説明

光学系および光学機器

【課題】円周魚眼から対角線魚眼までを含む魚眼ズームレンズを実現する。
【解決手段】物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群L1と正の屈折力の第2レンズ群L2を有し、変倍に際して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群が光軸上を移動し、最短焦点距離と最長焦点距離における最大像高が異なる光学系であって、最短焦点距離をfw、最長焦点距離をft、fw≦f≦ftを満たす任意の焦点距離をf、最も物体側のレンズ面に入射する軸外光束の主光線と光軸が交わる角度をθ、該角度θで入射した光線の結像像高をY、最短焦点距離における最大像高をYw、最長焦点距離における最大像高をYt、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、最短焦点距離におけるバックフォーカスをbfwとするとき、1.70≦Yt/Yw≦2.5、ただし、Y=2×f×sin(θ/2)、(85°≦θ≦90°)、3.45≦bfw/f1≦7、を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩カメラ・デジタルスチルカメラ・デジタルビデオカメラ等の撮影レンズに関し、特に魚眼レンズ系及び魚眼ズームレンズに関するものである
【背景技術】
【0002】
魚眼レンズは、撮像素子対角方向の画角が略180度となる対角線魚眼や全方向で画角が略180度となる円周魚眼などの単焦点レンズが一般的である。撮像素子としては、FullSize(画面サイズ36×24mm、対角長43.2mm)、APS−H(画面サイズ28.1×18.7mm、対角長33.8mm)、APS−C(画面サイズ22.5×15.0mm、対角長27.0mm)が多く用いられている。画角が略180度の対角線魚眼レンズ域を含むズームレンズも提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
特許文献1では、APS−Cサイズの撮像素子において、最短焦点距離で対角線魚眼となるズームレンズが開示されている。
【0004】
特許文献2では、複数の画面サイズのカメラで対角線魚眼となるズームレンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−94371号公報
【特許文献2】特許第3646717号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
魚眼レンズの画角は概ねθ=180°まで有限の値を持ち、その最大像高は焦点距離に比例する。色々な撮像素子サイズを有するレンズ交換式カメラに共通に使用可能な魚眼レンズの場合、そのカメラに使用される撮像素子サイズが小さいと、魚眼レンズと言いながら画角180°を達成できないか、一部の方向(対角線等)でしか画角180°が達成できない。
【0007】
また、魚眼レンズにおけるズームとは、焦点距離fの変化に伴って画角180°を達成するエリアが変化することを意味する。従ってこれら魚眼ズームレンズの目的は、単一の撮像素子を使用したカメラでズームした場合は、画角180°を達成するエリアが画面内で変るさまを写すことになり、撮像エリアが画角180°以内となった時、画角が切り出され始め、所謂望遠化が起こる。全周画角において180°を達成している状態を全周魚眼とよび、画面対角線エリアでのみ画角180°を達成している状態を対角線魚眼(以下、対角魚眼ともいう。)と呼ぶ。
【0008】
異なる大きさの撮像素子を有するカメラを使用する場合、ズーム比は画角180°を達成できる撮像素子範囲比を示し、小さい撮像素子を有するカメラでも画角180°を達成できる可能性が拡大することを意味する。
【0009】
なお、画角180°を達成している場合、ズーム位置で『広角』、『望遠』は意味を持たないため、本明細書中では、『最短焦点距離側または最短焦点距離』、『最長焦点距離側または最長焦点距離』と呼ぶ。
【0010】
このような状況において、上述の特許文献1に開示された従来技術では、最短焦点距離側の焦点距離が足りずFullSizeにおいても円周魚眼とならないという課題があった。また、上述の特許文献2に開示された従来技術では、変倍比がたりずFullSizeにおいても円周魚眼から対角線魚眼を満足する魚眼ズームレンズとはならないという課題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記課題に鑑みて、円周魚眼から対角線魚眼までを含む魚眼ズームレンズを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての光学系は、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群を有し、最短焦点距離から最長焦点距離への変倍に際して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群が光軸上を移動し、最短焦点距離と最長焦点距離における最大像高が異なる光学系であって、最短焦点距離をfw、最長焦点距離をft、fw≦f≦ftを満たす任意の焦点距離をf、最も物体側のレンズ面に入射する軸外光束の主光線と光軸が交わる角度をθ、該角度θで入射した光線の結像像高をY、最短焦点距離における最大像高をYw、最長焦点距離における最大像高をYt、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、最短焦点距離におけるバックフォーカスをbfwとするとき、
