における照射経路長の変化速度を変化させるように適合させてよく、またはそのように適合させなくてよい。
【0179】
本態様の方法およびシステムは、本発明の先述のいずれの要旨、またはそれらのいずれの態様において説明したシステムおよび方法でも行ってよい。
【0180】
光学的検出信号を使用する一つの方法を、以下に例として説明するが、本発明はそれに限定されない。フレネル反射による減損を無視する場合、照射ビームの透過率Tは通常、以下の式で与えられる。
【数2】

ここで、εはモル吸光係数、Lは物質中の照射経路長、cは物質中の吸収体徴のモル濃度である。ファクターεcLは通常、試料物質(例えば試料流体)の光学密度と呼んでもよい。上述の式より、物質中の吸収特徴のモル濃度は以下のように表現できる。
【数3】

従って次のようになる。
【数4】

上式は、濃度の相対的精度が、経路長の相対的精度に線形依存することを意味している。後者により、吸収長または物質と相互作用する照射ビーム経路長が大きいほど、測定濃度をより高い精度で規定し得るようになる。本発明は、光学的測定を用いてより短い照射ビーム経路長を較正することによって、高濃度の被分析物をもより正確に規定するためにこの原理を使用する。Lが大きいと透過光が通常ノイズレベルに至るので、より短い照射ビーム経路長の測定は通常、高濃度を検出するために行ってよい。従って、正確な測定が可能な小さいLが必要とされる。
【0181】
測定可能な範囲内のスペクトルの一部に関して、少なくとも一つの既知のより長い照射ビーム経路長L既知、および一つの未知の、またはあまり正確に知られていない照射ビーム経路長L未知に対応する少なくとも二つの光学的検出信号に関して、以下の式を導出し得る。
【数5】

例として、照射ビーム経路長をより正確に規定するために流体の透過スペクトルを使用し得る例を示す。本例において、既知の照射ビーム経路長は1mmであり、未知の照射ビーム経路長は0.1mmのオーダーである。図16aに示す未知の照射ビーム経路長に対応するスペクトルにおいて、検出ユニット(例えば光検出器配列)のバンド幅が制限されているのでいくつかのピークが飽和しており、スペクトルの他の部分はノイズレベルであり、残りは分光計で測定可能な範囲内にある。図16bに示す既知の照射ビーム経路長に対応するスペクトルにおいて、透過率は、吸収する流体中の光路長が長くなることにより、全体にわたってより小さい。分光計の測定可能範囲(ノイズレベルより十分大きく、飽和していない)内にあるスペクトルの部分を再び測定し得る。両方の経路長に関して、測定可能範囲内にあるスペクトルのこれらの部分について、以下のように書くことが可能である。
【数6】