1.70≦Yt/Yw≦2.5
ただし、Y=2×f×sin(θ/2) (85°≦θ≦90°)
3.45≦bfw/|f1|≦7
を満足することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、円周魚眼から対角線魚眼までを含む魚眼ズームレンズを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した実施例1の最短焦点距離と最長焦点距離でのレンズ構成図と変倍軌跡である。
【図2】図1の構成における諸収差図である。(a)は最短焦点距離での諸収差図である。(b)は中間域での諸収差図である。(c)は最長焦点距離での諸収差図である。
【図3】本発明を適用した実施例2の最短焦点距離と最長焦点距離でのレンズ構成図と変倍軌跡である。
【図4】図3の構成における諸収差図である。(a)は最短焦点距離での諸収差図である。(b)は中間域での諸収差図である。(c)は最長焦点距離での諸収差図である。
【図5】本発明を適用した実施例3の最短焦点距離と最長焦点距離でのレンズ構成図と変倍軌跡である。
【図6】図5の構成における諸収差図である。(a)は最短焦点距離での諸収差図である。(b)は中間域での諸収差図である。(c)は最長焦点距離での諸収差図である。
【図7】変倍時のイメージサークルと複数画面サイズとの関係を示した図である。(a)は最短焦点距離におけるFullSizeでの円周魚眼、(b)は中間域におけるAPS−Cサイズでの対角線魚眼、(c)は中間域におけるAPS−Hサイズでの対角線魚眼、(d)は最長焦点距離におけるFullSizeでの対角線魚眼の状態を示している。
【図8】最も物体面側にあるレンズの光軸と軸外光束の主光線が交わる角度θを示す図である。
【図9】本発明の光学系を撮影光学系として用いた撮像装置(光学機器)の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態にかかわる光学断面図と簡易移動図である。この魚眼ズームレンズ系は最短焦点距離において空気間隔最大のところで分けられる負のパワー(屈折力)の第1レンズ群L1と正のパワー(屈折力)の第2レンズ群L2から構成されている。変倍に際して、最短焦点距離から第1レンズ群L1を一旦像面側に移動させてから物体側に移動させると同時に、第2レンズ群L2を第1レンズ群L1との間隔が単調に減少するように物体側に移動させて最長焦点距離へと変倍する。このように動作させることで、最短焦点距離状態と最長焦点距離状態とで異なる大きさの最大像高が得られる。本発明は最短焦点距離で上記変倍動作を固定すればFullSize画面サイズにおいて単焦点の円周魚眼として使用可能である。同様に、変倍動作を任意の位置で固定することでAPS−C、APS−H、FullSizeでの単焦点の対角魚眼として使用することも可能である。
【0016】
魚眼レンズの射影方式には大きく以下の4種類が存在する。
【0017】
i)等立体角射影方式 Y=2fsin(θ/2)
ii)等距離射影方式 Y=fθ
iii)正射影方式 Y=fsinθ
iv)立体射影方式 Y=2ftan(θ/2)
ただし、魚眼レンズの最短焦点距離fw≦f≦最長焦点距離ftを満たす任意の焦点距離をf、魚眼レンズ(第1レンズ群L1内)の最も物体側のレンズ面に入射する軸外光束の主光線と光軸が交わる角度をθ、焦点距離fのときの結像像高をYとしている。ここで、角度θは、図8に示すように、光軸Oと、最も物体側のレンズ面に入射する軸外光束の主光線Pがレンズ内を直進した場合に延びる延長線と、が交わるときの角度である。
【0018】
本発明において、魚眼ズームレンズは以下の条件式を満足している。
【0019】
下記の条件式(1)は、本発明の魚眼ズームレンズの最短焦点距離での最大像高Ywと最長焦点距離での最大像高Ytについて規定する条件式である。
【0020】
1.70≦Yt/Yw≦2.5 (1)
ただし、Y=2×f×sin(θ/2) (85°≦θ≦90°)
条件式(1)の上限を超えると、変倍比を稼ぐために変倍時の各群の移動量または各群の屈折力が増えるために、諸収差の変倍変動が大きくなる。条件式(1)の下限を超えると円周魚眼から始まり対角線魚眼までを含んだズームレンズとすることが困難になる。
【0021】
上記条件式(1)は、更には、下記条件式(1A)を満足することが好ましい。
【0022】
1.80≦Yt/Yw≦2.2 (1A)
ただし、Y=2×f×sin(θ/2) (85°≦θ≦90°)