従って、
【数7】

【0182】
流体高さの公差が10μm(推定)であると仮定する。前記公差は、各々10%(L=0.1mm)および1%(L=1mm)の濃度の相対誤差をもたらす。両方のOD値を測定し得るので、光学的測定(例えば式[6]の測定)を用いて、小さいカラム内の未知の照射ビーム経路長の、より正確な流体高さを計算し得る。従って、小さいカラムの高さにおける公差は、10%よりも1%に近い。
【0183】
本要旨による方法およびシステムは、光学的キャラクタリゼーションシステムに存在する公差(例えば、収縮による、成形品におけるキャビティ高さの公差、射出中の、モールド・インサート間の間隙による公差、および成形インサート自体の公差による公差等)を校正する、または考慮にいれるのに特に適している。完成品における他の公差には、接着剤の厚さ等による組立公差も含まれる。これらの公差のいくつかは絶対的であり、それは、それらの公差がL自体に依存しないことを意味する。これらの公差は、キャビティを垂直に透過するビームの経路長Lに影響を及ぼす。公差の影響は、キャビティ高さが低下するに従ってより大きくなる。
【0184】
例として、複数のそのような光学的キャラクタリゼーション装置の使用例を提供するが、本要旨はそれに限定されない。
【0185】
第一の例において、第七の要旨による方法およびシステムは、図5cに示し、本発明の第一の要旨の第二の態様において論じた、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100を用いる光学的キャラクタリゼーション装置に適用する。通常、この例において、測定する最小の容器高さは、流入チャンネルの高さである。測定する最大の試料流体高さは、蛇行部分の全体を満たすときに得られる。通常、最大の試料流体高さの精度に影響を及ぼすいくつかの追加の組立公差(それは例えば、僅かに変化し得る厚さを有する接着剤でいくつかの層を接合するときに引き起こされる)が存在するが、最大の試料流体高さの相対精度は流入チャンネルにおける試料流体高さの精度よりもずっと高いことが予想される。光学的測定と流体高さの最大値を組み合わせて、より小さい試料流体高さを導出することによって、光学的測定(例えば透過率測定)の間に、流入チャンネルにおける試料流体高さのより正確な評価、または、例えば流入チャンネル高さのより正確な評価をなし得る。後者は、例えば式[4]を用いた計算に基づいてよい。
【0186】
第二の例において、第七の要旨による方法およびシステムは、図5aに示す、本発明の第一の要旨の第二の態様において論ずる、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置100を用いる光学的キャラクタリゼーション装置に適用し、最初は非定常流を仮定する。後者は既知であってよく、または流速の変化を引き起こしてよく、または、正確な体積流量のドリフトであってよいが、一定の体積流量が、測定容器への充填において予想される。満たしている間に複数の光学的測定を行うことを仮定し、最後の測定は、完全に満たされたキャビティの吸収を測定するものである。後者は、もはや透過率の変化しない流体の追加の流れとして容易に規定し得る。最後の測定結果は、測定容器全体の深さと等しい流体高さに対応する。この値は、式を用いることによって、中間の光路長を規定するために、光学的測定の結果と組み合わせて使用し得る。その結果、満たしている間のメニスカスに関する情報を得、通常通りの、完全に満たされたキャビティにおいて得られた結果と組み合わせる事が好ましく、流体はキャビティの頂部の壁と接触していてメニスカスは無いが、中間の測定の間は、メニスカスが明確に存在する。そのようなメニスカスの情報は、本発明の第四の要旨において説明するように、例えば光学的制御システム(これは例えばビーム・スプリッター(またはビーム分割器)および検出器を含む)を用いて得ることが可能である。後者により、計算した流体の光学深度を、例えば式[4]を用いて正確に解釈することが可能となる。本例は、本要旨による方法およびシステムを、体積流量の変化を補償するために有利に使用し得る方法を説明する。それにより、中間の流体高さを計算することが可能となり、それによって、非定常体積流量に対して、少なくとも部分的な補正を得る。
【0187】
第三の例は、第二の例と類似しているが、体積流量は一定である。例として図5bで説明するように、一定の流れに関して、上昇している試料流体の瞬間体積は、時間に関する情報から導出し得る。この例において、時間と体積との間に一定の関係がある。各測定における正確な光路長は、光学的測定と最大の流体高さの値とを組み合わせることによって規定し得、前記最大の流体高さの値は、容器全体が満たすとすぐに得ることが可能である。容器の形状および流速から、時間t(即ち試料流体の端が容器の不連続箇所に達する時)における試料流体の正確な形状を計算し得、従って、メニスカスの影響を計算および測定し得、分光計に入る前のビームを探知する二次元光検出器を必要としない。不連続箇所における計算された光路長を解釈するための全ての必要なパラメーターが、その後入手可能となる。
【0188】
第四の例において、本要旨による方法およびシステムは、平坦な壁および一定の壁特性を備えた単純な容器に適用する。満たしている間に、複数の時点で測定を行う。完全に満たした時の測定データは、中間の測定に関して得られた光学的結果と組み合わせて使用し得、その結果、それらの中間の測定における流体中の正確な光路を計算する。後者は、例えば式[4]を用いて行われ得る。更に精度を向上させるために、通常、照射ビームを測定容器内で探知してよく、例えば本発明の第四の要旨において説明するような方法およびシステムを用いる。この情報によって、流体のメニスカス形状の評価、従って測定データの校正を可能にし、従って、曲線状の流体表面の存在の効果を組み込み得る。
【0189】
本発明の本要旨の態様による方法およびシステムの利点は、高い正確性を得ることが可能であることである。
【0190】
本発明の態様の上述の方法は、図11に示すような処理システム700において実行してよい。図11は、少なくとも一つの形式のメモリ(例えばRAM、ROM等)を含むメモリーサブシステム705と連結した、少なくとも一つのプログラム可能なプロセッサ703を含む処理システムの一の配置を示す。一つまたは複数のプロセッサ703は、一般的な目的または特別な目的のプロセッサであってよく、かつ、装置(例えば他の機能を果たす他の構成要素を有するチップ)に含まれるためのものであってよい。従って、本発明の一またはそれより多くの要旨は、デジタル電子回路において、またはコンピューター・ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェアにて、またはそれらを組み合わせることによって実施し得る。処理システムは、少なくとも一つのディスクドライブおよび/またはCD−ROMドライブおよび/またはDVDドライブを有する記憶装置のサブシステム707を含んでよい。一部の実施において、ディスプレイ・システム、キーボード、およびポインティング・デバイスを、手動で入力する情報をユーザーに提供するためのユーザー・インターフェース・サブシステム709の一部として含んでよい。データを入力および出力するためのポートも含んでよい。ネットワーク接続、種々のデバイスのためのインターフェース等の追加の構成要素を含んでよいが、それらは図11に図示していない。処理システム700の種々の構成要素は、種々の方法で連結してよく、図11に便宜上単一のバスとして示すバス・サブシステム713を介することを含むが、当業者は、前記バス・サブシステムが少なくとも一つのバスを含むことを理解するであろう。メモリーサブシステム705のメモリーが、一連の命令であって、処理システム700において実行する場合に、ここで説明する方法の態様の工程を実行する一連の命令の一部または全てを保持してよい場合もある。従って、図11に示すような処理システム700が従来技術である一方、キャラクタリゼーション方法の要旨を実行するための命令を含むシステムは従来技術ではなく、従って、図11は従来技術とは見なされない。
【0191】
本発明は、コンピューター・デバイスにおいて実行する場合に本発明によるいずれの方法の機能性をも提供する、コンピューター・プログラム製品も含む。そのようなコンピューター・プログラム製品は、プログラム可能なプロセッサによって実行するための、機械が読み取り可能なコードを搬送する搬送媒体において明確に具体化され得る。従って、本発明は、コンピューター・プログラム製品であって、演算手段で実行する場合に上述のようないずれの方法をも実行するための命令を与えるコンピューター・プログラム製品を搬送する搬送媒体に関する。用語「搬送媒体」は、実行のためにプロセッサに命令を与えることに関与するいずれの媒体をも指し示す。そのような媒体は多くの形態をとり、不揮発性媒体、および伝送媒体が含まれるが、それに限定されない。不揮発性媒体には、例えば光ディスクまたは磁気ディスク(大容量記憶装置の一部である記憶装置等)が含まれる。コンピューターで読み取り可能な媒体の一般的な形式には、CD−ROM、DVD、フレキシブルディスクまたはフロッピーディスク(登録商標)、テープ、メモリーチップまたはカートリッジ、またはコンピューターで読み取り可能な他のいずれの媒体も含まれる。コンピューターで読み取り可能な媒体の種々の形式は、一つまたはそれより多くの一連の、プロセッサを実行させるための一つまたはそれより多くの命令を含んでよい。コンピューター・プログラム製品は、ネットワークにおける搬送波(LAN、WAN、またはインターネット等)によっても伝送し得る。伝送手段は、音波または光波(ラジオ波および赤外線データ通信の間に発生するもの等)の形式を取り得る。伝送媒体は、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバーを含み、コンピューター内のバスを包含するワイヤを含む。