図7は、本発明の一例としての変倍時のイメージサークルと複数の画面サイズとの関係を示した図である。(a)は最短焦点距離におけるFullSizeに対応する画面サイズA1でのイメージサークルB1(円周魚眼の状態)を示している。(b)は中間域におけるAPS−Cサイズに対応する画面サイズA2でのイメージサークルB2(対角線魚眼の状態)を示している。(c)は中間域におけるAPS−Hサイズに対応する画面サイズA3でのイメージサークルB3(対角線魚眼の状態)を示している。(d)は最長焦点距離におけるFullSizeに対応する画面サイズA1でのイメージサークルB4(対角線魚眼の状態)を示している。
【0023】
このように、本発明では、例えば最短焦点距離においてFullSize画面における円周魚眼を達成することができる。また、中間域においてAPS−Cサイズ画面における対角線魚眼を達成することができる。また、最長焦点距離においてFullSize画面における対角線魚眼を達成することができる。このときの最短焦点距離での最大像高Ywと最長焦点距離での最大像高Ytとの比率は、Yt/Yw=1.8であり、上記条件式(1)、条件式(1A)の範囲を満たしている。
【0024】
なお、本発明では、上述したFullSize画面における円周魚眼から対角線魚眼までを達成するものに限定されない。例えば、最短焦点距離においてAPS−Cサイズ画面における円周魚眼を達成するように構成されても良い。この場合は、中間域においてAPS−Hサイズ画面における円周魚眼と、FullSize画面における円周魚眼を達成することができる。また、最長焦点距離においてAPS−Cサイズ画面における対角線魚眼を達成することができる。このときの最短焦点距離での最大像高Ywと最長焦点距離での最大像高Ytとの比率は、Yt/Yw=1.8であり、上記条件式(1)、条件式(1A)の範囲を満たしている。
【0025】
また、例えば最短焦点距離においてAPS−Hサイズ画面における円周魚眼を達成するように構成されても良い。その場合は、中間域においてFullSize画面における円周魚眼と、APS−Cサイズ画面における対角線魚眼を達成することができる。また、最長焦点距離においてAPS−Hサイズ画面における対角線魚眼を達成することができる。このときの最短焦点距離での最大像高Ywと最長焦点距離での最大像高Ytとの比率は、Yt/Yw=1.8であり、上記条件式(1)、条件式(1A)の範囲を満たしている。
【0026】
上述したように構成することで、本発明はさまざまな大きさを有する単一撮像素子において円周魚眼から対角線魚眼までを含むズームレンズを実現することができる。
【0027】
一般的な画面サイズは、縦横比が2:3であるものが多い。したがって、この比率の画面サイズにおいて円周魚眼から対角線魚眼までを包括するには少なくとも条件式(1)において1.8以上が必要である。
【0028】
下記の条件式(2)は、最短焦点距離におけるバックフォーカスbfwと第1レンズ群の焦点距離f1を規定する条件式である。
【0029】
3.45≦bfw/|f1|≦7 (2)
条件式(2)の上限を超えると第1レンズ群の焦点距離が短くなりすぎてしまい、像面湾曲・倍率色収差・歪曲収差の補正が困難になる。条件式(2)の下限を超えると、第1レンズ群の焦点距離が長くなりすぎてしまい、最短焦点距離で円周魚眼を実現することが困難となる。また、バックフォーカスが短くなりメカ的な空間を確保することが困難になる。
【0030】
上記条件式(2)は、更には、下記条件式(2A)を満足することが好ましい。
【0031】
3.55 ≦bfw/|f1|≦5 (2A)
下記の条件式(3)は、第1レンズ群内の最も物体側に位置する負メニスカスレンズの形状を規定する条件式である。
【0032】
0.4≦SF1≦1.0 (3)
ただし、SF1=(r1−r2)/(r1+r2)
ただし、負メニスカスレンズの物体側の曲率半径をr1、像側の曲率半径をr2、形状因子をSF1としている。
【0033】
条件式(3)の上限を超えると、メニスカスレンズではなくなり画角が略180度の光線を取り込むことが出来なくなる。条件式(3)の下限を超えると、該レンズの屈折力が弱く歪曲の発生量が少なくなり、魚眼レンズとして画角略180度を達成することが困難になる。
【0034】
上記条件式(3)は、更には、下記条件式(3A)を満足することが好ましい。
【0035】
0.50≦SF1≦0.75 (3A)
ただし、SF1=(r1−r2)/(r1+r2)
下記の条件式(4)は、第1レンズ群内の最も物体側に位置する負メニスカスレンズの屈折率nG1を規定する条件式である。
【0036】
1.75≦nG1≦2.0 (4)
条件式(4)の上限を超える硝材は、短波長側の透過率が低くカラーバランスが悪くなってしまう。条件式(4)の下限を超えると、該レンズの屈折力が弱くなり、歪曲の発生量が少なくなり、魚眼レンズとして画角略180度を達成することが困難になる。
【0037】
上記条件式(4)は、更には、下記条件式(4A)を満足することが好ましい。
【0038】