【0192】
別の例として、本発明をそれで限定することなく、マイクロ流体装置のいくつかの詳細な例、および、本発明の態様によるマイクロ流体装置を製造するのに使用し得る複数の製造技術を更に説明する。図17a〜図17cは透過上面図、流体のキャラクタリゼーションを補助する例示的なマイクロ流体装置800の上面図および底面図を各々示す。例示的なマイクロ流体装置800は、一連の個別のマイクロ流体検出構造を備えた基板102を含み、前記マイクロ流体検出構造の各々が流入容器110、測定容器104、および流出容器112を含む。システムは更に、種々の容器を接続するための種々の相互接続チャンネル802を含んでよい。マイクロ流体装置800は更に、測定システムに対して基板102を調整するための位置合わせ機能804を含む。そのような位置合わせ機能804は、装置の端に存在してよく、または他のいずれの適切な位置(例えば装置の平面内等)に設置してもよい。
【0193】
図18a〜図18dは、上述のようなマイクロ流体装置800に使用可能な、例示的なマイクロ流体構造の詳細な図を示す。本例において、マイクロ流体構造900は、例えば図5cまたは図5eに概略的に示すような、二つの副容器130aおよび130bを含む測定容器104に基づいている。本例における第一の副容器130aは、下方の容器であり、本例における第二の副容器130bは、上方の容器である。照射ビーム108による照射方向も、使用している場合は示す。図18a〜図18dに示す種々のマイクロ流体構造は、流出チャンネル116(廃液チャンネルとも呼ぶ)の形状および/または位置が異なる。更に、流入チャンネル114も示す。異なる副容器130a、130bを接続する相互接続チャンネル132bも示す。図18e〜図18gは、マイクロ流体構造の更に詳細な図を示す。図18eおよび図18fは、マイクロ流体構造の種々の変形の詳細な状面図を示し、一方、図18gはマイクロ流体構造の詳細な底面図を示す。マイクロ流体構造の種々の変形は、図19a〜図19dにおいて断面で示し、例えば流入チャンネル114、および/または相互接続チャンネル132b、および/または流出チャンネル116(廃液チャンネルとも呼ぶ)の位置および形状に変化を与える。二室型(または二チャンバー型)の測定容器は、下方の容器である第一の副容器130a、および上方の容器である第二の副容器130bを重ねて設ける。更に、マイクロ流体装置を照射しているときの、ビーム108、および第一副容器と第二の副容器との間の相互接続チャンネル132bを示す。
【0194】
上述の例において、種々の構成要素(流出チャンネル116等)の形状および位置は多様である。構成要素をより容易に成形するために、または構造内の流体の流れに影響を及ぼすために、選択がなされてよい。本例において、本発明の態様を限定することなく、種々の構成要素のサイズを以下のように選択してよい。本例における流出チャンネルの断面のサイズは、例えば30μm×50μm〜50μm×50μmの間で変化してよい。本例における流入チャンネルの断面のサイズは、200μm×200μmのオーダーであってよい。相互接続チャンネルの断面は、100μm×100μmまたは100μm×50μmのオーダーであってよい。第一の副容器の断面は、200μm×1mmのオーダーであってよく、第二の副容器の断面は、それよりも実質的に大きい(例えば1mm×1mm)。第二の副容器の、放射光が横切る側面の曲率半径は、0.5mmであってよい。上記のいずれの距離も、上述のいずれの態様をも限定しないと考えなければならない。サイズおよび形状は、行うべき成形プロセスを考慮して、かつ、本発明を用いる試験に対する適合性を考慮して選択してよい。
【0195】