1.80≦nG1≦1.90 (4A)
下記の条件式(5)は、第1レンズ群内の最も物体側にある負メニスカスレンズよりも像側にある少なくとも一枚以上の負レンズの部分分散比に関する条件式である。
【0039】
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.01 (5)
ただし、該負レンズの部分分散比をθg,F、アッべ数をvdとしている。ここで、該負レンズのフラウンフォーファ線のg線(波長435.8nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)に対する屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとする。この場合のアッベ数vd、g線とF線に関する部分分散比θg,Fは次の通りである。
vd=(Nd−1)/(NF−NC)
θg,F=(Ng−NF)/(NF−NC)
条件式(5)の下限を超えると倍率色収差補正が困難になるため、条件式(5)内に入っていることが好ましい。
【0040】
上記条件式(5)は、更には、下記条件式(5A)を満足することが好ましい。
【0041】
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.018 (5A)
下記の条件式(6)は、第2レンズ群内の少なくとも一枚以上の正レンズ(凸レンズ)の部分分散比に関する条件式である。
【0042】
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.01 (6)
ただし、該正レンズの部分分散比をθg,F、アッべ数をvdとしている。ここで、該正レンズのフラウンフォーファ線のg線(波長435.8nm)、F線(波長486.1nm)、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)に対する屈折率をそれぞれNg、NF、Nd、NCとする。この場合のアッベ数vd、g線とF線に関する部分分散比θg,Fは次の通りである。
vd=(Nd−1)/(NF−NC)
θg,F=(Ng−NF)/(NF−NC)
条件式(6)の下限を超えると軸上色収差・倍率色収差補正が困難になるため、条件式(6)内に入っていることが好ましい。
【0043】
上記条件式(6)は、更には、下記条件式(6A)を満足することが好ましい。
【0044】
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.018 (6A)
下記の条件式(7)は、変倍時の第2レンズ群の移動量m2と第2レンズ群の焦点距離f2を規定する条件式である。
【0045】
0.55≦m2/f2≦0.8 (7)
ただし、最短焦点距離から最長焦点距離への変倍に際して第2レンズ群が物体側に移動する移動量をm2としている。
【0046】
条件式(7)の上限を超えると、移動量が多くなる、または第2レンズ群の焦点距離が短くなり変倍時の収差変動が大きくなってしまう。条件式(7)の下限を超えると、移動量が少なくなる、または第2レンズ群の焦点距離が長くなり所望の変倍比を確保することが困難になる。
【0047】
上記条件式(7)は、更には、下記条件式(7A)を満足することが好ましい。
【0048】
0.60≦m2/f2≦0.75 (7A)
下記の条件式(8)は、第1レンズ群と第2レンズ群の焦点距離の比を規定するものである。
【0049】
0.2≦|f1|/f2≦0.42 (8)
条件式(8)の上限を超えると、第1レンズ群の焦点距離が長くなり最短焦点距離において円周魚眼を実現することが困難になる。条件式(8)の下限を超えると、第1レンズ群の焦点距離が短くなり、像面湾曲・倍率色収差の補正が困難になる。
【0050】
上記条件式(8)は、更には、下記条件式(8A)を満足することが好ましい。
【0051】
0.30≦|f1|/f2≦0.42 (8A)
本発明では、フォーカシング時において第1レンズ群L1の一部(L12)を光軸方向に動かしている。魚眼レンズ系の多くは、全体繰り出し方式、一群繰り出し方式が一般的であるが、速いオートフォーカスを行うにはインナーフォーカスとすることが好ましい。また、魚眼レンズは被写体に近づいて撮影することが多いため、前玉を固定とすることで汚れや傷が付くのを防げるためインナーフォーカスとすることが好ましい。
【0052】
次に具体的な実施例を示す。諸収差図は球面収差、軸上色収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差、倍率色収差を示す。rは曲率半径、dはレンズ厚またはレンズ間隔、ndはd線の屈折率、vdはアッベ数、BFはバックフォーカス値を示す。Fナンバー、焦点距離、画角、BF及び変倍に伴って変化するレンズ間隔(d値)は、最短焦点距離(W)―中間焦点距離(M)―最長焦点距離(T)の順に示している。
【0053】
実施例中に採用されている非球面は周知の如く、光軸方向にZ軸、光軸直交方向にY軸をとるとき、周知の非球面式(9):
【0054】
【数1】