図20a〜図22cにおいて、複数のマイクロ流体構造の金型、および成形されたマイクロ流体構造を例として示す。これらは、マイクロ流体装置を製造するための種々の可能性を図示しているが、本発明はそれに限定されない。金型の透視図、および、2つの部品1002、1004を含む、マイクロ流体装置の成形装置の上面図を図20aおよび図20bに示す。二つの成形部品1002、1004の各々は片側に構造的特徴を有する。これらの金型に関して、二つの金型の各々に特徴を与える。図示されたマイクロ流体装置の特徴は、流入チャンネル114、相互接続チャンネル132bで相互接続された2つの測定副容器130a、130b、および流入チャンネル116を含む。そのような技術は、例えば、円筒形または円筒形容器を含むマイクロ流体装置を成形するのに使用し得る。二つのマイクロ流体部品は、熱接合(例えば拡散接合)、接着剤または粘着剤、超音波接合、化学結合等によって結合し得る。図21aおよび図21bは、マイクロ流体装置を成形するための代替例を示し、この例においては、マイクロ流体装置の特徴を単一の金型で形成する。特徴は、成形終了後に金型を容易に除去することを可能にするために、好ましくは傾斜した表面を示す。そのような技術は、先と同様に例えばプリズム状のチャンバーを得るために使用し得る。例として、流入チャンネル114、相互接続チャンネル132bで相互接続する二つの測定副容器130a、130b、および流入チャンネル116を含むマイクロ流体のための金型を図21aに図示する。この成形部品1020は、図21bに図示するようにシーリングホイル1022によって、または、別の成形部品もしくはより堅いシートを用いて閉じることが可能である。成形部品1020とシーリング部品1022との間の結合は、熱接合(拡散接合)、接着剤または粘着剤、超音波接合、化学結合等によって、先と同様に行い得る。
【0196】
図22a〜図22cにおいて、マイクロ流体装置構造(またはそれの一部)、図22aに示す構造と類似のマイクロ流体装置構造を作るための特徴を備えた金型、および最終構造の上面図を各々示す。二室型のマイクロ流体装置を備えたマイクロ流体装置を、先と同様に示し、前記マイクロ流体装置は流入チャンネル114、相互接続チャンネル132bで相互接続する二つの測定副容器130a、130b、および流入チャンネル116を図示する。そのような装置は、金型を用いて成形し、マイクロ流体装置の特徴を、金型要素1040に両側において導入する。金型要素1040は、別の提供物(例えば、シールテープ等のシール要素1062)、別の成形部品、または更なる硬質シートによって閉じる必要がある。本例において、成形部品の他の側面も、シール要素1062を用いて密封してよい。マイクロ流体装置の特徴が、成形部品のエッジ面にまで及ぶ場合、それらの特徴は、シーリングホイル、別の成形部品、または硬質シートを用いて密封してよい。シーリングホイルもしくは硬質シートと成形部品との間の結合、または二つの成形部品の間の結合は、熱接合(例えば拡散接合等)を用いて、接着剤または粘着剤を用いて、超音波接合を用いて、または化学結合を用いて、先と同様に行ってよい。
【0197】
ある要旨において、本発明は、流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置であって、前記装置において、溶解可能な物質を、測定容器への充填に関する情報を提供するために用いる装置にも関する。装置は、流体を充填するようになっている、少なくとも一つの測定容器を備える基板を含む。装置は、例えば装置内のその物質の位置によって、測定容器への充填に関する情報を提供するようになっている、少なくとも一種の溶解可能な物質を含む。少なくとも一種の溶解可能な物質は測定容器内に備えられてよく、それによって、測定容器への充填の開始、測定容器への充填の完了、または流体中の照射ビームの光路長に関する情報を提供してよい。そのために、少なくとも一種の溶解可能な物質は、装置内のいずれの適切な位置(例えば流入チャンネル内もしくは充填方向に対して測定容器の底部、流出チャンネルもしくは充填方向に対して測定容器の頂部、または、側壁もしくは測定容器の副容器間の中間チャンネル)に設けてもよい。充填の情報は、溶解可能な物質が流体と接触するときに得てよい。溶解可能な物質の位置および充填に関して得るべき情報に応じて、情報は、流体のキャラクタリゼーションに用いる照射ビームおよび検出器を用いて、および/または別の光学検出システム(これは例えば装置の流出チャンネルに備える)を用いて得てよい。従って、装置は、試料が試薬と接触したか否か、測定容器が完全に満たされたか否か、洗浄工程を行ったか否か、測定容器を既に使用したか否か等についての情報を提供してよい。溶解可能な物質は、上述の要旨に関して説明したように、試料流体中の照射ビームの光路長に関する情報も提供してよい。従って、測定容器は測定容器側壁を含んでよく、測定容器は、測定容器側壁に、充填方向に対して測定容器の頂部と底部との間に位置する少なくとも一種の溶解可能な物質を含んでよい。その例を図23aおよび図23dに示す。
【0198】
少なくとも一種の溶解可能な物質は、流体中の照射ビームの光路長の変化速度を、充填速度の関数として変化させるようになっていてよい。流体中の照射ビームの光路長は、幾何学的距離と屈折率の積、または、屈折率が変化する媒体においては、次式で表される、局所的屈折率の光路に沿う積分として定義してよい。
【数8】