【0055】
で与えられる曲線を光軸の回りに回転して得られる曲面である。非球面式は、近軸曲率半径:r、円錐定数:K、高次の非球面係数:A、B、C、Dを与えて形状を特定する。なお、高次の非球面係数の表記において「eとそれに続く数字」は「10のべき乗」を表す。たとえば「e−9」は10−9を意味し、この数値がその直前の数値に掛かるのである。
【0056】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0057】
図1及び図2と表1は本発明による魚眼ズームレンズ(光学系)の実施例1を示している。図1は魚眼ズームレンズの構成図である。図2(a)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最短焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図2(b)は無限遠にフォーカスを合わせたときの中間域での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図2(c)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最長焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。表1はその数値データである。
【0058】
本魚眼ズームレンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群(L1)、正の屈折力の第2レンズ群(L2)からなる。第1レンズ群は、物体側から順に負の屈折力の第11レンズ群(L11)と負の屈折力の第12レンズ群(L12)から構成されている。第11レンズ群は物体側から順に物体側に凸の第1負メニスカスレンズ、物体側に凸の第2負メニスカスレンズ、第3負レンズ、第4正レンズから構成されている。第12レンズ群は第5負レンズからなる。第2レンズ群は、物体側から順に、副絞り(SS)、第6正レンズ、開口絞り(S)を有する。また、物体側から順に、第7負レンズと第8正レンズの接合レンズ、第9正レンズと第10負レンズの接合レンズ、第11正レンズ、第12負レンズと第13正レンズの接合レンズ、第14正レンズを有する。Iは像面である。本実施例において変倍は、第1レンズ群と第2レンズ群の光軸上での間隔を変化させることで行う。フォーカシングは、第1レンズ群内の第12レンズ群を光軸方向に動かして行う。
【0059】
(表1)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 59.840 2.50 1.80400 46.6 61.87
2 17.282 14.64 34.15
3 129.723 1.61 1.59282 68.6 32.59
4 21.610 6.44 27.39
5 -86.935 1.36 1.59282 68.6 27.10
6 31.102 0.15 25.84
7 22.525 7.45 1.80518 25.4 26.07
8 -110.226 5.82 24.72
9* -31.089 1.20 1.85135 40.1 17.80
10 -844.340 (可変) 17.08
11 ∞ 1.46 10.26
12 43.413 1.62 1.88300 40.8 10.87
13 -94.260 1.85 10.94
14(絞り) ∞ 1.70 10.95
15 -19.292 0.75 1.88300 40.8 10.96
16 32.493 3.22 1.51823 58.9 11.53
17 -20.261 0.20 12.31
18 194.716 4.25 1.48749 70.2 12.74
19 -12.377 0.80 1.88300 40.8 13.21
20 -27.182 0.20 13.96
21 712.893 3.28 1.59270 35.3 14.77
22 -21.620 0.35 15.87
23 -60941.798 0.93 1.83400 37.2 16.91
24 28.231 4.77 1.49700 81.5 17.60
25 -34.279 0.20 18.70
26 -80910.795 1.68 1.48749 70.2 19.49
27 -87.072 (可変) 19.87
像面 ∞