ここで、dsは経路に沿う長さ要素である。
【0199】
溶解可能な物質は、試料との光学的に測定可能な反応を提供してよい。溶解可能な物質は、例えば、流体と接触することによって溶解するときに、流体の吸収係数を変化させるようになっていてよい。溶解可能な物質には色素が含まれてよい。溶解可能な物質は、試薬であってよく、それによって、試料流体と試薬との相互作用が、測定容器への充填を示す光学的影響を光路長に与える。光路長への光学的影響は、流体の光学的キャラクタリゼーションのための分析反応を示す光学的影響と異なっていてよい。換言すると、充填に関する情報を提供する光路長への光学的影響は、好ましくは、試料流体の生化学的または生物光学的なキャラクタリゼーションのための分析反応の発生を示す光学的影響と、光学的に異なって(例えば異なる波長範囲において)起こる。試薬がこれらの光学的影響の両方を与える場合、試薬を溶解可能な物質として用いてよい。溶解可能な物質は、溶解可能なコーティングとして提供してよい。
【0200】
例として、いくつかの例について論じる。ある例において、装置内において、溶解可能な物質に試薬物質(頂部の試薬層)を与える。溶解可能な物質による照射ビームの光路長の調整(または修正)は、流体が試薬物質と接触したことを示す。別の例において、溶解可能な物質は、流入チャンネルまたは測定容器の底部に与えてよい。溶解可能な物質による照射ビームの光路長の調整は、測定容器内に存在する流体を示す。更に別の例において、溶解可能な物質による照射ビームの光路長が調整させられていないことは、測定容器が既に使用されたことを示してよい。
【0201】
本発明は、試料流体の光学的キャラクタリゼーションのための対応する方法にも関し、前記方法は、試料流体を充填するようになっている測定容器を照射すること、および試料流体を測定容器に充填すること、ならびに、装置内で、溶解可能な物質を溶解させて、測定容器への充填に関する情報を提供することを含む。溶解は、測定容器を満たしている間におこってよい。溶解可能な物質の溶解は、流体中の照射ビームの光路長に影響を与えるためのものであってよく、または、分析を行うための条件が満たされていることを示す(例えば測定容器への充填を示すもの、試薬との相互作用を示すもの、測定容器が既に使用されていることを示すもの、測定容器への充填の程度を示すもの、例えば、先により詳細に説明したように、満たしている間における流体中の照射ビームの光路長を示すもの等)指標としてのものであってよい。
【0202】
本発明の各々の態様の利点は、使用する測定容器を小さく作製して、光学的キャラクタリゼーションに必要とされる試料流体の量を少なくしてよいことである。
【0203】
本発明の各々の態様の利点は、光学的キャラクタリゼーションを良好な精度で行い得ることである。
【0204】
好ましい態様、各々の構造および配置、ならびに材料を、本発明の装置に関してここで論じてきたが、形状および詳細について種々の変化または変更を行ってよいことを理解するべきである。例として、本発明において例えば光学的キャラクタリゼーション装置を説明しているが、その一方で、本発明は、そのような光学的キャラクタリゼーション装置における光学的キャラクタリゼーションを制御するようになっている制御装置にも関する。そのような制御装置は、少なくとも一つの測定容器104への充填と検出ユニット208による検出とを同期させるように適合させ得る。
【図1】

【図2a】

【図2b】

【図2c】

【図2d】

【図2e】

【図3a】

【図3b】

【図3c】

【図4a】

【図4b】

【図4c】

【図4d】

【図4e】

【図5a】

【図5b】

【図5c】

【図5d】

【図5e】

【図6a】

【図6b】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12a】

【図12b】

【図13a】

【図13b】

【図14a】

【図14b】

【図15】

【図16a】

【図16b】

【図17a】

【図17b】

【図17c】

【図18a】

【図18b】

【図18c】

【図18d】

【図18e】

【図18f】

【図18g】

【図19a】

【図19b】

【図19c】

【図19d】

【図20a】

【図20b】

【図21a】

【図21b】

【図22a】

【図22b】

【図22c】

【図23a】

【図23b】

【図23c】

【図23d】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の光学的キャラクタリゼーションを補助する装置(100)であって、流体(106)がある充填方向にてある充填速度で満たされるようになっている、少なくとも一つの測定容器(104)を備えた基板(102)を含み、前記装置(100)が、少なくとも一つの測定容器(104)内の流体(106)に照射するための照射ビーム(108)を、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って受けるようになっており、前記少なくとも一つの測定容器(104)が、流体(106)中の照射ビーム(108)の光路長の変化速度を充填速度の関数として変化させるようになっており、前記測定容器(104)が、流体(106)を充填する間の複数の時点において、流体(106)中の照射ビーム(108)の光路長の情報を提供するようになっている装置。
【請求項2】
流体(106)中の照射ビーム(108)の光路長の変化速度を、充填速度の関数として変化させるようになっている少なくとも一つの測定容器(104)が、流体(106)中の照射ビームの光路長の変化速度を、測定容器(104)に加えられた試料流体(106)の量の関数として変化させるようになっている少なくとも一つの測定容器(104)から成ってよい、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
測定容器(104)が、照射ビーム(108)と少なくとも一つの測定容器(104)内の流体(106)との間の相互作用によって発生する光学的検出信号の挙動に少なくとも一つの変化を、充填速度の関数として引き起こすようになっている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
測定容器(104)が副容器(130a、130b)を含み、前記測定容器(104)が、照射経路に沿って照射されるようになっており、副容器(130a、130b)が、前記測定容器(104)内の前記照射経路に沿って後ろに設置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
測定容器の形状が充填方向に対して垂直な断面における変化を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
測定容器の形状が充填方向と垂直な断面において少なくとも一箇所で不連続性を有している、請求項5に記載の装置(100)。
【請求項7】
充填方向に沿う断面の平均径が充填方向に関して単調変化する、請求項5または6に記載の装置(100)。
【請求項8】
充填方向に沿う断面の平均径が、最初に流体(106)を充填する測定容器(104)の底部側において最大である、請求項7に記載の装置(100)。
【請求項9】
測定容器(104)が、充填方向と垂直で、前記測定容器(104)を貫通する照射ビーム(108)の光路を横断する複数の断面(C、C、C)、および充填方向と垂直で、照射ビーム(108)の光路を横断しない少なくとも一つの中間の断面(C)を含む、請求項5〜8のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項10】
測定容器(104)が測定容器壁(142、144)を含み、測定容器壁(142、144)が測定容器(104)の異なる部分において異なる親水性を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項11】
測定容器(104)が、少なくとも一種の溶解可能な物質であって、流体(106)との接触により溶解する際に、流体(106)中の照射ビーム(108)の光路長の情報を提供するようになっている物質を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項12】
少なくとも一種の溶解可能な物質の少なくとも一種が、前記副容器の、充填方向に関して頂部または底部に位置する、請求項4に従属する請求項11に記載の装置(100)。
【請求項13】
測定容器(104)が測定容器側壁を含み、測定容器(104)が、充填方向に対して測定容器(104)の頂部と底部との間の側壁に位置する、少なくとも一種の溶解可能な物質を含む、請求項11または12に記載の装置(100)。
【請求項14】
溶解可能な物質が、流体(106)と接触することにより溶解する際に流体の吸収係数を変化させるようになっている、請求項11〜13のいずれか1項に記載の装置(100)。
【請求項15】
流体(106)の特性を明らかにするための光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)であって、光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)が、照射ユニット(202)、検出ユニット(208)、少なくとも一つの測定容器(104)を備えた基板(102)を有する、光学的キャラクタリゼーションを補助する装置(100)、および少なくとも一つの測定容器(104)にある充填方向にて液体を充填するための流体供給手段(210)を含み、前記光学的キャラクタリゼーション装置が、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器(104)内の流体(106)を照射するようになっており、前記検出ユニット(208)が、前記少なくとも一つの測定容器(104)に充填している間に、複数の時点において、流体からの光学的検出信号を検出するために制御されている、光学的キャラクタリゼーション装置。
【請求項16】
光学的キャラクタリゼーションを補助する前記装置(100)が請求項1〜14のいずれか一項に記載の、補助する装置(100)である、請求項15に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)。
【請求項17】