非球面データ
第9面
K = 0.00000e+000 A 4=-6.64162e-006 A 6= 2.58871e-008 A 8=-8.99837e-010 A10= 1.12233e-011 A12=-5.07106e-014

各種データ
短焦点 中間 長焦点
焦点距離 8.05 11.85 15.14
Fナンバー 4.12 4.12 4.12
画角 175 175 175
像高 11.15 16.77 21.64
レンズ全長 129.57 127.26 129.98
BF 40.25 49.58 57.66

d10 20.89 9.25 3.89
d27 40.25 49.58 57.66

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -10.91 41.17 10.51 -15.41
2 11 26.80 27.26 15.90 -6.32

【実施例2】
【0060】
図3及び図4と表2は本発明による魚眼ズームレンズの実施例2を示している。図3は魚眼ズームレンズの構成図である。図4(a)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最短焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図4(b)は無限遠にフォーカスを合わせたときの中間域での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図4(c)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最長焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。表2はその数値データである。
【0061】
本魚眼ズームレンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群(L1)、正の屈折力の第2レンズ群(L2)からなる。第1レンズ群は、物体側から順に負の屈折力の第11レンズ群(L11)と負の屈折力の第12レンズ群(L12)から構成されている。第11レンズ群は物体側から順に、物体側に凸の第1負メニスカスレンズから構成されている。第12レンズ群は物体側から順に、物体側に凸の第2負メニスカスレンズ、第3負レンズ、第4正レンズ、第5負レンズからなる。第2レンズ群は、物体側から順に、副絞り(SS)、第6正レンズ、開口絞り(S)、第7負レンズと第8正レンズの接合レンズ、第9正レンズと第10負レンズの接合レンズ、第11正レンズ、第12正レンズから構成されている。また、Iは像面である。本実施例において変倍は、第1レンズ群と第2レンズ群の光軸上での間隔を変化させることで行う。フォーカシングは、第1レンズ群内の第12レンズ群を光軸方向に動かして行う。
【0062】
(表2)
単位 mm

面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 62.000 2.60 1.80400 46.6 58.33
2 18.100 15.41 34.44
3 38.618 1.80 1.80400 46.6 25.02
4 14.968 5.55 20.35
5 -38.773 1.36 1.49700 81.5 20.15
6 13.721 7.00 1.80610 33.3 18.10
7 -41.538 1.68 16.58
8 -21.935 1.32 1.88300 40.8 13.99
9 1151.046 (可変) 13.17
10 ∞ 0.30 9.50
11 20.995 2.00 1.67270 32.1 9.85
12 -147.709 1.00 9.90
13(絞り) ∞ 2.00 9.91
14 -32.712 0.93 1.88300 40.8 9.93
15 12.947 3.12 1.59270 35.3 10.29
16 -71.723 0.28 10.94
17 31.397 4.60 1.48749 70.2 11.42
18 -10.807 1.18 1.80610 33.3 11.84
19 -120.666 0.22 13.82
20 103.273 5.01 1.49700 81.5 15.08
21 -14.923 0.33 17.00
22* 86.516 2.46 1.58313 59.4 19.39
23 -49.317 (可変) 19.84
像面 ∞