測定容器(104)が所定の測定容器特性を有し、光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)が更に、前記光学的検出信号から、前記試料流体中の照射ビームの光路長に関する情報を、測定容器特性を考慮して測定するための評価手段(222)を含む、請求項15または16に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)。
【請求項18】
前記評価手段(222)が、光学的検出信号の挙動の少なくとも一つの変化を、充填速度の関数として測定するようになっている、請求項17に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)。
【請求項19】
前記評価手段(222)が、光学的検出信号の変化の速度における少なくとも一つの不連続性を、充填速度の関数として測定するようになっている、請求項18に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(200、300)。
【請求項20】
光学的キャラクタリゼーション装置(300)が、測定容器(104)内の試料の前記照射に関する照射特性をモニタリングするための光学的制御手段(302)を含む、請求項15〜19のいずれか1項に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項21】
光学的制御手段が、試料からの前記光学的検出信号の一部を分割する手段、および前記光学的検出信号の前記分割された部分を検出するための検出器を含む、請求項20に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項22】
光学的制御手段(302)が、水平方向のずれを少なくとも部分的に校正するために、前記測定容器(104)、前記検出ユニット(208)、または前記照射ユニット(202)のいずれの位置をも制御するようになっている、請求項20または21に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項23】
光学的制御手段(302)が、前記検出ユニット(208)における試料からの前記光学的検出信号の集束を校正するために、集束手段(308)の位置を制御するようになっている、請求項20〜22のいずれか1項に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項24】
光学的制御手段が、光学的キャラクタリゼーション装置(300)にフィードバック信号を与える、請求項20〜23のいずれか1項に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項25】
検出ユニット(208)が、少なくとも二つの光学的応答信号を検出するために制御され、第一の光学的応答信号がキャラクタリゼーションすべき物質中の照射ビームの既知の経路長に対応しており、第二の光学的応答信号がキャラクタリゼーションすべき物質中の照射ビームの未知の経路長に対応しており、照射ビームの既知の経路長が照射ビームの未知の光路長よりも実質的に長い場合に、光学的キャラクタリゼーション装置(300)が、前記少なくとも二つの光学的応答信号および照射ビームの前記既知の経路長に基づいて、照射ビームの未知の経路長を導出するための処理手段を更に含む、請求項15〜24のいずれか1項に記載の光学的キャラクタリゼーション装置(300)。
【請求項26】
試料流体の光学的キャラクタリゼーション方法であって、試料流体(106)で満たされるようになっている測定容器(104)を照射すること、および前記測定容器に試料流体をある充填方向にて充填すること、ならびに、前記照射および充填の間に、前記充填方向に実質的に沿う方向の光軸に沿って、少なくとも一つの測定容器(104)内の流体(106)を照射することによって、前記試料流体からの光学的検出信号を、複数の時点において検出することを含む、方法。
【請求項27】
前記測定容器の形状を考慮して前記試料流体の特性を導出することを更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記の前記測定容器の形状を考慮して前記試料流体の特性を導出することが、光学的検出信号の挙動における変化を測定容器の充填速度の関数として導出することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記の光学的検出信号の挙動における変化を充填速度の関数として導出することが、光学的検出信号の変化の速度における変化を、測定容器の充填速度の関数として導出することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記測定容器内の照射経路に沿って後に位置する、前記測定容器の副容器(130a、130b)を、後に満たすことを含む、請求項26〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
試料からの光学的検出信号を、副容器を満たす度毎に検出することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
試料流体中の照射ビームの既知の経路長に対応する第一の光学的検出信号、および試料流体中の照射ビームの未知の経路長に対応する第二の光学的検出信号を含む、少なくとも二つの光学的検出信号を検出すること、
二つの光学的検出信号および試料流体(106)中の照射ビームの既知の経路長に基づいて、照射ビームの未知の経路長を得ること
を更に含む、請求項26〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記照射および充填の間に、溶解可能な物質を溶解させて流体中の照射ビームの光路長に影響を及ぼすことを更に含む、請求項26〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
制御装置が、少なくとも一つの測定容器(104)を満たすこと、および検出ユニット(208)による検出を同時に行わせるようになっている、請求項15〜25のいずれか1項に記載の光学的キャラクタリゼーション装置で使用するための制御装置。
【請求項35】
計算装置において実行する場合に、請求項26〜33のいずれか1項の記載に従って光学的キャラクタリゼーションのための方法を行うようになっている、コンピューター・プログラム製品。
【請求項36】
請求項35のコンピューター・プログラム製品を記憶する機械読み取り可能データ記憶装置。
【請求項37】
ローカルもしくは広域エリアの電気通信網を通じた、請求項35のコンピューター・プログラム製品の伝送。

【公表番号】特表2009−544016(P2009−544016A)
【公表日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−519754(P2009−519754)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【国際出願番号】PCT/BE2007/000085
【国際公開番号】WO2008/009075
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509019015)トリネアン・ナムローゼ・フェンノートシャップ (2)
【氏名又は名称原語表記】Trinean NV
【Fターム(参考)】