非球面データ
第22面
K = 0.00000e+000 A 4=-1.79213e-005 A 6=-2.20392e-008 A 8= 4.39447e-012 A10=-4.83129e-013

各種データ
短焦点 中間 長焦点
焦点距離 8.60 11.44 15.01
Fナンバー 4.05 4.05 4.05
画角 175 175 175
像高 12.00 15.98 21.64
レンズ全長 113.33 114.11 118.57
BF 39.99 47.23 56.34

d 9 13.19 6.74 2.09
d23 39.99 47.23 56.34

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -9.36 36.71 11.07 -12.23
2 10 23.88 23.43 15.10 -5.82

【実施例3】
【0063】
図5及び図6と表3は本発明による魚眼ズームレンズの実施例3を示している。図5は魚眼ズームレンズの構成図である。図6(a)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最短焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図6(b)は無限遠にフォーカスを合わせたときの中間域での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。図6(c)は無限遠にフォーカスを合わせたときの最長焦点距離での諸収差図であり、球面収差、非点収差、歪曲収差、色収差を表わしている。また、表3はその数値データである。本魚眼ズームレンズ系は、物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群(L1)、正の屈折力の第2レンズ群(L2)、正の屈折力の第3レンズ群(L3)からなる。第1レンズ群は、物体側から順に負の屈折力の第11レンズ群(L11)と負の屈折力の第12レンズ群(L12)から構成されている。第11レンズ群は物体側から順に物体側に凸の第1負メニスカスレンズ、物体側に凸の第2負メニスカスレンズ、第3負レンズ、第4正レンズから構成されている。第12レンズ群は第5負レンズからなる。第2レンズ群は、物体側から順に、副絞り(SS)、第6正レンズ、開口絞り(S)、第7負レンズと第8正レンズの接合レンズ、第9正レンズと第10負レンズの接合レンズ、第11正レンズ、第12負レンズと第13正レンズの接合レンズから構成される。第3レンズ群は、第14正レンズから構成される。また、Iは像面である。本実施例において変倍は、第1レンズ群と第2レンズ群と第3レンズ群の光軸上での間隔を変化させることで行う。フォーカシングは、第1レンズ群内の第12レンズ群を光軸方向に動かして行う。
【0064】
(表3)
単位 mm
面データ
面番号 r d nd vd 有効径
1 60.000 2.50 1.80400 46.6 61.58
2 17.284 14.71 34.10
3 147.251 1.61 1.59282 68.6 32.39
4 21.509 6.37 27.22
5 -88.560 1.36 1.59282 68.6 26.95
6 31.212 0.15 25.77
7 22.742 7.41 1.80518 25.4 26.02
8 -99.973 5.82 24.74
9* -31.998 1.20 1.85135 40.1 17.86
10 -900.000 (可変) 17.10
11 ∞ 1.46 10.01
12 45.129 1.59 1.88300 40.8 10.60
13 -92.908 1.85 10.67
14(絞り) ∞ 1.70 10.70
15 -18.989 0.75 1.88300 40.8 10.71
16 31.482 3.60 1.51823 58.9 11.28
17 -19.695 0.20 12.23
18 205.131 4.29 1.48749 70.2 12.66
19 -12.187 0.80 1.88300 40.8 13.14
20 -26.863 0.20 13.91
21 490.055 3.30 1.59270 35.3 15.26
22 -21.668 0.35 16.32
23 ∞ 0.93 1.83400 37.2 17.38
24 28.200 4.77 1.49700 81.5 18.09
25 -31.469 (可変) 19.05
26 ∞ 1.49 1.48749 70.2 21.86
27 -111.396 (可変) 22.16
像面 ∞

非球面データ
第9面
K = 0.00000e+000 A 4=-4.97134e-006 A 6=-6.72678e-009 A 8=-4.90505e-010 A10= 9.41652e-012 A12=-5.79006e-014

各種データ
短焦点 中間 長焦点
焦点距離 8.05 11.84 15.07
Fナンバー 4.12 4.12 4.12
画角 175 175 175
像高 11.15 16.77 21.64
レンズ全長 129.07 127.15 130.22
BF 40.25 47.75 54.25

d10 20.21 8.60 3.30
d25 0.19 2.37 4.25
d27 40.25 47.75 54.25

ズームレンズ群データ
群 始面 焦点距離 レンズ構成長 前側主点位置 後側主点位置
1 1 -11.13 41.14 10.33 -15.81
2 11 29.36 25.79 15.67 -5.08
3 26 228.51 1.49 1.00 0.00

以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。上記実施例では、魚眼ズームレンズについて説明したが、被写体像を像面上に結像させる魚眼ズームレンズを備えた光学機器も本発明の一側面を構成する。
【0065】
次に各条件式に対しての値を表(4)に示す。
【0066】
【表4】

【0067】
次に、本発明の光学系を、撮影光学系として用いた一眼レフカメラ(光学機器)の実施例を図9を用いて説明する。同図において、10は実施例1、2、3の光学系1を有する撮影レンズである。撮影光学系1は保持部材である鏡筒2に保持されている。20はカメラ本体であり、撮影レンズ10からの光束を上方に反射するクイックリターンミラー3、撮影レンズ10の像形成位置に配置された焦点板4を有している。更に、焦点板4に形成された逆像を正立像に変換するペンタダハプリズム5、その正立像を拡大結像するための接眼レンズ6等を有している。7は感光面であり、受光手段(記録手段)としてのCCDセンサやCMOSセンサ等の固体撮像素子(光電変換素子)や銀塩フィルムが配置される。撮影時にはクイックリターンミラー3が光路から退避して、感光面7上に撮影レンズ10によって像が形成される。
【0068】
以上、本発明の好ましい光学系の実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことは言うまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の魚眼ズームレンズは、撮像装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
L1 第1レンズ群
L2 第2レンズ群
L11 第11レンズ群
L12 第12レンズ群
I 像面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、負の屈折力の第1レンズ群と正の屈折力の第2レンズ群を有し、最短焦点距離から最長焦点距離への変倍に際して前記第1レンズ群と前記第2レンズ群が光軸上を移動し、最短焦点距離と最長焦点距離における最大像高が異なる光学系であって、最短焦点距離をfw、最長焦点距離をft、fw≦f≦ftを満たす任意の焦点距離をf、最も物体側のレンズ面に入射する軸外光束の主光線と光軸が交わる角度をθ、該角度θで入射した光線の結像像高をY、最短焦点距離における最大像高をYw、最長焦点距離における最大像高をYt、前記第1レンズ群の焦点距離をf1、最短焦点距離におけるバックフォーカスをbfwとするとき、
1.70≦Yt/Yw≦2.5
ただし、Y=2×f×sin(θ/2) (85°≦θ≦90°)
3.45≦bfw/|f1|≦7
を満足することを特徴とする光学系。
【請求項2】
前記第1レンズ群の最も物体側に位置する負メニスカスレンズの物体側の曲率半径をr1、像側の曲率半径をr2、形状因子をSF1とするとき、
0.4≦SF1≦1.0
ただし、SF1=(r1−r2)/(r1+r2)
を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記第1レンズ群の最も物体側に位置する負メニスカスレンズの屈折率をnG1とするとき、
1.75≦nG1≦2.0
を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
部分分散比をθg,F、アッベ数をvdとするとき、前記第1レンズ群は、最も物体側に位置する負メニスカスレンズよりも像側に、
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.01
を満足する負レンズを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
部分分散比をθg,F、アッベ数をvdとするとき、前記第2レンズ群は、
θg,F−(−0.001682・vd+0.6438)≧0.01
を満足する正レンズを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
最短焦点距離から最長焦点距離への変倍に際して、前記第2レンズ群は物体側に移動し、該第2レンズ群の移動量をm2、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
0.55≦m2/f2≦0.8
を満足することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項7】
前記第1レンズ群の焦点距離をf1、前記第2レンズ群の焦点距離をf2とするとき、
0.2≦|f1|/f2≦0.42
を満足することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
フォーカシングに際して前記第1レンズ群の一部が光軸方向に移動することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項9】
被写体像を像面上に結像させる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光学系を備えることを特徴とする光学機器。

【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−22109(P2012−22109A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159314(P2010−159314)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】